(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 8/18 20060101AFI20230607BHJP
H02P 8/12 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H02P8/18
H02P8/12
(21)【出願番号】P 2020082561
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海野 晃
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109450303(CN,A)
【文献】特開平03-169297(JP,A)
【文献】特開2008-278643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/18
H02P 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相同期型モータを駆動するためのモータ制御装置であって、
基本正弦波と、前記2相同期型モータのリラクタンストルクの揺らぎを抑制するリラクタンストルク補正波形とを重ね合わせて得られる制御電流波形を生成する制御電流波形生成手段と、
前記制御電流波形生成手段が生成する制御電流波形に従って前記2相同期型モータの巻線に電流を供給するための電流制御信号を発生する電流制御信号生成手段と、
を含
み、
前記リラクタンストルク補正波形が、前記基本正弦波の2倍の周波数を有し前記基本正弦波と位相を整合させた原波形を前記基本正弦波と同符号または異符号に全波整流した波形を有し、
前記リラクタンストルク補正波形が、前記2相同期型モータの自己インダクタンスの角度微分の振幅が当該2相同期型モータの相互インダクタンスの角度微分の振幅よりも大きいときには、前記原波形を前記基本正弦波と同符号に全波整流した波形を有し、前記自己インダクタンスの角度微分の振幅が前記相互インダクタンスの角度微分の振幅よりも小さいときには、前記原波形を前記基本正弦波と異符号に全波整流した波形を有する、モータ制御装置。
【請求項2】
前記原波形が、正弦波状の波形である、請求項
1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記リラクタンストルク補正波形が、前記2相同期型モータの自己インダクタンスの角度微分の振幅および相互インダクタンスの角度微分の振幅の比を用いて算出される波形である、請求項1
または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
2相同期型モータを駆動するためのモータ制御装置であって、
基本正弦波と、前記2相同期型モータのリラクタンストルクの揺らぎを抑制するリラクタンストルク補正波形とを重ね合わせて得られる制御電流波形を生成する制御電流波形生成手段と、
前記制御電流波形生成手段が生成する制御電流波形に従って前記2相同期型モータの巻線に電流を供給するための電流制御信号を発生する電流制御信号生成手段と、
を含み、
前記リラクタンストルク補正波形が、前記2相同期型モータの自己インダクタンスの角度微分の振幅および相互インダクタンスの角度微分の振幅の比を用いて算出される波形である、モータ制御装置。
【請求項5】
前記リラクタンストルク補正波形が、前記2相同期型モータに供給されるモータ電流に応じて変化する波形である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記2相同期型モータが、ステッピングモータである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記ステッピングモータが、ハイブリッド型またはスロットマグネット型である、請求項
6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記制御電流波形が、前記基本正弦波と、前記リラクタンストルク補正波形と、マグネットトルクの電流に対する非線形性を補償するためのマグネットトルク補正波形とを重ね合わせて得られる波形を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記マグネットトルク補正波形が、前記2相同期型モータに供給されるモータ電流に応じて変化する波形である、請求項
8に記載のモータ制御装置。
【請求項10】
前記マグネットトルク補正波形が、前記基本正弦波に重畳されたときに当該基本正弦波のピーク部の振幅を増幅する波形を有している、請求項
8または
9に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2相同期型モータを駆動するためのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2相同期型モータの一つの典型例は、2相ステッピングモータである。
2相ステッピングモータを正弦波的な電流で駆動するとき、回転振動が生じる条件がある。具体的には、ロータ慣性および負荷慣性の和と、モータ発生トルクとによって、固有振動数が定まる。この固有振動数に対して、モータ駆動のための正弦波電流周波数が2分の1倍または4分の1倍となる回転速度のときに、回転振動が発生する。
【0003】
また、ステッピングモータにおいては、一定電流で巻線を励磁してモータを停止させるときに、停止位置が理論的な停止位置からずれる現象が起きる。これを「静止角度誤差」という。
このような回転振動および静止角度誤差の問題は、ハイブリッド型ステッピングモータ、とくに小型のハイブリッド型ステッピングモータおいてとくに顕著に現れる。また、ステータ小歯間および/またはロータ小歯間に磁石を挿入したスロットマグネット型のステッピングモータにおいても、同様に、回転振動および静止角度誤差の問題が顕著である。
【0004】
特許文献1は、励磁電流を三角波のパルスによるマイクロステップ駆動により形成し、その三角波のパルスをフーリエ変換して得られる高調波の3次成分および5次成分を変化させて振動を抑制する手法を開示している。
特許文献2は、モータの逆起電力高調波によって振動が発生すると指摘し、励磁位相の補償によって逆起電力高調波を抑制する手法を開示している。
【0005】
非特許文献1は、モータの振動の原因がコギングトルクにあると指摘し、励磁位相の補償によってコギングトルクを抑制する手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-9592号公報
【文献】特表2019-516339号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】竹村英孝、外3名、「ステッピングモータ駆動系のコギングトルク補償器による制振に関する研究」、日本機械学会論文集(C編)78巻785号(2012-1)、p.74-81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の一実施形態は、上記の先行技術とは異なる着眼点に基づいて、2相同期型モータの振動を抑制することができる新たなモータ制御装置を提供する。
また、この発明の一実施形態は、2相同期型モータの静止角度誤差を低減できるモータ制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、2相同期型モータを駆動するためのモータ制御装置を提供する。このモータ制御装置は、基本正弦波と、前記2相同期型モータのリラクタンストルクの揺らぎを抑制するリラクタンストルク補正波形とを重ね合わせて得られる制御電流波形を生成する制御電流波形生成手段を含む。前記モータ制御装置は、前記制御電流波形生成手段が生成する制御電流波形に従って前記2相同期型モータの巻線に電流を供給するための電流制御信号を発生する電流制御信号生成手段を含む。
【0010】
この構成により、リラクタンストルクの揺らぎを抑制するリラクタンストルク補正波形が基本正弦波に重畳されて制御電流波形が生成され、この制御電流波形に従って2相同期型モータが駆動される。それにより、リラクタンストルクの揺らぎに起因する振動を抑制することができる。
本願の発明者は、2相同期型モータの回転振動および静止角度誤差の起源が、モータ電流値によってトルクのロータ角度依存性の波形(θ-T波形)が励磁位相に対して揺らぎを起こすことで説明できることに気づき、本発明の完成に至ったものである。とくに、ステッピングモータに関する従来の学説では無視できるとされてきたリラクタンストルクの和がθ-T波形の揺らぎに影響することを発見した。そこで、この発明の一実施形態は、リラクタンストルクの揺らぎ(より正確には、励磁位相に依存する揺らぎ)を抑制するリラクタンストルク補正波形を基本正弦波に重畳した波形の制御電流波形を用いることにより、回転振動を抑制でき、併せて静止角度誤差を改善することができる。すなわち、このような制御電流波形は、リラクタンストルク波形(θ-T波形)の励磁位相に対する揺らぎが抑制または防止される波形となる。この制御電流波形を用いることで、リラクタンストルクが無視できないタイプのモータについて、オープンループでモータを駆動する場合に、振動の少ない滑らかな駆動を実現できる。
【0011】
前記モータ制御装置は、前記2相同期型モータをオープンループの定電流制御によって駆動するものであってもよい。オープンループの制御とは、位置フィードバックおよび速度フィードバックのいずれも伴わない制御であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記リラクタンストルク補正波形が、前記基本正弦波の2倍の周波数を有し前記基本正弦波と位相を整合させた原波形を前記基本正弦波と同符号または異符号に全波整流した波形を有する。位相の整合は、厳密に位相が整合していることを意味するものではない。むろん、厳密に位相が整合していてもよいが、実際上は、微少な位相ずれを意図的に導入することによって、振動低減効果が向上する場合があり得る。したがって、ここでの位相の整合とは、リラクタンストルクの励磁位相に依存する揺らぎを抑制できる範囲内での位相ずれを許容する趣旨である。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記原波形が、正弦波状の波形である。
この発明の一実施形態では、前記リラクタンストルク補正波形が、前記2相同期型モータの自己インダクタンスの角度微分の振幅が当該2相同期型モータの相互インダクタンスの角度微分の振幅よりも大きいときには、前記原波形を前記基本正弦波と同符号に全波整流した波形を有し、前記自己インダクタンスの角度微分の振幅が前記相互インダクタンスの角度微分の振幅よりも小さいときには、前記原波形を前記基本正弦波と異符号に全波整流した波形を有する。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記リラクタンストルク補正波形が、前記2相同期型モータの自己インダクタンスの角度微分の振幅および相互インダクタンスの角度微分の振幅の比を用いて算出される波形である。
この発明の一実施形態では、前記リラクタンストルク補正波形が、前記2相同期型モータに供給されるモータ電流に応じて変化する波形である。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記2相同期型モータが、ステッピングモータである。前記ステッピングモータは、ハイブリッド型またはスロットマグネット型であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記制御電流波形が、前記基本正弦波と、前記リラクタンストルク補正波形と、マグネットトルクの電流に対する非線形性を補償するためのマグネットトルク補正波形とを重ね合わせて得られる波形を有する。
【0015】
マグネットトルクの電流に対する非線形性は、モータの回転振動の一因となり得る。そこで、制御電流波形を、マグネットトルク補正波形をさらに重畳した波形としておくことにより、モータの回転振動および静止角度誤差を一層改善できる。このような、マグネットトルクの非線形性に関する電流補正は、とりわけハイブリッド型のステッピングモータにおいて効果的である。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記マグネットトルク補正波形が、前記2相同期型モータに供給されるモータ電流に応じて変化する波形である。
この発明の一実施形態では、前記マグネットトルク補正波形が、前記基本正弦波に重畳されたときに当該基本正弦波のピーク部の振幅を増幅する波形を有している。
【発明の効果】
【0017】
この発明により、前述先行技術とは異なる着眼点に基づいて、2相同期型モータの振動を抑制することができる新たなモータ制御装置を提供できる。また、2相同期型モータの静止角度誤差を低減できるモータ制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、理想的なマグネットトルクのθ-T波形を示す波形図である。
【
図2】
図2は、マグネットトルク、インダクタンスおよびその角度微分とロータ角度との関係を示す波形図である。
【
図3A-3B】
図3Aおよび
図3Bは、ステッピングモータの状態と自己インダクタンスとの関係を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、自己インダクタンスおよび相互インダクタンスの角度微分の振幅が等しい場合のリラクタンストルクに関するθ-T波形を示す波形図である。
【
図4B】
図4Bは、自己インダクタンスおよび相互インダクタンスの角度微分の振幅が等しくない場合のリラクタンストルクに関するθ-T波形を示す波形図である。
【
図5A-5B】
図5Aおよび
図5Bは、リラクタンストルクの励磁位相に応じたθ-T波形の揺らぎを抑制するための電流波形を説明するための波形図である。
【
図5C-5D】
図5Cおよび
図5Dは、自己インダクタンスおよび相互インダクタンスの角度微分の振幅の大小関係による重畳波形の反転を説明するための波形図である。
【
図6】
図6は、電流補正によって、リラクタンストルクのθ-T波形の揺らぎを解消できることを説明するための波形図である。
【
図7】
図7は、ハイブリッド型ステッピングモータのトルク-電流特性を示す特性図である。
【
図8】
図8は、マグネットトルクの電流に対する非線形性を補償するための電流補正の一例を説明するための波形図である。
【
図9】
図9は、マグネットトルクの電流に対する非線形性を補償するための電流補正の一例を説明するための波形図である。
【
図10】
図10は、2相ハイブリッド型ステッピングモータの構造例を説明するための斜視図である。
【
図11】
図11は、前記ハイブリッド型ステッピングモータのステータおよびロータの構造を説明するための分解斜視図である。
【
図12】
図12は、ステータを回転軸線に沿って見た構成を示す図である。
【
図13】
図13は、ステッピングモータの制御および駆動に関する電気的構成例を説明するためのブロック図である。
【
図14】
図14は、ステッピングモータの制御に関する制御ブロック例を示す。
【
図15】
図15は、前記ステッピングモータの回転振動の計測例を示す図である。
【
図16】
図16は、前記ステッピングモータの回転振動の計測例を示す図である。
【
図17】
図17は、2相スロットマグネット型ステッピングモータの構造例を説明するための斜視図である。
【
図18】
図18は、前記スロットマグネット型ステッピングモータのステータおよびロータの構造を説明するための分解斜視図である。
【
図19】
図19は、前記スロットマグネット型ステッピングモータのロータ歯およびステータ歯を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図20A-20B】
図20Aおよび
図20Bは、ギャップ比4倍および8倍のスロットマグネット型ステッピングモータのθ-T波形を磁気解析で得た結果を示す図である。
【
図21A-21B】
図21Aおよび
図21Bは、ギャップ比4倍のスロットマグネット型ステッピングモータの自己インダクタンスおよび相互インダクタンスの解析結果を示す図である。
【
図22A-22B】
図22Aおよび
図22Bは、ギャップ比4倍のスロットマグネット型ステッピングモータのトルク解析結果を示す図である。
【
図23A-23B】
図23Aおよび
図23Bは、ギャップ比8倍のスロットマグネット型ステッピングモータの自己インダクタンスおよび相互インダクタンスを解析した結果を示す図である。
【
図24A-24B】
図24Aおよび
図24Bは、ギャップ比8倍のスロットマグネット型ステッピングモータのトルク解析結果を示す図である。
【
図25】
図25は、d軸を定格電流で励磁するときのA相正弦波電流およびB相正弦波電流の波形の例を示す波形図である。
【
図26】
図26は、スロットマグネット型ステッピングモータのインダクタンス解析結果から求めたインダクタンスの角度微分値を示す波形図である。
【
図27】
図27は、スロットマグネット型ステッピングモータに関して計算および解析によってそれぞれ求めたリラクタンストルクのθ-T波形を重ねて示す波形図である。
【
図28】
図28は、スロットマグネット型ステッピングモータに関する回転振動の計測例(無補正時)を示す図である。
【
図29】
図29は、スロットマグネット型ステッピングモータに関する回転振動の計測例(電流補正時)を示す図である。
【
図30】
図30は、スロットマグネット型ステッピングモータについてのモータ電流の実測値を示す波形図である。
【
図31A-31B】
図31Aおよび
図31Bは、スロットマグネット型ステッピングモータをフルステップ駆動したときの静止角度誤差の測定結果を示す図である。
【
図32A-32B】
図32Aおよび
図32Bは、スロットマグネット型ステッピングモータをマイクロステップ駆動したときの静止角度誤差の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
本件発明者は、モータ電流値によって、トルクのロータ角度依存性(θ-T特性)が励磁位相に対して揺らぎを起こす現象が生じ、それにより、回転振動および/または静止角度誤差の悪化が説明できることを見出した。とくに、発生トルクに対する電流値の非線形性が、ロータ角度とトルクとの関係を表すθ-T波形の揺らぎに影響し、かつ従来のステッピングモータに関する学説では無視できるとされてきたリラクタンストルクもθ-T波形の揺らぎに影響することを見出した。これらの発見に基づき、この出願は、以下に説明する実施形態を提供する。
【0020】
具体的には、この実施形態は、リラクタンストルク波形が、励磁位相に対して揺らぎを起こさないような電流波形を与えることで、回転振動の低減および/または静止角度誤差の改善を図る。それにより、リラクタンストルクが無視できないタイプのモータをオープンループで駆動する場合に、振動のない滑らかな駆動を実現する。
[理想的な場合のマグネットトルクに関する考察]
モータインダクタンスの角度依存性が小さい同期型モータ、たとえば表面磁石型モータやハイブリッド型ステッピングモータ、一部の埋め込み磁石型モータでは、モータが発生するトルクは磁石によるものが支配的になる。磁石によるトルクは、「マグネットトルク」と呼ばれる。
【0021】
2相モータの場合のマグネットトルクTMは、A相およびB相のθ-T波形の合成によって表すことができる。A相のθ-T波形は、A相電流IAとロータ位置(具体的にはロータ角度θ)の関数sin(θ)との積IA・sin(θ)を用いて表すことができ、B相のθ-T波形は、B相電流IBとロータ位置の関数cos(θ)との積IB・cos(θ)を用いて表すことができる。したがって、マグネットトルクTMは、次式(1)のとおり、それらの和で表すことができる。ただし、トルク定数は1とした。
【0022】
TM=IA・sin(θ)+IB・cos(θ) (1)
ステッピングモータの場合は、マグネットトルクと電流との関係が線形でないことが知られている。そこで、電流の二次の項を導入し、その係数をpとおくと、次式(2)のように書くことができる。理想的なマグネットトルクの場合には、p=0であり、上式(1)のとおりになる。
【0023】
TM=IA(1-pI2
A)sin(θ)+IB(1-pI2
B)cos(θ) (2)
ここで、理想的なマグネットトルクの場合、すなわちp=0の場合を考える。また、電流が角速度ωの理想的な正弦波波形で時間的に変動する場合を考えることとし、IA(t)=cos(ωt)、IB(t)=-sin(ωt)とおく(ただし、tは時間を表す)。すると、上記式(2)は次のとおりになる。
【0024】
【0025】
この場合のθ-T波形を
図1に示す。具体的には、ω=1とし、t=0,π/4,π/2のときのθ-T波形を示す。
図1から、θ-T波形は、形を保ったままで並行移動しており、任意の一定負荷において、トルクの脈動が起こらないことが分かる。したがって、トルク脈動を起因とする回転方向の加振力は働かないので、モータの回転による振動は発生しない。
【0026】
[リラクタンストルクに関する考察]
磁石がない場合でも、コイルによって生じる磁束によって鉄心間に電磁力が生じる。その電磁力による吸引によってトルクが発生する。これを「リラクタンストルク」という。リラクタンストルクは、モータインダクタンスのθ依存性を起源とする。リラクタンストルクTrは、磁気エネルギーの和をU、A相およびB相の自己インダクタンスをLA,LB、相互インダクタンスをMとしたときに、次のように書ける。
【0027】
【0028】
たとえば、ハイブリッド型のステッピングモータは、複数の小歯(ロータ歯)を周上に一定の小歯ピッチで等間隔配置したロータと、これに対向配置されたステータとを備えている。より具体的には、ロータは、回転軸まわりに小歯ピッチの半分だけずらした2つのロータセグメントを備え、この2つのロータセグメントが回転軸に固定されている。一方のロータセグメントはS極に磁化され、他方のロータセグメントはN極に磁化されている。各ロータセグメントの周上に、一定の小歯ピッチで、複数(たとえば50個)の小歯が等間隔に配置されている。ステータは、ロータと同じ小歯ピッチで配置された複数の小歯(ステータ歯)を有する複数の主極を備えている。
【0029】
2相のステッピングモータは、A相と、A相に対して90度位相のずれたB相と、A相に対して180度位相のずれた/A相と、B相に対して180度位相のずれた/B相とを有する。ステータは、A相、B相、/A相および/B相の電流が印加される巻線をそれぞれ施した複数の主極を有し、各主極上にロータに対向するステータ歯が配置されている。A相の主極上のステータ歯とロータ歯とが正対しているとき、B相の主極上のステータ歯はロータ歯に対して4分の1ピッチ(電気角90度)だけずれており、/A相の主極上のステータ歯はロータ歯に対して4分の2ピッチ(電気角180度)だけずれており、/B相の主極上のステータ歯はロータ歯に対して4分の3ピッチ(電気角270度)だけずれている。
【0030】
A相をN極に励磁し、/A相をS極に励磁した状態を考える。このときのマグネットトルクT
Mは、
図2(a)に示すように、ロータ角度θの正弦波関数で表すことができる。
図3Aに示すように、A相のステータ主極S
Aの小歯とロータR(より具体的にはS極ロータセグメント)の小歯とが正対する状態が励磁安定点(電気角0度)であり、/A相のステータ主極S
/Aの小歯はロータR(より具体的にはS極ロータセグメント)の小歯に対して2分の1ピッチ(電気角180度)だけずれている。このときのA相自己インダクタンスL
Aは最小である。この状態から、ロータRを電気角で90度(ロータ歯数が50の場合には機械角で1.8度)回転させた
図3Bの状態のときに、マグネットトルクT
Mが最大になる。このときのA相自己インダクタンスL
Aは最大である。よって、A相自己インダクタンスL
Aの位相は、
図2(b)のとおりであると仮定できる。すなわち、A相自己インダクタンスL
Aは、マグネットトルクT
Mの正弦波波形の2倍の周期の正弦波状に変動する。すると、A相自己インダクタンスL
Aの角度微分dL
A/dθの位相は、
図2(c)の通りであると仮定できる。つまり、マグネットトルクT
Mの正弦波波形の2倍の周期の正弦波波形に従って変動すると仮定できる。B相自己インダクタンスL
Bおよび相互インダクタンスMについても同様に考察することにより、次式の関係を導き出せる。
【0031】
【0032】
そこで、自己インダクタンスLAおよびLBの角度微分の振幅をLΔと置き、相互インダクタンスMの角度微分の振幅をMΔと置くと、リラクタンストルクTr(t,θ)は、次式のように書ける。
【0033】
【0034】
MΔ=LΔのとき、電流波形が理想的な正弦波の場合のリラクタンストルクT
rは、
図4Aのとおりである。同図には、t=0,π/8,π/4,3π/8,π/2のときのリラクタンストルクT
rに関するθ-T波形を示す。マグネットトルクT
Mと同じ向き、同じ速度で、θ-T波形が波形を保ったままで動くことがわかる。したがって、MΔ=LΔのときは、理想的な正弦波電流でモータを回転させれば、マグネットトルクT
MおよびリラクタンストルクT
rを合わせたトータルトルクの波形は時間的に不変であり、かつその波形の並進速度が一様(具体的には、ωが一定であれば一定の並進速度)になる。したがって、モータの挙動は振動的にならない。
【0035】
一方、MΔ=LΔ/2のとき、電流波形が理想的な正弦波の場合のリラクタンストルクT
rは、
図4Bのとおりである。同図には、t=0,π/8,π/4,3π/8,π/2のときのリラクタンストルクT
rに関するθ-T波形を示す。リラクタンストルクT
rが時間的に揺らいでいることがわかる。それに応じてトータルトルクも時間的に揺らぐから、加振力が発生する。しかも、
図4Bから、等間隔の時間t=0,π/8,π/4,3π/8,π/2にそれぞれ対応するθ-T曲線においてトルクが零となる点の間隔が等しくない。このことは、無負荷のときでも加振力が生じ、それに応じた振動が発生することを示唆している。
【0036】
そこで、振幅パラメータLΔ,MΔの任意の値に対して、リラクタンストルクTrのθ-T波形が時間的に不変となるモータ電流を求める。そのためには、リラクタンストルクTrが、tおよびθの2変数関数Tr(t,θ)ではなく、マグネットトルクTMと同様に、(ωt-θ)でくくられる1変数関数Tr(ωt-θ)で表せればよい。すなわち、Tr(t,θ)=Tr(ωt-θ)と表すことができればよい。これは、任意の時刻tでの波形が、時刻t=0での波形を変えずにωtだけ移動したものになることを表す。このような解を与える微分方程式として、移流方程式が知られており、これを当てはめると次のとおりである。
【0037】
【0038】
前述の式(6)を式(7)の左辺に代入すると、次のとおりである。
【0039】
【0040】
これが任意のθで零になる必要があることから、次式が得られる。
【0041】
【0042】
これにより、次式を得る。
【0043】
【0044】
これらを連立して、次式が得られる。
【0045】
【0046】
これらを解くと、次のとおりとなる。ただし、A1,A2,δ1,δ2は定数である。
IAIB=A1cos(2ωt+δ1) (15)
IA
2-IB
2=A2cos(2ωt+δ2) (16)
これらをIAについて解くと、次式が得られる。
【0047】
【0048】
同様に、IBについて解くと、次式が得られる。
【0049】
【0050】
式(17),(18)のIA,IBを式(6)に代入して、リラクタンストルクTrを求め、Tr=-αsin(2(ωt-θ))となるように未定係数を決めると、次の通りである。
【0051】
【0052】
これを式(17),(18)に代入することにより、A相電流IAおよびB相電流IBは、次のように求まる。
【0053】
【0054】
IAおよびIBは実数なので、根号の中は常に正である必要があり、かつ電流一周期での正味の電流が零になる解は、次のとおりである。
【0055】
【0056】
MΔ=LΔ/2のときのA相電流I
AおよびB相電流I
Bの波形を
図5Aの曲線512および
図5Bの曲線522にそれぞれ示す。ただし、ω=1、LΔ=1とした。上式(22),(23)において、αはリラクタンストルクの振幅となるので、ここではα=1と置く。電流の振幅は、およそ√(2α/LΔ)になる。
MΔ=LΔのときのA相電流I
A(=√(2α/LΔ)・cosωt)およびB相電流I
B(=-√(2α/LΔ)・sinωt)の波形を
図5Aの曲線510および
図5Bの曲線520にそれぞれ示す。これらは、正弦波の波形となる。
図5Aの曲線510に示す正弦波電流波形とA相電流I
Aの波形(曲線512)との差分を「重畳波形」と呼び、
図5Aに曲線511で示す。曲線510の正弦波電流波形に対して曲線511の重畳波形を重畳することで、曲線512に示す、A相電流I
Aの波形が得られる。同様に、
図5Bの曲線520に示す正弦波電流波形とB相電流I
Bの波形(曲線522)との差分を「重畳波形」と呼び、
図5Bに曲線521で示す。曲線520の正弦波電流波形に対して曲線521の重畳波形を重畳することで、曲線522に示す、B相電流I
Bの波形が得られる。重畳波形(曲線511,521)は、LΔ=MΔのときに相当する正弦波電流波形(曲線510,520)に対して、2倍周期の正弦波状波形を正弦波電流(曲線510,520)と同じ符号に整流した波形となる。
【0057】
図6に、MΔ=LΔ/2の場合におけるリラクタンストルクT
rに関するθ-T波形を示す。同図には、t=0,π/8,π/4,3π/8,π/2のときのリラクタンストルクT
rに関するθ-T波形を示す。リラクタンストルクT
rの波形は、正弦波電流でのモータ駆動に対応する
図4Bの場合とは異なり、時間的に形状が変化しないことがわかる。
モータを励磁するとき、インダクタンスの角度微分の振幅LΔおよびMΔは、モータ電流に依存する。したがって、モータ電流に依存する振幅LΔおよびMΔの変動も含めて、モータに供給する各相の電流を計算することが好ましい。しかし、現実のアプリケーションでは、式(22),(23)の根号処理が煩雑でもあることから、振幅LΔおよびMΔをそれぞれ定数とおいた基本重畳波形をテーブル化しておき、モータ電流に応じてその基本重畳波形の振幅を調整することによって、基本正弦波(
図5A,5Bの曲線510,520)に重畳すべき重畳波形(
図5A,5Bの曲線511,521)を作成してもよい。その場合でも、ステッピングモータの低振動化は充分に達成できる。LΔ<MΔのときには、重畳波形の符号を反転させることによって、対応することができる(
図5A,5Bの曲線511a,521a参照)。
【0058】
このように重畳波形は、式(22),(23)等から導かれるとおりの厳密な波形を有している必要は必ずしもない。
図5Aおよび
図5Bの曲線511,521に表れているように、重畳波形は、基本正弦波(曲線510,520)の2倍の周波数を有する高調波の波形を原波形として、この原波形を基本正弦波と同符号に全波整流した波形を有している。重畳波形の全波整流前の波形(原波形)を考えると、正弦波状であるが、厳密な正弦波の波形ではない。したがって、重畳波形は、正確には、基本正弦波の高調波的な波形(原波形)を基本正弦波と同符号に全波整流した波形ということができる。もっとも、重畳波形としては、基本正弦波の2倍の周波数を有する厳密な高調波の波形を基本正弦波と同符号に全波整流した波形を用いることもでき、その場合でも、一定の振動低減効果を期待できる。
【0059】
LΔ<MΔのときには、
図5Aおよび
図5Bの曲線511,522の場合とは重畳波形の符号を反転させる(
図5A,5Bの曲線511a,521a参照)ので、その場合の重畳波形は、基本正弦波の2倍の周波数を有する高調波の波形(正確には高調波的な波形)を基本正弦波と異符号に全波整流した波形を有している。
LΔとMΔの大小関係が反転したときに、重畳波形が反転する理由を説明する。
【0060】
A相電流IAを表す上記式(22)において、LΔ/MΔ=βとおいて、二重根号内の第2項を1次のマクローリン展開すると、式(22)の二重根号は次のように表せる。
【0061】
【0062】
第1項はβ=1のときの解で周期ωtの正弦波となり、第2項がβ=1からずれる分の補正項となる。β=1.1(MΔ<LΔ)、β=0.9(LΔ<MΔ)のときの第2項を、
図5Cに実線および点線でそれぞれ図示する。
図5Cにおいて実線で示すβ=1.1(MΔ<LΔ)のときの波形が、
図5Aに曲線511で示す重畳波形に対応している。
図5Cにおいて点線で示すβ=0.9(LΔ<MΔ)のときの波形は、β=1.1(MΔ<LΔ)のときの波形(実線)に対して反転している。このときの波形が、
図5Aに曲線511aで示す重畳波形(曲線511の反転波形)に対応している。
【0063】
B相電流についても同様に考えると、B相電流IBを表す上記式(23)において、LΔ/MΔ=βとおいて、二重根号内の第2項を1次のマクローリン展開すると、式(23)の二重根号は次のように表せる。
【0064】
【0065】
β=1.1(MΔ<LΔ)、β=0.9(LΔ<MΔ)のときの第2項を、
図5Dに実線および点線でそれぞれ図示する。
図5Dにおいて実線で示すβ=1.1(MΔ<LΔ)のときの波形が、
図5Bに曲線521で示す重畳波形に対応している。
図5Dにおいて点線で示すβ=0.9(LΔ<MΔ)のときの波形は、β=1.1(MΔ<LΔ)のときの波形(実線)に対して反転している。このときの波形が、
図5Bに曲線521aで示す重畳波形(曲線521の反転波形)に対応している。
【0066】
以上より、LΔとMΔの大小関係が反転したときに、重畳波形を反転させれば対応が可能であることが分かる。
[非線形性を考慮した場合のマグネットトルク]
マグネットトルクが電流に対して非線形性を有している場合の電流補正について考える。ステッピングモータにおいて、電流に対してトルクが非線形でない現象が生じることが知られている。
図7に、2相ハイブリッド型ステッピングモータのトルク-電流特性の一例を示す。入力電流に対するトルクの特性は、非線形なトルクカーブを描く。このトルクカーブに対して二次多項式でフィッティングし、一次の係数をトルク定数k
t、二次の係数をp・k
tとおくと、電流に対する非線形性を含んだマグネットトルクは、式(1)にトルク定数を考慮して、次のように表せる。
【0067】
【0068】
これをリラクタンストルクの場合と同様の手順で解くと、次のとおりである。
【0069】
【0070】
カルダノの公式より、x3-px-q=0の解の一つは、次のとおりである。
【0071】
【0072】
解くべき3次方程式(22)との比較から、係数を次のように置いて解を求めると、式(27),(28)が得られる。ただし、δ=δ1またはδ2である。
【0073】
【0074】
ここで、前述の理想的なマグネットトルクの場合の電流位相の類推から、マグネットトルクを正弦波とするために、δ1=0、δ2=-π/2と取っている。
式(24)のIAおよびIBに式(27),(28)のIAcompおよびIBcompをそれぞれ代入すると、次式が得られる。
TM=αkt(cos(ωt)sin(θ)-sin(ωt)cos(θ))=-αktsin(ωt-θ) (29)
αは入力電流の振幅となる。判別式D<0のとき、すなわち、次式の関係のときに解が虚部を持つ。
【0075】
【0076】
最終的な電流解は、次式のとおりであり、実部Reと虚部Imとを足し合わせて連続的な形になる。
I
A=Re(I
Acomp)+Im(I
Acomp) (31)
I
B=Re(I
Bcomp)+Im(I
Bcomp) (32)
例として、
図7の場合の電流補正を考える。トルク定数は、k
t=0.2745(N・m/A)、トルクの2次の係数はp=0.095(N・m/A
2)となる。D=0のときの励磁電流αは、次式のとおりであり、このときの電流波形は、
図8の曲線802のようになる。現象論的には、1相励磁のときのトルクの減少を補うために電流ピーク部の電流値が増やされる状態になって、励磁電流波形は三角波に近づくと解釈できる。
【0077】
【0078】
図8の曲線800は、補正前の正弦波電流波形(α・sinωt)を示す。ただし、ω=1とした。曲線802と曲線800との差分に対応する重畳波形を曲線801で示す。曲線800の正弦波電流波形に対して曲線801の重畳波形を重ね合わせることにより、曲線802の補正電流波形が得られる。
D>0となる場合の例として、励磁電流α=1.8(A)のときの補正電流波形を
図9の曲線902に示す。
図9の曲線900は、補正前の正弦波電流波形(α・sinωt)を示す。曲線902と曲線900との差分に対応する重畳波形を曲線901で示す。曲線900の正弦波電流波形に対して曲線901の重畳波形を重ね合わせることにより、曲線902の補正電流波形が得られる。励磁電流が増えることで、ピーク部の電流値をさらに増やす必要があることがわかる。
【0079】
マグネットトルクの非線形性を補償するための重畳波形(曲線801,901)は、正弦波電流波形(曲線800,900)のピーク部の振幅を増幅する波形を有している。
一つの具体例として、2相ハイブリッド型ステッピングモータに前述の補正を適用する場合について説明する。ハイブリッド型ステッピングモータでは、前述のリラクタンストルクを補正する電流補正によって低い振動レベルを達成できる。そして、さらにマグネットトルクの非線形項の補正のための電流補正を組み合わせれば、一層低い振動レベルを達成できる。
【0080】
図10は、2相ハイブリッド型ステッピングモータの構造例を説明するための斜視図である。ステッピングモータ1は、ステータ2と、ロータ3と、モータフランジ4と、ブラケット5と、一対の軸受6,7とを含む。
ステータ2は、ステータ鉄心21および巻線22を含む。ステータ鉄心21の両端にモータフランジ4およびブラケット5がそれぞれ固定され、これらがモータケース8を構成している。
【0081】
モータケース8の内部にロータ3が回転軸線10まわりに回転可能に配置されている。ロータ3は、回転軸線10に沿って配置された回転軸30と、回転軸30に支持されたロータ鉄心31とを含む。回転軸30は、一対の軸受6,7により回転自在に支持されている。一方の軸受6はモータフランジ4に装着されており、他方の軸受7はブラケット5に装着されている。
【0082】
図11は、ステータ2およびロータ3の構造を説明するための分解斜視図である。ロータ3は、回転軸線10に沿って配置された回転軸30(
図10参照)と、回転軸30に支持されたディスク状の永久磁石40と、永久磁石40の両側に固定された一対のロータセグメント(鉄心)41,42とを含む。永久磁石40は、回転軸線10に沿って磁化されている。この永久磁石40が一対のロータセグメント41,42によって挟持されている。
【0083】
各ロータセグメント41,42の周面には、多数(たとえば50個)の極歯(小歯。ロータ歯)33が回転軸線10周りの周方向11に沿って所定のロータ歯ピッチで等間隔に形成されている。各ロータ歯33は、回転軸線10に平行に延びる突条を形成している。ロータ歯33は、回転軸線10に対して若干傾斜した突条を成していてもよい。
一対のロータセグメント41,42は、実質的に同様の構成を有している。そして、ロータ歯ピッチの半分であるハーフピッチだけずらして、回転軸30に固定されている。したがって、回転軸線10に沿って見たときに、一方のロータセグメント41のロータ歯33の間に他方のロータセグメント42のロータ歯33が位置している。
【0084】
図12は、ステータ2(ステータ鉄心21)を回転軸線10に沿って見た構成を示す。ステータ2は、回転軸線10に沿ってみたときに、略四角形枠状に形成されている。ステータ2は、ロータ3が配置されるロータ収容空間32を中央に区画している。ロータ収容空間32は、回転軸線10を中心とした円筒形に形成されている。ステータ2は、枠状のバックヨーク27と、このバックヨーク27から回転軸線10に向かって突出した複数個(この例では8個)の主極28(磁極)とを有している。複数の主極28は、回転軸線10周りの周方向11に沿って間隔を空けて配置されている。各主極28は、回転軸線10に平行な突条を形成している。
【0085】
各主極28は、基端部がバックヨーク27と結合された支柱部28aと、支柱部28aの先端側に結合された対向部28bとを有している。対向部28bは、ロータ収容空間32に臨んでおり、すなわち、ロータ3に対向しており、支柱部28aに対して周方向11の両側に延びている。これにより、各主極28は、周方向11に隣接する他の主極28との間に巻線スロット29を形成している。これらの巻線スロット29に巻線22(
図10参照)が配置されている。より具体的には、各主極28に巻線22が巻装され、その巻線22は隣り合う主極28の間の巻線スロット29に収容されている。対向部28bは、ロータ3に対向する対向面を有している。この対向面には、回転軸線10に向かって突出した複数のステータ歯23(小歯)が形成されている。各ステータ歯23は回転軸線10に沿う突条からなる。複数のステータ歯23は、周方向11に沿って所定のステータ歯ピッチで等間隔に配置されている。ロータ歯33が回転軸線10に対して傾斜して配置される場合には、それに応じて、ステータ歯23も回転軸線10に対して傾斜して配置される。
【0086】
図13は、ステッピングモータの制御および駆動に関する電気的構成例を説明するためのブロック図である。直流電源50からの電力が駆動回路部55を介してステッピングモータ1に供給される。駆動回路部55は、モータ制御装置の一例であり、PWMインバータ51、電流検出器52および制御装置60を含む。PWMインバータ51は、直流電源50からの電力をステッピングモータ1に供給する。PWMインバータ51は、制御装置60によって制御される。PWMインバータ51は、ステッピングモータ1の複数相の巻線に対応した複数相のブリッジ回路511と、ブリッジ回路511を構成するスイッチング素子(パワーデバイス)をオン/オフするPWM(パルス幅変調)制御信号を生成するパルス幅変調パターン発生器512とを備えている。制御装置60は、PWMインバータ51に対して電圧指令を与える。パルス幅変調パターン発生器512は、電圧指令に応じたPWM制御信号を生成する。電流検出器52は、ステッピングモータ1の各相に流れる電流(モータ電流)を検出する。
【0087】
制御装置60は、電流検出器52の検出信号を監視して、ステッピングモータ1を定電流制御するように動作する。より詳しくは、制御装置60は、位置フィードバックおよび速度フィードバックのいずれも無いオープンループ定電流制御によって、ステッピングモータ1を駆動する。制御装置60は、典型的には、プロセッサ61(CPU)およびメモリ62を備えており、プロセッサ61がメモリ62に格納されたプログラムを実行することによって、複数の機能を実現するように構成されている。メモリ62は、一つまたは複数の記憶メディアで構成することができる。メモリ62は、書込み可能で、かつ電源遮断時にもデータ保持が可能な記憶メディアを含むことが好ましい。プロセッサ61は、メモリ62との間でデータのやり取りを行いながら、演算を行い、かつPWMインバータ51を制御するための電圧指令を生成する。プロセッサ61は、外部から与えられるか、または内部生成される駆動電流振幅指令および位置指令(または回転速度指令)に応じて、PWMインバータ51を制御して、当該駆動電流振幅指令および位置指令(または回転速度指令)に対応したステッピングモータ1の駆動を達成する。
【0088】
図14は、ステッピングモータの制御に関する制御装置60の制御ブロック例を示す。プロセッサ61がメモリ62に格納されたプログラムを実行することにより、
図14に示す複数のブロックの機能が実現される。それにより、制御装置60は、実質的に、基本正弦波発生器70、リラクタンストルク補正波形発生器71、マグネットトルク補正波形発生器72、係数設定器73、第1加算器76、第2加算器77、および電流フィードバック制御器78を含む。
【0089】
基本正弦波発生器70は、ステッピングモータ1を正弦波駆動するための基本正弦波(基本正弦波電流波形)を生成する。基本正弦波発生器70は、基本正弦波を生成するための基本波形を表すテーブルを備えていてもよく、このようなテーブルはメモリ62に格納しておくことができる。基本波形は、正弦波の波形を有している。基本波形に対して、係数設定器73が設定する基本正弦波係数を乗じることによって、基本正弦波が生成される。この基本正弦波は、
図5A、
図5B、
図8および
図9に曲線510,520,800,900として示した波形に相当する。基本正弦波発生器70は、位置指令(または回転速度指令)に基づいて周波数を決定し、その周波数の基本正弦波を生成する。
【0090】
リラクタンストルク補正波形発生器71は、リラクタンストルクに関する電流補正のためのリラクタンス補正波形を生成する。このリラクタンス補正波形は、
図5Aおよび
図5Bに曲線511,521として示した重畳波形である。リラクタンストルク補正波形発生器71は、重畳波形のための基本補正波形を表すテーブルを備えていてもよく、このようなテーブルはメモリ62に格納しておくことができる。基本補正波形に対して、係数設定器81が設定するリラクタンストルク補正係数を乗じることによって、前記重畳波形(曲線511,512)に相当するリラクタンストルク補正波形が生成される。リラクタンストルク補正波形発生器71は、位置指令(または回転速度指令)に基づいて周波数を決定し、その周波数のリラクタンストルク補正波形を生成する。
【0091】
マグネットトルク補正波形発生器72は、マグネットトルクの非線形項に関する電流補正のためのマグネットトルク補正波形を生成する。このマグネットトルク補正波形は、
図8および
図9に曲線801,901として示した重畳波形に相当する。マグネットトルク補正波形発生器72は、係数設定器81が設定するマグネットトルク補正係数に応じて、前記重畳波形(曲線801,901)に相当するマグネットトルク補正波形を生成する。マグネットトルク補正波形発生器72は、位置指令(または回転速度指令)に基づいて周波数を決定し、その周波数のマグネットトルク補正波形を生成する。
【0092】
係数設定器73は、駆動電流振幅指令に基づいて、様々な係数を生成する。具体的には、係数設定器73は、基本正弦波発生器70が生成する基本正弦波の振幅を定めるための基本正弦波係数を生成する。
係数設定器73は、さらに、駆動電流振幅指令に基づいて、リラクタンストル
ク補正波形発生器71が生成するリラクタンストルク補正波形の振幅を定めるためのリラクタンストルク補正係数を形成する。駆動電流振幅指令に基づいてリラクタンストルク補正係数が形成されることにより、モータ電流に応じて、リラクタンストルクの揺らぎの影響を低減するための適切なリラクタンストルク補正波形を生成できる。リラクタンストルク補正係数は、具体的には、(LΔ/MΔ-1)×√(α/LΔ)に相当する。(LΔ/MΔ-1)(上記式(22a)(23a)における(β-1)に相当)が掛けられることにより、インダクタンスの角度微分の振幅LΔおよびMΔの大小関係に応じて、リラクタンストルク補正係数の符号が反転する。たとえば、リラクタンストル
ク補正波形発生器71が、
図5Aおよび
図5Bの曲線511,521の重畳波形に相当する基本補正波形を生成する場合には、LΔ≧MΔのときに正のリラクタンストルク補正係数が生成され、LΔ<MΔのときに負のリラクタンストルク補正係数が生成される。
【0093】
インダクタンスの角度微分の振幅LΔおよびMΔは、モータ電流に依存して変動するが、電流に応じて変動する値は、個々のステッピングモータ1の設計によって定まる。したがって、モータ電流に応じて変動するLΔおよびMΔの値は、ステッピングモータ1の設計に基づく解析、またはステッピングモータ1を作製した後の測定に基づいて、予め求めることができる。その求められたLΔおよびMΔの値に基づいて、モータ電流に対して変動するリラクタンストルク補正係数の値を求めることができるので、それを予めテーブル化しておけばよい。それにより、モータ電流に対して適切に変化するリラクタンストルク補正係数を生成できる。もちろん、モータ電流に対するLΔおよびMΔのテーブルを作成しておき、そのテーブルに基づいて、駆動電流振幅指令(モータ電流と実質的に一致する)に対応するリラクタンストルク補正係数を演算によって求めてもよい。
【0094】
係数設定器73は、さらに、マグネットトルクの非線形項の補正のためのマグネットトルク補正係数を駆動電流振幅指令に基づいて生成する。具体的には、係数設定器73は、式(27),(28)のαおよびpをマグネットトルク補正係数として生成して、マグネットトルク補正波形発生器72に供給する。マグネットトルク補正波形発生器72は、供給されたマグネットトルク補正係数に基づいて、マグネットトルク補正波形(
図8および
図9の重畳波形801,901に相当)を生成する。
【0095】
基本正弦波発生器70が生成する基本正弦波に対して、リラクタンストルク補正波形およびマグネットトルク補正波形が、第1加算器76および第2加算器77でそれぞれ重ね合わせられて、制御電流波形が生成される。
図14の例では、基本正弦波に対してリラクタンストルク補正波形が重ね合わせられ、さらにその重ね合わせ後の波形にマグネットトルク補正波形が重ね合わせられているが、重ね合わせの順序を変えて、マグネットトルク補正波形を基本正弦波に重ね合わせた後に、リラクタンストルク補正波形を重ね合わせてもよい。むろん、リラクタンストルク補正波形とマグネット補正波形との重ね合わせを先に行い、さらに基本正弦波を重ね合わせてもよい。このように、基本正弦波発生器70、リラクタンストルク補正波形発生器71、マグネットトルク補正波形発生器72、係数設定器73、加算器76,77を含んで、制御電流波形生成手段が構成されている。
【0096】
電流フィードバック制御器78は、制御電流波形に応じた電圧指令を生成し、PWMインバータ51に供給する。より具体的には、電流フィードバック制御器78は、基本正弦波に補正波形が重畳された制御電流波形に従う指令電流と、電流検出器52によって検出される検出電流との差分を電圧指令にフィードバックすることで、定電流制御を行う。なお、ロータ回転座標系上や位置指令座標系上でのベクトル制御を行ってもよく、その場合には、基本正弦波および重畳波形は直流軸上で重畳されてもよい。
【0097】
PWMインバータ51に備えられたパルス幅変調パターン発生器512は、制御電流波形の各相電流をステッピングモータ1の各相の巻線に流すためのPWM制御信号(電流制御信号)を生成する電流制御信号生成手段の一例である。前記PWM制御信号によって、PWMインバータ51のブリッジ回路511に備えられたスイッチング素子が制御される。
【0098】
なお、マグネットトルクの非線形項に関する電流補正の特徴は、省かれてもよい。この場合には、
図14の構成において、マグネットトルク補正波形発生器72および第2加算器77が省かれ、第1加算器76での加算結果が電流フィードバック制御器78にそのまま(または必要な修正を加えて)供給されてもよい。
図10~
図15に示した構成における回転振動の計測例を
図15および
図16に示す。計測対象のステッピングモータ1は、取付角寸法28mm、モータ長32mm、励磁最大静止トルク0.1N・m、ロータ慣性モーメント9.2×10
-7kg・m
2、ロータ歯数50枚の2相ハイブリッド型ステッピングモータである。
図15の曲線150は、前述のリラクタンストルクおよびマグネットトルクに関する電流補正を行わなかった場合における回転速度と回転振動レベルとの関係を示す。
図15の曲線151は、前述のリラクタンストルクおよびマグネットトルクに関する電流補正を行った場合の回転速度と回転振動レベルとの関係を示す。
図16の曲線161,162はいずれも前述の電流補正を行った場合の回転速度と回転振動レベルとの関係を示し、曲線161は定格電流で運転した場合の測定結果を示し、曲線162は運転電流を定格電流の50%とした場合の測定結果を示す。
【0099】
図15の曲線150で示す補正無しの場合では、回転速度が60rpmおよび120rpm付近での回転振動が大きいことがわかる。このときの振動の周波数成分は200Hzがピークとなり、これがロータの固有振動数である。回転速度が60rpmのとき、モータ電流基本波の周波数は50Hzであり、回転速度が120rpmのときは、モータ電流基本波の周波数は100Hzとなる。60rpm付近の振動は電流基本波の周波数がロータの固有振動数の4分の1(4次振動)になったときに発生していることが分かる。また、120rpm付近の振動は電流基本波の周波数がロータの固有振動の2分の1(2次振動)になったときに発生していることがわかる。
【0100】
図15の曲線151に表れているように、電流補正をかけることにより、回転振動レベルが大幅に低減していることがわかる。また、
図16に示すように、運転電流に応じて電流補正値を変えることにより、運転電流が変わっても振動が低減されていることがわかる。
別の具体例として、スロットマグネット型ステッピングモータに前述の補正を適用する場合について説明する。スロットマグネット型ステッピングモータでは、前述のリラクタンストルクを補正する電流補正によって低い振動レベルを達成できる。マグネットトルクの非線形項の補正のための電流補正は、スロットマグネット型ステッピングモータでは、必ずしも必要ではなく、これを省略しても、低い振動レベルを達成できる。
【0101】
図17は、スロットマグネット型ステッピングモータの構造例を示す。便宜上、
図10等に示した構成の対応部分に同一参照符号を用いるが、これは同一参照符号の各部が実質的に同一であることを意味するものではない。
ステッピングモータ1は、ステータ2と、ロータ3と、モータフランジ4と、ブラケット5と、一対の軸受6,7とを含む。
【0102】
ステータ2は、ステータ鉄心21および巻線22を含む。ステータ鉄心21の両端にモータフランジ4およびブラケット5がそれぞれ固定され、これらがモータケース8を構成している。
モータケース8の内部にロータ3が回転軸線10まわりに回転可能に配置されている。ロータ3は、回転軸線10に沿って配置された回転軸30と、回転軸30に支持されたロータ鉄心31とを含む。回転軸30は、一対の軸受6,7により回転自在に支持されている。一方の軸受6はモータフランジ4に装着されており、他方の軸受7はブラケット5に装着されている。
【0103】
図18は、ステータ2およびロータ3の構造を説明するための分解斜視図である。
ロータ鉄心31の外周面には、所定の歯ピッチでロータ歯33が周方向11に等間隔に形成されている。各ロータ歯33は、回転軸線10に平行に延びている。ただし、ロータ歯33は、回転軸線10に対して傾斜していてもよい。
隣接するロータ歯33の間にロータスロット34が形成されている。ロータスロット34内には、ロータスロットマグネット35が挿入されている。ロータスロットマグネット35は、ロータスロット34に沿って棒状に延びた硬磁性挿入物(典型的には永久磁石片)である。ロータスロットマグネット35は、たとえば接着剤でロータスロット34内に固定されている。
【0104】
ステータ鉄心21は、枠状のバックヨーク27と、複数の主極28とを備えている。複数の主極28は、バックヨーク27からロータ鉄心31に向かって延びており、ロータ鉄心31を取り囲むように周方向11に間隔を空けて配置されている。それにより、複数の主極28は、回転軸線10を中心とした略円筒状のロータ収容空間32を区画している。各主極28に巻線22(
図17参照。
図18では図示省略)が巻回されている。
【0105】
各主極28は、バックヨーク27と結合された支柱部28aと、支柱部28aの先端側に結合された対向部28bとを有している。対向部28bは、ロータ収容空間32に臨んでおり、したがって、ロータ鉄心31に対向している。対向部28bは、支柱部28aに対して周方向11の両側に延びている。これにより、各主極28は、周方向11に隣接する他の主極28との間に巻線スロット29を形成している。これらの巻線スロット29に巻線22が配置されている。対向部28bは、ロータ鉄心31に対向する対向面を有している。この対向面には、回転軸線10に向かって突出した複数のステータ歯23が形成されている。複数のステータ歯23は、周方向11に沿って、所定の歯ピッチで等間隔に配置されている。各ステータ歯23は、ロータ歯33と整合するように、回転軸線10に沿って延びている。ロータ歯33が回転軸線10に対して傾斜して配置される場合には、それに応じて、ステータ歯23も回転軸線10に対して傾斜して配置される。
【0106】
隣接するステータ歯23の間には、ステータスロット24が形成されている。ステータスロット24内には、ステータスロットマグネット25が挿入されている。ステータスロットマグネット25は、ステータスロット24に沿って棒状に延びた硬磁性挿入物(典型的には永久磁石片)である。ステータスロットマグネット25は、たとえば接着剤でステータスロット24内に固定されている。
【0107】
ロータスロットマグネット35およびステータスロットマグネット25は、回転軸線10からの放射方向に磁化されている。回転軸線10からの放射方向とは、回転軸線10に直交する方向をいう。ロータスロットマグネット35は、したがって、ロータスロット34の深さ方向に磁化されている。また、ステータスロットマグネット25は、ステータスロット24の深さ方向に磁化されている。回転軸線10からの放射方向に関して、ロータスロットマグネット35の磁化方向とステータスロットマグネット25の磁化方向とは同方向である。したがって、ロータスロットマグネット35とステータスロットマグネット25とが対向するとき、互いに対向するロータスロットマグネット35の磁極とステータスロットマグネット25の磁極とは、逆極性の磁極である。
【0108】
図19は、ロータ歯33とステータ歯23とを拡大して示す部分拡大断面図である。
ロータ歯33は、移動方向である周方向11を横切る交差方向に延びる突条である。ロータ歯33は、回転軸線10に直交する切断面内において略一定の幅で放射方向に沿って外方(回転軸線10から離反する方向)に向かって突出している。ロータ歯33は、回転軸線10から離れる方向に向いた頂面33aを有している。頂面33aは、回転軸線10のまわりの周方向11に沿っている。回転軸線10に直交する切断面内において、複数のロータ歯33は実質的に合同な断面形状を有しており、一定のロータ歯ピッチPrで等間隔に配置されている。隣接するロータ歯33の間に形成されるロータスロット34は、それらのロータ歯33によってそれぞれ規定される一対の互いにほぼ平行な側面34b,34cと、それらの側面34b,34cの間に形成された底面34aとによって規定され、略矩形の断面形状を有している。底面34aは、回転軸線10まわりの周方向11に沿っている。ロータスロット34の底面34aからロータ歯33の頂面33aまでの距離、すなわち、ロータ歯33の高さを「ロータ歯丈Hr」という。
【0109】
ロータスロットマグネット35は、硬磁性材料からなり、回転軸線10に沿って延びる棒状の挿入物(典型的には永久磁石片)である。この実施形態では、ロータスロットマグネット35は、回転軸線10に直交する断面が略矩形である。ロータスロットマグネット35は、ロータスロット34の底面34aに対向する底面35aと、底面35aに対して回転軸線10とは反対側に位置する頂面35d(対向面)と、それらの間に形成された一対の側面35b,35cとを有している。底面35aおよび頂面35dと側面35b,35cとの間は、円弧状断面をなす曲面で面取りされている。ロータスロットマグネット35の底面35aは、たとえば接着剤によって、ロータスロット34の底面34aに結合(固定)されている。
【0110】
ロータスロットマグネット35の頂面35dは、ステータ2に対向する対向面である。この実施形態では、頂面35dは、複数のロータ歯33の外周面(頂面33a)を連ねて規定される仮想円筒面よりも回転軸線10側に後退した位置にある。すなわち、底面35aと頂面35dとの間の距離である磁石厚(ロータ磁石厚)MTrは、ロータスロット34の深さ(=ロータ歯丈Hr)よりも小さい。それにより、ロータスロットマグネット35の全体が、ロータスロット34内に収容されている。頂面35dは、当該仮想円筒面に実質的に平行である。厳密には、頂面35dは平面であってもよく、この平面は、対応するロータスロット34の開口縁を繋いでできる平面と平行であってもよい。この実施形態では、複数のロータスロット34にそれぞれ挿入される複数のロータスロットマグネット35は、実質的に同形同大である。
【0111】
ステータ歯23は、移動方向である周方向11を横切る交差方向に延びる突条である。ステータ歯23は、ロータ歯33に平行に延びている。ステータ歯23は、回転軸線10に直交する切断面内において略一定の幅で放射方向に沿って内方(回転軸線10に近づく方向)に向かって突出している。ステータ歯23は、回転軸線10側に向いた頂面23aを有している。頂面23aは、回転軸線10のまわりの周方向11に沿っている。回転軸線10に直交する切断面内において、複数のステータ歯23は実質的に合同な断面形状を有しており、一定のステータ歯ピッチPsで等間隔に配置されている。隣接するステータ歯23の間に形成されるステータスロット24は、それらのステータ歯23によってそれぞれ規定される一対の互いにほぼ平行な側面24b,24cと、それらの側面24b,24cの間に形成された底面24aとによって規定され、略矩形の断面形状を有している。底面24aは、回転軸線10まわりの周方向11に沿っている。ステータスロット24の底面24aからステータ歯23の頂面23aまでの距離、すなわち、ステータ歯23の高さを「ステータ歯丈Hs」という。
【0112】
ステータスロットマグネット25は、硬磁性材料からなり、回転軸線10に沿って延びる棒状の挿入物(典型的には永久磁石片)である。この実施形態では、ステータスロットマグネット25は、回転軸線10に直交する断面が略矩形である。ステータスロットマグネット25は、ステータスロット24の底面24aに対向する底面25aと、底面25aに対して回転軸線10側に位置する頂面25d(対向面)と、それらの間に形成された一対の側面25b,25cとを有している。底面25aおよび頂面25dと側面25b,25cとの間は、円弧状断面をなす曲面で面取りされている。ステータスロットマグネット25の底面25aは、たとえば接着剤によって、ステータスロット24の底面24aに結合(固定)されている。
【0113】
ステータスロットマグネット25の頂面25dは、ロータ3に対向する対向面である。この実施形態では、頂面25dは、複数のステータ歯23の内周面(頂面23a)を連ねて規定される仮想円筒面よりも回転軸線10から離れる方向に後退した位置にある。すなわち、底面25aと頂面25dとの間の距離である磁石厚(ステータ磁石厚)MTsは、ステータスロット24の深さ(=ステータ歯丈Hs)よりも小さい。それにより、ステータスロットマグネット25の全体が、ステータスロット24内に収容されている。頂面25dは、当該仮想円筒面に実質的に平行である。厳密には、頂面25dは平面であってもよく、この平面は、対応するステータスロット24の開口縁を繋いでできる平面と平行であってもよい。この実施形態では、複数のステータスロット24にそれぞれ挿入される複数のステータスロットマグネット25は、実質的に同形同大である。
【0114】
ロータスロットマグネット35およびステータスロットマグネット25は、実質的に、同形同大であってもよい。
ロータ歯33とステータ歯23とが対向するとき、それらの間には、それらの対向方向、すなわち放射方向(スロット34,24の深さ方向)に関して一定のギャップ(隙間)が形成される。このギャップを「鉄ギャップΔF」という。ロータスロット34とステータスロット24とが対向するとき、ロータスロットマグネット35とステータスロットマグネット25との間に、それらの対向方向、すなわち放射方向(スロット34,24の深さ方向)に関して一定のギャップが形成される。このギャップを「磁石ギャップΔM」という。
【0115】
スロットマグネット型ステッピングモータは、通常、ハイブリッド型ステッピングモータと比べて保持トルクが大幅に向上する。その一方、自己インダクタンスと相互インダクタンスとの比が磁石の形状や配置に依存して大きく変わることで、回転振動と静止角度誤差が悪化する。とくに、ステータ2とロータ3(ロータコア)との間のエアギャップである鉄ギャップΔF(鉄間ギャップ)に対する、ステータスロットマグネット25とロータスロットマグネット35との間のエアギャップである磁石ギャップΔM(磁石間ギャップ)の比(以下「ギャップ比ΔM/ΔF」という。)が大きく作用する。
【0116】
図20Aおよび
図20Bは、スロットマグネット型ステッピングモータのθ-T波形を磁気解析で得た結果である。電流について正弦波を仮定し、特定の電気角π/8,π/4,3π/8で励磁したときのトルクのロータ角度依存性を求めた。
図20Aおよび
図20Bでは、波形の揺らぎを視覚的にわかりやすくするため、トルクのゼロ点を電気角度のゼロ点に合わせて表してある。解析対象は、取付角寸法60mm、モータ長40mm、ロータ慣性モーメント370×10
ー7kg・m
2、ロータ歯数50枚の2相スロットマグネット型ステッピングモータとした。スロットマグネット型モータは磁石厚MTr,MTsを変えることで、特性の大きく異なる2つのモータを対象とした。一つは、ギャップ比ΔM/ΔFが4倍のものであり、その特性を
図20Aに特性を示す、もう一つは、ギャップ比ΔM/ΔFが8倍のものであり、その特性を
図20Bに示す。前者は保持トルクが2.0N・mであり、後者は1.3N・mである。同体格のハイブリッド型ステッピングモータの保持トルクは、たとえば1.1N・mである。
【0117】
図20Aおよび
図20Bの比較から、ギャップ比ΔM/ΔFが8倍のスロットマグネット型モータでは、励磁する位相によって波形の揺らぎ方が大きく異なっていることがわかる。これが回転振動の増加と静止角度誤差の悪化を招く。
図21Aは、ギャップ比ΔM/ΔFが4倍のスロットマグネット型モータについて、無励磁状態でロータをゆっくり回転したときの自己インダクタンスLおよび相互インダクタンスMの解析結果を示す。
図21Bは、同じモータについて、d軸電流を定格電流値とし、q軸電流をゼロとした状態で、ロータをゆっくり回転したときの自己インダクタンスLおよび相互インダクタンスMの解析結果を示す。
図22Aは、
図20A(無励磁状態)に対応するトルクの解析結果を示す。また、
図22Bは、
図20B(d軸定格電流励磁)に対応するトルクの解析結果を示す。無励磁時(
図22A)のトルクは、ディテントトルクとなる。
【0118】
図21Aおよび
図21Bから、自己インダクタンスLおよび相互インダクタンスMは、1電気角について2θの角度依存性を持ち、とくに定格電流でd軸励磁した場合は、無励磁時と比べて相互インダクタンスMの振幅が大きくなることがわかる。インダクタンスL,Mの角度微分値がリラクタンストルクに比例するが、インダクタンスL,Mが正弦波と見なせる場合は、インダクタンスL,Mの振幅は、それらの角度微分値の振幅と概ね等しい。すなわち、概ね、インダクタンス自体の振幅がリラクタンストルクに作用すると考えてよい。そこで、式(6)で用いるLΔおよびMΔには、自己インダクタンスLの振幅および相互インダクタンスMの振幅の値をそれぞれ用いる。
図22Bから、定格電流励磁時にトルクリップルが発生していることがわかる。これは
図20Aおよび
図20Bにおいて、理想的な安定点でのトルクがゼロでないことに対応し、これが加振力となる。
【0119】
図23Aは、ギャップ比ΔM/ΔFが8倍のスロットマグネット型モータについて、無励磁状態でロータをゆっくり回転したときの自己インダクタンスLおよび相互インダクタンスMを解析した結果を示す。
図23Bは、同じモータについて、d軸電流を定格電流値とし、q軸電流をゼロとした状態でロータをゆっくり回転したときの自己インダクタンスLおよび相互インダクタンスMの解析結果を示す。
図24Aは、
図23A(無励磁状態)に対応するトルクの解析結果を示す。また、
図24Bは、
図23B(d軸定格電流励磁)に対応するトルクの解析結果を示す。無励磁時(
図24A)のトルクは、ディテントトルクとなる。
【0120】
ギャップ比ΔM/ΔFが4倍のスロットマグネット型モータと比べて、無励磁時の自己インダクタンスLと相互インダクタンスMの比が大きく異なることがわかる。ディテントトルクはギャップ比ΔM/ΔFが4倍のモータと比べて小さいが、励磁時のトルクリップルは2倍程度となる。これは理想的な正弦波で駆動した場合に、ギャップ比ΔM/ΔFが8倍のモータの方が、振動が大きいことを示唆する。また、ディテントトルクが回転振動に直接的な影響を及ぼしていないことも示唆する。
【0121】
d軸を定格電流で励磁するときのA相正弦波電流およびB相正弦波電流は、
図25のとおりである。ギャップ比ΔM/ΔFが8倍のスロットマグネット型モータのインダクタンスの解析結果(
図23B)から角度微分値を求めると、
図26に示すように、A相自己インダクタンスL
Aの角度微分値dL
A/dθ、B相自己インダクタンスL
Bの角度微分値dL
B/dθ、および相互インダクタンスMの角度微分値dM/dθが得られる。これに基づき、式(4)よりリラクタンストルクT
rを求め、トルク解析結果(
図24B)と比較すると、
図27のとおりである。式(4)より計算した値と、トルク解析結果とは、絶対値も含めてほぼ一致することがわかる。これにより、トルクリップルの成分は、リラクタンストルクによるものと言える。
【0122】
現実的には
図23Bのように、インダクタンスL,Mは、モータに依存して、幾分かの高調波を含む波形となる。
図23Bの場合では、自己インダクタンスLは当該自己インダクタンスLの周期の2倍周期の高調波成分を含む波形となっており、相互インダクタンスMは当該相互インダクタンスMの周期の3倍周期の高調波成分を含む波形となっている。このような高調波成分によって、インダクタンスL,Mの角度微分波形も正弦波から崩れることになる。したがって、式(17),(18)において、高調波の含まれ方によっては、インダクタンスの角度微分の振幅LΔ,MΔ(すなわち、係数A
1,A
2)と高調波電流位相成分のδ
1,δ
2とを実効的に変えることが望ましい。より具体的には、基本正弦波に対してリラクタンストルク補正波形の位相を完全に一致させるよりも、幾分かの微小な位相ずれを設定した状態での位相整合の方が、より優れた振動抑制効果を得られる場合がある。
【0123】
スロットマグネット型ステッピングモータを駆動するための電気的構成は、ハイブリッド型ステッピングモータの場合と同様であり、
図13および
図14に示したとおりである。スロットマグネット型ステッピングモータにおいても、ハイブリッド型ステッピングモータの場合と同様に、リラクタンストルクに関する電流補正、およびマグネットトルクの非線形項に関する電流補正を行うことにより、振動を低減できる。ただし、マグネットトルクの非線形項に関する電流補正は、ハイブリッド型ステッピングモータに比較すると、必要性は少ないので、この補正は省いてもよい。
【0124】
回転振動の計測例を
図28および
図29に示す。計測対象のステッピングモータ1は、取付角寸法60mm、モータ長40mm、ロータ慣性モーメント370×10
-7kg・m
2、ロータ歯数50枚の2相スロットマグネット型ステッピングモータ(
図18~
図19参照)、および同体格のハイブリッド型ステッピングモータ(
図10~
図12参照)である。2相スロットマグネット型ステッピングモータについては、ギャップ比ΔM/ΔFが4倍のもの、およびギャップ比ΔM/ΔFが8倍のものについての計測結果を示す。
【0125】
図28は、前述のリラクタンストルクおよびマグネットトルクに関する電流補正を行わなかった場合(無補正の正弦波で駆動した場合)における回転速度と回転振動レベルとの関係を示す。
図29は、前述のリラクタンストルクに関する電流補正を行い、マグネットトルクに関する電流補正を省いた場合の回転速度と回転振動レベルとの関係を示す。
図30には、ギャップ比ΔM/ΔFが8倍のスロットマグネット型ステッピングモータについてのモータ電流の実測値を示す。
図30には、補正前の基本電流波形(正弦波。
図5Aおよび
図5Bの曲線510,520に対応)、これに重畳するリラクタンストルク補正電流波形(
図5Aおよび
図5Bの曲線511,521に対応)、および補正後の電流波形(
図5Aおよび
図5Bの曲線512,522に対応)を示す。補正後の電流波形は、基本電流波形にリラクタンストルク補正電流波形を重畳して得られる波形である。ただし、リラクタンストルク補正電流波形は、モータ電流に応じて振幅を調整して重畳されている。
【0126】
無補正の正弦波電流で駆動する場合(
図28)は、ギャップ比ΔM/ΔFが4倍および8倍のスロットマグネット型ステッピングモータ、ならびにハイブリッド型ステッピングモータのいずれにおいても、二次および四次の回転振動が顕著に表れている。それに対して、電流補正を行った場合(
図29)には、いずれのモータにおいても、振動が大きく低減していることが分かる。
【0127】
図31Aおよび
図31Bは、ギャップ比ΔM/ΔFが4倍のスロットマグネット型モータをフルステップ駆動(1.8°/パルス)したときの静止角度誤差の測定結果である。
図31Aは、停止電流を定格電流とした場合の測定結果を示し、
図31Bは、停止電流を定格電流の50%とした場合の測定結果を示す。各図において、前述のリラクタンストルクに関する電流補正を行った場合および行わなかった場合のそれぞれの測定結果を示す。従来、フルステップ駆動の静止角度誤差は小歯の機械精度で決まると考えられていた。しかし、リラクタンストルクを考えると、この限りではなく、フルステップ駆動時の静止角度誤差も電流補正によって改善することができる。また、
図31Aおよび
図31Bから、停止電流が異なっても電流補正による静止角度誤差改善の効果が得られることに変わりがないことが分かる。
【0128】
図32Aおよび
図32Bは、マイクロステップ駆動(0.36°/パルス)でスロットマグネット型ステッピングモータを駆動したときの静止角度誤差の測定結果である。
図32Aは、停止電流を定格電流とした場合の測定結果を示し、
図32Bは、停止電流を定格電流の50%とした場合の測定結果を示す。各図において、前述のリラクタンストルクに関する電流補正を行った場合および行わなかった場合のそれぞれの測定結果を示す。マイクロステップ駆動の場合でも電流補正の効果があり、停止電流を変えても静止角度誤差改善の効果が保たれることが分かる。
【0129】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することができる。たとえば、前述の実施形態では、ステッピングモータの例について主として説明したが、この発明は、表面磁石型モータや埋込磁石型モータなどの他の形態の2相同期型モータにも適用できる。
また、前述の実施形態では、リラクタンストルクの揺らぎに関する電流補正と、マグネットトルクの非線形性に関する電流補正とを行う例について主として説明したが、マグネットトルクの非線形性に関する電流補正を省いても、振動低減効果を達成できる。また、リラクタンストルクの揺らぎに関する電流補正を省いて、マグネットトルクの非線形性に関する電流補正だけを行っても、一定の振動低減効果を達成することができる。
【0130】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
以下に、マグネットトルクの非線形性の補正に関して、この明細書および添付図面から抽出され得る特徴を付記する。
1.2相同期型モータを駆動するためのモータ制御装置であって、
基本正弦波と、前記2相同期型モータのマグネットトルクの電流に対する非線形性を補償するためのマグネットトルク補正波形とを重ね合わせて得られる制御電流波形を生成する制御電流波形生成手段と、
前記制御電流波形生成手段が生成する制御電流波形に従って前記2相同期型モータの巻線に電流を供給するための電流制御信号を発生する電流制御信号生成手段と、
を含む、モータ制御装置。
【0131】
2.前記マグネットトルク補正波形が、前記2相同期型モータに供給されるモータ電流に応じて変化する波形である、項1に記載のモータ制御装置
3.前記マグネットトルク補正波形が、前記基本正弦波に重畳されたときに当該基本正弦波のピーク部の振幅を増幅する波形を有している、項1または2に記載のモータ制御装置。
【0132】
4.前記2相同期型モータが、ステッピングモータである、項1~3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
5.前記ステッピングモータが、ハイブリッド型またはスロットマグネット型である、項4に記載のモータ制御装置。
【符号の説明】
【0133】
1 ステッピングモータ
2 ステータ
3 ロータ
21 ステータ鉄心
22 巻線
23 ステータ歯
24 ステータスロット
25 ステータスロットマグネット
28 主極
29 巻線スロット
30 回転軸
31 ロータ鉄心
33 ロータ歯
34 ロータスロット
35 ロータスロットマグネット
40 永久磁石
41 ロータセグメント
42 ロータセグメント
50 直流電源
51 PWMインバータ
512 パルス幅変調パターン発生器
52 電流検出器
55 駆動回路部
60 制御装置
70 基本正弦波発生器
71 リラクタンストルク補正波形発生器
72 マグネットトルク補正波形発生器
73 係数設定器
76 第1加算器
77 第2加算器
78 電流フィードバック制御器
Hr ロータ歯丈
MTr ロータ磁石厚
Hs ステータ歯丈
MTs ステータ磁石厚
ΔF 鉄ギャップ
ΔM 磁石ギャップ