(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】キナーゼを阻害する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20230607BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230607BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P25/16
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019521778
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(86)【国際出願番号】 US2017058263
(87)【国際公開番号】W WO2018081251
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-21
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515090639
【氏名又は名称】インヒビカーセ セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー,ミルトン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,テレンス,エー.
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/070350(WO,A2)
【文献】特表2010-502726(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102406648(CN,A)
【文献】特許第6795518(JP,B2)
【文献】The Journal of Neuroscience,2011年,Vol. 31, No. 1,pp. 157-163
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2014年,4: 4874,pp. 1-8
【文献】Journal of Parkinson's Disease,2016年,Vol. 6,pp. 503-517
【文献】PLOS ONE,2013年,Vol. 8, No. 5,e65129, pp. 1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病を処置又は予防する医薬の製造のためのATK阻害薬の使用であって、ATK阻害薬が、式(I)
【化1】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1は、場合によって重水素化されていてもよい、水素又はアルキル(該アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルから選択される)から選択され、
Cy
1は、置換又は非置換の5員ヘテロアリールである]
の構造を有する化合物又は薬学的に許容されるその塩である、前記使用。
【請求項2】
Cy
1が、
【化2】
[式中、出現ごとに独立して、
R
2及びR
3は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4)(R
4)から選択され、
R
4は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Cy
1が、
【化3】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1'は、水素又はアルキル(該アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルから選択される)から選択され、
R
2及びR
3は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4)(R
4)から選択され、
R
4は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
Cy
1が、
【化4】
から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
Cy
1が、
【化5】
から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
Cy
1が、
【化6】
から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項7】
R
1が、-CH
3、-CDH
2、-CD
2H、又は-CD
3である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記化合物
又は薬学的に許容されるその塩が、
【化7】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記化合物
又は薬学的に許容されるその塩が、メタンスルホン酸塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記化合物
又は薬学的に許容されるその塩が、コハク酸塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記化合物が、遊離塩基である、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項8に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項9に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項10に記載の使用。
【請求項16】
前記医薬が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項11に記載の使用。
【請求項17】
ATK阻害薬を含む、パーキンソン病を処置又は予防するための医薬組成物であって、ATK阻害薬が、式(I)
【化8】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1は、場合によって重水素化されていてもよい、水素又はアルキル(該アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルから選択される)から選択され、
Cy
1は、置換又は非置換の5員ヘテロアリールである]
の構造を有する化合物又は薬学的に許容されるその塩である、前記医薬組成物。
【請求項18】
Cy
1が、
【化9】
[式中、出現ごとに独立して、
R
2及びR
3は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4)(R
4)から選択され、
R
4は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
Cy
1が、
【化10】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1'は、水素又はアルキル(該アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルから選択される)から選択され、
R
2及びR
3は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4)(R
4)から選択され、
R
4は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
Cy
1が、
【化11】
から選択される、請求項17又は18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
Cy
1が、
【化12】
から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
Cy
1が、
【化13】
から選択される、請求項17又は18に記載の医薬組成物。
【請求項23】
R
1が、-CH
3、-CDH
2、-CD
2H、又は-CD
3である、請求項17~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記化合物
又は薬学的に許容されるその塩が、
【化14】
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記化合物
又は薬学的に許容されるその塩が、メタンスルホン酸塩である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記化合物
又は薬学的に許容されるその塩が、コハク酸塩である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記化合物が、遊離塩基である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記医薬組成物が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項17~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記医薬組成物が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記医薬組成物が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記医薬組成物が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記医薬組成物が、経口又は非経口投与のためのものである、請求項27に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2016年10月25日に出願された米国特許仮出願第62/412600号の利益を主張するもので、その内容を参照により全体として本明細書に完全に組み込む。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病
パーキンソン病は、米国では約100万人及び世界では700~1000万人に影響を与える進行性神経変性障害である。長生きするほどに、この一般的な衰弱性神経障害を発症している人数は増える。パーキンソン病は、自律神経系機能障害、不安、うつ、睡眠障害、並びに他のニューロン集団の変性及び機能障害に起因する認知障害と共に、黒質緻密部(SNpc)におけるドーパミン分泌ニューロンの進行性消失によって引き起こされる運動障害を特徴とする。今までのところ、PDにおける容赦のない神経変性を妨害又は予防する薬物療法はない。ドーパミン補充は、症候性運動機能障害を軽減するが、その有効性は、疾患が進行するにつれて低下し、許容できない副作用、例えば、重度の運動症状の変動及びジスキネジーを引き起こす。さらに、この対症療法的手法は、根本的な疾患機序について取り組むものではない。PDに対する現在の処置は、多くの制限がある対症療法である。
【0003】
アベルソンファミリーチロシンキナーゼ(ATK)、例えば、以降c-Ablと総称するc-Abl1、c-Abl2、c-キット(SCFとしても知られている)、PDGFRa、及びPGDFRbは、パーキンソン病を含めてある特定の神経学的疾患に関与していることが示されてきた。例えば、パーキンは、他のタンパク質を分解の標的とする際にある役割を果たすタンパク質であり、パーキンソン病に対する保護機能を有すると考えられる。c-Ablの異常活性化は、パーキン活性をリン酸化により下方制御するおそれがある。したがって、ATK阻害薬は、パーキンソン病を予防又は処置する療法として有用であり得る。同様に、c-Ablによるα-シヌクレインのリン酸化は、α-シヌクレインの凝集も助長し、脳におけるニューロンに対するα-シヌクレインの有害効果にも関連付けられる。
【0004】
公知のATK阻害薬、例えば、イマチニブは、大部分が制がん薬として開発されたものであり、したがってATK阻害薬のリスク:ベネフィット比の尺度は、ATK阻害薬が生死にかかわる徴候に適用されたとき、歪められてリスクが高くなる。一方、パーキンソン病薬は、副作用を患者が慢性的に、ともすれば数十年間にわたって発症するので、より厳密なリスク:ベネフィットの基準を満たさなければならない。さらに、血液脳関門を通過する能力は、治療薬がパーキンソン病を処置するのに重要であるが、ATK阻害薬で現在処置することができる大部分のがんを処置するのに関連していない。
【0005】
公知のATK阻害薬のイマチニブ及びニロチニブは、パーキンソン病の動物モデルにおいて有効と思われる(J. Neurosci. 31(1):157-163, doi 10.1523/JNEUROSCI.1833-10.2011; Scientific Reports 4:4874, doi 10.1038/srep04874)。しかし、ニロチニブの脳透過性は、血液脳関門を通過する薬物の量を血液中に存在する一定量と比較して考えると、わずか0.5質量%である。別の公知のATK阻害薬であるダサチニブは、同様の脳透過性を有する。またイマチニブの脳:血液比は、ちょうど5質量%である。3つの薬物にはすべて、重大な副作用があり、パーキンソン病患者におけるそれらの慢性的な使用が不適合になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J. Neurosci. 31(1):157-163, doi 10.1523/JNEUROSCI.1833-10.2011
【文献】Scientific Reports 4:4874, doi 10.1038/srep04874
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パーキンソン病の処置剤の改善が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある特定の態様において、本発明は、パーキンソン病を治療又は予防する方法であって、治療上有効量のATK阻害薬を投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、ATK阻害薬は、一般式(I)
【化1】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1は、水素又は低級アルキルから選択され、
Cy
1は、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルから選択され、
ただし、Cy
1は非置換ピリド-4-イルでない]
で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】パーキンソン病のためのマウスモデルにおいて本発明のある特定の化合物を調査する研究の実験デザインを示す図である。
【
図2】パーキンソン病のためのMPTPモデルにおいて本発明のある特定の化合物の体重に対する効果を示すグラフである。
【
図3】パーキンソン病のためのMPTPモデルにおいて本発明のある特定の化合物のポール試験結果に対する効果を示すグラフである。
【
図4】パーキンソン病のためのMPTPモデルにおいて本発明のある特定の化合物のドーパミンレベルに対する効果を示すグラフである。
【
図5】パーキンソン病のためのMPTPモデルにおいて本発明のある特定の化合物のある特定の代謝産物レベルに対する効果を示すグラフである。
【
図6】パーキンソン病のためのMPTPモデルにおいて本発明のある特定の化合物のドーパミン代謝回転率に対する効果を示すグラフである。
【
図7】(左側)腹側中脳におけるc-Ablリン酸化レベルに対する化合物809の効果;(中央)化合物809のドーパミンレベルに対する効果;及び(右側)化合物809のポール試験潜時に対する効果に関するMPTPモデルの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様において、本発明は、式(I)
【化2】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1は、水素又は低級アルキルから選択され、
Cy
1は、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルから選択され、
ただし、Cy
1は非置換ピリド-4-イルでない]
で表される化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩に関する。
【0011】
ある特定の実施形態において、Cy
1は、
【化3】
[式中、出現ごとに独立して、
R
2及びR
3は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4)(R
4)から選択され、
nは、1、2、3又は4であり、
Xは、C(R
4)
2、S、O、又はNR
4であり、
R
4は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される。
【0012】
ある特定の実施形態において、Cy
1は、
【化4】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1は、それぞれ独立して、水素又は低級アルキルから選択され、
R
2及びR
3は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4)(R
4)から選択され、
R
4は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される。
【0013】
ある特定の実施形態において、Cy1は置換ピリド-4-イルでも非置換ピリド-4-イルでもない。
【0014】
ある特定の実施形態において、Cy1は非置換ピリド-4-イルでも非置換フェニルでもない。
【0015】
ある特定の実施形態において、Cy1は置換又は非置換ピリド-4-イルでも置換又は非置換フェニルでもない。
【0016】
ある特定の実施形態において、Cy1は、5員ヘテロアリール、アリール又はヘテロシクリルである。
【0017】
ある特定の実施形態において、Cy
1は、
【化5】
から選択される。
【0018】
ある特定の実施形態において、Cy
1は、
【化6】
から選択される。
【0019】
ある特定の実施形態において、Cy
1は、
【化7】
から選択される。
ある特定の実施形態において、Cy
1は、
【化8】
から選択される。
【0020】
ある特定の実施形態において、R1は、場合によって重水素化されていてもよい、水素又は低級アルキルから選択される。ある特定の好ましい実施形態において、R1は、メチル、例えば、-CH3、-CDH2、-CD2H、又は-CD3である。
【0021】
一態様において、本発明は、式(II)の化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩に関する。これらの化合物は、米国特許出願公開第2014/0100225号(これは参照により本明細書に組み込まれる)にも記載されたものである。
【0022】
【化9】
{式中、
A及びBは独立して、非存在、H又は式(II)の部分から選択され、ただし、A及びBの少なくとも1つは式(III)、
【化10】
[式中、
R及びR
1はそれぞれ独立して、H、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルから選択され(ここで、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルのそれぞれにおいて、場合によって3個までの炭素原子は、O、NR
4、S、SO及びSO
2から独立して選択されるヘテロ原子群によって置き換えられ(すなわち、それによって、ヘテロアルキル又はヘテロシクリル置換基が形成される)、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルはそれぞれ、1~4つのC
1~C
8アルキル、アルコキシ、アリール及びヘテロアリール置換基で場合によって置換されている)、又はR及びR
1はそれらが結合している原子と一緒になって、3~7員環を形成し(ここで、3~7員環は、O、NR
4、S、SO及びSO
2から選択される2つまでのヘテロ原子群を場合によって含み、1~4つのアルコキシ、F又はCl置換基で場合によって置換されている)、
Yは、R
2、OR
2、NH
2、NHR
2、及びNR
2R
3から選択され、
R
2は、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルから選択され(ここで、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルのそれぞれにおいて、場合によって3個までの炭素原子は、O、NR
4、S、SO及びSO
2から独立して選択されるヘテロ原子群によって置き換えられ(すなわち、それによって、ヘテロアルキル又はヘテロシクリル置換基が形成される)、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルはそれぞれ、1~4つのC
1~C
8アルキル、アルコキシ、アリール又はヘテロアリール置換基で場合によって置換されている)、
R
3は、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルから選択され(ここで、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルのそれぞれにおいて、場合によって3個までの炭素原子は、O、NR
4、S、SO及びSO
2から独立して選択されるヘテロ原子群によって置き換えられ(すなわち、それによって、ヘテロアルキル又はヘテロシクリル置換基が形成される)、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
7シクロアルキルはそれぞれ、1~4つのC
1~C
8アルキル、アルコキシ、アリール又はヘテロアリールで場合によって置換されている)、あるいは、
R
2及びR
3はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、3~7員環を形成してもよく(ここで、3~7員環は、O、NR
4、S、SO及びSO
2から選択される3つまでのヘテロ原子群を場合によって含み、アルコキシ、F又はClで場合によって置換されている)、
R
4は出現ごとに独立して、H又はC
1~C
8アルキルから選択される]
の部分であり、
X及びX
1はそれぞれ独立して、アニオン又は非存在であり、ただし、Xは、Aが非存在であるときのみ非存在であり、X
1は、Bが非存在であるときのみ非存在である}
【0023】
一部の実施形態において、R及びR1はそれぞれ独立して、H及びC1~C8アルキルから選択され、例えば、H又はメチルである。好ましくは、R及びR1は両方ともHである。
【0024】
一部の実施形態において、R2及びR3は、C1~C8アルキル及びアラルキルから独立して選択される。一部のそのような実施形態において、R2及びR3は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、3-メチルブタ-2-イル、1-フェニルエチル、ベンジル又はシクロブチルから独立して選択される。
【0025】
一部の実施形態において、R4は出現ごとに独立して、H及びC1~C8アルキルから選択される。
【0026】
一部の実施形態において、X及びX1はそれぞれ独立して、ハライド又はスルホナート、例えば、メシラート及びヨージドである。
【0027】
アニオンは分子に共有結合していないので、X及びX1は、A又はBを有する原子の近位に必ずしも位置するとは限らないと理解されるべきであり、両方が存在するとき、いずれか所与の分子内で互いに交換できるとみなされるべきである。
【0028】
一部の実施形態において、AはHであり、Bは式(III)の部分である。
【0029】
一部の実施形態において、Aは式(III)の部分であり、BはHである。
【0030】
他の実施形態において、Aは式(III)の部分であり、Bは非存在である。
【0031】
さらに他の実施形態において、Aは非存在であり、Bは式(III)の部分である。
【0032】
ある特定の実施形態において、AもBも、
【化11】
ではない。
【0033】
式IIIの化合物は、3つのクラス、すなわちI型(式中、Y=OR2である)、II型(式中、Y=R2である)、及びIII型(式中、Y=NR2R3であり、R2及びR3は以上に定義した通りである)に分類し得る。一部の実施形態において、式IIIは、以下に列挙する試薬から塩素を移動させた後に残る部分から選択される。
I型試薬
i. クロロメチルイソプロピルカーボナート
ii. ベンジルクロロメチルカーボナート
iii. クロロメチルモルホリノメチルカーボナート
iv. クロロメチルイソブチルカーボナート
v. クロロメチルメチルカーボナート
vi. (S)-sec-ブチルクロロメチルカーボナート
vii. (R)-sec-ブチルクロロメチルカーボナート
viii. クロロメチル((3S,5R)-3,5-ジメチルモルホリノ)メチルカーボナート
ix. クロロメチル2-メチルシクロプロピルカーボナート
x. クロロメチル2-メトキシエチルカーボナート
xi. クロロメチルプロピルカーボナート
xii. クロロメチルシクロブチルカーボナート
xiii. クロロメチルシクロプロピルカーボナート
xiv. クロロメチル2,2-ジメチルシクロブチルカーボナート
xv. クロロメチルシクロペンチルカーボナート
xvi. クロロメチルオキセタン-3-イルカーボナート
xvii. (S)-クロロメチルテトラヒドロフラン-3-イルカーボナート
xviii. クロロメチルシクロヘキシルメチルカーボナート
xix. クロロメチル3-メトキシシクロヘキシルカーボナート
xx. (R)-クロロメチルテトラヒドロフラン-3-イルカーボナート
xxi. クロロメチルエトキシメチルカーボナート
xxii. クロロメチルオキセパン-4-イルカーボナート
xxiii. (1R,2S,4S)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イルクロロメチルカーボナート
xxiv. クロロメチル2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イルカーボナート
xxv. ベンジルクロロメチルカーボナート
xxvi. (S)-クロロメチル1-フェニルエチルカーボナート
xxvii. クロロメチルシクロヘキシルカーボナート
xxviii. クロロメチルイソブチルカーボナート
xxix. クロロメチル4-メチルシクロヘキシルカーボナート
xxx. クロロメチル2-(メチルチオ)エチルカーボナート
xxxi. クロロメチル3-メチルシクロヘキシルカーボナート
xxxii. クロロメチルペンタン-2-イルカーボナート
xxxiii. クロロメチルネオペンチルカーボナート
xxxiv. メチル1-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)シクロプロパンカルボキシラート
xxxv. クロロメチルシクロプロピルメチルカーボナート
xxxvi. クロロメチル2,2-ジエトキシエチルカーボナート
xxxvii. クロロメチルシクロペンチルメチルカーボナート
xxxviii. メチル2-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)プロパノアート
xxxix. (S)-クロロメチル2,2,4-トリメチルシクロペンタ-3-エニルカーボナート
xl. クロロメチル1,3-ジオキソラン-2-イルカーボナート
xli. クロロメチル(2,6-ジメチルシクロヘキシル)メチルカーボナート
xlii. クロロメチル2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)エチルカーボナート
xliii. クロロメチル(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチルカーボナート
xliv. クロロメチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルカーボナート
xlv. クロロメチル1-メチルシクロペンチルカーボナート
xlvi. クロロメチル1-シクロペンチルエチルカーボナート
xlvii. クロロメチル3-メチルシクロペンチルカーボナート
xlviii. クロロメチル3,3-ジメチルシクロヘキシルカーボナート
xlix. クロロメチル2,5-ジメチルシクロヘキシルカーボナート
l. クロロメチル1-(4-メチルシクロヘキシル)エチルカーボナート
li. クロロメチル(3-メチルオキセタン-3-イル)メチルカーボナート
lii. クロロメチル(3-メチルオキセタン-3-イル)メチルカーボナート
liii. クロロメチル2-イソプロポキシエチルカーボナート
liv. (クロロメチル炭酸)5-((3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾル-4-イル)ペンタン酸無水物
lv. 4-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)-2-ヒドロキシ-4-オキソブタン酸
lvi. クロロメチル4-ホルミル-2-メトキシフェニルカーボナート
lvii. クロロメチル3-オキソブタン-2-イルカーボナート
lviii. メチル4-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)ベンゾアート
lix. (R)-2-アミノ-3-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)プロパン酸
lx. 3-tert-ブチル-4-メトキシフェニルクロロメチルカーボナート
lxi. (R)-2-アミノ-3-(4-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸
lxii. (R)-2-アミノ-4-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)-4-オキソブタン酸
lxiii. (E)-クロロメチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエニルカーボナート
lxiv. メチル4-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)ベンゾアート
lxv. クロロメチル2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-イルカーボナート
lxvi. クロロメチル3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-イルカーボナート
lxvii. 4-アリル-2-メトキシフェニルクロロメチルカーボナート
lxviii. クロロメチル(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシルカーボナート
lxix. プロピル4-((クロロメトキシ)カルボニルオキシ)ベンゾアート
lxx. (E)-クロロメチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエニルカーボナート
【0034】
II型試薬
i. クロロメチルシクロヘキサンカルボキシラート
ii. クロロメチル2-シクロヘキシルアセタート
iii. クロロメチル4-メチルシクロヘキサンカルボキシラート
iv. クロロメチル1-メチルシクロヘキサンカルボキシラート
v. クロロメチルシクロペンタンカルボキシラート
vi. クロロメチル1-(トリフルオロメチル)シクロペンタンカルボキシラート
vii. クロロメチルシクロブタンカルボキシラート
viii. クロロメチル2-エチルヘキサノアート
ix. クロロメチル3-シクロペンチルプロパノアート
x. クロロメチルシクロプロパンカルボキシラート
xi. クロロメチルペンタノアート
xii. クロロメチル2-メチルペンタノアート
xiii. クロロメチル3,5,5-トリメチルヘキサノアート
xiv. クロロメチル2,2-ジメチルブタノアート
xv. クロロメチル2-メチルブタノアート
xvi. クロロメチルヘキサノアート
xvii. クロロメチル2-エチルブタノアート
xviii. クロロメチルブチラート
xix. クロロメチル3-フェニルプロパノアート
xx. クロロメチル2-フェニルプロパノアート
xxi. (R)-クロロメチル2-フェニルプロパノアート
xxii. (S)-クロロメチル2-フェニルプロパノアート
xxiii. (1r,4r)-クロロメチル4-メチルシクロヘキサンカルボキシラート
xxiv. クロロメチル4-メトキシシクロヘキサンカルボキシラート
xxv. クロロメチル4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボキシラート
xxvi. クロロメチル3-メトキシシクロヘキサンカルボキシラート
xxvii. (2R)-クロロメチル2-メチルシクロペンタンカルボキシラート
xxviii. (R)-クロロメチル2-メチルブタノアート
xxix. (S)-クロロメチル2-メチルブタノアート
xxx. (S)-クロロメチル2-メトキシ-2-フェニルアセタート
xxxi. (S)-クロロメチル2-フェニルプロパノアート
xxxii. (S)-クロロメチル2-フェニルブタノアート
xxxiii. (S)-クロロメチル3-フェニルブタノアート
xxxiv. ビス(クロロメチル)2,2-ジメチルマロナート
xxxv. ビス(クロロメチル)オキサラート
xxxvi. クロロメチル2-シクロプロピルアセタート
xxxvii. クロロメチル2-シクロブチルアセタート
xxxviii. クロロメチル2-シクロペンチルアセタート
xxxix. クロロメチル2-(テトラヒドロフラン-3-イル)アセタート
xl. クロロメチル2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アセタート
xli. クロロメチル2-メチルシクロプロパンカルボキシラート
xlii. クロロメチル2-(1-メチルシクロブチル)アセタート
xliii. クロロメチル2-(1-メチルシクロプロピル)アセタート
xliv. クロロメチルプロピオナート
xlv. クロロメチルアセタート
xlvi. クロロメチルイソブチラート
xlvii. クロロメチル2-イソプロピル-3-メチルブタノアート
xlviii. クロロメチル3,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシラート
xlix. クロロメチル2-プロピルペンタノアート
l. クロロメチル4-メトキシベンゾアート
li. クロロメチル4-メチルベンゾアート
lii. クロロメチル3-メチルベンゾアート
liii. クロロメチル2,2,2-トリフルオロアセタート
liv. クロロメチル5,5-ジメチル-3-オキソヘキサノアート
lv. ビス(クロロメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキシラート
lvi. クロロメチル1,2-ジヒドロシクロブタベンゼン-1-カルボキシラート
lvii. クロロメチル2-シクロペンテニルアセタート
lviii. クロロメチル2-フェニルブタノアート
lix. クロロメチル2,2-ジフルオロアセタート
lx. クロロメチル4-フルオロベンゾアート
lxi. クロロメチル3-シクロヘキシルプロパノアート
lxii. クロロメチル2-シクロヘキシルアセタート
lxiii. クロロメチル3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)プロパノアート
lxiv. クロロメチル2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)アセタート
lxv. クロロメチル3-(テトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)プロパノアート
lxvi. クロロメチルニコチナート
【0035】
III型試薬
i. クロロメチルイソプロピルカルバマート
ii. クロロメチルジイソプロピルカルバマート
iii. クロロメチルジメチルカルバマート
iv. クロロメチルイソブチルカルバマート
v. クロロメチルメチルカルバマート
vi. クロロメチルエチル(イソプロピル)カルバマート
vii. クロロメチルイソブチル(メチル)カルバマート
viii. (S)-クロロメチルsec-ブチルカルバマート
ix. クロロメチルメチルカルバマート
x. クロロメチルイソプロピル(メチル)カルバマート
xi. クロロメチルプロピルカルバマート
xii. クロロメチル2-メトキシエチルカルバマート
xiii. クロロメチルメチル(プロピル)カルバマート
xiv. クロロメチルジイソブチルカルバマート
xv. クロロメチルtert-ブチル(イソプロピル)カルバマート
xvi. クロロメチルジ-sec-ブチルカルバマート
xvii. クロロメチルアジリジン-1-カルボキシラート
xviii. クロロメチル2-メチルシクロプロピルカルバマート
xix. クロロメチルシクロプロピルカルバマート
xx. クロロメチルシクロプロピルメチル(プロピル)カルバマート
xxi. クロロメチルシクロプロピル(メチル)カルバマート
xxii. クロロメチルアゼチジン-1-カルボキシラート
xxiii. クロロメチルシクロブチルカルバマート
xxiv. クロロメチル2,2-ジメチルシクロブチルカルバマート
xxv. クロロメチル3-メトキシアゼチジン-1-カルボキシラート
xxvi. クロロメチルシクロブチル(メチル)カルバマート
xxvii. クロロメチルオキセタン-3-イルカルバマート
xxviii. (S)-クロロメチル2-メチルピロリジン-1-カルボキシラート
xxix. クロロメチルシクロペンチルカルバマート
xxx. クロロメチルシクロペンチル(メチル)カルバマート
xxxi. クロロメチルテトラヒドロフラン-3-イルカルバマート
xxxii. クロロメチルピペリジン-1-カルボキシラート
xxxiii. (2R,6S)-クロロメチル2,6-ジメチルピペリジン-1-カルボキシラート
xxxiv. (R)-クロロメチル2-メチルピペリジン-1-カルボキシラート
xxxv. クロロメチルピペリジン-1-カルボキシラート
xxxvi. クロロメチル3-メトキシシクロヘキシルカルバマート
xxxvii. クロロメチルシクロヘキシルメチルカルバマート
xxxviii. クロロメチルシクロヘキシルメチル(メチル)カルバマート
xxxix. クロロメチルモルホリン-4-カルボキシラート
xl. (3S,5R)-クロロメチル3,5-ジメチルモルホリン-4-カルボキシラート
xli. (3R,5S)-クロロメチル3,5-ジメチルモルホリン-4-カルボキシラート
xlii. (2S,6R)-クロロメチル2,6-ジメチルモルホリン-4-カルボキシラート
xliii. クロロメチル4-メチルピペラジン-1-カルボキシラート
xliv. クロロメチルアゼパン-1-カルボキシラート
xlv. クロロメチルシクロヘプチルカルバマート
xlvi. クロロメチルオキセパン-4-イルカルバマート
xlvii. クロロメチル(1R,2S,4S)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イルカルバマート
xlviii. クロロメチル2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イルカルバマート
xlix. クロロメチルベンジルカルバマート
l. (S)-クロロメチル1-フェニルエチルカルバマート
li. エチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-3-メチルブタノアート
lii. エチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-3-フェニルプロパノアート
liii. (S)-ジエチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)ペンタンジオアート
liv. エチル((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)プロパノアート
lv. エチル2-アミノ-6-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)ヘキサノアート
lvi. エチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-4-メチルペンタノアート
lvii. エチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-3-メチルペンタノアート
lviii. (S)-ジメチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)スクシナート
lix. (S)-エチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-5-グアニジノペンタノアート
lx. (S)-エチル4-アミノ-2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-4-オキソブタノアート
lxi. (S)-エチル2-アミノ-5-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)ペンタノアート
lxii. (S)-エチル5-アミノ-2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-5-オキソペンタノアート
lxiii. エチル2-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-4-(メチルチオ)ブタノアート
lxiv. 1-クロロメチル3-メチル2-メチル-5,6-ジヒドロピリジン-1,3(2H)-ジカルボキシラート
lxv. (S)-クロロメチル(1-メチルピロリジン-2-イル)メチルカーボナート
lxvi. (R)-クロロメチル(1-メチルピロリジン-2-イル)メチルカーボナート
lxvii. (S)-(1-ベンジルピロリジン-2-イル)メチルクロロメチルカーボナート
lxviii. クロロメチル1H-ピロール-1-カルボキシラート
lxix. クロロメチル2-ニコチノイルヒドラジンカルボキシラート
lxx. (6S)-3-クロロ-7-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタ-2-エン-2-カルボン酸
lxxi. (6S)-7-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-8-オキソ-3-ビニル-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタ-2-エン-2-カルボン酸
lxxii. (6S)-7-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-3-(メトキシメチル)-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタ-2-エン-2-カルボン酸
lxxiii. (6R,7R)-7-((クロロメトキシ)カルボニルアミノ)-3-メトキシ-8-オキソ-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタ-2-エン-2-カルボン酸
lxxiv. クロロメチル3-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキシラート
lxxv. クロロメチル3-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキシラート
lxxvi. クロロメチル3-フェニル-1H-ピラゾール-1-カルボキシラート
lxxvii. クロロメチル3-(4ブロモフェニル)-1H-ピラゾール-1-カルボキシラート
lxxviii. クロロメチル2-シアノ-1H-ピロール-1-カルボキシラート
lxxix. クロロメチル4-オキソピペリジン-1-カルボキシラート
lxxx. 1-クロロメチル3-エチル2-オキソピペリジン-1,3-ジカルボキシラート
lxxxi. クロロメチル2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソピペリジン-1-カルボキシラート
lxxxii. クロロメチル2-オキソピペリジン-1-カルボキシラート
【0036】
一部の実施形態において、式(II)の化合物は、式(IV)又は式(V)
【化12】
[式中、A及びBは独立して、
【0037】
【化13】
から選択され(ここで、R
5は、A又はBに連結しているイマチニブ部分の窒素原子を表す)、
Xは、ヨージド、クロリド、ブロミド、メシラート、トシラート、又は薬学的に許容される塩を提供するためのいずれか他の薬学的に許容されるアニオンであり得る]
の化合物から選択される。
【0038】
式(II)の化合物は、(例えば、存在するすべての立体異性体の全量に対して少なくとも95%まで純度を高めた)単一の立体異性体、ラセミ体、又はエナンチオマー若しくはジアステレオマーの任意の比の混合物として存在することができる。
【0039】
一部の実施形態において、式(II)の化合物は、以下に列挙する化合物から選択される。
【0040】
【化14】
1-メチル-4-(4-((4-メチル-3-((4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)カルバモイル)ベンジル)-1-((ピバロイルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド、
【0041】
【化15】
1-メチル-4-(4-((4-メチル-3-((4-(1-((ピバロイルオキシ)メチル)ピリジン-1-イウム-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)カルバモイル)ベンジル)-1-((ピバロイルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムジヨージド
【0042】
【化16】
1-メチル-4-(4-((4-メチル-3-((4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)カルバモイル)ベンジル)-1-(((モルホリン-4-カルボニル)オキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0043】
【化17】
1-(((イソプロポキシカルボニル)オキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-((4-メチル-3-((4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)カルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0044】
【化18】
1-(((イソプロポキシカルボニル)オキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-((4-メチル-3-((4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)カルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムメタンスルホネート
【0045】
【化19】
1-(((イソプロポキシカルボニル)オキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-((4-メチル-3-((4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)カルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムp-トリルスルホネート
【0046】
【化20】
1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-((3-メチルブタノイルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0047】
【化21】
1-((イソプロピルカルバモイルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0048】
【化22】
(R)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-(((1-フェニルエトキシ)カルボニルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0049】
【化23】
(R)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-((1-フェニルエチルカルバモイルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0050】
【化24】
(R)-1-((sec-ブトキシカルボニルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0051】
【化25】
1-(イソブチリルオキシメチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0052】
【化26】
1-((ベンジルオキシカルボニルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0053】
【化27】
(R)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-(((1-フェニルエトキシ)カルボニルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0054】
【化28】
1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-(((3-メチルブタン-2-イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0055】
【化29】
1-((ベンジル(メチル)カルバモイルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0056】
【化30】
(S)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-((1-フェニルエチルカルバモイルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0057】
【化31】
1-((エトキシカルボニルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0058】
【化32】
1-((シクロブトキシカルボニルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(3-メチル-4-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0059】
【化33】
1-メチル-4-(4-((4-メチル-3-((4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)カルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムメタンスルホネート
【0060】
【化34】
1-((2,2-ジメチルブタノイルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0061】
【化35】
1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-((tert-ペンチルオキシカルボニルオキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0062】
【化36】
(R)-1-((sec-ブチルカルバモイルオキシ)メチル)-1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0063】
【化37】
1-メチル-4-(4-(4-メチル-3-(4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)フェニルカルバモイル)ベンジル)-1-((2-フェニルアセトキシ)メチル)ピペラジン-1-イウムヨージド
【0064】
【化38】
4-(4-((3-((4-(1-(((イソプロポキシカルボニル)オキシ)メチル)ピリジン-1-イウム-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-4-メチルフェニル)カルバモイル)ベンジル)-1-メチルピペラジン-1-イウムモノヨージドモノメシレート
【0065】
【化39】
3-(2-((2-メチル-5-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド)フェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1-(((モルホリン-4-カルボニル)オキシ)メチル)ピリジン-1-イウムモノヨージドモノメシレート
【0066】
【0067】
一態様において、本発明は、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0068】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0069】
一態様において、本発明は、CNS/呼吸興奮薬、鎮痛薬、麻薬作用薬、麻薬拮抗薬、非ステロイド系抗炎症剤/鎮痛剤、行動修正剤、精神安定薬/鎮静薬、麻酔剤、吸入薬、麻薬、拮抗薬(reversal agent)、抗痙攣薬、骨格筋弛緩薬、平滑筋弛緩薬、心血管作動薬、強心剤、抗不整脈薬、抗コリン薬、血管拡張剤、ショックの処置において使用される作用剤、α-アドレナリン遮断剤、β-アドレナリン遮断剤、呼吸器官用薬、気管支拡張薬、交感神経興奮薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳剤、尿失禁/尿閉に対する作用物質、尿アルカリ性化薬、尿酸性化薬、コリン作動性刺激薬、尿路結石症に対する作用物質、胃腸剤、制吐剤、制酸薬、ヒスタミンH2拮抗薬、胃粘膜保護薬、プロトンポンプ阻害薬、食欲増進薬、GI鎮痙薬-抗コリン薬、GI刺激薬、緩下薬、生理食塩水、滑沢剤、界面活性剤、止痢薬、ホルモン/内分泌/生殖器官用作用剤、性ホルモン、アナボリックステロイド、下垂体後葉ホルモン、副腎皮質ステロイド、グルココルチコイド、抗糖尿病剤、甲状腺薬、甲状腺ホルモン、内分泌/生殖器官用薬、プロスタグランジン、抗感染薬、抗寄生虫薬、抗コクシジウム剤、抗生物質、抗結核薬、アミノシクリトール、セファロスポリン、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、スルホンアミド、抗細菌薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、血液改質剤、凝固剤、抗凝血薬、赤血球生成剤、抗悪性腫瘍薬/免疫抑制薬、アルキル化剤、解毒薬、骨/関節剤、外皮用剤(全身)、ビタミン及びミネラル/栄養素、全身性酸性化薬、全身性アルカリ性化薬、抗がん剤、並びに抗ウイルス剤などの中枢神経系作用薬から独立して選択される1種以上の化合物と共同投与するための本明細書に開示される化合物又は組成物を提供する。
【0070】
定義
用語「アルキル」とは、直鎖アルキル基及び分枝鎖アルキル基を含めて、飽和脂肪族基の基を指す。好ましい実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルキルは、その主鎖中に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合C1~C30、分枝鎖の場合C3~C30)、より好ましくは20個以下の炭素原子を有する。ある特定の実施形態において、アルキル基は、低級アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル及びn-ペンチルである。
【0071】
さらに、本明細書、実施例、及び特許請求の範囲を通して使用される用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)とは、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を包含することを意図したものであり、これらのうち後者は、置換基が炭化水素主鎖の1個以上の炭素上の水素と置換しているアルキル部分を指す。ある特定の実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルキルは、その主鎖中に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合C1~C30、分枝鎖の場合C3~C30)を有する。好ましい実施形態において、該鎖は、その主鎖中に10個以下の炭素原子(C1~C10)を有する。他の実施形態において、該鎖は、その主鎖中に6個以下の炭素原子(C1~C6)を有する。
【0072】
本明細書において用語「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合を含む脂肪族基を指し、「非置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方を包含することを意図したものであり、これらのうち後者は、置換基がアルケニル基の1個以上の炭素上の水素と置換しているアルケニル部分を指す。そのような置換基は、1個以上の二重結合に含まれている又は含まれていない1個以上の炭素上に存在することができる。さらに、そのような置換基としては、安定性により用いることが禁止されるような場合を除いて、後述のように、アルキル基の場合に考えられたものすべてが挙げられる。例えば、1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が考えられる。好ましい実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルケニルは、その主鎖中に1~12個の炭素、好ましくはその主鎖中に1~8個の炭素、より好ましくはその主鎖中に1~6個の炭素を有する。アルケニル基の例としては、アリル、プロペニル、ブテニル、2-メチル-2-ブテニルなどが挙げられる。
【0073】
本明細書において用語「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合を含む脂肪族基を指し、「非置換アルキニル」及び「置換アルキニル」の両方を包含することを意図したものであり、これらのうち後者は、置換基がアルキニル基の1個以上の炭素上の水素と置換しているアルキニル部分を指す。そのような置換基は、1個以上の三重結合に含まれている又は含まれていない1個以上の炭素上に存在することができる。さらに、そのような置換基としては、安定性により用いることが禁止されるような場合を除いて、前述のように、アルキル基の場合に考えられたものすべてが挙げられる。例えば、1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が考えられる。好ましい実施形態において、アルキニルは、その主鎖中に1~12個の炭素、好ましくはその主鎖中に1~8個の炭素、より好ましくはその主鎖中に1~6個の炭素を有する。アルキニル基の例としては、プロピニル、ブチニル、3-メチルペンタ-1-イニルなどが挙げられる。
【0074】
本明細書において用語「アラルキル」とは、1個以上のアリール基で置換されているアルキル基を指す。
【0075】
本明細書において用語「アリール」は、各環原子が炭素である置換又は非置換単環芳香族基を包含する。好ましくは、環は5~7員環、より好ましくは6員環である。アリール基には、フェニル、フェノール、アニリン、ナフチル、ビフェニル、アントラセニルなどが含まれる。
【0076】
本明細書において用語「シクロアルキル」とは飽和脂肪族環の基を指す。好ましい実施形態において、シクロアルキルは、それらの環構造中に3~10個の炭素原子、より好ましくは環構造中に5~7個の炭素原子を有する。好適なシクロアルキルとしては、シクロヘプチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル及びシクロプロピルが挙げられる。
【0077】
用語「シクロアルキル」及び「シクロアルケニル」とは、3~12個の炭素原子を有する環式炭化水素基を指す。
【0078】
本明細書において用語「ハロゲン」、「ハライド」及び「ハロ」とはハロゲンを意味し、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを包含する。
【0079】
用語「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環」、「ヘテロシクロ」及び「ヘテロ環の」とは、置換又は非置換の非芳香族環構造、好ましくは3~10員環、より好ましくは3~7員環を指し、それらの環構造は、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を含む。ヘテロ環基は、環又は環系のいずれのヘテロ原子又は炭素原子に結合していてもよい。単環式ヘテロ環基の例としては、ピロリジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン及びテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、トリアゾリル、トリアジニルなどが挙げられる。二環式ヘテロ環基の例としては、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(フロ[2,3-c]ピリジニル、フロ[3,2-b]ピリジニル]又はフロ[2,3-b]ピリジニルなど)、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-キナゾリニルなど)、テトラヒドロキノリニルなどが挙げられる。三環式ヘテロ環基の例としては、カルバゾリル、ベンゾインドリル、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどが挙げられる。
【0080】
本明細書において用語「ヘテロアルキル」とは、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、S、又はNR4(ただし、R4がH又は低級アルキルである場合など))を含む飽和又は不飽和炭素原子鎖を指す。
【0081】
用語「ヘテロアリール」は、置換又は非置換芳香族単環構造、好ましくは5~7員環、より好ましくは5~6員環を包含し、それらの環構造は、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、O、N、又はS)、好ましくは1~4個又は1~3個のヘテロ原子、より好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を含む。2個以上のヘテロ原子がヘテロアリール環中に存在しているとき、それらは同じでも異なってもよい。用語「ヘテロアリール」は、環の少なくとも1個がヘテロ芳香族であり、例えば他の環式環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってもよい2個以上の環式環を有し、2個以上の炭素が隣接する2個の環に共有されている多環式環系も包含する。好ましい多環式環系は2個の環式環を有し、それらの環は両方とも芳香族である。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、ピリダジニル、トリアゾリル、トリアジニルなどが挙げられる。
【0082】
用語「アルコキシ」とは、本明細書に定義されるアルキル基が酸素原子に直接結合しているという意味を意図したものである。一部の実施形態は1~5個の炭素、一部の実施形態は1~4個の炭素、一部の実施形態は1~3個の炭素、一部の実施形態は1個又は2個の炭素である。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、5-イソブトキシ、sec-ブトキシなどが挙げられる。
【0083】
本明細書において用語「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄である。
【0084】
用語「置換されている」とは、置換基が主鎖の1個以上の炭素上の水素に置換している部分を指す。「置換」又は「で置換されている」は、そのような置換は、置換された原子及び置換基の許容原子価と合致しており、かつ置換は、例えば、転位、環化、脱離などによる変換が自発的に起こらない安定な化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解されよう。本明細書において用語「置換されている」は、有機化合物の許容される置換基をすべて包含すると考えられる。広範な態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及びヘテロ環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して1個以上であり、同じでも異なってもよい。本発明では、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満足する本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許容される置換基を有することができる。置換基としては、本明細書に記載されるいずれかの置換基、例えばハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセタート、又はチオホルマートなど)、アルコキシル、アルキルチオ、アシルオキシ、ホスホリル、ホスファート、ホスホナート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルファート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
【0085】
「非置換」と明記されていない限り、本明細書で化学的部分への言及は、置換された変形を包含すると解釈される。例えば、「アリール」基又は部分への言及は、置換された変形及び置換されていない変形の両方を無条件に包含する。同様に、元素という言葉は、その元素のいずれか適当な同位体を含むと理解される。したがって、例えば、水素置換基は、プロチウム、ジュウテリウム、若しくはトリチウムであり得、又は炭素原子は、12C、13C、又は14Cであり得る。本明細書に開示される化合物のある特定の実施形態において、ある特定の原子を、例えば、放射性同位体標識又は代謝上有益な同位体効果のため、(例えば、水素置換基におけるジュウテリウムの同位体濃縮によって)同位体濃縮してもよい。そのような実施形態において、化合物は、組成物における化合物の分子の少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、又はさらに少なくとも90%超が、示された位置に所望の同位体を有するように、所望の同位体について同位体濃縮されてもよい。
【0086】
用語「不飽和環」は、部分不飽和芳香族環を包含する。
【0087】
本明細書において用語「腫瘍性疾患」とは、がんなどの過剰増殖性疾患を指す。
【0088】
本明細書において用語「共同投与」とは、2種以上の作用剤を目的の対象に単一の治療レジメンの一部分として投与することを意味する。投与(複数可)は同時投与でも逐次投与でもよい。すなわち、投与された作用剤が処置中の対象において共存する限り、又は少なくとも1種の作用剤が、他の作用剤の標的組織がまだ前記他の作用剤の影響を受けている間に同じ前記他の作用剤の標的組織に作用する機会がある限り、1種の作用剤を投与し、その後、しばらくたって第2の作用剤(及び/又は第3の作用剤など)を投与する。ある特定の実施形態において、投与する作用剤を単一の医薬組成物中に含めて、一緒に投与してもよい。ある特定の実施形態において、作用剤を、別個の経路を介することを含めて、同時投与する。ある特定の実施形態において、1種以上の作用剤は連続投与し、他の作用剤は所定の間隔で投与するだけである(大投与量で単回、又はより少ない投与量で1週間に2回など)。
【0089】
本発明はその範囲内に塩及び異性体を含む。本発明の化合物は、場合によっては塩を形成することができ、それらの塩も本発明の範囲内である。本明細書において用語「塩(複数可)」とは、無機及び/又は有機の酸及び塩基を用いて形成された酸性及び/又は塩基性の塩を表す。両性イオン(分子内塩又は内塩)を、本明細書において用語「塩(複数可)」の範囲内に含める(また、例えばR置換基がカルボキシル基などの酸部分を含む場合に、形成することができる)。アルキルアンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩も本明細書に含まれる。薬学的に許容される(すなわち、無毒性で生理学的に許容される)塩が好ましいが、例えば、調製時において使用することができる単離又は精製ステップにおいては他の塩が有用である。化合物の塩は、例えば、化合物と当量などある量の酸又は塩基を塩がその中で沈澱する媒体などの媒体又は水性媒体中で反応させ、その後、凍結乾燥することによって形成することができる。
【0090】
酸付加塩の例としては、酢酸塩(酢酸又はトリハロ酢酸、例えばトリフルオロ酢酸を用いて形成されたものなど)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸を用いて形成されたものなど)、スルホン酸塩(本明細書に記載されるものなど)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0091】
(例えば、置換基がカルボキシル基などの酸性の部分を含む場合に形成された)塩基性塩の例としては、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン、N-メチル-D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミド、t-ブチルアミンなどの有機塩基(例えば、有機アミン)との塩、並びにアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩などが挙げられる。塩基性窒素含有基を、低級アルキルハロゲン化物(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、アラルキルハロゲン化物(例えば、ベンジル及びフェネチルの臭化物)などの物質で四級化することができる。
【0092】
本発明の化合物の溶媒和物も本明細書で考えられている。式Iの化合物の溶媒和物は、好ましくは水和物又は他の薬学的に許容される溶媒和物である。
【0093】
エナンチオマー形及びジアステレオマー形を含めて、化合物のR置換基上の不斉炭素によって存在することができる立体異性体など、本化合物のすべての立体異性体は、本発明の範囲内であると考えられる。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば他の異性体を実質的に含まないことができ、あるいは例えばラセミ体として、又は他のすべての若しくは他の選択された立体異性体と混合することができる。本発明のキラル中心はS又はR立体配置をとることができる。
【0094】
本明細書において用語「処置している」又は「処置」は、ある状態の症状、臨床徴候、及び基礎となる病理を、対象の状態が改善又は安定化するように逆転、低減、又は抑制することを包含する。本明細書において使用されているように、また当技術分野においてよく理解されているように、「処置」は、臨床結果を含めて、有益な又は所望の結果を得る手法である。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能であろうと検出不可能であろうと、1つ以上の症状又は状態の軽減又は改善、疾患の程度の低下、病状の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患の蔓延予防、病状悪化の遅延又は緩徐化、病状の改善又は寛解、及び寛解(部分寛解かそれとも完全寛解)を挙げることができるが、これらに限定されない。「処置」とは、処置を受けていない場合に予想される生存期間に比べて生存期間を延ばすことも意味することがある。
【0095】
本明細書において、障害又は状態を「予防する」治療薬とは、統計学的サンプルにおいて、無処置対照サンプルに比べて処置サンプルにおける障害又は状態の発生を低減し、あるいは無処置対照サンプルに比べて障害若しくは状態の1つ以上の症状の発症を遅延させ、又はそれらの重症度を低減する化合物を指す。
【0096】
本出願はその範囲内に好適な対イオンの選択の効果も想定する。本発明の化合物の対イオンは、前記pH範囲内におけるイオン化できる薬物の解離定数を選択することによって選ぶことができる。任意の化合物のイオン化及び非イオン化薬物濃度を(ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式などの十分に確立された式を用いて)推定することによって、薬物の溶解度、ひいては吸収を変化させることができる。
【0097】
生成された化合物は、(例えば、存在するすべての立体異性体の全量に対して少なくとも95%まで純度を高めた)単一の立体異性体、ラセミ体、又はエナンチオマー若しくはジアステレオマーの任意の比の混合物として存在することができる。
【0098】
医薬組成物
本発明は、活性成分である式(I)若しくは(II)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を薬学的に許容される添加剤/賦形剤/アジュバント/ビヒクルと共に含む医薬組成物をさらに提供する。
【0099】
本発明の化合物は、例えば薬学的に許容される担体と組み合わせた医薬組成物で使用し、患者に投与することができる。そのような組成物は、希釈剤、フィラー、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、及び当技術分野において周知である他の材料も含有することができる。用語「薬学的に許容される」とは、活性成分(複数可)の生物活性の有効性に干渉しない無毒性材料を意味する。担体の特性は投与経路によって決まる。そのような追加の因子及び/又は作用剤を医薬組成物に含めて、本発明の化合物と相乗効果を生じ、又は本発明の化合物に起因する副作用を最小限に抑えることができる。
【0100】
本発明の医薬組成物はリポソーム又はミセルの形をとることができ、該ミセルにおいて、本発明の化合物が、他の薬学的に許容される担体に加えて、水溶液中にミセル、不溶性単層、液晶、又はラメラ層として凝集した形で存在する脂質などの両親媒性物質と組み合わされている。リポソーム製剤に適した脂質としては、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなリポソーム製剤の調製は、例えば米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、及び同第4,737,323号(これらのすべては参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、当業者のレベルの範囲内である。
【0101】
組成物は、経口、経鼻、頬側、舌下、静脈内、経粘膜、非経口、吸入、噴霧、経皮、皮下、くも膜下腔内、局所又は直腸投与を含めて様々な方式で投与することができ、当技術分野において公知である方法に従って製剤化することができる。
【0102】
哺乳類に有効な剤形は、活性化合物約0.1~100mg/体重1kgとすることができ、単回投与として又は1日1~4回など個別の用量の形で投与することができる。
【0103】
哺乳類は成人とすることができる。
【0104】
本発明の化合物は、1種以上の追加の作用剤と場合によって投与することができる。追加の作用剤の例としては、CNS/呼吸興奮薬、鎮痛薬、麻薬作用薬、麻薬拮抗薬、非ステロイド系抗炎症剤/鎮痛剤、行動修正剤、精神安定薬/鎮静薬、麻酔剤、吸入薬、麻薬、拮抗薬、抗痙攣薬、骨格筋弛緩薬、平滑筋弛緩薬、心血管作動薬、強心剤、抗不整脈薬、抗コリン薬、血管拡張剤、ショックの処置において使用される作用剤、α-アドレナリン遮断剤、β-アドレナリン遮断剤、呼吸器官用薬、気管支拡張薬、交感神経興奮薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳剤、尿失禁/尿閉に対する作用物質、尿アルカリ性化薬、尿酸性化薬、コリン作動性刺激薬、尿路結石症に対する作用物質、胃腸(GI)剤、制吐剤、制酸薬、ヒスタミンH2拮抗薬、胃粘膜保護薬、プロトンポンプ阻害薬、食欲増進薬、GI鎮痙薬-抗コリン薬、GI刺激薬、緩下薬、生理食塩水、膨張性下剤、滑沢剤、界面活性剤、止痢薬、ホルモン/内分泌/生殖器官用作用剤、性ホルモン、アナボリックステロイド、下垂体後葉ホルモン、副腎皮質ステロイド、グルココルチコイド、抗糖尿病剤、甲状腺薬、甲状腺ホルモン、種々の内分泌/生殖器官用薬、プロスタグランジン、抗感染薬、抗寄生虫薬、抗コクシジウム剤、抗生物質、抗結核薬、アミノシクリトール、セファロスポリン、マクロライド、ペニシリン、テトラサイクリン、リンコサミド、キノロン、スルホンアミド、抗細菌薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、血液改質剤、凝固剤、抗凝血薬、赤血球生成剤、抗悪性腫瘍薬/免疫抑制薬、アルキル化剤、解毒薬、骨/関節剤、外皮用剤(全身)、ビタミン及びミネラル/栄養素、全身性酸性化薬、全身性アルカリ性化薬、抗がん剤、並びに抗ウイルス剤などの中枢神経系作用薬から独立して選択される1種以上の化合物が挙げられる。
【0105】
使用方法
本発明は、疾患の予防及び/若しくは処置、並びに/又は疾患の症状の改善の方法であって、式(I)若しくは(II)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又は活性成分として式(I)若しくは(II)の化合物を含む医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む方法をさらに提供する。
【0106】
パーキンソン病を処置する方法
一態様において、本発明は、パーキンソン病又はその症状を処置、抑制、又は予防する方法であって、それを必要とする対象に治療上有効量のアベルソンファミリーチロシンキナーゼ(ATK)阻害薬を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるATK阻害薬を含む医薬組成物を投与するステップを含む。
【0107】
一部の実施形態において、ATK阻害薬は式(I)の化合物である。ある特定の好ましい実施形態において、ATK阻害薬は、化合物207、832、8270、又は809から選択される。
【0108】
一部の実施形態において、ATK阻害薬は式(II)の化合物である。
【0109】
この態様の一部の実施形態において、ATK阻害薬は、バフェチニブ、ダサチニブ、フルマチニブ、イマチニブ、メタチニブ、ニロチニブ、ペクスメチニブ、ポナチニブ、レバスチニブ、トザセルチブ、XL228、ON146040、TG100598、SUN-K706、SUN-K954、SGX393、SAR103168、PHA680626、ON044580、ON012380、NRCAN019、LS104、KW2449、HM95091、AT9283、AEG41174、ACTB1011、若しくはACTB1011、又は薬学的に許容されるそれらの塩から選択される。好ましい実施形態において、ATK阻害薬は、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、若しくはバフェチニブ、又は薬学的に許容されるそれらの塩から選択される。
【0110】
ATK阻害薬は、当業者に公知のいずれの経路でも投与し得る。ある特定の好ましい実施形態において、ATK阻害薬又は医薬組成物は、経口、経鼻、バッカル、舌下、静脈内、経粘膜、非経口、吸入、噴霧、経皮、皮下、局所又は直腸投与される。ある特定の好ましい実施形態において、ATK阻害薬又は医薬組成物は経口投与される。
【実施例】
【0111】
本発明は、ここで一般的に記載され、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるが、それらの実施例は、本発明のある特定の態様及び実施形態の説明のために含まれているにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0112】
[実施例1]
合成プロトコル
【0113】
【0114】
(E)-1-(5-ブロモピリジン-3-イル)-3-(ジメチルアミノ)プロパ-2-エン-1-オン(2)の合成 500mLのTHF中の1(40.0g、200mmol)及びR-1(119.0g、1000mmol)の溶液を70℃で終夜撹拌した。TLCにより、反応が完了したことが明らかになった。混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧除去した。得られた固体をヘキサンで洗浄して、2(47.2g、93%)を黄色固体として得た。
【0115】
4-(5-ブロモピリジン-3-イル)-N-(2-メチル-5-ニトロフェニル)ピリミジン-2-アミン(3)の合成
500mLのn-BuOH中の2(45g、176.5mmol)、7(40.6g、159.2mmol)、K2CO3(44.0g、318.8mmol)の混合物を120℃で16時間加熱した。反応混合物を濾過し、溶媒を減圧除去した。残留物をクロマトグラフィーカラム(シリカゲル、石油エーテル(PE)/酢酸エチル(EA)で溶離、PE/EA=2:1)により精製して、3(47.0g、70%)を淡黄色固体として得た。
【0116】
N1-(4-(5-ブロモピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)-6-メチルベンゼン-1,3-ジアミン(4)の合成
300mLのEtOAc中の3(45.0g、116.9mmol)及びSnCl2(132.0g、585mmol)の溶液を加熱して終夜還流し、次いで反応物を室温に冷却し、濾過し、溶液を減圧濃縮して、4(44.0g、100%)を得た。それを、さらに何ら精製することなく、次のステップに直接使用した。
【0117】
N-(3-(4-(5-ブロモピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メチルフェニル)-4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド(5)の合成
上記の粗製4(30.0g、84.5mmol)及び8(40.0g、123.0mmol)を300mLのi-BuOHに溶解し、次いで、得られた溶液を80℃に約5時間温め、反応が完了した後、混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EA=2:1)で精製して、5(45.0g、93%)を黄色固体として得た。
【0118】
5-(2-(2-メチル-5-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド)フェニルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリジン-3-イルボロン酸(6)の合成
ジオキサン(150mL)中の5(10.0g、17.5mmol)、KOAc(2.8g、28.1mmol)、PCy3(0.3g、1.1mmol)、Pd2(dba)3(0.4g、0.5mmol)及び4,4,4',4',5,5,5',5'-オクタメチル-2,2'-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(7.1g、28.0mmol)の混合物を80℃で終夜撹拌した。反応が完了した後、反応液を減圧除去して、粗製6(11.0g、収率100%)を黄色固体として得た。それを、さらに精製することなく、次のステップに直接使用した。
【0119】
【0120】
N-(3-(4-(5-アセチルピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メチルフェニル)-4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド(7)の合成
脱気したジオキサン(50mL)中の5(1.1g、2.0mmol)、トリブチル(1-エトキシビニル)スタンナン(0.9g、2.6mmol)、Pd(PPh3)4(0.2g、0.1mmol)及びトリエチルアミン(0.3g、3.0mmol)の溶液を加熱して24時間還流した。次いで、溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を厚いSiO2パッドで濾過した。得られた固体を乾燥THF(60ml)に溶解し、0℃に冷却し、1N HClで処理した。溶液を室温で2時間撹拌し、次いで飽和NaHCO3水溶液で中和した。混合物をEAで抽出し、有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で脱水し、真空中で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、PE/EA=2:1で溶離)で精製して、7(1.0g、94%)を白色固体として得た。
【0121】
エチル4-(5-(2-(2-メチル-5-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド)フェニルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリジン-3-イル)-2,4-ジオキソブタノアート(8)の合成
シュウ酸ジエチル(0.4g、2.3mmol)を、水素化ナトリウム(70%、0.2g)のテトラヒドロフラン(15mL)懸濁液に添加し、約15分間還流した。次いで、7(1.0g、1.9mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を30分かけて滴下し、90分間還流した。冷却した後、反応混合物を氷水に注ぎ込み、希塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出し、Na2SO4で脱水し、濃縮した。粗生成物8(0.8g、67%)を、さらに何ら精製することなく、次のステップに使用した。
【0122】
5-(5-(2-(2-メチル-5-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ベンズアミド)フェニルアミノ)ピリミジン-4-イル)ピリジン-3-イル)-4H-ピラゾール-3-カルボン酸(9)の合成
8(0.8g、1.26mmol)のEtOH(20mL)溶液に、ヒドラジン(0.1g、2.54mmol)を添加した。得られた混合物を加熱して60分間還流した。溶液を減圧下で除去し、残留物を分取HPLC(塩基性)で精製して、9(0.6g、78%)を白色固体として得た。
【0123】
ライブラリー化合物の合成
【0124】
【化42】
一般手順:2mLのDMF中の9(160mg、0.26mmol)、HATU(148mg、0.39mmol)、R
1R
2NH(1.2当量)及びDIPEA(70mg、0.54mmol)の溶液を室温で3時間撹拌した。得られた混合物を減圧下で蒸発させ、残留物を分取HPLCで精製して、所望のライブラリー化合物を得た。
【0125】
【0126】
この一般手順を用いて、化合物115、116及び117を調製した。
【0127】
一般手順:マイクロ波オーブン中で、ジオキサン(4mL)及び水(1mL)中の5(200mg、0.35mmol)、RB(OH)2(2.0当量)、Pd(PPh3)4(40mg、0.03mmol)、Na2CO3(112mg、1.05mmol)の混合物に90分間照射した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、減圧濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、所望のライブラリー化合物を固体として得た。
【0128】
【0129】
この一般手順を用いて、化合物101、102、103、118、201、202、309、401、402、403、404及び405を調製した。
【0130】
一般手順:マイクロ波オーブン中で、i-PrOH(4mL)及び水(1mL)中の6(150mg、0.34mmol)、RBr又はRI(2.0当量)、Pd(dppf)Cl2(57mg、0.07mmol)、Cs2CO3(280mg、0.85mmol)の混合物に30分間照射した。次いで、反応液を室温に冷却し、減圧濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、所望のライブラリー化合物を固体として得た。
【0131】
【0132】
この一般手順を用いて、化合物104、105、106、108、113、119、203を調製した。
【0133】
一般手順:マイクロ波オーブン中で、5mLのNMP中の5(200mg、0.35mmol)、R-305、R-306、又はR308(3.0当量)、Pd2(dba)3(25mg、0.03mmol)、t-BuOK(157mg、1.40mmol)、BINAP(22mg、0.03mmol)の溶液に150℃で90分間照射した。次いで、反応液を室温に冷却し、減圧濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、所望の化合物を固体として得た。
【0134】
【0135】
この一般手順を用いて、化合物305、306、308を調製した。
【0136】
一般手順:2mLのDMF中の5(200mg、0.35mmol)、K3PO4(149mg、0.70mmol)、DMCDA(7mg、0.05mmol)及びCuI(10mg、0.05mmol)の溶液に、R-303又はR-304(2.0当量)を添加した。得られた混合物を120℃で終夜撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、水(0.5mL)を添加し、EA(3mL×3回)で抽出した。有機層を合わせて、Na2SO4で脱水し、真空中で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、所望のライブラリー化合物を固体として得た。
【0137】
【0138】
この一般手順を用いて、化合物303及び304を調製した。
【0139】
化合物107の合成
【0140】
【化48】
7(150mg、0.28mmol)のDMF-DMA(3mL)溶液を100℃で2時間撹拌した。次いで、溶液を室温に冷却し、溶媒を減圧除去した。粗残留物をEtOH(10mL)に溶解し、ヒドラジン(45mg、1.40mmol)を添加した。得られた混合物を加熱して終夜還流した。溶媒を室温に冷却し、真空中で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、107(20mg、13%)を固体として得た。
【0141】
化合物207の合成
【0142】
【化49】
7(200mg、0.37mmol)のDMA-DMA(4mL)溶液を100℃に加熱し、2時間撹拌した。過剰のDMA-DMAを真空中で蒸発させ、残留物をエタノール(10mL)に溶解し、この溶液に、K
2CO
3(255mg、1.85mmol)及びヒドロキシルアミン塩酸塩(77mg、1.11mmol)を添加した。得られた混合物を終夜還流した。冷却した後、混合物をセライトで濾過し、濾液を真空中で濃縮した。残留物を分取HPLCで精製して、化合物207(18mg、8%)を固体として得た。
【0143】
化合物870、880、8300、831、832の合成
【0144】
【0145】
方法
【0146】
【0147】
1-(2-メチル-5-ニトロフェニル)グアニジン(1)
2-メチル-5-ニトロアニリン(152g、1.0mol)、シアナミド(247mL、6.0mol)及びイソプロピルアルコール(1000mL)の混合物を3Lのフラスコに入れた。混合物を80℃に加熱した。濃塩酸(57mL)を80分かけてゆっくり滴下した。反応混合物の温度を80℃に維持しながら、1時間撹拌した。濃塩酸をもう一部(144mL)、80℃で滴下した。次いで、反応混合物を100℃で12時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、NaOH水溶液(2.5N、1200mL)で処理した。得られた固体を濾過で回収し、イソプロピルアルコール(500mL)で洗浄し、乾燥させて、化合物1(145g、収率76%)を得た。
【0148】
(E)-1-(5-ブロモピリジン-3-イル)-3-(ジメチルアミノ)プロパ-2-エン-1-オン(3)
3-アセチル-5-ブロモピリジン(126.7g、0.633mol)及びDMF-DMA(84g、70.6mmol)の混合物を1時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィーで直接精製した。濃縮後に得られた粗生成物をジエチルエーテル(200mL)で洗浄し、乾燥させて、化合物3(122g、収率75.5%)を黄色結晶として得た。
【0149】
4-(5-ブロモピリジン-3-イル)-N-(2-メチル-5-ニトロフェニル)ピリミジン-2-アミン(4) 2-プロパノール(150mL)中の化合物1(10.0g、51.5mmol)及び化合物3(12.9g、50.8mmol)の混合物を18時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、得られた沈澱物を濾過で回収し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄し、乾燥させて、化合物4(13.2g、収率67%)を淡黄色結晶として得た。
【0150】
N1-(4-(5-ブロモピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)-6-メチルベンゼン-1,3-ジアミン(5)
エタノール/水(1:1、140mL)中の鉄(5.08g、907mmol)、NH4Cl(970mg、18.1mmol)及びSiO2(3g)の混合物を55℃で10分間加熱した。次いで、化合物4(7.0g、18.1mmol)のTHF(70mL)懸濁液を添加した。反応混合物を還流下で1時間撹拌し、室温に冷却した。混合物を水(100mL)に注ぎ込み、次いで酢酸エチル(100mL×2回)で抽出した。有機層を合わせて、塩水及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物5(5.88g、収率91%)を黄色固体として得た。
【0151】
4-(4-(メトキシカルボニル)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(6a)
アセトニトリル(400mL)中の4-ホルミル安息香酸メチル(20g、121mmol)及びピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(25g、134mmol)の混合物に、室温でTFA(10mL)を滴下した。混合物を1時間撹拌し、NaBH3CN(8.32g、134mmol)を添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌し、水を添加した。得られた混合物を酢酸エチル(100mL×2回)で抽出した。有機層を合わせて、塩水及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物6a(14g、収率34.4%)を得た。それを、さらに精製することなく、次のステップで直接使用した。
【0152】
4-(ピペラジン-1-イルメチル)安息香酸メチル(6b)
同じ6aの手順に従って、化合物6bを1-メチルピペラジンから調製した。
【0153】
4-((4-(tert-ブトキシカルボニル)ピペラジン-1-イル)メチル)安息香酸(7a)
メタノール/アセトニトリル/水(100mL、1:2:2)中の化合物6a(7.0g、粗製物、21mmol)及びLiOH-H2O(1.4g、31mmol)の混合物を室温で1時間撹拌した。有機溶媒を除去し、残留する水溶液を酢酸エチル(100mL)で洗浄し、次いで2N HCl水溶液でpH=2~3に調整した。得られた混合物を酢酸エチル(30mL×2回)で抽出した。抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物7a(3.0g、収率44.8%)を白色固体として得た。
【0154】
4-(ピペラジン-1-イルメチル)安息香酸(7b)
同じ7aの手順に従って、化合物7bを6bから調製した。
【0155】
4-(4-(3-(4-(5-ブロモピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メチルフェニルカルバモイル)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(8a)
DMF(20mL)中の化合物5(1.0g、2.81mmol)、化合物7a(0.98g、4.19mmol)、HATU(1.28g、3.37mmol)の混合物を0℃に冷却し、DIPEA(1.95mL、11.24mmol)を添加した。反応混合物を室温まで温め、15分間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(50mL×2回)で抽出した。抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=3:1→1:1)で精製して、化合物8a(1.29g、収率80%)を黄色固体として得た。
【0156】
N-(3-(4-(5-ブロモピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メチルフェニル)-4-(ピペラジン-1-イルメチル)ベンズアミド(8b)
同じ8aの手順に従って、化合物8bを7bから調製した。
【0157】
最終化合物への一般手順
8300、831、832:1,4-ジオキサン及び水(5:1)中の化合物8a/b(1.0当量)、対応するボロン酸(1.0当量)、Pd(dppf)Cl2(触媒量)及びNa2CO3(2.5当量)の混合物を、N2下で80℃にて1時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル及び水で希釈した。得られた混合物を濾過し、濾液を分液した。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせて、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮乾固した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー又は分取HPLCで精製して、目的の化合物を黄色固体として得た。
【0158】
870:1,4-ジオキサン(2.5mL)及び水(0.5mL)中の化合物8a(100mg、0.152mmol)、ピリジン-4-イルボロン酸(21mg、0.167mmol)、Pd(dppf)Cl2(15mg、触媒量)及びNa2CO3(40mg、0.608mmol)の混合物を、N2下で80℃にて1時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル(10mL)及び水(10mL)で希釈した。得られた混合物を濾過し、濾液を分液した。水相をEtOAc(20mL×2回)で抽出した。有機相を合わせて、塩水(20mL×2回)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮乾固した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=100:1→20:1)で精製して、化合物Boc-870(100mg)を褐色固体として得た。
【0159】
Boc-870(100mg、0.152mmol)のCH2Cl2(4mL)溶液に、撹拌しながら0℃でTFA(1mL)を添加した。反応混合物を1時間撹拌し、濃縮乾固した。残留物をNaHCO3水溶液で処理して、pH=9に調整し、次いで酢酸エチル(5mL×3回)で抽出した。有機層を合わせて、水及び塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20:1→10:1)で精製して、化合物870(66mg、収率78.4%)を灰白色固体として得た。
【0160】
880:同じ870の手順に従って、化合物880をピリジン-2-イルボロン酸から調製した。
【0161】
810、820、830、840、8150、8170、8190、8200、8220、8250、8260、8270、8280、8290の合成
【0162】
【0163】
方法
【0164】
【0165】
化合物4から化合物9への一般手順
810、820、830、840
1,4-ジオキサン及び水(5:1)中の化合物4(1.0当量)、対応するボロン酸(1.0当量)、Pd(dppf)Cl2(触媒量)及びNa2CO3(2.5当量)の混合物を、N2下で80℃にて1時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル及び水で希釈した。得られた混合物を濾過し、濾液を分液した。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせて、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物9を得た。それを、さらに精製することなく、次のステップで使用した。
【0166】
N-(2-メチル-5-ニトロフェニル)-4-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-アミン(11)
トルエン(50mL)中の化合物4(5.0g、12.95mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(3.62g、14.25mmol)、Pd(dppf)Cl2(0.3g、触媒量)及びKOAc(3.83g、38.87mmol)の混合物を、N2下で12時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)で希釈した。得られた混合物を濾過し、濾液を分液した。水相を酢酸エチル(100mL×2回)で抽出した。有機相を合わせて、塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮乾固した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油/EtOAc=20:1)で精製して、化合物11(4.77g、収率84.3%)を褐色固体として得た。
【0167】
化合物11から化合物9への一般手順
8150、8170、8190、8200、8220、8250、8260、8270、8280、8290
1,4-ジオキサン及び水(5:1)中のAr-X(1.0当量)、化合物11(1.1当量)、Pd(dppf)Cl2(触媒量)及びNa2CO3(3.0当量)の混合物を、N2下で80℃にて1時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチル及び水で希釈した。得られた混合物を濾過し、濾液を分液した。水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を合わせて、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物9を得た。それを、さらに精製することなく、次のステップで使用した。
【0168】
化合物10への一般手順
エタノール/水(1:1)中の鉄(5.0当量)、NH4Cl(1.0当量)及びSiO2(2.0当量)の混合物を55℃で10分間加熱した。次いで、化合物9(1.0当量)のTHF懸濁液を添加した。反応混合物を還流下で1時間撹拌し、室温に冷却した。混合物を水に注ぎ込み、次いで酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、塩水及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物10を黄色固体として得た。
【0169】
最終化合物への一般手順
DMF(20mL)中の化合物10(1.0当量)、化合物7b(1.2当量)及びHATU(1.2当量)の混合物を0℃に冷却し、DIPEA(4.0当量)を添加した。反応混合物を室温まで温め、15分間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の化合物を固体として得た。
【0170】
806、809、8120、8130、8180、8230、8140の合成
【0171】
【0172】
4-メトキシ-N-(2-メチル-5-ニトロフェニル)ピリミジン-2-アミン(12)
1,4-ジオキサン/水(140mL/60mL)中の2-クロロ-4-メトキシピリミジン(9.54g、66mmol)、2-メチル-5-ニトロベンゼンアミン(10.0g、66mmol)、Pd2(dba)3(1.0g)、S-Phos(1.0g、24.4mmol)、及びCs2CO3(31.8g、99mmol)の混合物を110℃で終夜加熱した。混合物を室温に冷却し、次いでセライトパッドで濾過した。濾液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物12(12g、収率70.6%)を淡黄色固体として得た。
【0173】
2-(2-メチル-5-ニトロフェニルアミノ)ピリミジン-4-オール(13)
アセトニトリル(400mL)中の化合物12(20g、77mol)、TMSCl(15g、136mmol)及びNaI(23.4g、156mmol)の混合物を120℃で終夜加熱した。混合物を室温に冷却し、2N Na2CO3水溶液(400mL)及びDCM(400mL)を添加した。分液し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=200:1)で精製して、化合物13(12.1g、収率64%)を淡黄色固体として得た。
【0174】
4-クロロ-N-(2-メチル-5-ニトロフェニル)ピリミジン-2-アミン(14)
POCl3(40mL)中の化合物13(2g、8.13mmol)及びDMF(5滴)の混合物を2時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、POCl3の大部分を除去した。残留物をNaOH水溶液(100mL)に注意深く注ぎ込み、得られた混合物をDCM(100mL×2回)で抽出した。有機層を合わせて、塩水及び水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物14(2.0g、収率93%)を黄色固体として得た。
【0175】
化合物15への一般手順
1,4-ジオキサン(20mL)及び水(20mL)中の化合物14(1.0当量)、X-Int(1.0当量)、Pd(dppf)Cl2(触媒量)及びK2CO3(3.0当量)の混合物を、N2下で12時間加熱還流した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチル及び水で希釈した。得られた混合物を濾過し、濾液を分液した。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせて、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮乾固した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=200:1)で精製して、化合物15を黄色固体として得た。
【0176】
化合物16への一般手順
エタノール/水(1:1)中の鉄(1.0当量)、NH4Cl(2.0当量)及びSiO2(触媒量)の混合物を55℃で10分間加熱した。次いで、化合物15(2.0当量)のTHF懸濁液を添加した。反応混合物を還流下で1時間撹拌し、室温に冷却した。混合物を水に注ぎ込み、次いで酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、塩水及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、化合物16を得た。
【0177】
806への手順
DMF(2mL)中の化合物16(Het=3-メチルイソオキサゾール-5-イル、150mg、0.42mmol)、化合物7a(134mg、0.42mmol)及びHATU(159mg、0.42mmol)の混合物を0℃に冷却し、DIPEA(217mg、1.68mmol)を添加した。反応混合物を室温まで温め、15分間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1:1→酢酸エチル)で精製して、化合物Boc-806(180mg、収率65.2%)を固体として得た。
【0178】
Boc-806(97mg、0.147mmol)のEtOAc(1mL)溶液に、撹拌しながら0℃でHCl/EtOAc(2N、1mL)を添加した。反応混合物を1時間撹拌し、得られた沈澱物を濾過で回収し、DCMで洗浄し、乾燥させて、化合物806(HCl塩、80mg、収率100%)を黄色固体として得た。
【0179】
806、809、8120、8130、8180、8230及び8240への一般手順
DMF(2mL)中の化合物16(1.0当量)、化合物7b(1.0当量)及びHATU(1.0当量)の混合物を0℃に冷却し、DIPEA(4.0当量)を添加した。反応混合物を室温まで温め、15分間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出した。抽出液を合わせて、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20:1)で精製して、最終化合物を黄色固体として得た。
【0180】
[実施例2]
アベルソンタンパク質キナーゼc-Abl1、c-Abl2、c-Kitの阻害、及びGleevec(登録商標)の活性成分であるイマチニブとの比較
【0181】
【0182】
キナーゼベースバッファー(50mM HEPES(pH 7.5)、0.0015% Brij-35、10mM MgCl2、2mM DTT)及びストップバッファー(100mM HEPES(pH 7.5)、0.015% Brij-35、0.2% コーティング試薬(50mM EDTA))を調製する。試験化合物を100% DMSO中で所望の最終阻害薬濃度(原液)の50倍に希釈し、半対数増分で段階希釈し、DMSO中で最終濃度250μMから75μM、25μM、7.5μM、2.5μM、0.75μM、0.25μM、75nM、25nM、7.5nMまで得られる。各化合物10μlを96ウェルプレートに入れ、中間プレートとする。キナーゼバッファー90μlを各ウェルに加えて、中間プレートを調製する。中間プレート中の化合物を振盪器で10分間混合する。酵素阻害のアッセイでは、中間プレートの各ウェルの5μlを384ウェルプレートに移すことを2回繰り返す。次いで、2.5×酵素溶液10μlを、384ウェルアッセイプレートの各ウェルに添加し、10分間インキュベートする。次いで、酵素基質を2.5×FAM標識ペプチド+ATP溶液10μlとして、384ウェルアッセイプレートの各ウェルに添加する。反応を28℃で進ませ、ストップバッファーを25μl添加して、クエンチする。蛍光FAMの放出は、阻害率(%)=(最大-変換)/(最大-最小)×100として定量化される。「最大」はDMSO対照を表し、「最小」は低対照を表す。データをXLFitエクセルアドイン、バージョン4.3.1でフィッティングして、IC50値を得る。用いる式は、Y=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+(IC50/X)^ヒルスロープ)。
【0183】
[実施例3]
14種のタンパク質キナーゼに対する500nM試験化合物溶液の阻害プロファイル
キナーゼベースバッファー(50mM HEPES(pH 7.5)、0.0015% Brij-35、10mM MgCl2、2mM DTT)及びストップバッファー(100mM HEPES(pH 7.5)、0.015% Brij-35、0.2% コーティング試薬(50mM EDTA))を調製する。試験化合物を100% DMSO中で所望のDMSO中最終阻害薬濃度(原液)の50倍に希釈する。各化合物10μlを96ウェルプレートに入れ、中間プレートとする。キナーゼバッファー90μlを各ウェルに加えて、中間プレートを調製する。中間プレート中の化合物を振盪器で10分間混合する。酵素阻害のアッセイでは、中間プレートの各ウェルの5μlを384ウェルプレートに移すことを2回繰り返す。次いで、2.5×酵素溶液10μlを、384ウェルアッセイプレートの各ウェルに添加し、10分間インキュベートする。次いで、酵素基質を2.5×FAM標識ペプチド+ATP溶液10μlとして、384ウェルアッセイプレートの各ウェルに添加する。反応を28℃で進ませ、ストップバッファーを25μl添加して、クエンチする。蛍光FAMの放出は、阻害率(%)=(最大-変換)/(最大-最小)×100として定量化される。「最大」はDMSO対照を表し、「最小」は低対照を表す。変換値を阻害値に変換する。阻害率(%)=(最大-変換)/(最大-最小)×100。「最大」はDMSO対照を表し、「最小」は低対照を表す。
【0184】
【0185】
【0186】
[実施例4]
本発明のある特定の化合物の薬物動態パラメーター
Sprague-Dawleyラットにおいて本明細書に記載される化合物の様々な薬物動態パラメーターを測定した。結果を表3に示す。
【0187】
【0188】
[実施例5]
マウスMPTP神経毒性モデル
MPTP神経毒性モデルを用いて、本発明のある特定の化合物を評価した。MPTPは酸化ストレスを引き起こし、その酸化ストレスは、MPTPで処置されたマウスのSNpcにおけるc-Abl1及び/又はc-Abl2リン酸化を引き起こす。このモデルによるMPTP投与は、最後の注射後7日目に、DAニューロンの確実で不可逆的な消失をもたらし、この消失は、PDにおいて認められたのと同様である。MPTPは、SNpcにおけるDAニューロンの消失の増大及び尾状核被殻におけるDA神経末端の変性を引き起こす。PD死後組織において認められる細胞死シグナル伝達事象の多くは、酸化ストレス、ニトロソ化ストレス、c-Abl活性化、パーキン不活性化並びにPARIS及びAIMP2上昇及びPARP活性化を含めて、MPTPモデルに存在している。ATK阻害薬であるイマチニブ及びニロチニブは、PDの急性MPTP誘導モデルにおける神経保護をもたらす。モデルが比較的急速であるので、このモデルを使用して、投薬を将来の研究のため、及び有効性の予備的尺度として評価する。
【0189】
研究デザインを
図1に示す。化合物207、832、8270、及び809を試験した。野生型マウス(1群当たりn=5匹)を、以下の通り4つの処置群に分ける:生理食塩水、MPTP、薬物及びMPTP+薬物。生理食塩水及びMPTP群を、薬物ビヒクル(非緩衝水)で前処置した(動物合計20匹)。薬物及びMPTP+薬物群は、被験化合物の強制経口投与を毎日6日間受けた。7日目に、生理食塩水及び薬物群は、生理食塩水の腹腔内(i.p.)注射を2時間間隔で4回受けた。MPTP及びMPTP+薬物群は、MPTP・HCl(遊離塩基20mg/kg)の腹腔内(i.p.)注射を2時間間隔で4回受けた。MPTP注射日後に、マウスを生理食塩水又は本発明のATK阻害薬でさらに6日間処置した。生理食塩水及びMPTPのみの群のマウスは、生理食塩水ビヒクルを受け、薬物及びMPTP+薬物群は、薬物処置をさらに1週間受けた。14日目に、マウスにポール試験を課し、次いで屠殺した。脳試料を、ドーパミン(DA)を含めて生体アミン濃度の電気化学検出(HPLC-ECD)を備えた高速液体クロマトグラフィーによる分析のために加工した。線条体におけるDA及びその代謝産物の消失は、SNpcにおけるDAニューロンの消失の一貫して確実な指標である。
【0190】
被験化合物はいずれも、著しい体重減少を引き起こさなかった(
図2)。ポール試験(
図3)において、対照動物は潜時が約5秒であったが、MPTP動物は約30秒を要した。207、832、及び809で処置した動物は、正常に近い潜時に回復した。8270の結果は統計学的に有意ではなかった。
【0191】
ドーパミン分泌測定は、ドーパミン分泌細胞が、ATK阻害による分解から保護されているかどうかを試験する。化合物207、832、8270、及び809はすべて、同等ではないが、ドーパミン分泌ニューロンを変性から保護した(
図4)。
【0192】
被験動物におけるドーパミンの代謝産物のレベルを測定した。4つの被験化合物はすべて、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)及び3-メトキシチラミン(3MT)の消失を異なる程度まで保護した(
図5)。ドーパミン代謝回転率も測定した。被験化合物は、対照動物において認められた代謝回転率を回復したものもあれば、統計学的にみて有意な結果を示さなかったものもある(
図6)。
【0193】
化合物809を受けた群において、腹側中脳におけるc-Ablのリン酸化レベルを測定した。化合物809は、対照群において認められたc-Ablリン酸化レベルの完全な回復をもたらした(
図7(左側))。
【0194】
[実施例6]
変異型α-シヌクレインモデルにおける機能救済研究
パーキンソン病の変異型α-シヌクレインモデルを用いて、本開示の例示的な化合物による機能救済を明らかにする。α-シヌクレインのA53T変異体は、臨床的に同定される変異であり、マウスにおいてα-シヌクレインの過剰凝集を導き、パーキンソン病の症状、例えば、ドーパミン作動性ニューロンの消失を再現する。
【0195】
A53Tシヌクレインマウスを、本開示の化合物(例えば、化合物809)で処置する。そのように処置されたマウスは、ドーパミン作動性ニューロンの消失の特性を示すことがない。この効果は、c-Ablを阻害することによってA53T-α-シヌクレインの毒性形の形成を遮断する化合物に起因すると考えられる。
【0196】
[実施例7]
α-シヌクレイン原繊維モデルにおける機能救済研究
既形成α-シヌクレイン原繊維の注射は、マウスにおいてパーキンソン病様疾患を誘発することが知られている。既形成α-シヌクレイン原繊維を注射したマウスを、本開示の化合物(例えば、化合物809)で処置する。そのように処置されたマウスは、パーキンソン病様疾患を示すことがない。この効果は、c-Ablを阻害することによって毒性の既形成原繊維α-シヌクレインの形成を遮断する化合物に起因すると考えられる。
【0197】
参照による組込み
本明細書に引用されている特許、公開された特許出願、及び非特許参考文献はそれぞれ、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0198】
均等形態
当業者ならば、ルーチンにすぎない実験方法を用いて、本明細書に説明されている本発明の特定の実施形態に対する多数の均等形態を認識し又は確認することができる。そのような均等形態は、以下の特許請求の範囲により包含されるものとする。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
パーキンソン病を処置又は予防する方法であって、対象に有効量のATK阻害薬を投与するステップを含み、ATK阻害薬が、式(I)
【化55】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1
は、場合によって重水素化されていてもよい、水素又は低級アルキルから選択され、
Cy
1
は、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換ヘテロシクリルから選択される]
の構造を有する化合物又は薬学的に許容されるその塩である方法。
(実施形態2)
Cy
1
が、
【化56】
[式中、出現ごとに独立して、
R
2
及びR
3
は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4
)(R
4
)から選択され、
nは、1、2、3又は4であり、
Xは、C(R
4
)
2
、S、O、又はNR
4
であり、
R
4
は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される、実施形態1に記載の方法。
(実施形態3)
Cy
1
が、
【化57】
[式中、出現ごとに独立して、
R
1
は、水素又は低級アルキルから選択され、
R
2
及びR
3
は、水素、アルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シクロアルキル、ハロ、シアノ、アルコキシ、-C(O)OH、及び-C(O)N(R
4
)(R
4
)から選択され、
R
4
は、水素及び置換又は非置換アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルアルキルから選択される]
から選択される、実施形態1に記載の方法。
(実施形態4)
Cy
1
が非置換ピリド-4-イルでも非置換フェニルでもない、実施形態1に記載の方法。
(実施形態5)
Cy
1
が置換又は非置換ピリド-4-イルでも置換又は非置換フェニルでもない、実施形態1に記載の方法。
(実施形態6)
Cy
1
が、5員ヘテロアリール、アリール又はヘテロシクリルである、実施形態1に記載の方法。
(実施形態7)
Cy
1
が、
【化58】
から選択される、実施形態6に記載の方法。
(実施形態8)
Cy
1
が、
【化59】
から選択される、実施形態6に記載の方法。
(実施形態9)
Cy
1
が、
【化60】
から選択される、実施形態6に記載の方法。
(実施形態10)
Cy
1
が、
【化61】
から選択される、実施形態1に記載の方法。
(実施形態11)
R
1
が、-CH
3
、-CDH
2
、-CD
2
H、又は-CD
3
である、実施形態1に記載の方法。