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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】超成形性皮革の成型
(51)【国際特許分類】
   C14B 5/02 20060101AFI20230607BHJP
   B68F 1/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C14B5/02
B68F1/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020536504
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018050093
(87)【国際公開番号】W WO2019051320
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】62/556,251
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520079256
【氏名又は名称】アッシャー レバイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レバイン、アッシャー
(72)【発明者】
【氏名】タッバート、タイソン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05480605(US,A)
【文献】特開2001-259264(JP,A)
【文献】国際公開第2011/161761(WO,A1)
【文献】特開平01-232990(JP,A)
【文献】特開平07-138600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0137103(US,A1)
【文献】特開平01-146737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00-49/46
49/58-49/68
49/72-51/28
51/42
51/46
B32B 1/00-43/00
B68F 1/00-3/04
C14B 1/00-99/00
C14C 1/00-99/00
D06N1/00-7/06
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形性皮革を生産する方法であって、
皮革を、第1のネガ鋳型と第1のポジ鋳型との間に留置することと、
第1の圧力適用ステップにおいて圧力を加えて、前記第1のネガ鋳型および前記第1のポジ鋳型に前記皮革のあるエリアを成形させることと、
前記皮革の前記エリアを、前記第1のネガ鋳型に対して漸次的に変化した第2のネガ鋳型と前記第1のポジ鋳型に対して漸次的に変化した第2のポジ鋳型との間に留置することと、
第2の圧力適用ステップにおいて圧力を加えて、前記第2のネガ鋳型および第2のポジ鋳型に前記皮革をさらに成形させることと、を含み、前記第1の圧力適用ステップ及び前記第2の圧力適用ステップでは、前記皮革に漸次的にレベルが変化する圧力を適用する、方法。
【請求項2】
前記第1のネガ鋳型が、前記第1のポジ鋳型よりも高い硬さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮革を、前記第1のネガ鋳型と前記第1のポジ鋳型との間に留置する前に、前記皮革に延伸溶媒を塗布することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のポジ鋳型が、前記第1のポジ鋳型よりも表面から遠くに突出している、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
圧力を加えて、前記第2のネガ鋳型および前記第2のポジ鋳型に前記皮革をさらに成形させた後に、エラストマーを前記皮革に塗布することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エラストマーが、熱硬化性または有機ゴムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エラストマーが、前記皮革に圧入されるシートを形成する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力を加えることが、前記圧力を数時間の期間にわたって増加させることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力を加えることが、前記圧力を少なくとも数時間維持することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
繊維を用いて、構造的サポートをさらに成形された前記皮革に提供することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記皮革の前記エリアを、第3のネガ鋳型と第3のポジ鋳型との間に留置することと、
圧力を加えて、前記第3のネガ鋳型および第3のポジ鋳型に前記皮革をさらに成形させることと、をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のポジ鋳型、前記第2のポジ鋳型、および前記第3のポジ鋳型が、前記皮革に成型される目的の形状に向かって漸次的に変化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のポジ鋳型、前記第2のポジ鋳型、および前記第3のポジ鋳型が、異なる硬さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記皮革の前記エリアを前記第2のネガ鋳型と前記第2のポジ鋳型との間に留置する前に、前記皮革を延伸溶媒に含浸させることをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記含浸された皮革の前記エリアを、前記第2のネガ鋳型と前記第2のポジ鋳型との間に留置することと、
圧力を加えて、前記第2のネガ鋳型および第2のポジ鋳型に前記含浸された皮革をさらに成形させることと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法を使用して少なくとも部分的に一片の皮革を生産する方法
【請求項17】
請求項16に記載の方法を使用して生産される一片の皮革を使用して衣類品を生産する方法
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月8日に出願された「ULTRA FORMED LEATHER MOLDING USING PERFORMANCE ELASTOMERS」と題する米国仮特許出願第62/556,251号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
皮革および同様の材料に様々な表面特徴を与えるために様々な技法が開発されてきたが、これらの技法は、典型的には、限定された効果を有する。例えば、皮革のエンボス加工のための従来の技法は、いくつかの表面装飾を可能にするが、効果は概して限定されている。より大きな表面効果を生み出すには、様々な障害がある。例えば、皮革への応力により、皮革が破れる場合がある。他の技法は、多くの場合、かなりの労力および/または追加の材料を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図面を参照して様々な技法を記載する。
図1】漸増的成型技法を呈するダイアグラムである。
図2A図2Aは、漸次的な変化が順番に加えられるにつれて、より大きな変形を達成するように、漸次的に変化した鋳型を皮革に使用した連続的な結果を示している。
図2B図2Bは、漸次的な変化が順番に加えられるにつれて、より大きな変形を達成するように、漸次的に変化した鋳型を皮革に使用した連続的な結果を示している。
図2C図2Cは、漸次的な変化が順番に加えられるにつれて、より大きな変形を達成するように、漸次的に変化した鋳型を皮革に使用した連続的な結果を示している。
図3】変形される内側鋳型を受容する準備ができている(半透明で示される)一片の皮革を含む例示的な外側鋳型を示している。
図4図3の外側鋳型を補完する例示的な内側鋳型を示している。
図5図3の外側鋳型と図4の内側鋳型との間の例示的な一片の皮革を示している。
図6】成型加工を経たが、依然として図3の外側鋳型内にある皮革を示している。
図7】変形した一片の皮革の一部分の中に追加の変形を提供する鋳型拡大器を示している。
図8図3の外側鋳型内の一片の皮革の一部分に加えられることによって、一片の皮革の一部分を変形させるために使用されている鋳型拡大器を示している。
図9図8の鋳型拡大器を使用して追加の変形を実施した結果を示している。
図10】対応する内側鋳型との整合を容易にするために外側鋳型が凹状形状を有するスパイク用の外側鋳型を示している。
図11図10の外側鋳型を補完する内側鋳型を示しており、内側鋳型は、内側鋳型と外側鋳型との整合を容易にするために、図10の凹状形状を補完する凸状形状を有する。
図12図10および11の内側鋳型および外側鋳型を使用して生産された皮革スパイクを備えた衣類品を示している。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書に記載および提案される技法は、特定の成型方法論および高性能ポリマーを利用して天然および合成皮革を屈曲させ、形状決めする方法での超成形性皮革(例えば、はっきりとした形状を有するように成形された皮革)の生産に関する。かかる技法は、とりわけ、衣料品、ファッションアクセサリ、室内装飾、家具製品、および自動車用途など、様々な産業に適用可能である。
【0005】
先行するおよび以下の説明では、様々な技法が記載されている。説明の目的で、本技法を実装する可能な方法の完全な理解を提供するために、特定の構成および細部が記載されている。しかしながら、以下に記載される技法を、特定の細部を含まずに異なる構成で実践することができることも明らかであろう。さらに、記載される技法を不明瞭にすることを回避するために、周知の特徴が省略または簡略化される場合がある。
【0006】
一実施形態では、方法は、皮革を第1のネガ鋳型と第1のポジ鋳型との間に留置することと、圧力を加えて、第1のネガ鋳型および第1のポジ鋳型に皮革のある面積を成形させることと、皮革の当該面積を、第2のネガ鋳型と第2のポジ鋳型との間に留置することと、圧力を加えて、第2のネガ鋳型および第2のポジ鋳型に皮革をさらに成形させることと、を含む。第1のネガ鋳型は、第1のポジ鋳型よりも高い硬さを有し得る。本方法は、皮革を、第1のネガ鋳型と第1のポジ鋳型との間に留置する前に、皮革に延伸溶媒を塗布することをさらに含み得る。一実施形態では、第2のポジ鋳型は、第1のポジ鋳型よりも表面から遠くに突出している。圧力を加えて、第2のネガ鋳型および第2のポジ鋳型に皮革をさらに成形させた後に、皮革にエラストマーを塗布することができる。一実施形態では、エラストマーは、熱硬化性ゴムおよび/もしくはラテックス、または別の生物学的に持続可能な材料である。別の実施形態では、エラストマーは、皮革に圧入されるシートとして塗布される。圧力を数時間の期間にわたって増加させることによって、圧力を加えることができる。圧力を少なくとも数時間維持することができる。本方法は、繊維を塗布して、構造的サポートを、さらに成形された皮革に提供することをさらに含み得る。本方法はまた、皮革の面積を第3のネガ鋳型と第3のポジ鋳型との間に留置することと、圧力を加えて、第3のネガ鋳型および第3のポジ鋳型に皮革をさらに成形させることと、をさらに含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1のポジ鋳型、第2のポジ鋳型、および第3のポジ鋳型は、皮革に成型される目的の形状に向かって漸次的に変化する。第1のポジ鋳型、第2のポジ鋳型、および第3のポジ鋳型は、異なる硬さを有し得る。本方法は、皮革をさらに成形した後に、皮革を延伸溶媒に含浸させることをさらに含むことができ、また、含浸された皮革の面積を、第2のネガ鋳型と第2のポジ鋳型との間に留置することと、圧力を加えて、第2のネガ鋳型および第2のポジ鋳型に、含浸された皮革をさらに成形させることと、をさらに含み得る。本明細書の実施形態はまた、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法を使用して少なくとも部分的に生産された一片の皮革と、一片の皮革を使用して生産された衣類品と、を含む。
【0008】
加工:
正しい材料を選択すること
本明細書に記載される技法を利用して、多数のタイプの皮革および合成皮革を成形することができる。皮革がどのように加工されるかに応じて、成型を最大化し、細部を補足するための理想的な特質を生み出す。オイルで加工され、ワックスで仕上げられた皮革は、最善の強度と究極の安定性を有する。皮革を削ると、皮革の成形が改善され、加工された表皮ごとに試験して、最大伸長を見つける必要がある。この技法の変種を使用して、ラム、ヤギ、ウシ、その他のウシ属、ニシキヘビおよびトカゲ、両生類、トリ、魚、および海産物の表皮、ラボグロウンおよび合成表皮、ラボグロウンコラーゲン皮革、菌糸体皮革、ならびに生物学的廃棄物由来の皮革または持続可能なものとして分類されたその他の皮革を含むが、これらに限定されない、皮革を成形することができる。特許権を持つ皮革など、PVCまたはその他のプラスチック仕上げの一部の皮革は、詳細な成型および全体的な成型を妨げる場合がある。
【0009】
デザインの生成
デザインは、皮革の所望の最終的な形状である。デザインは、粘土彫刻、3Dプリント、既存の物体からの鋳造、および/またはその他の技法によって作製もしくは生成することができるが、これらに限定されない。
【0010】
鋳型の概要
一実施形態では、鋳型は、2つの基本部品、外側構成要素および内側構成要素、から作製される。外側鋳型(「外側」または「ネガ鋳型」とも称される)。一実施形態では、外側鋳型は、デザインのネガである。例えば、デザインが外向きの突出部を含むことになる場合、外側鋳型は、突出部の外側部分を成形するように凹状であり得る。この鋳型は、プロトタイピングおよび産業目的の両方に適合するように、様々な材料で作製され得る。外側鋳型は、少なくとも1つの部品であり、様々な細部を最大360度、達成するように、複数のユニットで作製され得る。本明細書で使用される「度」という用語は、皮革シートの変形の度合いである。皮革シートの変形によって成形された凹状空間と交差する平面に関して、シートが平面上の円を完全に囲むことを引き起こした変形は、その平面に沿って360度変形したと考慮されることになる。変形は、かかる平面の一部またはすべてで最大360度変形し得る。外側の概して推奨される特質は次のとおりであり、材料の特性に応じて変化し得る。
【0011】
引張強度-少なくとも3,000psi
圧縮強度-少なくとも4,000psi
引張係数-少なくとも139,000psi
ショア硬さD-少なくとも70D
【0012】
上記の値におよそ等しい値を含むその他の値を使用して、同じ効果を達成することもできる。一実施形態では、外側は、非常に硬く、ゆがめることは困難である。外側は、所望の特質を呈する樹脂エラストマー、または産業目的の金属で作製され得る。
【0013】
内側鋳型(「内側」または「ポジ鋳型」とも称される)。一実施形態では、内側鋳型は、デザインのポジである。この鋳型は、プロトタイピングおよび産業目的の両方に適合するように、様々な材料で作製され得る。内側鋳型は、1つの部品であり得、最終的なデザインを表し得る。内側の概して推奨される特質は次のとおりであり、材料の特性に応じて変化し得る。
【0014】
引張強度-2264psi
100%係数-855psi
ショア硬さD-30D
【0015】
上記の値におよそ等しい値を含むその他の値を使用して、同じ効果を達成することもできる。自動車タイヤの硬さなど、内側のこれらの特質は、皮革をネガ鋳型に成形するのに必要な抵抗を与えるが、皮革に対して、損傷を回避し、ポジ側のアンダーカットに押し込むのに十分な抵抗をもたらす。プロトタイピング用の高性能熱硬化性エラストマー、または産業目的の射出成型された熱可塑性ゴムで作製され得る。
【0016】
いくつかの実施例では、鋳型拡大器を使用して、変形した皮革の部分に追加の細部を提供する。一実施形態では、鋳型拡大器は、対応する内側鋳型よりも小さく、より大きな突出部からの追加の突出部など、追加の表面細部を有する。鋳型拡大器を、凹状表面の特徴をもたらすように形状決めすることもできることに留意されたい。図7は、例示的な鋳型拡大器を示している。いくつかの実施例では、圧力が内側鋳型および外側鋳型に加えられる前に、鋳型拡大器が内側鋳型と皮革との間に留置され、その結果、それによって、圧力が鋳型拡大器に伝達される。他の実施例では、鋳型拡大器は、内側鋳型なしで、(鋳型拡大器と外側鋳型との間に皮革がある状態で)皮革および外側鋳型に圧力を加える。他の実施例では、圧力が内側鋳型および外側鋳型に加えられる前に、鋳型拡大器が皮革と外側鋳型との間にあり、その結果、圧力が鋳型拡大器に伝達される。例示的な鋳型拡大器が図7および8に示されており、結果が図9に示されている。
【0017】
漸次的に変化する鋳型-深い細部またはアンダーカットのデザインを含有するいくつかのデザインでは、加工は、成形加工中の裂けおよびしわを防ぐ、進行段階において皮革を成形する漸次的な鋳型を必要とする場合がある。図1は、漸次的に変化する(漸次的に変化したとも称される)鋳型によって成形されている皮革の切り欠き図を例示しており、漸次的に変化した鋳型を連続的に加えるたびに、皮革により大きな変形が生じる。最終的なデザインおよび細部に応じて、内側鋳型および外側鋳型の両方が進行することを使用して、皮革を所望の最終的な形状へと緩徐に成形することができ、その際、エラストマーおよび/またはその他の形状維持物質を使用することができる。図1は、皮革を段階的に半楕円形のような形状に変形させるための例示的な漸増的鋳型シリーズを示している。図2A~2Cは、漸次的に変化する鋳型を連続的に加えることを経た後の皮革を示している。いくつかの実施形態では、内側鋳型および/または外側鋳型の硬さは、漸次的な変化が行われるにつれて変化する。例えば、一実施形態では、漸次的な変化が導入されるにつれて、内側鋳型の硬さが小さくなる。別の実施例では、漸次的な変化が導入されるにつれて、内側鋳型がより硬くなる。さらに別の実施例では、漸次的な変化が導入されるにつれて、外側鋳型がより硬くなる。さらに別の実施例では、漸次的な変化が導入されるにつれて、外側鋳型の硬さが小さくなる。いくつかの実施例では、漸次的な変化が導入されるにつれて、内側鋳型または外側鋳型のうちの一方は一定の硬さを有し、内側鋳型または外側鋳型のうちの他方は硬さが変化する。さらに他の実施例では、漸次的な変化が導入されるにつれて、内側鋳型が硬くなる一方、外側鋳型は柔らかくなり、またはその逆も同様である。いくつかの実施形態では、ネガ鋳型は常に、漸次的な変化が導入されたときのネガ鋳型よりも硬い。
【0018】
材料の調製
一実施形態では、材料を調製するための手順は以下のとおりである。およそ1~2"または少なくとも鋳型と同じ大きさなど、鋳型よりも大きい皮革片(複数可)を切り取る。いくつかの実施例では、鋳型表面よりも小さい成型された材料の一片が所望される場合など、皮革を鋳型よりも小さくすることができる
【0019】
皮革を下に向けて外側鋳型に緩く留置する。
【0020】
皮革が完全に含浸されるまで、Sellari(商標)のシュー延伸などの有機皮革延伸溶媒をスプレーする。オペレータは、自身の手を使用して、皮革を外側鋳型内に徐々に押圧することができるが、それは高い生産環境で機械によって自動化され得る。延伸溶媒が溜まる場合があり、これは、材料が十分に含浸されていることを示唆する。いくつかの実施形態では、材料の特性および所望の硬さの特質に応じて、水が軟化剤として機能し得る。
【0021】
成形
一実施形態では、調製された皮革は、以下のように成形される。プラスチック層-およそ8~13マイクロメートルの厚さを有する、プラスチックラップなどのプラスチックの薄い層を、ここでは外側鋳型内の下向きの皮革の上に留置し、これにより、内側鋳型が皮革に張り付くことを防ぐ。内側鋳型が皮革に付着することも防ぐ他の非プラスチック材料を使用することもでき、いくつかの実施形態では、プラスチックまたはその他の材料の層は、鋳型内で小さな変形を引き起こすように、(厚さを変化させることによって作製される)デザイン要素と共に構成されることに留意されたい。
【0022】
内側鋳型を外側鋳型内に留置し、2つの鋳型を、一方の鋳型の凸状部分が対応する他方の鋳型の凹状部分と整合するように、整合させる。鋳型は、上部鋳型と内側鋳型との間の適切な整合を確実にするために、特別なインターロック整合キーを有し得る。しわを防ぐために、必要に応じて、鋳型を一緒に手で押圧し、余分な1~2"の余分な皮革を軽く引っ張ることができる。
【0023】
圧力を加える-外側鋳型および内側鋳型を、木材もしくは金属またはその他の材料の2つの片の間に留置し、これにより、圧力の分散を助ける。いくつかの実施形態では、鋳型は、皮革を形状決めする鋳型の表面を横切ってより均一に加えられる圧力を分散させるのに役立つ構造要素と共に構成され得る。Cクランプ、手動クランク、油圧プレス、またはその他の機構を使用して、鋳型におよそ6,600psiの圧力を加える。その他の圧力を使用することができ、特定の圧力は、使用される材料および求めされるデザインによって変化し得る。
【0024】
24時間圧力下で固定させる。いくつかの実施形態では、圧力は、急に圧力を加えることによって引き起こされる裂けまたはその他の影響を防ぐために、ある期間にわたって(例えば、36時間にわたって0~およそ6,6,00psiまで)徐々に増加する。全圧時、皮革を圧力下で固定させることができる場合があるか、またはいくつの実施形態では、皮革は、圧力が最大に到達したときに十分に固定される。いくつかの実施形態では、皮革が圧力下にある時間を、場合によっては、わずか10分程度に短縮するために、材料促進剤が皮革に加えられる。他の実施例では、熱固定フィルムが加えられ、熱と圧力とが同時に加えられて、熱固定フィルムが皮革をサポートし、変形後の形状を維持するのを助ける方法で、皮革を迅速に固定するのを助ける。いくつかの実施形態では、延伸皮革(例えば、皮革を延伸させることによって生産される皮革)およびニット地の布地の両方を一緒に結合して、皮革に「マイクロアコーディオン」効果を作り出し、延伸ニットの特質を皮革に与える。いくつかの実施形態では、同様の技法が、3D鋳型内で容易に延伸および結合され得る布地に適用され、いくつかの実施例では、延伸を伴わずに適用される。
【0025】
開放鋳型-皮革がどの程度きちんと成形されているかを詳細に検査する。皮革を再度含浸させ、皮革を2~3回以上再度押圧して、所望の細部を達成することが一般的である。
【0026】
熱硬化性エラストマーの導入
一実施形態では、熱硬化性エラストマーを導入するための加工は以下のとおりである。内側鋳型を分離し、皮革の裏側からプラスチック層を取り外す。皮革溶媒の吸収に応じて、皮革を乾燥させる。この収縮が所望の最終製品でない限り、皮革が鋳型から外れて収縮する可能性が高いため、完全に乾燥させてはならない。
【0027】
ブラシまたはスプレーなどを使用して、熱硬化性ゴムを所望の厚さで導入する。熱硬化性エラストマーは、シリコーンおよびポリウレタンを含む。エラストマーの浸透を強化するために、材料をもう一度押圧して、材料を皮革の裏側にさらに押し進めることができる。この場合、材料が皮革の表側に染み込むのを防ぐために、エラストマーの触媒作用の特定の時点で押圧が行われる。ポリウレタンにブラシをかけるなどの様々な技法、および概して、有機エラストマーを使用することができることに留意されたい。その他の任意選択としては、成型後も皮革に形状を維持させるように、皮革に(例えば、熱固定フィルムもしくは化学固定フィルムなどのフィルム内で)ブラシをかけること、注ぐこと、または別様に塗布することができる形状維持材料が挙げられるが、これらに限定されない。かかる材料を組み合わせて、各々が有する異なる特質を同時に利用することもできる。
【0028】
皮革の構造を強化するために、オペレータは、フェルトまたはキャンバスなどの布地に、追加の強度またはサポートを設定することができる。
【0029】
仕上げ成型
一実施形態では、仕上げ成型のための加工は以下のとおりである。触媒作用を受けたら、鋳型を開放し、皮革を慎重に取り外す。ここで、皮革をトリミングして製品に組み立てる準備が整う。いくつかの実施形態は、例えば、複数の色を1つのデザインに入れるために、複数片の皮革を一緒に「積層」圧入することを伴う。この加工の全体または一部を行って、様々なデザインを達成することができる。
【0030】
当業者がこの開示に照らして理解するように、ある特定の実施形態は、皮革におけるよりはっきりとした表面効果、表面装飾を含む皮革のより効率的な生産、皮革を所望の形状に維持するために必要な材料が少なくなる、およびその他の利点の一部またはすべてを含む、ある特定の利点を達成することができる場合がある。
【0031】
したがって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく、例示的なものと見なされるべきである。しかしながら、特許請求の範囲に記載される本発明のより広い趣旨および範囲から逸脱することなく、それらに様々な修正および変更を行うことができることは明らかであろう。
【0032】
その他の変種は、本開示の趣旨の範囲内である。したがって、開示される技法は、様々な修正および代替的な構築物の影響を受けやすいが、それらの特定の例示された実施形態が図面に示され、上で詳細に記載されている。しかしながら、開示される特定の形態(複数可)に本発明を限定する意図はないが、逆に、その意図は、添付の特許請求の範囲に定義される、本発明の趣旨および範囲内に該当するすべての修正、代替的な構築物、および同等物を網羅することであることを理解されたい。
【0033】
開示される実施形態を説明する文脈において(とりわけ、以下の請求項の文脈において)、用語「a」および「an」ならびに「the」および同様の指示対象の使用は、別様に本明細書に示唆されるか、または文脈に明確に矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。同様に、「または」という用語の使用は、明示的にまたは文脈によって矛盾していない限り、「および/または」を意味するように解釈されるべきである。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」という用語は、別様に明記されない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない(including,but not limited to)」を意味する)として解釈されるべきである。「接続された」という用語は、修正されずに物理的な接続を指す場合、何かが介在していたとしても、部分的にまたは完全に内部に含有されるか、取り付けられるか、または一緒に結合されるように解釈されるべきである。本明細書で別様に示唆されない限り、本明細書における値の範囲の詳説は単に、その範囲内に該当する各別個の値を個々に参照する簡略な方法として機能することを意図するものであり、各別個の値は、本明細書で個々に詳説されているかのように本明細書に組み込まれる。「セット」(例えば、「項目のセット」)または「サブセット」という用語の使用は、別様に明記されない限り、または文脈に矛盾しない限り、1つ以上の部材を含む空でない集まりとして解釈されるべきである。さらに、別様に明記されない限り、または文脈に矛盾しない限り、対応するセットの「サブセット」という用語は、対応するセットの適切なサブセットを必ずしも示すものではないが、サブセットおよび対応するセットは等しくてもよい。「に基づいて」という語句の使用は、別様に明示的に述べられていない限り、または文脈から明らかでない限り、「少なくとも部分的に基づいて」を意味し、「のみに基づいて」に限定されない。
【0034】
別様に具体的に述べられていない限り、または別様に文脈に明らかに矛盾しない限り、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B,and C)」または「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B and C)」という形式の語句(すなわち、オックスフォードコンマの有無にかかわらず同じ語句)などの接続的な文言は、一般的に使用される文脈内で、項目、用語などが、AまたはBまたはC、AおよびBおよびCのセットのいずれかの空でないサブセット、あるいは少なくとも1つのA、少なくとも1つのB、または少なくとも1つのCを含有することが文脈に矛盾しないか、または別様に除外されていない任意のセットのいずれかであり得ることを提示するように別様に理解される。例えば、3つの部材を有するセットの例示的な実施例では、接続的な語句「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B,and C)」ならびに「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B and C)」は、{A}、{B}、{C}、{A、B}、{A、C}、{B、C}、{A、B、C}のセットのいずれかを指し、明示的にまたは文脈に矛盾しない場合には、サブセットとしての{A}、{B}、および/または{C}を有する任意のセット(例えば、複数の「A」を含むセット)を指す。したがって、かかる接続的な文言は、ある特定の実施形態が、Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、およびCの少なくとも1つは各々が存在することを必要とすることを含意することを概して意図するものではない。同様に、異なる意味が明示的に述べられていない限り、または文脈から明らかでない限り、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B,or C)」および「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B or C)」などの語句は、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B,and C)」ならびに「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A,B and C)」が、{A}、{B}、{C}、{A、B}、{A、C}、{B、C}、{A、B、C}のセットのいずれかを指すことと同じことを指す。加えて、別様に明記されない限り、または文脈に矛盾しない限り、「複数」という用語は、複数であることを示唆する(例えば、「複数の項目」は多数の項目を示唆する)。複数の項目の数は、少なくとも2つであるが、明示的にまたは文脈によってそのように示唆されている場合、それ以上である場合がある。
【0035】
本明細書に記載される加工の動作は、本明細書で別様に示唆されない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。一実施形態では、本明細書に記載されるそれらの加工(または変種および/もしくはそれらの組み合わせ)などの加工は、実行可能な命令で構成された1つ以上のコンピュータシステムの制御下で実施され、ハードウェアまたはそれらの組み合わせによって、1つ以上のプロセッサ上で集合的に実行されるコード(例えば、実行可能な命令、1つ以上のコンピュータプログラム、または1つ以上のアプリケーション)として実装される。一実施形態では、コードは、例えば、1つ以上のプロセッサによって実行可能な複数の命令を含むコンピュータプログラムの形態で、コンピュータ可読記憶媒体に記憶される。一実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、一時的な信号(例えば、伝播する一時的な電気または電磁伝送)を除外するが、一時的な信号のトランシーバ内に非一時的なデータ記憶回路機構(例えば、バッファ、キャッシュ、およびキュー)を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体である。一実施形態では、コード(例えば、実行可能なコードまたはソースコード)は、実行可能な命令が記憶された1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体のセットに記憶され、実行可能な命令は、コンピュータシステムの1つ以上のプロセッサによって実行されると(すなわち、実行の結果として)、コンピュータシステムに本明細書に記載される動作を実施させる。一実施形態では、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体のセットは、複数の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み、複数の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の個々の非一時的な記憶媒体のうちの1つ以上は、すべてのコードを欠くが、複数の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、すべてのコードを集合的に記憶する。一実施形態では、実行可能な命令は、異なる命令が異なるプロセッサによって実行されるように実行される。例えば、一実施形態では、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、命令を記憶し、メインCPUは、命令のうちのいくつかを実行する一方、グラフィックスプロセッサユニットは、その他の命令を実行する。別の実施形態では、コンピュータシステムの異なる構成要素は、別個のプロセッサを有し、異なるプロセッサは、命令の異なるサブセットを実行する。
【0036】
したがって、一実施形態では、コンピュータシステムは、本明細書に記載される加工の動作を単独でまたは集合的に実施する1つ以上のサービスを実装するように構成され、かかるコンピュータシステムは、動作の実施を可能にする適用可能なハードウェアおよび/またはソフトウェアで構成される。さらに、本開示の一実施形態では、コンピュータシステムは、単一のデバイスであり、別の実施形態では、分散型コンピュータシステムであり、分散型コンピュータシステムは、分散型コンピュータシステムが本明細書に記載される動作を実施するように異なって動作し、単一のデバイスがすべての動作を実施するわけではない。
【0037】
本明細書に提供される任意およびすべての例または例示的な文言(例えば、「など(such as)」)の使用は単に、本発明の実施形態をよりよく明らかにすることを意図するものであり、別様に請求されない限り、本発明の範囲に対する限定を主張するものではない。本明細書内の文言は、任意の請求されていない要素が本発明の実践に不可欠であることを示唆するものとして解釈されるべきではない。
【0038】
本開示の実施形態は、本明細書に記載されており、本発明を行うために発明者らに知られている最善のモードを含む。これらの実施形態の変種は、前述の説明を読むと当業者には明らかになる場合がある。本発明者らは、当業者がかかる変種を適切に用いることを期待し、本発明者らは、本開示の実施形態が、本明細書に具体的に記載される以外の方法で実施されることを意図する。したがって、本開示の範囲は、適用可能な法律によって許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に引用された主題のすべての修正例および同等物を含む。さらに、それらのすべての可能な変種における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別様に示唆されない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、本開示の範囲に包含される。
【0039】
本明細書に列挙される出版物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み込まれることが示唆され、その全体が本明細書に記載された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12