(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】軸封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20230607BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20230607BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
F16J15/34 C
F16J15/00 E
G01B7/00 101E
(21)【出願番号】P 2019210101
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084342
【氏名又は名称】三木 久巳
(74)【代理人】
【識別番号】100213883
【氏名又は名称】大上 雅史
(72)【発明者】
【氏名】冨田 優記
(72)【発明者】
【氏名】原 勇気
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-066668(JP,U)
【文献】実開平02-110761(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0106429(US,A1)
【文献】特開2002-235858(JP,A)
【文献】特開2006-083889(JP,A)
【文献】特開平06-042650(JP,A)
【文献】特表2011-522175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
F16J 15/34-15/38
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機外領域側端部から垂下するスプリングリテーナ及びその内周部から機内領域側へと延びる保持体を有するシールケースと、前記保持体に軸線方向移動可能に保持された静止密封環と、静止密封環に対向して回転軸に固定された回転密封環とを具備して、両密封環を非接触状態で相対回転させるようにした非接触形メカニカルシールを有する軸封装置であって、
異常検知装置が、前記静止密封環の基端面に設けた被測定板と、前記スプリングリテーナに設けられて、前記被測定板との間の距離を測定する非接触式センサーと、前記非接触式センサーによる検出値が閾値の範囲から外れた場合に警報を発する警報器と、を具備
しており、
前記非接触形メカニカルシールが機外領域側に配設されたものであり、機内領域側には、前記シールケースに設けた密封環と回転軸に設けた密封環とが接触状態で相対回転する端面接触形メカニカルシールが配設されており、両メカニカルシールで区画された領域にはパージガスが供給されていることを特徴とする軸封装置。
【請求項2】
前記静止密封環が、前記回転密封環に対向する密封環本体と、密封環本体にOリングを介して接続された押圧体とからなり、前記被測定板が押圧体の基端面に設けられており、前記シールケースには、前記静止密封環に向けて前記パージガスが供給されるバージガス供給路と前記回転密封環の近傍から前記パージガスを排出するドレン路とが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載する軸封装置。
【請求項3】
前記
被測定板が前記静止密封環の基端面に一体成形されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載する軸封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触形メカニカルシールを有する軸封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触形メカニカルシールは、特許文献1に示される如く、シールケースに軸線方向移動自在に保持された静止密封環と回転軸に固定された回転密封環とが微小な間隙を有する非接触状態で相対回転して、ガスをシールするものである。
【0003】
したがって、非接触形メカニカルシールにあっては、前記両密封環の間に形成された間隙が適正間隙にあるかどうかを常に監視しておく必要となる。
【0004】
そこで、従来の非接触形メカニカルシールでは、特許文献1の第2頁第13行第3頁第4行に記載する如く、前記両密封環が適正間隙となっているかを流量計によりシールするガス量の変化で把握するか、特許文献1の第1図に開示されるように、静止密封環にその基端側から非貫通状の穴を形成して、この穴に設けた非接触式センサーにより検出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ガス量の変化では、両密封環から漏れが生じた場合に両密封環の間隙が適正であるかどうかを大まかに把握できるにすぎず、両密封環の間隙が適正間隙であるかないかは正確に把握できない。これに対して、非接触式センサーによる場合は、両密封環の間隙を直接に検出するため、それが適正間隔であるかないかを正確に把握することができるが、静止密封環に非接触式センサーを収容するための穴をあけるといった大きな加工が必要となる。
【0007】
本発明は、静止密封環に大きな加工を必要とせず、両密封環の間隙を正確に把握することができる非接触形メカニカルシールを有する軸封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この目的を達成すべく、機外領域側端部から垂下するスプリングリテーナ及びその内周部から機内領域側へと延びる保持体を有するシールケースと、前記保持体に軸線方向移動可能に保持された静止密封環と、静止密封環に対向して回転軸に固定された回転密封環とを具備して、両密封環を非接触状態で相対回転させるようにした非接触形メカニカルシールを有する軸封装置であって、異常検知装置が、前記静止密封環の基端面に設けた被測定板と、前記スプリングリテーナに設けられて、前記被測定板との間の距離を測定する非接触式センサーと、前記非接触式センサーによる検出値が閾値の範囲から外れた場合に警報を発する警報器と、を具備することを特徴とする軸封装置を提案する。
【0009】
かかる軸封装置の好ましい実施の形態にあっては、前記非接触形メカニカルシールが機外領域側に配設されたものであり、機内領域側には、前記シールケースに設けた密封環と回転軸に設けた密封環とが接触状態で相対回転する接触形メカニカルシールが配設されており、両メカニカルシールで区画された領域にはパージガスが供給されている。また、かかる場合に、前記静止密封環が、前記回転密封環に対向する密封環本体と、密封環本体にOリングを介して接続された押圧体とからなり、前記被測定板が押圧体の基端面に設けられており、前記シールケースには、前記静止密封環に向けて前記パージガスが供給されるバージガス供給路と前記回転密封環の近傍から前記パージガスを排出するドレン路が形成されていることが好ましい。また、前記被測定板は前記静止密封環の基端面に一体成形されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の軸封装置にあっては、静止密封環の基端面に設けた被測定板とシールケースのスプリングリテーナに設けた非接触式センサーとの距離を測定し、この距離が閾値の範囲から外れた場合に警報を発するものであるから、両密封環の間隙が適正間隙にない場合を正確に把握することができ、しかも静止密封環に大きな加工を必要とすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る軸封装置の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る軸封装置の変形例を示す一部切欠の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係る軸封装置の一例を示す断面であり、
図2は
図1の要部を拡大して示す詳細図である。
【0014】
本発明に係る軸封装置は、
図1に示す如く、液体を扱うポンプ等の回転機器に装備されるもので、回転機器の機内領域Aと機外領域(大気領域)Bとを、機内領域側の端面接触形メカニカルシール1と機外領域側の非接触形メカニカルシール2とにより、両メカニカルシール1,2間に形成されたパージガス領域Cを介して区画するように構成されたものである。
【0015】
機内領域側の端面接触形メカニカルシール1は、
図1に示す如く、機内領域Aの液体(被密封流体)をシールするもので、当該回転機器の軸封部ケーシング3に取り付けられたシールケース4と、シールケース4に固定された密封環(固定密封環)5と、シールケース4を同心状に貫通する当該回転機器の回転軸6に軸線方向移動可能に保持された密封環(可動密封環)7と、可動密封環7を固定密封環5へと押圧するスプリング8とを具備して、両密封環5,7の対向端面である密封端面5a,7aの相対回転摺接作用により、密封端面5a,7aの外周側領域である機内領域Aとその内周側領域であるパージガス領域Cとを区画する。
【0016】
シールケース4は、当該回転機器の軸封部ケーシング3に取り付けられた機内領域側本体4aと、機内領域側本体4aに取り付けられた機外領域側本体4bと、機外領域側本体4bの機外領域側端部から垂下した環板状のスプリングリテーナ4cと、スプリングリテーナ4cの内周部に一体形成された機内領域A方向に延びる円筒状の保持体4dとからなる金属製の円筒構造体である。機内領域側本体4aには、フラッシング液Fを供給する供給通路9が形成されており、この供給通路9の下流端部に形成した複数の噴出孔9aから両密封環5,7の密封端面5a,7aの全周に向けてフラッシング液Fが噴出される。
【0017】
固定密封環5は、その先端面を軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面5aに構成したもので、シールケース4の機内領域側本体4aの基端部に固定されている。固定密封環5はカーボン等で構成されている。
【0018】
回転軸6には、シールケース4から両端部10a,10bを突出させたスリーブ10が嵌合されている。スリーブ10は、シールケース4から機外領域方向に突出する基端部10aに固定リング11を嵌合させ、この固定リング11に回転軸6に締め付けられた適当数の第1スクリュー12aとスリーブ10に締め付けられた適当数の第2スクリュー12bとを螺合させることによって、回転軸6に固定されている。なお、シールケース4の機外領域側端部にはスリーブ10に形成した環状凹部10cに係合させた適当数の連結爪13を取り付けるようにして、メカニカルシール1,2を組み立て状態で当該回転機器から取り付け及び取外しできるようになっている。
【0019】
可動密封環7は、スリーブ10の先端部10bにOリング14を介して軸線方向移動可能に保持された金属製の密封環保持体7bと、密封環保持体7bの先端部に焼き嵌め等により固定された密封環本体7cと、密封環保持体7bの基端部に相対回転不能に連結された金属製のスリーブ受け体7dとからなる。密封環本体7cは、その先端面を軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面7aに構成されており、固定密封環5の構成材より硬質の構成材(炭化珪素等のセラミックスやタングステンカーバイド等の超硬合金等)で構成されている。可動密封環7(密封環本体7c)は、スプリング受け体7dに設けたドライブピン15をスリーブ10の先端部10bに固定したスプリングリテーナ16に係合させることによりスリーブ10(回転軸6)に対する相対回転を阻止されている。
【0020】
スプリング8は、可動密封環7のスプリング受け体7dとスプリングリテーナ16との間に装填されており、可動密封環7の密封環本体7bを固定密封環5に押圧すべく附勢する。
【0021】
機外領域側の非接触メカニカルシール2は、
図1に示す如く、前記シールケース4の機外領域側本体4b、スプリングリテーナ4c及び保持体4dと、シールケース4の保持体4dに軸線方向移動可能に保持された静止密封環18と、静止密封環18に対向して配置されて、回転軸6に固定された回転密封環19と、静止密封環18とシールケース4のスプリングリテーナ4cとの間に装填されたスプリング20とを具備して、両密封環18,19の対向端面である密封端面18a,19aをその間に発生させた動圧により非接触状態に保持した状態で相対回転させることにより、密封端面18a,19aの外周側領域であるパージガス領域Cとその内周側領域である機外領域Bとを区画するように構成された動圧形のものである。
【0022】
シールケース4の機外領域側本体4bには、パージガスPをパージガス領域Cに供給するパージガス供給路21及びパージガス領域CからパージガスPを排出するドレン路22が設けられている。パージガスPとしては、機外領域(大気領域)Bに漏洩しても支障がなく且つ機内領域Aの液体と不活性なものが選択されており、この例では窒素ガスが使用されている。
【0023】
静止密封環18は、
図1及び
図2に示す如く、シールケース4の保持体4dに軸線方向移動可能に保持させた密封環本体18bと、密封環本体18bの基端部にOリング23を介して連結された金属製(チタン、ステンレス鋼等)の押圧体18cとからなる。密封環本体18bはカーボン等で構成されており、先端面は軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面18aに構成されている。なお、静止密封環18の密封環本体18bは、シールケース4のスプリングリテーナ4cとの間に設けたドライブピン(図示せず)によりシールケース4に対する相対回転を阻止されている。
【0024】
回転密封環19は、スリーブ10にOリング24を介して固定された金属製の密封環保持体19bと、密封環保持体19bの先端部にOリング25を介して固定された密封環本体19cとからなる。密封環本体19cは、カーボン、炭化珪素等のセラミックス、タングステン等の超硬合金等で構成されている。密封環本体19cの先端面は軸線に直交する円滑な環状平面である密封端面19aに構成されており、密封端面19aにはパージガス領域Cに開口する動圧発生溝19dが形成されている。なお、動圧発生溝19dは、密封環本体19cの密封端面19aにパージガス領域Cに開口するスパイラル状等の浅い溝を形成してなる。
【0025】
スプリング20は、静止密封環18の押圧体18cとシールケース4のスプリングリテーナ4cとの間に装填されており、静止密封環18の密封環本体18bを押圧体18cを介して回転密封環19の密封環本体19c方向に附勢する。
【0026】
ところで、パージガス供給路21は静止密封環18の密封環本体18bに向かってパージガスPが供給され、供給されたパージガスPはシールケース4の機外領域側本体4bの内周部に設けたスットパリング4eに誘導されて両密封環18,19の密封端面18a,19a間から一部が機外領域Bへと流出し、他の一部が回転密封環19の外周面に沿って回転密封環19の密封環保持体19bへの側と流出して、機内領域側のメカニカルシール1の密封端面5a,7aからパージガス領域Cに漏洩した液体を同伴してドレン路22から流出する。
【0027】
機外領域側の非接触形メカニカルシール2によれば、パージガス領域CのパージガスPを静止密封環18の密封端面18aと回転密封環19の密封端面19aとの間に巻き込んで、両密封端面18a,19a間に動圧を発生し、両密封端面18a,19aを微小な間隙(適正間隙)を有する非接触状態に保持する。パージガス供給路21からパージガス領域Cに供給されたパージガスPは、一部が両密封環18,19の密封端面18a,19a間を通って機外領域(大気領域)Bに放出され、他の一部が機内領域側の端面接触形メカニカルシール1から漏洩した液体を同伴してドレン路22から排出される。
【0028】
而して、本発明に係る軸封装置にあっては、機外領域側の非接触形メカニカルシール2によるシール機能が機能していない場合において、これを検知して警報を発する異常検知装置26が設けられている。
【0029】
すなわち、異常検知装置26は、
図1に示す如く、静止密封環18の基端面に設けた被測定板27と、シールケース4のスプリングリテーナ4cに設けられて、被測定板27との間の距離を測定する非接触式センサー28と、非接触式センサー28の検出値を閾値と比較する制御器29と、非接触式センサー28による検出値が閾値から外れた場合に警報を発する警報器30とを具備する。
【0030】
静止密封環18の基端面に設けられた被測定板27は、静止密封環18の押圧体18cの基端面に軸線に直交する状態に設けられている。この例では、押圧体18cが導電性の金属材(チタン等)のものであるから、被測定板27は押圧体18cに一体成形されており、非接触式センサー28の検出範囲に応じて押圧体18cの基端面から一部が食み出す形で一体形成されている。
【0031】
シールケース4のスプリングリテーナ4cには、
図1及び
図2に示す如く、静止密封環18の基端面(押圧体18cの基端面)に設けた被測定板27との距離を測定する非接触式センサー28が設けられている。非接触式センサー28としては、例えば、渦電流により被測定板27との距離を測定する非接触式のものが使用されており、その外周部には雄ネジが形成されている。非接触式センサー28は、スプリングリテーナ4cに水平貫通状のネジ孔4fを形成し、このネジ孔4fに非接触式センサー28をねじ込んでいる。非接触式センサー28は、両端部をスプリングリテーナ4cから若干突出させた状態でねじ込まれており、スプリングリテーナ4cから突出する基端部にはナット31を螺合させてある。ナット31は、スプリングリテーナ4cとの間にガスケット等のシール部材32を介して非接触式センサー28に螺合されており、非接触式センサー28とスプリングリテーナ4cとの間をシールしている。このシール部材32により、パージ領域Cにおいて非接触式センサー28はスプリングリテーナ4cとの間をシールされた状態で設けられている。
【0032】
非接触式センサー28の先端部と静止密封環18の被測定板27との間の距離Tは、
図2に示す如く、静止密封環18の密封端面18aが回転密封環19の密封端面19aと間隙が適正間隙となる場合の距離に設定されている。すなわち、当該距離が閾値Tである。そして、制御器29により非接触式センサー28による検出値と閾値Tと比較して、この検出値が閾値Tの範囲から外れた場合に警報機30により警報(音、光等)を発する。
【0033】
以上のように構成された軸封装置によれば、機内領域側のメカニカルシール1により機内領域Aの液体がシールされ、機内領域Aの液体がバージ領域Cに大量に漏れると、機外領域側の非接触形メカニカルシール2により漏れをパージガスPに同伴させて、ドレン路22から排出する。一方、一部のパージガスPは、パージガス領域Cから機外領域Bへと放出される。
【0034】
そして、機外領域側の非接触形メカニカルシール2によるシール機能が何らかの理由で不適正になって、両密封環18,19の密封端面18a,19a間が適正間隙より広がるか或いは狭まった場合に、つまり非接触式ンサー28の検出値が閾値Tの範囲から外れた場合(上限値を上回った場合または下限値を下回った場合)に警報器30による警報を発せられる。警報が発せられたときは、機器を停止し、非接触形メカニカルシール2を点検、修理する。なお、非接触形メカニカルシール2の運転開始直後においては、両密封環18,19の密封端面18a,19aが適正間隙に達しておらず、非接触式センサー28による検出値は閾値Tの下限値を下回っているから、この場合には警報は発せられない。
【0035】
このとき、非接触式センサー27がシールケース4の機外領域側端部から垂下するスプリングリテーナ4cに設けられているから、特許文献1の第1図に開示されるようなセンサーを設ける場合のように静止密封環及びこれを保持するシールケース部分に複雑な加工を施しておく必要がなく、静止密封環18の密封環本体部18bに非接触式センサー28用の加工を施しておく必要がない。したがって、静止密封環18の密封環本体18b及びこれを保持するシールケース4の保持体4dには何らの加工を必要とせず、シールケース4のスプリングリテーナ4cに非接触センサー28を取りけるだけのネジ孔4fを設けておくだけでよいから、非接触センサー28を既存の軸封装置に容易に取りけることができる。また、非接触式センサー28は、その検出値が閾値Tの範囲から外れたときにのみ警報を発するものであるから、両密封環18,19の密封端面18a,19a間が適正間隔を超えた時点を正確に把握できるものである。
【0036】
また、静止密封環18の押圧体18cが導電性の金属材(チタン等)で構成されているから、静止密封環18の密封本体18bをカーボン等の導電性材に優れない材料や非導電性材で構成することができ、また特許文献1のように相手密封環(回転密封環19の密封環本体19b)を導電性材で構成する必要もない。また、静止密封環18の機能には直接関係しない押圧体18cに被測定板27を設けたから、押圧体18cに被測定板27を一体成形しておくことができ、また被測定板27の一部が非接触式センサー27の検出範囲内にない場合には押圧体18c外にはみ出す部分を形成しておくことができる。したがって、静止密封環18の密封環本体18b及び回転密封環19の密封環本体19bの材質を密封環本来の材料で構成することができ、その構成材料が制限されることがない。
【0037】
また、ドレン路22からは機内領域Aから漏洩した液体が流出されるが、この液体を同伴したバージガスPは非接触式センサー28の付近を通過しない。すなわち、非接触式センサー28はシール部材32によりシールケース4のスプリングリテーナ4cとストッパリング4eとの間にシールされていて、そこにはパージガス供給路21から供給された清浄のパージガスPのみが侵入して、ドレン路22から流出する液体を同伴したパージガスPには接触しないから、非接触式センサー28が汚損されたり、作動不良になる虞れはない。したがって、非接触式センサー28の作動が常に良好に保持される。
【0038】
なお、本発明の軸封措置の構成は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲で適宜に改良、変更することができる。
【0039】
例えば、機内領域側の端面接触形のメカニカルシール1を、シールケース4に軸線方向移動可能に保持した可動密封環と回転軸2に固定した固定密封環とからなるものとしてもよい。また、軸封装置としては、端面接触形メカニカルシール1を設けず、動圧形の非接触形メカニカルシール2をシングルシールとして使用する場合にも適用することができ、この場合の被密封流体はガスである。勿論、静止密封環18を単一の密封環として構成してもよいが、この場合には単一の密封環がカーボン等の導電性に優れないものや非導電性材であるときは、被測定板27を金属材で構成しておくことが好ましい。
【0040】
また、本発明の軸封装置は、
図3に示す如く、静圧形の非接触形メカニカルシール40にも適用することができる。すなわち、静圧形の非接触形のメカニカルシール40は、回転機器の軸封部ケーシング41に本体42aを取り付け、本体42の機外領域側端部から環状板状のスプリングリテーナ42bを垂下させ、スプリングリテーナ42bの内周部に機内領域A方向に延びる円筒状の保持体42cを一体成形してなるシールケース42と、シールケース42の保持体42cにOリング43を介して軸線方向移動可能に保持されたカーボン等からなる静止密封環44と、当該回転機器の回転軸45に嵌合したスリーブ46に静止密封環44に対向して固定されたカーボンやセラミックス等からなる回転密封環47と、静止密封環44の基端部とシールケース42のスプリングリテーナ42bとの間に装填されて、静止密封環44を回転密封環47方向に押圧するスプリング(図示せず)と、シールケース42の本体42aに形成したパージガス供給路48と静止密封環44の密封端面44aに形成された静圧発生溝44bとを連通するパージガス注入路49,50,51とを具備する。バージガス注入路49,50,51は、シールケース42の本体42aの内周部と静止密封環44の外周部との間にOリング52,53でシールされ、パージガス供給路48に接続された空間49と、この空間49から静止密封環44に形成されて前記静圧発生溝44bに接続された通路50と、通路50に介在されたオリフィス51とからなる。したがって、バージガスPをパージガス供給路48から静止密封環44の静圧発生溝44bに供給することにより、静止密封環44の密封端面44aと回転密封環47の密封端面47aとの間に静圧を発生させ、両密封環44,47の密封端面44a,47aを非接触状態に保持する。
【0041】
この静圧形の非接触形のメカニカルシール40には、前記異常検知装置26と同様の異常検知装置54が設けられている。すなわち、異常検知装置54は、
図3に示す如く、前記したと同一の非接触式センサー28、制御器29及び警報器30と、静止密封環44の基端面に設けた被測定板55とを具備する。非接触式センサー27は、シールケース42のスプリングリテーナ42bに形成した水平のネジ孔4fにねじ込まれており、シール部材32を介してナット31により固定されている。被測定板55は静止密封環44の基端面に設けられるが、静止密封環44が導電性に優れないカーボン等であることから、静止密封環44の基端面には金属製の被測定板55が設けられている。また、静止密封環44の基端面は非接触式センサー27の検出範囲内にあることから、被測定板55は静止密封環44の基端面からはみ出すことのない形状とされている。
【0042】
而して、この異常検知装置54によれば、前記異常検知装置26と同様に、非接触式センサー27による検出値が閾値Tの範囲から外れた場合、つまり両密封環44,47の密封端面44a,47aが適正間隔を超えて広がった場合、警報を発する。警報が発せられたときは、機器を停止し、静圧形の非接触形メカニカルシール40の点検、修理を行うのである。
【符号の説明】
【0043】
1 端面接触形メカニカルシール
2 非接触形メカニカルシール
4 シールケース
4c スプリングリテーナ
4d 保持体
5 固定密封環(シールケースに設けられた密封環)
6 回転軸
7 可動密封環(回転軸に設けられた密封環)
18 静止密封環
18a 密封端面
18b 密封環本体
18c 押圧体
19 回転密封環
19a 密封端面
21 パージガス供給路
22 ドレン路
23 Oリング
26 異常検知装置
27 被測定板
28 非接触式センサー
30 警報器
40 非接触形メカニカルシール
42 シールケース
42b スプリングリテーナ
42c 保持体
44 静止密封環
44 密封端面
45 回転軸
47 回転密封環
47a 密封端面
54 異常検知装置
55 被測定板
A 機内領域
B 機外領域(大気領域)
C パージガス領域
P パージガス
T 閾値