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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】電子楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/053 20060101AFI20230607BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20230607BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
G10H1/053 C
G10H1/34
G10B3/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018170745
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020042215
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】平岩 義史
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-114378(JP,A)
【文献】特開2001-013967(JP,A)
【文献】特開平09-237087(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105096924(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/053
G10H 1/34
G10B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体とネックとを有する電子楽器であって、
前記本体に設けられ、複数の音色の発音指示を入力する入力手段と、
前記ネックに設けられる検知手段であって、検知面を有し、その検知面上の検知位置を検知する検知手段と、
前記入力手段により入力された発音指示に基づいた複数の音色のそれぞれに対して楽音効果を適用して出力する楽音制御手段と、
記検知手段で検知された検知位置に応じて、前記楽音制御手段で楽音効果の度合を変化させる対象の音色数とその対象の音色に適用される楽音効果の度合とを変化させる楽音効果変化手段とを備えることを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
前記入力手段は、1の入力によって複数の音色の発音指示をするものであり、
前記入力手段の1の入力による発音指示の対象となる複数の音色を選択する音色選択手段を備え、
前記楽音制御手段は、前記入力手段の1の入力による発音指示に基づき、前記音色選択手段によって選択された複数の音色のそれぞれに対して楽音効果を適用して出力するものであることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
【請求項3】
前記検知手段で検知された検知位置に応じて、音色毎に適用される楽音効果の度合の変化を表す態様情報を記憶する態様情報記憶手段と、
その態様情報記憶手段に記憶される態様情報を選択する態様選択手段とを備え、
前記楽音効果変化手段は、前記態様選択手段によって選択された態様情報に基づいて、音色毎に適用される楽音効果の度合を、前記検知手段で検知された検知位置に応じて、音色毎に変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記楽音効果変化手段は、前記検知手段で検知された検知位置に応じて、音色毎に適用される同一種類の楽音効果の度合を、音色毎に変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項5】
前記検知手段は、前記検知面上に負荷される押圧力を検知可能とされ、
前記楽音効果変化手段は、前記楽音制御手段によって出力される複数の音色に適用される楽音効果の度合を、前記検知面上の押圧力に応じて変化させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項6】
前記楽音効果変化手段は、前記楽音制御手段によって出力される複数の音色に適用される楽音効果であって、前記検知手段で検知された検知位置に応じて変化される楽音効果とは異なる種類の楽音効果の度合を、前記検知面上の押圧力に応じて変化させることを特徴とする請求項5記載の電子楽器。
【請求項7】
前記検知手段の近傍に設けられ、演奏者の操作を入力する操作子を備え、
前記楽音効果変化手段は、前記楽音制御手段によって出力される複数の音色に適用される楽音効果の度合を、前記操作子への操作に応じて変化させる請求項1から6のいずれかに記載の電子楽器。
【請求項8】
前記楽音効果変化手段は、前記楽音制御手段によって出力される複数の音色に適用される楽音効果であって、前記検知手段で検知された検知位置に応じて変化される楽音効果および前記検知面上の押圧力に応じて変化される楽音効果とは異なる種類の楽音効果の度合を、前記操作子への操作に応じて変化させる請求項7記載の電子楽器。
【請求項9】
前記検知手段で検知される検知位置は、前記検知面上の一方向側の位置であり、
前記操作子の操作方向は、前記検知手段で検知位置が検知される方向と、前記検知手段で押圧力が検知される方向とにそれぞれ直交した方向であることを特徴とする請求項7又は8に記載の電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、楽音の発生開始及び停止を指示する鍵盤装置KYと、検知面上の検知位置を検知するリボンコントローラRCとを備え、そのリボンコントローラRCの検知位置に応じた1の楽音効果(カットオフ、レゾナンス等)の度合を、楽音を構成する複数の音色のそれぞれに対して適用して出力する電子楽器の技術が開示されている。これにより、ユーザが所望する1の楽音効果の度合を、リボンコントローラRCの検知位置によって容易に変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-122824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リボンコントローラRCの検知位置に応じた、1の楽音効果の度合の変化は、複数の音色の全てにおいて同一である。従って、ユーザが演奏中にリボンコントローラRCの検知位置を頻繁に変更しても、複数の音色の全てに対する楽音効果の度合は、全て同じように変化するので、結果として出力され、聴衆の耳に届く楽音効果の変化は、単調なものとなる虞があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、複数の音色に対する楽音効果の度合を変化させ、変化の単調さを抑制し表現豊かな演奏が可能な電子楽器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の電子楽器は、本体とネックとを有するものであり、前記本体に設けられ、複数の音色の発音指示を入力する入力手段と、前記ネックに設けられる検知手段であって、検知面を有し、その検知面上の検知位置を検知する検知手段と、前記入力手段により入力された発音指示に基づいた複数の音色のそれぞれに対して楽音効果を適用して出力する楽音制御手段と、記検知手段で検知された検知位置に応じて、前記楽音制御手段で楽音効果の度合を変化させる対象の音色数とその対象の音色に適用される楽音効果の度合とを変化させる楽音効果変化手段とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態である肩掛けキーボードの外観図である。
図2】(a)は、リボンコントローラを操作している場合の肩掛けキーボードのネックの正面図であり、(b)は、リボンコントローラへ押圧力を負荷している場合、またはモジュレーションバーを操作している場合のネックの断面図であり、(c)は、モジュレーションバーを操作している場合のネックの正面図である。
図3】(a)は、リボンコントローラを示す断面図であり、(b)は、 リボンコントローラにおける端子部の平面図である。
図4】リボンコントローラを展開した状態(使用形態が形成される前の状態)を示す平面図である。
図5】リボンコントローラを展開した状態(使用形態が形成される前の状態)を示す断面図である。
図6】リボンコントローラの製造方法を説明するための説明図である。
図7】感圧センサと位置センサの模式的な回路構成を示す回路図である。
図8】(a)は、位置センサの作用を説明するための断面図であり、(b)は、検出原理を説明するための説明図である。
図9】(a)は、感圧センサの作用を説明するための断面図であり、(b)は、感圧センサにおける抵抗-荷重(圧力)特性の一例を示す説明図である。
図10】肩掛けキーボードの機能ブロック図である。
図11】肩掛けキーボードの電気的構成を示すブロック図である。
図12】(a)は、X方向態様情報テーブルを模式的に示した図であり、(b)は、X方向態様情報テーブルに記憶される態様情報を模式的に示した図であり、(c)は、YZ方向態様情報テーブルを模式的に示した図であり、(d)は、YZ方向態様情報テーブルに記憶される態様情報を模式的に示した図である。
図13】(a)~(f)は、楽音効果の度合の変化の態様を示したグラフである。
図14】メイン処理のフローチャートである。
図15】楽音生成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、一実施形態である肩掛けキーボード1の外観図である。肩掛けキーボード1は、演奏者Hの演奏操作に基づいた複数の音色のそれぞれに対して、音量変化やピッチ変化、カットオフやレゾナンス等の楽音効果を適用して出力する電子楽器である。
【0009】
図1に示す通り、肩掛けキーボード1には、鍵盤2と、肩掛けキーボード1の各種の設定内容を変更する設定キー3とが設けられる。鍵盤2は、演奏者Hの演奏による演奏情報を取得するための入力装置であり、複数の鍵2aが配設される。演奏者Hによる鍵2aの押鍵/離鍵操作に応じた複数の音色に該当するMIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格の演奏情報が、CPU10(図11参照)へ出力される。設定キー3は、肩掛けキーボード1の各種の設定、例えば、鍵2aに割り当てられる音色や、図2で後述するリボンコントローラ5及びモジュレーションバー6に割り当てられる楽音効果等を変更するキーである。
【0010】
鍵盤2の隣り合った位置には、肩掛けキーボード1における演奏者Hの持ち手となるネック4が形成される。ネック4を、演奏者Hにおける鍵盤2を操作しない側の手(図1においては、演奏者Hの左手)で握ることで、鍵盤2を操作中の肩掛けキーボード1のバランスを安定させることができる。また、詳細は図2で後述するが、ネック4に設けられる、リボンコントローラ5及びモジュレーションバー6によって、出力中の複数の音色に対する楽音効果の度合を変更することができる。
【0011】
次に図2図9を参照して、ネック4に設けられるリボンコントローラ5及びモジュレーションバー6を説明する。図2(a)は、リボンコントローラ5を操作している場合の肩掛けキーボード1のネック4の正面図であり、図2(b)は、リボンコントローラ5へ押圧力を負荷している場合、またはモジュレーションバー6を操作している場合のネック4の断面図であり、図2(c)は、モジュレーションバー6を操作している場合のネック4の正面図である。
【0012】
図2に示す通り、ネック4には、リボンコントローラ(以下「リボン」と略す)5と、モジュレーションバー(以下「操作バー」と略す)6とが設けられる。リボン5は、位置センサと感圧センサとが積層された上面視矩形状のセンサである。詳細は図3図9で後述するが、リボン5における位置センサ及び感圧センサの上部には、リボン5の検知面である表面パネル81が設けられ、位置センサによって表面パネル81上の長手方向側の位置が検知され、感圧センサによって、表面パネル81上の押圧力が検知される。以下、表面パネル81の長手方向のことを「X方向」(図2(a))と称し、表面パネル81上に押圧力が負荷される方向を「Z方向」(図2(b))と称する。即ち、1のリボン5によって、X方向の位置とZ方向の押圧力との、2の異なった種類の値を取得できる。ここで、図3図9を参照して、リボン5の構造を説明する。
【0013】
図3(a)は、リボン5を示す断面図であり、 図3(b)は、リボン5における端子部の平面図である。
【0014】
リボン5は、折り畳まれたシート(フィルム)51の一部に、位置センサと感圧センサとが形成された構造になっている。本実施形態では、位置センサとして機能する抵抗膜52A,52Bが形成されている。また、感圧センサとして機能する感圧導電性インク(以下、感圧インクという。)による膜53A,53Bが形成されている。
【0015】
フィルム51は、4つの部位(第1の部位、第2の部位、第3の部位、第4の部位)からなっている。フィルム51が折り畳まれた状態では、4つの部位は、積層されたようになっている。
【0016】
後述するように、フィルム51の第1の部位(図4に示される部位51Aに相当)における抵抗膜52Aが形成された面と第2の部位(図4に示される部位51Bに相当)における抵抗膜52Bが形成された面とは、感圧接着剤(印刷糊)59で接着されている。フィルム51の第3の部位(図4に示される部位51Cに相当)における膜53Aが形成された面と第4の部位(図4に示される部位51Dに相当)における膜53Bが形成された面も、感圧接着剤59で接着されている。なお、各々の部位において、抵抗膜52A,52Bまたは膜53A,53Bが形成されている面を表面とする。それらが形成されていない面を裏面とする。
【0017】
第2の部位の裏面と第3の部位の裏面とは、両面テープ(両面接着テープ)で接着される。両面テープは、支持体(セッティングプレート)54の表面および裏面に粘着剤60が積層されたものである。なお、図3(a)には、第3の部位の裏面側の両面テープの剥離部材(セパレータ)55も示されている。
【0018】
フィルム51は、一端において、端子部57が形成されている(図3(b)参照)。フィルム51における端子部57の裏側には、補強板56が貼り付けられている。補強板56及び端子部57が形成された部分と位置センサ及び感圧センサが形成された部分との間には、延伸部58がある。
【0019】
図3(b)に示すように、端子部57は、4つの端子(1)~(4)を含む。各々の端子(1)~(4)は、銀の層57bの上に感圧インク57aが重ねられて形成される。各々の端子(1)~(4)は、引出線によって、抵抗膜52A,52B及び膜53A,53Bのうちの1つまたは複数に電気的に接続される。
【0020】
リボン5は、表面パネル81を有する。表面パネル81は、積層されたフィルム51と接着剤(例えば、両面テープ)で接着される。図3(a)には、接着剤として、支持体82の表面および裏面に粘着剤83が積層された両面テープが使用される例が示されている。表面パネル81は、演奏者Hの指等が接触する部材であり、例えば、カーボグラス(登録商標)などのポリカーボネート(PC)シートを素材とする。ただし、表面パネル81の素材は、PCシートに限定されない。
【0021】
図4は、使用形態(折り畳まれた状態)が形成される前のリボン5を示す平面図である。図4に示すように、フィルム51は、4つの部位51A,51B,51C,51Dを含む。
【0022】
延伸部58に最も近い部位51Aの表面の一部には、抵抗膜52A(図3(a)参照)が形成される。P方向(長手方向)で部位51Aに隣接する部位(図4において右側の部位)51Bの表面の一部には、抵抗膜52B(図3(a)参照)が形成される。Q方向(幅方向)で部位51Aに隣接するもう一方の部位(図4において上側の部位)51Dの表面の一部には、感圧インクによる膜53B(図3(a)参照)が形成される。Q方向で部位51Dに隣接する部位51Cの表面の一部には、感圧インクによる膜53A(図3(a)参照)が形成される。なお、本実施形態では、抵抗膜52A,52B及び膜53A,53Bの平面形状は矩形であるが、それらの形状は矩形に限定されない。一例として、楕円形であってもよい。
【0023】
また、部位51Aと部位51Bとは、幅方向(Q方向)の境界を介して隣接しているともいえる。部位51Aと部位51Dとは、長手方向の境界(P方向)を介して隣接しているともいえる。部位51Dと部位51Cとは、長手方向の境界(P方向)を介して隣接しているともいえる。
【0024】
また、図4において、部位間の線分は、部位の境界を示す。部位51Aと部位51Dの境界上にある楕円、および、部位51Cと部位51Dの境界上にある楕円は、穴である。
【0025】
使用形態が形成される前の図4に示されたリボン5における部位51Bが部位51Aに対して折り畳まれ、部位51Cが部位51Dに対して折り畳まれた後さらに部位51Aに対して折り畳まれた後には、リボン5は、位置検出用の抵抗膜52Aが形成された部位51Aと、部位51Aの下に位置し、位置検出用の抵抗膜52Bが形成された部位51Bと、部位51Bの下に位置し、感圧用の抵抗膜(膜53A)が形成された部位51Cと、部位51Cの下に位置し、感圧用の抵抗膜(膜53B)が形成された部位51Dとを含む。なお、部位51A,51B,51C,51Dは、1つの基材(本実施形態では、フィルム51)で形成されていることが好ましい。そして、例えば、1つの基材が折り畳まれることによって形成されていることが好ましい。また、本実施形態では、「部位の下」は、表面パネル81の位置を上部とした場合の位置関係での「下」である。
【0026】
図5は、使用形態が形成される前のリボン5を示す断面図である。なお、図5には、図4における抵抗膜52A,52Bが形成された部位51A,51Bの断面が例示されている。したがって、図5において、フィルム51の上面側に、感圧接着剤59が存在する。なお、図5に示す例では、感圧接着剤59の上面側に、セパレータ71が設置されている。また、フィルム51の一部(具体的には、部位51A)の下面に、セパレータ72と接着剤73とからなる両面テープが貼られた様子が示されている。
【0027】
次に、図6を参照して、フィルム51の形成方法を説明する。
【0028】
図6は、リボン5の製造方法を説明するための説明図である。まず、展開時のリボン5を構成するフィルム51における4つの部位51A,51B,51C,51D及び延伸部58(図4参照)を含むような平面フィルムを用意する。なお、平面フィルムは、複数のリボン5を構成するフィルム51を含むような広面積のフィルムであってもよい。なお、フィルム51として、ポリイミド(PI)、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを使用することができる。
【0029】
次いで、図6(a)に示すように、抵抗膜52A及び感圧インクによる膜53A,53Bが形成される箇所(図4参照)、および端子部57への引出線が形成される箇所に、銀を印刷(例えば、スクリーン印刷)して銀層91を形成する。さらに、図6(b)に示すように、部位51A,51Bにおける抵抗膜52A,52Bが形成される箇所(図4参照)に、導電性カーボン(以下、カーボンという。)92を印刷(例えば、スクリーン印刷)する。このとき、引出線における所定箇所にもカーボン92が印刷される。所定箇所は、部位51B,51C,51Dが折り返される箇所である。なお、部位51Bについては、銀層91を保護するために、銀が印刷された箇所の上に、カーボン92が印刷される。
【0030】
また、図6(c)に示すように、部位51C,51Dの所定箇所に感圧インク93を印刷(例えば、スクリーン印刷)する。なお、所定箇所は、膜53A,53Bが形成される箇所(図4参照)である。
【0031】
さらに、図6(d)に示すように、特定箇所以外の箇所にレジストインク94を印刷(例えば、スクリーン印刷)する。なお、特定箇所は、部位51A,51B,51C,51Dにおける抵抗膜52A,52Bが形成される箇所および膜53A,53Bが形成される箇所である。また、端子部57も特定箇所に含まれる。
【0032】
また、図6(e)に示すように、部位51A,51Dにおける抵抗膜52A及び膜53Bが形成される箇所(図4参照)に、スペーサ粒子が分散された紫外線硬化樹脂を印刷(例えば、スクリーン印刷)することによって、スペーサドット95を形成する。
【0033】
また、図6(f)に示すように、部位51B,51Dにおける抵抗膜52B及び膜53Bが形成される箇所(図4参照)以外の箇所に、感圧接着剤59を印刷(例えば、スクリーン印刷)する。次いで、感圧接着剤59の上面側に、セパレータ71を設置する(図5参照)。なお、作業の簡単のために、全ての部位51A,51B,51C,51Dの上面側に、セパレータ71を設置してもよい。
【0034】
その後、部位51C,51Dの裏面に両面テープを貼り付ける。なお、部位51Cの裏面の両面テープは、部位51Bの裏面との接着のために用いられる。部位51Dの裏面の両面テープは、リボン5と他の部材との接着のために用いられる。また、端子部57の裏面に補強板56を貼り付ける。そして、図4等に示された形状のフィルム51を得るために打抜き加工を行う。
【0035】
さらに、例えば以下のような手順で部位51B,51C,51Dを折り畳む。手順を説明するために図4図6を参照する。
【0036】
まず、部位51Cと部位51Dとの境界に折り目が付くように、また、膜53A,53Bが対向するように、部位51Cを部位51Dの側に折り曲げる。また、部位51Aと部位51Bとの境界に折り目が付くように、また、抵抗膜52A,52Bが対向するように、部位51Bを部位51Aの側に折り曲げる。
【0037】
その後、一旦、部位51A,51B,51C,51Dを展開して図4に示されたような状態に戻す。この状態では、部位間に折り目が付いている。
【0038】
その状態で、部位51Dの表面のセパレータ71(図5参照)を剥がす。全ての部位51A,51B,51C,51Dにセパレータ71が設置されている場合には、部位51A,51C,51Dの表面のセパレータ71を剥がす。そして、膜53A,53Bが対向するように、再び、部位51Cを部位51Dの側に折り畳む。部位51Dの表面には感圧接着剤59の層が形成されているので(図6(f)参照)、部位51Cの表面と部位51Dの表面とが接着される。
【0039】
次いで、部位51Bの表面のセパレータ71(図5参照)を剥がす。そして、抵抗膜52A,52Bが対向するように、再び、部位51Bを部位51Aの側に折り畳む。部位51Bの表面には感圧接着剤59の層が形成されているので(図6(f)参照)、部位51Aの表面と部位51Bの表面とが接着される。
【0040】
また、部位51Cの裏面に貼り付けられている両面テープのセパレータ72を剥がす。なお、この状態では、部位51Bが部位51Aの側に折り畳まれ、部位51Cが部位51Dの側に折り畳まれている。そして、部位51Cの裏面と部位51Bの裏面とを両面テープで接着する。
【0041】
さらに、表面パネル81の裏面に両面テープを貼り、両面テープで、表面パネル81とフィルム51の部位51Aとを接着する。
【0042】
以上のようにして、図3に例示されたリボン5が得られる。
【0043】
なお、4つの部位(第1の部位、第2の部位、第3の部位、第4の部位)を折り曲げたり折り畳んだりする工程は人手によって遂行されてもよいが、それらの工程を遂行するための治具を用いてもよい。
【0044】
次に、図7図9を参照して、フィルム51の部位51A,51Bに形成された位置センサと、部位51C,51Dに形成された感圧センサの作用を説明する。図7は、感圧センサと位置センサの模式的な回路構成を示す回路図である。なお、図7における端子(1)~(4)は、図3(b)における端子(1)~(4)に相当する。
【0045】
図8(a)は、リボン5における位置センサの作用を説明するための断面図であり、図8(b)は、検出原理を説明するための説明図である。
【0046】
図8(a)の2箇所においてフィルム51が示されているが、上側のフィルム51は、部位51A(図4等参照)に相当し、下側のフィルム51は、部位51B(図4等参照)に相当する。また、上側のカーボン92は、抵抗膜52A(図3等参照)に相当し、下側のカーボン92及び銀層91は、抵抗膜52B(図3等参照)に相当する。なお、図8(a)には、スペーサドット95及びスペーサ97も示されている。スペーサ97の部分は、感圧接着剤59やレジストインク94を含む。
【0047】
図8(b)に示すように、抵抗膜52Aの両辺(図8(b)における黒部分)に、電源電圧(Vcc)と接地電位(0V)とが供給されている。なお、それらは、図7における端子(3)と端子(2)から供給される。ただし、端子(3)から接地電位(0V)を供給し、端子(2)から電源電圧(Vcc)を供給してもよい。Vccが供給される箇所を電源電極とし、0Vが供給される箇所を接地電極とする。抵抗膜52Bに接続される引出線から出力(Vout)が取り出される。なお、出力は、図7における端子(4)から取り出される。
【0048】
抵抗膜52Aの両辺に直交する方向をp方向とする。図8(a)に示すように演奏者Hの指等がリボン5に接触したとする。R1は、電源電圧と演奏者Hの指等が接触した箇所Eとの間の抵抗値を表す。R2は、演奏者Hの指等が接触した箇所と接地電極との間の抵抗値を表す。
【0049】
箇所Eから両端の電極までの距離の比はR1とR2の抵抗値の比と等価である。よって、箇所Eにおける演奏者Hの指等の接触によって抵抗膜52Aと抵抗膜52Bが接触すると、p方向の位置に応じた電圧がVoutに現れる。
【0050】
図9(a)は、感圧センサの作用を説明するための断面図であり、図9(b)は、感圧センサにおける抵抗-荷重(圧力)特性の一例を示す説明図である。
【0051】
図9(a)の2箇所においてフィルム51が示されているが、上側のフィルム51は、部位51C(図4等参照)に相当し、下側のフィルム51は、部位51D(図4等参照)に相当する。また、上側の銀層91及び感圧インク93は、膜53A(図3等参照)に相当し、下側の感圧インク93及び銀層91は、膜53B(図3等参照)に相当する。なお、図9(a)には、スペーサドット95及びスペーサ97も示されている。スペーサ97の部分は、感圧接着剤59やレジストインク94を含む。
【0052】
図9(a)に示すように演奏者Hの指等が箇所Eにおいてリボン5に接触したとする。演奏者Hの指等の接触によって膜53Aと膜53Bとが導通状態になったとき、演奏者Hの指等の押圧力が大きいと、膜53Aと膜53Bとの接触面積が大きくなって導通抵抗の値が低下する。例えば、部位51Cには、図7における端子(2)から接地電位が供給され、膜53Bに接続される引出線から出力が取り出される。なお、出力は、図7における端子(1)から取り出される。
【0053】
図9(b)に示された抵抗-荷重(圧力)特性に示すように、押圧力の大小は、抵抗値の大小になって現れる。図9(b)において、黒丸Fは、押圧力が大きく、出力として検知される抵抗値が小さいことを例示し、黒丸Gは、押圧力が小さく、出力として検知される抵抗値が大きいことを例示する。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態のリボン5は、位置センサによって演奏者Hの指等の接触位置、即ち検知位置を検知可能にするとともに、感圧センサによって演奏者Hの指等の押圧力を検知可能にする。
【0055】
また、本発明によるリボン5は、1つの基材(例えば、フィルム51)が4つの部位(第1の部位、第2の部位、第3の部位、第4の部位:例えば、部位51A、部位51B、部位51C、部位51D)を含み、4つの部位のうちの隣接する2つの部位である第1の部位(例えば、部位51A)と第2の部位(例えば、部位51B)の各々に位置検出用の抵抗膜(例えば、抵抗膜52A,52B)が形成され、4つの部位のうちの他の2つの隣接する部位である第3の部位(例えば、部位51C)と第4の部位(例えば、部位51D)の各々に感圧用の抵抗膜(例えば、感圧インク93による膜53A,53B)が形成され、第2の部位が第1の部位に対して折り畳まれることによって積層され、第3の部位が第4の部位に対して折り畳まれることによって積層され、折り畳みによって形成された2つの部分(例えば、部位51A,51Bの積層体と部位51C,51Dの積層体)が折り重ねられた構造を有するので、位置センサと感圧センサとを別個に作製する場合に比べて、リボン5の部品点数が削減される。その結果、リボン5を安価に製造することが可能になる。また、1つの基材が折り畳まれて製造されるので、リボン5の組立が簡便になる。例えば、位置センサと感圧センサとを別個に作製する場合には、それらを一体化する際に高い精度で位置合わせすることが求められるが、それに比べて、本発明によるリボン5では、位置合わせは比較的簡易である。さらに、位置センサと感圧センサとが1つの部材(フィルム51)において形成されるので、端子部57を同一平面上に集約して設置することが可能である。
【0056】
また、位置センサと感圧センサと併用することによって、演奏者Hの指等の接触の程度に応じて音の強弱を制御可能な電子楽器に好適に応用することができる。
【0057】
なお、本実施形態には、各部位が折り畳まれる前の状態では、第2の部位(例えば、部位51B)は第1の部位(例えば、部位51A)の長手方向で隣接し、第4の部位(例えば、部位51C)は第1の部位の幅方向(長手方向に直交する方向)で隣接し、第3の部位は第4の部位の長手方向で隣接するように構成されたリボン5も開示されている。
【0058】
また、本実施形態には、第1の部位(例えば、部位51A)と第2の部位(例えば、部位51B)に、カーボン、または銀とカーボンとによる位置検出用の抵抗膜がスクリーン印刷によって形成され、第3の部位(例えば、部位51C)と第4の部位(例えば、部位51D)に、銀と感圧インクによる感圧用の抵抗膜がスクリーン印刷によって形成されているリボン5も開示されている。
【0059】
また、本実施形態には、第1の部位(例えば、部位51A)の表面と第2の部位(例えば、部位51B)の表面とが感圧接着剤で接着され、第3の部位(例えば、部位51C)の表面と第4の部位(例えば、部位51D)の表面とが、感圧接着剤で接着され、第2の部位の裏面と第3の部位の裏面とが、両面接着テープで接着されたリボン5も開示されている。
【0060】
図2に戻る。リボン5の近傍、即ち、リボン5の隣り合った位置には、操作バー6が設けられる。操作バー6は、リボン5の長手側に沿って設けられ、操作バー6をリボン5の反対側に向けて倒して操作することで、その操作量を出力する操作子である。以下、操作バー6を操作する方向を「Y方向」(図2(b),図2(c))と称す。
【0061】
詳細は後述するが、これらリボン5で検知されるX方向の検知位置およびZ方向の押圧力と、操作バー6で検知されるY方向の操作量とに対して、それぞれ異なる種類の楽音効果が割り当てられ、X方向の検知位置、Z方向の押圧力またはY方向の操作量に応じて、それぞれの楽音効果の度合が設定される。
【0062】
従来の肩掛けキーボードにおいても、鍵盤とX方向の検知位置のみが検知可能なリボンコントローラとが配設され、演奏者Hは、肩掛けキーボードに対して、右手の鍵盤に対する操作で発音指示しつつ、左手で指定されるリボンコントローラの位置に応じて楽音効果を制御することで、あたかもギターで演奏しているかのような演出をしていた。しかしながら、かかる肩掛けキーボードのリボンコントローラは、X方向の検知位置のみが検知可能なので、ギターの弦を押さえる指の力を変化させたり、ギターの弦を指で叩きつけるように強く押さえたりするように、リボンコントローラに押圧力を加えても楽音効果の度合を変化させることができなかった。
【0063】
これに対して、本実施形態における肩掛けキーボード1のリボン5は、Z方向の押圧力が検知可能であり、かかるZ方向の押圧力に応じた楽音効果の度合が設定される。従って、ギターの弦を押さえる指の力を変化させたり、ギターの弦を指で叩きつけるように強く押さえたりするようにリボン5に対してZ方向の押圧力を加えると、その押圧力に応じて楽音効果の度合を変化させることができる。即ち肩掛けキーボード1によって、ギターの演奏をより好適に演出できる。
【0064】
また、リボン5と操作バー6とが隣り合って設けられるので、演奏者Hの手の移動を最小限に抑えながらも、3の異なる楽音効果の度合を変更できる。更に図2に示すように、リボン5におけるX方向およびZ方向と、操作バー6におけるY方向とは、それぞれ直交した方向であるので、3の異なる種類の楽音効果の度合を変化させるための、X方向の検知位置を指定する方向と、Z方向の押圧力が負荷される方向と、Y方向の操作量を指示する方向とがそれぞれ直交している。これにより、3の楽音効果の度合を設定する際に、演奏者Hによる操作ミスによって、演奏者Hの所望しない種類の楽音効果の度合が変更される事態を抑制できる。
【0065】
次に、図10を参照して肩掛けキーボード1の機能を説明する。図10は、肩掛けキーボード1の機能ブロック図である。図10に示すように、肩掛けキーボード1は、入力手段20と、楽音制御手段21と、検知手段22と、操作子23と、楽音効果変化手段24と、態様情報記憶手段25と、態様選択手段26と、音色選択手段27とを有している。
【0066】
入力手段20は、演奏者Hからの1の入力によって複数の音色の発音指示を肩掛けキーボード1へ入力する機能であり、鍵盤2(鍵2a)によって実現される。楽音制御手段21は、入力手段20から入力された発音指示に基づいた複数の音色のそれぞれに対して楽音効果を適用して出力する機能であり、図11で後述のCPU11によって実現される。
【0067】
検知手段22は、検知面を有し、検知面上の検知位置と、検知面上に負荷される押圧力とを検知する機能であり、リボン5によって実現される。操作子23は、演奏者Hからの操作を入力する機能であり、操作バー6によって実現される。楽音効果変化手段24は、楽音制御手段21によって音色毎に適用される楽音効果の度合を、検知手段22で検知された検知位置、押圧力や、操作子23の操作に応じて、音色毎に変化させる機能であり、CPU11によって実現される。本実施形態では、予め検知手段22の検知位置、押圧力または操作子23の操作量に対して、それぞれ異なる種類の楽音効果が割り当てられ、楽音効果変化手段24は、検知手段22の検知位置、押圧力または操作子23の操作量に応じて、それぞれに割り当てられている楽音効果の度合を音色毎に変化させる。
【0068】
態様情報記憶手段25は、検知手段22で検知された検知位置に応じて、音色毎に適用される楽音効果の度合の変化を表す、態様情報を記憶する機能であり、図11図12(a)で後述のX方向態様情報テーブル11bによって実現される。態様選択手段26は、その態様情報記憶手段25に記憶される態様情報を選択する機能であり、CPU11によって実現される。音色選択手段27は、入力手段20の1の入力による発音指示の対象となる複数の音色を選択する機能であり、CPU11によって実現される。
【0069】
以上より、楽音制御手段21によって、音色選択手段27で選択された複数の音色であって、入力手段20の1の入力による発音指示に基づいた複数の音色に対して、楽音効果を適用したものが出力される。その際、楽音効果変化手段24は、検知手段22の検知位置、押圧力または操作子23の操作量に応じて、それぞれに割り当てられている楽音効果の度合を音色毎に変化させる。これにより、音色毎に楽音効果の度合の変化に富んだ、表現豊かな演奏が実現できる。
【0070】
特に、検知手段22で検知された検知位置に応じた音色毎の楽音効果の度合の変化は、態様情報記憶手段25に記憶され、態様選択手段26によって選択された態様情報に基づいて行われる。これにより、演奏者Hの好みや、演奏する曲のジャンルや曲調に適した態様情報によって、楽音効果の度合を好適に変化させることができる。
【0071】
次に図11図13を参照して、肩掛けキーボード1の電気的構成を説明する。図11は肩掛けキーボード1の電気的構成を示すブロック図である。肩掛けキーボード1は、CPU10と、フラッシュROM11と、RAM12と、鍵盤2と、設定キー3と、リボン5と、操作バー6と、音源13と、Digital Signal Processor14(以下「DSP14」と称す)とを有し、それぞれバスライン15を介して接続される。DSP14にはデジタルアナログコンバータ(DAC)16が接続され、そのDAC16にはアンプ17が接続され、アンプ17にはスピーカ18が接続される。
【0072】
CPU10は、バスライン15により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM11は書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム11aと、X方向態様情報テーブル11bと、YZ方向態様情報テーブル11cとが設けられる。CPU10によって制御プログラム11aが実行されると、図14のメイン処理が実行される。X方向態様情報テーブル11bは、リボン5のX方向の検知位置に割り当てられている、楽音効果の度合の変化の態様が記憶されるデータテーブルである。図12図13を参照して、X方向態様情報テーブル11bを説明する。
【0073】
図12(a)は、X方向態様情報テーブル11bを模式的に示した図である。X方向態様情報テーブル11bは、楽音効果の度合の変化の態様の種類を表す態様レベルと、鍵盤2の1の鍵2a(図1参照)の発音対象となる音色の数のそれぞれとに対応付けられた態様情報が記憶される。本実施形態では、1の鍵2aの発音対象となる音色の数は最大で4とされるので、同時に発音する音色の数である2~4の発音数のそれぞれに対して態様情報が記憶される。X方向態様情報テーブル11bが、図10における態様情報記憶手段25の一例である。
【0074】
図12(a)に示す通り、態様レベルが態様レベル1としては、発音数が4の態様情報である態様情報L14と、発音数が3の態様情報である態様情報L13と、発音数が2の態様情報である態様情報L12とがそれぞれX方向態様情報テーブル11bに記憶される。同様に、態様レベル2以降の態様情報も、X方向態様情報テーブル11bに記憶される。ここで、図12(b)を参照して、態様情報L14を例にして、X方向態様情報テーブル11bに記憶される態様情報を説明する。
【0075】
図12(b)は、X方向態様情報テーブル11bに記憶される態様情報L14を模式的に示した図である。態様情報は、リボン5のX方向の検知位置に基づく入力値に応じた、4の音色である音色A~音色Dのそれぞれに対する楽音効果の度合が記憶されるデータである。態様情報L14には、リボン5のX方向の検知位置に基づく入力値に応じた、4の音色である音色A~音色Dのそれぞれに対する楽音効果の度合が記憶される。
【0076】
入力値は、リボン5で検知されるX方向の検知位置を、0~127に換算した値である。具体的に入力値は、図2(a)におけるリボン5の表面パネル81のX方向における一端(例えば、正面視左端)の位置が「0」、他端の位置が「127」とされ、表面パネル81のX方向側の位置における一端から他端までを等間隔に128分割し、それぞれの検知位置を0~127の整数で表現される。即ち、演奏者Hの指で指定された表面パネル81のX方向の検知位置に該当する、0~127の値が入力値として取得される。
【0077】
入力値に対する楽音効果の度合も「0」を最小値、「127」を最大値とし、これらを128等分した整数とされる。即ち、楽音効果の度合が0の場合は、割り当てられている楽音効果が適用されない状態である一方で、楽音効果の度合が127の場合は、割り当てられている楽音効果が最大限に適用される状態である。
【0078】
そして、リボン5の表面パネル81のX方向の検知位置に基づく入力値に該当する、音色A~音色Dのそれぞれに対する楽音効果の度合が態様情報L14から取得され、表面パネル81のX方向に割り当てられている楽音効果に適用される。例えば、態様情報L14が指定され、表面パネル81のX方向に楽音効果として「音量」が割り当てられていて、表面パネル81のX方向の検知位置に基づく入力値が「41」である場合は、図12(b)に示すように、音色Aに対する「音量」として「127」が設定され、音色Bに対する「音量」として「127」が設定され、音色Bに対する「音量」として「3」が設定され、音色Dに対する「音量」として「0」が設定される。
【0079】
本実施形態では、態様情報L14等に記憶される楽音効果の度合は、楽音効果が「音量」である場合のみに適用されるのものではなく、ピッチ変化やレゾナンス、カットオフ等の他の楽音効果の度合の設定に対しても、共通して適用される。これにより、楽音効果の種類に対して、それぞれ態様情報L14等を用意する必要がないので、メモリ資源を節約できる。図12(a)のX方向態様情報テーブル11bには、このような態様情報L14等が、楽音効果の度合の変化の態様の種類を表す態様レベル毎に記憶される。ここで、楽音効果の度合の変化の態様の種類について、図13を参照して説明する。
【0080】
図13(a)~図13(f)は、楽音効果の度合の変化の態様をそれぞれ示したグラフである。図13(a)~図13(f)において、横軸は入力値、縦軸は入力値に対する楽音効果の度合がそれぞれ指定されている。
【0081】
図13(a)~図13(c)は、それぞれ図12(a)の態様レベル1における態様情報L14~L12に対する楽音効果の度合の変化の態様を示している。4の音色が発音される態様情報L14においては、音色Aは、入力値0~127に亘って楽音効果の度合が最大値の127を保ち、音色Bは、入力値が0~40にかけて楽音効果の度合が0~127まで一次関数的に増加し、入力値が41以降は、楽音効果の度合は127を保つ。音色Cは、入力値が0~40までは楽音効果の度合が0である一方で、入力値が41~80にかけて楽音効果の度合が0~127まで一次関数的に増加し、入力値が81以降は、楽音効果の度合が127を保つ。音色Dは、入力値が0~80までは楽音効果の度合が0である一方で、入力値が81~127にかけて楽音効果の度合が0~127まで一次関数的に増加する。
【0082】
態様情報L14において、このように楽音効果の度合を変化させることで、入力値が0の場合は、音色Aのみに対してX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用され、入力値が1~40の場合は、音色A,Bのみに対してX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用され、入力値が41~80の場合は、音色A,B,Cに対してX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用され、入力値が81以降の場合は、音色A~Dの全てに対してX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用される。よって、演奏者Hがリボン5の表面パネル81へ指定するX方向の検知位置によって、X方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用される音色A~Dの数を、迅速に切り替えることができる。
【0083】
更に、演奏者Hが表面パネル81のX方向の一端側から他端側へ(即ち入力値を0から127へ)、指を滑らせる等して連続的に指定すれば、音色A~Dを順番に重ね合わせるように楽音効果を適用できる。加えて、入力値の変化に応じて音色A~Dの楽音効果の度合が一次関数的に増加するので、音色A~Dの楽音効果の度合のうち少なくとも1は、その楽音効果の度合の変化が常に右上がりとされる。よって、表面パネル81のX方向の一端側から他端側へ連続的に変化させた場合に、音色A~Dのいずれかの楽音効果の度合が常に大きくなる。これにより、楽音効果によるダイナミック感(盛り上がり感)に富んだ楽音を発音できる。
【0084】
一方で、演奏者Hが表面パネル81のX方向の他端側から一端側へ(即ち入力値を127から0へ)連続的に指定すれば、適用されている音色A~Dの楽音効果を順番に解除することができる。よって、表面パネル81を連続的に指定することで、音色A~Dの楽音効果の度合の変化に富んだ、表現豊かな演奏が実現できる。
【0085】
また、同一の態様レベル1における、図13(b)に示す3の音色が発音される態様情報L13や、図13(c)に示す2の音色が発音される態様情報L12も、上述した態様情報L14に準じた、音色A~C又は音色A,Bに対する楽音効果の度合の変化がされる。よって、同一の態様レベル1において、演奏中に1の鍵2aの発音対象となる音色の数を、4から3や2に減少させても、楽音効果の度合の変化に対する演奏者Hや聴衆の違和感を最小限に抑えることができる。
【0086】
次に図13(d)~図13(f)を参照して、態様レベル1とは異なる態様レベルである、態様レベル2を説明する。図13(d)~図13(f)は、それぞれ図12(a)の態様レベル2における態様情報L24~L22に対する楽音効果の度合の変化の態様を示している。
【0087】
図13(d)に示すように、4の音色が発音される態様情報L24においては、音色Aは、入力値が0~40にかけて楽音効果の度合が127~0に一次関数的に減少し、入力値が41以降は、楽音効果の度合は0を保つ。音色Bは、入力値が0~40にかけて楽音効果の度合が0~127に一次関数的に増加し、入力値が41~80にかけて楽音効果の度合が127~0に一次関数的に減少し、入力値が81以降は、楽音効果の度合は0を保つ。音色Cは、入力値が0~40までは楽音効果の度合は0を保ち、入力値が41~80にかけて0~127に一次関数的に増加し、入力値が80~127にかけて楽音効果の度合が127~0に一次関数的に減少する。音色Dは、入力値が0~80までは楽音効果の度合は0を保ち、入力値が81~127にかけて楽音効果の度合は0~127に一次関数的に増加する。
【0088】
態様情報L24において、このように楽音効果の度合を変化させることで、入力値が0,40,80,127の場合は、音色A,B,C,Dのうちの1音色のみに対する楽音効果の度合が最大値127となり、他の音色に対する楽音効果の度合が0となる。従って、入力値が0,40,80,127に該当するX方向の検知位置を指定することで、1の音色に対してのみ、X方向の検知位置に割り当てられている楽音効果を適用することができる。
【0089】
また、入力値が1~40の場合は、音色A,Bのみに対してX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用され、入力値が41~80の場合は、音色B,Cに対してX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用され、入力値が81以降の場合は、音色C,Dに対してX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果が適用される。即ち、4の音色のうち2の音色のみに対する楽音効果の度合を、きめ細かく設定することができる。
【0090】
また例えば、X方向の検知位置に対する楽音効果に音量変化を設定し、音色Aにクリアなギター音を設定し、音色B~Dには、音色B→音色C→音色Dとなる順にディストーションが強い音色を設定しておく。演奏者Hが表面パネル81のX方向の一端側から他端側へ連続的に指定すれば、発音される楽音のディストーション具合を徐々に強くでき、一方で表面パネル81のX方向の位置を離散的に指定すれば、その位置に相当するディストーション具合の楽音を発音できる。
【0091】
また、態様レベル1同様に、図13(e)に示す3の音色が発音される態様情報L23や、図13(f)に示す2の音色が発音される態様情報L22も、上述した態様情報L24に準じた音色A~C又は音色A,Bに対する楽音効果の度合の変化がされる。
【0092】
このように、X方向態様情報テーブル11bには、複数の態様レベルの態様情報が記憶されるので、複数の態様レベルの中から、演奏者Hの好みや、演奏する曲のジャンルや曲調に適した態様レベルを選択し、楽音効果の度合を好適に変化させることができる。また、演奏中に態様レベルを切り替えることで、楽音効果の度合の変化を様々に切り替えることができるので、表現豊かな演奏が実現できる。
【0093】
図11に戻る。YZ方向態様情報テーブル11cは、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力に割り当てられた、楽音効果の度合の変化の態様が記憶されるデータテーブルである。図12(c),図12(d)を参照して、YZ方向態様情報テーブル11cを説明する。
【0094】
図12(c)は、YZ方向態様情報テーブル11cを模式的に示した図であり、図12(d)は、YZ方向態様情報テーブル11cに記憶される態様情報L4を模式的に示した図である。YZ方向態様情報テーブル11cは、鍵盤2の1の鍵2aの発音対象となる音色の数に応じて記憶され、発音数が4の態様情報としては、態様情報L4がYZ方向態様情報テーブル11cに記憶され、同様に、発音数が3の態様情報としては、態様情報L3が、発音数が2の態様情報としては、態様情報L2がそれぞれYZ方向態様情報テーブル11cに記憶される。YZ方向態様情報テーブル11cには、1の態様レベルの態様情報のみが記憶される。
【0095】
図12(d)に示すように、態様情報L14には、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力に基づいた入力値に応じた、4の音色である音色A~音色Dのそれぞれに対する楽音効果の度合が記憶される。ここでの入力値も、操作バー6のY方向の操作量やリボン5のZ方向の押圧力を、0~127に換算した値である。
【0096】
本実施形態では、操作バー6のY方向の操作量に対する入力値は、操作バー6を演奏者Hが離した状態が「0」、操作バー6を最大限にリボン5側へ倒した状態が「127」とされ、かかる操作量を128等分した整数で表現される。また、リボン5のZ方向の押圧力に対する入力値は、押圧力が負荷されていない状態が「0」、リボン5で検知可能な最大の押圧力がかかった状態が「127」とされ、かかる押圧力を128等分した整数で表現される。
【0097】
図12(d)に示すように、態様情報L4には、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力による入力値0~127に対して、音色A~Dの楽音効果の度合が一次関数的に0~127に増加する。また、図示はしないが、態様情報L3や、態様情報L2も、上述した態様情報L4に準じた、音色A~C又は音色A,Bに対する楽音効果の度合の変化がされる。
【0098】
このように、本実施形態では、YZ方向態様情報テーブル11cには、1の態様レベルの態様情報のみが記憶され、その態様情報も、入力値に対して音色A~Dの楽音効果の度合が一次関数的に増加する、所謂シンプルなものが設定される。これは、リボン5の表面パネル81上に対するX方向の検知位置と比較して、操作バーのY方向の操作量や表面パネル81のZ方向への押圧力は、演奏者Hにとって、どれくらいの操作量や押圧力が加えられたかが把握し辛く、その上で、操作バー6のY方向の操作量や表面パネル81のZ方向に対して、複数の態様情報により複雑な楽音効果の度合の変化を行うと、その変化の態様が更に把握し辛くなるからである。
【0099】
そこで、1のシンプルな態様情報によって、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力に割り当てられている楽音効果の度合を変化させることで、演奏者Hは、楽音効果の度合を変化が把握しやすくなるので、肩掛けキーボード1の操作性を向上させることができる。一方で、複雑な度合の変化をさせたい楽音効果に対しては、リボン5のX方向の検知位置に割り当てれば、上述した態様情報L14等のように、音色A~Dに対してきめ細やかに楽音効果の度合を変更できる。また、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量およびリボン5のZ方向の押圧力に割り当てる楽音効果を適宜切り替えることで、演奏者Hの好みに応じて楽音効果の度合の変化を柔軟に切り替えることができる。
【0100】
図11に戻る。RAM12は、CPU10が制御プログラム11a等のプログラム実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するメモリであり、上述したリボン5の表面パネル81からの検知位置から換算された入力値が記憶されるX方向入力値メモリ12aと、操作バー6のY方向の操作量から換算された入力値が記憶されるY方向入力値メモリ12bと、表面パネル81への押圧力から換算された入力値が記憶されるZ方向入力値メモリ12cと、X方向態様情報テーブル11bから演奏者Hによって選択された態様情報が記憶されるX方向態様情報メモリ12dと、YZ方向態様情報テーブル11cから演奏者Hによって選択された態様情報が記憶されるYZ方向態様情報メモリ12eとを有している。
【0101】
音源13は、CPU10から入力される演奏情報に応じた波形データを出力する装置である。DSP14は、音源13から入力された波形データを演算処理するための演算装置である。DAC16は、DSP14から入力された波形データを、アナログ波形データに変換する変換装置である。アンプ17は、該DAC16から出力されたアナログ波形データを、所定の利得で増幅する増幅装置であり、スピーカ18は、アンプ17で増幅されたアナログ波形データを楽音として放音(出力)する出力装置である。
【0102】
次に、図14図15を参照して、CPU10で実行されるメイン処理について説明する。図14は、メイン処理のフローチャートである。メイン処理は、肩掛けキーボード1の電源投入時に実行される。
【0103】
メイン処理では、まず設定キー3(図1図11参照)によって、音色または態様レベルの選択操作がされたかを確認する(S1)。具体的には、設定キー3を介して演奏者Hによって、肩掛けキーボード1が有している音色の中から1の鍵2aの押鍵によって発音される最大4の音色、または態様レベルが選択されたかを確認する。
【0104】
S1の処理において、音色または態様レベルの選択操作がされた場合は(S1:Yes)、X方向態様情報テーブル11bから、選択された音色の数と態様レベルとに該当する態様情報を取得し、X方向態様情報メモリ12dに保存し(S2)、Y方向態様情報テーブル11cから、設定された音色の数とに該当する態様情報を取得し、Y方向態様情報メモリ12eに保存する(S3)。この際に、選択された音色のうち、どの音色が音色A~Dに該当するのかも同時に設定される。なお、S1の処理を実行するCPU11が、図10における音色選択手段27の一例であり、S2の処理を実行するCPU11が、図10における態様選択手段26の一例である。
【0105】
そして、S3の処理の後、音源13に対して、音色が変更された旨の指示を出力する(S4)。一方、S1の処理において、音色選択操作がされない場合は(S1:No)、S2~S4の処理をスキップする。
【0106】
S1又はS4の処理の後、設定キー3によって、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力に割り当てられている楽音効果が変更されたかを確認する(S5)。割り当てられている楽音効果が変更された場合は(S5:Yes)、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力に対して、それぞれ異なる1の楽音効果を割り当てる(S6)。これによって、同一種類の楽音効果が、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力に対して、割り当てられるのを防止できるので、肩掛けキーボード1の演奏に対する違和感を抑制できる。一方で、S5の処理において、割り当てられている楽音効果が変更されない場合は(S5:No)、S6の処理をスキップする。
【0107】
S5又はS6の処理の後、リボン5からX方向の検知位置を取得し、そのX方向の検知位置を入力値に換算したものをX方向入力値メモリ12aに保存し(S7)、操作バー6のY方向の操作量を取得し、そのY方向の操作量を入力値に換算したものをY方向入力値メモリ12bに保存し(S8)、リボン5からZ方向の押圧力を取得して、そのZ方向の押圧力入力値に換算したものをZ方向入力値メモリ12cに保存する(S9)。
【0108】
S9の処理の後、楽音生成処理を実行する(S10)。ここで図15を参照して、楽音生成処理を説明する。
【0109】
図15は、楽音生成処理のフローチャートである。楽音生成処理はまず、鍵盤2の鍵2aがオンされているかを確認する(S11)。具体的には、鍵盤2の鍵2aの全てに対して、1つずつ鍵2aがオンされているかを確認する。以下のS12からS18の処理においても、1の鍵2aに対する発音や消音、楽音効果の度合の変更処理を行う。
【0110】
S11の処理において、鍵盤2の鍵2aがオンされている場合は(S11:Yes)、鍵盤2の鍵2aがオフからオンに変更されたかを確認する(S12)。具体的には、同一のある1の鍵2aに対して、前回の楽音生成処理ではオフだったものが、今回の楽音生成処理でオンになったかを確認する。
【0111】
鍵盤2の鍵2aがオフからオンに変更された場合(S12:Yes)、図14のS1,S4の処理で選択された音色を鍵2aに該当する音高によって、発音する指示を音源13に行う(S13)。この際に、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量およびリボン5のZ方向の押圧力に割り当てられている楽音効果も、かかる音色に適用されて出力される。かかるS13の処理を実行するCPU11が、図10における楽音制御手段21の一例である。一方で、鍵盤2の鍵2aがオフからオンに変更されていない場合は、既に該当する鍵2aの発音指示が出力されているので、S13の処理をスキップする。
【0112】
S12又はS13の処理の後、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量およびリボン5のZ方向の押圧力に割り当てられている、それぞれの楽音効果の度合が変更される。具体的には、S12又はS13の処理の後、X方向入力値メモリ12aに記憶されている入力値に該当する、X方向態様情報メモリ12dの態様情報におけるそれぞれの音色の楽音効果の度合を取得し、それぞれリボン5のX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果の度合に適用する(S14)。かかるS14の処理を実行するCPU11が、図10における楽音効果変化手段24の一例である。
【0113】
S14の処理の後、操作バー6のY方向の操作量に対する入力値に該当する、YZ方向態様情報メモリ12dの態様情報におけるそれぞれの音色の楽音効果の度合を取得し、それぞれ操作バー6のY方向の操作量に割り当てられている楽音効果の度合に適用し(S15)、リボン5のZ方向の押圧力に対する入力値に該当する、YZ方向態様情報メモリ12dの態様情報におけるそれぞれの音色の楽音効果の度合を取得し、それぞれリボン5のZ方向の押圧力に割り当てられている楽音効果の度合に適用する(S16)。
【0114】
即ち、S14~S16の処理によって、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量およびリボン5のZ方向の押圧力に割り当てられている楽音効果の度合を、それぞれの検知位置、Y方向の操作量および押圧力に基づいた入力値に基づいて変化させることができる。特に、リボン5のX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果には、図13で上述したように、複数の態様レベルの態様情報が適用できる。従って、演奏中に適宜態様レベルを切り替えることで、リボン5のX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果の度合の変化を様々とできるので、これによって、楽音効果の度合の単調さが抑制された、表現豊かな演奏をすることができる。
【0115】
S11の処理において、鍵盤2の鍵2aがオフされている場合は(S11:No)、鍵盤2の鍵2aがオンからオフに変更されたかを確認する(S17)。具体的には、同一のある1の鍵2aに対して、前回の楽音生成処理ではオンだったものが、今回の楽音生成処理でオフになったかを確認する。
【0116】
鍵盤2の鍵2aがオンからオフに変更された場合(S17:Yes)、鍵2aに該当する音色を消音する指示を音源13に行う(S18)。一方で、鍵盤2の鍵2aがオンからオフに変更されていない場合は、既に該当する鍵2aの消音指示が出力されているので、S18の処理をスキップする。
【0117】
S16~S18の処理の後、鍵盤2の全ての鍵2aに対してS11~S18の処理が完了したかを確認し(S19)、処理が完了していない場合は、これまでS11~S18の処理が行われてきた鍵2aとは、別の鍵2aに対して、S11~S18の処理を行う。一方で、鍵盤2の全ての鍵2aに対してS11~S18の処理が完了した場合は(S19:Yes)、楽音生成処理を終了し、図14のメイン処理へ戻る。
【0118】
図14に戻る。S10の楽音生成処理が終了した後は、S1以下の処理を繰り返す。
【0119】
以上、上記実施形態に基づき説明したが、種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0120】
上記実施形態では、電子楽器として肩掛けキーボード1を例示した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、電子オルガンや電子ピアノ等、発音される音色に、複数の楽音効果を適用する他の電子楽器に適用しても良い。その場合、リボン5と操作バー6とを電子楽器に設ける構成とすれば良い。
【0121】
上記実施形態では、X方向態様情報テーブル11b及びYZ方向態様情報テーブル11cに記憶される態様情報によって、全ての楽音効果の度合が変化する構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、楽音効果に異なる態様情報によって、楽音効果の度合を変化させても良い。その場合は、楽音効果毎にX方向態様情報テーブル11b及びYZ方向態様情報テーブル11cを設け、X方向の検知位置、Y方向の操作量またはZ方向の押圧力に割り当てられている楽音効果に該当する、態様情報をそれぞれのX方向態様情報テーブル11b及びYZ方向態様情報テーブル11cから取得すれば良い。
【0122】
上記実施形態では、図14のS6の処理で、リボン5のX方向の検知位置に1の楽音効果が割り当てられ、図15のS14の処理によって、X方向態様情報メモリ12dの態様情報における音色A~Dそれぞれの楽音効果の度合を取得し、それぞれリボン5のX方向の検知位置に割り当てられている楽音効果の度合に適用した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、リボン5のX方向の検知位置に対して複数の楽音効果が割り当てられ、更にその複数の楽音効果の中から音色A~Dのそれぞれに適用される楽音効果を割り当て、X方向態様情報メモリ12dの態様情報における音色A~Dそれぞれの楽音効果の度合を取得し、それぞれ音色A~Dに割り当てられている楽音効果の度合に適用しても良い。
【0123】
例えば、リボン5のX方向の検知位置に対して音量変化、ピッチ変化、カットオフ、及びレゾナンスの各楽音効果を割り当て、更にこれら楽音効果から、音色Aに対しては音量変化を、音色Bに対してはピッチ変化を、音色Cに対してはカットオフを、音色Dに対してはレゾナンスをそれぞれ割り当て、X方向態様情報メモリ12dの態様情報における音色A~Dそれぞれの楽音効果の度合を取得し、取得された音色Aに対する楽音効果の度合を、音色Aに割り当てられた音量変化の度合に適用し、同様に取得された音色B~Dに対する楽音効果の度合を、音色B~Dに割り当てられたピッチ変化、カットオフ、レゾナンスのそれぞれの度合に適用すれば良い。
【0124】
このように構成することで、リボン5のX方向の検知位置に応じて、音色A~Dのそれぞれに割り当てられた複数の楽音効果の度合を変化させることができるので、自由度の高い演奏を実現できる。また、複数の楽音効果の度合が同一の態様情報によって変化されるので、リボン5のX方向の検知位置に応じて、複数の楽音効果の度合がそれぞれ類似した態様で変化される。これにより、異なった複数の楽音効果の変化に対して規則性を持たせた、表現豊かな演奏を実現できる。
【0125】
上記実施形態では、図14のS6の処理で、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量またはリボン5のZ方向の押圧力に対して、それぞれ異なる1の楽音効果を割り当てた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、リボン5のX方向の検知位置、操作バー6のY方向の操作量およびリボン5のZ方向の押圧力の全てに同一の楽音効果を割り当てても良い。また、リボン5のX方向の検知位置および操作バー6のY方向の操作量には、同一の楽音効果を割り当て、リボン5のZ方向の押圧力には、これとは異なる楽音効果を割り当てても良いし、リボン5のX方向の検知位置およびリボン5のZ方向の押圧力には、同一の楽音効果を割り当て、操作バー6のY方向の操作量には、これとは異なる楽音効果を割り当てても良いし、操作バー6のY方向の操作量およびリボン5のZ方向の押圧力には、同一の楽音効果を割り当て、リボン5のX方向の検知位置には、これとは異なる楽音効果を割り当てても良い。
【0126】
例えば、リボン5のX方向の検知位置および操作バー6のY方向の操作量の楽音効果にピッチ変化を割り当て、リボン5のZ方向の押圧力の楽音効果にレゾナンスを割り当てる。そして演奏者Hは、左手の人差し指で操作バー6を操作してピッチを連続的に変化させた後に、左手の薬指でリボン5の位置を指定することでピッチを離散的に変化させつつ、更に、左手の薬指のリボン5への押圧力に応じたレゾナンスのニュアンスで発音を制御する演奏を実現ができる。よって、実際のギターによる演奏において、ピッキングした弦について、押弦している左手の人指し指でその弦を引っ張ることで音のピッチを変える、所謂チョーキング奏法をした後に続けて、その押弦している同一弦上の別フレットを左手の薬指で強く押さえて(叩きつけるようにして)発音させる、所謂ハンマリングオン奏法をするといったギター演奏独自の演奏表現を、実際のギターと略同様の左手の操作によって実現できる。
【0127】
上記実施形態では、X方向の検知位置に対する楽音効果には、X方向態様情報テーブル11bの態様レベルに応じた態様情報を設定し、Y方向の操作量およびZ方向の押圧力に対する楽音効果には、YZ方向態様情報テーブル11cによる態様情報を設定する構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、Y方向の操作量およびZ方向の押圧力に対する楽音効果にX方向態様情報テーブル11bの態様レベルに応じた態様情報を設定しても良いし、X方向の検知位置に対する楽音効果にYZ方向態様情報テーブル11cによる態様情報を設定しても良い。
【0128】
例えば、Z方向の押圧力に対する楽音効果にX方向態様情報テーブル11bの態様レベルに応じた態様情報を設定し、態様レベルを態様レベル2へ設定し、音色A,音色Bの2の音色のみに設定し、更にZ方向の押圧力に対する楽音効果を音量変化に設定する。これにより、音色A,音色Bの音量を、Z方向の押圧力に応じた態様情報L22(図13(f)参照)に従って変化させることができる。更に、音色Aをブラッシング奏法で弾いたギターの音色に、音色Bを開放弦で弾いたギターにそれぞれ設定すれば、開放弦によるギター音を発音させたい場合は、リボン5を強く押さえてZ方向の押圧力を大きくすれば良く、一方でブラッシング奏法によるギター音を発音させたい場合は、リボン5を軽く押さえてリボン5のZ方向の押圧力を小さくすれば良い。更にリボン5を演奏者Hの左手で操作すれば、実際のギターと略同様の左手の操作によって、開放弦による演奏とブラッシング奏法による演奏とを弾き分けることができる。
【0129】
上記実施形態では、図12図13において、態様情報は、入力値に応じて一次関数的に増加または減少する構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、態様情報は、入力値に応じて曲線状、例えば、2次関数、3次関数等の多項式で表される関数的、あるいは指数関数的に増加または減少しても良いし、入力値に対して階段状に、例えば、ステップ関数的に増加または減少しても良い。また、態様情報は、入力値に応じて一様に、一方向的に増加または減少するものに限られるものではなく、入力値に応じて、ジグザグ状に増加または減少しても良いし、入力値に基づかずに、全くランダムに態様情報が変化する構成としても良い。
【0130】
上記実施形態では、X方向の検知位置、Y方向の操作量およびZ方向の押圧力によって、それぞれ割り当てられている楽音効果の度合を変更する構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、X方向の検知位置、Y方向の操作量およびZ方向の押圧力に応じて、他の設定を変更する構成としても良い。例えば、Z方向の押圧力に応じて、X方向の検知位置やY方向の操作量に割り当てられている楽音効果の種類を変更しても良いし、Y方向の操作量に応じて、鍵2aに割り当てられている音色の種類や数を変更しても良い。
【0131】
上記実施形態では、肩掛けキーボード1をリボン5と操作バー6と設ける構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、操作バー6を省略して、肩掛けキーボード1にリボン5のみを設ける構成としても良いし、肩掛けキーボード1にリボン5を省略して、肩掛けキーボード1に操作バー6のみを設ける構成としても良い。また、1の肩掛けキーボード1に複数のリボン5又は操作バー6を設ける構成としても良い。その場合は、それぞれのリボン5のX方向の検知位置およびZ方向の押圧力や、操作バー6のY方向の操作量に対して、異なる楽音効果を割り当てれば良い。更に、複数のリボン5を設ける場合は、それぞれのX方向の検知位置に対して、異なる態様レベルを設定しても良い。
【0132】
上記実施形態では、1の鍵2aの発音対象となる音色の数は最大で4とする構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、1の鍵2aの発音対象となる音色の最大数は5以上でも、3以下でも良い。その場合、X方向態様情報テーブル11b及びYZ方向態様情報テーブル11cに記憶される、図12(b),図12(d)の態様情報L14,L4等には、1の鍵2aの発音対象となる音色の最大数分の楽音効果の度合を記憶すれば良い。
【0133】
上記実施形態に挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 肩掛けキーボード(電子楽器)
2 鍵盤(入力手段)
5 リボンコントローラ(検知手段)
6 モジュレーションバー(操作子)
11b X方向態様情報テーブル(態様情報記憶手段)
20 入力手段
21,S13 楽音制御手段
22 検知手段
23 操作子
24,S14 楽音効果変化手段
25 態様情報記憶手段
26,S2 態様選択手段
27,S1 音色選択手段
81 表面パネル(検知面)
H 演奏者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15