(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】施工支援システム
(51)【国際特許分類】
B63C 11/26 20060101AFI20230607BHJP
E02D 23/02 20060101ALI20230607BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20230607BHJP
【FI】
B63C11/26
E02D23/02 F
G06T19/00 600
(21)【出願番号】P 2020102375
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】草刈 成直
(72)【発明者】
【氏名】梅津 順一
(72)【発明者】
【氏名】中川 哲也
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-352224(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200744(JP,U)
【文献】特許第6256831(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/139102(WO,A1)
【文献】特開平06-307853(JP,A)
【文献】特開2018-104933(JP,A)
【文献】特開2020-027325(JP,A)
【文献】特開2011-007038(JP,A)
【文献】特開2018-124843(JP,A)
【文献】特開平06-317090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/26
E02D 23/00-23/16
E02B 3/00- 3/28
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中或いは水上での施工を支援するためのシステムであって、
施工箇所ないしその周辺を撮影するための撮影手段と、
該撮影手段の撮影方向を計測する方位計測手段と、
予め或いは随時設定される設計関連データと前記撮影手段及び前記方位計測手段から取得するデータとに基づいて演算を行う処理制御手段と、
該処理制御手段から出力されるデータを表示するための表示手段と、を含み、
前記処理制御手段は、前記撮影手段により撮影される映像データに拡張データを重ねた拡張映像データを、前記表示手段へ出力し、
前記撮影手段は、水上の施工箇所ないしその周辺を撮影する赤外線カメラであり、
前記処理制御手段は、水上への範囲提示のための拡張データと、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データとを算出して前記拡張映像データへ反映し、
前記範囲提示のための拡張データが、浚渫工事の施工範囲を示すものであり、前記設計数値を示す拡張データが、浚渫箇所の端部に設けられる勾配の大きさを示すものであることを特徴とする施工支援システム。
【請求項2】
前記方位計測手段が、GNSS方位計であることを特徴とする請求項
1記載の施工支援システム。
【請求項3】
前記処理制御手段は、入力されたデータ及び/又は演算したデータの少なくとも一部をクラウドへアップロードすることを特徴とする請求項1
又は2記載の施工支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中或いは水上での施工を支援するための施工支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、捨石均しやブロック据付などの水中作業における状況の把握は、潜水士と世話役との音声通信に基づいて監督員により行われる。又、水上作業において、周辺の状況把握や危険エリアへの侵入防止の判断などは、見張員の報告に基づいて船長や監督員によって行われる。なお、陸上での土木工事や建築工事などに係る作業については、施工状況を計測して把握する種々のシステムが発案されており、これらのシステムによって施工管理の補助が行われる(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104933号公報
【文献】特開2018-124843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、水中や水上の作業において、潜水士や見張員から報告される情報に基づいて状況判断を行うためには、正確な情報が正確に伝達される必要がある。しかしながら、濁りが発生する水中や視界不良の水上では、状況を正確に把握することが困難であり、又、音声のみで情報を正確に伝達することも困難である。これに起因して、作業効率や安全性が低下してしまうことが懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水中或いは水上施工における作業効率及び安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)水中或いは水上での施工を支援するためのシステムであって、施工箇所ないしその周辺を撮影するための撮影手段と、該撮影手段の撮影方向を計測する方位計測手段と、予め或いは随時設定される設計関連データと前記撮影手段及び前記方位計測手段から取得するデータとに基づいて演算を行う処理制御手段と、該処理制御手段から出力されるデータを表示するための表示手段と、を含み、前記処理制御手段は、前記撮影手段により撮影される映像データに拡張データを重ねた拡張映像データを、前記表示手段へ出力する施工支援システム。
【0007】
本項に記載の施工支援システムは、水中施工や水上施工を支援するものであって、撮影手段、方位計測手段、処理制御手段、及び表示手段を含んでいる。撮影手段は、水中或いは水上の施工箇所やその周辺を撮影するものであり、この撮影手段によって撮影される方向が、方位計測手段によって常に計測される。処理制御手段は、予め或いは随時設定される、施工内容に応じた設計関連データと、撮影手段及び方位計測手段から取得する、映像データ及びその方向を示すデータとに基づいて、様々な演算を行うものである。そして、表示手段は、処理制御手段から出力されるデータを表示するものであり、この表示手段に表示させるものとして、処理制御手段は、拡張映像データを表示手段へ出力する。
【0008】
すなわち、処理制御手段は、撮影手段の映像データそのものや、その映像データの方向を示すデータなどから、撮影手段によって撮影されている位置(映像に写っている位置)を算出する。そして、設計関連データに含まれている情報のうち、算出した位置に関連する情報を、撮影手段の映像データに重ねて表示する視認可能な拡張データへと加工し、その拡張データを映像データに重ねた拡張映像データを、表示手段に対して出力する。これにより、設計関連データに含まれる様々な情報が、撮影手段により撮影される実際の映像に重ねられて、その映像内に実際に存在するかの如く表示される。このため、例えばソナーを用いる場合などと比較して、施工箇所やその周辺の状況が、より現実に近く直感的に把握し易い形式で提供されるものとなる。従って、作業状況や周辺状況などが正確に把握されるものとなり、作業効率や安全性が向上するものとなる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記撮影手段は、水中の施工箇所ないしその周辺を撮影する水中カメラであり、前記処理制御手段は、物体を目標位置へ誘導するための拡張データを算出して前記拡張映像データへ反映する施工支援システム。
本項に記載の施工支援システムは、主に水中での施工に用いられるものであって、撮影手段として、水中の施工箇所ないしその周辺を撮影する水中カメラが利用される。そして、処理制御手段は、その水中カメラによって撮影された映像に重ね合わせるための拡張データとして、物体を目標位置へ誘導するための拡張データを、設計関連データに基づいて算出する。物体を目標位置へ誘導するための拡張データとは、例えばブロックなどの吊荷を据え付ける際に、設計関連データに含まれる据え付けの目標位置へ物体を誘導するために、矢印や目標位置などを水中の映像に重ねて表示するための拡張データである。これにより、単なる水中カメラの映像では濁りなどの影響で把握し難かった水中の状況が、従来からの潜水士による音声での報告に加えて、上記のような拡張データが重ねられた水中カメラの映像によっても伝達されるため、より正確に把握されるものとなる。更に、水中の状況の把握だけでなく、物体の誘導にも利用されるため、施工精度の向上も期待されるものとなる。
【0010】
(3)上記(1)項において、前記撮影手段は、水中の施工箇所ないしその周辺を撮影する水中カメラであり、前記処理制御手段は、水底への範囲提示のための拡張データと、水底の形状に係る拡張データと、物体を目標位置へ誘導するための拡張データと、水底に構築する構造物の完成形状を示す拡張データとのうち、少なくとも1つを算出して前記拡張映像データへ反映する施工支援システム。
本項に記載の施工支援システムは、主に水中での施工に用いられるものであって、撮影手段として、水中の施工箇所ないしその周辺を撮影する水中カメラが利用される。そして、処理制御手段は、その水中カメラによって撮影された映像に重ね合わせるための様々な拡張データを、設計関連データに基づいて算出する。そのような拡張データに、水底への範囲提示のための拡張データ、水底の形状に係る拡張データ、物体を目標位置へ誘導するための拡張データ、及び、水底に構築する構造物の完成形状を示す拡張データが含まれるものである。
水底への範囲提示のための拡張データとは、設計関連データに含まれる施工範囲や検査範囲などの範囲を示す情報を、着色や枠表示などを用いて水底の映像に重ねて表示するための拡張データである。水底の形状に係る拡張データとは、設計関連データに含まれる事前測量の結果などに基づいて、例えばコンター図のような形状に係る情報を、水底の映像に重ねて表示するための拡張データである。物体を目標位置へ誘導するための拡張データとは、例えばブロックなどの吊荷を据え付ける際に、設計関連データに含まれる据え付けの目標位置へ物体を誘導するために、矢印や目標位置などを水中の映像に重ねて表示するための拡張データである。水底に構築する構造物の完成形状を示す拡張データとは、設計関連データに含まれている、水底に構築する予定の構造物の完成形状を示す映像を、水底の映像に重ねて表示するための拡張データである。これにより、単なる水中カメラの映像では濁りなどの影響で把握し難かった水中の状況が、従来からの潜水士による音声での報告に加えて、上記のような様々な拡張データが重ねられた水中カメラの映像によっても伝達されるため、より正確に把握されるものとなる。更に、拡張データの内容に応じて、水中の状況の把握だけでなく、物体の誘導などにも利用されるため、施工精度の向上も期待されるものとなる。
【0011】
(4)上記(1)項において、前記撮影手段は、水上の施工箇所ないしその周辺を撮影する赤外線カメラであり、前記処理制御手段は、水上への範囲提示のための拡張データと、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データとを算出して前記拡張映像データへ反映し、前記範囲提示のための拡張データが、浚渫工事の施工範囲を示すものであり、前記設計数値を示す拡張データが、浚渫箇所の端部に設けられる勾配の大きさを示すものである施工支援システム(請求項1)。
本項に記載の施工支援システムは、特に夜間などの視界が悪い環境における水上での施工に用いられるものであって、撮影手段として、水上の施工箇所ないしその周辺を撮影する赤外線カメラが利用される。そして、処理制御手段は、その赤外線カメラによって撮影された映像に重ね合わせるための拡張データとして、水上への範囲提示のための拡張データと、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データとを、設計関連データに基づいて算出する。そして、本項に記載の施工支援システムは、浚渫工事に適用されるものであって、水上への範囲提示のための拡張データが、浚渫工事の施工範囲を水上へと示すものであり、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データが、浚渫箇所の端部に設けられる勾配の大きさを示すものである。これにより、赤外線カメラで撮影された映像に重ねて、浚渫工事の施工範囲と共に、勾配の大きさが提示されるため、夜間などの視界が悪い環境下での作業であっても、浚渫工事が効率よく行われるものとなる。
【0012】
(5)上記(1)項において、前記撮影手段は、水上の施工箇所ないしその周辺を撮影する赤外線カメラであり、前記処理制御手段は、水上への範囲提示のための拡張データと、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データと、水上の障害物を提示する拡張データと、工事用の船舶を施工箇所まで案内するための拡張データとのうち、少なくとも1つを算出して前記拡張映像データへ反映する施工支援システム。
本項に記載の施工支援システムは、特に夜間などの視界が悪い環境における水上での施工に用いられるものであって、撮影手段として、水上の施工箇所ないしその周辺を撮影する赤外線カメラが利用される。そして、処理制御手段は、その赤外線カメラによって撮影された映像に重ね合わせるための様々な拡張データを、設計関連データに基づいて算出する。そのような拡張データに、水上への範囲提示のための拡張データ、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データ、水上の障害物を提示する拡張データ、及び、工事用の船舶を施工箇所まで案内するための拡張データが含まれるものである。
水上への範囲提示のための拡張データとは、設計関連データに含まれる施工範囲や、施工中に工事用の船舶や重機などが接触する虞のある構造物が配置された危険エリアなどの、範囲を示す情報を、着色や枠表示などを用いて水上の映像に重ねて表示するための拡張データである。施工内容に応じた設計数値を示す拡張データとは、施工内容に応じて予め設計関連データとして設定される、施工によって構築或いは変形する対象物の形状や位置に関する数値などを、水上の映像に重ねて表示するための拡張データである。水上の障害物を提示する拡張データとは、施工中に工事用船舶や重機などが接触する虞のある構造物などの障害物そのものを、例えば工事用船舶との離隔距離などの情報と共に着色や明滅表示などによって、水上の映像に重ねて表示するための拡張データである。
【0013】
工事用の船舶を施工箇所まで案内するための拡張データとは、赤外線カメラを搭載している船舶やそれに追従する船舶を、設計関連データに含まれる施工箇所周辺の情報に基づいて施工箇所までナビゲートするために、航路を示す矢印などを水上の映像に重ねて表示するための拡張データである。これにより、単なる赤外線カメラの映像では直感的に把握し難かった水上の状況が、従来からの見張員による音声での報告に加えて、上記のような様々な拡張データが重ねられた赤外線カメラの映像によっても伝達されるため、より正確に把握されるものとなる。更に、拡張データの内容に応じて、水上の状況の把握だけでなく、施工内容の提示や工事用の船舶の誘導などにも利用されるため、安全性や作業効率がより向上されるものとなる。
【0014】
(6)上記(5)項において、前記範囲提示のための拡張データが、浚渫工事の施工範囲を示すものであり、前記設計数値を示す拡張データが、浚渫箇所の浚渫深さと、浚渫箇所の端部に設けられる勾配の大きさとのうち、少なくとも一方を示すものである施工支援システム。
本項に記載の施工支援システムは、浚渫工事に適用されるものであって、水上への範囲提示のための拡張データが、浚渫工事の施工範囲を水上へと示すものであり、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データが、浚渫箇所の浚渫深さと、浚渫箇所の端部に設けられる勾配の大きさとのうち、少なくとも一方を示すものである。これにより、赤外線カメラで撮影された映像に重ねて、浚渫工事の施工範囲と共に、浚渫深さや勾配の大きさが提示されるため、夜間などの視界が悪い環境下での作業であっても、浚渫工事が効率よく行われるものとなる。
【0015】
(7)上記(4)項において、前記方位計測手段が、GNSS方位計である施工支援システム(請求項2)。
本項に記載の施工支援システムは、方位計測手段が、全地球航法衛星システムを利用するGNSS方位計であることで、撮影手段の撮影方向が高精度で計測されるものとなり、拡張映像データがより現実に近い形で提供されるものである。
【0016】
(8)上記(4)(7)項において、前記処理制御手段は、入力されたデータ及び/又は演算したデータの少なくとも一部をクラウドへアップロードする施工支援システム(請求項3)。
本項に記載の施工支援システムは、処理制御手段が、設定された設計関連データ、撮影手段や方位計測手段から取得したデータ、拡張映像データなどの演算したデータといった様々なデータを、クラウドへアップロードするものである。これにより、アップロードされた様々なデータが、クラウドに接続された複数の端末から閲覧可能になるため、施工の関係者とリアルタイムに施工状況などの情報が共有されるものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のような構成であるため、水中或いは水上施工における作業効率及び安全性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る施工支援システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1の施工支援システムで水中カメラを用いて水中の施工に利用した場合の、拡張映像データの表示例である。
【
図3】
図1の施工支援システムで水中カメラを用いて水中の施工に利用した場合の、
図2と異なる拡張映像データの表示例である。
【
図4】
図1の施工支援システムで水中カメラを用いて水中の施工に利用した場合の、
図2及び
図3と異なる拡張映像データの表示例である。
【
図5】
図1の施工支援システムで水中カメラを用いて水中の施工に利用した場合の、
図2~
図4と異なる拡張映像データの表示例である。
【
図6】
図1の施工支援システムで赤外線カメラを用いて水上の施工に利用した場合の、拡張映像データの表示例である。
【
図7】
図1の施工支援システムで赤外線カメラを用いて水上の施工に利用した場合の、
図6と異なる拡張映像データの表示例である。
【
図8】
図1の施工支援システムで赤外線カメラを用いて水上の施工に利用した場合の、
図6及び
図7と異なる拡張映像データの表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10の構成の一例を示している。施工支援システム10は、水中UW(
図2~
図5参照)や水上AW(
図6~
図8参照)での施工を支援するものであり、基本的に、その施工に利用される工事用の船舶30や施工を支援する船舶30などに設置される。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、撮影手段12、方位計測手段14、処理制御手段16、及び表示手段18を含んでいる。
【0020】
撮影手段12は、施工箇所やその周辺を撮影するためのものであり、施工内容に応じて様々な撮影機器が利用される。例えば、水中UWの施工に用いられる場合には、撮影手段12として水中カメラが利用される。この場合、水中カメラは、水中UWの施工箇所やその周辺を撮影するように、船舶30から水中UWへと沈められる。この際、水中カメラは、人力によって沈められてもよく、何かしらの機械的装置を介して沈められてもよく、或いは、予め水中UWに没するように船舶30に取り付けられてもよい。更に、水中カメラは、水中UWでの撮影方向が調整可能になっており、その実現方法として、例えば、作業員などによる操作を受けて撮影方向が調整されるようになっていてもよく、船舶30の向きに合わせて撮影方向が変わるように船舶30の任意の位置に固定されてもよい。
【0021】
又、水上AWの施工に用いられる場合、撮影手段12には、例えば赤外線カメラが利用される。この場合、赤外線カメラは、水上AWの施工箇所やその周辺を撮影するように、船舶30上に設置される。更に、水中カメラと同様に赤外線カメラも、水上AWでの撮影方向が調整可能になっており、その実現方法として、例えば、作業員などによる操作を受けて撮影方向が調整されるようになっていてもよく、船舶30の向きに合わせて撮影方向が変わるように船舶30の任意の位置に固定されてもよい。なお、撮影手段12には、上述した水中カメラや赤外線カメラに加えて、webカメラや全周囲カメラといった任意の撮影機器を利用してよい。
【0022】
方位計測手段14は、撮影手段12によって撮影されている方向を計測するものであって、それを実現するように船舶30上に設置される。一例として、方位計測手段14は、撮影手段12の撮影方向の調整に合わせて、方位計測手段14の向きも同時に変更されるように、撮影手段12と物理的に接続される。例えば、方位計測手段14と撮影手段12とが同じ船舶30に固定されていれば、船舶30を介して接続されることになり、その船舶30の旋回に合わせて両者の向きが同時に調整される。又、方位計測手段14と撮影手段12とが長尺の接続部材を介して接続されていれば、撮影手段12としての水中カメラが取り付けられた接続部材の一端を水中UWに沈めた状態で、接続部材の軸回転に合わせて両者の向きが同時に調整される。
【0023】
更に、撮影手段12が水中カメラである場合に限らず、接続部材を介して赤外線カメラなどと方位計測手段14とが船舶30上で接続され、接続部材の軸回転に合わせてそれらの向きが同時に調整されてもよい。又、接続部材の軸回転も、人力によるものであってもよく、機械的なものであってもよい。或いは、別の例として、撮影手段12の撮影方向を常に把握するように、方位計測手段14が撮影手段12と電気的に接続されていてもよい。このような方位計測手段14には、計測方法に応じた任意の計測機器が使用でき、例えば、GNSS方位計、サテライトコンパス、GPSコンパスといった衛星通信を利用したものや、ジャイロセンサを使用した方位計などが使用されるが、特に計測精度の点に関してGNSS方位計を利用することが好ましい。
【0024】
処理制御手段16は、施工支援システム10全体の制御を行うと共に、入力されるデータに基づいて様々な演算を行うものである。処理制御手段16へ入力されるデータには、撮影手段12によって撮影された映像データ、方位計測手段14によって計測された方位データ、設計関連データなどが含まれる。設計関連データは、施工支援システム10が適用される施工内容に応じた様々なデータであって、作業員などによって処理制御手段16へ予め或いは随時設定されるものである。設計関連データには、例えば、施工箇所の位置及びその範囲、検査範囲、施工箇所周辺の事前測量結果、施工箇所周辺の地図、構築予定の構造物の完成形状及び位置、その構造物を構成する各構成要素の位置及び形状、障害物の位置及び形状、障害物が存在する範囲などが含まれてよい。
【0025】
処理制御手段16は、上記のような入力データから、撮影手段12による映像データに重ねて表示するための、様々な拡張データAD(
図2~
図8参照)を算出するが、その詳しい内容については後述する。又、処理制御手段16は、撮影手段12の映像データに拡張データADを重ねた拡張映像データ、処理制御手段16によるその他の演算結果、処理制御手段16へ入力されたデータなどを、表示手段18へ出力すると共に、クラウド22へアップロードする。処理制御手段16から出力又はアップロードされるデータは、作業員などによって選択されてもよい。処理制御手段16には、上記のような演算が可能な任意のコンピュータを使用してよく、そこには、ノート型PC、タブレット型PC、デスクトップ型PCなどが含まれる。
【0026】
表示手段18は、上記のように処理制御手段16から出力されるデータを表示するためのものである。表示手段18には、任意の表示装置を使用することができるが、処理制御手段16がノート型PCやタブレット型PCなどの表示部一体型のPCで構成される場合は、その処理制御手段16と一体的に構成されてよい。複数の端末24の各々は、クラウド22にアップロードされたデータを閲覧するためのものであり、クラウド22に接続可能なものであれば、任意の位置にある任意の機器であってよい。端末24として使用される機器には、デスクトップ型PC、ノート型PC、タブレット型PC、スマートフォンなどが含まれる。なお、
図1において各構成要素間に実線で示されているような、各構成要素間の接続を実現するための接続手段には、データの通信が可能な有線、無線、或いはそれらを組み合わせた任意の接続方法を利用してよい。又、データ変換などを目的として、各構成要素の間にインタフェース機器が配置されてもよい。
【0027】
続いて、
図2~
図8には、処理制御手段16により算出した拡張データADを、撮影手段12の映像データに重ね合わせた、拡張映像データの例を示している。それらのうち、
図2~
図5は、撮影手段12として水中カメラが用いられた、水中UWでの施工に利用される拡張映像データである。まず、
図2を参照すると、基礎マウンドなどの築造のために、水底BWに捨石42を敷設している様子が示されており、捨石42は吊荷として水中UWへ吊り下げられ、それを潜水士40が誘導している。そして、このような様子が撮影された映像データに、枠線や着色などを利用して施工範囲を示す拡張データAD1が重ねられている。
【0028】
すなわち、処理制御手段16は、撮影手段12(水中カメラ)により撮影されている映像データと、方位計測手段14により計測されている撮影手段12の撮影方向とから、映像データに映り込んでいる位置(範囲)を特定する。そして、特定した映像データ内の位置と、表示する拡張データADの基になるデータ、ここでは設計関連データとして予め設定された施工範囲データの位置とを同期させ、特定した映像データ内の範囲のうち、施工範囲に該当する領域に、上記のような施工範囲を示す拡張データAD1を重ねるものである。なお、施工範囲は、その施工の対象となる全ての範囲を示すものに限られず、作業日毎の施工範囲や、工種毎の施工範囲などであってもよい。
【0029】
又、
図3では、
図2のようにして水底BWに捨石42が敷設された水中UWの施工現場の映像データに、立会検査時の検査範囲を示す拡張データAD2が重ねられている。
図3の例の検査範囲を示す拡張データAD2は、枠線、逆三角形で示される複数のポインタ、所定距離毎の補助線、及び着色で構成されている。検査範囲を示す拡張データAD2の位置の同期方法は、施工範囲を示す拡張データAD1の場合と同様である。
図4には、水中UWの施工箇所における水底BWの現地盤の映像データに、コンター図のように等高線を示す拡張データAD3が、格子状の補助グリッド線と共に重ねられて表示されている。等高線は、設計関連データとして処理制御手段16に予め設定された、事前に行われた深浅測量データから算出される。等高線を示す拡張データAD3の位置の同期方法は、施工範囲を示す拡張データAD1の場合と同様である。
【0030】
図5には、
図2及び
図3のようにして築造された基礎マウンドの上に、ブロック46を据え付ける様子が示されており、そのような映像データに、拡張データAD4~AD7が重ねて表示されている。拡張データAD4は、水中UWに現在吊り下げられているブロック46の現在位置を、立方体の枠線及びその着色によって示すものである。この現在位置は、処理制御手段16によって映像データから画像認識技術などを利用して算出してもよく、作業員などによりその位置情報が処理制御手段16へ随時入力されてもよい。拡張データAD5は、現在吊り下げられているブロック46を据え付ける目標位置を、立方体の枠線及びその着色によって示すものである。この目標位置は、処理制御手段16へ予め設定される設計関連データに含まれるものであってもよく、作業員などによりその位置情報が処理制御手段16へ随時入力されてもよい。設計関連データを用いる場合の位置の同期方法は、施工範囲を示す拡張データAD1の場合と同様である。
【0031】
拡張データAD6及びAD7は、ブロック46を現在位置から目標位置へ誘導するための方向及び距離を、矢印及び距離数値によって示すものであり、処理制御手段16によって現在位置と目標位置との差分から算出され、映像データ内の任意の位置に重ねて表示される。なお、
図2及び
図3に示した拡張データAD1及びAD2や、
図5の拡張データAD4及びAD5などを含み、各拡張データADに着色する色は任意に設定でき、それが半透明や明滅するものであってもよい。更に、
図5のような映像をより遠目で撮影したときに、全てのブロック46を据え付けた後の完成予定形状を示す拡張データADなどを、設計関連データとして予め設定されるデータに基づいて算出して表示させてもよい。
【0032】
次に、
図6~
図8は、撮影手段12として赤外線カメラが用いられた、水上AWで夜間に行われる施工に利用される拡張映像データを示している。
図6を参照すると、橋桁50の近傍に位置する施工箇所周辺が撮影された映像データに、施工範囲を示す拡張データAD8と、障害物を示す拡張データAD9とが重ねられている。施工範囲を示す拡張データAD8は、水上AWのものである点を除き、
図2に示した施工範囲を示す拡張データAD1に準ずるものである。一方、障害物を示す拡張データAD9は、施工中に船舶30やそれに搭載された重機などが接触する虞のある構造物を、その大略的な形状の枠線及び着色で示しており、
図6には橋桁50を示す拡張データAD9と橋脚52を示す拡張データAD9とが図示されている。
【0033】
このような構造物の形状及び位置情報は、処理制御手段16へ予め設定される設計関連データに含まれるものであってもよく、作業員などにより処理制御手段16へ随時入力されてもよい。設計関連データを用いる場合の位置の同期方法は、施工範囲を示す拡張データAD1の場合と同様である。更に、
図6の例では、拡張データAD9の各々に、各構造物までの離隔距離が表示されている。この離隔距離は、施工範囲(AD8)からの離隔距離が処理制御手段16により算出されたものであってもよく、船舶30などからの離隔距離が距離センサを用いて計測されたものであってもよい。なお、これらの障害物となり得る構造物が配置された領域を、平面的或いは立体的に範囲表示した拡張データADを、映像データに重ねて表示させてもよい。
【0034】
図7には、施工支援システム10を搭載した船舶30を施工箇所まで案内するための拡張映像データが示されており、船舶30の船首付近を含む水上AWの映像データに、拡張データAD10、AD11、AD12が重ねられている。拡張データAD10は、船舶30がとるべき航路を、方向を示す枠線、複数の三角、及びそれらの着色で示している。この航路は、設計関連データとして予め設定されたものであってもよく、予め設定された施工箇所の位置と、随時計測される船舶30の現在位置とから、処理制御手段16により算出するものであってもよい。何れの場合であっても、位置の同期方法は、施工範囲を示す拡張データAD1の場合と同様である。
【0035】
又、拡張データAD11は、映像データ内の他の船舶を、図示の例では四角形の枠線及びその着色で示すものであり、そのような他の船舶は、例えば、処理制御手段16によって映像データから画像認識技術などを利用して認識される。更に、他の船舶を示す拡張データAD11には、その船舶が進んでいる方向を示す矢印が付加されている。拡張データAD12は、船舶30が進む上で配慮すべき構造物を示しており、
図7の例では、橋桁50がその大略的な形状の枠線及び着色で示されている。このような構造物の形状や位置情報は、処理制御手段16へ予め設定される設計関連データに含まれるものであってもよく、画像認識技術などで処理制御手段16により随時認識されてもよい。設計関連データを用いる場合の位置の同期方法は、施工範囲を示す拡張データAD1の場合と同様である。
【0036】
他方、
図8には、施工対象が浚渫工事である場合の拡張映像データが示されており、
図8(a)では、施工箇所を遠目で撮影した水上AWの映像データに拡張データAD13が重ねられ、
図8(b)では、施工箇所を近傍で撮影した水上AWの映像データに、拡張データAD13~AD16が重ねられている。施工範囲を示す拡張データAD13は、水上AWのものである点を除き、
図2に示した施工範囲を示す拡張データAD1に準ずるものである。拡張データAD14は、浚渫工事の施工範囲の中で、浚渫箇所の両端部に設けられる勾配(法勾配)と浚渫箇所との境界を示すものであり、
図8の例では、拡張データAD13に重なる線分で示されている。この境界の位置情報は、処理制御手段16へ予め設定される設計関連データに含まれるものであり、その位置の同期方法は、施工範囲を示す拡張データAD1の場合と同様である。
【0037】
拡張データAD15は、例えば東京湾中等潮位(T.P.)などを基準として、浚渫箇所の浚渫深さを示すものであり、
図8(b)の例では、施工範囲を示す拡張データAD13に重ねて表示されている。拡張データAD16は、浚渫箇所の両端部に設けられる勾配の大きさを、鉛直高さと水平距離との比率で表したものであり、
図8(b)の例では、勾配の境界を示す拡張データAD14の近傍に表示されている。これらの浚渫深さや勾配の大きさの設計情報は、処理制御手段16へ予め設定される設計関連データに含まれるものである。
【0038】
ここで、上記のような様々な拡張データADは、例えば処理制御手段16に対する作業員などによる操作によって、映像データに重ねて表示される拡張データADが選択されて切り替えられたり、表示と非表示とが切り替えられたりする。又、上記のような構成の施工支援システム10は、現地での使用が開始される前に、一部の機器の事前調整(キャリブレーション)が行われてもよい。例えば、撮影手段12と方位計測手段14とは、方向が同期するように設置位置が調整されてもよく、撮影手段12の映像データ内の距離感の合わせ込みが行われてもよい。その際、上述したような何れかの拡張データADや調整専用の拡張データADを、撮影手段12の映像データに重ね合わせて、それを表示手段18に表示させながら、位置調整や距離感の合わせ込みを行ってもよい。
【0039】
なお、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、
図1~
図8に示した構成に限定されるものではなく、別の構成であってもよい。例えば、
図1に示された構成要素の一部が削除又は変更されてもよく、他の要素が追加されてもよい。又、拡張データADは、様々な内容を示すものであってよく、拡張データADの各々で用いられる表現方法(使用する図形や色など)も任意である。例えば、水中UWや水上AWに表示する範囲の種類は、施工範囲や検査範囲に限定されず、又、水底BWに等高線以外の形状に係る拡張データADを表示してもよく、水上AWに任意の構造物を示す拡張データADを表示してもよい。更に、例えば水深や潮位といった施工箇所の周辺環境に関する数値を、拡張データADによって提示してもよく、
図8のように浚渫工事に適用される場合に、浚渫深さや勾配の大きさ以外の任意の設計数値を、拡張データADによって提示してもよい。
【0040】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、
図1に示すように、撮影手段12、方位計測手段14、処理制御手段16、及び表示手段18を含んでいる。撮影手段12は、水中UW或いは水上AW(
図2~
図7参照)の施工箇所やその周辺を撮影するものであり、この撮影手段12によって撮影される方向が、方位計測手段14によって常に計測される。処理制御手段16は、予め或いは随時設定される、施工内容に応じた設計関連データと、撮影手段12及び方位計測手段14から取得する、映像データ及びその方向を示すデータとに基づいて、様々な演算を行うものである。そして、表示手段18は、処理制御手段16から出力されるデータを表示するものであり、この表示手段18に表示させるものとして、処理制御手段16は、拡張映像データを表示手段18へ出力する。
【0041】
すなわち、処理制御手段16は、撮影手段12の映像データそのものや、その映像データの方向を示すデータなどから、撮影手段12によって撮影されている位置(映像に写っている位置)を算出する。そして、設計関連データに含まれている情報のうち、算出した位置に関連する情報を、撮影手段12の映像データに重ねて表示する視認可能な拡張データAD(
図2~
図7参照)へと加工し、その拡張データADを映像データに重ねた拡張映像データを、表示手段18に対して出力する。これにより、設計関連データに含まれる様々な情報を、撮影手段12により撮影される実際の映像に重ねて、その映像内に実際に存在するかの如く表示することができる。このため、例えばソナーを用いる場合などと比較して、施工箇所やその周辺の状況を、より現実に近く直感的に把握し易い形式で提供することができる。従って、そのような表示を確認する監督員などは、作業状況や周辺状況などを正確に把握することができ、結果として、水中UWでの施工や水上AWでの施工の、作業効率や安全性を向上させることが可能となる。
【0042】
又、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、
図2~
図5に示すように、水中UWでの施工に用いられる場合、撮影手段12として、水中UWの施工箇所ないしその周辺を撮影する水中カメラが利用される。そして、処理制御手段16は、その水中カメラによって撮影された映像に重ね合わせるための様々な拡張データADを、設計関連データに基づいて算出する。そのような拡張データADに、
図2及び
図3のような水底BWへの範囲提示のための拡張データAD1及びAD2、
図4のような水底BWの形状に係る拡張データAD3、
図5のような物体を目標位置へ誘導するための拡張データAD4~AD7、及び、水底BWに構築する構造物の完成形状を示す拡張データADが含まれるものである。
【0043】
水底BWへの範囲提示のための拡張データADとは、設計関連データに含まれる施工範囲や検査範囲などの範囲を示す情報を、
図2及び
図3のように着色や枠表示などを用いて水底BWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。このような拡張データADにより、施工範囲や検査範囲などを確認しながら、施工や検査を行うことができる。又、水底BWの形状に係る拡張データADとは、設計関連データに含まれる事前測量の結果などに基づいて、例えば
図4に示すコンター図のような水底BWの形状に係る情報を、水底BWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。このような拡張データADによれば、水底BWの形状を確認しながら、様々な作業を行うことが可能となる。
【0044】
更に、物体を目標位置へ誘導するための拡張データADとは、例えば
図5のようにブロック46や捨石42などの吊荷を据え付ける際に、設計関連データに含まれる据え付けの目標位置へ物体を誘導するために、矢印や目標位置などを水中UWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。この拡張データADによって、物体を目標位置へと正確に誘導することができるため、施工精度を向上させることができる。又、水底BWに構築する構造物の完成形状を示す拡張データADとは、設計関連データに含まれている、水底BWに構築する予定の構造物の完成形状を示す映像を、水底BWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。このような拡張データADによっても、構造物の完成形状を確認しながら作業ができるため、施工精度を向上させることができる。そして、これらの拡張データADにより、単なる水中カメラの映像では濁りなどの影響で把握し難かった水中UWの状況を、従来からの潜水士40による音声での報告に加えて、上記のような様々な拡張データADが重ねられた水中カメラの映像によっても伝達することができるため、より正確に把握することが可能となる。
【0045】
又、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、
図6及び
図7に示すように、特に夜間などの視界が悪い環境における水上AWでの施工に用いられる場合、撮影手段12として、水上AWの施工箇所ないしその周辺を撮影する赤外線カメラが利用される。そして、処理制御手段16は、その赤外線カメラによって撮影された映像に重ね合わせるための様々な拡張データADを、設計関連データに基づいて算出する。そのような拡張データADに、
図6、
図8のような水上AWへの範囲提示のための拡張データAD8、AD13、
図6のような水上AWの障害物を提示する拡張データAD9、
図7のような工事用の船舶30を施工箇所まで案内するための拡張データAD10、及び、
図8(b)のような施工内容に応じた設計数値を示す拡張データAD15、AD16が含まれるものである。
【0046】
水上AWへの範囲提示のための拡張データADとは、設計関連データに含まれる施工範囲や、施工中に工事用の船舶30や重機などが接触する虞のある構造物が配置された危険エリアなどの、範囲を示す情報を、着色や枠表示などを用いて水上AWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。これによれば、施工範囲や危険エリアなどを確認しながら、施工を行うことができる。又、水上AWの障害物を提示する拡張データADとは、施工中に工事用船舶30や重機などが接触する虞のある構造物などの障害物そのものを、例えば工事用船舶30との離隔距離などの情報と共に着色や明滅表示などによって、水上AWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。このような拡張データADにより、障害物への接触が防止されるため、安全性をより向上させることができる。
【0047】
更に、工事用の船舶30を施工箇所まで案内するための拡張データADとは、赤外線カメラを搭載している船舶30やそれに追従する船舶を、設計関連データに含まれる施工箇所周辺の情報に基づいて施工箇所までナビゲートするために、
図7のように航路を示す複数の三角形などを水上AWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。このような拡張データADによれば、工事用の船舶30などを、施工箇所まで迅速かつ安全に誘導することができる。施工内容に応じた設計数値を示す拡張データADとは、施工内容に応じて予め設計関連データとして設定される、施工によって構築或いは変形する対象物の形状や位置に関する数値などを、水上AWの映像に重ねて表示するための拡張データADである。これによれば、作業員などに対して施工内容を認識させることができる。そして、これらの拡張データADにより、単なる赤外線カメラの映像では直感的に把握し難かった水上AWの状況を、従来からの見張員による音声での報告に加えて、上記のような様々な拡張データADが重ねられた赤外線カメラの映像によっても伝達することができるため、より正確に把握することが可能となる。
【0048】
又、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、
図8に示すように、浚渫工事に適用されるものであってもよく、この場合、水上AWへの範囲提示のための拡張データADは、浚渫工事の施工範囲を水上AWへと示す拡張データAD13であり、施工内容に応じた設計数値を示す拡張データADは、浚渫箇所の浚渫深さを示す拡張データAD15や、浚渫箇所の端部に設けられる勾配の大きさを示す拡張データ16である。これにより、赤外線カメラで撮影された映像に重ねて、浚渫工事の施工範囲と共に、浚渫深さや勾配の大きさを提示することができるため、夜間などの視界が悪い環境下での作業であっても、浚渫工事を効率よく行うことが可能となる。
【0049】
又、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、方位計測手段14が、全地球航法衛星システムを利用するGNSS方位計であることとすれば、撮影手段12の撮影方向を高精度で計測することができ、拡張映像データをより現実に近い形で提供することが可能となる。
加えて、本発明の実施の形態に係る施工支援システム10は、処理制御手段16が、設定された設計関連データ、撮影手段12や方位計測手段14から取得したデータ、拡張映像データなどの演算したデータといった様々なデータを、
図1に示すようにクラウド22へアップロードするものである。これにより、アップロードした様々なデータを、クラウド22に接続された複数の端末24から閲覧することができるため、施工の関係者とリアルタイムに施工状況などの情報を共有することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
10:施工支援システム、12:撮影手段、14:方位計測手段、16:処理制御手段、18:表示手段、22:クラウド、30:船舶、AD(AD1~AD16):拡張データ、UW:水中、BW:水底、AW:水上