(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】袋体および袋体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2018181787
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018094567
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸▲高▼ 匠
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119449(WO,A1)
【文献】特表2013-501688(JP,A)
【文献】特開2017-128391(JP,A)
【文献】特開2011-173628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 30/00-33/38
B65D 67/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも互いに対向する第1面および第2面を有し、前記第1面および前記第2面の間に収納空間が形成される袋本体と、
前記第1面と前記第2面との間に配置されて前記収納空間の一辺を画定し、第1の樹脂組成物で形成される第1の部分、および前記第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物で形成される第2の部分を断面形状に含むテープ部材と
を備え、
前記第1の部分は、前記テープ部材の長手方向の第1の区間で前記第1面および前記第2面の両方に接合され、前記長手方向の第2の区間で前記第2面のみに接合され、
前記第2の部分は、前記第2の区間で前記第1面に接合され、
前記第1の樹脂組成物は融点が160℃のホモポリプロピレンであり、前記第2の樹脂組成物は融点が109℃の低密度ポリエチレンと融点が137℃のポリプロピレンとの混合物である袋体。
【請求項2】
少なくとも互いに対向する第1面および第2面を有し、前記第1面および前記第2面の間に収納空間が形成される袋本体と、
前記第1面と前記第2面との間に配置されて前記収納空間の一辺を画定し、第1の樹脂組成物で形成される第1の部分、および前記第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物で形成される第2の部分を断面形状に含むテープ部材と
を備え、
前記第1の部分は、前記テープ部材の長手方向の第1の区間で前記第1面および前記第2面の両方に接合され、前記長手方向の第2の区間で前記第2面のみに接合され、
前記第2の部分は、前記第2の区間で前記第1面に接合され、
前記第1の樹脂組成物は
融点が160℃のホモポリプロピレンであり、前記第2の樹脂組成物は
融点が123℃の直鎖状低密度ポリエチレンと
融点が140℃のポリプロピレンとの混合物である袋体。
【請求項3】
少なくとも互いに対向する第1面および第2面を有し、前記第1面および前記第2面の間に収納空間が形成される袋本体と、
前記第1面と前記第2面との間に配置されて前記収納空間の一辺を画定し、第1の樹脂組成物で形成される第1の部分、および前記第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物で形成される第2の部分を断面形状に含むテープ部材と
を備え、
前記第1の部分は、前記テープ部材の長手方向の第1の区間で前記第1面および前記第2面の両方に接合され、前記長手方向の第2の区間で前記第2面のみに接合され、
前記第2の部分は、前記第2の区間で前記第1面に接合され、
前記第1の樹脂組成物はランダムポリプロピレンであり、前記第2の樹脂組成物はm-直鎖状低密度ポリエチレンである袋体。
【請求項4】
前記第2の部分と前記第1面との間の接合強度が、前記第1の部分と前記第1面との間の接合強度よりも低い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の袋体。
【請求項5】
前記第1面のシーラント層を形成する樹脂組成物との関係において、前記第1の樹脂組成物は前記第2の樹脂組成物よりも相溶性が高い、請求項4に記載の袋体。
【請求項6】
前記第1の樹脂組成物の融点は、前記第2の樹脂組成物の融点よりも10℃以上高い、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の袋体。
【請求項7】
少なくとも互いに対向する第1面および第2面を有し、前記第1面および前記第2面の間に収納空間が形成される袋本体と、
前記第1面と前記第2面との間に配置されて前記収納空間の一辺を画定し、第1の樹脂組成物で形成される第1の部分、および前記第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物で形成される第2の部分を断面形状に含むテープ部材と
を備え、
前記第1の部分は、前記テープ部材の長手方向の第1の区間で前記第1面および前記第2面の両方に接合され、前記長手方向の第2の区間で前記第2面のみに接合され、
前記第2の部分は、前記第2の区間で前記第1面に接合され、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の接合強度が、前記第1の部分と前記第1面および前記第2面のそれぞれとの間の接合強度よりも低く、
前記テープ部材は、前記第2の部分と前記第1面との間に配置され、第3の樹脂組成物で形成される第3の部分を断面形状に含む袋体。
【請求項8】
少なくとも互いに対向する第1面および第2面を有し、前記第1面および前記第2面の間に収納空間が形成される袋本体と、
前記第1面と前記第2面との間に配置されて前記収納空間の一辺を画定し、第1の樹脂組成物で形成される第1の部分、および前記第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物で形成される第2の部分を断面形状に含むテープ部材と
を備え、
前記第1の部分は、前記テープ部材の長手方向の第1の区間で前記第1面および前記第2面の両方に接合され、前記長手方向の第2の区間で前記第2面のみに接合され、
前記第2の部分は、前記第2の区間で前記第1面に接合され、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の接合強度が、前記第1の部分と前記第1面および前記第2面のそれぞれとの間の接合強度よりも低く、
前記第1面および前記第2面のシーラント層を形成する樹脂組成物との関係において、前記第1の樹脂組成物および前記第2の樹脂組成物のそれぞれと前記シーラント層との相溶性は、前記第1の樹脂組成物と前記第2の樹脂組成物との間の相溶性よりも高い袋体。
【請求項9】
前記テープ部材は、前記第2の部分と前記第1面との間に配置され、第3の樹脂組成物で形成される第3の部分を断面形状に含む、請求項8に記載の袋体。
【請求項10】
前記第2の部分と前記第1面とが接着剤を介して接合される、請求項8に記載の袋体。
【請求項11】
前記テープ部材は、前記第1面および前記第2面にそれぞれ接合される第1および第2の基部条片、ならびに前記第1および第2の基部条片の互いに対向する面からそれぞれ突出し互いに係合可能な係合部を含むジッパーテープであり、
前記第2の部分は、前記第1の基部条片の前記第1面に対向する面の一部を形成し、
前記第1の部分は、前記係合部と、前記第2の基部条片と、前記第1の基部条片の残りの部分とを形成する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の袋体。
【請求項12】
前記テープ部材は、前記収納空間とは反対側に前記袋体の開口部が位置するように配置される、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の袋体。
【請求項13】
前記テープ部材は、前記収納空間とは反対側に前記袋体の開口部を形成することが可能な部分が位置するように配置される、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の袋体。
【請求項14】
前記袋本体は、スタンディングパウチを形成する、請求項1から請求項11、または請求項13のいずれか1項に記載の袋体。
【請求項15】
前記収納空間は、前記テープ部材とは反対側で封止されていない、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の袋体。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の袋体の製造方法であって、
前記第1の区間および前記第2の区間で前記第1の部分を前記第2面に接合する第1の工程と、
前記第1の区間では前記第1の部分を前記第1面に接合し、前記第2の区間では前記第2の部分を前記第1面に接合する第2の工程と
を含む袋体の製造方法。
【請求項17】
前記第1の工程と前記第2の工程との間に、前記収納空間に内容物を充填する工程が実施される、請求項16に記載の袋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋体および袋体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品などが収納され加熱調理が可能な袋体が広く利用されている。特許文献1には、このような袋体として、加熱調理時に過度に膨張して破裂することを防止する水蒸気抜き機構を設けた構成が記載されている。特許文献1に記載された袋体は、袋本体のサイドシール部の近傍に円形に設けられた切り欠きを塞ぐように、周縁が袋本体に弱化シールされた弱化シール部が形成された水蒸気抜き機構を有する。この水蒸気抜き機構は、加熱調理時に発生する水蒸気によって内圧がある程度高まると、弱化シール部が剥がれ、切り欠きから水蒸気が放出されることで、袋本体が過度に膨張して破裂することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように水蒸気抜き機構に弱化シール部を用いる場合、弱化シール部の接合強度によって水蒸気の放出が開始される内圧が変動する。また、弱化シール部の接合強度が均一でなければ、弱化シール部が一部だけ剥がれることによって水蒸気の放出量が少なくなる可能性がある。このように、特許文献1に記載された技術では、弱化シール部の加工条件が水蒸気の放出に影響を与えるため、安定した水蒸気の放出が可能な通蒸部を形成することは容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は、テープ部材を用いて通蒸部を形成することが可能な袋体において、安定した水蒸気の放出が可能な通蒸部を容易に形成することが可能な、新規かつ改良された袋体および袋体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある観点によれば、少なくとも互いに対向する第1面および第2面を有し、第1面および第2面の間に収納空間が形成される袋本体と、第1面と第2面との間に配置されて収納空間の一辺を画定し、第1の樹脂組成物で形成される第1の部分、および第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物で形成される第2の部分を断面形状に含むテープ部材とを備え、第1の部分は、テープ部材の長手方向の第1の区間で第1面および第2面の両方に接合され、長手方向の第2の区間で第2面のみに接合され、第2の部分は、第2の区間で第1面に接合される袋体が提供される。
上記の構成によれば、テープ部材と袋本体の第1面および第2面との間の接合部を、第1の区間と第2の区間とで異なる樹脂組成物で形成された部分に配置することによって、例えばテープ部材が収納空間の内圧にさらされたときに第2の区間でのみ水蒸気を放出することができる。水蒸気が放出される区間が固定されることによって、水蒸気の放出量が安定する。また、袋本体とテープ部材との間の接合強度を部分的に変化させる必要がないため、水蒸気の放出量が加工条件に大きく左右されない。従って、上記の構成によれば、安定した水蒸気の放出が可能な通蒸部を容易に形成することができる。
【0007】
本発明の別の観点によれば、上記の袋体の製造方法であって、第1の区間および第2の区間で第1の部分を第2面に接合する第1の工程と、第1の区間では第1の部分を第1面に接合し、第2の区間では第2の部分を第1面に接合する第2の工程とを含む袋体の製造方法が提供される。第1の工程と第2の工程との間に、収納空間に内容物を充填する工程が実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る袋体の平面図である。
【
図2】
図1に示した袋体のII-II線断面図である。
【
図3】
図1に示した袋体のIII-III線断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る袋体の通蒸時の挙動について説明するための図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る袋体の断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る袋体の平面図である。
【
図7】
図6に示した袋体のVII-VII線断面図である。
【
図8】
図6に示した袋体のVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
(袋体の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る袋体の平面図である。
図2および
図3は、
図1に示した袋体のII-II線およびIII-III線の断面図である。以下、これらの図を参照して、本実施形態に係る袋体の構成について説明する。
【0011】
図示されているように、袋体100は、互いに対向する第1面111Aおよび第2面111Bを有する袋本体を形成するフィルム110と、フィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの間に配置されるテープ部材120とを含む。テープ部材120は、後述するように全長にわたって幅方向の少なくとも一部が第1面111Aおよび第2面111Bに接合されており、これによってフィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの間に形成される収納空間SPの一辺を画定する。後述するように、テープ部材120は、断面形状に第1の樹脂組成物で形成された第1の部分121と、第2の樹脂組成物で形成された第2の部分122とを含む。
【0012】
フィルム110は、例えば単層または多層の熱可塑性樹脂で形成される。より具体的には、フィルム110は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成されてもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)であってもよい。フィルム110が多層である場合、表基材に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)、または二軸延伸ナイロン(ONy)を用いてもよい。また、フィルム110は無機材料の層を含んでもよい。
【0013】
なお、本実施形態では、2枚のフィルム110がボトムシール部112およびサイドシール部113において互いに接合されることによって第1面111Aおよび第2面111Bを有する袋本体を形成しているが、別の実施形態では、1枚のフィルム110がサイドシール部113に対応する部分で折り返されることによって第1面111Aおよび第2面111Bが形成されてもよい。あるいは、
図1の例におけるボトムシール部112またはサイドシール部113に対応する部分でフィルム110が内側に折り込まれた部分、いわゆるガセットが形成されてもよい。この場合、ガセットは、フィルム110によって形成されてもよいし、フィルム110に接合された別のフィルムによって形成されてもよい。また、袋体100は、底部にガセットが形成されることによって立てて置くことが可能なスタンディングパウチであってもよい。
【0014】
また、本実施形態では、ボトムシール部112およびサイドシール部113が形成される一方で、トップシール部が形成されないことによって袋体100の開口部101が形成されているが、別の実施形態では、ボトムシール部112およびサイドシール部113に加えてトップシール部が形成され、トップシール部とテープ部材120との間を切断することによって事後的に袋体100に開口部101を形成することが可能であってもよい。さらに別の実施形態では、ボトムシール部112が形成されない、すなわち収納空間SPがテープ部材120とは反対側で封止されていない状態で袋体が提供されてもよい。この場合、ボトムシール部112は収納空間SPに内容物を充填した後で形成される。これ以外にも、公知の各種の構成の袋体に本発明を適用することが可能である。
【0015】
テープ部材120は、例えばポリオレフィン系樹脂の押出成形によって形成される。より具体的には、テープ部材120は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成されてもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)であってもよい。テープ部材120の材料には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、または着色剤などが添加されてもよい。
【0016】
図1に示すように、テープ部材120は、長手方向について第1の区間S
1および第2の区間S
2に分けられる。
図2(A)には第1の区間S
1における断面が示され、
図3(A)には第2の区間S
2における断面が示されている。
図2(A)および
図3(A)に示されるように、本実施形態において、テープ部材120の断面形状は第1の区間S
1および第2の区間S
2を通じて共通であり、第1の部分121と第2の部分122とを含む。上述の通り、第1の部分121は第1の樹脂組成物で形成され、第2の部分122は第2の樹脂組成物で形成される。第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物とは異なる樹脂組成物である。本実施形態では、例えば以下に例示するような樹脂組成物の組み合わせを採用することによって、テープ部材120の第2の部分122とフィルム110の第1面111Aとの間の接合強度が、第1の部分121と第1面111Aとの間の接合強度よりも低くなっている。
【0017】
具体的には、第1の実施形態における第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物は、以下の表1に示すような組み合わせにすることができる。なお、表中のLDは低密度ポリエチレン(LDPE)を意味し、LLは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を意味し、Tmは樹脂組成物の融点を意味する。本明細書において、樹脂組成物の融点は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)によって検出される融解のピーク温度であり、ブレンドの場合は低い方の温度である。このように融点を定義した場合、表1に示した例において、第1の樹脂組成物の融点は第2の樹脂組成物の融点よりも10℃以上高い。なお、それぞれの例において、フィルム110(第1面111A)のシーラント層はホモポリプロピレン(HPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、またはランダムポリプロピレン(RPP)で形成される。表1に示された例では、第1面111Aのシーラント層を形成する樹脂組成物との関係において、第1の樹脂組成物は第2の樹脂組成物よりも相溶性が高い。
【0018】
【0019】
図2(A)に示されるように、第1の区間S
1において、テープ部材120の第1の部分121は、フィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの両方に接合される。具体的には、第1の区間S
1では、接合領域140Aがテープ部材120の第1の部分121と第1面111Aとの間に形成され、接合領域140Bが同じく第1の部分121と第2面111Bとの間に形成される。なお、後述するように、第1の区間S
1は内容物の加熱時においても通蒸が可能にならない区間であるため、第1の区間S
1において第2の部分122を第1面111Aに接合するか否かは任意である。
【0020】
一方、
図3(A)に示されるように、第2の区間S
2において、テープ部材120の第1の部分121は、フィルム110の第1面111Aには接合されず、第2面111Bのみに接合される。具体的には、第2の区間S
2では、接合領域140Bが第1の部分121と第2面111Bとの間に形成されるが、第1の部分121と第1面111Aとの間には接合領域が形成されない。一方、第2の区間S
2において、テープ部材120の第2の部分122は、フィルム110の第1面111Aに接合される。具体的には、第2の区間S
2では、接合領域140Aが第2の部分122と第1面111Aとの間に形成される。
【0021】
(通蒸時の挙動)
図2(B)および
図3(B)には、第1の区間S
1および第2の区間S
2における、内容物の加熱時のテープ部材120の挙動が示されている。袋体100の収納空間SPに食品のような水分を含んだ内容物Cを収納して電子レンジを用いて加熱した場合、内容物から発生した水蒸気によって収納空間SPの内圧が上昇する。これによって、
図3(B)に示すように、第2の区間S
2では、フィルム110の第1面111Aにテープ部材120の第2の部分122を接合する接合領域140Aが、第2の部分122側の界面で剥離する。従って、第2の区間S
2では内容物の加熱時にフィルム110の第1面111Aとテープ部材120の第2の部分122との間を経由して収納空間SPが外部空間に連通し、水蒸気STの放出が可能になる。内容物Cの加熱時に第2の区間S
2において水蒸気STが放出される様子は、
図4の平面図にも示されている。
【0022】
一方、第1の区間S
1では、
図2(B)に示すように接合領域140Aがテープ部材120の第1の部分121を第1面111Aに接合している。ここで、上述のように、本実施形態において、第2の部分122を形成する第2の樹脂組成物とフィルム110との間の接合強度は、第1の部分121を形成する第1の樹脂組成物とフィルム110との間の接合強度よりも低い。それゆえ、第2の区間S
2における接合領域140Aの界面剥離は、第1の区間S
1よりも先に発生する。第2の区間S
2での界面剥離によって水蒸気STが放出されると収納空間SPの内圧は上昇しなくなるため、結果的に第1の区間S
1では第2の区間S
2のような界面剥離が発生せず、第1の区間S
1において収納空間SPは外部空間に連通しない。
【0023】
このように、本実施形態では、テープ部材120の第1の部分121および第2の部分122をそれぞれ第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物で形成し、接合領域140A,140Bによって第1面111Aおよび第2面111Bに接合されるテープ部材120の部分を上述のように第1の区間S1と第2の区間S2との間で異ならせることによって、水蒸気の発生によって収納空間SPの内圧が上昇したときに、第2の区間S2でのみ収納空間SPを外部空間に連通させて、水蒸気を放出することができる。水蒸気が放出される区間が固定されることによって、水蒸気の放出量が安定する。また、接合領域140A,140Bの接合強度を部分的に変化させる必要がないため、水蒸気の放出量が加工条件に大きく左右されない。
【0024】
上記で説明したような本発明の第1の実施形態では、テープ部材120の第2の区間S2を通蒸部として機能させることによって、内容物Cの加熱時における水蒸気の放出量を安定させることができる。つまり、本実施形態では、フィルム110とテープ部材120との間の接合強度を変化させなくても、第1の区間S1と第2の区間S2との間でテープ部材120の第1の部分121および第2の部分122とフィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bとの接合状態を変化させることで通蒸部が形成できるため、一定の温度で開通し安定した量の水蒸気を放出する通蒸部を容易に形成することができる。
【0025】
上記の例では、テープ部材120の断面形状において、第1の部分121がL字形であり、第2の部分122はL字形の凹んだ部分に嵌合するように形成されるため、第2の部分122と第2面111Bとは対向しない。他の例では、第2の部分122と第2面111Bとが対向するような断面形状でテープ部材120を形成することも可能である。この場合、第1の区間S1および第2の区間S2で第2の部分122を第2面111Bに接合してもよい。
【0026】
また、上記の例では、テープ部材120の幅方向について、開口部101側に第1の部分121が位置し、収納空間SP側に第2の部分122が位置していたが、これとは逆に第1の部分121および第2の部分122を配置してもよい。なお、上述のように、袋体100にトップシール部を形成した上で、トップシール部とテープ部材120との間を切断することによって事後的に袋体100に開口部101を形成することも可能である。従って、テープ部材120は、収納空間SPとは反対側に袋体100の開口部101が位置するように配置されてもよいし、収納空間SPとは反対側に袋体の開口部101を形成することが可能な部分が位置するように配置されてもよい。
【0027】
また、上記の例では、テープ部材120の長手方向について、中央付近が第2の区間S2とされ、それ以外の部分が第1の区間S1とされたが、長手方向における第1の区間S1および第2の区間S2の配置はどのようなものであってもよい。例えば、テープ部材120の長手方向のいずれか一方、または両方の端部に第2の区間S2が配置されてもよい。あるいは、テープ部材120の端部または中間部に複数の第2の区間S2が配置されてもよい。
【0028】
また、上記の例では、袋体100の製造方法について、正面側で接合領域140Aを形成するシールバーと背面側で接合領域140Bを形成するシールバーとを用いる例について説明したが、これらのシールバーによる接合領域140A,140Bの形成は、必ずしも同時にされなくてもよい。例えば、接合領域140Bを先に形成した状態の袋体100の半完成品を流通させ、内容物Cの充填後に接合領域140Aを形成することによって収納空間SPを封止してもよい。このような工程は、例えば袋体100がスタンディングパウチである場合に採用される。
【0029】
上記の場合、第1の区間S1および第2の区間S2でテープ部材120の第1の部分121をフィルム110の第2面111Bに接合する第1の工程(接合領域140Bの形成工程)の後に、収納空間SPに内容物Cを充填する工程が実施され、さらにその後に第1の区間S1ではテープ部材120の第1の部分121をフィルム110の第1面111Aに接合し、第2の区間S2ではテープ部材120の第2の部分122を第1面111Aに接合する第2の工程(接合領域140Aの形成工程)が実施される。なお、上記の第1の工程と第2の工程との順序は入れ替わってもよい。いずれの場合も、収納空間SPに内容物Cを充填する工程は第1の工程と第2の工程との間に実施される。
【0030】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る袋体の断面図である。
図5に示されるように、本実施形態に係る袋体200は、上記の第1の実施形態に比べて、テープ部材220の第1の部分221および第2の部分222を構成する樹脂組成物が異なり、またそれに伴い内容物の加熱時のテープ部材220の挙動も異なるが、フィルム110の構成を含むそれ以外の点については第1の実施形態と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0031】
本実施形態でも、テープ部材220は、例えばポリオレフィン系樹脂の押出成形によって形成される。より具体的には、テープ部材220は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成されてもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)であってもよい。テープ部材220の材料には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、または着色剤などが添加されてもよい。
【0032】
上記の第1の実施形態で
図1を参照して説明した例と同様に、テープ部材220は、長手方向について第1の区間S
1および第2の区間S
2に分けられる。第1の区間S
1における断面は、第1の実施形態と同様であるため図示を省略する。
図5(A)には、第2の区間S
2における断面が示されている。テープ部材220の断面形状は第1の区間S
1および第2の区間S
2を通じて共通であり、第1の部分221と第2の部分222とを含む。第1の部分221は第1の樹脂組成物で形成され、第2の部分222は第2の樹脂組成物で形成される。第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物とは異なる樹脂組成物である。本実施形態では、例えば以下に例示するような構成によって、テープ部材220の第1の部分221と第2の部分222との間の接合強度が、第1の部分221と第1面111Aおよび第2面111Bのそれぞれとの間、および第2の部分222と第1面111Aとの間の接合強度よりも低くなっている。
【0033】
本実施形態では、必要に応じて、第1面111Aと第2の部分222との間に、以下の例に示すような第3の樹脂組成物で第3の部分223を形成してもよい。接合層として機能する第3の部分223を形成することにより、第2の部分222と第1面111Aとの間の接合強度をより高められるため、第1の部分221と第2の部分222との間の接合強度が相対的に第2の部分222と第1面111Aとの間の接合強度よりも低くなる。なお、第3の部分223は必ずしも形成されなくてもよく、第1面111Aと第2の部分222とを接着剤を介して接合することによって第2の部分222と第1面111Aとの間の接合強度を高めることも可能である。この場合の接着剤は、特に限定されない。
【0034】
具体的には、第2の実施形態における第1の樹脂組成物、第2の樹脂組成物及び第3の樹脂組成物には、以下の表2に示す樹脂組成物を用いることができる。なお、表中のHDPEは高密度ポリエチレンを意味し、PEはポリエチレンを意味する。表2に示された組み合わせ例はいずれも本実施形態の効果を奏するが、第1の樹脂組成物はHPP、第2の樹脂組成物はLDPEであることが好ましい。さらに、この場合、第3の樹脂組成物はHPPまたはRPPであることがより好ましく、HPPであることがさらに好ましい。表2に示された例では、第1面111Aを形成する樹脂組成物と第3の樹脂組成物の間、第3の樹脂組成物と第2の樹脂組成物の間、第2の樹脂組成物と第1の樹脂組成物の間、及び第1の樹脂組成物と第2面111Bを形成する樹脂組成物の間のうち、第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物の間の相溶性が相対的に最も悪くなる。
【0035】
【0036】
図5(A)に示されるように、第2の区間S
2において、テープ部材220の第1の部分221は、フィルム110の第1面111Aには接合されず、第2面111Bのみに接合される。具体的には、第2の区間S
2では、第1の部分221と第2面111Bとの間には接合領域140Bが形成されるが、第1の部分221と第1面111Aとの間には接合領域が形成されない。一方、第2の区間S
2において、テープ部材220の第2の部分222は、フィルム110の第1面111Aのみに接合され、第2面111Bには接合されない。具体的には、第2の区間S
2では、第2の部分222と第1面111Aとの間には接合領域140Aが形成されるが、第2の部分222と第2面111Bとの間には接合領域が形成されない。
【0037】
図5(B)には、第2の区間S
2における、内容物の加熱時のテープ部材220の挙動が示されている。第1の実施形態で説明したように、袋体200で内容物を加熱すると、内容物から発生した水蒸気によって収納空間SPの内圧が上昇する。これによって、
図5(B)に示すように、第2の区間S
2では、フィルム110の第1面111Aと第2面111Bとの間で最も接合強度が低い部分、すなわちテープ部材220の第1の部分221と第2の部分222との間が剥離する。従って、第2の区間S
2では内容物の加熱時にテープ部材220の第1の部分221と第2の部分222との間を経由して収納空間SPが外部空間に連通し、水蒸気STの放出が可能になる。
【0038】
なお、本実施形態でも、第1の区間S
1ではテープ部材220の第1の部分221がフィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの両方に接合されているために収納空間SPが外部空間に連通しない点は、第1の実施形態で
図2(B)を参照して説明した例と同様である。第1の区間S
1では第2の部分222を第1面111Aに接合してもよく、その場合には第1の区間S
1でも第1の部分221と第2の部分222との間が剥離する可能性があるが、第1の部分221と第1面111Aおよび第2面111Bとの間の接合領域140A,140Bは剥離しないため、依然として第1の区間S
1で収納空間SPは外部空間に連通しない。
【0039】
このように、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、テープ部材220の第1の部分221および第2の部分222をそれぞれ第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物で形成し、フィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bに接合されるテープ部材220の部分を上述のように第1の区間S1と第2の区間S2との間で異ならせることによって、水蒸気の発生によって収納空間SPの内圧が上昇したときに第2の区間S2を経由して安定的に水蒸気を放出することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る袋体の平面図である。
図7および
図8は、
図6に示した袋体のVII-VII線およびVIII-VIII線の断面図である。以下、これらの図を参照して、本実施形態に係る袋体の構成について説明する。
【0041】
図示されているように、袋体300は、フィルム110と、フィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの間に配置されるジッパーテープ320とを含む。ジッパーテープ320は、全長にわたって幅方向の少なくとも一部が第1面111Aおよび第2面111Bに接合されており、これによってフィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの間に形成される収納空間SPの一辺を画定する。後述するように、ジッパーテープ320は、断面形状に第1の樹脂組成物で形成された第1の部分321と、第2の樹脂組成物で形成された第2の部分322とを含む。なお、フィルム110の構成については、上記の第1の実施形態と同様であるため重複した説明は省略する。
【0042】
ジッパーテープ320は、例えばポリオレフィン系樹脂の押出成形によって形成される。より具体的には、ジッパーテープ320は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成されてもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)であってもよい。ジッパーテープ320の材料には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、または着色剤などが添加されてもよい。
【0043】
図6に示すように、ジッパーテープ320は、長手方向について第1の区間S
1および第2の区間S
2に分けられる。
図7(A)には第1の区間S
1における断面が示され、
図8(A)には第2の区間S
2における断面が示されている。本実施形態において、ジッパーテープ320の断面形状は第1の区間S
1および第2の区間S
2を通じて共通である。具体的には、ジッパーテープ320は、第1面111Aに接合される雌側基部条片323A、および第2面111Bに接合される雄側基部条片323Bと、雌側基部条片323Aおよび雄側基部条片323Bの互いに対向する面からそれぞれ突出し互いに係合可能な雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bとを含む。上述したジッパーテープ320の第1の部分321および第2の部分322との関係でいうと、第2の部分322は、雌側基部条片323Aの第1面111Aに対向する面の一部(面323A2として図示する)を形成する。一方、第1の部分321は、雄側基部条片323B、雌側係合部324A、および雄側係合部324Bの全部と、第1面111Aに対向する面(面323A1として図示する)を含む雌側基部条片323Aの残りの部分とを形成する。
【0044】
上述の通り、ジッパーテープ320の第1の部分321は第1の樹脂組成物で形成され、第2の部分322は第2の樹脂組成物で形成される。第2の樹脂組成物は、第1の樹脂組成物は異なる樹脂組成物である。本実施形態では、例えば上記の第2の実施形態で例示したような構成を採用することによって、ジッパーテープ320の第1の部分321と第2の部分322との間の接合強度が、第1の部分321と第1面111Aおよび第2面111Bのそれぞれとの間、および第2の部分322と第1面111Aとの間の接合強度よりも低くなっている。具体的には、例えば第1面111Aと第2の部分322との間に第3の樹脂組成物で第3の部分(図示せず)を形成したり、第1面111Aと第2の部分322との間に接着剤を介在させたりすることによって第2の部分322と第1面111Aとの間の接合強度を高め、第1の部分321と第2の部分322との間の接合強度を相対的に第2の部分322と第1面111Aとの間の接合強度よりも低くしている。あるいは、上記の第1の実施形態で例示したような樹脂組成物の組み合わせを採用することによって、ジッパーテープ320の第1の部分321と第2の部分322との間の接合強度を、第1の部分321と第1面111Aおよび第2面111Bのそれぞれとの間、および第2の部分322と第1面111Aとの間の接合強度よりも低くしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、上記のような第1の部分321、第2の部分322、および第1面111Aの間の構成、ならびに雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bの材料および形状の選択によって、ジッパーテープ320の第1の部分321と第2の部分322との間の接合強度が、後述する内容物の加熱時における雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bの間の係合強度よりも低くなっている。
【0046】
なお、雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bは、図示された例のような形状に限られず、爪状、鉤状、または瘤状などを組み合わせた公知の各種のジッパーテープの係合部の形状にすることが可能である。また、図示された例では1対の雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bが配置されているが、複数対の雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bが配置されてもよい。雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bは、袋体300を封止、開封、および再封止することを可能にする。
【0047】
図7(A)に示されるように、第1の区間S
1において、ジッパーテープ320の第1の部分321は、フィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの両方に接合される。具体的には、第1の区間S
1では、ジッパーテープ320の第1の部分321、すなわち雌側基部条片323Aの第1の樹脂組成物で形成された面323A1と第1面111Aとの間に接合領域140Aが形成され、同じく第1の部分321に含まれる雄側基部条片323Bと第2面111Bとの間に接合領域140Bが形成される。なお、後述するように、第1の区間S1は内容物の加熱時においても通蒸が可能にならない区間であるため、第1の区間S
1において第2の部分322を第1面111Aに接合するか否かは任意である。
【0048】
一方、
図8(A)に示されるように、第2の区間S
2において、ジッパーテープ320の第1の部分321は、フィルム110の第1面111Aには接合されず、第2面111Bのみに接合される。具体的には、第2の区間S
2では、第1の部分321、すなわち雄側基部条片323Bと第2面111Bとの間には接合領域140Bが形成されるが、雌側基部条片323Aの第1の樹脂組成物で形成された面323A1と第1面111Aとの間には接合領域が形成されない。一方、第2の区間S
2において、ジッパーテープ320の第2の部分322は、フィルム110の第1面111Aに接合される。具体的には、第2の区間S
2では、第2の部分322、すなわち雌側基部条片323Aの第2の樹脂組成物で形成された面323A2と第1面111Aとの間に接合領域140Aが形成される。
【0049】
図7(B)および
図8(B)には、第1の区間S
1および第2の区間S
2における、内容物の加熱時のジッパーテープ320の挙動が示されている。第1の実施形態で説明したように、袋体300で内容物を加熱すると、内容物から発生した水蒸気によって収納空間SPの内圧が上昇する。これによって、
図8(B)に示すように、第2の区間S
2では、フィルム110の第1面111Aと第2面111Bとの間で最も接合強度が低い部分、すなわちジッパーテープ320の第1の部分321と第2の部分322との間が剥離する。このとき、雌側基部条片323Aにおいて、第2の部分322すなわち第2の樹脂組成物で形成された面323A2を含む部分が、第1の樹脂組成物で形成された面323A1を含む残りの部分から剥離する。上述の通り、第2の区間S
2では雌側基部条片323Aが面323A2のみでフィルム110の第1面111Aに接合されているため、上記のような剥離によって雌側基部条片323Aの残りの部分は第1面111Aから分離される。このようにして、第2の区間S
2では内容物の加熱時にジッパーテープ320の第1の部分321と第2の部分322との間を経由して収納空間SPが外部空間に連通し、水蒸気STの放出が可能になる。
【0050】
一方、第1の区間S
1では、
図7(B)に示すようにジッパーテープ320の第1の部分321が接合領域140A,140Bによってフィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bの両方に接合されている。ここで、第1の部分321と第1面111Aおよび第2面111Bのそれぞれとの間の接合強度は第1の部分321と第2の部分322との間の接合強度、および内容物の加熱時における雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bの間の係合強度は第1の部分321と第2の部分322との間の接合強度よりも高いため、第2の区間S
2で第1の部分321と第2の部分322との間が剥離しても、第1の区間S
1では剥離が発生しない。第2の区間S
2で水蒸気STが放出されると収納空間SPの内圧は上昇しなくなるため、結果的に第1の区間S
1で第2の区間S
2のような第1の部分321と第2の部分322との間の剥離が発生することはなく、第1の区間S
1において収納空間SPは外部空間に連通しない。
【0051】
ここで、図示された例では、ジッパーテープ320の雄側基部条片323Bが開口部101側および収納空間SP側の両方で接合領域140Bによってフィルム110の第2面111Bに接合されているのに対して、雌側基部条片323Aは開口部101側のみで接合領域140Aによってフィルム110の第1面111Aに接合され、収納空間SP側では第1面111Aに接合されていない。これによって、
図7(B)および
図8(B)に示されるように、収納空間SPの内圧が上昇した場合には第1面111Aがジッパーテープ320の開口部101側で折り返され、内圧による力は雌側基部条片323Aおよび雄側基部条片323Bを幅方向に剪断する力として作用する。これによって、例えば雌側基部条片323Aおよび雄側基部条片323Bを厚さ方向に引っ張る力が作用する場合に比べて雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bの係合強度が向上し、より大きな内圧に対しても雌側係合部324Aおよび雄側係合部324Bが係合を維持することができる。
【0052】
以上で説明したように、本実施形態でも、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、ジッパーテープ320の第1の部分321および第2の部分322をそれぞれ第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物で形成し、フィルム110の第1面111Aおよび第2面111Bに接合されるジッパーテープ320の部分を上述のように第1の区間S1と第2の区間S2との間で異ならせることによって、水蒸気の発生によって収納空間SPの内圧が上昇したときに第2の区間S2を経由して安定的に水蒸気を放出することができる。加えて、本実施形態では、ジッパーテープ320によって袋体300が再封止可能であるため、ジッパーテープ320を開封した状態でユーザが収納空間SPに内容物を収納し、その後ジッパーテープ320を再封止した状態で内容物を加熱することができる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
100,200,300…袋体、101…開口部、110…フィルム、111A…第1面、111B…第2面、120,220…テープ部材、320…ジッパーテープ、121,221,321…第1の部分、122,222,322…第2の部分、223…第3の部分、140A,140B…接合領域、SP…収納空間、C…内容物、S1…第1の区間、S2…第2の区間。