(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】ろ過用フィルター、フィルター付容器、及び細胞懸濁液中の異物除去方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230607BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20230607BHJP
C12M 1/28 20060101ALI20230607BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20230607BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/12
C12M1/28
C12N5/07
(21)【出願番号】P 2020553390
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041306
(87)【国際公開番号】W WO2020085301
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2018199182
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228545
【氏名又は名称】JCRファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 梓
(72)【発明者】
【氏名】串田 尚
(72)【発明者】
【氏名】石割 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】今川 究
(72)【発明者】
【氏名】細田 勇喜
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123619(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/007382(WO,A1)
【文献】特開2006-231875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226691(US,A1)
【文献】米国特許第05911886(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0216743(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12M 1/12
C12M 1/28
C12N 5/07
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性フィルムにて構成され、厚さ方向に貫通された第1通過孔を内側に有する枠状に形成された第1溶着枠と、
前記第1溶着枠と同じ材質の可撓性フィルムにて構成され、前記第1溶着枠と厚さ方向にて対向して配置され、前記第1通過孔に対応した位置に厚さ方向に貫通された第2通過孔を内側に有する枠状に形成された第2溶着枠と、
前記第1溶着枠及び前記第2溶着枠より高い融点をもちかつ孔部を備え当該孔部による開孔率が10%以上80%以下とされた
ポリエチレンテレフタレートにて構成されると共に、外周部が前記第1溶着枠の全周と前記第2溶着枠の全周との間に挟み込まれた状態で前記第1溶着枠と前記第2溶着枠とにそれぞれ溶着されたフィルターと、を有し、
前記第1溶着枠
及び前記第2溶着枠を構成する前記可撓性フィルムが、
膜厚200μm以上で融点が120℃~140℃である高密度ポリエチレン、
又は膜厚200μm以上で融点が1
13℃~125℃である線状低密度ポリエチレ
ンにより構成されている、
ろ過用フィルター。
【請求項2】
前記第1通過孔、前記フィルターにおける前記第1溶着枠及び前記第2溶着枠のいずれにも接していない部分、前記第2通過孔、の順にろ過対象物中の流体が移動可能な形態で前記第1溶着枠、前記フィルター、及び前記第2溶着枠が溶着されている、
請求項
1に記載のろ過用フィルター。
【請求項3】
前記フィルターが織物または編物である、
請求項1
又は請求項
2に記載のろ過用フィルター。
【請求項4】
前記フィルターにおける前記孔部の孔径が5~200μmである、
請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載のろ過用フィルター。
【請求項5】
前記フィルターが矩形シート状である、
請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載のろ過用フィルター。
【請求項6】
前記第1溶着枠及び前記第2溶着枠の形状が略同一である、
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載のろ過用フィルター。
【請求項7】
前記フィルターは、前記第1溶着枠の全周と前記第2溶着枠の全周との間に挟み込まれた状態で、前記第1溶着枠及び前記第2溶着枠に、それぞれ前記第1溶着枠又は前記第2溶着枠の融点以上前記フィルターの融点以下の温度で加熱することにより溶着されている、
請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載のろ過用フィルター。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のろ過用フィルターが、ポリマーからなる容器の内部を区画するように溶着されている、
フィルター付容器。
【請求項9】
前記容器が略同一形状の矩形状の可撓性ポリマーシートを2枚対向しかつ当該
可撓性ポリマーシートの周縁部同士を溶着して構成されており、
前記容器の内部に設けられた前記ろ過用フィルターにおける前記第1溶着枠が、前記容器の一方の前記可撓性ポリマーシートに厚さ方向視にて一方が開放される略U字状の第1溶着部により溶着されており、
前記ろ過用フィルターにおける前記第2溶着枠が、前記容器の他方の前記可撓性ポリマーシートに厚さ方向視にて他方が開放される略U字状の第2溶着部により溶着されており、
前記第1溶着部の開口と前記第2溶着部の開口とが、反対側の向きとされている、
請求項
8に記載のフィルター付容器。
【請求項10】
前記容器に注入用ポート及び注出用ポートの少なくとも一方を備えた、
請求項
8又は請求項
9に記載のフィルター付容器。
【請求項11】
前記ろ過用フィルターにより区画された前記容器の内部の一方に注入用ポートを、他方に注出用ポートを備えた、
請求項1
0に記載のフィルター付容器。
【請求項12】
請求項
8から請求項1
1のいずれか一項に記載の前記フィルター付容器における容器内部の一方の区画に細胞懸濁液を注入し、この細胞懸濁液をろ過用フィルターに通過させ、他方の区画から細胞を含むろ液を回収する工程を含む、
細胞懸濁液に含まれる異物を除く方法。
【請求項13】
請求項
8から請求項1
1のいずれか一項に記載の前記フィルター付容器における容器内部の一方の区画に細胞懸濁液を注入し、この細胞懸濁液をろ過用フィルターに通過させ、他方の区画から細胞を含むろ液を回収し、更に、当該一方の区画に細胞懸濁用の溶液を注入し、同区画に残存する細胞を再懸濁させ、この再懸濁させた細胞懸濁液をろ過用フィルターに通過させて他方の区画から細胞を含むろ液を回収する工程を含む、
細胞懸濁液に含まれる異物を除く方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ろ過用フィルター、フィルター付容器、及び細胞懸濁液中に含まれる異物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者本人または提供者の体液や組織から細胞を採取し、採取した細胞を培養し、得られた細胞を患部に直接移植したり、それを播種した足場材を患部に移植したりすることで疾患を治療する細胞医療や再生医療が注目されている。皮膚や角膜、骨、軟骨などの一部の組織に関しては、実際にこれらを用いた細胞医療、再生医療が行われており、次世代の治療方法として期待されている。
【0003】
細胞医療や再生医療を行うには、患者から採取した細胞を培養増殖して一定数の細胞数を確保する必要がある。一定数まで増殖した細胞は、培養液中から回収され、洗浄、濃縮を行うことで、細胞治療や再生医療用の細胞として使用することが可能となる。
【0004】
もっとも、培養後の細胞懸濁液中には、培地や血清、培養用の担体、細胞由来の老廃物やデブリなどが含まれているので、これらを分離、除去する必要がある。さらに、これらを除去した後も細胞の洗浄や濃縮を行う必要があるが、これらを行う方法として、遠心分離法が知られている。例えば、国際公開第2013/114845号においては、細胞を培養するための培養容器と、培地等を貯蔵するための培地貯蔵容器と、細胞を注入するための細胞注入容器と、培養後の細胞懸濁液を回収する細胞回収容器とを導管によって連結し、閉鎖系の環境を構築してなる細胞培養用キットが提案されている。このような細胞培養用キットによれば、細胞注入から培地追加、サンプリング、回収までをキット内で閉鎖系を維持しながら行うことが可能となる。
【0005】
国際公開第2013/114845号にはさらに、培養された細胞を回収するにあたり、培養容器を静置して細胞培養液中の細胞を沈降させた後に細胞培養液の上澄みを排出し、液量を低減させてから濃縮された細胞培養液を培養容器から細胞回収容器に移送する例が示されている。
【0006】
しかしながら、このようにして細胞の回収を行うには、細胞培養液の上澄みを排出するに先立って、培養容器を静置して細胞懸濁液中の細胞を沈降させなければならず、細胞を沈降させるまでに時間を要する。さらに、十分な時間をかけて細胞培養液中の細胞を沈降させても、排出操作によって上澄みに細胞が混入し、上澄みと一緒に細胞が排出されてしまう虞もある。
【0007】
国際公開第2014/007382号には、溶融した樹脂層を金属製フィルターの孔に侵入させることで対向する樹脂層と互いに溶着させるレーザー溶着により、十分な溶着強度が得られたことが記載されている。しかし、閉鎖系の細胞処理に用いるものとしては、金属製フィルターでは可撓性に乏しい問題がある。
【0008】
特開2006-231875号公報には、フィルターとしてポリエステル樹脂製の繊維(不織布)を用い、それをケース構成部材で挟持してなる車両用流体フィルター装置が記載されている。特開2006-231875号公報には、ケース構成部材の一方を顔料等で着色されていないナイロン66、ナイロン6等の樹脂とし、他方を顔料等で着色したナイロン66、ナイロン6等の樹脂とすることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の技術の目的は、二つのポリマーフィルムの間にフィルターが高い溶着強度で固定されたろ過用フィルター、及び内部を区画するようにろ過用フィルターが溶着されたフィルター付容器、ならびにフィルター付容器を用いた細胞懸濁液中に含まれる異物を除去する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の技術の発明者らは、二つのポリマーフィルムの間にフィルターが固定されたろ過用フィルターを作製するにあたり、これらのポリマーフィルムとフィルターとの間で高い溶着強度が得られるポリマーフィルムの素材及びその膜厚、ならびにフィルターの開孔率を見出し、この知見に基づいて本開示の技術を完成した。
【0011】
すなわち、本開示の技術は、例えば、ポリマーを含む膜厚120μm以上の可撓性のポリマーフィルムにて構成され、厚さ方向に貫通された第1通過孔を内側に有する枠状に形成された第1溶着枠と、ポリマーを含む膜厚120μm以上の可撓性のポリマーフィルムにて構成され、厚さ方向に貫通された第2通過孔を内側に有する枠状に形成された第2溶着枠と、及びこれらのポリマーフィルムの材質より高い融点をもちかつ孔部を備え当該孔部による開孔率が10%以上80%以下とされた材質からなりかつ外周部が第1溶着枠の枠部の全周と第2溶着枠の枠部の全周との間に挟み込まれた状態で第1溶着枠と第2溶着枠とにそれぞれ溶着されたフィルターとを含んでなり、第1溶着枠が、融点が120℃~140℃である高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Polyethylene)、融点が105℃~125℃である線状低密度ポリエチレン(LLDPE:Linear Low Density Polyethylene)、又は前記高密度ポリエチレン及び前記線状低密度ポリエチレンの少なくとも一方を混合した混合物を含むポリマーにより構成されている、ろ過用フィルターである。
【0012】
ここで、「開孔率」とは、全体の面積に対する孔部の面積の割合をいう。
【0013】
また、本開示の技術は、かかるろ過用フィルターがポリマーからなる容器内部に溶着され、それにより容器内部が区画されている、フィルター付容器を含むものである。
【0014】
さらに、本開示の技術の一実施態様は、かかるフィルター付容器における容器内部の一方の区画に異物を含むか又は含むおそれのある細胞懸濁液を注入し、この細胞懸濁液をろ過用フィルターを通過させて他方の区画から細胞を含むろ液を回収することにより、細胞懸濁液に含まれる異物を除く方法に関するものである。フィルターは厚さ方向に連通した孔部を有し、この孔部は、細胞を通過させることができるが、ある一定の大きさ以上の異物は通過することができない孔径を有する。従って、ろ過用フィルターを通過させることにより、細胞懸濁液から、かかる異物を除去することができる。
【0015】
さらに、本開示の技術の一実施態様は、かかるフィルター付容器における容器内部の一方の区画に細胞懸濁液を注入し、この細胞懸濁液をろ過用フィルターに通過させて細胞を含むろ液を回収し、更に、同区画に細胞懸濁用の溶液を注入し、同区画に残存する細胞を再懸濁させ、この再懸濁させた細胞懸濁液をろ過用フィルターに通過させて細胞を含むろ液を回収する工程を含む、細胞懸濁液に含まれる異物を除く方法に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本開示の技術のろ過用フィルター及びフィルター付容器においては、フィルターにおける第1溶着枠及び第2溶着枠に挟まれていない部分、すなわち第1通過孔と第2通過孔とに対応した部分がフィルターとしての機能を発揮する。ここで、フィルターと第1溶着枠及び第2溶着枠とは高い溶着強度で溶着されているので、溶着部が剥がれにくく、溶着部から流体が漏れる虞が少ない。
【0017】
したがって、本開示の技術のフィルター付容器を用いた本開示の技術の細胞懸濁液中に含まれる異物を除去する方法を実施する場合も、溶着部からの液漏れの虞は少ない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係るフィルター付容器を示す平面図である。
【
図2】一実施形態に係るフィルター付容器を示す分解斜視図である。
【
図3】一実施形態に係るフィルター付容器を示す概略斜視図である。
【
図4】
図1におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2に例示されるように、本開示の技術の一実施形態は、第1溶着枠10と第2溶着枠12との間に、第1溶着枠10及び第2溶着枠12の材質より高い融点をもつ材質からなりかつ第1溶着枠10及び第2溶着枠12には挟まれない部分を有する、平面状のフィルター14が溶着により固定されているろ過用フィルター16である。
【0020】
以下、
図2に示されるろ過用フィルター16を例にとって、本開示の技術におけるろ過用フィルターを構成する各部材について詳述する。フィルター14の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレートやポリアクリロニトリルなどのアクリル系ポリマー、ナイロンなどのポリアミド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、レーヨン、セルロース、キチン、キトサン、綿、麻、ガラス、炭素繊維、及び金属からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。なかでもポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、炭素繊維、及び金属からなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましく、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、炭素繊維、及び金属からなる群から選択される少なくとも一種類であることがさらに好ましく、ポリエステルまたはポリアミドであることが最も好ましい。
【0021】
ここで、ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレートなどが挙げられる。ポリアミドの具体例としては、6,6-ナイロン、6-ナイロン、12-ナイロンなどが挙げられる。
【0022】
フィルター14の材質は、孔部14Aを複数有する連通孔構造の多孔質体形状、繊維の集合体、不織布、織物、編物などでもよいが、織物や編物であることが好ましい。
【0023】
フィルター14の孔部14Aの孔径は、細胞以外の培養担体残渣など夾雑物を捕捉するために必要な径である5μm以上、200μm以下であることが好ましい。孔部14Aの孔径が5μmより小さいと、フィルター14の目詰まりが生じ、夾雑物の除去効率が低下する恐れがある。一方、孔部14Aの孔径が200μmより大きいと、夾雑物や目的細胞の捕捉が困難となる。比較的大きな培養担体残渣などの夾雑物の除去効率及び目的細胞の捕捉性から、孔部14Aの孔径は10μm~200μmであるものが好ましい。
【0024】
フィルター14の開孔率は、溶着強度の点から考えて、10%以上、80%以下である。開孔率が10%より低いと、第1溶着枠10及び第2溶着枠12を構成するポリマーフィルムと溶着する際に、溶けたポリマーフィルムがフィルター14に絡まり難くなり、層間剥離などの問題を引き起こしやすくなる。一方で、フィルター14の開孔率が80%より大きいとフィルター14の強度が低下し、切断や割れ、亀裂が発生する可能性がある他、ろ過用フィルター16としても、力学強度が低下する恐れがある。フィルター14の開孔率は10%以上70%以下が好ましく、さらに10%以上50%以下がより好ましい。
【0025】
また、フィルター14の材質は、第1溶着枠10及び第2溶着枠12の材質よりも融点が高いものである。フィルター14の材質は、第1溶着枠10及び第2溶着枠12の材質の融点と比較して、80℃以上且つ180℃以下の範囲で高い融点を有するものが好ましく、100℃以上であって160℃以下の範囲で高い融点を有するものがより好ましく、110℃以上であって150℃以下の範囲で高い融点を有するものが更に好ましい。例えば、第1溶着枠10及び第2溶着枠12の材質が、融点が120℃~140℃である高密度ポリエチレンである場合、フィルター14の材質の融点は、好ましくは200℃以上であって320℃以下であり、より好ましくは220℃以上であって300℃以下であり、更に好ましくは230℃以上であって290℃以下である。また例えば、第1溶着枠10及び第2溶着枠12の材質が、融点が105℃~125℃である線状低密度ポリエチレンである場合、フィルター14の材質の融点は、好ましくは185℃以上であって305℃以下であり、より好ましくは205℃以上であって285℃以下であり、更に好ましくは215℃以上であって275℃以下である。
【0026】
また、フィルター14の膜厚は、溶着後のフィルター14の強度の面から、50μm以上200μm以下であることが好ましい。フィルター14の膜厚が50μmよりも小さいとフィルター14の強度が低下し、切断や割れ、亀裂が発生する可能性がある他、ろ過用フィルター16としても、力学強度が低下する恐れがある、一方で、フィルター14の膜厚が200μmよりも大きいと、第1溶着枠10及び第2溶着枠12を構成するポリマーフィルムを溶融させた場合に、フィルター14の表面に近い領域におけるフィルター14の孔部14Aにしか溶融したポリマーフィルム素材が浸透せず、対向した第1溶着枠10及び第2溶着枠12同士の溶着が起きにくくなるなど、溶着強度が不十分になる恐れがある。
【0027】
第1溶着枠10及び第2溶着枠12の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン―プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートやポリアクリロニトリルなどのアクリル系ポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、及びカーボンからなる群から選択される一種または複数のものの混合物であることが好ましい。なかでもポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリオレフィンポリエステル、ポリアミド、及びポリビニルアルコールからなる群から選択される一種または複数のものの混合物がより好ましく、高密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンであることが最も好ましい。特に、その材質が高密度ポリエチレンである場合、融点は120℃~140℃であることが好ましく、線状低密度ポリエチレンである場合、融点は105℃~125℃であることが好ましい。
【0028】
ここで、2種類以上の材質の混合物からなるものとしては、その組み合わせに特に限定はないが、なかでもポリエチレン及びポリアミド、ポリエチレン及びポリビニルアルコールの組み合わせが好ましい。
【0029】
第1溶着枠10及び第2溶着枠12の材質として使用される、融点が120℃~140℃である高密度ポリエチレンの密度は、概ね910kg/m3~950kg/m3であり、融点が105℃~125℃である線状低密度ポリエチレンの密度は、概ね912kg/m3~930kg/m3である。
【0030】
なお、上記の材質の融点は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を用いた測定において、吸熱ピーク位置の温度として得られるものであり、また、上記の材質の密度は、JIS K 0061 「化学製品の密度及び比重測定方法」、JIS Z 8807「固体の密度及び比重の測定方法」記載の液中秤量法にて測定して得られるものである。
【0031】
本開示の技術のろ過用フィルター16においては、第1溶着枠10及び第2溶着枠12はいずれも厚さ方向に貫通された第1通過孔10A又は第2通過孔12Aを内側に有する枠状であり、かつ、
i)第1溶着枠10の枠内の第1通過孔10A
ii)フィルター14のうち、第1溶着枠10及び第2溶着枠12のそれぞれの枠部10B、12Bに接していない部分
iii)第2溶着枠12の枠内の第2通過孔12A
の順、またはその逆の順にろ過対象物中の流体が移動可能な形態で、第1溶着枠10、フィルター14、及び第2溶着枠12が溶着されていることが好ましい。
【0032】
このように、第1溶着枠10及び第2溶着枠12がいずれも枠状である場合、それらは同一形状であっても異なる形状であってもよいが、第1溶着枠10の打ち抜き部である第1通過孔10Aと第2溶着枠12の打ち抜き部である第2通過孔12Aとが同一形状であることが好ましく、なかでもそれらが矩形状(正方形を含む)であるものが好ましく、さらに第1溶着枠10及び第2溶着枠12は、いずれも第1溶着枠10及び第2溶着枠12の外形と相似形であることが好ましい(この場合、枠部10B、12Bの幅は概ね均一となる)。特に、第1溶着枠10の第1通過孔10Aと、第2溶着枠12の第2通過孔12Aとが同一の矩形状であり、かつ第1溶着枠10の外形及び第2溶着枠12の外形がいずれもそれと相似する矩形状であるものが好ましく、とりわけ第1溶着枠10の外形及び第2溶着枠12の外形が同一の矩形状であるものが最も好ましい。
【0033】
本開示の技術で用いる平面状のフィルター14において、フィルター14としての機能を発揮するのは第1溶着枠10及び第2溶着枠12に挟まれていない部分、すなわち第1溶着枠10の第1通過孔10A及び第2溶着枠12の第2通過孔12Aに対応した部分であるが、本開示の技術のろ過用フィルター16において第1溶着枠10及び第2溶着枠12がいずれも枠状である場合、ろ過対象物中の流体は、前述のように、第1溶着枠10の枠内の第1通過孔10A、フィルター14における第1溶着枠10の第1通過孔10A及び第2溶着枠12の第2通過孔12Aに対応した部分、第2溶着枠12の枠内の第2通過孔12Aの順、またはその逆の順に移動する一方、第1溶着枠10と第2溶着枠12とが溶着されている部分では、かかる流体の移動が阻止される。
【0034】
したがって、本開示の技術のろ過用フィルター16において第1溶着枠10及び第2溶着枠12がいずれも枠状である場合、本開示の技術のろ過用フィルター16におけるフィルター14がその機能を発揮するには、フィルター14の外形は、第1溶着枠10の第1通過孔10A及び第2溶着枠12の第2通過孔12Aの全周において、第1溶着枠10及び第2溶着枠12との重なり部を形成しうるものでなければならない。
【0035】
本開示の技術で用いるフィルター14の形状としては、矩形状(正方形を含む)であることが好ましく、その場合、第1溶着枠10及び第2溶着枠12は、いずれもこうした形状のフィルター14の周縁部で重なる同一形状であることが好ましい。
【0036】
第1溶着枠10及び第2溶着枠12の膜厚は、フィルター14との高い溶着強度を得る必要から、いずれも120μm以上である。第1溶着枠10及び第2溶着枠12の膜厚の上限は、フィルター14との溶着強度の観点からは特段の制限はないが、可撓性をもたせる観点からはいずれも500μm以下が好ましい。第1溶着枠10及び第2溶着枠12の膜厚としては200μm以上400μm以下がより好ましく、200μm以上300μm以下が最も好ましい。
【0037】
溶着部34の溶着強度は、実施例B(溶着強度の評価方法)に記載の方法で測定したときに、好ましくは20N/15mm以上であり、より好ましくは23N/15mm以上であり、更に好ましくは30N/15mm以上である。例えば、溶着部34の溶着強度は、20N/15mm~80N/15mmであり、23N/15mm~60N/15mmであり、又は30N/15mm~60N/15mmである。なお、JIS Z0238の規格値は23N/15mmであるが、本開示の技術のろ過用フィルター16においても、この数値が達成すべき溶着部34の溶着強度の目安となる。但し、溶着部34の溶着強度がこの数値を下回ったとしても直ちに使用不可能というわけではない。
【0038】
本開示の技術におけるろ過用フィルター16とは、第1溶着枠10と、第2溶着枠12との間にフィルター14を挟み、それらを第1溶着枠10又は第2溶着枠12の融点以上であってフィルター14の融点以下の温度にて加熱することで、溶融した第1溶着枠10及び第2溶着枠12のポリマーを溶融していないフィルター14の孔部14Aに侵入させ、その後、例えば放熱によりポリマーを固化させることで、第1溶着枠10及び第2溶着枠12のそれぞれとフィルター14とを溶着部34を介して固定した3層を含む積層体をいう。特に、フィルター14の両面から溶融したポリマーが、それぞれ溶融していないフィルター14の孔部14Aを貫通して連結し、対向した第1溶着枠10及び第2溶着枠12同士が結合することにより固定されているものが好ましい。
【0039】
そして、本開示の技術のろ過用フィルター16は、その第1溶着枠10及び第2溶着枠12の少なくとも一方を介して、他の部材と溶着させてもよい。この場合、本開示の技術における第1溶着枠10及び第2溶着枠12の少なくとも一方は、他の部材との溶着を実現するための媒体として機能している。
【0040】
図4に例示されるように、本開示の技術の一実施形態は、ろ過用フィルター16が、2枚のポリマーシート(20A、20B)を含む容器20内部に溶着され、それにより容器20の内部が区画されている、フィルター付容器22である。以下、
図4に示されるフィルター付容器22を例にとって、本開示の技術におけるフィルター付容器について詳述する。
【0041】
ここで「区画された」とは、
図4に示されるように、ろ過用フィルター16の一方の面と容器20の内部とで構成される空間である区画S1から、ろ過用フィルター16の他の面と容器20の内部とで構成される空間である区画S2に流体が移動するための流路が、ろ過用フィルター16のフィルター14以外には生じない態様で、ろ過用フィルター16により容器20の内部が仕切られていることをいう。こうした構成により、本開示の技術のフィルター付容器22はろ過器として機能する。
【0042】
本開示の技術における容器20は、2枚のポリマーシート(20A、20B)を含む。これらポリマーシートの材質は可撓性プラスチックであり、具体例としては、本開示の技術における第2溶着枠12について前記したものと同じものが挙げられ、好ましいものとしても物性(特に融点)が同様なものが挙げられるが、特に第1溶着枠10の材質や第2溶着枠12の材質と相溶性があるものが好ましい。容器20の内部に本開示の技術のろ過用フィルター16を固定するに際し、溶着法を用いうるからである。例えば、第1溶着枠及び第2溶着枠及び当該可撓性プラスチックの材質が、融点が120℃~140℃である高密度ポリエチレンである場合、当該可撓性プラスチックの材質としてもそれと同一の高密度ポリエチレンが好適に使用できる。また例えば、第1溶着枠及び第2溶着枠の材質が、融点が105℃~125℃である線状低密度ポリエチレンである場合、当該可撓性プラスチックの材質としてもそれと同一の線状低密度ポリエチレンが好適に使用できる。
【0043】
かかる容器20の形状としては、同一形状の、例えば矩形状のポリマーシートを2枚対向して周縁部を溶着して製造したものが好ましく挙げられる。
【0044】
その場合、ろ過用フィルター16も容器20の矩形状より少し小さい略相似形とし、(
図1参照)、容器20の一方の内面に第1溶着枠10を第1溶着部24にて溶着させると共に、容器20の他方の内面に第2溶着枠12を第2溶着部26にて溶着させているものが好ましい。なお、容器20を構成するポリマー「シート」と、第1溶着枠10及び第2溶着枠12とを構成するポリマー「フィルム」とは、素材が可撓性を有する略同一のものであるが、本実施形態では使われている部位を分かり易くするためにそれぞれ「シート」と「フィルム」に区別して説明する。
【0045】
第1溶着部24は、
図2に示されるように、容器20の一方のポリマーシートに第1溶着枠10の厚さ方向視にて一方(本実施形態では容器20における長手方向の一方の端部側)が開放される略U字状に形成されている。また、第2溶着部26は、容器20の他方のポリマーシートに第2溶着枠12の厚さ方向視にて他方(本実施形態では容器20における長手方向の他方の端部側)が開放される略U字状に形成されている。つまり、第1溶着部24と第2溶着部26とは、それぞれ開放されている部位が反対側に配置されている。
【0046】
さらに、
図3に示されるように、本開示の技術で用いる容器20には、注入用ポート30及び注出用ポート32の少なくとも一方が備えられていることが好ましく、本開示の技術のろ過用フィルター16により区画されている容器20内の区画の一方に注入用ポート30が、他方の区画に注出用ポート32が備えられたものが特に好ましい。ここで、注入用ポート30や注出用ポート32の数は複数であってもよく、例えば両方の区画それぞれに注入用ポート30及び注出用ポート32が備えられていてもよい。ここで注入用ポートは、容器の内側と外側を連結する通路を有するものであり、容器20内に細胞懸濁液を注入するためのものである。フィルター付容器22の容器20内に細胞懸濁液を注入することのできる通路はこれ以外にない。注出用ポートは、逆に、容器20内から細胞懸濁液を注出するためのものである。フィルター付容器22の容器20内に細胞懸濁液を注出することのできる通路はこれ以外にない。すなわち、第1溶着部24と第2溶着部26の、それぞれ開放されている部位は、注入用ポート及び注出用ポートを取り付ける箇所を除いて、ポリマーシート20Aとポリマーシート20Bが互いに溶着されている。また、注出用ポート及び注入用ポートは、ポリマーシート20Aとポリマーシート20Bに溶着又は接着されており、各ポートが有する通路を除いて、容器20内は密封である。
【0047】
さらに、本開示の技術のフィルター付容器22は、n個(nは2以上の自然数)のろ過用フィルター16により、容器20の内部がn+1の空間に区画されたものであってもよい。この場合、容器20の内部の各区画の一部または全部に、各区画内部と連結できる注入用ポート30及び注出用ポート32の少なくとも一方を備えていてもよい。
【0048】
また、本開示の技術は、
図4に示されるように、本開示の技術のフィルター付容器22における容器20内部の一方の区画S1に図示しない細胞懸濁液を注入し、他方の区画S2から異物が除かれた細胞懸濁液を回収する工程を含む、細胞懸濁液中に含まれる異物を除去する方法である。ここで、細胞懸濁液を注入した区画S1には、例えば不要となった培養用の担体や細胞凝集体などの異物が残る。
【0049】
さらに、本開示の技術は、本開示の技術のフィルター付容器22における容器20の内部の一方の区画S1に細胞懸濁液を注入し、フィルター14により細胞を濾別し、細胞の再懸濁用の液体を同区画S1に注入し、細胞を再懸濁させ、その細胞懸濁液を同区画S1から回収する工程を含む、細胞懸濁液中に含まれる異物を除去する方法である。
【0050】
これらの細胞懸濁液中の異物除去方法や細胞懸濁液中の細胞に含まれる異物を除去する方法においては、細胞懸濁液成分のフィルター14による分離操作が不可欠であるが、そのための駆動力としては、例えば細胞懸濁液自体の重量、細胞懸濁液を注入した容器20の内部の区画S1の加圧、あるいは他方の区画S2の減圧などの手法を用いることができる。
【実施例】
【0051】
A.第1溶着枠10を構成する第1のポリマーフィルムや第2溶着枠12を構成する第2のポリマーフィルムとして用いられるポリマーフィルムの融点、密度、及び膜厚の測定方法、ならびに孔部14Aを有しフィルター14として用いられるフィルターの開孔率、孔径、及び繊維径の測定方法は、次のとおりである。
【0052】
(A-1)ポリマーフィルムの融点(Tm)の測定方法
ポリマーフィルムの融点測定は、DSC(TA Instruments製、Q20)にて行った。DSC測定条件は、窒素雰囲気下で(50ml/min)、測定温度範囲は30℃~200℃、昇温速度は10℃/minであった。ポリマーフィルムの融点としては、DSCでの融解でみられる吸熱ピークのピーク位置の温度を用いた。
【0053】
(A-2)ポリマーフィルムの密度の測定方法
ポリマーフィルムの密度測定は、液中秤量法にて行った。液中秤量法は、天秤(Mettler Toledo製、Blance XS105)に、比重測定治具(Mettler Toledo製)を取り付け、ポリマーフィルムを空気中で秤量した後、エタノール中で秤量した。液温を測定し、文献(Dweight E.Gray,American Institute of Physics Handbook,McGraw-Hill Book Company Inc.,1957)に記載された方法により、エタノールの密度を求め、次式によりポリマーフィルムの密度を計算した。
ρ={A/(A-B)}×(ρ0-d)+d
【0054】
ここで、ρは試料の密度を、Aは空気中の重さを、Bは液体中の重さを、ρ0は液体の密度を、dは空気の密度(0.002g/cm3)をそれぞれ表す。
【0055】
(A-3)ポリマーフィルムの膜厚の測定方法
ポリマーフィルムの膜厚は、フィルムメーカーが提示したカタログ値を用いた。
【0056】
(A-4)フィルターの開孔率の測定方法
フィルターの開孔率は、フィルターメーカーが提示したカタログ値を用いた。
【0057】
(A-5)フィルターの孔部の孔径の測定方法
フィルターの孔部の孔径は、フィルターメーカーが提示したカタログ値を用いた。
【0058】
(A-6)フィルターの繊維径の測定方法
フィルターの繊維径は、フィルターメーカーが提示したカタログ値を用いた。
【0059】
B.ろ過用フィルター16の作製方法
第1溶着枠10を構成する第1のポリマーフィルムと第2溶着枠12を構成する第2のポリマーフィルムとの間に、フィルター14の外周が全周にわたって挟み込まれた状態で、ポリエチレンフィルムの融点以上であってPET製のフィルター14の融点以下である230℃に設定したインパルスシーラー(石崎電機製 SURE NL-102JW)を用いて加熱することにより、第1溶着枠10、フィルター14及び第2溶着枠12とを、溶着部34を介して溶着させた。溶着部34は、フィルター14の第1溶着枠10及び第2溶着枠12に挟み込まれた部分の全周にわたって形成させた。こうして作製したろ過用フィルター16は、フィルターにおける第1溶着枠10及び第2溶着枠12に挟まれていない部分、すなわち第1通過孔10Aと第2通過孔12Aとに対応した部分がフィルターとしての機能を発揮する。ここで、ろ過用フィルター16は、第1溶着枠10を構成する第1のポリマーフィルム、第2溶着枠12を構成する第2のポリマーフィルム及びフィルター14の材質を種々変えて、下記実施例1~18、比較例1~18に記載の材質のものを作製した。なお、比較例19~20は、第1のポリマーフィルムと第2溶着枠12を構成する第2のポリマーフィルムとを溶着させたものであり、ろ過用フィルター16には相当しないが、同様にして溶着強度を評価した。
【0060】
C.溶着強度の測定方法
ろ過用フィルター16における溶着部34の溶着強度を以下に詳述する評価モデルを用いて測定した。
溶着強度の測定はJIS Z0238を参考にした剥離試験によって実施した。インパルスシーラーで溶着させたろ過用フィルター16の溶着部34を、長さ25mm、幅15mmの大きさで3個切出した。これを引張試験機(Ez-Test-Ez-SX、島津製作所製)による180°剥離試験法に供した。ここで、引張試験機は引張速度を10mm/sec、チャック間距離を20mm/secに設定した。溶着強度は、溶着部34の剥離もしくは破断が起こるまでの最大の荷重として求め(N/15mm)、N=3の平均値で評価した。
【0061】
なお、JIS Z0238の規格値は23N/15mmであるが、本開示の技術のろ過用フィルター16においても、この数値が達成すべき溶着部34の溶着強度の目安となる。
【0062】
<実施例1>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET(ポリエチレンテレフタレート)製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は32.6N/15mmであった。
【0063】
<実施例2>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、細川洋行製 POLYELITE EH、Tm=126℃、密度0.947g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は33.3N/15mmであった。
【0064】
<実施例3>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は30.5N/15mmであった。
【0065】
<実施例4>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、東洋紡製 L4102、Tm=123℃、密度0.907g/cm3、膜厚100μm、L4102、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は33.7N/15mmであった。
【0066】
<実施例5>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、タマポリ製 SE620L、Tm=113℃、密度0.921g/cm3、膜厚140μm、SE620L、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が280μmのフィルムを調製した。膜厚を280μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は26.7N/15mmであった。
【0067】
<実施例6>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、タマポリ製 SE620L、Tm=113℃、密度0.921g/cm3、膜厚140μm、SE620L、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は20.2N/15mmであった。
【0068】
<比較例1>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は13.9N/15mmであった。
【0069】
<比較例2>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、細川洋行製 POLYELITE EL、Tm=115℃、密度0.907g/cm3、膜厚250μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ28mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は13.9N/15mmであった。
【0070】
<比較例3>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、サンプラテック製、Tm=110℃、密度0.915g/cm3、膜厚300μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は14.9N/15mmであった。
【0071】
<比較例4>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、サンプラテック製、Tm=111℃、密度0.915g/cm3、膜厚500μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は14.4N/15mmであった。
【0072】
<比較例5>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は12.3N/15mmであった。
【0073】
<比較例6>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、東洋紡製 L4102、Tm=123℃、密度0.907g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 No.T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は16.0N/15mmであった。
実施例1から6及び比較例1から6の結果を表1として整理する。
【0074】
【0075】
<実施例7>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にナイロン製のフィルター14(Sefar製 03-30/18、孔径30μm、繊維径40μm、開孔率18%、Tm=252℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は29.0N/15mmであった。
【0076】
<実施例8>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にナイロン製のフィルター14(Sefar製 03-30/18、孔径30μm、繊維径40μm、開孔率18%、Tm=252℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は23.4N/15mmであった。
【0077】
<比較例7>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にナイロン製のフィルター14(Sefar製 03-30/18、孔径30μm、繊維径40μm、開孔率18%、Tm=252℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は12.0N/15mmであった。
実施例7、8及び比較例7の結果を表2として整理する。
【0078】
【0079】
<実施例9>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET24、孔径21μm、繊維径41μm、開孔率12%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は24.2N/15mmであった。
【0080】
<実施例10>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET24、孔径21μm、繊維径41μm、開孔率12%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は24.2N/15mmであった。
【0081】
<実施例11>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 07-27/19、孔径27μm、繊維径35μm、開孔率19%、Tm=256℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は32.7N/15mmであった。
【0082】
<実施例12>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(Sefar製 07-27/19、孔径27μm、繊維径35μm、開孔率19%、Tm=256℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は29.4N/15mmであった。
【0083】
<実施例13>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は32.6N/15mmであった。
【0084】
<実施例14>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は30.5N/15mmであった。
【0085】
<実施例15>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-180T、孔径86μm、繊維径55μm、開孔率37%、Tm=255℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は52.2N/15mmであった。
【0086】
<実施例16>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-180T、孔径86μm、繊維径55μm、開孔率37%、Tm=255℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は35.8N/15mmであった。
【0087】
<実施例17>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-100T、孔径183μm、繊維径71μm、開孔率52%、Tm=255℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は53.6N/15mmであった。
【0088】
<実施例18>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-100T、孔径183μm、繊維径71μm、開孔率52%、Tm=255℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は35.6N/15mmであった。
【0089】
<比較例8>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET6-HD、孔径6μm、繊維径34μm、開孔率5%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は13.1N/15mmであった。
【0090】
<比較例9>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET6-HD、孔径6μm、繊維径34μm、開孔率5%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は12.3N/15mmであった。
【0091】
<比較例10>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET6-HD、孔径6μm、繊維径34μm、開孔率5%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は6.0N/15mmであった。
【0092】
<比較例11>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET15、孔径15μm、繊維径37μm、開孔率9%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は18.5N/15mmであった。
【0093】
<比較例12>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした2枚の線状低密度ポリエチレンフィルムの間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET15、孔径15μm、繊維径37μm、開孔率9%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は17.1N/15mmであった。
【0094】
<比較例13>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET15、孔径15μm、繊維径37μm、開孔率9%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は8.1N/15mmであった。
【0095】
<比較例14>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 PET24、孔径21μm、繊維径41μm、開孔率12%、Tm=257℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は11.1N/15mmであった。
<比較例15>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(Sefar製 07-27/19、孔径27μm、繊維径35μm、開孔率19%、Tm=256℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は13.8N/15mmであった。
【0096】
<比較例16>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-380T、孔径28μm、繊維径35μm、開孔率23%、Tm=254℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は13.9N/15mmであった。
【0097】
<比較例17>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-180T、孔径86μm、繊維径55μm、開孔率37%、Tm=255℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は21.6N/15mmであった。
【0098】
<比較例18>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)2枚の間にPET製のフィルター14(NBCメッシュテック製 T-100T、孔径183μm、繊維径71μm、開孔率52%、Tm=255℃、長さ80mm、幅15mm)を挟み込み、この状態で溶着させてろ過用フィルター16を得た。その溶着部34の溶着強度は32.1N/15mmであった。
実施例9から18及び比較例8から18の結果を表3として整理する。
【0099】
【0100】
以下、仮想的な開孔率100%のフィルターを挟み込んだ場合の溶着強度を確認するために、フィルター14を挟まず、フィルムを2枚重ねて溶着したサンプルで測定した。
【0101】
<比較例19>
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、タマポリ製 HD、Tm=131℃、密度0.912g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ね、両面溶着をした後、その溶着強度を測定した。溶着強度は51.8N/15mmであった。
【0102】
<比較例20>
線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、三井化学東セロ製 HC#100、Tm=124℃、密度0.922g/cm3、膜厚100μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ねて溶着し、膜厚が200μmのフィルムを調製した。こうして膜厚を200μmとした線状低密度ポリエチレンフィルムを2枚重ね、両面溶着をした後、その溶着強度を測定した。溶着強度は33.5N/15mmであった。
【0103】
<比較例21>
低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、タマポリ製 V-2、Tm=112℃、密度0.923g/cm3、膜厚200μm、長さ80mm、幅15mm)を2枚重ね、両面溶着をした後、その溶着強度を測定した。溶着強度は27.9N/15mmであった。
比較例19から21の結果を表4として整理する。
【0104】
【0105】
<考察>
フィルムの材料とPET製のフィルター14との溶着強度の関係については、表1からわかるように、フィルムの材料としてHDPEを用いたものが最も溶着強度が高く、LDPEを用いたものが最も低く、LLDPEを用いたものはその間の溶着強度であることがわかる。同様なことは、フィルター14の材料としてナイロンを用いた表2の結果からもわかる。
【0106】
フィルムとフィルター14との溶着強度に対するフィルムの膜厚の影響については、表1の比較例1-4にあるように、フィルムの材料としてLDPEを用いた場合、フィルムの膜厚はほとんど影響しないのに対し、フィルムの材料としてLLDPEを用いた場合には、フィルムの膜厚が100μmの場合より200μmの場合の方が溶着強度が増すことがわかった。
【0107】
このように、フィルター14の材質により溶着強度への膜厚依存性が変わることは、本開示の技術で利用している溶着という現象のメカニズムにおいて解明されておらず、本開示の技術は予測可能性の低い技術分野に関するものであることを示している。
【0108】
表3からは、フィルター14の開孔率が溶着強度に与える影響がわかる。すなわち、フィルター14の開孔率がおおよそ10%~40%の範囲では、開孔率が高い方がフィルムとの溶着強度は高い傾向があるが、フィルムの材料がHDPEまたはLLDPEの場合、開孔率が40%程度で溶着強度は飽和する傾向も認められた。フィルター14の開孔率が80%を超えると、フィルターとしての機能が成り立たなくなる。
【0109】
<実施例19>
D.フィルター付容器の作製
高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、細川洋行製、POLYELITE EH、Tm=126℃、密度0.947g/cm
3、膜厚200μm)からなる枠(サイズ:外枠300mm×200mm、内枠270mm×170mm、枠幅は両端15mmずつ)の間に、PET製のフィルター14(Sefar製 07-27/19、孔径27μm、開孔率19%、Tm=256℃)を挟み、周辺部をインパルスシーラーを用い、230℃で溶着を行った。こうして作製したPET製のフィルターを有するろ過用フィルター16を
図4に示すように、高密度ポリエチレンシート製の容器20の内側の面に対して、それぞれ3辺ずつ溶着することで、PET製のフィルター14を有するろ過用フィルター16を2枚の高密度ポリエチレンシート間に固定した。また、ポリエチレン製の注入用ポート30及び注出用ポート32を高密度ポリエチレンシートに溶着で取り付けたうえ、各ポートにはポリ塩化ビニル製のチューブ36を取り付けた。最後に、高密度ポリエチレンシートのうち、PET製のフィルター14によるろ過用フィルター16を挟む部分以外の辺縁部同士を溶着することで、PET製のフィルター14によるろ過用フィルター16が容器20の内部に溶着されたフィルター付容器22を作製した。
【0110】
作製したフィルター付容器22のポリ塩化ビニル製のチューブ36から注入用ポート30を通して、0.01MPaの圧縮空気を導入した。このとき、注出側の注出用ポート32は開放し、バッグ内圧が0.01MPaになるように調整した。膨らんだフィルター付容器22を水中に入れることで、溶着部からの空気漏れを確認したが、フィルター付容器22からの空気漏れは観察されなかった。
【0111】
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0112】
上述したように、ろ過用フィルター16は、第1溶着枠10と、第1溶着枠10と厚さ方向にて対向して配置された第2溶着枠12と、外周部が第1溶着枠10の全周と第2溶着枠12の全周との間に挟み込まれた状態で溶着されたフィルター14とから構成されている。そして、第1溶着枠10をポリマーからなる膜厚120μm以上の可撓性フィルムにて厚さ方向に貫通された第1通過孔10Aを内側に有する枠状に形成すると共に、第2溶着枠12をポリマーからなる膜厚120μm以上の可撓性フィルムにて厚さ方向に貫通された第2通過孔12Aを内側に有する枠状に形成する。また、フィルター14を第1溶着枠10及び第2溶着枠12より高い融点をもちかつ孔部を備え当該孔部による開孔率が10%以上80%以下とされた材質にて構成することで、フィルター14の両面からの溶融した第1溶着枠10及び第2溶着枠12が溶融していないフィルター14の孔部14Aを貫通して連結する。したがって、対向した第1溶着枠10及び第2溶着枠12同士が結合してフィルター14を強固に固定することができる。これにより、フィルター14と第1溶着枠10及び第2溶着枠12とは高い溶着強度で溶着されているので、溶着部34が剥がれにくく、溶着部34から流体が漏れる虞が少なくなる。
【0113】
また、第1溶着枠10及び第2溶着枠12が、融点が120℃~140℃である高密度ポリエチレン、融点が105℃~125℃である線状低密度ポリエチレン、又はそれぞれを混合した混合物を含むポリマーにより構成されることで、溶着部34がより剥がれにくくなる。
【0114】
さらに、第1溶着枠10及び第2溶着枠12が、融点が120℃~140℃である高密度ポリエチレン、融点が105℃~125℃である線状低密度ポリエチレン、又はそれぞれを混合した混合物からなるポリマーにより構成されることで、溶着部34がさらに剥がれにくくなる。
【0115】
さらにまた、第1通過孔10A、フィルター14における第1溶着枠10及び第2溶着枠12のいずれにも接していない部分、第2通過孔12A、の順にろ過対象物中の流体が移動可能な形態で第1溶着枠10、フィルター14、及び第2溶着枠12が溶着されていることで、流体を確実にフィルター14に流すことができる。
【0116】
また、フィルター14が、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、炭素繊維、及び金属の少なくとも一種類を含んでいる構成とすることで、フィルター14自体の強度を確保できる。
【0117】
さらに、フィルター14が織物または編物であることで、フィルター14は可撓性を有する。そして、フィルター付容器22は、ろ過用フィルター16がポリマーからなる容器20の内部を区画するように溶着されていることで、フィルター付容器22をゆすったり、揉んだりすることが容易となり、細胞懸濁液中に含まれる異物の除去が容易となる。
【0118】
さらにまた、フィルター14における孔部14Aの孔径が10~200μmとされていることで、フィルター14の目詰まりを防ぎながら夾雑物や目的細胞を捕捉することができる。
【0119】
また、フィルター14が矩形シート状に形成されていることで、フィルター14の作製時の加工が容易となる。
【0120】
さらに、第1溶着枠10及び第2溶着枠12の形状が略同一とされていることで、ろ過用フィルター16作製時の作業効率を向上させることができる。
【0121】
さらにまた、容器20が略同一形状の矩形状のポリマーシートを2枚対向しかつ当該ポリマーシートの周縁部同士を溶着して構成されており、容器20の内部に設けられたろ過用フィルター16における第1溶着枠10が、容器20の一方のポリマーシートに厚さ方向視にて一方が開放される略U字状の第1溶着部24により溶着されており、ろ過用フィルター16における第2溶着枠12が、容器20の他方のポリマーシートに厚さ方向視にて他方が開放される略U字状の第2溶着部26により溶着されており、第1溶着部24の開口と第2溶着部26の開口とが、反対側の向きとされている。したがって、第1溶着部24の開口からフィルター14に流れた流体は、流れの向きを大きく変えることなく第2溶着部26の開口から外部へと流れる。つまり、流体が流れやすくなるため、効率良く夾雑物や目的細胞を捕捉することができる。
【0122】
また、容器20に注入用ポート30及び注出用ポート32の少なくとも一方を備えることで、容器20の内部に流体を入れやすくすることができると共に、ろ過用フィルター16により区画された容器20の内部の一方に注入用ポート30を、他方に注出用ポート32を備えることで、容器20内部の一方の区画S1に細胞懸濁液を注入し、他方の区画S2から異物が除かれた細胞懸濁液を回収し易くなる。また、フィルター付容器22における容器20内部の一方の区画S1に細胞懸濁液を注入し、ろ過用フィルター16により細胞を濾別し、細胞の再懸濁用の液体を一方の区画S1に注入して細胞を再懸濁させ、その細胞懸濁液を一方の区画S1から回収することも容易となる。
【0123】
さらに、フィルター14は、第1溶着枠10の全周と第2溶着枠12の全周との間に挟み込まれた状態で第1溶着枠10と第2溶着枠12とにそれぞれ第1溶着枠10又は第2溶着枠12の融点以上フィルター14の融点以下の温度により溶着されていることで、溶融した第1溶着枠10及び第2溶着枠12のポリマーを溶融していないフィルター14の孔部14Aに侵入させ、その後、例えば放熱によりポリマーを固化させることができる。これにより、孔部14Aに侵入した第1溶着枠10及び第2溶着枠12のポリマーがいわばアンカーとなるため、フィルター14と第1溶着枠10及び第2溶着枠12との溶着強度を向上させることができる。
【0124】
なお、上述したフィルター付容器22では、フィルター14が第1溶着枠10と第2溶着枠12との間に挟まれた構成とされているが、これに限らず、図示はしないが、容器20を区画するようにフィルター14が容器20の内部に直接溶着し、フィルター14の一方の面と容器20の内部とで構成される空間から、フィルター14の他の面と容器20の内部とで構成される空間に流体が移動するための流路が、フィルター14以外には生じない態様で、フィルター14により容器20の内部が仕切られている構成としてもよい。こうした構成により、構成部品を少なくしながらろ過機として機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示の技術のろ過用フィルター16を容器20内に組み込んだフィルター付容器22は、例えば細胞懸濁液中の異物除去や細胞洗浄に用いられる。したがって、本開示の技術のろ過用フィルター16やそれを用いたフィルター付容器22は、例えばろ過器具の製造業で利用できる。
【0126】
2018年10月23日に出願された日本国特許出願特願2018-199182号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。