(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】基板洗浄装置および基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
H01L21/304 644A
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2019222408
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】西山 耕二
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152274(JP,A)
【文献】特開2002-1254(JP,A)
【文献】特開2010-114123(JP,A)
【文献】特開2009-194034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の外周端部を保持するとともに基板を鉛直軸の周りで回転させるように構成された第1の基板保持部と、
前記第1の基板保持部の下方に設けられ、基板の下面を吸着により保持するとともに基板を鉛直軸の周りで回転させるように構成された第2の基板保持部と、
前記第1の基板保持部により保持された基板の下面を洗浄する第1の洗浄具と、
前記第2の基板保持部により保持された基板の上面を洗浄する第2の洗浄具と、
前記第2の基板保持部により保持された基板の外周端部を洗浄する第3の洗浄具と、
前記第1の基板保持部により基板が保持および回転される状態で前記第1の洗浄具による基板の下面の洗浄が行われた後、前記第2の基板保持部により基板が保持および回転される状態で前記第2の洗浄具による基板の上面の洗浄および前記第3の洗浄具による基板の外周端部の洗浄が行われるように、前記第1の基板保持部、前記第2の基板保持部、前記第1の洗浄具、前記第2の洗浄具および前記第3の洗浄具を制御する制御部とを備える、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の洗浄具による基板の上面の洗浄と、前記第3の洗浄具による基板の外周端部の洗浄とが少なくとも部分的に重複した期間に行われるように、前記第2の基板保持部、前記第2の洗浄具および前記第3の洗浄具を制御する、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記第2の基板保持部の吸着面を洗浄する第4の洗浄具をさらに備え、
前記制御部は、前記第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に前記第2の基板保持部の前記吸着面が前記第4の洗浄具により洗浄されるように前記第4の洗浄具を制御する、請求項1または2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記第2の基板保持部は、前記吸着面を有するとともに鉛直軸の周りで回転する吸着保持部を有し、
前記第4の洗浄具は、前記第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に前記第2の基板保持部の前記吸着面に洗浄液を吐出する保持部洗浄用ノズルを含み、
前記制御部は、前記第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中および洗浄後に、前記吸着保持部が回転されるように前記第2の基板保持部を制御する、請求項3記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記保持部洗浄用ノズルから前記吸着面への洗浄液の吐出中に前記吸着保持部が第1の回転速度で回転され、前記保持部洗浄用ノズルから前記吸着面への洗浄液の吐出の停止後に前記吸着保持部が前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転されるように前記第2の基板保持部を制御する、請求項4記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記保持部洗浄用ノズルから前記吸着面への洗浄液の吐出の停止後に前記吸着面に乾燥用の流体を吐出する乾燥用ノズルをさらに備えた、請求項4または5記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記第1の洗浄具は、前記第1の基板保持部により保持された基板の下面に第1の洗浄液を吐出する第1の洗浄液ノズルおよび前記第1の基板保持部により保持された基板の下面に接触可能に構成される第1の洗浄ブラシの少なくとも一方を含む、請求項1~6記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記第2の洗浄具は、前記第2の基板保持部により保持された基板の上面に第2の洗浄液を吐出する第2の洗浄液ノズルおよび前記第2の基板保持部により保持された基板の上面に接触可能に構成される第2の洗浄ブラシの少なくとも一方を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記第3の洗浄具は、前記第2の基板保持部により保持された基板の外周端部に接触可能に構成される第3の洗浄ブラシを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
第1の基板保持部により基板の外周端部を保持するとともに基板を鉛直軸の周りで回転させるステップと、
前記第1の基板保持部により保持および回転される基板の下面を第1の洗浄具により洗浄するステップと、
前記第1の洗浄具による基板の下面の洗浄後、前記第1の基板保持部の下方に設けられた第2の基板保持部により基板の下面を吸着により保持した状態で基板を鉛直軸の周りで回転させるステップと、
前記第2の基板保持部により保持および回転される基板の上面を第2の洗浄具により洗浄するステップと、
前記第2の基板保持部により保持および回転される基板の外周端部を第3の洗浄具により洗浄するステップとを含む、基板洗浄方法。
【請求項11】
前記第2の洗浄具により基板の上面を洗浄するステップおよび前記第3の洗浄具により基板の外周端部を洗浄するステップは、少なくとも部分的に重複した期間に前記第2の洗浄具により基板の上面を洗浄するとともに前記第3の洗浄具により基板の外周端部を洗浄することを含む、請求項10に記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に前記第2の基板保持部の吸着面を第4の洗浄具により洗浄するステップをさらに含む、請求項10または11に記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記第2の基板保持部の吸着面を第4の洗浄具により洗浄するステップは、前記第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に前記第2の基板保持部の前記吸着面に保持部洗浄用ノズルから洗浄液を吐出することを含む、請求項12記載の基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の洗浄を行う基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(ウエハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板を洗浄するために、基板洗浄装置が用いられる。
【0003】
特許文献1には、基板の下面全体を均一に洗浄することが可能な洗浄乾燥処理ユニットが記載されている。特許文献1に記載された洗浄乾燥処理ユニットにおいては、上部スピンチャックおよび下部スピンチャックが上下に並ぶように設けられる。まず、下部スピンチャックの吸着保持部が基板の下面中央部を吸着することにより基板が保持される。この状態で、基板が回転されるとともに、基板の下面周縁部がブラシにより洗浄される。また、回転される基板の上面にノズルから洗浄液が吐出されることにより、基板の上面が洗浄される。次に、上部スピンチャックの複数のチャックピンが基板の外周端部に当接することにより基板が保持される。この状態で、基板が回転されるとともに、基板の下面中央部がブラシにより洗浄される。これにより、基板の下面全体および基板の上面が洗浄される。洗浄が終了すると、搬送ロボットにより基板が搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の洗浄乾燥処理ユニットによれば、基板の下面中央部が洗浄される際に、複数のチャックピンが基板の外周端部に当接する。このとき、チャックピンに汚染物質が付着している場合、基板の外周端部に汚染物質が転写される可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、基板の上面、下面および外周端部の清浄度を向上させることが可能な基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る基板洗浄装置は、基板の外周端部を保持するとともに基板を鉛直軸の周りで回転させるように構成された第1の基板保持部と、第1の基板保持部の下方に設けられ、基板の下面を吸着により保持するとともに基板を鉛直軸の周りで回転させるように構成された第2の基板保持部と、第1の基板保持部により保持された基板の下面を洗浄する第1の洗浄具と、第2の基板保持部により保持された基板の上面を洗浄する第2の洗浄具と、第2の基板保持部により保持された基板の外周端部を洗浄する第3の洗浄具と、第1の基板保持部により基板が保持および回転される状態で第1の洗浄具による基板の下面の洗浄が行われた後、第2の基板保持部により基板が保持および回転される状態で第2の洗浄具による基板の上面の洗浄および第3の洗浄具による基板の外周端部の洗浄が行われるように、第1の基板保持部、第2の基板保持部、第1の洗浄具、第2の洗浄具および第3の洗浄具を制御する制御部とを備えるものである。
【0008】
その基板洗浄装置においては、まず、第1の基板保持部により基板の外周端部が保持されつつ基板が鉛直軸の周りで回転される。この状態で、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄が行われる。次に、第2の基板保持部により基板の下面が保持されつつ基板が鉛直軸の周りで回転される。この状態で、第2の洗浄具による基板の上面の洗浄、および第3の洗浄具による基板の外周端部の洗浄が行われる。それにより、基板の上面、下面および外周端部が洗浄される。
【0009】
この場合、第1の基板保持部により基板の外周端部が保持された後に、第3の洗浄具により基板の外周端部が洗浄される。それにより、第1の基板保持部に汚染物質が付着している場合でも、基板の外周端部が汚染することを防止することができる。したがって、基板の上面、下面および外周端部の清浄度を向上させることができる。
【0010】
(2)制御部は、第2の洗浄具による基板の上面の洗浄と第3の洗浄具による基板の外周端部の洗浄とが少なくとも部分的に重複した期間に行われるように、第2の基板保持部、第2の洗浄具および第3の洗浄具を制御してもよい。
【0011】
この場合、第2の洗浄具による基板の上面の洗浄と第3の洗浄具による基板の外周端部の洗浄とが並行して行われる。それにより、第2の洗浄具による基板の上面の洗浄および第3の洗浄具による基板の外周端部の洗浄に要する時間が短縮される。したがって、基板洗浄装置での基板洗浄処理のスループットが向上する。
【0012】
(3)基板洗浄装置は、第2の基板保持部の吸着面を洗浄する第4の洗浄具をさらに備え、制御部は、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に第2の基板保持部の吸着面が第4の洗浄具により洗浄されるように第4の洗浄具を制御してもよい。
【0013】
この場合、基板の下面の洗浄により第2の基板保持部の吸着面が清浄に保たれるので、第2の基板保持部により基板の下面が吸着されるとともに保持されたときに基板の下面が清浄に保たれる。
【0014】
(4)第2の基板保持部は、吸着面を有するとともに鉛直軸の周りで回転する吸着保持部を有し、第4の洗浄具は、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に第2の基板保持部の吸着面に洗浄液を吐出する保持部洗浄用ノズルを含み、制御部は第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中および洗浄後に、吸着保持部が回転されるように第2の基板保持部を制御してもよい。
【0015】
この場合、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に、第2の基板保持部の回転する吸着保持部の吸着面に洗浄液が吐出される。それにより、吸着保持部の回転による遠心力により洗浄液が吸着面の全体に拡がりつつ外方へ飛散する。その結果、簡単な制御により第2の基板保持装置の吸着面の全体が清浄に保たれる。
【0016】
(5)制御部は、保持部洗浄用ノズルから吸着面への洗浄液の吐出中に吸着保持部が第1の回転速度で回転され、保持部洗浄用ノズルから吸着面への洗浄液の吐出の停止後に吸着保持部が第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転されるように第2の基板保持部を制御してもよい。
【0017】
この場合、第2の基板保持部の吸着面の洗浄後に、第2の基板保持部の吸着面を簡単な制御で清浄な状態を維持しつつ乾燥させることができる。
【0018】
(6)基板洗浄装置は、保持部洗浄用ノズルから吸着面への洗浄液の吐出の停止後に吸着面に乾燥用の流体を吐出する乾燥用ノズルをさらに備えてもよい。
【0019】
この場合、第2の基板保持部の吸着面の洗浄後に、第2の基板保持部の吸着面を清浄な状態を維持しつつ短時間で乾燥させることができる。
【0020】
(7)第1の洗浄具は、第1の基板保持部により保持された基板の下面に第1の洗浄液を吐出する第1の洗浄液ノズルおよび第1の基板保持部により保持された基板の下面に接触可能に構成される第1の洗浄ブラシの少なくとも一方を含んでもよい。
【0021】
この場合、回転する基板の下面への第1の洗浄液の吐出および第1の洗浄ブラシの接触のうち少なくとも一方により基板の下面が洗浄される。
【0022】
(8)第2の洗浄具は、第2の基板保持部により保持された基板の上面に第2の洗浄液を吐出する第2の洗浄液ノズルおよび第2の基板保持部により保持された基板の上面に接触可能に構成される第2の洗浄ブラシの少なくとも一方を含んでもよい。
【0023】
この場合、回転する基板の下面への第2の洗浄液の吐出および第2の洗浄ブラシの接触のうち少なくとも一方により基板の下面が洗浄される。
【0024】
(9)第3の洗浄具は、第2の基板保持部により保持された基板の外周端部に接触可能に構成される第3の洗浄ブラシを含んでもよい。
【0025】
この場合、回転する基板の外周端部への第3の洗浄ブラシの接触により、基板の下面が洗浄される。
【0026】
(10)本発明に係る基板洗浄方法は、第1の基板保持部により基板の外周端部を保持するとともに基板を鉛直軸の周りで回転させるステップと、第1の基板保持部により保持および回転される基板の下面を第1の洗浄具により洗浄するステップと、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄後、第1の基板保持部の下方に設けられた第2の基板保持部により基板の下面を吸着により保持した状態で基板を鉛直軸の周りで回転させるステップと、第2の基板保持部により保持および回転される基板の上面を第2の洗浄具により洗浄するステップと、第2の基板保持部により保持および回転される基板の外周端部を第3の洗浄具により洗浄するステップとを含んでもよい。
【0027】
その基板洗浄方法によれば、第1の基板保持部により基板の外周端部が保持された後に、第3の洗浄具により基板の外周端部が洗浄される。それにより、第1の基板保持部に汚染物質が付着している場合でも、基板の外周端部が汚染することを防止することができる。したがって、基板の上面、下面および外周端部の清浄度を向上させることができる。
【0028】
(11)第2の洗浄具により基板の上面を洗浄するステップおよび第3の洗浄具により基板の外周端部を洗浄するステップは、少なくとも部分的に重複した期間に第2の洗浄具により基板の上面を洗浄するとともに第3の洗浄具により基板の外周端部を洗浄することを含んでもよい。
【0029】
(12)基板洗浄方法は、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に第2の基板保持部の吸着面を第4の洗浄具により洗浄するステップをさらに含んでもよい。
【0030】
この場合、基板の下面の洗浄後に第2の基板保持部の吸着面が確実に清浄に保たれるので、第2の基板保持部により基板の下面が吸着により保持されたときに基板の下面が確実に清浄に保たれる。
【0031】
(13)第2の基板保持部の吸着面を第4の洗浄具により洗浄するステップは、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に第2の基板保持部の吸着面に保持部洗浄用ノズルから洗浄液を吐出することを含んでもよい。
【0032】
この場合、第1の洗浄具による基板の下面の洗浄中または洗浄後に、第2の基板保持部の回転する吸着保持部の吸着面に洗浄液が吐出される。それにより、吸着保持部の回転による遠心力により洗浄液が吸着面の全体に拡がりつつ外方へ飛散する。その結果、簡単な制御により第2の基板保持部の吸着面が清浄に保たれる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、基板の上面、下面および外周端部の清浄度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る基板洗浄装置の構成を示す正面図である。
【
図2】
図1の基板洗浄装置に用いられる下部スピンチャックおよびその周辺部材の構成を説明するための概略平面図である。
【
図3】
図1の基板洗浄装置に用いられる上部スピンチャックの構成を説明するための概略平面図である。
【
図4】本実施の形態に係る基板洗浄装置の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施の形態に係る基板洗浄装置の洗浄動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に係る基板洗浄装置の洗浄動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る基板洗浄装置の洗浄動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【
図9】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【
図10】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【
図11】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【
図12】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【
図13】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【
図14】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【
図15】基板洗浄装置による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態に係る基板洗浄装置について図面を用いて詳細に説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板(ウエハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0036】
本実施の形態では、基板は、ノッチを除いて円形状を有する。また、基板の外周端部(ベベル)は、水平な上面から斜め下方かつ外方に傾斜する上面傾斜部、水平な下面から斜め上方かつ外方に傾斜する下面傾斜部、および上面傾斜部と下面傾斜部との境界である端面部を含む。
【0037】
(1)基板洗浄装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板洗浄装置の構成を示す正面図である。
図2は、
図1の基板洗浄装置に用いられる下部スピンチャックおよびその周辺部材の構成を説明するための概略平面図である。
図3は、
図1の基板洗浄装置に用いられる上部スピンチャックの構成を説明するための概略平面図である。
【0038】
図1に示すように、基板洗浄装置1は下部スピンチャック400および上部スピンチャック600を含む。上部スピンチャック600は、下部スピンチャック400の上方に設けられる。
図1および
図2では、下部スピンチャック400により保持される基板Wが二点鎖線で示される。
【0039】
下部スピンチャック400は、スピンモータ410、回転軸420および吸着保持部430を含む。スピンモータ410は、基板洗浄装置1の底部に設けられる。スピンモータ410には、上方に向かって延びるように回転軸420が設けられる。回転軸420の上端部に吸着保持部430が設けられる。吸着保持部430は、基板Wの下面中央部を吸着可能に構成される。吸着保持部430が基板Wの下面中央部を吸着することにより、基板Wが保持される。スピンモータ410が回転軸420を回転させる。それにより、吸着保持部430が鉛直軸の周りで回転する。
【0040】
下部スピンチャック400の外方には、スピンチャック洗浄機構500、外周端部洗浄機構510、下面洗浄機構520、第1の上面洗浄機構530、第2の上面洗浄機構540および基板昇降機構720が設けられる。
【0041】
基板昇降機構720は、昇降駆動部721、ピン支持部材722および複数(本例では3つ)の昇降ピン723を含む。昇降駆動部721にピン支持部材722が取り付けられる。昇降駆動部721は、ピン支持部材722を鉛直方向に移動可能に支持する。ピン支持部材722に複数の昇降ピン723がそれぞれ鉛直方向に延びるように取り付けられる。複数の昇降ピン723は、等間隔で下部スピンチャック400を取り囲むように配置される。複数の昇降ピン723の上端部が基板Wの下面の中央部と外周端部との間の領域に当接することにより、基板Wが水平姿勢で支持される。基板昇降機構720が動作することによりピン支持部材722が鉛直方向に移動する。
【0042】
スピンチャック洗浄機構500は、昇降回転駆動部501、昇降回転軸502、アーム503およびスピンチャック洗浄ノズル504を含む。昇降回転駆動部501に昇降回転軸502が鉛直方向に延びるように取り付けられる。昇降回転駆動部501は、昇降回転軸502を鉛直方向に移動可能かつ鉛直軸の周りで回転可能に支持する。昇降回転軸502の上端部に、アーム503が水平方向に延びるように連結される。アーム503の先端部にスピンチャック洗浄ノズル504が取り付けられる。
【0043】
昇降回転駆動部501は、昇降回転軸502を鉛直方向に移動させる。それにより、スピンチャック洗浄ノズル504の高さが変化する。また、昇降回転駆動部501は、昇降回転軸502を回転させる。それにより、スピンチャック洗浄ノズル504は、
図2に矢印a1で示すように、例えば吸着保持部430の回転中心WCの上方位置と下部スピンチャック400の外方の待機位置との間を移動する。スピンチャック洗浄ノズル504には、図示しない洗浄液供給部が接続される。スピンチャック洗浄ノズル504は、洗浄液供給部から供給される洗浄液を下方に向かって吐出可能に構成される。
【0044】
図1に示すように、外周端部洗浄機構510は、昇降駆動部511、昇降軸512、ブラシモータ513およびベベルブラシ514を含む。昇降駆動部511に昇降軸512が鉛直方向に延びるように取り付けられる。昇降駆動部511は、昇降軸512を鉛直方向および水平方向に移動可能に支持する。昇降軸512の上端部にブラシモータ513が設けられる。また、ブラシモータ513にベベルブラシ514が取り付けられる。ブラシモータ513は、ベベルブラシ514を鉛直軸の周りで回転可能に支持する。ベベルブラシ514は、逆円錐台形状の上洗浄部514aと円錐台形状の下洗浄部514bとを有し、上洗浄部514aと下洗浄部514bとの間に円筒形状の端面洗浄部514sを有する。
【0045】
昇降駆動部511は、昇降軸512を鉛直方向および水平方向に移動させる。それにより、ベベルブラシ514の高さが変化するとともに
図2に矢印a5で示すように水平方向の位置が変化する。また、ブラシモータ513は、ベベルブラシ514を駆動する。それにより、ベベルブラシ514が鉛直軸の周りで回転する。
【0046】
下面洗浄機構520は、昇降回転駆動部521、昇降回転軸522、アーム523、下面洗浄ブラシ524および下面洗浄ノズル525を含む。昇降回転駆動部521に昇降回転軸522が鉛直方向に延びるように取り付けられる。昇降回転駆動部521は、昇降回転軸522を鉛直方向に移動可能かつ鉛直軸の周りで回転可能に支持する。昇降回転軸522の上端部に、アーム523が水平方向に延びるように連結される。アーム523の先端部に下面洗浄ブラシ524が取り付けられる。下面洗浄ブラシ524は、上方を向く洗浄面524sを有する。
【0047】
昇降回転駆動部521は、昇降回転軸522を鉛直方向に移動させる。それにより、下面洗浄ブラシ524の高さが変化する。また、昇降回転駆動部521は、昇降回転軸522を回転させる。それにより、下面洗浄ブラシ524は、
図2に矢印a2で示すように、例えば吸着保持部430の回転中心WCの上方位置と下部スピンチャック400の外方の待機位置との間を移動する。
【0048】
アーム523の先端部近傍に下面洗浄ノズル525が取り付けられる。下面洗浄ノズル525には、図示しない洗浄液供給部が接続される。下面洗浄ノズル525は、洗浄液供給部から供給される洗浄液を上方に向かって吐出可能に構成される。
【0049】
図1に示すように、第1の上面洗浄機構530は、昇降回転駆動部531、昇降回転軸532、アーム533および上面洗浄ブラシ534を含む。昇降回転駆動部531に昇降回転軸532が鉛直方向に延びるように取り付けられる。昇降回転駆動部531は、昇降回転軸532を鉛直方向に移動可能かつ鉛直軸の周りで回転可能に支持する。昇降回転軸532の上端部に、アーム533が水平方向に延びるように連結される。アーム533の先端部に上面洗浄ブラシ534が取り付けられる。上面洗浄ブラシ534は、下方に向く洗浄面534sを有する。
【0050】
昇降回転駆動部531は、昇降回転軸532を鉛直方向に移動させる。それにより、上面洗浄ブラシ534の高さが変化する。また、昇降回転駆動部531は、昇降回転軸532を回転させる。それにより、上面洗浄ブラシ534は、
図2に矢印a3で示すように、例えば吸着保持部430の回転中心WCと下部スピンチャック400の外方の待機位置との間を移動する。
【0051】
図1に示すように、第2の上面洗浄機構540は、昇降回転駆動部541、昇降回転軸542、アーム543、上面洗浄ノズル544および上面乾燥ノズル545を含む。昇降回転駆動部541に昇降回転軸542が鉛直方向に延びるように取り付けられる。昇降回転駆動部541は、昇降回転軸542を鉛直方向に移動可能かつ鉛直軸の周りで回転可能に支持する。昇降回転軸542の上端部に、アーム543が水平方向に延びるように連結される。アーム543の先端部に上面洗浄ノズル544および上面乾燥ノズル545が取り付けられる。
【0052】
昇降回転駆動部541は、昇降回転軸542を鉛直方向に移動させる。それにより、上面洗浄ノズル544および上面乾燥ノズル545の高さが変化する。また、昇降回転駆動部541は、昇降回転軸542を回転させる。それにより、上面洗浄ノズル544および上面乾燥ノズル545は、
図2に矢印a4で示すように、例えば吸着保持部430の回転中心WCの上方位置と下部スピンチャック400の外方の待機位置との間を移動する。
【0053】
上面洗浄ノズル544には、図示しない洗浄液供給部が接続される。上面洗浄ノズル544は、洗浄液供給部から供給される洗浄液を下方に向かって吐出可能に構成される。上面乾燥ノズル545には、図示しない気体供給部が接続される。上面乾燥ノズル545は、気体供給部から供給される気体(窒素ガス)を下方に向かって吐出可能に構成される。
【0054】
図1に示すように、上部スピンチャック600は、スピンモータ611、円板状のスピンプレート612、プレート支持部材613、円環状のマグネットプレート614および複数のチャックピン615を含む。
【0055】
スピンモータ611は、下部スピンチャック400の上方の位置で図示しない支持部材によって支持されている。スピンモータ611には、下方に延びるように回転軸611aが設けられる。回転軸611aの下端部にはプレート支持部材613が取り付けられている。プレート支持部材613によりスピンプレート612が水平に支持されている。スピンモータ611が回転軸611aを回転させる。それにより、スピンプレート612が鉛直軸の周りで回転する。本実施の形態では、上部スピンチャック600の回転軸611aは、下部スピンチャック400の回転軸420の延長線上に配置されている。
【0056】
各チャックピン615は、軸部615a、ピン支持部615b、保持部615cおよびマグネット616を含む。スピンプレート612を貫通するように軸部615aが設けられ、軸部615aの下端部に水平方向に延びるピン支持部615bが接続されている。ピン支持部615bの先端部から下方に突出するように保持部615cが設けられている。また、スピンプレート612の上面側において、軸部615aの上端部にマグネット616が取り付けられている。
【0057】
各チャックピン615は、軸部615aを中心に鉛直軸の周りで回転可能であり、保持部615cが基板Wの外周端部に当接する閉状態と、保持部615cが基板Wの外周端部から離間する開状態とに切替可能である。なお、本例では、マグネット616のN極が内側にある場合に各チャックピン615が閉状態となり、マグネット616のS極が内側にある場合に各チャックピン615が開状態となる。
【0058】
スピンプレート612の上方には、回転軸611aを中心とする周方向に沿って円環状のマグネットプレート614が配置される。マグネットプレート614は、外側にS極を有し、内側にN極を有する。マグネットプレート614は、チャックピン615のマグネット616よりも高い上方位置とチャックピン615のマグネット616とほぼ等しい高さの下方位置との間で移動する。
【0059】
マグネットプレート614の昇降により、各チャックピン615が開状態と閉状態とに切り替えられる。具体的には、マグネットプレート614が上方位置にある場合、各チャックピン615は開状態となる。一方、マグネットプレート614が下方位置にある場合、各チャックピン615は閉状態となる。
図3では、閉状態にある保持部615cが実線で示され、開状態にある保持部615cが点線で示される。また、
図3では、上部スピンチャック600により保持される基板Wが二点鎖線で示される。
【0060】
図1に示すように、上部スピンチャック600、下部スピンチャック400、スピンチャック洗浄機構500、外周端部洗浄機構510、下面洗浄機構520および基板昇降機構720の外方に、基板Wから飛散する洗浄液を受け止めるためのガード711が設けられる。なお、
図1では、ガード711の垂直断面が示される。ガード711は、上部スピンチャック600を取り囲む形状を有する。また、ガード711は、ガード昇降機構710により昇降する。ガード711により受け止められた洗浄液は、図示しない排液装置または回収装置により排液または回収される。
【0061】
上記の基板洗浄装置1において、スピンチャック洗浄ノズル504、下面洗浄ノズル525および上面洗浄ノズル544から吐出される洗浄液としては、例えば純水、純水に錯体(イオン化したもの)を溶かした液またはフッ素系薬液等が用いられる。
【0062】
(2)制御系統
図4は、本実施の形態に係る基板洗浄装置1の制御系統の構成を示すブロック図である。
図4の制御部10は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)および記憶装置を含む。RAMは、CPUの作業領域として用いられる。ROMは、システムプログラムを記憶する。記憶装置は、基板洗浄プログラムを記憶する。CPUが記憶装置に記憶された基板洗浄プログラムをRAM上で実行することにより基板洗浄装置1の各部の動作が制御される。
【0063】
制御部10は、下部スピンチャック400および上部スピンチャック600を制御する。具体的には、制御部10は、下部スピンチャック400の吸着保持部430による基板Wの保持および保持の解除を制御するとともに、スピンモータ410の回転を制御する。また、制御部10は、上部スピンチャック600のマグネットプレート614の昇降を制御するとともに、スピンモータ611の回転を制御する。
【0064】
制御部10は、スピンチャック洗浄機構500、外周端部洗浄機構510、下面洗浄機構520、第1の上面洗浄機構530および第2の上面洗浄機構540を制御する。具体的には、制御部10は、スピンチャック洗浄機構500の昇降回転駆動部501を制御するとともに、スピンチャック洗浄ノズル504への洗浄液の供給を制御する。また、制御部10は、外周端部洗浄機構510の昇降駆動部511を制御するとともに、ブラシモータ513の回転を制御する。さらに、制御部10は、下面洗浄機構520の昇降回転駆動部521を制御するとともに、下面洗浄ノズル525への洗浄液の供給を制御する。また、制御部10は、第1の上面洗浄機構530の昇降回転駆動部531を制御する。また、制御部10は、第2の上面洗浄機構540の昇降回転駆動部541を制御するとともに、上面洗浄ノズル544への洗浄液の供給および上面乾燥ノズル545への気体の供給を制御する。
【0065】
制御部10は、ガード昇降機構710および基板昇降機構720を制御する。具体的には、制御部10は、ガード昇降機構710のガード昇降駆動部712を制御し、基板昇降機構720の昇降駆動部721を制御する。
【0066】
(3)基板洗浄装置による基板の洗浄動作
図5~
図7は、本実施の形態に係る基板洗浄装置1の洗浄動作の一例を示すフローチャートである。
図8~
図15は、基板洗浄装置1による基板の洗浄動作を説明するための模式的正面図である。
図8~
図15の動作は、
図4の制御部10が
図4に示される構成要素を制御することにより実行される。
【0067】
図8に示すように、初期状態においては、ガード711の上部が上部スピンチャック600よりも低くかつ下部スピンチャック400よりも高い位置に保持される。また、上部スピンチャック600の複数のチャックピン615は開状態になっている。さらに、基板昇降機構720の昇降ピン723の上端部が吸着保持部430よりも低い高さL1に位置する。
【0068】
まず、
図9に示すように、昇降ピン723の上端部が吸着保持部430と複数の保持部615cとの間の高さL2に上昇する(
図5のステップS1)。昇降ピン723の上端部が高さL2に保持された状態で、一点鎖線の矢印m1で示すように図示しない基板搬送ロボットが基板Wを搬入する(ステップS2)。それにより、昇降ピン723上に基板Wが載置される。
【0069】
次に、
図10に示すように、昇降ピン723の上端部が複数の保持部615cの高さL3に上昇する(ステップS3)。その後、複数のチャックピン615が閉状態になる。それにより、複数のチャックピン615により基板Wの外周端部が保持される(ステップS4)。搬入された基板Wの外周端部に汚染物質が付着している場合、基板Wから複数のチャックピン615に汚染物質が転写される可能性がある。
【0070】
その後、
図11に示すように、昇降ピン723の上端部が吸着保持部430よりも低い高さL1に下降する(ステップS5)。また、ガード711がチャックピン615に保持される基板Wを取り囲む高さに上昇する。次に、下面洗浄機構520の下面洗浄ブラシ524および下面洗浄ノズル525が、待機位置から基板Wの下方の洗浄位置に移動する。下面洗浄ブラシ524の洗浄位置は、下面洗浄ブラシ524の洗浄面524sと基板Wの下面とが接触する位置である。下面洗浄ノズル525の洗浄位置は、基板Wの下面から下方に離間した位置である。また、スピンチャック洗浄機構500のスピンチャック洗浄ノズル504が待機位置から吸着保持部430の上方の洗浄位置に移動する。吸着保持部430の洗浄位置は、
図2に示す吸着保持部430の回転中心WCの上方位置である。
【0071】
この状態で、スピンモータ611が複数のチャックピン615に保持された基板Wを回転させる。このとき、下面洗浄ブラシ524が基板Wの下面の半径方向に移動するとともに、下面洗浄ノズル525が基板Wの下面に洗浄液を吐出する。それにより、基板Wの下面の全体が洗浄される(ステップS6)。また、下部スピンチャック400のスピンモータ410が回転するとともに吸着保持部430が回転する。このとき、スピンチャック洗浄ノズル504が、吸着保持部430の上面(吸着面)に洗浄液を吐出する。それにより、吸着保持部430が洗浄される(ステップS7)。
【0072】
基板Wの下面の洗浄が終了すると、下面洗浄ノズル525は、洗浄液の吐出を停止する。また、下面洗浄ブラシ524および下面洗浄ノズル525が、洗浄位置から待機位置に移動する。その後、スピンモータ611による基板Wの回転速度が上昇する。それにより、基板Wの下面に付着した洗浄液が外方へ振り切られる。その結果、基板Wの下面の乾燥が行われる(ステップS8)。その後、スピンモータ611による基板Wの回転が停止する。
【0073】
吸着保持部430の洗浄が終了すると、スピンチャック洗浄ノズル504は、洗浄液の吐出を停止する。また、スピンチャック洗浄ノズル504が洗浄位置から待機位置に移動する。その後、スピンモータ410による吸着保持部430の回転速度が上昇する。それにより、吸着保持部430に付着した洗浄液が外方へ振り切られる。その結果、吸着保持部430の上面の乾燥が行われる(
図6のステップS9)。その後、スピンモータ410による吸着保持部430の回転が停止する。また、ガード711がチャックピン615に保持される基板Wを取り囲む高さから初期状態の待機位置に下降する。
【0074】
次に、
図12に示すように、昇降ピン723の上端部が複数の保持部615cの高さL3に上昇する(ステップS10)。次いで、複数のチャックピン615が開状態になる。それにより、基板Wの外周端部の保持が解除される(ステップS11)。それにより、昇降ピン723上に基板Wが載置される。
【0075】
その後、
図13に示すように、昇降ピン723の上端部が吸着保持部430よりも低い高さL1に下降する(ステップS12)。それにより、基板Wが昇降ピン723から吸着保持部430上に載置される。この状態で、吸着保持部430は基板Wの下面中央部を吸着するとともに保持する(ステップS13)。
【0076】
その後、
図14に示すように、上面洗浄ブラシ534および上面洗浄ノズル544が、待機位置から基板Wの上面の洗浄位置に移動する。上面洗浄ブラシ534の洗浄位置は、上面洗浄ブラシ534の洗浄面534sと基板Wの上面とが接触する位置である。上面洗浄ノズル544の洗浄位置は、
図2に示す吸着保持部430の回転中心WCの上方位置である。
【0077】
また、ベベルブラシ514が待機位置から基板Wの外周端部の洗浄位置に移動する。ベベルブラシ514の洗浄位置は、上洗浄部514aと基板Wの上面傾斜部とが接触するとともに下洗浄部514bと基板Wの下面傾斜部とが接触し、さらに端面洗浄部514sと基板Wの端面部とが接触する位置である。
【0078】
この状態で、スピンモータ410が吸着保持部430に保持された基板Wを回転させる。このとき、上面洗浄ブラシ534が基板Wの上面の半径方向に移動するとともに、上面洗浄ノズル544が基板Wの上面に洗浄液を吐出する。それにより、基板Wの上面の全体が洗浄される(ステップS14)。また、ブラシモータ513がベベルブラシ514を回転させる。それにより、基板Wの外周端部が洗浄される(ステップS15)。
【0079】
基板Wの上面および外周端部の洗浄が終了すると、上面洗浄ノズル544が洗浄液の吐出を停止する。また、ベベルブラシ514が基板Wの洗浄位置から待機位置に移動する。その後、スピンモータ410による基板Wの回転速度が上昇する。また、上面乾燥ノズル545が基板Wの上面に気体を吐出する。それにより、基板Wの上面に付着した洗浄液が外方へ振り切られるとともに吹き飛ばされる。その結果、基板Wの上面および外周端部の乾燥が行われる(ステップS16)。
【0080】
その後、上面洗浄ブラシ534および上面洗浄ノズル544が基板Wの洗浄位置から待機位置に移動する。また、スピンモータ410による基板Wの回転が停止する。さらに、吸着保持部430による基板Wの保持が解除される(
図7のステップS17)。
【0081】
その後、
図15に示すように、昇降ピン723の上端部が吸着保持部430と複数の保持部615cとの間の高さL2に上昇する(ステップS18)。それにより、基板Wが昇降ピン723により高さL2で支持される。この状態で、一点鎖線の矢印m2で示すように、図示しない基板搬送ロボットが基板Wを搬出する(ステップS19)。
【0082】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態に係る基板洗浄装置1および基板洗浄方法においては、基板Wの外周端部が上部スピンチャック600の複数のチャックピン615により保持された状態で、回転する基板Wの下面が下面洗浄ブラシ524および下面洗浄ノズル525を用いて洗浄される。次に、基板Wの下面中央部が下部スピンチャック400の吸着保持部430により保持された状態で、回転する基板Wの上面が上面洗浄ブラシ534および上面洗浄ノズル544を用いて洗浄されるとともに、基板Wの外周端部がベベルブラシ514を用いて洗浄される。それにより、基板Wの上面、下面および外周端部が洗浄される。
【0083】
この場合、基板Wの下面の洗浄時に基板Wの外周端部が上部スピンチャック600の複数のチャックピン615により保持された後に、基板Wの下面中央部が下部スピンチャック400の吸着保持部430により保持された状態でベベルブラシ514を用いて基板Wの外周端部が洗浄される。それにより、複数のチャックピン615に汚染物質が付着している場合でも、チャックピン615から基板Wの外周端部に転写された汚染物質が除去される。それにより、基板Wの外周端部の汚染が防止される。
【0084】
また、基板Wの下面中央部が下部スピンチャック400の吸着保持部430により保持された状態で回転する基板Wに対して、上面洗浄ブラシ534および上面洗浄ノズル544を用いた基板Wの洗浄とベベルブラシ514を用いた基板Wの外周端部の洗浄とが並行して行われる。それにより、基板Wの上面および外周端部の洗浄に要する時間が短縮される。したがって、基板洗浄装置1での基板洗浄処理のスループットが向上される。
【0085】
また、基板Wが吸着保持部430により保持される前に吸着保持部430の上面(吸着面)がスピンチャック洗浄ノズル504を用いて洗浄される。それにより、基板Wの下面の洗浄時に基板Wの下面から除去された汚染物質が吸着保持部430の上面に落下した場合でも、吸着保持部430の上面が清浄に保たれる。この場合、回転する吸着保持部430に洗浄液が吐出されるので、吸着保持部430の回転による遠心力により洗浄液が吸着保持部430の上面の全体に拡がりつつ外方へ飛散する。それにより、簡単な制御により吸着保持部430の上面の全体が清浄に保たれる。
【0086】
(5)他の実施の形態
(5-1)上記実施の形態においては、基板Wの下面が下面洗浄ブラシ524および下面洗浄ノズル525を用いて洗浄されるが、本発明はこれに限定されない。基板Wの下面が下面洗浄ブラシ524または下面洗浄ノズル525のいずれか一方を用いて洗浄されてもよい。また、基板Wの下面の洗浄のために複数の液滴を吐出するスプレーノズルが用いられてもよい。スプレーノズルは、例えば、液体と気体を衝突させることにより複数の液滴を生成する二流体ノズルである。二流体ノズルには、液体として例えば純水が供給され、気体として窒素ガス等の不活性ガスが供給される。
【0087】
(5-2)上記実施の形態においては、基板Wの上面が上面洗浄ブラシ534および上面洗浄ノズル544を用いて洗浄されるが、本発明はこれに限定されない。基板Wの上面が上面洗浄ブラシ534または上面洗浄ノズル544のいずれか一方を用いて洗浄されてもよい。また、基板Wの上面の洗浄のために複数の液滴を吐出するスプレーノズルが用いられてもよい。
【0088】
(5-3)上記実施の形態においては、基板Wの外周端部がベベルブラシ514を用いて洗浄されるが、本発明はこれに限定されない。基板Wの外周端部が洗浄液を用いて洗浄されてもよい。また、基板Wの外周端部の洗浄のために複数の液滴を吐出するスプレーノズルが用いられてもよい。
【0089】
(5-4)上記実施の形態においては、吸着保持部430の上面がスピンチャック洗浄ノズル504を用いて洗浄されるが、本発明はこれに限定されない。基板Wの下面の洗浄時に吸着保持部430の上面に基板Wの下面から汚染物質等が吸着保持部430の上面に落下する可能性が低い場合には、スピンチャック洗浄ノズル504は設けられなくてもよい。
【0090】
(5-5)上記実施の形態においては、基板Wの上面の洗浄と基板Wの外周端部の洗浄とが少なくとも部分的に重複した期間に行なわれるが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板Wの上面の洗浄が行われた後に基板Wの外周端部の洗浄が行われてもよい。あるいは、基板Wの外周端部の洗浄が行われた後に基板Wの上面の洗浄が行われてもよい。
【0091】
(5-6)上記実施の形態においては、基板Wの下面の洗浄中に吸着保持部430の洗浄が行われるが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板Wの下面の洗浄後に吸着保持部430の洗浄が行われてもよい。
【0092】
(5-7)上記実施の形態においては、吸着保持部430の上面の乾燥は吸着保持部430の高速回転により行われるが、本発明はこれに限定されない。乾燥用ノズルからの乾燥用流体の吐出により吸着保持部430の乾燥が行われてもよい。
【0093】
(5-8)上記実施の形態においては、乾燥用流体として上面乾燥ノズル545から気体(窒素ガス)が吐出されるが、本発明はこれに限定されない。乾燥用流体として、例えば常温の窒素ガス、高温の窒素ガスまたはIPA(イソプロピルアルコール)等の気体または揮発性液体が用いられてもよい。
【0094】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0095】
上記実施の形態においては、上部スピンチャック600が第1の基板保持部の例であり、下部スピンチャック400が第2の基板保持部の例であり、下面洗浄ブラシ524または下面洗浄ノズル525が第1の洗浄具の例であり、上面洗浄ブラシ534または上面洗浄ノズル544が第2の洗浄具の例であり、ベベルブラシ514が第3の洗浄具の例であり、スピンチャック洗浄ノズル504が第4の洗浄具または保持部洗浄用ノズルの例であり、上面乾燥ノズル545が乾燥用ノズルの例である。
【符号の説明】
【0096】
1…基板洗浄装置,10…制御部,400…下部スピンチャック,410…スピンモータ,420…回転軸430…吸着保持部,500…スピンチャック洗浄機構,501…昇降回転駆動部,502…昇降回転軸,503…アーム,504…スピンチャック洗浄ノズル,510…外周端部洗浄機構,511…昇降駆動部,512…昇降軸,513…ブラシモータ,514…ベベルブラシ,514a…上洗浄部,514b…下洗浄部,514s…端面洗浄部,520…下面洗浄機構,521…昇降回転駆動部,522…昇降回転軸,523…アーム,524…下面洗浄ブラシ,524s…洗浄面,525…下面洗浄ノズル,530…第1の上面洗浄機構,531…昇降回転駆動部,532…昇降回転軸,533…アーム,534…上面洗浄ブラシ,534s…洗浄面,540…第2の上面洗浄機構,541…昇降回転駆動部,542…昇降回転軸,543…アーム,544…上面洗浄ノズル,545…上面乾燥ノズル,600…上部スピンチャック,611…スピンモータ,611a…回転軸,612…スピンプレート,613…プレート支持部材,614…マグネットプレート,615…チャックピン,615a…軸部,615b…ピン支持部,615c…保持部,616…マグネット,710…ガード昇降機構,711…ガード,712…ガード昇降駆動部,720…基板昇降機構,721…昇降駆動部,722…ピン支持部材,723…昇降ピン,W…基板,WC…回転中心