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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】複合部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/24 20060101AFI20230607BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B32B3/24 Z
B32B3/12 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019001254
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2020110934
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】田中 憲
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207118(JP,A)
【文献】特開2001-082520(JP,A)
【文献】特開2002-103492(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159118(WO,A1)
【文献】特開2004-223942(JP,A)
【文献】特開昭56-151550(JP,A)
【文献】特開2009-269190(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098923(WO,A1)
【文献】特開平08-337261(JP,A)
【文献】特開2014-058186(JP,A)
【文献】特開2013-176984(JP,A)
【文献】特開2007-083898(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107289315(CN,A)
【文献】特表2014-529537(JP,A)
【文献】特開2006-205375(JP,A)
【文献】特開2008-037026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0222841(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1707336(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/014240(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0043187(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0223530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/12
B32B 3/24
B32B 5/02
B32B 5/18
B29C 45/00-45/27
B60R 13/02
B60R 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布のみから構成された板状体と、
前記板状体の一面における一部領域に直接重ねて配置され、枠状に形成された樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体は、
第1外枠と、該第1外枠と交差するように延びる第2外枠とにより、囲いを形成するように設けられた外枠部と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って直線状に設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と交差する方向へ延びる第1内枠と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って直線状に設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と前記第1内枠が延びる方向とに交差する方向へ延びる第2内枠と、を有している
ことを特徴とする複合部材。
【請求項2】
不織布のみまたは発泡体のみから構成された板状体と、
前記板状体の一面における一部領域に直接重ねて配置され、前記板状体とは異なる材料で、枠状に形成された樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体は、
第1外枠と、該第1外枠と交差するように延びる第2外枠とにより、囲いを形成するように設けられた外枠部と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って直線状に設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と交差する方向へ延びる第1内枠と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って直線状に設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と前記第1内枠が延びる方向とに交差する方向へ延びる第2内枠と、を有している
ことを特徴とする複合部材。
【請求項3】
不織布または発泡体から構成された板状体と、
前記板状体の一面における一部領域に直接重ねて配置され、前記板状体とは異なる材料で、枠状に形成された樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体は、
第1外枠と、該第1外枠と交差するように延びる第2外枠とにより、囲いを形成するように設けられた外枠部と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って直線状に設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と交差する方向へ延びる第1内枠と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って直線状に設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と前記第1内枠が延びる方向とに交差する方向へ延びる第2内枠と、を有し、
前記第1内枠および前記第2内枠は、4辺の長さが同じであるひし形状の区画を形成するように、格子状に配置され
前記板状体における前記ひし形状の区画内は、前記不織布のみまたは前記発泡体のみから構成されている
ことを特徴とする複合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、板状体と、板状体に一体的に形成された枠状の樹脂成形体とを備える複合部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアトリムなどに用いられる複合部材としては、不織布からなる板状の繊維体を主体とし、この繊維体の裏面に形成された樹脂成形体によって、繊維体を補強したり、車体への取付部分を形成したものがある(例えば特許文献1参照)。このような複合部材は、繊維体をセットした型で樹脂成形体を射出成形することで、繊維体に樹脂成形体をなす樹脂を含浸させて、繊維体と樹脂成形体とを接合して一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-213727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加熱して昇温させた不織布を型にセットしても、冷却時の不織布と樹脂成形体との収縮度合いが異なるので、樹脂成形体側が凹になるように反るような変形が生じることがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、見栄えのよい複合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る複合部材は、
不織布または発泡体から構成された板状体と、
前記板状体の一面における一部領域に重ねて配置され、枠状に形成された樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体は、
第1外枠と、該第1外枠と交差するように延びる第2外枠とにより、囲いを形成するように設けられた外枠部と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と交差する方向へ延びる第1内枠と、
前記外枠部の内側において、前記第1外枠および前記第2外枠の間、対向する前記第1外枠の間、または対向する前記第2外枠の間に亘って設けられ、前記第1外枠および前記第2外枠が延びる方向と前記第1内枠が延びる方向とに交差する方向へ延びる第2内枠と、を有していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る複合部材によれば、変形を抑えて見栄えを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る複合部材を示す斜視図である。
図2】実施例の複合部材を示す正面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】実施例の複合部材の製造過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る複合部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0010】
図1図3に示すように、実施例に係る複合部材10は、不織布または発泡体から構成された板状体12と、表面が意匠面となる板状体12の裏面に形成された樹脂成形体14とから構成されている。ここで、樹脂成形体14は、板状体12を補強する骨格部分や、複合部材10を取り付ける際の相手方との取付部分などを構成している。このような複合部材10は、車両におけるトランクルームのデッキ部分、ドアトリム、天井、ピラーなどの車両内装部材、エンジンアンダーカバー、フェンダーライナーなど、車両を構成する部材として好適に用いることができる。
【0011】
板状体12を構成する不織布としては、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維などの不織布を用いることができる。また、板状体12を構成する発泡体としては、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系などの発泡体を用いることができる。なお、板状体12をなす材料としては、樹脂成形体14の型成形に併せて、板状体12を所定形状に成形する場合、熱可塑性のものを用いるとよい。このように、板状体12を不織布または発泡体で構成することで、不織布や発泡体に由来する吸音や断熱などの所定の機能を、複合部材10に持たせている。
【0012】
図1および図2に示すように、樹脂成形体14は、板状体12の板面全体を覆わないように、板状体12の表面における一部領域に重ねて形成されている。なお、実施例では、樹脂成形体14の厚みを、全体として同じに設定してある。樹脂成形体14は、第1外枠16aと、この第1外枠16aと交差するように延びる第2外枠16bとにより、囲いを形成するように設けられた外枠部16と、外枠部16の内側に設けられた内枠18a,18bとから構成されている。実施例では、外枠部16が、矩形形状の板状体12における板面外縁に沿って設けられており、外枠部16により矩形状の囲いを形成している。縦方向に離して平行に配置された一対の第1外枠16a,16aが、それぞれ横方向へ延びており、横方向に離して平行に配置された一対の第2外枠16b,16bが、それぞれ縦方向へ延びている。
【0013】
図1および図2に示すように、外枠部16の内側には、第1内枠18aと、この第1内枠18aと交差するように延びる第2内枠18bとが設けられている。第1内枠18aは、第1外枠16aが延びる方向と第2外枠16bが延びる方向との両方に交差する方向へ延びるように形成されている。第1内枠18aは、外枠部16の内側において、第1外枠16aおよび第2外枠16bの間、対向する第1外枠16a,16aの間、または対向する第2外枠16b,16bの間に亘って、直線的に延在するように設けられている。このように、第1内枠18aは、外枠部16を構成する2本の外枠16a,16b(16a,16aまたは16b,16b)の間に架け渡して、第1外枠16aおよび第2外枠16bと斜めに交差するように形成されている。同様に、第2内枠18bは、第1外枠16aが延びる方向と第2外枠16bが延びる方向との両方に交差する方向へ延びるように形成されている。更に、第2内枠18bは、第1内枠18aが延びる方向と交差する方向へ延びるように形成されている。第2内枠18bは、外枠部16の内側において、第1外枠16aおよび第2外枠16bの間、対向する第1外枠16a,16aの間、または対向する第2外枠16b,16bの間に亘って、直線的に延在するように設けられている。このように、第2内枠18bは、外枠部16を構成する2本の外枠16a,16b(16a,16aまたは16b,16b)の間に架け渡して、第1外枠16aおよび第2外枠16bと斜めに交差するように形成されている。
【0014】
図1および図2に示すように、外枠部16の内側には、隣り合って平行配置された2本の第1内枠18a,18aおよび隣り合って平行配置された2本の第2内枠18b,18bにより、何れの辺も外枠16a,16bが延びる方向と交差する方向へ延びるひし形状の区画が形成されている。外枠部16の内側には、第1外枠16a、第1内枠18aおよび第2内枠18bにより、三角形状の区画が形成されている。外枠部16の内側には、第2外枠16b、第1内枠18aおよび第2内枠18bにより、三角形状の区画が形成されている。そして、外枠部16の内側の角隅部には、第1外枠16a、第2外枠16bおよび第1内枠18a(または第2内枠18b)により、三角形状の区画が形成されている。ここで、第1内枠18aおよび第2内枠18bは、4辺の長さが同じであるひし形状の区画を形成するように、外枠部16の内側に格子状に配置されている。
【0015】
図4(b)~(e)に示すように、複合部材10は、型面間でプレス可能な成形型20を用いた射出成形により製造される。成形型20は、第1型22と、この第1型22と相対的に開閉可能に構成された第2型24とから構成されている。まず、板状体12をヒータ等の加熱手段26で加熱し、板状体12を軟化させる(図4(a)参照)。軟化した板状体12を第1型22と第2型24との間にセットする(図4(b)参照)。型閉じすることで、第1型22の型面と第2型24の型面との間で板状体12を挟んで、板状体12を、例えば、水平な板形状や湾曲形状などの所定形状に成形する(図4(c)参照)。また、成形型20を型閉じすることで、第1型22の型面に凹状に形成された凹型部22aによって、板状体12の一面において樹脂成形体14に対応したキャビティ28が画成される(図4(c)参照)。樹脂原料をキャビティ28に圧力をかけつつ充填し、樹脂成形体14を成形する(図4(d)参照)。そして、射出成形により樹脂成形体14を成形した後に、第1型22と第2型24とを型開きして、複合部材10を成形型20から取り出すことで(図4(e)参照)、複合部材10が得られる。
【0016】
複合部材10は、樹脂成形体14における第1外枠16a、第2外枠16b、第1内枠18aおよび第2内枠18bが、互いに交差するように延びているので、樹脂成形体14における成形後の収縮が、縦や横だけでなく、縦や横に加えて2つの斜め方向でも生じる。このように、複合部材10は、樹脂成形体14の枠16a,16b,18a,18bが多方向に延びていることで、収縮を多方向に生じさせて、一方向に片寄って収縮することに起因する樹脂成形体14の反りを抑えることができる。また、樹脂成形体14は、内枠18a,18bが2本の外枠16a,16b(16a,16aまたは16b,16b)の間に架け渡すように形成されていることで、内枠18a,18bの収縮が格子毎で不均一になることを防止できる。従って、複合部材10は、成形後の収縮による樹脂成形体14の反りを抑えることができるので、全体として意図した通りの形状にすることができ、見栄えを向上することができる。
【0017】
第1内枠18aおよび第2内枠18bは、4辺の長さが同じであるひし形状の区画を形成するように、外枠部16の内側に格子状に配置することで、樹脂成形体14の不均一な収縮を抑えることができ、見栄えのよい複合部材10を得ることができる。
【0018】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のようにしてもよい。
(1)実施例では、内枠で構成する区画の辺の長さを同一に設定したが、これに限らず、辺の長さが異なっていてもよい。
(2)板状体の形状や樹脂成形体の形状は、実施例に限らず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0019】
12 板状体,14 樹脂成形体,16 外枠部,16a 第1外枠,
16b 第2外枠,18a 第1内枠(内枠),18b 第2内枠(内枠)
図1
図2
図3
図4