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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20230607BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230607BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/92
A61K8/86
A61K8/37
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019068053
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164479
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕政
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-265313(JP,A)
【文献】特開2005-194229(JP,A)
【文献】特開2008-247756(JP,A)
【文献】特開平07-126122(JP,A)
【文献】特開2014-172845(JP,A)
【文献】特開2017-100980(JP,A)
【文献】特開2006-096670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)融点が60~80℃である固形油
(B)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油
(C)HLB3-7のイソステアリン酸ソルビタン
(D)精製水
を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比が1≦(B)/(A)であり、成分(C)に対する成分(B)の含有質量比が2≦(B)/(C)≦10であり、かつ700nmにおける透過率が70%以上である水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記成分(C)がHLB3-7の脂肪酸ソルビタンであることを特徴とする請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)が融点が60~80℃であるワックスエステルであることを特徴とする請求項1または2記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記成分(A)がミツロウ及びキャンデリアロウから選ばれる1種または2種のワックスエステルを含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関し、更に詳しくは、融点が60~80℃である固形油とイソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油とHLB3-7のノニオン性界面活性剤と精製水を特定の比率で配合することにより、乳化安定性に優れるのみならず、外観の透明性が高く、後肌のハリ感にも優れる、水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中油型乳化化粧料は、塗布時の伸びの軽さや皮膚等への親和性の良さ等の理由から、基礎化粧料、頭髪化粧料等に広く用いられている。水中油型乳化化粧料に使用される油剤は、一般的に使用性や感触、安定性の観点から液状油剤が多用されてきた。しかし、液状油だけで構成された水中油型乳化化粧料は、基礎化粧料においてはハリ感、リフト感等の化粧効果の点で満足いくものが得られなかった。そこで、それらの化粧効果を向上させるために、水中油型乳化化粧料に固形油を安定に配合し、固形油のもつ機能を活かす技術の検討が行われてきた。
【0003】
例えば、ワックス粒子の水性分散体と水溶性被膜形成性ポリマーと顔料とを配合する技術(例えば、特許文献1参照)、両性界面活性剤及び/または半極性界面活性剤と非イオン界面活性剤とワックスとを含有するワックスの微細分散組成物の技術(例えば、特許文献2参照)、ワックスエステルとトリグリセリドと部分グリセリドと脂肪アルコールポリグリコールエーテルを含有するPITエマルジョンの技術(例えば、特許文献3参照)等が挙げられる。
【0004】
【文献】特開平6-009341公報
【文献】特開平10-324617公報
【文献】特表2001-508779公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では安定なエマルションを形成させるために粘度を高くしたものが中心であり、固形油を多量に配合できる剤型が乳液やクリームなどに限定されていた。また、化粧水では、分散安定性を得るためにイオン性界面活性剤を配合する必要があり、電解質が多い系では安定性不良がみられ、白濁してしまうという問題を有していた。また、電解質の影響を受けにくいノニオン性界面活性剤を用いて固形油を微細乳化した系においても、配合できる固形油の量が限定され、ハリ感などの化粧効果が弱いという課題が残った。そのため、化粧水などの粘度の低い剤型においても、安定に多量の固形油を配合することで、高い化粧効果を有する水中油型乳化化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、融点が60~80℃である固形油を、精製水の存在下にて、イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油とHLB3-7のノニオン性界面活性剤と共に、特定の比率で高温にて混合し、乳化することにより、乳化安定性に優れるのみならず、外観の透明性が高く審美性があり、かつ後肌のハリ感にも優れる水中油型乳化化粧料が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)次の成分(A)~(D);
(A)融点が60~80℃である固形油
(B)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油
(C)HLB3-7のノニオン性界面活性剤
(D)精製水
を含有し、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比が1≦(B)/(A)であり、成分(C)に対する成分(B)の含有質量比が2≦(B)/(C)≦10であり、かつ700nmにおける透過率が70%以上である水中油型乳化化粧料を提供するものである。
(2)前記成分(C)がHLB3-7の脂肪酸ソルビタンであることを特徴とする前記(1)記載の水中油型乳化化粧料、
(3)前記成分(C)がHLB3-7のイソステアリン酸ソルビタンであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の水中油型乳化化粧料、
(4)前記成分(A)が融点が60~80℃であるワックスエステルであることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料、
(5)前記成分(A)がミツロウ及びキャンデリアロウから選ばれる1種または2種のワックスエステルを含有することを特徴とする前記(1)~(4)のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中油型乳化化粧料は、経時での乳化安定性と外観の透明性とを両立し、後肌のハリ感にも優れるため、アンチエイジング用化粧料等として有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される成分(A)の融点が60~80℃である固形油は、肌上に膜を形成することによりハリ感を与えるために配合されるものである。これらの固形油は融点が60~80℃である化粧料に一般に用いられる固形油であれば特に制限はない。具体的には、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、モクロウ、オゾケライトワックス、ミツロウ、エチレン・プロピレン共重合体、キャンデリラワックス(キャンデリラロウ)、カルナウバワックス(カルナウバロウ)、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、セレシン、ライスワックス、ベヘニン酸、トリベヘン酸グリセリル等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも特に、ミツロウ、キャンデリラワックスがより好ましく、市販品としては、WHITE BEESWAX(三木化学社製 融点:60~67)、精製キャンデリラワックスSR-3(日本ナチュラルプロダクツ社製 融点:70~75℃)等が挙げられる。
【0010】
本発明における成分(A)の含有量は、0.1~10質量%(以下、単に「質量%」を「%」と略す)が好ましく、0.5~5%が特に好ましい。含有量がこの範囲であれば、高いハリ感と外観の透明性が得られ、更に乳化安定性も良好で満足のいくものが得られる。
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される成分(B)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油は、経時での乳化安定性を高めるために配合されるものである。水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加したものを、イソステアリン酸でエステル化したものであり、市販品としては、EMALEX RWIS-150、EMALEX RWIS-150EX(以上、日本エマルジョン株式会社製)等が挙げられる。
【0012】
本発明における成分(B)の含有量は、0.1~15質量%が好ましく、0.5~10%が特に好ましい。含有量がこの範囲であれば、高いハリ感と外観の透明性が得られ、更に乳化安定性も良好で満足のいくものが得られる。
【0013】
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される成分(C)HLB3-7のノニオン性界面活性剤は、成分(B)と同様に経時での乳化安定性を高めるために配合されるものである。具体的には、そのHLB値が3-7の範囲内で、化粧料に通常用いられるノニオン活性剤であれば、いずれでもよいが、その好ましいものとしては、脂肪酸ソルビタン、更に好ましいものとしてはイソステアリン酸ソルビタンが挙げられる。市販品としては、NIKKOL SI-10RV(日本サーファクタント工業社製)等が挙げられる。
【0014】
本発明における成分(C)の含有量は、0.01~7.5質量%が好ましく、0.05~5%が特に好ましい。含有量がこの範囲であれば、高いハリ感と外観の透明性が得られ、更に乳化安定性も良好で満足のいくものが得られる。
【0015】
上記成分(A)に対する成分(B)の含有質量比は1≦(B)/(A)であり、(B)/(A)が1未満であると外観の透明性が低下し、安定性の面で劣る場合がある。また成分(C)に対する成分(B)の含有質量比は2≦(B)/(C)≦10であり、(B)/(C)が2未満であると、乳化直後から安定性に劣る場合があり、10を超えると、外観の透明性が低下し、安定性の面でも場合がある。
【0016】
本発明の水中油型乳化化粧料に使用される成分(D)の精製水は、水中油型乳化化粧料を構成する上で必須の成分であり、化粧料に一般に用いられる精製水であれば特に制限はない。精製水は、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水等でも良く、必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。
【0017】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されず、適宜、他の成分量に応じて含有することができるが、概ね60~99%の範囲で用いることができる。含有量がこの範囲であれば、高いハリ感と外観の透明性が得られ、更に乳化安定性も良好で満足のいくものが得られる。
【0018】
また本発明の水中油型乳化化粧料において、700nmにおける透過率が70%以上であると、外観の透明性が得られ、更に温度変化があっても乳化を安定に保つことができる。ここで透過率は、紫外可視分光光度計UV-2600(島津製作所社製)を用いて測定する。
【0019】
本発明の水中油型乳化化粧料は、上記の成分(A)~(D)の他に、通常化粧料に使用される成分、例えば感触調整やエモリエント成分としての油性成分、感触調整や着色としての粉体成分、繊維、粉体分散や粉体分散剤としての界面活性剤、保湿や感触調整剤としての水性成分、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0020】
成分(A)以外の油性成分としては、化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、リンゴ酸ジイソステアリル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリメリト酸トリデシル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、ダイマージリノール酸(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)、メドウフォーム油、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、水添アビエチン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、トリグリセライド等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、沸点が常圧において260℃以下の側鎖を有する飽和炭化水素油、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルシクロペンタシロキサンなどの低分子鎖状ポリシロキサン、低重合度ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の低分子環状のシリコーン油等の揮発性油剤、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、12-ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0021】
成分(B)及び成分(C)以外の界面活性剤としては、化粧料一般に用いられているものであればいずれのものも使用できるが、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0022】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー等の合成系のものを挙げることができる。タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の他の保湿剤を含有する事もできる。
【0023】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は、特に限定されず通常公知の方法で製造可能であり、製造機器としては、一般のディスパーションのような分散・乳化機器であればいずれでもよい。例えば、成分(A)、及び成分(B)、及び成分(C)を混合した後、成分(A)の融点以上に加温し、更に同温度に加温した成分(D)を加えてディスパージョンにより乳化混合した後、冷却することにより得ることができる。
【0024】
本発明の水中油型乳化化粧料の剤型としては、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状等、種々の剤型にて実施することができ、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、シートマスク等の基礎化粧料、ヘアクリーム、ヘアワックス等の頭髪化粧料、口紅、コンシーラー、ファンデーション、頬紅、日焼け止め化粧料等のメイクアップ化粧料に用いることができる。この中でも、本発明品において顕著な特徴である外観の透明性や粘度の点で化粧水、あるいはそれらを含浸したシートマスク等の基礎化粧料に好適に用いられる。
【実施例
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1~5及び比較例1~6:水中油型乳化化粧料
下記表1に示す処方の水中油型乳化化粧料を調製し、ハリ感と安定性について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
(製造方法)
A.成分(1)~(7)を約80℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに約80℃に加熱した(8)を添加し、乳化後、冷却する。
C.Bを容器に充填して水中油型乳化化粧料を得た。
【0028】
(評価方法1)
a.ハリ感
実施例1~5及び比較例1~6の各試料について、化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行った。各試料1.5g程度を顔全体になじませた後、パネル各人が後肌のハリ感に関して、下記絶対評価にて5段階に評価し評点をつけ、各試料ごとにパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0029】
絶対評価基準
(評点):(評価)
5:非常に感じる
4:やや感じる
3:普通
2:あまり感じない
1:感じない
【0030】
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4.5点以下:良好
△ :1.5点を超える3点以下:やや不良
× :1.5点以下 :不良
【0031】
(評価方法2)
c.高温安定性(50℃)
d.低温安定性(5℃)
各試料を50℃または5℃の恒温槽に1ヶ月間保管し、調製直後の状態を基準として、分離やゲル化の有無を目視観察し、下記4段階評価基準により評価した。
【0032】
評価基準
(判定):(評価)
◎ :変化なし
○ :ごく僅かに変化がある
△ :やや変化がある
× :かなり変化がある
【0033】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1~5の水中油型乳化化粧料は、比較例1~6の水中油型乳化化粧料に比べ、高いハリ感と外観の透明性、高温安定性、低温安定性の全てにおいて優れたものであった。
これに対して、成分(A)の代わりに融点が85~90℃である固形油を用いた比較例1では、外観の透明性が損なわれることに加え、低温の乳化安定性に劣るものであった。成分(B)に換えて同様な可溶化能を有する活性剤を用いた比較例2では、後肌のハリ感がの点で満足のいくものではなく、高温及び低温における安定性にも劣るものであった。また、成分(C)の代わりにHLB10のノニオン性界面活性剤を用いた比較例3においても、ハリ感、高温及び低温における安定性の点で満足いくものは得られなかった。更に、各成分の配合比率が適性比率から外れた比較例4~6においては、ハリ感は得られるものの、高温及び低温における乳化安定性が悪く、外観の透明性の点でも満足のいくものは得られなかった。
【0034】
実施例6:化粧水
(成分) (%)
(1)ミツロウ 2
(2)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 5
(3)モノイソステアリン酸ソルビタン 0.5
(4)アスタキサンチン 0.002
(5)イソプロピルメチルフェノール 0.01
(6)ビタミンE 0.03
(7)精製水 残量
(8)グリセリン 5
(9)ジプロピレングリコール 5
(10)1,3-ブチレングリコール 5
(11)精製水 5
(12)エタノール 8
(13)フェノキシエタノール 0.2
(14)ナイアシンアミド 3
(15)ベタイン 1
(16)乳酸ナトリウム 1
(17)ポリクオタニウム-51 0.01
(18)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 1
(19)アルカリゲネス産生多糖体 0.01
【0035】
(製造方法)
A.成分(1)~(6)を約80℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに約80℃に加熱した(7)を添加し、乳化後、冷却する。
C.Bに(8)~(19)を混合する。
D.Cを容器に充填して化粧水を得た。
(結果)
以上のようにして得られた化粧水は、後肌のハリ感が高く、外観の透明性及び経時安定性にも優れたものであった。
【0036】
実施例7:シート状化粧料
(成分) (%)
(1)キャンデリラロウ 1
(2)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 2
(3)モノイソステアリン酸ソルビタン 0.4
(4)コレステロール 0.01
(5)セラミド3 0.01
(6)ビタミンE 0.01
(7)精製水 残量
(8)グリセリン 5
(9)1,3-ブチレングリコール 10
(10)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(11)精製水 3
(12)エタノール 5
(13)アスコルビン酸グルコシド 3
(14)アルブチン 1
(15)乳酸ナトリウム 2
(16)ポリアクリル酸ホスホリルコリングリコール *1 0.01
(17)水酸化ナトリウム 0.13
(18)リン酸一水素ナトリウム 0.1
(19)リン酸二水素ナトリウム 0.1
(20)キサンタンガム 0.05
*1 LIPIDURE HM-600(日油社製)
【0037】
(製造方法)
A.成分(1)~(6)を約80℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに約80℃に加熱した(7)を添加し、乳化後、冷却する。
C.Bに(8)~(20)を混合し液状化粧料を得た後、これを不織布に含浸させる。
D.Cをアルミラミネートの袋状容器に密封充填し、シート状化粧料を得た。
(結果)
以上のようにして得られたシート状化粧料は、液状化粧料を含浸した不織布シートを顔面に貼り、10分後に剥がして使用するが、高いハリ感を有するものであった。
【0038】
実施例8:美容液
(成分) (%)
(1)ミツロウ 3
(2)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 8
(3)モノイソステアリン酸ソルビタン 1
(4)水添ポリイソブテン 1
(5)香料 0.05
(6)精製水 残量
(7)グリセリン 6
(8)ジグリセリン 1
(9)1,3-ブチレングリコール 5
(10)エタノール 6
(11)フェノキシエタノール 0.3
(12)水酸化ナトリウム 0.15
(13)ヒアルロン酸 0.01
(14)加水分解コラーゲン 0.01
(15)エデト二酸ナトリウム 0.02
(16)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
(17)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.20
(18)カルボキシビニルポリマー 0.12
【0039】
(製造方法)
A.成分(1)~(5)を約80℃に加熱し、均一に混合する。
B.Aに約80℃に加熱した(6)を添加し、乳化後、冷却する。
C.Bに(7)~(18)を混合する。
D.Cを容器に充填して美容液を得た。
(結果)
以上のようにして得られた美容液は、直後に高いハリ感があり、外観の透明性及び乳化安定性にも優れたものであった。