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特許7290983空気噴射式タックイン装置用のタックインヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】空気噴射式タックイン装置用のタックインヘッド
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/48 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
D03D47/48
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019072274
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020169421
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小島 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】谷田 伸夫
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01126062(EP,A1)
【文献】特開2011-063897(JP,A)
【文献】特開2003-096646(JP,A)
【文献】特開2003-166148(JP,A)
【文献】特開2011-111700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを有するタックインヘッドであって、前記スリットにおける上下に対向するスリット面間に導入される緯糸の端部をタックインノズルからの空気噴射によってタックインする空気噴射式タックイン装置用のタックインヘッドにおいて、
上側の前記スリット面を含む部分を成す第1の部材と、該第1の部材とは別に形成された第2の部材であって下側の前記スリット面を含む部分を成す第2の部材とを組み合わせて構成されることで前記第1の部材と前記第2の部材とに分割可能に構成されると共に、分割位置が前記スリットの延在方向における前記スリットの底面の位置と一致する位置となるように構成されており、
前記第1の部材及び前記第2の部材のうちの少なくとも一方に凸部が形成されると共に他方に前記凸部と嵌まり合う凹部が形成され、前記凹部に前記凸部が嵌め合わされた状態で前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わされている
ことを特徴とする空気噴射式タックイン装置用のタックインヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットを有するタックインヘッドであって、前記スリットにおける上下に対向するスリット面間に導入される緯糸の端部をタックインノズルからの空気噴射によってタックインする空気噴射式タックイン装置用のタックインヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように空気噴射式タックイン装置は、タックインヘッドを主体として構成されており、タックインヘッドに設けられたタックインノズルから噴射される圧縮空気により、緯入れされた緯糸の端部を経糸開口内へ折り返す(タックインする)ものである。また、そのタックインヘッドは、上下に対向するスリット面で画定されるスリットを有しており、織布の織端近傍において、緯入れされた緯糸のその端部が筬打ちに伴ってそのスリット内に導入されるように配置されている。そのような空気噴射式タックイン装置(タックインヘッド)としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
因みに、そのような空気噴射式タックイン装置(以下、単に「タックイン装置」とも言う。)は、スリットに導入された緯糸の端部を前記タックインが行われる時まで保持するための構成を含んでおり、特許文献1のタックイン装置では、下側のスリット面に開口する保持孔(緯糸端把持孔)と、その保持孔へ向けて圧縮空気を噴射する保持ノズル(緯糸端把持ノズル)とがタックインヘッドに形成されている。また、タックイン装置は、前記のように保持された緯糸の端部をタックインノズルから噴射される圧縮空気が作用する位置へもたらす構成を含んでおり、特許文献1のタックイン装置では、スリットの底面に開口して圧縮空気を噴射する緯糸解放ノズルがタックインヘッドに形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-111700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なタックイン装置では、タックインヘッドは単一の部材で製造されており、そのスリットは、その単一の部材に対し切削等の加工を施すことで形成されている。また、そのスリットにおける上下のスリット面の間隔は、非常に小さく、例えば1mm程度である。なお、スリット面の状態(表面粗さ)がタックインの成否に影響を及ぼす場合があるため、スリットを形成するための前記加工は、当然ながら、スリット面の状態が製織時のタックインに悪影響を及ぼさない程度となるように行われる。
【0006】
ところが、製造されたタックインヘッドの中には、加工不良等が原因で、そのスリット面の表面粗さの程度が適正ではないものが含まれている場合もある。しかし、前記のように上下のスリット面の間隔は非常に小さいため、外部からはそのスリット面の状態は確認することができず、そのようなタックインヘッドも、織機に搭載されて、あるいは部品として出荷されてしまう。
【0007】
なお、前記のようにスリット面の表面粗さが適正では無いタックインヘッドが用いられた場合、製織(試織)において、タックインが正常に行われないこと(以下、「タックイン不良」と言う。)が頻発する虞がある。その上で、そのようにタックイン不良が頻発した場合、作業者は、その原因が何であるかを特定する作業を行わなければならなくなる。加えて、その原因がスリット面の状態であると分かった場合には、製織工場において、そのスリット面の表面粗さを適正な程度とする追加工を作業者が行わなければならなくなる。そして、これらの作業は、作業者にとって負担となる。さらには、前記のような追加工は作業者が手作業で行うものとなるため、場合によっては、スリット面の表面粗さを適正な程度とすることができず、タックインヘッドの交換が必要となることもある。
【0008】
また、特許文献1に開示されたタックイン装置のように、タックインヘッドに保持孔が形成される場合には、その保持孔を形成するための加工により、スリット面における保持孔が開口する部分にバリが残った状態となってしまっている場合もある。そして、そのバリが残っている状態も、前記したスリット面の表面粗さが適正では無い場合と同様に、タックイン不良が頻発する原因となるため、前記のような作業やタックインヘッドの交換が必要となる。
【0009】
以上のような実情を鑑み、本発明は、前記のようにタックインを行う空気噴射式タックイン装置用のタックインヘッドにおいて、そのタックインヘッドの製造段階でスリット面の状態を確認できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記のようにスリットにおける上下に対向するスリット面間に導入される緯糸の端部をタックインする空気噴射式タックイン装置におけるタックインヘッドを前提とする。
【0011】
そして、本発明によるタックインヘッドは、上側の前記スリット面を含む部分を成す第1の部材と、該第1の部材とは別に形成された第2の部材であって下側の前記スリット面を含む部分を成す第2の部材とを組み合わせて構成されることで前記第1の部材と前記第2の部材とに分割可能に構成されると共に、分割位置が前記スリットの延在方向における前記スリットの底面の位置と一致する位置となるように構成されており、前記第1の部材及び前記第2の部材のうちの少なくとも一方に凸部が形成されると共に他方に前記凸部と嵌まり合う凹部が形成され、前記凹部に前記凸部が嵌め合わされた状態で前記第1の部材と前記第2の部材とが組み合わされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるタックインヘッドによれば、第1の部材及びその第1の部材とは別に形成された第2の部材とを組み合わせるかたちでそのタックインヘッドが構成されると共に、第1の部材がスリットにおける上側のスリット面を含む部材として形成され、第2の部材がスリットにおける下側のスリット面を含む部材として形成されている。すなわち、第1、第2の各部材は、自身に含まれるスリット面として機能する面を互いに対向させた状態で組み合わされる。したがって、その各部材においては、スリット面は、その各部材の表面の一部であって、外部に露出した面となっている。言い換えれば、その各部材におけるスリット面は、少なくともタックインヘッドの製造段階での両部材が組み合わされる前の段階では、その状態を確認することができるものとなっている。
【0013】
それにより、第1、第2の各部材を製造する過程において、スリット面となる面の状態を確認しながらその加工(仕上げ)を行うことができるため、その両部材をスリット面の表面粗さが適正では無いまま完成品とすることを可及的に無くすことができる。その結果として、その両部材を組み合わせて形成されるタックインヘッドは、スリット面の表面粗さが適正な程度に形成されたものとなる。それにより、スリット面の表面粗さが適正では無いことに起因するタックイン不良が基本的には発生しないこととなり、それに伴い、作業者の負担軽減等を図ることができる。
【0014】
また、本発明によるタックインヘッドにおいて、その第1の部材及び第2の部材のうちの少なくとも一方がスリットの底面を形成する部分を有する、すなわち、タックインヘッドにおけるスリットの底面が第1の部材及び/又は第2の部材のスリット面に連続する面によって形成されるように第1の部材及び第2の部材を構成することにより、その両部材を組み合わせることでスリットが形成されることとなる。それにより、その第1の部材及び第2の部材のみで、タックインヘッドを構成することが可能となる。したがって、その構成によれば、本発明によるタックインヘッドをより簡単な構成で実現することができる。
【0015】
また、一般的に、タックインヘッドのスリット面の間隔(スリットの間隔)は、予め決められた所定の間隔とされる。したがって、タックインヘッドを形成するために第1の部材と第2の部材とを組み合わせるにあたり、両部材に含まれるスリット面の間隔が前記所定の間隔となるようにその組み合わせを行う必要がある。そこで、第1の部材と第2の部材とが直接的に組み合わされてタックインヘッドが形成される場合において、両部材のうちの一方に凸部を形成すると共に他方に凹部を形成し、その凹部にその凸部を嵌め合わせるかたちで両部材が組み合わされるようにすることにより、スリット面の間隔が前記所定の間隔となるような両部材の組み合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が前提とする空気噴射式タックイン装置におけるタックインヘッドを備える空気噴射式織機の一例を示す概略平面図。
図2】本発明の一実施例における給糸側のタックインヘッドを織布側から見た側面図。
図3】本発明の一実施例における給糸側のタックインヘッドの分解図。
図4】第2の部材のみがスリットの底面を成す面を有するものとなる分割位置の変形例を示すタックインヘッドの側面図。
図5】(a)第1の部材のみがスリットの底面を成す面を有するものとなる分割位置の変形例を示すタックインヘッドの側面図。 (b)第1の部材及び第2の部材がスリットの底面を形成する部分を有するものとなる分割位置の変形例を示すタックインヘッドの部分拡大側面図。
図6】第1の部材、第2の部材、及び第3の部材で構成されるタックインヘッドの変形例を示すタックインヘッドの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図1~3に基づき、本発明による空気噴射式タックイン装置用のタックインヘッドの一実施例を説明する。
【0018】
図1に示すのは空気噴射式織機の一例であって、その空気噴射式織機1において、緯糸Yは、メインノズルMN等から噴射される圧縮空気によって緯入れされ、筬Rによって織布Tの織前CFに筬打ちされる。そして、その空気噴射式織機1は、その緯入れ(筬打ち)された緯糸Yの端部(以下、「緯糸端部」と言う。)を後続の緯糸Yが緯入れされる経糸Wの開口内へ折り返す(タックインする)ためのタックイン装置2を備えている。
【0019】
また、そのタックイン装置2は、給糸側(メインノズルMN側)及び反給糸側のそれぞれにおいて、前記のように緯糸端部を折り返すための空気噴射等の一連のタックイン動作を行うタックインヘッド3を有している。すなわち、そのタックイン装置2は、所謂空気噴射式のタックイン装置である。また、そのタックイン装置2は、各タックインヘッド3に対応するカッタCを含んでいる。そして、各タックインヘッド3は、織幅方向においてそのカッタCと織布Tの織端との間に設けられている。
【0020】
各タックインヘッド3は、外観的に略直方体を成すブロック状の部材である。そして、各タックインヘッド3は、上下に対向するスリット面4a、4bで画定されるスリット4を有している。また、そのスリット4は、上下のスリット面4a、4bを繋ぐ底面4cを有している。さらに、各タックインヘッド3は、筬Rの筬打ち動作に伴うスリット4への緯糸端部の導入がより確実に行われるように、それぞれのスリット面4a、4bに対し連続するように形成された案内面4d、4eから成る緯糸導入部5であって、スリット4から離れるにつれて案内面4d、4eの間隔が大きくなるように形成された緯糸導入部5を有している。したがって、スリット4は、そのタックインヘッド3において側面3aを正面に見て緯糸導入部5から底面4cまで延在している。なお、以下では、そのスリット4が延在する方向をタックインヘッド3における「延在方向」と言う。
【0021】
そして、各タックインヘッド3は、上下方向に関しスリット4の位置をワープラインWLに一致させると共に、経糸方向に関し前記延在方向を経糸方向に一致させると共に緯糸導入部5が筬R側となる向きでスリット4の底面4cが織前CF付近に位置するように配置される。
【0022】
また、各タックインヘッド3は、前記筬打ち動作によりスリット4に導入された緯糸端部を前記タックインが行われるまで保持する保持孔6、及び保持孔6内へ緯糸端部を導入して保持するために保持孔6へ向けて圧縮空気を噴射する保持ノズル7を有している。なお、本実施例では、その保持孔6は、下側のスリット面4bとスリット4の底面4cとの境界を跨ぐかたちで両面4b、4cに開口するように形成されている。また、保持ノズル7は、保持孔6に対向するかたちで上側のスリット面4aに開口するように形成されている。
【0023】
さらに、各タックインヘッド3は、保持孔6に保持された緯糸端部を保持孔6から吹き出すために圧縮空気を噴射する解放ノズル8、及びその緯糸端部を経糸Wの開口内へタックインするために圧縮空気を噴射するタックインノズル9を有している。なお、その解放ノズル8は、保持ノズル7と同様に下側のスリット面4b及び底面4cに開口するように形成されている。但し、解放ノズル8は、図示の例では2つであって、タックインヘッド3が織機1上に設置された状態で保持孔6よりも織布T側に位置するように形成されている。それにより、解放ノズル8から噴射される圧縮空気により、保持孔6から吹き出された緯糸端部がタックインノズル9の噴射作用域にもたらされるようになっている。
【0024】
また、タックインノズル9は、タックインヘッド3における織布T側の側面3aに開口するように形成されている。なお、図示の例では、そのタックインノズル9は、スリット4の上下のそれぞれにおいて、スリット4に沿って前記延在方向に複数が並ぶかたちで開口するように形成されている。そして、解放ノズル8から噴射された圧縮空気によってタックインノズル9の噴射作用域にもたらされた緯糸端部は、各タックインノズル9から噴射される圧縮空気によって経糸Wの開口内へタックインされ、それによって一連のタックイン動作が完結する。
【0025】
以上のように構成されたタックイン装置2における各タックインヘッド3において、本発明では、そのタックインヘッドは、上側のスリット面を含む部分を成す第1の部材、及び下側のスリット面を含む部分を成す第2の部材が含まれる少なくとも2つの部材を組み合わせて構成される。その上で、本実施例では、各タックインヘッド3は、第1の部材10及び第2の部材11のみで構成されているものとする。言い換えれば、各タックインヘッド3は、第1の部材10と第2の部材11とに分割可能な構成となっている。そのタックインヘッド3の構成について、詳しくは、以下の通りである。なお、給糸側のタックインヘッド3と反給糸側のタックインヘッド3とは、織幅方向に関し対称的に形成されていること以外は同じ構成となっている。そこで、以下では、その一方(図示の例は給糸側)のみについて説明し、他方についての説明は省略する。
【0026】
図2に示すように、タックインヘッド3は、前記延在方向における底面4cの位置において、上側のスリット面4aを含む部分がそれ以外の部分と分割可能に構成されている。すなわち、タックインヘッド3は、そのように分けられ得る上側のスリット面4aを含む部材と下側のスリット面4bを含む部材とがそれぞれ別に形成され、その2つの部材が組み合わされた構成となっている。そして、上側のスリット面4aを含む部材が第1の部材10であり、下側のスリット面4bを含む部材が第2の部材11である。
【0027】
その第1、第2の部材10、11について、第1の部材10は、タックインヘッド3の形状及び前記した分割位置を踏まえると、外観的に略直方体を成すブロック状の部材となり、その側面10aが前記したタックインヘッド3の側面3aの一部を成す。そして、その周面(側面10aを除く面)の一部10cが上側のスリット面4aに成ると共に、その周面における上側のスリット面4aを成す面10cに連続する部分10dが前記した案内面4dを成すように面10cに対し傾斜させるかたちに形成されている。
【0028】
また、その周面において、案内面4dと成る面10dとは反対の側において上側のスリット面4aと成る面10cに連続する面10eは、上側のスリット面4aと成る面10cに対し直交するように形成されている。そして、その面10eが、第1の部材10を第2の部材11に組み付ける際に第2の部材11に対し当接する取付面と成る。
【0029】
さらに、第1の部材10の周面において、上側のスリット面4aと成る面10cとは反対の側において取付面10eに連続する面10bは、取付面10eに対し直交するように形成されている。なお、その面10bは、タックインヘッド3が織機1上に設置された状態でタックインヘッド3の上面3bの一部を成す面であり、第1の部材10における上面と成る。
【0030】
また、第2の部材11は、同じくブロック状の部材であり、その側面11aを正面に見て略L字形を成すように形成されている。すなわち、第2の部材11は、側面11aが略L字形に形成されたブロック状の部材である。そして、その側面11aは、タックインヘッド3の側面3aのうちの第1の部材10の側面10aを除く面を成す面である。
【0031】
さらに、第2の部材11は、その周面(側面11aを除く面)のうちのL字形の内側において連続する2つの面11c、11dが直交するように形成されている。そして、タックインヘッド3を成す上では、その第2の部材11におけるその2つの面11c、11dのうちの一方11cに対し第1の部材10が取り付けられる。すなわち、第2の部材11においては、その直交する2つの面のうちの一方の面11cが被取付面と成る。
【0032】
また、第2の部材11の周面において、前記した他方の面11dとは反対の側において被取付面11cに連続する面11bは、被取付面11cに対し直交するように形成されている。なお、その面11bは、タックインヘッド3の上面3aのうちの第1の部材10の上面10bを除く面を成す面であり、第2の部材11における上面と成る。
【0033】
なお、被取付面11cについて、第2の部材11は、前記した2つの面11c、11dのうちの他方の面11dからの延在方向における被取付面11cの寸法が、第1の部材10の上面10bと直交する方向における取付面10eの寸法よりも大きい寸法となるように形成されている。但し、その寸法差は、タックインヘッド3における上下のスリット面4a、4bの所定の間隔(予め定められた間隔)と等しいものとされている。
【0034】
その上で、タックインヘッド3においては、第2の部材11に対する第1の部材10の取り付けは、第2の部材11の被取付面11cに対し第1の部材10の取付面10eを当接させた状態で行われるが、前記した被取付面11cの前記延在方向に関しては、第1の部材10の上面10bの位置を第2の部材11の上面11bの位置に一致させた状態で行われる。したがって、その取り付け後においては、第1の部材10の上面10bと第2の部材11の上面11bとは面一と成る。
【0035】
また、その取り付け後においては、第1の部材10における上側のスリット面4aを成す面10cが、第2の部材11における前記他方の面11dに対し、前記した所定の間隔をおいて平行に対向した状態となる。したがって、第2の部材11においては、その前記他方の面11dが、下側のスリット面4bを成す面と成る。また、第2の部材11の周面において、被取付面11cとは反対の側において下側のスリット面4bを成す面11dに連続する面11eは、下側のスリット面4bを成す面11dに対し傾斜し、前記した案内面4eを成すように形成されている。
【0036】
さらに、前記のように上側のスリット面4aを成す面10cと下側のスリット面4bを成す面11dとの間に前記所定の間隔をおいて対向するように第1の部材10が第2の部材11に取り付けられることで、被取付面11cは、その一部(その前記延在方向における下側のスリット面4bを成す面11d側の部分)11c1が両スリット面4a、4b間の空間に露出した状態となる。そして、その被取付面11cのうちの前記空間に露出する部分11c1が、スリット4における底面4cと成る。
【0037】
また、本実施例のタックインヘッド3においては、前記した取り付けの状態を容易に実現できるように、第1の部材10が取付面10eに形成された突出部12を有すると共に、第2の部材11がその突出部12と嵌まり合う溝部13を被取付面11cに有している。
【0038】
より詳しくは、第1の部材10において、取付面10eは、側面10a及び上面10bと平行な方向に突出するように形成された突出部12を有している。なお、その突出部12は、第1の部材10の側面10aと直交する方向(タックインヘッド3の幅方向)において、第1の部材10の両側面10a、10aの間に亘って延在するように形成されている。また、その突出部12は、その延在方向に見て略正方形を成すように形成されている。
【0039】
一方、第2の部材11においては、被取付面11cは、第1の部材10の突出部12を嵌め合わせることができるように形成された溝部13を有している。但し、その溝部13は、突出部12が嵌め合わされた状態で、前記のように第1の部材10の上面10bと第2の部材11の上面11bとが面一と成るような位置に形成されている。
【0040】
そして、第2の部材11に対し第1の部材10を取り付けるにあたっては、第1の部材10の突出部12が第2の部材11の溝部13に嵌め合わされた状態とされる。それにより、第1の部材10と第2の部材11とは、前記のように第1の部材10の上面10bと第2の部材11の上面11bとが面一となった状態で、組み合わされた状態となる。したがって、本実施例のタックインヘッド3においては、突出部12が「凸部」として機能し、溝部13が「凹部」として機能している。
【0041】
また、前記のように第1の部材10と第2の部材11とが組み合わされた状態となるのに伴い、上側のスリット面4aと下側のスリット面4bとが前記所定の間隔で対向した状態になり、その両スリット面4a、4bと第2の部材11における被取付面11cの前記部分11c1から成る底面4cとでスリット4が形成される。
【0042】
また、本実施例では、前記のように第1の部材10と第2の部材11とが組み合わされた状態で、その組み合わせた状態の固定がネジ部材14によって行われる。そのために、タックインヘッド3は、ネジ部材14を備えると共に、そのネジ部材14が挿通、螺挿される孔を有している。
【0043】
より詳しくは、第2の部材11には、被取付面11cにおいて溝部13よりも上面11b側に開口すると共に被取付面11cと直交する方向で第2の部材11を貫通する挿通孔15が形成されている。一方、第1の部材10には、取付面10eに開口する雌ネジ孔16が形成されている。なお、その雌ネジ孔16は、前記のように第1の部材10と第2の部材11とを組み合わせた際に第2の部材11における挿通孔15に連通する位置に形成されている。
【0044】
そして、第1の部材10と第2の部材11とが前記のように組み合わされた状態で両者を固定する際には、第2の部材11の挿通孔15に対し被取付面11c側とは反対側からネジ部材14を挿入し、そのネジ部材14を第1の部材10の雌ネジ孔16に螺挿する。それにより、前記のように第1の部材10と第2の部材11とを組み合わせた状態が固定され、タックインヘッド3が形成された状態となる。
【0045】
なお、本実施例では、その固定は、ネジ部材14による固定(ネジ固定)だけではなく、接着剤による接着も加えられて成されている。すなわち、本実施例のタックインヘッド3は、ネジ固定を補うべく、取付面10eに塗布された接着剤により、第1の部材10と第2の部材11とが接着固定された状態となっている。但し、ネジ固定のみで安定した固定状態が得られる場合には、そのような接着固定は省略可能である。逆に、接着固定のみで安定した固定状態が得られる場合には、ネジ固定の方を省略することも可能である。さらに、本発明のタックインヘッドにおいて、第1の部材と第2の部材との組み合わせ状態を維持する手段は、そのようなネジ固定や接着固定に限らず、他の構成を利用したものであっても良い。
【0046】
そして、以上のように構成されるタックインヘッド3によれば、そのタックインヘッド3を製造する段階において、タックインヘッド3を構成する第1の部材10及び第2の部材11がそれぞれ別々に加工(成形)される。したがって、タックインヘッド3において上側及び下側のスリット面4a、4bと成る各部材10、11の面10c、11dの加工が、それらの面の状態を容易に確認し得る状態で行われることとなる。それにより、その各部材10、11における各面10c、11dがスリット面として適正では無い表面粗さの状態で仕上げられることが可及的に防止され、タックインヘッド3を、その製造段階において、スリット面4a、4bが適正な表面粗さに仕上げられたものとすることができる。
【0047】
また、本実施例のタックインヘッド3によれば、そのタックインヘッド3が第1、第2の2つの部材10、11のみで構成されており、それを可能とすべく、タックインヘッド3は、第2の部材11における被取付面11cの部材11c1がスリット4の底面4cを成すような構成となっている。したがって、その構成によれば、より簡単な構成で本発明によるタックインヘッドを実現することができる。
【0048】
さらに、本実施例のタックインヘッド3によれば、第1の部材10に設けられた突出部(凸部)12を第2の部材11に設けられた溝部(凹部)13に嵌め合わせることで、両部材10、11がタックインヘッド3として組み合わされた状態となる。その構成によれば、前記のように別々に形成された2つの部材10、11を組み合わせてタックインヘッド3を構成する上で、その両部材10、11の組み合わせ(組み付け)作業を容易に行うことができる。
【0049】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(5)のように変形させた態様(変形例)でも実施することができる。
【0050】
(1)前記実施例では、タックインヘッド3は、第1、第2の2つの部材10、11のみで構成されており、スリット4の前記延在方向における底面4cの位置において、上側のスリット面4aを含む部分10がそれ以外の部分11から分割されるような構成となっている。すなわち、そのタックインヘッド3の分割位置は、スリット4の前記延在方向における底面4cの位置と一致する位置であって、上側のスリット面4aを含む部分10をそれ以外の部分11に対し分割可能とする位置となっている。しかし、本発明において、タックインヘッドが前記実施例と同様に2つの部材の組み合わせで構成される場合であっても、タックインヘッドの分割位置(以下、単に「分割位置」と言う。)は、前記実施例のような位置に限定されず、以下のような位置であっても良い。
【0051】
前記実施例では前記延在方向におけるスリット4の底面4cの位置が分割位置となっているが、分割位置は、図4(a)にその一例を示すように、スリット面と直交する方向(高さ方向)においてスリット4から離れるにつれて、前記延在方向において底面4cから離れるような位置であっても良い。その場合、第2の部材31においては、その周面における被取付面31cが下側のスリット面4bを成す面31dに対し傾斜した面と成る。また、第1の部材30においても、取付面30eは、上側のスリット面4aを成す面30cに対し傾斜した面と成る。但し、その傾斜角度は、その取付面30eを被取付面31cに当接させた状態で、上側のスリット面4aが下側のスリット面4bに対し平行に対向した状態となるような角度である。
【0052】
また、分割位置は、図4(b)に示すように、前記高さ方向において上側のスリット面4aの位置と一致する位置であっても良い。なお、その場合、第2の部材21の周面において、下側のスリット面4bを成す面21dに対し直交する面21cの全てがスリット4の底面4cを成す面と成り、上面21bが被取付面と成る。一方、第1の部材20の周面においては、案内面4dを成す面20dに連続する面であって上面20bと平行な面20cのうち、第2の部材21の上面21bと対向する部分20c2が取付面と成り、残りの部分20c1が上側のスリット面4aを成す面と成る。
【0053】
さらに、分割位置は、図5(a)に示すように、前記延在方向におけるスリット4の底面4cの位置と一致する位置であって、下側のスリット面4bを含む部分(第2の部材)41をそれ以外の部分(第1の部材)40に対し分割可能とする位置であっても良い。なお、その場合、スリット4の底面4cは、第1の部材40が有する面(周面における部分)40c1で形成されることとなる。
【0054】
また、分割位置は、図5(b)に示すように、前記高さ方向における上側のスリット面4aと下側のスリット面4bとの略中間の位置であっても良い。なお、その場合、スリット4の底面4cは、第1の部材50が有する面(周面において上側のスリット面4aを成す面50cと直交する面)50fと第2の部材51が有する面(周面において下側のスリット面4bを成す面51dと直交する面)51cとで形成されることとなる。すなわち、この例では、第1の部材50及び第2の部材51の両部材が、スリット4の底面4cを形成する部分50f、51cをその周面上に有している。
【0055】
(2)以上では、タックインヘッド3が2つの部材(第1の部材及び第2の部材)のみで構成される場合について説明した。しかし、本発明によるタックインヘッドは、そのように2つの部材のみで構成されるものに限らず、3以上の部材で構成されるものであっても良い。
【0056】
具体的には、例えば図6に示すように、上側のスリット面4aと成る面60cを含む第1の部材60を前記実施例と同じように構成されたものにすると共に、下側のスリット面4bと成る面61dを含む第2の部材61を図5(a)に示す例と同じように構成されたものにする。その上で、タックインヘッド3を、その第1の部材60と第2の部材61とを連結する第3の部材62を含み、それら3つの部材60、61、62を組み合わせて構成されるものとしても良い。なお、その構成の場合、第1の部材60及び第2の部材61はスリット4の底面4cと成る部分を有さず、第3の部材62の周面における上下のスリット面4a、4bの間の空間に露出する部分62c1がスリット4の底面4cと成る。
【0057】
また、図示は省略するが、前記のように第1、第2の部材を含む3つの部材でタックインヘッドを構成する場合において、第1の部材を図4(b)と同じように構成されたものにすると共に、第2の部材を、同様に、スリット面4bを成す面と取付面とが同一平面上に位置するように構成されたものにする。その上で、両スリット面4a、4bの間隔を画定するスペーサを第3の部材とし、タックインヘッドを、その第1の部材と第2の部材とが第3の部材(スペーサ)を介して組み合わされて構成されるものとしても良い。
【0058】
さらに、図6に示す例において、前記で第3の部材とした部材62を、例えば、前記高さ方向における略中間の位置で2つに分割可能にされたものとしても良い。その場合は、タックインヘッド3が4つの部材(第1の部材60、第2の部材61、及び第3の部材62を構成する2つの部材)を組み合わせて構成されたものとなる。
【0059】
(3)前記実施例では、第1の部材10の取付面10eには凸部としての突出部12が形成されると共に、第2の部材11の被取付面11cには凹部としての溝部13が形成され、その凹部(溝部13)に凸部(突出部12)が嵌め合わされるかたちで両部材10、11が組み合わされている。このように、本発明によるタックインヘッドにおいて、直接的に組み合わされる2つの部材のうちの一方(前記実施例:第1の部材10)に凸部を形成すると共に、他方(前記実施例:第2の部材11)にその凸部が嵌め合わされる凹部を形成することで、前述のような効果が得られる。そして、そのような凸部と凹部とを嵌め合わせる組み合わせのための構成(組み合わせ構成)は、当然ながら、図4図6の例にも適用可能である。
【0060】
なお、3以上の部材が組み合わされてタックインヘッドが構成される場合には、第1の部材及び/又は第2の部材とそれに対し直接的に組み合わされる部材(図6の例:第3の部材62)との間に、その組み合わせ構成が適用されることとなる。また、直接的に組み合わされる一方の部材と他方の部材について、どちらに凸部、凹部を形成するかは、任意に設定すれば良い。さらに、前記一方の部材に凸部及び凹部の両方を形成し、前記他方の部材に前記一方の部材の凸部が嵌め合わされる凹部及び前記一方の部材の凹部に嵌め合わされる凸部を形成する、といった構成とすることも可能である。
【0061】
(4)凸部及び凹部について、前記実施例では、凸部としての突出部12は、その延在方向(タックインヘッド3の前記幅方向)に見て、略正方形を成すように形成されており、凹部としての溝部13は、前記幅方向に見て、その突出部12を嵌め合わせることができるような略正方形を成すように形成されている。しかし、本発明によるタックインヘッドに前記した組み合わせ構成を適用する場合において、その凸部及び凹部の形状は、前記実施例のような形状に限定されず、例えば、台形状や三角形状、あるいは半円形状であっても良い。また、凹部を蟻溝状に形成し、凸部をその蟻溝に嵌る形状のものとしても良い。
【0062】
また、凸部は、前記実施例のように前記幅方向において第1の部材10の両側面10a、10aの間に亘って形成されるものに限らず、前記幅方向において部分的に形成されたものであっても良い。さらに、そのように凸部が形成される場合において、凹部は、その凸部と同様に前記幅方向において部分的に形成されても良いし、前記実施例と同様に前記幅方向において両側面(前記実施例:第2の部材11の両側面11a、11a)の間に亘って形成されても良い。また、凸部は、以上で説明したような形状のものに限らず、棒状に形成されていても良い。そして、その場合、凹部は、その棒状の凸部が嵌挿可能な孔となる。
【0063】
また、以上で説明した例の凸部は、それが設けられる部材(前記実施例:第1の部材10)の一部を加工して形成されたものに限らず、当該部材とは別に部品として形成されたものを、当該部材に取り付けて当該部材と一体化することで形成されたものであっても良い。また、当該部材に設けられる凸部は、前記実施例のように1つに限らず、複数であっても良い。そして、そのように凸部が複数設けられる場合には、当該部材と組み合わされる部材における凹部は、その凸部の数及び配置等に応じて適宜に形成される。
【0064】
なお、本発明によるタックインヘッドでは、以上で説明したような凸部及び凹部を用いた前記組み合わせ構成は必須ではなく、組み合わされる2つの部材における取付面及び被取付面は、前記のような凹凸部が形成されていない面であっても良い。また、その場合において、その取付面及び被取付面は、加工のし易さを考慮すると平面であるのが好ましいが、例えば円弧面であっても良い。
【0065】
(5)前記実施例は、給糸側及び反給糸側のタックインヘッド3に対し本発明を適用する例となっている。しかし、本発明は、複数に分割される織布を同時に製織する複数幅取り織機において、織布の間に配置される中耳形成用のタックインヘッドに対し適用することも可能である。
【0066】
また、本発明は、以上で説明した実施例及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 織機
2 空気噴射式タックイン装置
3 タックインヘッド
3a タックインヘッドの側面
3b タックインヘッドの上面
4 スリット
4a 上側のスリット面
4b 下側のスリット面
4c スリットの底面
4d、4e 案内面
5 緯糸導入部
6 保持孔
7 保持ノズル
8 解放ノズル
9 タックインノズル
10、20、30、40、50、60 第1の部材
10a 第1の部材の側面
10b、20b 第1の部材の上面
10c、20c1、50c、60c 上側のスリット面を成す面
10d、20d 第1の部材の案内面を成す面
10e、20c2、30e 取付面
11、21、31、41、51、61 第2の部材
11a 第2の部材の側面
11b 第2の部材の上面
11c、21b 被取付面
11c1、21c、40c1 スリットの底面を成す面
11d、21d、31d、51d、61d 下側のスリット面を成す面
11e 第2の部材の案内面を成す面
12 突出部(凸部)
13 溝部(凹部)
14 ネジ部材
15 挿通孔
16 雌ネジ孔
50f、51c スリットの底面の一部を成す面
62 第3の部材
Y 緯糸
MN メインノズル
R 筬
T 織布
CF 織前
W 経糸
C カッタ
WL ワープライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6