(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20230607BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/13 B
B60C11/03 300B
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2019145289
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳樹
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-157416(JP,A)
【文献】特開平06-278412(JP,A)
【文献】特公昭50-019801(JP,B1)
【文献】特開平09-188111(JP,A)
【文献】特開平02-114004(JP,A)
【文献】特開平11-091318(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0756326(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝によって区画され、一対のブロック溝を有するブロックを備え、
前記一対のブロック溝は、前記ブロックのタイヤ周方向の一方側の端縁からタイヤ周方向の他方側へ向けて延びる第1ブロック溝と、前記ブロックのタイヤ周方向の他方側の端縁からタイヤ周方向の一方側へ向けて延びる第2ブロック溝と、を備え、
前記第1ブロック溝と前記第2ブロック溝とは、タイヤ幅方向視で、重な
り、
前記ブロックは、前記一対のブロック溝の間に配置されるブロック中央部と、前記ブロック中央部と連接されるブロック基部と、前記ブロック溝を前記ブロック中央部とで挟むように、前記ブロック基部から突出するブロック突出部と、を備え、
前記ブロック突出部の幅は、前記ブロック突出部の先端側に向けて、狭くなり、
前記ブロック突出部の一方側の端縁がタイヤ周方向に対して傾斜する側は、前記ブロック突出部の他方側の端縁がタイヤ周方向に対して傾斜する側と、反対である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ブロック溝の深さは、前記ブロックのタイヤ周方向の端縁から内部へ向けて、浅い、請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記溝の内部に配置され、前記ブロック突出部に連接される補強部を備える、請求項
1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、空気入りタイヤは、溝によって区画される複数のブロックを備えている(例えば、特許文献1)。そして、特許文献1に係るタイヤは、雪上路面を走行する際に使用されている。ところで、タイヤの雪上性能を向上させるためには、タイヤの横滑りを抑制する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、課題は、横滑りを抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
空気入りタイヤは、溝によって区画され、一対のブロック溝を有するブロックを備え、前記一対のブロック溝は、前記ブロックのタイヤ周方向の一方側の端縁からタイヤ周方向の他方側へ向けて延びる第1ブロック溝と、前記ブロックのタイヤ周方向の他方側の端縁からタイヤ周方向の一方側へ向けて延びる第2ブロック溝と、を備え、前記第1ブロック溝と前記第2ブロック溝とは、タイヤ幅方向視で、重なる。
【0006】
また、空気入りタイヤにおいては、前記ブロック突出部の一方側の端縁がタイヤ周方向に対して傾斜する側は、前記ブロック突出部の他方側の端縁がタイヤ周方向に対して傾斜する側と、反対である、という構成でもよい。
【0007】
また、空気入りタイヤにおいては、前記ブロックは、前記一対のブロック溝の間に配置されるブロック中央部と、前記ブロック中央部と連接されるブロック基部と、前記ブロック溝を前記ブロック中央部とで挟むように、前記ブロック基部から突出するブロック突出部と、を備え、前記ブロック突出部の幅は、先端側に向けて、狭くなる、という構成でもよい。
【0008】
また、空気入りタイヤにおいては、前記ブロック溝の深さは、前記ブロックのタイヤ周方向の端縁から内部へ向けて、浅い、という構成でもよい。
【0009】
また、空気入りタイヤは、前記溝の内部に配置され、前記ブロック突出部に連接される補強部を備える、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、
図1~
図7を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0012】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。
【0013】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面であって、タイヤ赤道面S1と直交する面のことである。また、タイヤ赤道線とは、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外表面(後述する、トレッド面2a)とタイヤ赤道面S1とが交差する線のことである。
【0014】
タイヤ幅方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となる。また、タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。
【0015】
タイヤ幅方向D1のうち、一方側D1aは、第1幅方向側D1aといい、他方側D1bは、第2幅方向側D1bという。また、タイヤ周方向D3のうち、一方側D3aは、第1周方向側D3aといい、他方側D3bは、第2周方向側D3bという。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードを有する一対のビード部1aと、各ビード部1aからタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部1bと、一対のサイドウォール部1bのタイヤ径方向D2の外端部に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド部1cとを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム(図示していない)に装着される。
【0017】
また、タイヤ1は、一対のビードの間に架け渡されるカーカス層1dと、カーカス層1dの内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナー層1eとを備えている。カーカス層1d及びインナーライナー層1eは、ビード部1a、サイドウォール部1b及びトレッド部1cに亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0018】
トレッド部1cは、路面に接地するトレッド面2aを有するトレッドゴム2と、トレッドゴム2とカーカス層1dとの間に配置されるベルト層1fとを備えている。トレッド面2aは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外側端は、接地端2b,2bという。
【0019】
図1及び
図2に示すように、トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝2c,2cを備えている。主溝2cは、タイヤ周方向D3の全長に亘って連続して延びている。そして、主溝2cは、タイヤ周方向D3に沿ってジグザグ状に延びている、という構成である。なお、主溝2cは、タイヤ周方向D3に対して平行に延びている、という構成でもよい。
【0020】
主溝2cは、特に限定されないが、例えば、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かるように、溝を浅くしてある部分、所謂、トレッドウエアインジケータ(図示していない)を備えている、という構成でもよい。また、主溝2cの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、主溝2cの数は、二つである。
【0021】
また、主溝2cは、特に限定されないが、例えば、接地端2b,2b間の距離(タイヤ幅方向D1の寸法)の3%以上の溝幅を有している、という構成でもよい。また、主溝2cは、特に限定されないが、例えば、5mm以上の溝幅を有している、という構成でもよい。
【0022】
トレッドゴム2は、主溝2c,2c及び接地端2b,2bによって区画される複数の陸部2d,2eを備えている。複数の陸部2d,2eにおいては、主溝2cと接地端2bとによって区画されて且つタイヤ幅方向D1の最も外側に配置される陸部2dは、ショルダー陸部2dといい、隣接される主溝2c,2c同士によって区画されて且つ一対のショルダー陸部2d,2d間に配置される陸部2eは、ミドル陸部2eという。
【0023】
なお、ミドル陸部2eのうち、タイヤ赤道面S1と交差する陸部2eは、センター陸部2eという。即ち、センター陸部2eを区画する一対の主溝2c,2cは、それぞれタイヤ赤道面S1からタイヤ幅方向D1に離れて配置されている。また、陸部2d,2eの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、主溝2cの数が二つであるため、陸部2d,2eの数は、三つであり、ミドル陸部2eの数は、一つである。
【0024】
図2に示すように、陸部2d,2eは、タイヤ幅方向D1及びタイヤ周方向D3の少なくとも一方に延びる陸溝2fを複数備えている。これにより、陸部2d,2eは、溝2c,2fによって区画されるブロック3,4を複数備えている。そして、複数のブロック3,4は、タイヤ周方向D3に並列されている。なお、陸溝2fは、特に限定されないが、例えば、2mm以上の溝幅を有している、という構成でもよい。
【0025】
ミドル陸部2eは、複数の陸溝2fによって区画されるブロック3と、主溝2cと複数の陸溝2fとによって区画されるブロック4とを備えている。ショルダー陸部2dは、主溝2cと複数の陸溝2fとによって区画されるブロック4を備えている。
【0026】
なお、陸部2d,2eは、タイヤ周方向D3に連続するリブ形状であって、ブロック3,4を備えていない、という構成でもよい。即ち、少なくとも一つの陸部2d,2eは、陸溝2fがタイヤ周方向D3で分断することによって、タイヤ周方向D3に並列されるブロック3,4を有するブロック形状であればよい。
【0027】
ここで、特定のブロック3の構成について、
図3~
図7を参照しながら説明する。以下、特定のブロック3は、第1ブロック3といい、それ以外のブロック4は、第2ブロック4という。
【0028】
なお、
図3に示すように、第1幅方向側D1aに行くにつれて、第1周方向側D3aへ向かう側(第2幅方向側D1bへ行くにつれて、第2周方向側D3bへ向かう側)D4は、第1傾斜側D4という。また、
図4に示すように、第1幅方向側D1aに行くにつれて、第2周方向側D3bへ向かう側(第2幅方向側D1bに行くにつれて、第1周方向側D3aへ向かう側)D5は、第2傾斜側D5という。
【0029】
そして、「タイヤ周方向D3(タイヤ幅方向D1)に対する傾斜側が同じである」とは、同じ傾斜側(例えば、第1傾斜側D4,D4同士、第2傾斜側D5,D5同士)であることをいう。即ち、タイヤ周方向D3(タイヤ幅方向D1)に対する傾斜角度が異なっていても、同じ傾斜側D4,D4(D5,D5)であれば、「タイヤ周方向D3(タイヤ幅方向D1)に対する傾斜側が同じである」に含まれる。
【0030】
また、「タイヤ周方向D3(タイヤ幅方向D1)に対する傾斜側が反対である」とは、反対の傾斜側(第1傾斜側D4と第2傾斜側D5)であることをいう。即ち、タイヤ周方向D3(タイヤ幅方向D1)に対する傾斜角度が同じであっても、反対の傾斜側D4,D5であれば、「タイヤ周方向D3(タイヤ幅方向D1)に対する傾斜側が反対である」に含まれる。
【0031】
図5に示すように、第1ブロック3は、一対のブロック溝5,6と、複数のサイプ7とを備えている。なお、例えば、第1ブロック3が有する凹部5~7のうち、幅が1.6mm以上である凹部は、ブロック溝5,6といい、幅が1.6mm未満である凹部は、サイプ7という。
【0032】
ブロック溝5,6は、第1ブロック3のタイヤ周方向D3の端縁から、第1ブロック3の内部の位置まで、タイヤ周方向D3に沿って(例えば、タイヤ周方向D3に対する傾斜角が45°未満であり、30°未満であることが好ましい)延びている。具体的には、第1ブロック溝5は、第1ブロック3の第1周方向側D3aの端縁から第2周方向側D3bへ向けて延びており、第2ブロック溝6は、第1ブロック3の第2周方向側D3bの端縁から第1周方向側D3aへ向けて延びている。
【0033】
サイプ7の一端は、ブロック溝5,6に連接されており、サイプ7の他端は、第1ブロック3の内部に位置している。即ち、サイプ7の一端は、開放されており、サイプ7の他端は、閉止されている。なお、サイプ7の両端は、溝2c,2f,5,6に連接され、開放されている、という構成でもよく、また、サイプ7の両端は、第1ブロック3の内部に位置し、閉止されている、という構成でもよい。また、第1ブロック3は、サイプ7を備えていない、という構成でもよい。
【0034】
そして、第1ブロック3は、一対のブロック溝5,6の間に配置されるブロック中央部8と、ブロック中央部8と連接されるブロック基部9a,9bと、ブロック基部9a,9bから突出するブロック突出部10,11とを備えている。これにより、第1ブロック3は、略S字状に形成されている。なお、
図3において、破線は、各部8,9a,9b,10,11の境界を示している。
【0035】
ブロック基部9a,9bは、ブロック中央部8のタイヤ幅方向D1の端部と連接されている。具体的には、第1ブロック基部9aは、ブロック中央部8の第1幅方向側D1aに連接されており、第2ブロック基部9bは、ブロック中央部8の第2幅方向側D1bに連接されている。
【0036】
ブロック突出部10,11は、ブロック基部9a,9bからタイヤ周方向D3へ向けて突出している。具体的には、第1ブロック突出部10は、第1ブロック基部9aから第1周方向側D3aへ向けて突出し、第2ブロック突出部11は、第2ブロック基部9bから第2周方向側D3bへ向けて突出している。これにより、第1ブロック突出部10とブロック中央部8とは、タイヤ幅方向D1で、第1ブロック溝5を挟み、第2ブロック突出部11とブロック中央部8とは、タイヤ幅方向D1で、第2ブロック溝6を挟んでいる。
【0037】
そして、ブロック溝5,6がタイヤ周方向D3に沿って延びているため、ブロック溝5,6のエッジ成分が、タイヤ周方向D3に延びている。これにより、タイヤ1が雪上路面でタイヤ幅方向D1に横滑りする際に、ブロック溝5,6のエッジ成分の機能が発揮される。したがって、タイヤ1が雪上路面でタイヤ幅方向D1に横滑りすることを抑制することができる。
【0038】
しかも、第1ブロック3は、タイヤ赤道面S1と交差するように配置されている。これにより、直進走行時に、タイヤ幅方向D1の中央領域の接地長さ(接地するタイヤ周方向D3の長さ)が長くなるため、複数の第1ブロック3を接地させることができる。これにより、ブロック溝5,6のエッジ成分を多く接地させることができる。
【0039】
さらに、第1ブロック溝5と第2ブロック溝6とが、タイヤ幅方向D1視で、重なっているため、ブロック溝5,6のエッジ成分をさらに多く接地させることができる。また、第1ブロック3の一部が接地する状態においても、少なくとも一方のブロック溝5,6のエッジ成分が、接地することになる。したがって、タイヤ1が雪上路面でタイヤ幅方向D1に横滑りすることを効果的に抑制することができる。
【0040】
また、ブロック突出部10,11は、タイヤ幅方向D1の両側にそれぞれ端縁10a,10b,11a,11bを備えている。そして、端縁10a,10b,11a,11bは、タイヤ周方向D3に沿って(例えば、タイヤ周方向D3に対する傾斜角が45°未満であり、30°未満であることが好ましい)延びている。なお、第1端縁10a,11aは、ブロック溝5,6の端縁でもある。
【0041】
そして、第1端縁10a,11aがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D4は、第1傾斜側D4であり、第2端縁10b,11bがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D5は、第2傾斜側D5である。即ち、第1端縁10a,11aがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D4は、第2端縁10b,11bがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D5と、反対である。
【0042】
これにより、タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4,D5の横滑りに対しても、少なくとも一方の端縁10a,10b,11a,11bによるエッジ成分の機能が発揮される。例えば、第1傾斜側D4の横滑りに対しては、少なくとも第2端縁10b,11bによるエッジ成分の機能が発揮され、また、例えば、第2傾斜側D5の横滑りに対しては、少なくとも第1端縁10a,11aによるエッジ成分の機能が発揮される。したがって、タイヤ1が雪上路面で横滑りすることを効果的に抑制することができる。
【0043】
ところで、雪上路面に接地する際に、ブロック溝5,6の内部に雪が残っていた場合には、ブロック溝5,6によるエッジ成分の機能が十分に発揮できない場合がある。そこで、ブロック突出部10,11の幅は、先端側に向けて、狭くなっている。具体的には、第1ブロック突出部10の幅は、第1周方向側D3aへ向けて、狭くなっており、第2ブロック突出部11の幅は、第2周方向側D3bへ向けて、狭くなっている。
【0044】
これにより、ブロック突出部10,11の先端側は、弾性変形し易くなっている。しがって、雪上路面に接地した際に、ブロック溝5,6の内部に雪が押し込められた場合でも、路面から離れた際に、ブロック突出部10,11が弾性変形することによって、ブロック溝5,6の内部から雪を排除することができる。したがって、再び雪上路面に接地する際には、ブロック溝5,6の内部に雪が残ることを抑制することができるため、ブロック溝5,6によるエッジ成分の機能を確実に発揮させることができる。
【0045】
一方で、ブロック突出部10,11の剛性が低くなり過ぎた場合には、タイヤ性能を低下させる場合がある。例えば、ブロック突出部10,11の端縁10a,10b,11a,11bによるエッジ成分の機能を十分に発揮することができない場合がある。
【0046】
そこで、
図5及び
図6に示すように、ブロック溝5,6の深さは、第1ブロック3のタイヤ周方向D3の端縁から、第1ブロック3の内部へ向けて、浅くなっている。具体的には、
図6に示すように、第1ブロック溝5の深さは、第2周方向側D3bへ向けて、浅くなっており、図示していないが、第2ブロック溝6の深さは、第1周方向側D3aへ向けて、浅くなっている。
【0047】
これにより、ブロック突出部10,11の剛性が低くなり過ぎることを抑制している。なお、ブロック溝5,6の深さは、断続的に浅くなる(溝底が階段状である)、という構成でもよく、本実施形態においては、ブロック溝5,6の深さは、連続的に浅くなる(溝底が平滑状である)、という構成である。
【0048】
さらに、
図5及び
図7に示すように、タイヤ1は、ブロック突出部10,11に連接される補強部12を備えている。補強部12は、陸溝2fの内部に配置されている。これにより、ブロック突出部10,11の剛性が低くなり過ぎることを抑制している。なお、補強部12の配置は、特に限定されないが、本実施形態においては、補強部12は、ブロック突出部10,11の先端側に連接されている。
【0049】
なお、特に限定されないが、本実施形態においては、各部8,9a,9b,10,11は、略四角形状に形成されている。そして、特に限定されないが、本実施形態においては、ブロック中央部8の角部(他部9a,9bと連接されていない角部)の角度θ1a,θ1bは、ブロック基部9a,9bの角部(他部8,10,11と連接されていない角部)の角度θ2a,θ2bよりも、大きくなっている(θ1a>θ2a、θ1b>θ2b)。
【0050】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、溝2fによって区画され、一対のブロック溝5,6を有するブロック3を備え、前記一対のブロック溝5,6は、前記ブロック3のタイヤ周方向D3の一方側D3aの端縁からタイヤ周方向D3の他方側D3bへ向けて延びる第1ブロック溝5と、前記ブロック3のタイヤ周方向D3の他方側D3bの端縁からタイヤ周方向D3の一方側D3aへ向けて延びる第2ブロック溝6と、を備え、前記第1ブロック溝5と前記第2ブロック溝6とは、タイヤ幅方向D1視で、重なる。
【0051】
斯かる構成によれば、第1ブロック溝5は、ブロック3のタイヤ周方向D3の一方側D3aの端縁からタイヤ周方向D3の他方側D3bへ向けて延びており、第2ブロック溝6は、ブロック3のタイヤ周方向D3の他方側D3bの端縁からタイヤ周方向D3の一方側D3aへ向けて延びている。これにより、ブロック溝5,6のエッジ成分が、タイヤ周方向D3に延びているため、当該エッジ成分によって、横滑りを抑制することができる。
【0052】
しかも、第1ブロック溝5と第2ブロック溝6とは、タイヤ幅方向D1視で、重なっている。これにより、ブロック溝5,6のエッジ成分を多く接地させることができる。加えて、第1ブロック3の一部が接地する状態において、両方のブロック溝5,6のエッジ成分が接地していない状態が発生することを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記ブロック突出部10,11の一方側の端縁10a,11aがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D4は、前記ブロック突出部10,11の他方側の端縁10b,11bがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D5と、反対である、という構成である。
【0054】
斯かる構成によれば、ブロック突出部10,11の一方側の端縁10a,11aが傾斜する側D4が、ブロック突出部10,11の他方側の端縁10b,11bが傾斜する側D5と、反対である。これにより、タイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4,D5の横滑りに対しても、少なくとも一方の端縁10a,10b,11a,11bによるエッジ成分の機能が発揮される。
【0055】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記ブロック3は、前記一対のブロック溝5,6の間に配置されるブロック中央部8と、前記ブロック中央部8と連接されるブロック基部9a,9bと、前記ブロック溝5,6を前記ブロック中央部8とで挟むように、前記ブロック基部9a,9bから突出するブロック突出部10,11と、を備え、前記ブロック突出部10,11の幅は、先端側に向けて、狭くなる、という構成である。
【0056】
斯かる構成によれば、ブロック突出部10,11とブロック中央部8とは、ブロック溝5,6を挟むように、配置されている。そして、ブロック突出部10,11の幅が、先端側に向けて狭くなっているため、ブロック突出部10,11の先端側は、弾性変形し易くなる。
【0057】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記ブロック溝5,6の深さは、前記ブロック3のタイヤ周方向D3の端縁から内部へ向けて、浅い、という構成である。
【0058】
斯かる構成によれば、ブロック突出部10,11の幅が、先端側に向けて狭くなっていることに対して、ブロック溝5,6の深さは、ブロック3のタイヤ周方向D3の端縁から内部へ向けて、浅くなっている。これにより、ブロック突出部10,11の剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記溝2fの内部に配置され、前記ブロック突出部10,11に連接される補強部12を備える、という構成である。
【0060】
斯かる構成によれば、ブロック突出部10,11の幅が、先端側に向けて狭くなっていることに対して、補強部12は、ブロック突出部10,11に連接されている。これにより、ブロック突出部10,11の剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。
【0061】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0062】
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、タイヤ周方向D3で並列されるブロック3,4のうち、一対のブロック溝5,6を有する第1ブロック3は、第2ブロック4と、タイヤ周方向D3で交互に配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0063】
例えば、タイヤ周方向D3で並列されるブロック3,4のうち、第1ブロック3は、二つ以上おきに配置されている、という構成でもよく、また、連続して配置されている、という構成でもよい。なお、第1ブロック3は、少なくとも一つが必ず接地するように、配置されていることが好ましい。
【0064】
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、一対のブロック溝5,6を有する第1ブロック3は、ミドル陸部(具体的には、センター陸部)2eに配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、当該第1ブロック3は、ショルダー陸部2dに配置されている、という構成でもよく、ミドル陸部2eが複数備えられる場合には、センター陸部2e以外のミドル陸部2eに配置されている、という構成でもよい。
【0065】
なお、第1ブロック3は、タイヤ幅方向D1の中央領域に配置されていることが好ましい。当該中央領域とは、接地端2b,2b間をタイヤ幅方向D1で均等に4つの領域に区分したうちの、タイヤ幅方向D1の中央に配置される2つの領域のことである。
【0066】
(3)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ブロック突出部10,11の幅は、先端側に向けて、狭くなる、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、ブロック突出部10,11の幅は、先端側に向けて、広くなる、という構成でもよく、また、タイヤ周方向D3に沿って、一定(同じだけでなく、略同じも含む)である、という構成でもよい。
【0067】
(4)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1及び第2ブロック突出部10,11の両方において、幅は、先端側に向けて、狭くなる、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1及び第2ブロック突出部10,11のうち一方のみにおいて、幅は、先端側に向けて、狭くなる、という構成でもよい。
【0068】
(5)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ブロック突出部10,11の第1端縁10a,11aがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D4は、第2端縁10b,11bがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側D5と、反対である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1端縁10a,11aがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側は、第2端縁10b,11bがタイヤ周方向D3に対して傾斜する側と、同じである、という構成でもよい。
【0069】
(6)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1及び第2ブロック突出部10,11の両方において、第1端縁10a,11aが傾斜する側D4は、第2端縁10b,11bが傾斜する側D5と、反対である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1及び第2ブロック突出部10,11のうち一方のみにおいて、第1端縁10a,11aが傾斜する側D4は、第2端縁10b,11bが傾斜する側D5と、反対である、という構成でもよい。
【0070】
(7)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1及び第2ブロック突出部10,11の第1端縁10a,11a及び第2端縁10b,11bは、タイヤ周方向D3に沿って延びている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、ブロック突出部10,11の第2端縁10b,11bは、タイヤ幅方向D1に沿って(例えば、タイヤ幅方向D1に対する傾斜角が45°未満である)延びている、という構成でもよい。
【0071】
(8)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ブロック溝5,6の深さは、ブロック3のタイヤ周方向D3の端縁から内部へ向けて、浅い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、ブロック溝5,6の深さは、一定(同じだけでなく、略同じも含む)である、という構成でもよい。
【0072】
(9)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1及び第2ブロック溝5,6の両方において、深さは、ブロック3のタイヤ周方向D3の端縁から内部へ向けて、浅い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1及び第2ブロック溝5,6のうち一方のみにおいて、深さは、ブロック3のタイヤ周方向D3の端縁から内部へ向けて、浅い、という構成でもよい。
【0073】
(10)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、補強部12は、第1及び第2ブロック突出部10,11の両方に連接されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、補強部12は、第1及び第2ブロック突出部10,11のうち一方のみに連接されている、という構成でもよく、補強部12は、備えられていない、という構成でもよい。
【0074】
(11)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1ブロック3が有するブロック溝5,6は、二つである、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1ブロック3が有するブロック溝5,6は、三つ以上である、という構成でもよい。
【0075】
(12)また、空気入りタイヤ1は、雪上路面を走行する際に使用されるが、斯かる使用に限定されない。例えば、空気入りタイヤ1は、ドライ路面を走行する際に使用されてもよく、ウエット路面を走行する際に使用されてもよく、また、悪路面(例えば、泥濘地、岩場)を走行する際に使用されてもよい。
【0076】
特に、空気入りタイヤ1は、泥濘地の悪路面において、各エッジ成分の機能を発揮させることができる。具体的には、例えば、ブロック溝5,6によるエッジ成分の機能が発揮されることで、タイヤ1が悪路面でタイヤ幅方向D1に横滑りすることを抑制することができたり、また、例えば、ブロック突出部10,11の端縁10a,10b,11a,11bによるエッジ成分の機能が発揮されることで、タイヤ1が悪路面でタイヤ幅方向D1に対して傾斜する側D4,D5の横滑りすることを抑制することができたりする。
【符号の説明】
【0077】
1…空気入りタイヤ、1a…ビード部、1b…サイドウォール部、1c…トレッド部、1d…カーカス層、1e…インナーライナー層、1f…ベルト層、2…トレッドゴム、2a…トレッド面、2b…接地端、2c…主溝、2d…ショルダー陸部、2e…ミドル陸部、2f…陸溝、3…第1ブロック、4…第2ブロック、5…第1ブロック溝、6…第2ブロック溝、7…サイプ、8…ブロック中央部、9a…第1ブロック基部、9b…第2ブロック基部、10…第1ブロック突出部、10a…第1端縁、10b…第2端縁、11…第2ブロック突出部、11a…第1端縁、11b…第2端縁、12…補強部、D1…タイヤ幅方向、D1a…第1幅方向側、D1b…第2幅方向側、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、D3a…第1周方向側、D3b…第2周方向側、D4…第1傾斜側、D5…第2傾斜側、S1…タイヤ赤道面