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特許7290940免震装置据付用部材、免震装置架台構造及び免震装置架台の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】免震装置据付用部材、免震装置架台構造及び免震装置架台の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230607BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20230607BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20230607BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
F16F15/04 P
F16F1/40
E02D27/34 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018245207
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105795
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500038662
【氏名又は名称】麻生商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 義範
(72)【発明者】
【氏名】隈田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】花田 将雄
(72)【発明者】
【氏名】福田 滋夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三須 基規
(72)【発明者】
【氏名】足立 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】白井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】谷川 友秀
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-077617(JP,A)
【文献】特開2009-263948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00- 9/16
F16F 15/00-15/36
F16F 1/00- 6/00
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎部位に配設され、上部に免震装置が据え付け固定されるとともに、スラブコンクリートで前記基礎部位と一体に定着されるブロック状の免震装置据付用部材であって、
前記免震装置が据え付けられる据付板と、
前記基礎部位上に載置され、上部で接合される前記据付板を支持する架台フレーム部であって、且つ、少なくとも対向する2面に設けられる開口部で開口し、前記開口部とともに鉄筋が貫通されて、前記据付板と一体に固定する前記スラブコンクリートが充填される中空部を有する前記架台フレーム部と、
を有する、
免震装置据付用部材。
【請求項2】
前記据付板の高さ位置を調整する高さ位置調整部を有する、
請求項1記載の免震装置据付用部材。
【請求項3】
前記据付板から前記中空部内に突出して配置され、前記開口部を介して打設される前記スラブコンクリートに定着されるコンクリート定着部を有する、
請求項1または2に記載の免震装置据付用部材。
【請求項4】
前記架台フレーム部は、直方形状に形成され、4つの周面部及び底面部のうち少なくとも前記4つの周面部のそれぞれに前記中空部が連続する前記開口部が形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の免震装置据付用部材。
【請求項5】
前記据付板と、前記架台フレーム部とは分割可能に構成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の免震装置据付用部材。
【請求項6】
基礎部位上に載置され、上部に免震装置が据え付け固定されるとともに、スラブコンクリートで前記基礎部位と一体に定着される免震装置据付用部材であって、前記免震装置が据え付けられる据付板と、前記基礎部位上に載置され、上部で接合される前記据付板を支持し、且つ、少なくとも対向する2面に設けられる開口部で開口する中空部を有する架台フレーム部とを有する免震装置据付用部材と、
前記中空部に、前記開口部を貫通して配設されるスラブ鉄筋と、
前記スラブ鉄筋及び前記免震装置据付用部材内部に打設されてなるスラブコンクリート部と、
を有する、
免震装置架台構造。
【請求項7】
建物の基礎部位に配設され、上部に免震装置が据え付け固定されるとともに、スラブコンクリートで前記基礎部位と一体に定着される免震装置据付用部材を用いた免震装置架台の構築方法であって、
前記免震装置据付用部材は、
前記免震装置が据え付けられる据付板と、
前記基礎部位上に載置され、上部で接合される前記据付板を支持し、且つ、少なくとも対向する2面に設けられる開口部で開口する中空部を有する架台フレーム部と、
を有しており、
地業上にコンクリートを打設して捨てコンクリート部を形成し、
前記捨てコンクリート部上に金属プレートを布設し、
前記金属プレート上に前記免震装置据付用部材を載置し、
前記開口部を介して前記中空部を貫通させてスラブ鉄筋を配設し、
前記捨てコンクリート部上及び前記免震装置据付用部材の前記中空部内にスラブコンクリートを打設して、前記スラブ鉄筋を埋設して、コンクリート定着部が定着されたスラブコンクリート部を構築する、
免震装置架台の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置を据え付ける免震装置据付用部材、これを用いた免震装置架台構造及び免震装置据付用部材の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビルや橋梁のような建築、土木構造物、機器等を地震の振動(震動)から保護する免震装置は、振動を絶縁するばね機能を有する構造体と振動エネルギーを吸収するダンパ(減衰)機能を有する構造体とから成る。ばね機能を有する構造体としては、複数のゴム板と金属板とを交互に積層した積層ゴム支承体が広く使用されている。
【0003】
積層ゴム支承体等の免震装置を設置する際には、例えば、コンクリートを打設して基礎スラブを構築する。そして、この基礎スラブ上に、現場で、型枠を設置し、設置した型枠内に、当該型枠内で上方に突出する差筋を埋設するように、コンクリートを打設する。
【0004】
これにより、基礎スラブから上方に突出して設けられ、且つ、上面にベースプレートを備える免震基礎となる免震装置用架台を構築する。
【0005】
この免震基礎上に免震装置としての積層ゴム支承体を設置し、ボルトにより、積層ゴム支承体は免震基礎に締結して固定される。
【0006】
このような従来の免震基礎の施工方法では、基礎スラブを打設した後で、ベースプレートを有する免震基礎を構築するので、スラブ基礎構築作業に加えて、更に、型枠設置、配筋作業、コンクリート打設作業等が必要となる。これにより、現場での作業工程が多くなり、基礎スラブを構築した後で基礎スラブ上に構築する免震基礎の品質の均一化は、困難となっている。特に、免震基礎を構築する際に、ベースプレート下部のコンクリート打設工事は困難であり、不慣れな現場では、施工不良が起こりやすいので、試験打設の繰り返しや再施工が行われている。これにより、工程が多くなるので、施工期間が長期化するという問題点がある。
【0007】
また、積層ゴム支承体は、高面圧下で使用(例えば、圧縮方向の許容応力度(鉛直基準強度の1/3に相当する面圧で水平方向に変形させた場合の限界の変形)が15N/mm以上で使用)される場合、免震基礎自体も、積層ゴム支承体の真下部分もこれを支える耐力を備える必要がある。
【0008】
このような従来の免震基礎の構造に対しては、特許文献1に示すように、工場で予め製作された錐台形状のプレキャストコンクリート(precast concrete:以下「PCa」という)ブロックを用いる物が知られている。錐台形状のPCaブロックを基礎上の所定位置に設置し、その周囲に後打ちされるスラブコンクリートとの一体化を図ることで、免震装置を据え付けるための免震基礎を構築する。これにより、建設現場において、免震基礎を、構築した基礎スラブ上に構築する必要がなく、施工時の効率性を高め、かつ完成後の地震時等において優れた力学的特性を発揮可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-263948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、錐台形状のPCaブロック等のPCaは、製造環境の整った工場内で事前に製作するため、高強度コンクリートを使用した高い寸法精度のベースが製造できる。
【0011】
しかしながら、従来の錐台形状のPCaブロックを用いる構造では、現場で施工された基礎スラブ等の基礎部分の所定箇所に設置する場合、基礎部分にスラブ配筋が設けられている場合には、スラブ配筋を一部断絶させて、円錐形状のPCaブロックを設置する必要がある。よって、この構造では、PCaブロックは、後打ちされるスラブコンクリートにより基礎部分に一体化されるので、PCaブロックに固定される免震装置は、充分な引抜力が得られない虞があった。
【0012】
また、PCaブロックを所定箇所に設置した後で、その周囲のスラブ配筋を構築する場合、コンクリートブロックを回避して配筋する必要があるため施工の効率が悪くなるという問題があった。
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、このことから高面圧下であっても免震装置を搭載して安定した品質でかつ、容易に製作できる免震装置据付用部材、免震装置架台構造及び免震装置架台の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の免震装置据付用部材の一つの態様は、
建物の基礎部位に配設され、上部に免震装置が据え付け固定されるとともに、スラブコンクリートで前記基礎部位と一体に定着されるブロック状の免震装置据付用部材であって、
前記免震装置が据え付けられる据付板と、
前記基礎部位上に載置され、上部で接合される前記据付板を支持する架台フレーム部であって、且つ、少なくとも対向する2面に設けられる開口部で開口し、前記開口部とともに鉄筋が貫通されて前記スラブコンクリートが充填される中空部を有する前記架台フレーム部と、
を有する構成を採る。
【0015】
本発明の免震装置架台構造の一つの態様は、
基礎部位上に載置され、上部に免震装置が据え付け固定されるとともに、スラブコンクリートで前記基礎部位と一体に定着される免震装置据付用部材であって、前記免震装置が据え付けられる据付板と、前記基礎部位上に載置され、上部で接合される前記据付板を支持し、且つ、少なくとも対向する2面に設けられる開口部で開口する中空部を有する架台フレーム部とを有する免震装置据付用部材と、
記中空部に、前記開口部を貫通して配設されるスラブ鉄筋と、
前記スラブ鉄筋及び前記免震装置据付用部材内部に打設されてなるスラブコンクリート部とを有する構成を採る。
【0016】
本発明の免震装置架台の構築方法の一つの態様は、
建物の基礎部位に配設され、上部に免震装置が据え付け固定されるとともに、スラブコンクリートで前記基礎部位と一体に定着される免震装置据付用部材を用いた免震装置架台の構築方法であって、
前記免震装置据付用部材は、
前記免震装置が据え付けられる据付板と、
前記基礎部位上に載置され、上部で接合される前記据付板を支持し、且つ、少なくとも対向する2面に設けられる開口部で開口する中空部を有する架台フレーム部と、
を有しており、
地業上にコンクリートを打設して捨てコンクリート部を形成し、
前記捨てコンクリート部上に金属プレートを布設し、
前記金属プレート上に前記免震装置据付用部材を載置し、
前記開口部を介して前記中空部を貫通させてスラブ鉄筋を配設し、
前記捨てコンクリート部上及び前記免震装置据付用部材の前記中空部内にスラブコンクリートを打設して、前記スラブ鉄筋を埋設して、コンクリート定着部が定着されたスラブコンクリート部を構築するようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高面圧下であっても、免震装置を搭載して、安定した品質で、且つ、容易に製作できる免震装置据付用部材を有する免震装置架台構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る免震装置据付用部材を用いた免震装置架台構造の要部構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る免震装置架台構造の平面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る免震装置据付用部材の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る免震装置据付用部材の底面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る免震装置架台構造の構築方法を模式的に示す図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る免震装置架台構造の構築方法を模式的に示す図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る免震装置据付用部材を用いた免震装置架台構造の要部構成を模式的に示す図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る免震装置据付用部材の斜視図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る免震装置架台構造の構築方法を模式的に示す図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る免震装置架台構造の構築方法を模式的に示す図である。
図11】本発明の実施の形態1に係る免震装置据付用部材の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る免震装置据付用部材としてのPCaブロック100を用いた免震装置架台構造1の要部構成を模式的に示す図であり、図2は、免震装置8が据え付けられた免震装置架台構造1の平面図である。
【0021】
免震装置架台構造1は、免震装置据付用部材としての免震装置架台用PCaブロック100を用いて、上部構造物と下部構造物との間に配置される免震装置8が固定される下部構造である。免震装置架台構造1は、本実施の形態では、下部構造物をスラブ基礎の一部とし、突出した部位の上面となる据付面121が水平面である免震基礎である。据付面121上に免震装置8が固定される。
【0022】
免震装置架台構造1は、地業3上に打設された捨てコンクリート部4、金属プレート5、スラブ鉄筋7、免震装置架台用PCaブロック(以下、便宜上、「PCaブロック」と称する)100、スラブコンクリート部Kを有する。免震装置架台構造1では、上部構造物の柱等の下部に配置された免震装置8が据え付けられている。
【0023】
免震基礎は、地業3の上にコンクリートを打設して形成された捨てコンクリート部4の水平面上に、金属プレート5を介してPCaブロック100が配設されている。PCaブロック100は、スラブ鉄筋7が埋設されるスラブコンクリート部Kとともにスラブコンクリート部Kのスラブ面の一部が突出し、その突出した据付面121に免震装置8が据えつけられる免震基礎を構成している。
【0024】
<免震装置8の構成>
免震装置8は、上部に配置される上部構造物の鉛直荷重を支持しつつ、上部構造物を免震基礎に対して相対的に水平方向へ移動可能とする。なお、免震装置8は、上部構造物と免震基礎との間に所定間隔をあけて複数配置されることが好ましい。
【0025】
免震装置8は、建築物を常時支持する積層ゴム支承体である。免震装置8は、複数の弾性板及び硬質の中間鋼板を交互に積層して一体化した積層体の上下両端に連結鋼板を取り付けた積層本体82と、積層本体82の上下端に固定したフランジ84、86とを有する。なお、連結鋼板とフランジとは、互いを一体にしたフランジ構成としてもよい。
【0026】
弾性板としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム材が挙げられるが、これらに特に限定されず、合成樹脂、ゴムと合成樹脂との混合物等で形成してもよい。弾性板と中間鋼板及び連結鋼板は接着により一体化されている。なお、中間鋼板は、鋼板の他、セラミック、プラスチック、繊維強化プラスチック等、金属製板であっても非金属製板であっても構わない。
【0027】
また、積層体(弾性板及び硬質板)の中央部には、必要に応じて上下に貫通して製造時に使用される位置決め孔を設けてもよい。また、積層本体82の上下端に配置される連結鋼板と、フランジ84、86とは、ボルト(図示省略)により固定されている。
【0028】
なお、積層体の外周面(弾性板及び中間鋼板の外周面)には、耐候性に優れたゴム材料等からなる保護層(図示省略)が被覆される。積層体は、保護層により外部環境から保護される。保護層と積層体との関係は、積層ゴムの外周面に接着剤を塗布して貼り合わせても、自己融着型のテープを巻いても、弾性板と保護層のゴム材を同時に加硫接着することで一体化された構成としてもよい。
【0029】
このように構成される免震装置8としての積層ゴム支承体は、上部構造物(例えば、建築物の柱)の真下に位置させており、上部構造物と、免震基礎のPCaブロック100とのそれぞれに、フランジ84、86の周縁部のボルト穴に挿通されたボルト(図1では、フランジ86を固定するボルト91のみ図示する)により固定される。免震装置8としての積層ゴム支承体では、積層体とフランジ84、86とで、鉛直方向の硬い剛性で上部構造物を支え、水平方向の柔らかい剛性で剪断変形することによって、上部構造物の荷重を支えながら地震による揺れをゆっくりとした周期で伝達するようにしている。
【0030】
<PCaブロック100>
図3は、本発明の実施の形態1に係る免震装置架台用PCaブロック100の斜視図であり、図4は、本発明の実施の形態1に係る免震装置架台用PCaブロック100の底面図である。なお、図3では、後述するコンクリート定着部の基礎定着用鉄筋部140を便宜上、破線で示す。また、図4では、便宜上、PCaブロック100内に充填されるスラブコンクリートK、PCaブロック100内に配設される鉄筋等は便宜上、図示省略している。
【0031】
PCaブロック100は、現場に搬入される前に、工場等で型枠を用いる等してコンクリートを打設することにより製作されたプレキャストコンクリート(Precast Concrete)製のブロックであり、内部に鋼棒等の鋼材が配筋されている。
【0032】
PCaブロック100は、基礎の所定箇所に設置され、スラブコンクリートを打設することにより免震基礎の一部として一体的に形成される。
【0033】
PCaブロック100は、基礎部分の所定箇所、ここでは、捨てコンクリート部4上に布設された金属プレート5上に設置されるとともに、水平面状の据付面121に免震装置8が設置されて、免震装置8に固定される。
【0034】
PCaブロック100は、基礎部分に設置される架台フレーム部110上に、免震装置8が据え付けられて固定される据付板120が一体に固定されたブロック本体を有し、ブロック本体には、コンクリート定着部(130、140)と、高さ位置調整部150とが設けられている。
【0035】
据付板120は、免震装置8が据え付けられて固定されるベースプレートとして機能し、免震装置8が固定される据付面121を有する。
【0036】
据付板120は、本実施の形態では矩形板状に形成され、内部には、鉄筋が格子状に配筋されている。据付板120の据付面121は、ベースプレートとなる平らな金属板を埋め込むことで形成されてもよい。据付面121は平らな水平面、或いは水平面となるように調整される平面である。
【0037】
据付面121は、免震装置8を固定するボルト91が挿入されるボルト孔122を有する。据付板120には、裏面から架台フレーム部110の内部に突出するように、据付板120をスラブコンクリートKに定着させるためのコンクリート定着部が設けている。コンクリート定着部は、本実施の形態では、アンカーボルト部130と基礎定着用鉄筋部140とを含む。
【0038】
コンクリート定着部は、コンクリートが付着する面積を大きくして、コンクリートに確実に定着させるものである。
【0039】
アンカーボルト部130は、据付板120内で、ボルト孔122内に内嵌させた状態で配設される袋状ナット部132と、袋状ナット部132の開口端とは逆側(ここでは下端側)で連設され、据付板120の裏面から下方に突出するアンカー部134とを有する。
【0040】
袋状ナット部132は、ボルト孔122から上方に臨む開口端から挿入されるボルト91と螺合するように設けられ、このボルト91を介して免震装置8が据付面121に据え付けられる。
【0041】
アンカー部134は、軸状の長尺部材から構成され、架台フレーム部110の中空部102内に突出して設けられている。アンカー部134は、スラブコンクリートK内に埋設されることにより、スラブコンクリートKに定着する。アンカー部134が、スラブコンクリートKに固定されることにより、据付板120はスラブコンクリートKに固定する。
【0042】
また、アンカー部134の定着により、PCaブロック100が、設置箇所における周囲の基礎部分と強固に固定する。
【0043】
アンカー部134の下端には、定着プレート136がアンカー部134の軸方向と直交する方向に張り出るように固定されている。これにより、図1では、アンカー部134には、軸方向から突出して定着プレート136が配置されて、スラブコンクリートK内におけるアンカー部134の軸方向の移動が規制され、より強固にスラブコンクリートKに定着されている。これにより、据付板120は、スラブコンクリートKに対して引き抜き力の向上を図ることができる。
【0044】
基礎定着用鉄筋部140は、例えば、籠筋、柱筋等の鉄筋であり、垂直方向に延在するように配置される。
【0045】
基礎定着用鉄筋部140は、基礎として基礎内に配筋される鉄筋であり、PCaブロック100を、スラブコンクリートKを介して、設置箇所における周囲の基礎部分と強固に接続固定させる。
【0046】
基礎定着用鉄筋部140は、図1では、架台フレーム部110内でスラブコンクリートKに埋設されている。これにより、PCaブロック100をスラブコンクリートKに定着させて、PCaブロック100に作用する引き抜き力をスラブコンクリートKに伝達させる。
【0047】
基礎定着用鉄筋部140は、スラブコンクリートK内において、水平方向に配置されるスラブ鉄筋7と交差しつつ埋設されている。
【0048】
架台フレーム部110は、据付板120の下部に設けられ、据付板120を所定の高さ位置で保持する。
【0049】
架台フレーム部110は、少なくとも2面にそれぞれ設けられた開口部を有する。本実施の形態では、架台フレーム部110の据付板120を囲むように配置される4つの周面部のそれぞれに開口部118を設けた構成としているが、これに限らず、周壁部である4つの壁部のうち対向する2面、つまり、2つの壁部に設けた構成としてもよい。例えば、対応する2面は、隣り合う壁部も含み、これら壁部に開口部を設け、内部にL字状にスラブ筋7を配筋してもよい。
開口部118は、架台フレーム部110の中空部102に連続しており、中空部102を介してそれぞれの開口部118は連続する。すなわち、中空部102は、架台フレーム部110において開口部118で開口する。
本実施の形態では、架台フレーム部110は、周壁部の開口部118に加えて、底面にも中空部102に連続する開口部116を有する。中空部102には、開口部116、118を介して、基礎部分に配筋される鉄筋(図1ではスラブ鉄筋7)が配設されている。
なお、開口部としては、4つの周面部でそれぞれ開口する中空部を開口部と称しても良い。いずれにせよ、架台フレーム部110内には、周壁部のうちの少なくとも2つの面(壁部)を貫通してスラブ鉄筋7が配筋される。また、底面に形成される開口部116は、周壁部における開口部118の数に関わらず、在ったり無かったりさせてもよい。
【0050】
本実施の形態では、架台フレーム部110は、直方体形状に形成される。
【0051】
架台フレーム部110の中空部102内には、開口部116、118を介して、スラブコンクリート部Kを構築するスラブコンクリートが充填されている。これにより、架台フレーム部110は、スラブコンクリート部Kと一体化しており、免震基礎の一部として機能する。
【0052】
架台フレーム部110は、据付板120の裏面から垂下して形成される柱部114と、柱部114の下端部同士に水平に架設される下梁部112とを有する。
【0053】
柱部114は、PCaブロック100の設置箇所から据付板120までの高さを規定する。
【0054】
柱部114と下梁部112と据付板120とより、PCaブロック100の側面で開口する開口部118が形成され、柱部114の下端部で矩形枠状に配設される下梁部112により、PCaブロック100の底部で開口する開口部116を形成する。
【0055】
架台フレーム部110内の中空部102内には、開口部118を介してPCaブロック100が設置された設置箇所において捨てコンクリート部4上に配設される鉄筋(スラブ鉄筋7)が挿通されている。
【0056】
なお、開口部116は、基礎部分において垂直に配設された差筋等の鉄筋が挿通する。
【0057】
架台フレーム部110は、開口部116を挿通した差筋等の鉄筋を中空部102内で、スラブコンクリートKに埋設させる。開口部116は、PCaブロック100が設置される基礎部分から上方に柱筋等の垂直方向に延在する鉄筋が配設されている場合、これらの鉄筋を挿通させて、架台フレーム部110内で、中空部102内に充填されるスラブコンクリートKに定着させる。
【0058】
図3及び図4に示す高さ位置調整部150は、基礎部分(金属プレート5)からのPCaブロック100自体の高さ、つまり、据付面121の高さ位置を調整するものである。
【0059】
本実施の形態の高さ位置調整部150は、PCaブロック100の底面、つまり、下梁部112の下面から軸部154が出没自在に設けられた押しボルトにより構成される。
【0060】
基礎部分側、つまり捨てコンクリート部4側に布設される金属プレート5は、軸部154が当接した際に、ボルトの軸部154側に十分な応力を付与するためのものである。
【0061】
押しボルトは、ボルト頭部152から突出する軸部154を、下梁部112のボルト孔112aに螺合し、螺合状態により下梁部112の下面から出没自在に取り付けられる。ボルト頭部152は、下梁部112の上面に掛止可能に構成されている。
【0062】
高さ位置調整部150は、金属プレート5上に設置しスラブコンクリートKを打設する前に、操作部として機能する各ボルト頭部152を回転させて、軸部154の突出長を調整する。これにより、PCaブロック100の底面、つまり、下梁部112の下面からの軸部154の突出長さが変更し、PCaブロック100の高さ、ひいては、免震装置8の据え付け高さを意味する据付面121の高さを調整する。
【0063】
軸部154は、PCaブロック100の底面において、開口部116を囲む下梁部112の全周に亘って配置されているので、それぞれのボルト頭部152を適宜回転して、各軸部154のボルト孔112aとの螺合状態を独立して調整できる。これにより、据付面121の高さ位置に対して細かな高さ調整を行うことができる。
【0064】
なお、PCaブロック100の設置箇所における水平位置は、例えば、図1及び図4に示すように、PCaブロック100の側面、ここでは下梁部112の各外面の角部に対向して配置される水平位置調整部30により位置決めさせる。
【0065】
水平位置調整部30は、例えば、各角部に対向して配置される対向面部32から角部の面に向かって出没自在に取りつけられた所謂レベリングボルト34を有する。なお、対向面部32は、各角部の直交する側面のそれぞれに所定間隔を空けて対向して、金属プレート5或いは捨てコンクリート部4に固定されている。所定間隔とは、PCaブロック100が水平方向に移動可能な範囲であり、且つ、対向面から突出するレベリングボルト34の先端がPCaブロック100を押圧可能な間隔である。
【0066】
レベリングボルト34の対向面部32に対する螺合状態を調整することにより、対向面部32からのレベリングボルト34の突出長を調整して、高さ方向をZとすると、金属プレート5上のXY平面上での位置決めを行うことができる。
【0067】
このように、PCaブロック100は、免震基礎となる捨てコンクリート部4上の金属プレート5上に配置され、据付板120の据付面121に免震装置8が据え付けられて固定されている。加えて、PCaブロック100の架台フレーム部110の中空部102内には、周囲の基礎部分に配設されるスラブ鉄筋7と、据付板120に設けられたコンクリート定着部(130、140)とが配設され、充填されたスラブコンクリートに定着されている。これにより、PCaブロック100に予め設けられたスラブ鉄筋7とコンクリート定着部(具体的には、アンカーボルト部130及び基礎定着用鉄筋部140)は、スラブコンクリート部Kに埋設された状態となり、スラブコンクリート部Kと一体となる。
【0068】
これにより免震装置架台構造1では、免震装置8を介して、免震装置8にかかる水平方向の荷重である剪断力を含む上方向から受ける荷重は、PCaブロック100を含むスラブコンクリート部K全体で受けることができる。すなわち、PCaブロック100を含むスラブコンクリート部Kには、免震装置8により水平方向の力、つまり剪断力は免震装置8で受けるので、下方向の荷重のみが伝達さされて、これを支持することができ、免震装置8が受ける高面圧(例えば、圧縮方向の許容応力度が15N/mm以上)下においても、これを受けて支えることができる。
【0069】
<免震装置架台構造1の構築方法>
次に、図5及び図6を用いて免震装置架台構造1の構築方法を説明する。図5及び図6は、本発明の実施の形態1に係る免震装置架台の構築方法を模式的に示す図である。
【0070】
図5(A)に示すように、まず、免震装置を介して上部構造物を支えるために、栗石、割栗石、砕石、杭等を設けて地業3を構築し、地業3上にコンクリートを打設して、水平面を有する捨てコンクリート部4を構築する。次いで、捨てコンクリート部4上において、基礎の所定箇所、具体的には、免震装置8の配置箇所の直下の位置に金属プレート5を布設して固定する。金属プレート5はボルト等により捨てコンクリート部4に固定されてもよい。
【0071】
次いで、図5(B)に示すように、金属プレート5上に現場搬入前に構築したPCaブロック100を載置する。PCaブロック100は、中空部102を有し、且つ中空部102は、開口部116、118によりPCaブロック100の外方と連通する構成であるので、中実の構成と比較して軽く容易に所定の箇所に載置できる。
【0072】
PCaブロック100において高さ位置調整部150によりPCaブロック100の高さ、つまり、据付板120の据付面121の高さを調整する(図5(C)参照)。
【0073】
この据付面121の高さ位置は、スラブコンクリートを打設して形成されるスラブコンクリート部Kの上面のスラブ面よりも上方に位置するように調整される。また、水平位置調整部30によりPCaブロック100の水平方向の位置を調整する。なお、この高さ調整及び水平調整は、この工程では大凡の調整のみ行い詳細な調整は、スラブコンクリート打設前に行うとよい。
【0074】
次いで、基礎スラブ用のスラブ鉄筋7を、捨てコンクリート部4上に水平方向に延在するように配置する(図6(A)参照)。その際、スラブ鉄筋7は、PCaブロック100の開口部118、中空部102内を貫通させて配置する。このとき、スラブ鉄筋7は、PCaブロック100内で、コンクリート定着部(アンカーボルト部130、基礎定着用鉄筋部140)を避けるようにして好適に配置することができる。また、開口部116を挿通する差筋等の鉄筋が配設されていれば、この鉄筋も避けるようにスラブ鉄筋7を配置する。なお、コンクリート定着部(アンカーボルト部130、基礎定着用鉄筋部140)が無い場合は、スラブ鉄筋7を、そのまま、PCaブロック100の開口部118及び中空部102内を貫通させて配筋する。
【0075】
このように、スラブを構成するための、捨てコンクリート部4上で水平方向に延在するスラブ鉄筋7は、PCaブロック100の近傍において、その延在方向の途中で断絶させることなく、PCaブロック100内を容易に挿通させて配置される。
【0076】
次いで、図6(B)に示すように、捨てコンクリート部4上に、スラブコンクリートを打設して、スラブ鉄筋7を埋設し、且つ、PCaブロック100内にスラブコンクリートを充填させて、コンクリート定着部(アンカーボルト部130、基礎定着用鉄筋部140)を埋設して定着させる。
【0077】
次いで、図6(C)に示すように、スラブ基礎の一部となったPCaブロック100の据付面121に、免震装置8を据え付けて、ボルト95を介して固定する。
【0078】
なお、スラブ基礎を構築する際にあたり、スラブコンクリート打設時に形成される隙間等はグラウト材を圧入して隙間に充填させて一体化させる。
【0079】
このように本実施の形態では、PCaブロック100を用いることにより、高面圧下であっても、免震装置8を搭載して、安定した品質で、且つ、容易に製作できる。
【0080】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る免震装置据付用部材としてのPCaブロック100Aを用いた免震装置架台構造の要部構成を模式的に示す図であり、図8は、本発明の実施の形態2に係る免震装置据付用部材の斜視図である。
【0081】
免震装置架台構造1Aは、実施の形態1の免震装置架台構造1Aと比較して、PCaブロック100Aの構成のみ異なる。よって、以下では、免震装置架台構造1と異なる構成のみ詳細に説明し、同様の構成要素については同符号同名称を付して説明は省略する。
【0082】
すなわち、図7に示す免震装置架台構造1Aは、上部構造物と下部構造物との間に配置される免震装置8が固定される下部構造物であり、本実施の形態では、下部構造物をスラブ基礎の一部とし、突出した部位の据付面121が水平面である免震基礎である。据付面121上に免震装置8が固定される。
【0083】
免震装置架台構造1Aは、地業3上に打設された捨てコンクリート部4、金属プレート5、スラブ鉄筋7、免震装置架台用PCaブロック100A、スラブコンクリート部Kを有する。免震装置架台構造1Aでは、上部構造物の柱等の下部に配置された免震装置8が据え付けられている。
【0084】
<PCaブロック100A>
PCaブロック100Aは、現場に搬入される前に、工場等で型枠を用いる等してコンクリートを打設することによりPCaブロック100と同様に製作される。
【0085】
PCaブロック100Aは、基礎の所定箇所に設置され、スラブコンクリートを打設することにより免震基礎の一部として一体的に形成される。
【0086】
PCaブロック100Aは、基礎部分の所定箇所、ここでは、捨てコンクリート部4上に布設された金属プレート5上に設置されるとともに、水平面状の据付面121に免震装置8が設置されて、免震装置8に固定される。
【0087】
PCaブロック100Aは、PCaブロック100と異なり、据付板120Aと架台フレーム部110Aとが分割可能に構成されている。
【0088】
すなわち、PCaブロック100Aは、高さ位置調整部150を有し、基礎部分に設置される架台フレーム部110Aと、コンクリート定着部(130、140)を有し、架台フレーム部110A上に接続部170を介して接続され、免震装置8が固定される据付板120Aとを備える。
【0089】
据付板120Aは、矩形板状のPCa板であり、免震装置8が固定されるベースプレートとして機能し、免震装置8が固定される据付面121を有する。
【0090】
据付板120Aは、内部に鉄筋が格子状に配筋されている。なお、据付板120Aでは、据付面121を、ベースプレートとなる平らな金属板を埋め込むことで形成されてもよい。
【0091】
据付板120Aには、アンカーボルト部130が上面のボルト孔122に袋状ナット部132を内嵌させてアンカー部134を据付板120Aの下面から下方に突出させた状態で固定されている。また、据付板120Aには、基礎定着用鉄筋部140の上端部が埋設され、下端部側が据付板120Aの下面から下方に突出するように固定されている。アンカーボルト部130及び基礎定着用鉄筋部140は、実施の形態におけるものと同様に、コンクリート定着部を構成し、PCaブロック100A内に充填されるスラブコンクリートに埋設されることにより、スラブコンクリートにより形成されるスラブコンクリート部Kに定着されている。
【0092】
据付板120Aは、架台フレーム部110Aに接続部170を介して接続される被接続部(図示省略)を有する。本実施の形態では、接続部170は凸部であるので、被接続部は、凸部が挿入して係合する凹部である。凹部は、据付板120Aの裏面側の角部にそれぞれ形成されている。据付板120Aの裏面側の角部に架台フレーム部110Aの柱部114Aの上端が突き当たることにより、柱部114Aの上端に設けられた接続部170と係合する。
【0093】
架台フレーム部110Aは、上方に開口する中空部102Aを有する。中空部102Aには、PCaブロック100Aにおいて外周部及び底部の少なくとも一面部に設けられた開口部(本実施の形態では開口部116A、118A)を介して、基礎部分に配筋される鉄筋(図7ではスラブ鉄筋7)が配設される。
【0094】
また、中空部102A内には、開口部116A、118Aを介して、スラブコンクリート部Kを構築するスラブコンクリートが充填されている。これにより、架台フレーム部110Aは、スラブコンクリート部Kと一体化しており、免震基礎の一部として機能する。
【0095】
本実施の形態では、図8に示すように、架台フレーム部110Aは、上方で開口する直方体形状の枠状体である。具体的には、架台フレーム部110Aは、矩形枠状の架台底部112Aと、架台底部112Aの角部から垂直に立設された柱部114Aとを有する。
【0096】
架台底部112Aは、PCaブロック100Aの底部を構成する。架台底部112Aには、高さ位置調整部150が設けられ、基礎部分(金属プレート5)からのPCaブロック100A自体の高さ、つまり、据付面121の高さ位置を調整できる。
【0097】
架台底部112Aは、開口部116Aを有しているが、板状であってもよい。架台底部112Aは開口部116Aを有するので、PCaブロック100Aが設置される箇所において、設置面から突出する鉄筋が配設されていても開口部116Aを挿通させて、PCaブロック100A内に配置させることができる。また開口部116Aを有するので、中空部102A内に充填されるスラブコンクリートにより、PCaブロック100Aと、その設置箇所とを強固に接合できる。
【0098】
柱部114Aは、架台底部112Aから据付板120Aまでの高さを規定する。図7では、架台フレーム部110Aに据付板120Aが固定されているので、柱部114Aは、据付板120Aの裏面から垂下するように配設されている。
【0099】
柱部114Aは、上端面に設けられた接続部170を介して据付板120Aを位置決めして接続させる。本実施の形態では、接続部170は、凸部であるので、柱部114Aの上端面から突出して設けられ、凸部に据付板120Aの凹部を係合して固定されている。
【0100】
このように構成されるPCaブロック100Aの架台フレーム部110Aの中空部102A内には、開口部118Aを介してPCaブロック100Aが設置された設置箇所において捨てコンクリート部4上に配設される鉄筋(スラブ鉄筋7)が挿通されている。
【0101】
このPCaブロック100Aを有する免震装置架台構造1Aは、PCaブロック100を用いてなる免震装置架台構造1と同様の作用効果を得ることができる。
【0102】
<免震装置架台の構築方法>
次に、図9及び図10を用いて実施の形態2の免震装置架台構造1Aの構築方法を説明する。図9及び図10は、本発明の実施の形態2に係る免震装置架台の構築方法を模式的に示す図である。
【0103】
図9(A)に示すように、図5(A)と同様に、地業3、捨てコンクリート部4を順に構築し、捨てコンクリート部4上に金属プレート5を布設して固定する。
【0104】
次いで、図9(B)に示すように、金属プレート5上に、現場搬入前に構築したPCaブロック100Aの架台フレーム部110Aを載置する。架台フレーム部110Aは、矩形枠状の架台底部112Aと柱部114Aとにより構成されるので、中実の構成は勿論のこと、PCaブロック100と比較しても軽く一層容易に所定の箇所に載置できる。また、高さ位置調整部150により柱部114Aの上端の高さを調整する。また、水平位置調整部30によりPCaブロック100Aの水平方向の位置を調整する。なお、この高さ調整及び水平調整は、この工程では大凡の調整のみ行い詳細な調整は、スラブコンクリート打設前に行うとよい。
【0105】
次いで、図9(C)に示すように、基礎スラブ用のスラブ鉄筋7を、捨てコンクリート部4上に水平方向に延在するように配置する。このとき、架台フレーム部110Aの中空部102A及び開口部118Aは、上方に開口しているので、スラブ鉄筋7は、架台フレーム部110Aの上方から、中空部102A内に、開口部118Aを通して、容易に配置させることができる。なお、開口部116Aを挿通する差筋等の鉄筋が配設されていれば、この鉄筋も避けるようにスラブ鉄筋7を配置する。
【0106】
このように、捨てコンクリート部4上で水平方向に延在するスラブ鉄筋7は、架台フレーム部110Aの近傍において、その延在方向の途中で断絶させることなく、架台フレーム部110A(PCaブロック100A)内を容易に挿通させて配置される。
【0107】
次いで、図10(A)に示すように、架台フレーム部110A上に据付板120Aを接続する。このとき、据付板120Aは、架台フレーム部110Aに接続部170を介して接続されるので、その接続位置を正確に位置決めされた状態で接続される。
【0108】
そして、図10(B)に示すように、必要に応じて、据付板120Aから架台フレーム部110Aの中空部102A内に突出するコンクリート定着部(アンカーボルト部130及び基礎定着用鉄筋部140)と交差する高さ位置のスラブ鉄筋7を配置する。このとき、スラブ鉄筋7は、PCaブロック100A内で、コンクリート定着部を避けるようにして好適に配置することができる。なお、開口部116Aを挿通する差筋等の鉄筋が配設されていれば、この鉄筋も避けるようにスラブ鉄筋7を配置する。
【0109】
次いで、捨てコンクリート部4上に、スラブコンクリートを打設して、スラブ鉄筋7を埋設し、且つ、PCaブロック100A内にスラブコンクリートを充填させて、コンクリート定着部(アンカーボルト部130、基礎定着用鉄筋部140)を埋設して定着させる。
【0110】
次いで、図10(C)に示すように、スラブ基礎の一部となったPCaブロック100Aの据付面121に、免震装置8を据え付けて、ボルト91を介して固定する。
【0111】
なお、スラブ基礎を構築する際にあたり、スラブコンクリート打設時に形成される隙間等はグラウト材を圧入して隙間に充填させて一体させる。
【0112】
このように本実施の形態2では、PCaブロック100Aを用いることにより、実施の形態と比較して、PCaブロック100Aの設置作業をより容易に行うことができ、PCaブロック100A内へのスラブ鉄筋7の配筋作業も容易に行うことで、高面圧下であっても、免震装置8を搭載して、安定した品質で、且つ、容易に製作できる。
【0113】
なお、本実施の形態1、2では、免震装置架台構造に用いられるPCaブロック100、100Aにおける柱部114、114Aの下端部同士を、下梁部112、架台底部112Aにより接合した構成としたが、接合しなくてもよい。例えば、図11のPCaブロック100Bに示すように、実施の形態1のPCaブロック100の構成において下梁部112を除去し、据付板120と、据付板120の角部から下方に垂設した柱部114を有する架台フレーム部110Bとを有する構成としてもよい。この場合、高さ位置調整部は、柱部114Bの下端に設けてもよく、または、PCaブロック100Bが載置される金属プレート5を捨てコンクリート部4に対して上下動可能に構成することにより、据付板120の高さ位置を調整してもよい。
【0114】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0115】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0116】
1、1A 免震装置架台構造
3 地業
4 捨てコンクリート部
5 金属プレート
7 スラブ鉄筋
8 免震装置
30 水平位置調整部
32 対向面部
34 レベリングボルト
82 積層本体
84、86 フランジ
91 ボルト
100、100A、100B PCaブロック(免震装置据付用部材)
102、102A 中空部
110、110A、110B 架台フレーム部
112 下梁部
112A 架台底部
114、114A、114B 柱部
116、116A、118、118A 開口部
120、120A 据付板
121 据付面
112a、122 ボルト孔
130 アンカーボルト部
132 袋状ナット部
134 アンカー部
136 定着プレート
140 基礎定着用鉄筋部
150 高さ位置調整部
152 ボルト頭部
154 軸部
170 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11