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特許7291173燃料集合体のための燃料要素を備える装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】燃料集合体のための燃料要素を備える装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/28 20060101AFI20230607BHJP
   G21C 3/06 20060101ALI20230607BHJP
   G21C 3/334 20060101ALI20230607BHJP
   G21C 3/62 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
G21C3/28 500
G21C3/06 100
G21C3/28 400
G21C3/334
G21C3/62 210
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021079777
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2018511041の分割
【原出願日】2016-08-24
(65)【公開番号】P2021119358
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/210,609
(32)【優先日】2015-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チータム,ザ サード,ジェシー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラッタ,ライアン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,サミュエル ジェイ.
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-102473(JP,A)
【文献】特開昭62-276490(JP,A)
【文献】特公昭36-013721(JP,B2)
【文献】特開平02-232591(JP,A)
【文献】米国特許第04994233(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/28
G21C 3/06
G21C 3/334
G21C 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体のための燃料要素を備える装置であって、
該燃料要素は、管状の内側容積を有し、かつ、該管状の内側容積の少なくとも一部に核分裂性組成物を貯蔵し、
前記核分裂性組成物は、前記燃料要素の内面と熱伝達接触し、かつ、スミア密度プロファイルによって定義され、
該スミア密度プロファイルは、前記燃料要素の長手方向の軸に沿う位置に応じて選択的に変化する少なくとも5つの異なるスミア密度を含み、かつ、局所的に増加したスミア密度を有する少なくとも1つの領域と局所的に減少したスミア密度を有する少なくとも1つの領域とを含み、
前記局所的に増加したスミア密度を有する少なくとも1つの領域は、局所的に減少した中性子束を有する少なくとも1つの領域に対応するように配置され、前記局所的に減少したスミア密度を有する少なくとも1つの領域は、局所的に増加した中性子束を有する少なくとも1つの領域に対応するように配置され、
前記スミア密度プロファイルは、前記燃料要素の第1の端部の方が、前記燃料要素の反対側の第2の端部よりも高い、装置。
【請求項2】
前記スミア密度プロファイルは、局所的に増加したスミア密度を有する複数の領域を含み、前記局所的に増加したスミア密度を有する複数の領域は、局所的に減少した中性子束を有する複数の領域に対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スミア密度プロファイルは逆ガウス形状に近似する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スミア密度プロファイルはステップ関数に従って変化する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記燃料要素の前記第1の端部は、燃料集合体内の冷却剤入口地点に近接し、前記燃料要素の前記反対側の第2の端部は、前記燃料集合体の冷却剤出口地点に近接する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記燃料要素の前記スミア密度は、前記長手方向の軸の第1の端部または第2の端部の何れかよりも、前記長手方向の軸の中央部の方が低い、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記燃料要素は、少なくとも3つの部分を備え、
第1の部分は、前記燃料要素の第1の長手方向端部に近接し、第3の部分は、前記燃料要素の第2の長手方向端部に近接し、かつ、第2の部分は、第1の部分および第3の部分の間であり、
前記第1の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の平均スミア密度よりも大きく、かつ、
前記第3の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の前記スミア密度よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
燃料集合体のための燃料要素を備える装置であって、
該燃料要素は、管状の内側容積を有し、かつ、該管状の内側容積の少なくとも一部に核分裂性組成物を貯蔵し、
前記核分裂性組成物は、前記燃料要素の内面と熱伝達接触し、かつ、スミア密度プロファイルによって定義され、
該スミア密度プロファイルは、前記燃料要素の長手方向の軸に沿う位置に応じて選択的に変化する少なくとも5つの異なるスミア密度を含み、かつ、局所的に増加したスミア密度を有する少なくとも1つの領域と局所的に減少したスミア密度を有する少なくとも1つの領域とを含み、
前記局所的に増加したスミア密度を有する少なくとも1つの領域は、局所的に減少した中性子束を有する少なくとも1つの領域に対応するように配置され、前記局所的に減少したスミア密度を有する少なくとも1つの領域は、局所的に増加した中性子束を有する少なくとも1つの領域に対応するように配置され、
前記燃料要素は、少なくとも3つの部分を備え、
第1の部分は、前記燃料要素の第1の長手方向端部であり、第3の部分は、前記燃料要素の第2の長手方向端部であり、かつ、第2の部分は、第1の部分および第3の部分の間であり、
前記第1の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の平均スミア密度よりも大きく、かつ、
前記第3の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の前記スミア密度よりも大きく、
前記第3の部分の前記平均スミア密度は、前記第1の部分の前記平均スミア密度よりも小さい、装置。
【請求項9】
燃料要素を備える装置であって、
該燃料要素は、内側容積を有し、かつ、該内側容積の少なくとも一部に核分裂性組成物を有し、
前記核分裂性組成物は、前記燃料要素の内面と熱伝達接触し、かつ、スミア密度プロファイルを有し、
該スミア密度プロファイルは、前記燃料要素の第1の端部から第2の端部への順に長手方向に配置された、
第1の平均スミア密度を有する、前記第1の端部の第1の部分と、
前記第1の平均スミア密度とは異なる第2の平均スミア密度を有する第2の部分と、
前記第1の平均スミア密度および前記第2の平均スミア密度より小さい第3の平均スミア密度を有する第3の部分と、
前記第3の平均スミア密度より大きい第4の平均スミア密度を有する第4の部分と、
前記第4の平均スミア密度より大きい第5の平均スミア密度を有する第5の部分と、
を含み、
前記第5の平均スミア密度は、前記第1の平均スミア密度より小さく、
前記第5の部分が前記燃料要素の前記第2の端部にあり、
前記燃料要素の前記第1の端部は、前記燃料要素の冷却剤入口地点に近接し、
前記燃料要素の前記第2の端部は、前記燃料要素の冷却剤出口地点に近接する、装置。
【請求項10】
前記スミア密度プロファイルは逆ガウス形状に近似する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記スミア密度プロファイルはステップ関数に従って変化する、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の平均スミア密度が、前記第1の平均スミア密度より小さい、請求項9ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記スミア密度プロファイルは、前記燃料要素の中性子束分布を平坦化する、請求項9ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、米国仮特許出願第62/210,609号(発明の名称「複数のスミア密度の燃料を有する燃料要素」、2015年8月27日出願)の優先権を主張するものである。上記米国仮特許出願は、開示し教示する全てについて本願に具体的に援用される。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、概括的には、核分裂炉の燃料要素のような、高性能燃料要素を製造するためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
〔開示の分野〕
本開示は、特に、増殖燃焼炉のような高速炉に関する核分裂炉および燃料要素に関する。特に、本開示は、管状の燃料要素に関し、該管状の燃料要素では、長手方向の軸に垂直な断面に関して、内側の総面積に対する核分裂可能な核燃料の面積の比(すなわちスミア密度)は、上記燃料要素の上記長手方向の軸に沿った位置によって変化する。この長手方向の変化により、燃焼度(burn-up)の限界に対し、動作プロファイル、歪み(歪み)の分布、および燃焼度の分布のうちの1つ以上を改善することができる。
【0004】
〔背景技術〕
以下の説明では、特定の構造および/または方法が参照される。しかし、以下の参照は、上記構造および/または上記方法が従来技術を構成することを認めるものと解釈されるべきではない。出願人は、上記構造および/または方法が本発明に対する従来技術として適格でないことを例示する権利を明示的に留保する。
【0005】
従来の原子炉では、燃料要素内の燃料装荷は、典型的には、燃料集合体の長手方向に沿って均一である。上記原子炉内での放射中、燃料は、例えば、核分裂生成物、特に気体形態の核分裂生成物の生成により膨張する。膨張した燃料は、個々の燃料要素のクラッドの内径における利用可能な空間内で膨張する。しかし、時間が経過し燃焼度の値が高くなるにつれて、上記燃料の膨張によりクラッドが歪む可能性があり、特に、気体の滞留が発生する場合、および核分裂生成物(気体または固体)が燃料内の空隙を満たし始める場合にクラッドが歪む可能性がある。このとき、クラッドの歪みは燃焼度に比例することがあり、クラッドの歪みは急速に増加し始める。燃料クラッドの膨張がクラッド外部における冷却剤の流動領域の減少(時には不均一)をもたらすため、上記歪みは原子炉コア内の燃料要素の寿命を最終的に制限する。歪みの速度は、構造材料(クラッドおよび燃料集合体のダクト)への放射線の一定の影響によって増加する。燃料要素は、該燃料要素に関連する燃料集合体のダクト壁にさらなる歪みを付与するのに十分に膨張することができ、これにより、該膨張により互いに「押し込められ」、かつ/または、上記燃料集合体の湾曲が生じることがある。上記燃料要素の膨張によって、クラッドにクラックが時には発生し、核分裂生成物の制御されない放出および/または冷却剤と燃料との相互作用を引き起こすことがある。少なくとも部分的には、結果として生じる歪みにより、特定の燃料要素の最大燃焼度は、燃料要素の有効寿命および/または燃料集合体全体の有効寿命を設定することができる。
【0006】
〔概要〕
クラッドおよび燃料集合体に付与される歪みは、燃料要素の燃焼度の上限に影響を及ぼす。高温および高放射線の環境では、燃料が膨潤し、上記クラッドに経時的に歪みが付与される可能性がある。クラッドの破損に関連する時間、圧力、および温度の条件は、歪みの限界を作り出す。歪みは時に「燃焼度」と類比される。なぜならば、燃料の燃焼度が高温を作り出し、燃料の膨張に寄与する条件を作り出すからである。歪みおよび/または燃焼度の限界は、典型的には、最大の中性子束を経た燃料によって設定される。
【0007】
束(flux)の典型的な形状(長手方向および半径方向)は、少なくとも部分的には、燃料要素内の燃料および毒物の分布に基づく。燃料要素の胴体を通る燃料分布は従来均一であり、これにより、長手方向における燃料の均一分布を横切って逆コサイン形状またはガウス形状の束分布が生成される。しかし、燃料の長手方向の均一な分布により、束の長手方向の分布が付随し、上記燃料要素の長手方向端部において燃料が十分に活用されない。
【0008】
開示の技術により、燃料密度の局所的な条件の正確な調整が提供される。これにより、燃料要素の長手方向の長さに沿った燃料性能が均等化し、実際の平均燃焼度が増加し、原子炉コア内の燃料要素の有効寿命が増加し、燃料の歪みが均等化し、かつ/または、従来十分に利用されていない燃料の部分からのより多くの中性子の寄与が提供される(そして、増加した数の核分裂反応、すなわち「より高い燃焼度」が達成される)。その結果、燃料の利用効率が上昇する。
【0009】
予測される最大燃焼度(または歪み)を有する燃料要素の長手方向の位置以外の位置(例えば、長手方向端部)で燃料を追加することにより、燃焼度の不均一さを減少させ、燃料の歪みを減少させることができる。長手方向端部と燃焼度および/または歪みの最大値の位置との間により多くの燃料を追加することにより、上記燃料要素内の長手方向の燃焼度分布が平坦化しシフトすることができる。その結果、平均燃焼度を増加させ、燃料の歪みを減少させることによって、燃料要素の燃焼度分布を概括的に均等化することができる。このプロセスは、上記燃料要素の長手方向の位置が、長手方向向きの軸に沿って(例えば、上記燃料要素の第1の端部と第2の端部との間で)変化するにつれて、単位体積の領域ごとの燃料の相対量が変化することによって影響される。長手方向(すなわち軸方向)の軸に沿った位置でのこの比(すなわちスミア密度)の変化は、燃焼度分布が長手方向に広がるまで、燃料集合体および最終的には原子炉を構成する種々の燃料要素の中で繰り返され、かつ/または変化することができる一方、ピークコアパワー、原子炉の臨界などが維持される。この最終的な効果により、上記燃料の平均燃焼度が増加し、原子炉の設計および/または動作の効率が向上する。
【0010】
実施形態の一例では、核分裂炉における燃料要素は、核分裂可能な核燃料を含む核分裂可能な組成物を含み、1つ以上の非燃料物質を含み得る。核分裂可能な燃料は、任意の核分裂性の燃料および/または燃料親の燃料を含んでもよく、中性子吸収剤、中性子毒、中性子透過性物質などを含む他の適切な物質と上記燃料要素の内部容積内で混合され、結合され、または包含されてもよい。核分裂性物質は、核分裂または中性子束の生成に適した任意の物質を含んでもよく、該物質の例としては、ウラン、プルトニウム、および/または、トリウムが挙げられる。燃料親の燃料は、核分裂性の燃料に増殖可能である任意の適当な親燃料でよく、該燃料親の燃料の例としては、天然ウラン、未濃縮ウランなどが挙げられる。
【0011】
燃料要素は、概括的に管状であり、長手方向の軸を有する。上記核分裂可能な組成物は、管状の上記燃料要素における内側容積の少なくとも一部を占める。上記核分裂可能な組成物は、上記燃料要素の内面と熱伝達接触していてもよい。管状の上記燃料要素の断面であって、上記長手方向の軸に垂直な断面に関して、上記内側容積の総面積に対する核分裂可能な核燃料の面積の比は、上記長手方向の軸に沿った位置によって変化する。
【0012】
或る態様では、上記比は、次式により定義されるスミア密度のパーセンテージとして表すことができる。
【0013】
スミア密度(%)=(AreaFuel/AreaInterior Cross-Section)×100。
【0014】
ここで、AreaFuelは、上記燃料要素の上記長手方向の軸に垂直な上記燃料要素の断面における核分裂可能な核燃料の面積であり、AreaInterior Cross-Sectionは、上記燃料要素の上記長手方向の軸に垂直な上記燃料要素の断面におけるクラッドの内側の面積である。
【0015】
本願に開示される燃料要素並びに関連する構造および方法は、進行波炉(TWR)に関して具体的に説明される。しかし、本願に開示される上記燃料要素並びに関連する構造および方法は、一般に、多くのタイプの固体燃料型原子炉に適用可能であり、ブリードバーン型原子炉のような、固体燃料を有する任意の適当な原子炉において使用されてもよい。本願で用いられるように、TWRは、増殖し次に燃焼する波が上記燃料に対して進行し得る増殖燃焼炉、および/または、増殖燃焼平衡型原子炉のタイプを意味する。TWRの例としては、定在波型原子炉が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
図1Aは、高速原子炉コアを有する一例の核分裂炉を示す。
【0017】
図1Bおよび図1Cは、燃料要素の一例の実施形態の斜視図であり、第1実施形態は一般的な直線的な形状であり(図1B)、第2実施形態は一般的な円筒形状である(図1C)。
【0018】
図2ないし図6は、それぞれ、図1Bに示す燃料要素の断面A-A、B-B、C-Cに沿った横断面図である。
【0019】
図7は、燃料ペレットの一例の実施形態を示す横断面図である。
【0020】
図8は、燃料ペレットの密度が長手方向の長さに沿って変化するような第1の一例の燃料要素の一部を示す横断面図である。
【0021】
図9は、燃料ペレットの密度が長手方向の長さに沿って変化するような第2の一例の燃料要素の一部を示す横断面図である。
【0022】
図10は、燃料要素の長手方向の長さに沿って量子化された区域を形成するための内側容積における異なる階層に位置づけられた異なる核分裂可能な核燃料装荷の燃料ペレットを有する燃料要素の一例の実施形態を概略的に示す。
【0023】
図11A-Bおよび図12A-Bは、環状スラグの胴体の内側に核分裂可能な組成物を含む環状スラグの実施形態において、個別にまたは組み合わせて、含まれることができる一例の特性を有する容積形状を示す。
【0024】
図13A-Bは、クラッドを構成する壁の内側に配置された、図11A-Bおよび図12A-Bにおけるもののような、環状スラグを示す燃料要素の概略的な横断面図である。
【0025】
図14ないし図18は、それぞれ、図1Cに示す燃料要素の断面A’-A’、B’-B’、C’-C’に沿った横断面図である。
【0026】
図19は、燃料要素の長さに沿ってスミア密度の選択された変化を決定する一例の方法のフローチャートである。
【0027】
図20は、燃料要素の一例の実施形態に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(%)のグラフである。
【0028】
図21は、燃料要素の他の一例の実施形態に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(分数)のグラフである。
【0029】
図22A-Bは、燃料要素の他のいくつかの一例の実施形態に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(分数)のグラフである。
【0030】
図23は、長手方向の位置の関数としての一定のスミア密度を有する燃料要素に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としての燃焼度(%FIMA)を示すグラフである。
【0031】
図24は、長手方向の位置の関数としての変化するスミア密度を有する燃料要素に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としての燃焼度(%FIMA)を示すグラフである。
【0032】
図25は、長手方向の位置の関数としての変化するスミア密度を有する燃料要素に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としての歪みを示すグラフである。
【0033】
図26は、燃料要素の長さに沿ってスミア密度の選択された変化を有する燃料要素を製造する一例の方法のフローチャートである。
【0034】
図27は、個々の燃料要素の個数を保持する燃料集合体ダクトを含む一例のシステムを示す。
【0035】
〔発明の詳細な実施形態〕
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成している添付の図面に対して言及される。当該図面において、文脈が他のことを指示している場合を除いて、異なる図面における類似の記号または同一の記号の使用は、通常、類似の項目または同一の項目を意図している。
【0036】
詳細な説明、図面、および請求項に記載した例証となる実施形態は、制限することを意図されていない。本明細書中に提示された主題の精神または範囲から逸脱しなければ、他の実施形態が利用されてもよく、そして、他の変更が行われてもよい。
【0037】
本明細書に記載した構成要素(例えば、操作)、装置、対象物、およびこれらに付随している解説が、概念を明確にする目的のための例として使用されること、並びに種々の形態の改変が検討されることを当業者は認識するであろう。従って、本明細書中で使用される場合、説明された具体的な例および付随している解説は、これらのより一般的なクラスを代表することを意図して使用される。一般に、任意の具体的な例の使用は、そのクラスを代表することを意図し、そして、特定の構成要素(例えば、操作)、装置、および対象物を含めないことが、限定的なものとして受け取られるべきではない。
【0038】
本出願は、提示を明確にするために、形式的なアウトライン見出しを使用する。しかし、当該アウトライン見出しは、提示目的のためであること、および異なる種類の主題がこの出願全体を通して議論されてもよいことが理解されるべきである(例えば、装置/構造は、方法/操作の見出しの箇所で説明されてもよく、および/または、方法/操作は、構造/方法の表題の見出しの箇所で説明されてもよい。および/または、単一のトピックの説明は、2つ以上のトピックの見出しの箇所に及んでいてもよい)。それゆえ、形式的なアウトライン見出しの使用は、何らかの制限をすることを意図されない。
【0039】
以下では、原子炉コアにおける燃料効率を増加させる多くの技術を示す。これらの技術のうちのいくつかは、増殖燃焼炉において特に有用であるが、記載の技術は、制限なく、高速炉、増殖燃焼炉、ナトリウム冷却式炉、軽水炉、重水炉などを含めて、他のタイプの固体燃料分裂炉にも拡張可能である。
【0040】
ここで用いられるように、「%FIMA」(初期重金属原子当たりの分裂)(fissions per initial heavy metal atom)とも称される用語「燃焼度」は、核分裂性の燃料に起きる分裂の尺度(例えばパーセンテージ)を指す。例えば、5%の燃焼度は、燃料の5%が分裂反応を行ったことを示してもよい。要因が多いので、燃焼は、燃料集合体における各個別の燃料要素の長さに沿って均一に発生しないかもしれない。燃料要素のある領域が燃焼度限度、または「ピーク燃焼度」または「最大燃焼度」とも称されるが、それに達するまで十分に燃焼したときには、燃料要素は、枯渇したとみなされる。いずれか1つの位置が燃焼度限度に達すると、実際にはその燃料の中の燃料の一部だけが排出限度に達したとしても、燃料要素全体が排出されたとみなされる。したがって、平均の燃焼度が低いときよりも、燃料要素の長さ全体に沿って、平均の燃焼度が高いときには、個々の燃料要素から、より多くのエネルギーを得ることができる。ピーク燃焼度または最大燃焼度と比較して、用語「実際燃焼度」は、ここでは、燃料要素の中の燃料の少なくとも一部が燃焼限度に達したのが原因で燃料要素が排出されたとみなされたときには、燃料集合体の規定された領域の中で発生した燃焼の量を指す。
【0041】
与えられた量の燃料に対する燃焼度は、例えば、中性子束分布(例えば、高い束の領域は、高い燃焼度の領域に対応する)、毒分布、温度、冷却剤流、発熱率などを含めて、いくつかの要因によって影響を受けうる。したがって、ここに記載の多くの実施形態は、一般に、燃料集合体の各個別の燃料要素の中で観察される平均の実際燃焼度を増加させるための方法に関する。
【0042】
以下の説明は、高速ナトリウム冷却式炉について述べているが、これは、一例の目的のためのものというだけであり、任意の固体燃料分裂炉が適宜使用可能である。図1Aは、原子炉コア132を有する一例の核分裂炉130を示す。原子炉コア132は、保護容器によって囲まれた原子炉容器140に配置されている。原子炉コア132は、典型的には、冷却剤(例えば液体ナトリウム)のプール、または、冷却剤が該ループを通って核分裂炉130全体を流れてもよいようなループのような、冷却剤を含む。さらに、原子炉コア132は、複数の燃料要素をそれぞれ含んでもよい多くの細長い燃料集合体(例えば燃料集合体136)を含んでいる。
【0043】
種々の実施形態および/または動作状況において、燃料集合体は、核分裂性の核燃料集合体(例えば1セットの開始燃料集合体など)、および、燃料親の核燃料集合体(例えば1セットの供給燃料集合体など)、および/または、燃料親および核分裂性の燃料を両方とも含む燃料集合体を含んでもよい。
【0044】
原子炉コア132における中性子分布は、中性子束プロファイルによって記述可能である。中性子束プロファイルのプロット104は、原子炉コア132の燃料領域110の中の縦位置の関数としての一例の中性子束の大きさを示す。このプロファイルの特定の特性は、核分裂炉130の特性、および、原子炉コア132の中の局部的条件に基づいて、1つの実施形態から他の実施形態へと動的に変化してもよい。
【0045】
図1Aにおいて、中性子束は、中央領域112で最大で、燃料領域110の中央領域112から端領域114および116に向かっての距離とともに先細りになる。例えば、端領域114および116は、原子炉コア132の中の燃料要素または燃料要素の一群の対向する端に対応してもよい。示した例では、中央領域112における増加した中性子束の効果は、束および/または温度のような局部的条件に影響を与える一つ以上の要因に帰因する。例えば、制御棒118などの中性子吸収制御棒は、動作時に、原子炉コア132の上端の方向から、中央領域112に向かって、燃料領域110に挿入されてもよい。これは、示されるように、燃料領域110の上端において中性子束を減少させる効果を持ちうる。他の実施形態では、制御棒は、同じまたは同様の原理を介して、異なる方法で、中性子束に影響を与えるために異なる位置に置いてもよい。
【0046】
中性子束プロファイル104はまた、端領域114および116における、等しくない平均束および束を増加させる等しくない速度も示す。一つの実施形態では、この効果は、それぞれ、端領域114および116における異なる局所的温度に起因する。一般に、出力は、燃料と冷却剤との間の温度差を乗じた質量流速に比例する。したがって、もし、冷却剤の入口が、例えば、端領域116に最も近く、冷却剤の出口が、例えば、端領域114に最も近いならば、温度差は、冷却剤の出口よりも、冷却剤の入口において、より大きくてもよく、一方、質量流速は、両方の位置において、ほぼ均一なままである。したがって、中性子束(例えば出力)は、端領域116(例えば冷却剤の出口)の近くのほうが大きい場合や、および/または、端領域114の中よりも端領域116の中で、より迅速に増加する場合もありうる。この等しくない束分布は、個々の燃料要素の等しくない歪みに寄与し、また、最も大きい束および/または歪みを有する領域で、局部的なピーク燃焼度の原因となりうる。したがって、各燃料要素の長さ全体を横切る平均燃焼度は、ピーク燃焼度よりも著しく小さくなりうる。
【0047】
しかしながら、もし、等しくない束および歪みの効果が、否定されうるまたは減少されうるならば、各燃料要素の長さ全体を横切る平均燃焼度は、ピーク燃焼度に近くなり、また、より高い燃料効率が実現される。一つの実施形態では、これは、長手方向の軸に沿って複数の位置にて平均燃焼度を増加させるために、各燃料要素に対する内側のスミア密度(例えば、断面積に対する核分裂可能な物質の比率)を操作することによって完成される。改善された燃料効率のためのスミア密度を操作する技術は、以下の図面に関して詳細に記載される。
【0048】
燃料要素は典型的には、薄い壁で出来た外側被覆物(クラッドとも称する)、および、クラッドの中の(核分裂可能な核燃料を含む)核分裂可能な組成物を含んだ、長く、細長い胴体である。原子炉の設計に依存して、典型的には、複数の燃料要素が、燃料束または燃料集合体に共に配置され、燃料集合体のうちの複数が原子炉に含まれる。燃料要素の幾何形状は、燃料集合体および原子炉の物理的および設計上の制約に対して任意の適切な形状に設計されることができる。
【0049】
図1Bおよび図1Cに、燃料要素の2つの実施形態が斜視図にて示されている。燃料要素10の第1の実施形態は、放射方向の軸に相対的に、細長い長手方向の軸を有する一般的な管状形状(図1B)を有する。管状形状は、示されるように全体が固体でもよく、または、クラッドと核分裂可能な組成物との間の隙間、核分裂可能な組成物の胴体の間の隙間または間隙空間、および/または、核分裂可能な組成の胴体の中の一つ以上の中空空隙(空隙)を含んでもよい。ある場合には、燃料要素10は、直線的である長手方向の軸20に垂直な平面において、横断面形状を有する。図1Bにおいて、直線的な形状は、四角形のような規則的な多角形であるが、横断面形状は、三角形、六角形、八角形、十二角形などを含めて、任意の直線的形状または適切な多角形形状とすることができる。長手方向の軸20は、一般的な管状形状の主軸に沿って向いており、また、距離L1だけ長手方向に延びている。典型的には、長手方向の軸は、クラッドの第1の壁すなわち端30と、第2の壁すなわち端40との間に延びている。いくつかの例では、内側の容積を規定するために、側壁50が、第1の端30を第2の端40に結合させ、燃料集合体10の一般的な管状形状を形成する。
【0050】
燃料要素100の第2の実施形態は、放射方向の軸に相対的に、細長い長手方向の軸を有する一般的な管状形状(図1C)を有する。管状形状は、示されるように全体が固体でもよく、または、クラッドと核分裂可能な組成物との間の隙間、核分裂可能な組成物の胴体の間の隙間または間隙空間、および/または、核分裂可能な組成の胴体の中の一つ以上の中空空隙(空隙)を含んでもよい。ある場合には、燃料要素100は、曲線的、凹形または凸形またはそれらの組み合わせである、中央の、長手方向の軸120に垂直な平面において、横断面形状を有する。図1Cでは、曲線的形状は円形であるが、横断面形状は、0以上1未満で変化するe、すなわち0≦e<1の離心率eを有する任意の楕円とすることができ、あるいは、eは、0.5と等しいかそれより小さく、または、任意の複雑な曲線的形状、双曲面または双曲面に近い形状のような規則的な曲線的形状とすることができる。長手方向の軸120は、一般的な管状形状の主軸に沿って向いており、また、距離L2だけ長手方向に延びている。典型的には、長手方向の軸は、クラッドの第1の壁すなわち端130と、第2の壁すなわち端140との間に延びている。いくつかの例では、内側の容積を規定するために、側壁150が、第1の端130を第2の端140に結合させ、燃料集合体100の一般的な管状形状を形成する。図1Bおよび図1Cに示した例は、内側の容積を囲む固体の壁と端を示しているが、いくつかの場合には、燃料要素の内側の容積を規定するクラッドまたは他の構造は、部分的な囲い、燃料要素の固体部分などであってもよい。
【0051】
燃料要素のクラッドは、任意の適切な物質とすることができ、燃料の腐食および/または核分裂生成物の放出を減少させてもよく、その一方で、中性子に対する低い吸収断面を有する。一実施形態において、クラッドは、金属、金属合金、およびセラミックから選択される少なくとも1つの物質を含んでもよい。一実施形態において、クラッドは、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、Ir、NdおよびHfから選択される少なくとも1つの元素を含む耐熱金属などの耐熱物質を含んでもよい。一実施形態において、クラッドは、異なる組成物および微小構造の鋼を含む鋼のような金属合金を含んでもよい。クラッドのための適切な物質の網羅的でない例は、炭化ケイ素(SiC)などのセラミック、および、チタン金属または半金属の炭化物(TiAlCおよびTiSiC)および、アルミニウムなどの金属、ステンレス鋼、およびジルコニウム合金を含む。クラッドのための他の適切な物質が適宜用いられてもよい。
【0052】
クラッドは、2つ以上の層または領域に構成されてもよく、異なる物質のうちの1つ以上のライナーを含んでもよい。ライナーを含む適切なクラッドの例は、2013年3月11日に出願された米国出願第13/794633号、名称「核燃料要素」に記載されており、これは参照によりここに組み込まれる。
【0053】
核分裂可能な組成物は、核分裂可能な核燃料および非燃料物質を含むことができる。核分裂可能な核燃料は、少なくともおよそ88%の核分裂可能な燃料を含み、例えば少なくとも94wt%、95wt%、98wt%、99wt%、99.5wt%、99.9wt%、99.99wt%、またはそれより高い核分裂可能な燃料である。他の状況では、および、燃料要素の長手方向の長さに沿ってスミア密度を選択的に変化させる本願の範囲内においては、低いスミア密度のほうが適切な場合もありうる。核分裂可能な核燃料は、核分裂性の核燃料、燃料親の核燃料(これは核分裂性の燃料へと「増殖」(bred up)することができる)、および/または、核分裂性の核燃料と燃料親の核燃料との組成物の混合物を含む。核分裂可能な組成物の核分裂可能な核燃料は、高エネルギー(高速)中性子または低エネルギー熱(低速)中性子のいずれか一方を捕捉した後に核分裂を行うことができる任意の核種を含むことができる。核分裂可能な核燃料は、金属形式、酸化物形式、または窒化物形式のものであってもよく、また、金属および/または金属合金を含んでもよい。適切な核分裂可能な核燃料の例は、ウラン、プルトニウム、トリウム、アメリシウムおよびネプツニウムおよび同位体およびその合金を含むグループから選択される1つ以上の放射性元素(その同位体を含む。)を含む。一実施形態では、燃料は、少なくともおよそ88%のUを含んでもよく、例えば、少なくとも94wt%、95wt%、98wt%、99wt%、99.5wt%、99.9wt%、99.99wt%、またはそれより高いUである。
【0054】
核分裂可能な組成物の非燃料物質(もしあれば)は、核燃料物質の結合、中性子の透過または吸収特性、冷却剤特性、熱伝達特性などを含めて、燃料要素の設計の中で望ましい任意の特徴を有しうる任意の適切な非燃料物質を含むことができる。例えば、非燃料物質は、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、IrおよびHfから選択される少なくとも1つの元素を含みうる耐熱物質を含んでもよい。一実施形態では、非燃料物質は、ホウ素、ガドリニウムまたはインジウムなどの追加の燃焼可能な毒を含んでもよい。
【0055】
核分裂可能な核燃料を利用する核分裂可能な組成物を含む燃料要素は、長手方向の軸に沿った位置とともに変化する管状の燃料要素の横断面におけるクラッドの内側のものに対する、長手方向の軸に垂直な管状の燃料要素の横断面における核分裂可能な核燃料の面積の比率を有することができる。このような比率は、燃料集合体の寿命の燃料サイクルの間、予測される歪みおよび/または予測される束および燃料集合体の動きに対する燃焼度を標的にすることによって達成される燃料要素に対する歪みプロファイルを選択的に設計するために、長手方向の軸に沿って複数の異なる位置で選択的に変化させられることができる。歪みプロファイルは、燃料要素、燃料集合体および原子炉の設計外囲器(エンベロープ)の中で、物質歪み、温度および圧力の効果、反応副生成物の生成、および、ガス放出分画のような、原子炉の効果のうちの任意の一つ以上のものを捕らえるまたは考慮してもよく、さらには、任意の一つ以上のコア臨界(keff>1)、ピークコア出力などを含んでもよい、選択された原子炉コアを捕らえるまたは維持してもよい。動作温度、反応副生成物、組成物の幾何形状などを含めた追加の情報なしで歪みを明確に決定するには、燃焼度だけでは十分でないにもかかわらず、燃焼度は、歪みに高く相関しており、歪みに対して潜在的な代用物である。しかしながら、当業者のうちの一人は、いくつかの場合には歪みに対して燃焼度限度が適切な代用物であることを理解するだろうし、いくつかの場合には、歪みは、燃焼度限度に対する可能な代用物である。以下のいくつかの例は、燃焼度限度を用いて記載されており、他の例は、歪みプロファイルを用いて記載されている。当業者のうちの一人は、燃焼度限度または歪み限度のいずれか一方、または、他の任意の適切なパラメータまたは原子炉コア特性が、核分裂生成物の測定、変形の測定、温度などのような、閾値および/またはプロファイルとして用いられてもよいことを認識するだろう。上で注目したように、燃料要素の長さにわたって、スミア密度の選択的調整は、予測される局部的条件に対する燃料要素の局部を調整することができ、これは、燃料要素の長手方向の長さに沿った、1つ以上の燃焼度、発熱率、冷却剤流および/または温度、原子変位数(displacement per atom)(DPA)、DPA履歴および/または率などを含んでもよい。平均の実際燃焼度を増加させることは、原子炉コアにおける燃料要素の実効寿命を増加させることができ、核燃料の効率的な使用を可能にし、および/または、利用中の部位を用いる伝統的な原子炉と比べてより多くの中性子寄与を燃料要素が有する(およびより高い燃焼度を達成する)ことを可能にする。
【0056】
断面積に対する核分裂可能な物質の比率は、燃料要素の長手方向の軸に沿った位置とともに変化することができ、これは、上で注目したように、有害な効果(燃焼度および/または歪み)を減少させることができ、また、長手方向の軸に沿って時間とともに燃料の利用を増加させうる。
【0057】
上記比率は、燃料要素のスミア密度として表現されることができる。例えば、スミア密度のパーセンテージは、以下によって定義されることができる:
スミア密度(%)=(AreaFuel/AreaInterior Cross-Section)×100。
【0058】
ここで、AreaFuelは、上記燃料要素の上記長手方向の軸に垂直な上記燃料要素の断面における核分裂可能な核燃料の面積であり、AreaInterior Cross-Sectionは、上記燃料要素の上記長手方向の軸に垂直な上記燃料要素の断面におけるクラッドの内側の面積である。
【0059】
上記のスミア密度の定義では、核分裂可能な核燃料は、核分裂性の核物質と燃料親の核物質とを含むが非燃料物質を含まない、核分裂を行うことができる任意の物質を意味する。したがって、スミア密度は、実質的な真空、気体状の核分裂不可能な物質などを含むことができる、燃料要素中の結合物質、空隙を含む、核分裂不可能な(非燃料)物質の存在によって影響を受けうる、規定された領域における核分裂可能な物質の量の関数または比率である。上記式のスミア密度は、パーセンテージ(%)として表されており、スミア密度は、あるいは、分数スミア密度と称される場合には分数(fraction)として数学的に表されることができる。いくつかの場合には、スミア密度は、長手方向の長さに沿って任意の一つの位置にてスミア密度が、計算されたスミア密度に隣接する直接の断面から変化してもよいように、実質的に連続的に変化することができる。いくつかの場合には、任意の一つの特定の断面にてスミア密度を表すよりも、スミア密度の変化率の提示で、いくつかの部分的なまたは区域の平均スミア密度を提示するほうが適切でありうる。
【0060】
図2ないし図6は、それぞれ、図1Aに示す燃料要素10の断面A-AないしE-Eに沿った概略的な横断面図である。横断面図200、300、400、500、600は、燃料要素10の長手方向の軸20に垂直であり、また、ペレットとして示される、核分裂可能な組成物の一例の分布を概略的に示している。ペレット間の間隙空間は、随意的に、結合物質、実質的な真空、気体状の物質または任意の適切な物質などの非燃料物質を含むことができる。横断面図はまた、長手方向の軸に沿った位置とともに変化するこれら2つの面積の比率を決定するのに用いられることができる、長手方向の軸に垂直な管状の燃料要素の横断面における核分裂可能な核燃料の面積と、管状の燃料要素の横断面における内側容積の全面積とを、図式的に表す。この比率は、燃料要素10の長手方向の軸20に沿った5つの示された位置のそれぞれにおいて、スミア密度として表現されることができ、注目される図に示されている。説明の目的のために、断面A-AおよびE-Eは、管状の燃料要素の長手方向の端に向かって位置しており、断面C-Cは、管状の燃料要素の長手方向の中央に最も近い位置に位置し、断面B-BおよびD-Dは、各長手方向の端部分と、長手方向の軸中央部分との間のほぼ中間に位置している。5つの部分の使用は、説明のためのものであり、限定するためのものではなく、管状の燃料要素は、長手方向の軸に沿った位置がより薄い部分に解析されればされるほど、離散的な比率(またはスミア密度)を有するますます多くの断面を有することができ、これは、全体として、長手方向の軸に沿った比率における、段階的な変化または実質的に連続的に変化する変化を生み出す。
【0061】
図2ないし図6の概略的な図では、核分裂可能な核燃料を含む核分裂可能な組成物は、ペレットとして形成されている。図7は、燃料ペレット700の一例の実施形態の概略的な横断面図である。燃料ペレット700は、核分裂可能な核燃料を含む核分裂可能な組成物705を含む。燃料ペレットの核分裂可能な組成物は、随意的に、非燃料物質を含むことができる。燃料ペレット700は、随意的に、外側被覆物710および/または充填物質のうちの1つ以上を含むことができる。外側被覆物は、任意の適切な物質であってもよく、いくつかの場合には、燃料組成物と、冷却剤、クラッドなどのいずれかまたは両方との間の拡散または相互作用を制限するための物質を含んでもよい。クラッドのライナー(liners)を参照して、一例の外側被覆物の物質を以下にさらに述べる。(非燃料物質の形式としての)充填物質は、核分裂可能な核燃料とは異なる。充填物質は、燃料物質の構造における空隙空間を満たすことができ、および/または、燃料物質と共に分布または混合されることができ、また、気体、液体、固体、真空、結合物質、中性子毒、または、核燃料要素のための任意の適切な非燃料物質を含むことができる。
【0062】
図2ないし図6の横断面図に戻って、管状の燃料要素の内側容積において、複数の燃料ペレット210、310、410、510、610が分布されている。燃料ペレットは、互いに、および、クラッドの内側表面と、熱接触している。ペレット間、および、ペレットとクラッドとの間に形成された間隙は、少なくとも初期には、放射線照射の間に形成する、核分裂生成物、および、特に、気体の形式の核分裂生成物を、収容するための容積を提供する。結果として、間隙は、クラッドにおいて働く、機械的な力、特に張力を減少させるのに寄与する。
【0063】
燃料ペレットは、クラッドと熱伝達接触している。例えば、機械的接触結合は、主として直接または非燃料物質を介しての伝導によって、核反応から生成される熱がクラッドに伝達されることを可能にする。さらに、または代替として、固体または流体(例えば液体金属または気体を含む。)のような媒体が、空間に位置することができ、また、固体または液体金属結合または気体結合のような流体でさえを介して、ペレットからクラッドへの熱伝達のための追加的な伝導経路を提供することができる。
【0064】
追加のまたは代替的な実施形態において、クラッドを含む燃料要素は、外側のクラッド物質から、燃料(ペレット形式、スポンジ形式または他の形式)を分離する、クラッドの内側表面の上のライナーを含むことができる。いくつかの場合に、特に高い燃焼度のときに、燃料とクラッドとの内容物は、拡散する傾向がある場合があり、それによって、(例えば、燃料および/またはクラッドの内容物の脱合金化によって、または、劣化した機械的特性を有する新しい合金を形成することによって、)望ましくない合金化、および/または、燃料とクラッドとの物質の劣化を引き起こす。ライナーは、原子間の拡散などを緩和するために、燃料とクラッド物質との間の障壁層として機能しうる。例えば、クラッドの1つ以上のライナーは、例えば燃料および/またはクラッド物質の劣化を回避するために、燃料の核分裂可能な組成物の要素と、クラッド物質との間の原子間の拡散を緩和するために用いられてもよい。ライナーは、1つの層または複数の層を含んでもよい。ライナーが複数の層を含む場合には、これらの層は、同じまたは異なる物質を含んでもよく、および/または、同じまたは異なる特性を有してもよい。例えば、一つの実施形態において、これらの層のうちの少なくともいくつかは同じ物質を含んで、その一方でいくつかは、異なる物質を含んでもよい。
【0065】
一つの例では、外側のクラッド物質は、金属、金属合金およびセラミックから選択される少なくとも1つの物質を含んでもよい。一つの実施形態において、クラッドは、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、Ir、NdおよびHfから選択される少なくとも1つの元素を含む耐熱金属などの耐熱物質を含んでもよい。クラッド内の金属合金は、例えば鋼であってもよい。鋼は、マルテンサイト鋼、オーステナイト鋼、フェライト鋼、酸化物分散鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、316鋼、304鋼から選択されてもよい。鋼は、任意のタイプの微小構造を有してもよい。例えば、鋼は、マルテンサイト相、フェライト相およびオーステナイト相のうちの少なくとも1つを含んでもよい。クラッドは、外側のクラッド物質に隣接する第1のライナーを含んでもよく、また、外側のクラッドと第2のライナーとの原子間の拡散および/または相互作用を減少させるために選択された物質を含んでもよい。第1のライナーに隣接して、燃料組成物を含むための内側表面を形成するための第2のライナーは、第1のライナーと燃料組成物との原子間の拡散または相互作用を減少させるために選択された物質を含んでもよい。ライナーとしての使用に適切な物質の例は、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、Ir、NdおよびHfを含む1つ以上の合金を含む。クラッドのライナーは、外側のクラッド物質の内側表面に堆積されてもよく、燃料組成物の、クラッドのほうを向いた、外側表面に堆積されてもよく、および/または、任意の適切な方法で、外側のクラッド物質と燃料組成物との間に堆積された層であってもよい。
【0066】
3次元の燃料要素では、複数の燃料ペレットが、クラッドによって規定された内側容積の少なくとも一部分を占める。しかしながら、図2ないし図6の2次元の断面図では、複数の燃料ペレット210、310、410、510、610は、クラッド240、340、440、540、640を構成する壁230、330、430、530、630の内側表面220、320、420、520、620によって規定された内側領域の一部分を占めており、間隙空間250、350、450、550、650は、燃料ペレット自体の間、および、燃料ペレットとクラッドの内側表面との間に形成されている。典型的には、間隙空間は、固体のような、または、液体金属または気体を形成するそれぞれ液体金属結合または気体結合をいくつかの場合に含んでもよい流体のような、結合物質および/または冷却物質のような非燃料物質によって占められることができる。示された燃料要素のさらなる特性は、空間250、350、450、550、650の結合物質を間接的に介してと同様に、クラッドに対して燃料ペレット(またはライナーに対して燃料ペレット)によって直接接触することによって、燃料ペレット210、310、410、510、610のうちの少なくともいくつかと、壁230、330、430、530、630との間に、熱伝導接触(熱伝達のうちの一つの形式)があることである。
【0067】
任意の一つの横断面図において、複数のペレット210、310、410、510、610の核分裂可能な物質によって占められる面積の部分は、スミア密度の式におけるAreaFuelの値であり、クラッド250、350、450、550、650を構成する壁240、340、440、540、640の内側表面230、330、430、530、630は、スミア密度の式におけるAreaInterior Cross-Sectionの値である。もしクラッドにライナーが存在すれば、AreaInterior Cross-Sectionの値は、ライナーの最も内側の表面、すなわち、内側容積に曝露された表面を用いて決定される。
【0068】
管状の燃料要素の断面におけるクラッドの内側の面積に対する、長手方向の軸に垂直な管状の燃料要素の断面における核分裂可能な核燃料の面積の比率は、任意の適切な手段によって長手方向の軸に沿った位置とともに変化することができ、また、燃料ペレット間の間隙空間、ペレット内側の空隙、ペレットにおける他の非燃料物質など、のうちの任意の一つ以上を含む任意の核分裂不可能な物質の存在および量に基づいて、または、任意の他の適切な方法によって、選択的に設計または形成されることができる。
【0069】
例えば、長手方向の変化は、核分裂可能な組成物の燃料装荷を変化させることによって達成できる。各ペレットにおけるような核分裂可能な組成物は、(例えば、核分裂可能な燃料および非燃料物質のうちの一つ以上のものの相対的な量を変化させることによって)変化させることができる。非燃料物質は、間隙空間、燃料組成物内の空隙、燃料物質、結合物質、冷却剤など、のうちの一つ以上を含む。この例では、燃料組成物内の非燃料物質の量は、所望の燃料装荷を達成するために選択的に変化させることができる。この場合、その比率(またはスミア密度)において所望の長手方向の変化を達成するために、変化する組成物のペレットは、管状の燃料要素において長手方向に配置される。
【0070】
代替のまたは追加的な例において、長手方向の変化は、核分裂可能な組成物を含む胴体のサイズを変化させることによって達成することができる。燃料ペレットの幾何的なサイズ(または核分裂可能な組成物の他の胴体形状)は、粉、粒子、スラグなどのうちの任意の一つ以上のものの形式をとることができる。ペレットのサイズおよび形状は、燃料要素クラッドの内側容積、形状およびサイズが与えられれば、ペレット内の空隙、ペレット間の間隙空間、燃料装荷などを含めて、核分裂可能な物質と非燃料物質との両方の容積および断面積を設計することを含めて、所望のスミア密度に基づいて設計および製造することができる。その場合、このようなペレットは、その比率(またはスミア密度)における所望の長手方向の変化を達成するために、管状の燃料要素の長手方向の位置に、より高いまたはより低い断面密度にて装荷されることができる。また、ペレットの形状に依存して、より大きなペレットは、ペレット間の接触の結果として装荷密度を減少させて、ペレット間の間隙空間に対する、より大きな領域またはより小さな領域はそのままにするようにしてもよい。これに関して、与えられた球状のペレットサイズに対する最密充填密度(close packed density)において、より小さい球状サイズは、より大きい球状サイズに対するものよりも、接触しているペレットの間に、より小さい空間を有する。
【0071】
代替的または追加の例として、サイズおよび形状の混合物は、さらに、より大きい接触するペレットの間の空間を占める、適切なサイズのより小さいペレットの結果として、接触するペレットの間の空間を選択的に減少させることができる。クラッド内で(同じまたは異なるサイズおよび/または形状でも)ペレットを圧縮することまたは据えることは、限定されないが、(充填、圧縮、通気を含む)機械的振動などを含む、任意の適切な方法を介して達成することができる。
【0072】
代替的または追加の例として、非燃料物質は、燃料ペレット内の核分裂可能な物質と共に混合または分布されてもよく、および/または、非燃料物質は、個別のペレットに提供されてもよい。非燃料物質ペレットは、燃料要素の長手方向の長さに沿ってその特定の位置に対する所望のスミア密度を提供するために、核分裂可能な組成物ペレットと共に混合されてもよい。追加的または代替として、燃料物質ペレット内の(真空または他の非燃料物質で満たされた)空隙が、燃料物質における燃料装荷を変化させるための機構を提供することができる。
【0073】
さらなる例では、長手方向の変化は、媒体にペレットを分布させることによって達成することができる。燃料要素における構造または物質は、核分裂可能な組成物を含むペレットまたは他の胴体の分布のための媒体を提供することができる。ペレット間の空間を満たすために、十分に密な結合物質または非気体状の結合物質を用いることができる。このような結合物質は、ペレット間の(および、ペレットと壁の内側表面間の)距離を変化させるために、適切な量だけ用いられることができ、それによって、比率(またはスミア密度)における所望の長手方向の変化を達成するために、管状の燃料要素の長手方向の位置に、より高いまたはより低い断面密度を得る。
【0074】
比率またはスミア密度における長手方向の分布において、異なるおよび/または複雑な段階的変化を達成するために用いられることができる変化を達成するために、上記の方法のうちの任意のものまたは上記の方法のうちの一つ以上の組み合わせを用いることができる。例えば、ペレットの燃料装荷を変化させることは、核分裂可能な組成物を含む胴体のサイズを変化させることと組み合わせることができる。
【0075】
図2ないし図6は、スミア密度が、単一の燃料要素内の長手方向の軸に沿った位置とともに変化することができるような一つの例を図式的に表す。図2ないし図6からわかるように、スミア密度は、断面A-A、断面B-B、断面C-C、断面D-D、断面E-Eのうちの任意のものにおけるものの間で変化し、また、燃料要素の長手方向の軸に沿った位置とともに変化する比率(またはスミア密度)を図示している。全体として、一例の実施形態において、スミア密度は、最大で30%および代替的に50%と、最大で100%および代替的に75%または70%と、の間で、軸に沿った位置とともに変化することができる。
【0076】
追加的なまたは代替的な修正として、管状の燃料要素の長手方向の各端におけるスミア密度は、管状の燃料要素の長手方向の中央におけるスミア密度よりも大きいことができる。図2ないし図6は、図2(第1の長手方向の端での横断面)および図6(第2の長手方向の端での横断面)を、図4(長手方向の中央での横断面)と比較するものにおけるこのような一例の実施形態を示しており、第1の長手方向の端および第2の長手方向の端での燃料物質ペレット210、610により占められる面積が、長手方向の中央における燃料物質ペレット410により占められる面積よりも大きいことがただちに確認できる。
【0077】
追加の修正では、管状の燃料要素の第1の長手方向の端でのスミア密度は、管状の燃料要素の第2の長手方向の端でのスミア密度より大きい。図2ないし図6はまた、図2(第1の長手方向の端での横断面)を図6(第2の長手方向の端での横断面)と比較するものにおけるこの一例の実施形態を示しており、第1の長手方向の端での燃料物質ペレット210により占められる面積が、第2の長手方向の端での燃料物質ペレット610により占められる面積よりも大きいことが確認できる。
【0078】
図8ないし図10は、燃料物質の部位における側面断面図において、燃料物質ペレットの相対的な量(および、随意的な非燃料物質を有する燃料組成物のその対応する量)と、燃料要素の製造の間に内側容積を満たすために用いられる非燃料組成物(結合物質、空隙、または他の核分裂不可能な物質)とを変化させることによる、燃料要素の長手方向の長さに沿って燃料ペレットの密度(容積当たりの燃料ペレット)の変化を示している。概略的な横断面図において、燃料物質ペレット810は、クラッド830の壁820間の燃料要素800の内側容積内に位置している。より低いスミア密度を達成するために、燃料物質ペレットは、(燃料ペレットが、直接、機械的に他の燃料ペレットと接触していないことを意味する)離散的な燃料ペレットである大多数の燃料ペレットを有する内側容積内に分布することができるが、いくつかの燃料ペレットは、図8に示すように、他の燃料ペレットと接触することができる。また、図8に示すように、燃料ペレット810は、壁820の内側表面840と接触してもよく、または、壁820の内側表面840から離れた所にあってもよく、または、このような位置の混合であってもよい。ヘリウムガスまたは液体ナトリウムまたは固体、および/または他の任意の適切な非燃料物質のような、結合物質850が、燃料ペレット810を囲む、および、その間の空間に位置しており、また、燃料ペレット810と、壁820の内側表面840との間に位置している。結合物質は、燃料ペレットとクラッドとの間の熱伝達接触を、少なくとも部分的に、提供することができる。
【0079】
より高いスミア密度を達成するために、燃料ペレットは、非燃料領域に対する燃料領域のより高い比率を有する内側容積内に分布することができる。例えば、大多数の燃料ペレットあるいは燃料ペレットのうちの全てが、隣接する燃料ペレットと接触することができるが、図9に燃料要素800’において示すように、内側容積内における燃料ペレットの充填配置を収容するために、隣接する燃料ペレットを分離するいくつかの空間が存在してもよい。また、図9に示すように、燃料ペレット810は、壁820の内側表面840に接触してもよいが、いくつかの燃料ペレット810は、壁820の内側表面840から離れた所にあってもよく、または、このような位置の混合であってもよい。隣接する燃料ペレット810間の接触は、例えば、振動技術、(充填、流体流などのような)機械技術によって促進されることができるが、充填された燃料ペレットは、必ずしも、最密充填配置(close-packing arrangement)にはない。図9では、第1領域860における隣接する燃料ペレット間の接触は、最密充填配置であり、第2領域870における隣接する燃料ペレット間の接触は、充填された配置ではあるが、最密充填配置ではない。液体ナトリウムのような液体金属冷却媒体のような任意の適切な固体または流体の結合物質とすることができる結合物質850が、燃料ペレット810を囲む、および、その間の空間に位置しており、また、燃料ペレット810と、壁820の内側表面840との間に位置している。
【0080】
いくつかの場合には、燃料ペレットおよび/または非燃料物質ペレットのサイズおよび/または形状は、規則的な、クラッド内側の与えられた寸法(サイズおよび形状)内の予測可能な適合を確実にするように選択されてもよい。例えば、図10に示すもののような、クラッドの内側の中に導入されるまたは配置されるときには、いくつかの球状および/または規則的な多角形は、予測可能であって選択された入れ子(nesting)または構造を有してもよい。
【0081】
追加的なまたは代替的な例では、単位容積面積(unit volume area)当たりの核分裂可能な核燃料の量、すなわち、核分裂可能な核燃料装荷は、変化することができ、また、スミア密度の長手方向の変化は、より高いまたはより低い核分裂可能な核燃料装荷のペレットを用いることによって達成することができる。核分裂可能な核燃料装荷は、異なる核分裂可能な核燃料装荷のペレットが製造されるような方法に依存して、量子化された基準または連続的な基準に基づいて、燃料要素の長さに沿って長手方向に変化するように決定されて選択されることができる。このようなペレットを用いると、スミア密度の変化は、燃料要素の長手方向の長さに沿って、異なる位置または区域において異なる核分裂可能な核燃料装荷を有する燃料ペレットを配置することによって達成することができる。例えば、より高い核分裂可能な核燃料装荷を有するペレットは、より高いスミア密度を有するべき長手方向の位置に位置することができる。より低い核分裂可能な核燃料装荷を有するペレットは、より低いスミア密度を有するべき長手方向の位置に位置することができる。図10は、内側容積の個々の階層(strata)に位置し、それによって、燃料要素の長手方向の長さに沿って、量子化された区域A、Bを形成する、異なる核分裂可能な核燃料装荷の燃料ペレット880a、880bを有する燃料要素800”の他の実施形態を概略的に示している。図10の実施形態において、燃料ペレット800aは、燃料ペレット880bより低い核分裂可能な核燃料装荷を有し、区域Aは、区域Bよりも低いスミア密度を有する。
【0082】
ここでは、いくつかの例をペレットとして記載しているが、このような各幾何形状での核分裂可能な組成物が、量子化可能であって、所望ならば、任意の適切な形状に選択的に修正可能である限り、ペレットは、球状の幾何形状に限定されず、矩形、卵形、円筒状、棒状、円錐状、直線的形状または他の任意の、閉じられた、容積形状を含め、任意の容積形状とすることができる。例えば、そして、追加的なまたは代替的な実施形態において、核分裂可能な組成物は、環状スラグの形状を有する胴体内に含まれていてもよい。図11Aおよび図11Bは、長手方向の軸に沿って見る平面図(図11A)および放射方向軸に沿って見る側面図(図11B)においてこのような形状を示す。環状スラグ900は、長手方向に分離された上面915と底面920とを接続する外壁910を有する胴体905を含む。環状スラグ900は、上面915から底面920までの中央経路925を有する。
【0083】
図11A図11Bに示す実施形態において、外壁の直径は、長手方向の長さに沿って実質的に一定であり、また、長手方向の長さに沿った核分裂可能な物質の量は、燃料装荷、非燃料物質の量を変化させることによって、および/または、空隙または間隙空間を調整することによって、任意の適切な方法で変化させることができる。追加的なまたは代替的な実施形態において、図12Aおよび図12Bに示すように、外壁の直径は変化することができる。図12Aおよび図12Bは、胴体の外壁を変化させるための1つの選択肢を示している。図12Aおよび図12Bにおいて、環状スラグ900’の胴体905’の外壁910’は、長手方向の中央C’に相対的に、上面915’および底面920’から、中央領域930に向かって、長手方向に延びる外壁910’を減少させる直径D’を有する。このような外壁910’は、直線状とすること、または、凹部または凸部またはこのような表面の組み合わせを有することができる。さらに、中央領域930において減少する直径D’を有する外壁910’は、各スラグの長手方向の長さに沿って胴体905’に形状を与えることができる。例えば、胴体は、第1の端部での胴体の第1の直径と比べて、および、第2の端部での胴体の第2の直径と比べて、中央の部位において、減少した中央直径を有する外側表面を有してもよい。このような形状は、いくつかの実施形態において、双曲面形状または双曲放物面形状とすることができる。追加的なまたは代替的な例において、外側表面は、各胴体の長手方向の長さに沿って変化することができるだけでなく、追加的にまたは代替的に、燃料要素に配置された複数のスラグの複合効果が、燃料要素の長手方向の長さに沿ったこのような形状を与えることができる。スラグにおける核分裂可能な物質の直径と幅の変化は、双曲面形状または双曲放物面形状のような所望の形状を与えるために、燃料要素の長手方向の長さに沿って選択的に配置された形状を変化させるスラグを利用することによって、燃料要素の長手方向の長さに沿って核分裂可能な物質燃料装荷を変化させる他の機構を提供する。
【0084】
図11A図11Bおよび図12A図12Bに示す経路925、925’は、円筒状であって、胴体の長手方向の軸の周りに対称的に配置されているが、経路は、任意の適切な形状とすることができ、複数の経路として配置されて、放射方向において、長手方向の軸の中央から外れた所に配置されるようにして、および/または、スラグのいくつかの長手方向の容積に配置されていてスラグの他の長手方向の容積には存在していないようにして、環状スラグの胴体内の任意の位置に配置されることができる。上記のもののうちの任意の一つ以上を適宜用いてもよいことが理解されるべきである。追加的なまたは代替的に、経路925、925’の半径は、同様に、および/または、スラグの外壁910、910’とは異なるように、変化することができる。
【0085】
核分裂可能な組成物は、環状スラグ900、900’の胴体905、905’内に配置され、また、胴体905、905’全体で均一な組成物であってもよく、または、長手方向および放射方向の一方または両方において変化することもできる。複数の環状スラグ900、900’は、管状の燃料要素の内側容積に、位置する、例えば、積層されることができる。スラグ900、900’の経路925、925’は、燃料要素の中に積層されると、適切となるように、選択的に整列または整列されないことができる。外直径壁の直径(D、D’)の寸法と、経路の直径(d、d’)の寸法は、変化することができる。さらに、これらの寸法のうちの一つ以上を変化させることは、スラグの胴体の容積を変化させ、また、管状の燃料要素の複数のスラグの間の容積を変化させることによって、胴体容積のこのような変化が、比率(またはスミア密度)の所望の長手方向の変化のうちの少なくとも一部分または全てに対する燃料装荷を調整するのに用いられることができる。代替的または追加的に、比率(またはスミア密度)の所望の長手方向の変化は、一つ以上の胴体内の組成物を変化させることによって、または、一つ以上の胴体における直径(D、dまたはD’、d’)の寸法を変化させることによって、達成することができる。図11A図11Bおよび図12A図12Bに示すスラグは、スラグの端を長手方向の軸に実質的に垂直として示しているが、スラグの一方の端または両方の端が、長手方向の軸と垂直でなくてもよいこと、および/または、隣接するスラグと選択的に適合するためおよび/またはスミア密度を選択的に調整するための選択された間隙空間を生成するために任意の適切な形状であってもよいことが理解されるだろう。
【0086】
環状スラグの形状を有する胴体は、任意の適切な方法で燃料要素内に配置されることができる。図13A-Bは、図11A-Bおよび図12A-Bのような環状スラグ胴体を示す燃料要素の一部分の概略的な横断面図である。図示した実施形態において、胴体905、905’は、燃料要素のクラッドの壁930、930’内で積層された長手方向の関係にある。胴体、例えば、燃料物質およびクラッド、の間には一つ以上の隙間935、935’が存在していてもよいが、隙間は必要ではない。いくつかの実施形態において、隙間は、非燃料物質で満たされている。一つの実施形態において、非燃料物質は、加圧されたヘリウム雰囲気のような加圧された雰囲気である。別の実施形態において、隙間は、ナトリウムのような液体金属で満たされている。
【0087】
いくつかの場合には、スミア密度は、異なる燃料ペレットまたはスラグの間で異なっていてもよい。以下の例は、ペレットの形式として、スラグに関して議論しているが、当業者は、ペレットの任意の形式が以下の技術を利用してもよいことを認識するだろう。例えば、図13Aのスラグ905bのスミア密度は、スラグ905aのスミア密度より大きくてもよい。いくつかの場合には、隣接するスラグのスミア密度間の相違が、スミア密度相違閾値を超えたら、2つの異なるスラグ(例えば図13Aの位置940)の間の接触の点または面の領域にてまたはその中で、追加的な量の歪みが発生しうる。いくつかの場合に、隣接するスラグの異なるスミア密度を制限するために、最小スミア密度閾値が用いられてもよい。代替的および/または追加的に、スラグ905a、905bの一方または両方の、他のスラグに最も近い位置の局部的な領域が、(スラグ905aのスミア密度の場合のように)わずかにより大きいスミア密度となってもよく、および/または、(スラグ905bの例のように)わずかにより小さいスミア密度となってもよい。交互の(alternate)スミア密度に影響を与えるために、スラグ905a、905b間に、追加のスラグを追加してもよく、および/または、スラグ905a、905bの一方または両方の胴体内のスミア密度は、連続的に、および/または、他のスラグとの局部的な接触に最も近い位置のスラグの胴体の一部分(segment)において、局部的に調整されてもよい。このような局部的な調整が、スミア密度の変化率を制限するために、および/または、スミア密度間の局部的な相違を制限するために、適宜用いられてもよい。
【0088】
スラグおよび/またはペレットの製造は、機械的な手段、例えばドリルあけ、機械加工などによって、化学的な手段、例えば溶解、反応、転換、分解などによって、またはそれらの組み合わせによって、押し出し、より大きい固体を切断または粉砕してより小さい固体を形成すること、成形、焼結のあるまたはない粉末強化、(空隙、形状、サイズ、環状経路などのような)形成された物質の選択された領域の除去のうちの任意の一つ以上を含めて、任意の適切な方法で実行することができる。
【0089】
図14ないし図18は、それぞれ、図1Cに示す燃料要素100の断面A’-A’、B’-B’、C’-C’、D’-D’、E’-E’に沿った横断面図である。横断面図1000、1100、1200、1300、1400は、燃料要素100の長手方向の軸120に垂直であり、また、核分裂可能な組成物および空隙空間の分布を概略的に示している。横断面図はまた、長手方向の軸に沿った位置とともに変化するこれら2つの面積の比率を決定するのに用いられることができる、長手方向の軸に垂直な管状の燃料要素の横断面における核分裂可能な核燃料の面積と、管状の燃料要素の横断面における内側容積の全面積とを、図式的に表す。この比率は、燃料要素100の長手方向の軸120に沿った5つの示された位置のそれぞれにおいて、スミア密度として表現されることができ、図14ないし図18に示されている。説明の目的のために、断面A’-A’およびE’-E’は、管状の燃料要素の長手方向の端に向かって位置しており、断面C’-C’は、管状の燃料要素の長手方向の中央に最も近い位置に位置し、断面B’-B’およびD’-D’は、各長手方向の端部分と、長手方向の軸中央部分との間のほぼ中間に位置している。5つの部分の使用は、説明のためのであり、限定するためのものではなく、管状の燃料要素は、長手方向の軸に沿った位置がより薄い部分に解析されればされるほど、離散的な比率(またはスミア密度)を有するますます多くの断面を有することができ、これは、全体として、長手方向の軸に沿った比率における、段階的な変化または連続的に変化する変化を生み出す。また、同様のスミア密度の部分の個数は、同様のスミア密度の一つ以上の(スラグのような)個々の胴体を含んでもよいことが理解されるだろう。また、同様のスミア密度の一つの部分における(スラグのような)複数の胴体が、燃料装荷、核分裂不可能な物質の量、間隙空間、燃料中の空隙、スラグの幅などのうちの任意の一つ以上のような上記の単一の技術または技術の組み合わせにおけるスミア密度を達成することができることが理解されるだろう。
【0090】
図14ないし図18の概略的な図面において、核分裂可能な核燃料は、金属スポンジの形式である。金属スポンジ1010、1110、1210、1310、1410は、(核分裂可能な核燃料と非燃料物質とを含む)核分裂可能な核燃料のマトリクス1020、1120、1220、1320、1420と、マトリクス1020、1120、1220、1320、1420中の複数の非燃料領域1030、1130、1230、1330、1430とを含む。非燃料領域は、典型的には、非燃料固体物質、および/または、実質的な真空またはヘリウムなどで満たされた気体である空隙である。3次元の燃料要素では、金属スポンジが、クラッドによって囲まれた内側容積の少なくとも一部分を占める。しかしながら、図14ないし図18の2次元の断面図では、金属スポンジ1010、1110、1210、1310、1410は、クラッド1060、1160、1260、1360、1460によって提供される壁1050、1150、1250、1350、1450の内側表面1040、1140、1240、1340、1440によって規定された内側領域の一部分を占めている。示された燃料要素のさらなる特性は、金属スポンジ1010、1110、1210、1310、1410のうちの少なくとも一部分と、壁1050、1150、1250、1350、1450(または、もしあれば、クラッドのライナーまたは他の被覆層)との間に、熱伝導接触(熱伝達のうちの一つの形式)があることである。このような熱伝導接触は、金属スポンジ1010、1110、1210、1310、1410の周囲の長さの、50%より大きいとすることができ、あるいは、70%より大きい、80%より大きい、90%より大きく95%、98%または99%まで、とすることができる。金属スポンジは、機械的接触はせず、金属スポンジ1010、1110、1210、1310、1410と壁1050、1150、1250、1350、1450(または、もしあれば、クラッドのライナーまたは他の被覆層)との間の空間は、それぞれ液体金属結合または気体結合を形成する液体金属または気体のような、非燃料物質によって占められることができる。図14図18は環状経路のない一定の直径で示しているが、燃料要素の長手方向の長さに沿って所望のスミア密度の変化を達成するために、任意の一つまたはこれらの特徴と他の特徴との組み合わせが、金属スポンジと共に追加的に用いられてもよい。
【0091】
任意の一つの横断面図において、金属スポンジ1010、1110、1210、1310、1410のマトリクス1020、1120、1220、1320、1420によって占められる面積の部分における燃料組成物における核分裂可能な核燃料物質の量は、スミア密度の式における値AreaFuelであり、クラッド1060、1160、1260、1360、1460によって形成された壁1050、1150、1250、1350、1450の内側表面1040、1140、1240、1340、1440によって規定された面積は、スミア密度の式における値AreaInterior Cross-Sectionである。図14図18からわかるように、スミア密度は、断面A’-A’ないしE’-E’のうちの任意のものにおけるスミア密度の間で変化し、燃料要素の長手方向の軸に沿った位置とともに変化するスミア密度を示している。
【0092】
図14図18は、また、管状の燃料要素の長手方向の各端におけるスミア密度が、管状の燃料要素の長手方向の中央区域におけるスミア密度より大きいような修正を示している。図14(第1の長手方向の端での横断面)および図18(第2の長手方向の端での横断面)を、図16(長手方向の中央区域での横断面)と比較すると、第1の長手方向の端および第2の長手方向の端の核分裂可能な核燃料のマトリクス1020、1420によって占められる面積が、長手方向の中央における核分裂可能な核燃料のマトリクス1220によって占められる面積よりも大きいことがただちに確認できる。
【0093】
さらに、図14図18は、燃料要素の第1の長手方向の端でのスミア密度が、燃料要素の第2の長手方向の端でのスミア密度より大きく、両方の端が、中央区域より大きいスミア密度を有しているような、追加的または代替的な修正を示している。図14(第1の長手方向の端での横断面)を図18(第2の長手方向の端での横断面)と比較すると、第1の長手方向の端での核分裂可能な核燃料のマトリクス1020により占められる面積が、第2の長手方向の端での核分裂可能な核燃料のマトリクス1420により占められる面積よりも大きいことがただちに確認できる。
【0094】
核分裂可能な核燃料が、金属スポンジのマトリクス内に位置するか、または、金属スポンジの一部として位置するかの一方または両方であり、かつ、燃料要素の内側容積に位置するような実施形態において、スミア密度の修正は、適切な手段によって達成することができる。例えば、金属スポンジは、マトリクスが、名目上、核分裂可能な核燃料の均一な量を有するような、マトリクスと空隙との指定のバランスで形成されることができる。このような場合には、スミア密度の変化は、燃料要素の長手方向の長さに沿って内側容積における異なる部分が満たされるように、マトリクスと空隙空間との間のバランスを変化させることによって達成することができる。より低いスミア密度を達成するためには、マトリクスの量を減少させ、空隙の量を増加させる。同様に、より高いスミア密度を達成するためには、マトリクスの量を増加させ、空隙の量を減少させる。与えられた領域においてマトリクスと空隙との相対的な量を制御する一つの製造方法は、マトリクス物質が送風機または他の注射器を通って気体媒体に乗るような気体注入技術を用いることである。気体媒体は、不活性気体または気体結合として機能することができる気体とすることができる。単位容積のマトリクス当たりに乗った気体媒体の量は、内側容積の全面積に対する核分裂可能な核燃料の面積の比率の長手方向の変化を生み出すように、制御および調整されることができる。追加的にまたは代替的に利用可能な他の製造技術は、(随意的に外圧を伴ってもよい)粒子間金属結合を強化して形成するための、焼結処理を有する粉末強化を含み、また、一つ以上の焼結処理は、融点の相違、または、粉末充填処理、空隙形式を有する型、予備成形された固体または泡内の空隙のドリルアウト、水素化物/脱水素化および/または3D印刷処理によって、本来の焼結された粉末の一部分を除去することができる。
【0095】
全体として、スミア密度は、最小30%と最大75%との間で、軸に沿った位置とともに変化することができる。あるいは、スミア密度は、50%ないし70%である。燃焼度分布に対する毒の長期間効果を相殺するためには、より高いスミア密度燃料を用いることができる。中性子毒は、束を減少させる傾向があり、一方、より高いスミア密度燃料は、より多くの核分裂性の燃料を増殖させ、束を増加させる傾向がある。さらに、最初に原子炉コアに入る原子炉冷却剤は、原子炉コアを出る冷却剤よりも冷たい(およびもっと密な)傾向があり、冷却剤入口点の近くで(典型的には燃料要素の一つの端で)より高い中性子吸収およびより低い束と、冷却剤出口点の近くで(典型的には燃料要素の対向端で)より低い中性子吸収およびより高い束と、を導く。また、冷却剤出口点は一般的に冷却剤入口点より高温の所にあるので、燃料要素に対する熱的クリープおよび他の温度効果は、より著しくなることがあり、したがってそれらの効果を管理するために、いっそう低い束を要求しうる。さらに、制御棒は一般的に、燃料要素の一つの長手方向の端の方向から燃料要素の中央領域に向かって「押し下げ」(pushed down)される。これらの効果は、予測される中性子束を決定するときに考慮されることができ、また、燃料要素の長さに沿って、予測される中性子束分布を補償するまたはそれに影響を与えるために、燃料要素の長さに沿って種々の位置で燃料に対するスミア密度を設計および選択するときにも考慮されることができる。これらの原理に基づいて、燃料要素の一つの端に向かっての増殖を有利にするために、複数スミア燃料要素(multi-smear fuel element)には、燃料要素の長さに沿って、選択された位置で、種々の選択されたスミア密度が提供されてもよく、それによって、燃料要素の一つのまたは他の長手方向の端に向かうようにまたはそこから遠ざかるように束分布を引き、および/または、燃料要素の長さにわたって変化率を減少させるまたは束分布の平坦化を増加させる)。
【0096】
燃焼度、原子変位数(DPA)履歴、DPA率履歴、核分裂気体放出、スミア密度、時間履歴、クラッド物質、クラッド寸法、および動作温度など、リニア発熱率、熱伝達率、さらには、スミア密度点の相違など、多くの変数が燃料要素の歪みに寄与する。ここに記載した種々の実施形態において、燃料は、熱的クリープ、束、および/または燃焼度を考慮するのと同様に、その位置における標的の燃焼度に対する歪み限度に基づいて、選択的に決定されることができる。離散的(discrete)な燃料胴体を有する実施形態において、燃料ペレット形式または燃料スラグ形式または他の胴体形状においても、異なる直径(関連する場合における内径および外径の両方)を用いることができる。例えば、燃料ペレットまたは燃料棒を考慮して、燃料直径は、第1の長手方向の端において(すなわち、歪み限度またはその位置における標的の燃焼度にまで)大きくし、長手方向を向いた燃料要素の中央(最も高い燃焼度を有する領域)では、より狭くし、第2の長手方向の端において(すなわち、歪み限度またはその位置における標的の燃焼度にまで)大きくしてもよい。熱的クリープは、冷却媒体のための出口として機能する燃料要素の端において大きく、これはこの領域ではより高温であるためであり、したがって、より長期間の動作に対しては、最適条件を見出すために、実際燃焼度と、動作時のクリープのような設計上で考慮すべき事柄とが、くり返し計算される必要がある。所望の空隙率、燃料装荷などを有する、環状、泡状燃料、または充填されたペレットである燃料形式に対して、同様の考慮を行うことができる。また、(密度燃料全体を装荷することに加えて、またはそれと代替的に、)空隙率を変化させながら初期の燃料を装荷することができる。TWRなどにおいては、金属燃料は、固体または気体の核分裂生成物であるため、拡大する。金属燃料は、(寿命における早期に、)初期の連結パーセント(couple percent)燃焼度以内で、その金属燃料が中に含まれる容積を満たす傾向がある。燃料要素の中の核分裂気体の輸送を維持するために、燃料の形式、塊状の燃料集合体、およびコア全体、の設計歪み限度以内で、燃料の、初期スミア密度、空隙率、および燃焼度特性が考慮されてもよい。
【0097】
図19は、束の上記所望の分布と、スミア密度の上記相関した分布とを決定することによって、上記歪み限界を減少させ、かつ/または、燃料の燃焼度限界を増加させる例示的な方法を示している。上記方法は説明目的のための一連のステップとして提示されるが、このシーケンスは、方法の請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、その順序、タイミング、等に対してなされる修正および変更に気づくであろう。同図は、実施形態を示す一連のステップまたはフローチャートである。理解を容易にするために、上記ステップまたはフローチャートは下記のように構成されている。すなわち、最初のステップまたはフローチャートでは、実施例による実施が提示される。その後に続くステップまたはフローチャートでは、先に提示された1または複数のステップまたはフローチャートに基づいて構築されたサブコンポーネントの動作または追加のコンポーネントの動作の何れかとして、上記最初のステップまたはフローチャートの他の実施形態および/または拡張が提示される。当業者であれば理解されるように、本願で利用される提示のスタイル(例えば、実施例を提示する1若しくは複数のステップまたは1若しくは複数のフローチャートの提示で始まり、その後に続くステップまたはフローチャートの追加および/またはさらなる詳細を提供するもの)は、一般に、種々のプロセスの実施を迅速かつ容易に理解することを見込んでいる。さらに、当業者であれば、本願で使用される提示のスタイルは、モジュール方式および/またはオブジェクト指向のプログラム設計パラダイムにも良好に役立つことをさらに理解するであろう。
【0098】
中性子束およびスミア密度の決定は、任意の適切な方法を用いて行うことができる。一般に、商業的に或いは公的に利用可能なソフトウェアは、上記原子炉コアをシミュレートして上記束を決定するために必要なベースライン分析を提供することができる。例えば、中性子輸送シミュレータを使用して、中性子が上記原子炉コア内および燃料要素内のどこに存在するかに関する情報を提供することができる。また、核種変換シミュレータを使用して、核分裂可能な原子が、(燃料親の物質から核分裂性の物質に)どのように増殖し、(核分裂可能な物質の核分裂で)どのように燃焼するかを決定することができる。また、中性子動力学モジュールは、発熱の分布を提供することができると共に、熱流体力学シミュレータは、上記燃料要素の熱伝導と、温度プロファイルとを提供し、かつ、上記燃料要素などの特定の構成要素に関する最大歪みおよび最大許容燃焼度を決定することができる。また、機械的相互作用シミュレータおよび燃料性能フィードバックソフトウェアを随意的に使用して、他の機械的相互作用(例えば、燃料の湾曲、システムにおける中性子および熱の流体力学に影響を及ぼすダクトとの相互作用など)を決定することができる。種々の利用可能なコンピュータモジュールを使用してもよく、該コンピュータモジュールの例としては、SERPENT(「http://montecarlo.vtt.fi/」から利用可能)、MCNp6(「https://mcnp.lanl.gov/」から利用可能)、REBUS(「http://www.ne.anl.gov/codes/rebus/」から利用可能)、ERANOS(「https://www.oecd-nea.org/tools/abstract/detail/nea-1683」から利用可能)、DRAGON(「http://www.polymtl.ca/nucleaire/en/logiciels/index.php」から利用可能)、などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0099】
図19の例示的な方法1500に示されるように、燃料要素の長さにわたる初期のスミア密度分布を選択する(1502)。上記初期のスミア密度分布は、任意の適切な初期開始点であってもよく、該初期開始点は、上記燃料要素の長さに沿った均一なスミア密度または粗雑な分布で近似してもよい。1504において、上記原子炉コアの動作特性は、少なくとも一部は、公知の方法および将来知られる方法を使用して、上記燃料要素のスミア密度に基づいて決定される。上記方法の例としては、商業的に、公的に、およびオープンに利用可能なシミュレーションおよび分析ツールに関して上述した方法が挙げられる。動作特性には、中性子工学、熱流体力学、燃料性能フィードバック、機械的相互作用、中性子動力学、および中性子束分布などの変数が含まれる。また、動作特性には、燃焼度、単位原子当たりの変位量(DPA)の履歴、DPA速度の履歴、核分裂可能なガスの放出量、スミア密度、時間履歴、クラッド材料、クラッド寸法、並びに、線形の熱速度、熱伝達係数、および均一なスミア密度の点との差のような動作温度を含んでもよい。決定された動作特性に基づいて、上記燃料要素の長手方向の軸に沿った燃料歪みのプロファイルが決定されることができる(1506)。例えば、上記決定の動作1506は、上記初期のスミア密度分布および決定された原子炉コアの特性に基づいて、上記燃料要素の選択された領域における歪みを決定することを伴い得る。
【0100】
次に、上記燃料歪みのプロファイルに基づいて補正スミア密度プロファイルをモデル化する(1508)。或る実施形態では、上記補正スミア密度プロファイルは、高歪み領域を相殺して「平坦化」するようになっている。例えば、均質なスミア密度に関する歪みを計算し、次に、上記スミア密度を低歪み領域にて選択的に増加させ、高歪み領域にて選択的に減少させて、補正燃料歪みプロファイルを平坦化してもよい。その結果、補正スミア密度プロファイル1508は、元の歪みプロファイルにおける低歪み領域に対応する増加したスミア密度の領域と、元の歪みプロファイルにおける高歪み領域に対応する領域における減少したスミア密度の領域とを含むことができる。
【0101】
或る実施形態では、上記補正スミア密度プロファイルは、モデル化された歪みの区域ごとの評価に基づいて構築される。例えば、上記燃料要素の各区域の歪みを(例えば、上記区域に特有の原子炉コアの特性に基づいて)決定することができ、次に、この局所化された歪みを1または複数の閾値(例えば閾値の最大値および/または最小値)と比較することができる。上記モデル化された歪みと上記閾値との比較に基づいて、関連区域の初期スミア密度を、上記区域の補正スミア密度に到達するように修正(例えば、増加または減少)することができる(1510)。この補正スミア密度は、上記燃料要素の上記補正スミア密度プロファイルの一部を形成する。このプロセスは、個々の区域ごとに繰り返し、燃料歪みおよび/または不均一な束の影響を相殺するスミア密度プロファイルを反復法で生成し、その結果、上記燃料要素の長さにわたって平均燃焼度速度を上昇することができる。
【0102】
上述のように、上記補正スミア密度プロファイル1508の構築は、異なる区域のそれぞれに関して局所的な燃料歪みを歪み閾値または閾値のセットと比較することを伴ってもよい。幾つかの実施形態では、均一な歪み閾値または均一な歪み閾値のセットを共通に用いて、個々の領域内のそれぞれに補正歪みの評価が適用される。他の実施形態では、上記歪み閾値は、上記燃料要素の各区域に近接する構造、物質、および/または他のコアの構成要素に基づいて、異なる区域に対して個別に設定される。
【0103】
上記歪み閾値は、(束分布、燃焼度限界などで近似することができる)システムの設計特性を満たす任意の適切な閾値とすることができる。上記燃料要素の選択された区域における歪みが、歪み閾値を逸脱する(最大歪み閾値よりも高い、或いは最小閾値よりも低い)場合、上記関連区域の上記初期スミア密度を修正する(例えば、上記閾値の逸脱の度合いに基づいて減少または増加させる)ことができる。例えば、スミア密度は、最大歪み閾値を超えた著しく高い歪みを有する領域において劇的に減少し得る。同様に、スミア密度は、最小歪み閾値よりわずかに低い、低い歪みを有する領域においてわずかに増加され得る。その結果、上記補正スミア密度プロファイルは、束分布を平坦化する(例えば、上記燃料要素の長さ全体にわたる歪みを減少させる)という効果を奏する。
【0104】
スミア密度(例えば、上記初期スミア密度)を決定し、歪みをモデル化し、かつスミア密度(例えば、上記補正スミア密度)を調整する上述のプロセスは、上記補正歪みプロファイルが幾つかの適切な停止基準を満たすと決定されるまで、各区域にて複数回繰り返されてもよい。各区域内で上記補正スミア密度を繰り返し決定するその他の考えには、keff>1を確保する(臨界を維持するのに十分な核分裂可能な物質を確保することによって上記コアの臨界性を確保する)、必要とされるピークコアパワーを保持する、などのうちの任意の1つまたは複数が含まれる。これらの考えのうちの任意の1または複数は、上記燃料要素の長さに沿った上記燃料スミア密度プロファイルを反復し潜在的に最適化する上でのさらなる制約である可能性がある。
【0105】
例示的な実施形態を説明するときに上述したように、上記スミア密度は、上記長手方向の軸に沿った位置によって最小値30%と最大値100%との間で変化することができる。或いは、上記スミア密度は、50%~70%または50%~75%である。或る実施形態では、上記燃料要素における第1の長手方向端部は、50%のスミア密度を有し、例えば第2の長手方向端部のような上記燃料要素における第2の部分は、異なる(例えば、より大きい)スミア密度(例えば55%、65%、70%、75%など)を有する。別の実施形態では、上記燃料要素の第2の長手方向端部は、50%のスミア密度を有し、例えば第1の長手方向端部のような上記燃料要素の第2の部分は、異なる(例えば、より大きい)スミア密度(例えば55%、65%、70%、75%など)を有する。さらに別の実施形態では、上記燃料要素の長手方向中央部は、50%のスミア密度を有し、例えば第1の長手方向端部および第2の長手方向端部の両方のような上記燃料要素の第2の部分は異なる(例えば、より大きい)スミア密度(例えば、55%、65%、70%、75%など)を有する。
【0106】
特に、燃料歪みは、スミア密度およびクラッドの厚さの両方によって影響を受ける可能性がある。従って、幾つかの実施形態では、スミア密度に代えて(またはスミア密度に加えて)クラッド厚さを操作することにより、燃料歪みプロファイルを平坦化する効果を達成してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、上述の補正スミア密度プロファイルの代わりに、またはそれに加えて、補正クラッド厚さプロファイルをモデル化してもよい。次に、上記補正クラッド厚さプロファイルに基づくクラッド厚さに対し燃料要素の修正を実施することができる。そのような修正は、上述のように、補正スミア密度プロファイルに基づき燃料密度を修正することと、分離して或いは組み合わせて行ってもよい。
【0107】
図20は、燃料要素の第1の例示的な実施形態について、(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(%)のグラフである。図20のグラフでは、上記長手方向の位置は1~12の範囲で区画化されている。上記スミア密度は、第1区域の70%から区域6および区域7の52%まで略連続的に変化し、それから区域11および区域12の65%まで略連続的に変化している。このように上記スミア密度を変化させることにより、上記燃料要素が遭遇するであろう束の予測分布(典型的には、上記燃料スミア密度が変化しない場合における略ガウス分布)を平坦化することができ、端部区域1~3および端部区域10~12にてより高い燃焼度が達成されることにより、上記燃料全体にてより高い燃焼度を見込むことができる。
【0108】
図21は、燃料要素の第2の例示的な実施形態について、(任意の単位での)長手方向の位置の関数としての分数スミア密度のグラフである。図21のグラフでは、上記長手方向の位置は、12個の区域1601、1602、1603、1604、1605、1606、1607、1608、1609、1610、1611、1612を含む。図21における各区域は、等しいサイズで示されているが、上記区域は、他の区域と比べて、上記燃料要素の長手方向の長さが異なっていてもよいことを理解されるべきである。上記分数スミア密度は、第1の端部区域1601の0.70から中央区域1606および1607の0.53まで階段状に変化し、それから第2の端部区域1611および1612の0.65に階段状に変化している。
【0109】
図20および図21のグラフは、燃料要素におけるスミア密度の長手方向の変化を表しており、第1の長手方向端部(例えば区域1601)におけるスミア密度が、第2の長手方向端部(例えば区域1612)におけるスミア密度よりも大きくなっている。これは、長手方向の軸に沿って変化する予測される束を多くのコアファクタにより平坦化するのに役立つ。該炉心ファクタの例としては、冷却剤が区域1にて入り区域12で出ることが挙げられる。また、図20および図21のグラフは、或る燃料要素におけるスミア密度の長手方向の変化を表している。ここで、第1の長手方向端部(例えば区域1601)および第2の長手方向端部(例えば区域1612)の両方におけるスミア密度は、長い上記燃料要素の長手方向中央部(例えば区域1606および1607)におけるスミア密度よりも大きくなっている。
【0110】
図22Aおよび図22Bは、燃料要素の他の幾つかの例示的な実施形態について、(任意の単位または区域における)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(分数)のグラフである。図22Aおよび図22Bのグラフにおいて、上記長手方向の位置は12個の区域を含み、スミア密度は階段状に変化している。ベースライン(実線1700)は、スミア密度の長手方向の変化を図21から再現している。このベースラインの2つの変形例、すなわち、第1の変形例(図21Aにおいて長い破線1710によって示されるV_1)および第2の変形例(図21Bにおいて短い破線1750によって示されるV_2)が例示されている。第1の変形例(V_1)1710は、区域1711、1712、1713、1714、1715、1716、1717の長手方向の位置においてベースライン1700と重なっている。しかし、区域1718、1719、1720、1721、1722では、第1の変形例(V_1)1710におけるスミア密度は、上記ベースライン1700の同じ区域におけるスミア密度よりも低く、かつ、第1の端部において第1の変形例(V_1)1710の区域1711、1712、1713、1714、1715における対応するスミアの値よりも小さい。さらに、第1の変形例(V_1)1710では、スミア密度の最小値は、区域1716、1717、1718を含む長い燃料要素の長手方向中央部にて現れている。概括的には、第1の変形例(V_1)1710における区域1719、1720、1721のスミア密度は、ベースライン1700の対応する区域よりも1つ低い区域のスミア密度と同じである(すなわち、スミア密度(V_1,区域n)=スミア密度(ベースライン,区域(n-1))。これにより、第1の変形例(V_1)1710では、第2の長手方向端部において、上記燃料要素の区域1719、1720、1721、1722におけるスミア密度の分布は、ベースライン1700に比べて、より低い値に一致するように変更されている(第2の端部における特定の位置のスミア密度は、第2の変形例における特定のセグメントに比べてより中心に位置する、ベースラインの対応するセグメントのスミア密度と一致する)。その結果、上記中性子束を第2の端部の方へさらに分配する傾向があり、かつ、上記中性子束を第1の端部全体の方へシフトさせる傾向がある。図21Bの第2の変形例(V_2)1750は、幾つかの長手方向の位置(例えば区域1751,1753,1754,1756および1757)にてベースライン1700と重なる。しかし、他の区域では、第2の変形例(V_2)1750のスミア密度は、ベースライン1700の同じ区域におけるスミア密度よりも低い。さらに、第2の変形例(V_2)1750では、スミア密度の最小値は、長い上記燃料要素の長手方向中央部から第2の長手方向端部の方へ外れた位置にて現れている。第2の変形例(V_2)1750の例では、区域1758における最小スミア密度は52%(すなわち分数スミア密度が0.52)である。概括的には、ベースラインのスミア密度に対する第2の変形例(V_2)1750のスミア密度の変化量は下記の通りである。すなわち、第1の長手方向の区域(1751,1752,1753)および第2の長手方向の区域(1759,1760,1761)におけるスミア密度は、ベースライン1700の対応する区域と同じかそれより低いスミア密度を含む。さらに、第2の端部の長手方向の区域において、区域1760,1761,1762におけるスミア密度は、上記ベースラインの対応する区域よりも2つ低い区域におけるスミア密度と同じである(すなわち、スミア密度(V_2,区域n)=スミア密度(ベースライン,区域(n-2)))。これにより、上記燃料要素の第2の端部区域(9~12)における上記スミア密度の分布は、上記第2の長手方向端部において、ベースラインの同じセグメントに比べて、より低い値へシフトされる。その結果、上記中性子束を第2の端部の方へさらに分配する傾向があり、第1の端部全体の方へ上記束をシフトさせる傾向がある。50%のスミア密度(すなわち0.50の分数スミア密度)が、図22Aおよび22Bに基準として示されている。
【0111】
燃料要素のスミア密度が均一である場合に比べて、燃料要素のスミア密度が長手方向に変化する場合の改善点および利点は、上述のソフトウェアシミュレーションおよび分析ツールを用いて例示することができる。(図23にグラフで示す)第1のシミュレーションでは、燃料要素は、長手方向の位置の関数として均一な分数スミア密度を有していた。この第1のシミュレーションにおける燃料要素は、実質的に均一なスミア密度が50%(分数スミア密度が0.5)であり、燃焼度限界が約30%であった。(図24にグラフで示す)第2のシミュレーションでは、燃料要素は、長手方向の位置の関数として変化する分数スミア密度を有していた。図24では、分数スミア密度1930は、上記燃料要素の長手方向の長さに沿ったスミア密度のセグメントごとの変化を擬似曲線でフィッティングしたものとして提示され、長手方向の位置1における約70%から、長手方向の位置4の付近における約50%に変化している。(図23に示される)第1のシミュレーションおよび(図24に示される)第2のシミュレーションにおける上記燃料要素の材料、幾何学的形状、その他の特性は、実質的に同じであり、実質的に同じ動作条件および境界条件で動作され、分数スミア密度の長手方向に関してのみ変化していた。従って、上記シミュレーションにおける各燃料要素の燃焼度限界および燃焼度の変化は、燃料利用効率の差と同様に、上記2つのシミュレーションにおける上記2つの燃料要素間の分数スミア密度の長手方向の変化の差に起因する可能性がある。
【0112】
図23および図24に示される燃焼度限界、燃焼度、および分数スミア密度は、上記2つのシミュレーション(図23の第1のシミュレーションおよび図24の第2のシミュレーション)に関する(任意の単位または区域における)長手方向の位置の関数として示されている。図23に示される燃料核種の平衡サイクル分布のプロットは、スミア密度が長手方向の軸に沿った位置で事実上一定である従来の原子炉における長手方向の位置に対する燃焼度(単位:%FIMA(fissions per initial metal atom、初期金属原子あたりの核分裂量))に関連する。プロファイル1830は、分数スミア密度を長手方向の位置の関数として示すものである。プロファイル1800は、上記燃料要素の長手方向の長さにわたる燃焼度の分布であり、実質的に逆コサインの形状を有する。上記プロファイル1800は、上記燃料においてスミア密度と束の時間積分とが一定であるシステムにおける物理的性質の関数であり、長手方向の中央部に向かってピークを有する分布を示している。基準プロファイル1810は、上記システムの最大の燃焼度限界を示している。プロファイル1800の上記燃焼度と基準プロファイル1810の上記燃焼度限界との差分(プロファイル1800とプロファイル1810との間の斜線領域1820a・1820bを参照)は、利用可能な燃料の量を表している。しかし、上記利用可能な燃料の量は、上記長手方向端部に近接した位置において使用されておらず、かつ、その潜在的な燃焼度限界に到達しておらず、これは、上記燃料要素の長手方向中央部の燃料物質がその燃焼度限界に達しているためであり、その結果、上記長手方向端部における燃料が利用可能であるにもかかわらず、上記燃料要素を退去させる必要性が生じる。図22の燃料要素におけるこの「早期の」退去は、均一なスミア密度が低効率であることに関連する。(上記燃焼度と上記燃焼度限界との間の領域が大きくなるにつれて、燃料の利用に関する上記システムが低効率となることによって表される。)
図24に示される燃料核種の平衡サイクル分布のプロットは、上記燃料要素のスミア密度が長手方向の軸に沿った位置で変化している原子炉における長手方向の位置に対する燃焼度(単位:%FIMA(初期金属原子あたりの核分裂量))に関連する。プロファイル1900が表示するコサインのような分布は、燃料要素の長手方向の長さにわたる実際燃焼度の分布であり、長手方向の位置が約5.5である場合に25%FIMAの最大値となる。この長手方向の長さにわたる燃焼度の分布が、同じ長手方向の長さにわたるスミア密度の変化に反映され、区域1~3のスミア密度が区域9~12のスミア密度よりも高くなり、区域9~12のスミア密度が中央の区域4~8のスミア密度よりも高くなる。均一なスミア密度を有する従来の原子炉の基準プロファイル1800と比較すると、プロファイル1900は、最大燃焼度が低減され(30%FIMAと比較して25%FIMA)、広域の最大値が全体的に低減されている。また、図23の基準プロファイル1800と比較すると、図29のプロファイル1900は、第1の長手方向端部(図24の1940であり、その位置は長手方向の位置1である。図23の対応する第1の長手方向端部は1840であり、その位置は長手方向の位置1である。)の方にシフトして、第1の長手方向端部における燃焼度が増加し、第2の長手方向端部(図24の1950であり、その位置は長手方向の位置12である。図23の対応する第2の長手方向端部は1850であり、その位置は長手方向の位置14である。)における燃焼度は減少し、その結果、上記燃料要素の全体の燃焼度が増加し、上記燃料要素全体による全体的かつ潜在的な燃焼度がより良好に満たされる。図23の基準プロファイル1810は、上記燃料要素の燃焼度限界の最大許容値を示している。プロファイル1800の燃焼度と基準プロファイル1810の燃焼度限界との差は、領域1820aおよび1820bによって表され、利用可能であるが使用されていない燃料の量を表し、従来の原子炉の効率(上記燃焼度と上記燃焼度限界との間の領域が小さいほど、システムは効率的である)に関する。図24では、プロファイル1900の燃焼度と基準プロファイル1910の燃焼度限界との差は、領域1920によって表される。領域1920は、特に、上記燃料要素における第1の長手方向端部から上記長い燃料要素の長手方向中央部を通るまでの部分において、(図23に示される領域1820a・1820bに対して)縮小される。プロファイル1900の燃焼度と基準プロファイル1910の燃焼度限界との間の差が減少することにより、上記燃料要素のスミア密度が長手方向の軸に沿った位置によって変化する原子炉が、均一なスミア密度を有する従来の原子炉よりも燃料の利用効率が高いことが示される。
【0113】
実際燃焼度と燃焼度限界との差は、スミア密度により、全ての区域において実質的に合致するように設計され、全区域にわたって全体的に最適化され、かつ/または、区域のサブセット(例えば、第1の長手方向端部および中央の区域)において最適化される一方、他の設計上の制約または要望(例えば、冷却剤の出口付近であることにより高い温度となる第2の長手方向端部における安全マージン、など)により、第2の長手方向端部に幾つかの不適合な燃焼度限界が残り得ることが理解されるべきである。上記燃料要素および/または原子炉コアにおける或る所望かつ選択された設計上の特性に合致するように上記スミア密度を選択すると共に、他の設計上の制約を満たすことは、本願にて説明される一般的な方法を用いて利用できることが理解されるべきである。上記一般的な方法の例としては、ピーク出力、ピーク温度、臨界、燃焼度限界、歪み、クラッド安定性などに関して最適化することが挙げられる。
【0114】
また、図24が示すことは、従来のシステムの中心位置に対して予測されるピーク燃焼度の位置の上方および下方に(例えば、長手方向の各端部に、或いは当該各端部の方へ)、より多くの燃料を追加する(例えば、スミア密度を増加させる)ことによって、ピーク燃焼度が減少し、燃焼度分布が平坦化されシフトされることである。本願に開示されるような長手方向に変化するスミア密度のプロセスを用いて、燃焼度分布を長手方向に拡大し、上記燃料要素および燃料集合体の歪みを低減し、かつ/または、燃料要素の全体の燃焼度を増加させることができ、これにより、原子炉内の燃料物質をより効率的に使用することが可能となる。さらに、プロファイル1900と基準プロファイル1910との間の変化は、スミア密度の長手方向の変化が燃料利用効率を有意に増加させ、好ましくは燃料利用効率を10%以上増加させることを示している。
【0115】
さらなる利点として、スミア密度の長手方向の変動は、原子炉設計の利点に寄与する。例えば、図24に示す燃料要素の全体の長手方向の長さは、図23に示す燃料要素の全体の長手方向の長さよりも短い。しかし、図24に示す燃料要素は、図23に示す燃料要素よりも、長さが短いが上記燃料利用効率が高い。一例では、燃料柱の高さは2.4メートルから2.0メートルに減少すると同時に、燃料質量は2パーセント減少した。このように、図23および図24は、スミア密度の長手方向の変動を組み込むことによる原子炉設計の結果的な利点、すなわち燃料要素がより短くなることを示している。燃料要素がより短くなることは、燃料利用に関してより効率的であり、原子炉の出力を低下させること無くよりコンパクトかつ効率的な原子炉設計に寄与することができる。また、燃料柱の高さの減少は、(より小さな原子炉という機械的な利点に加えて)関連する冷却剤の圧力降下が、長さが短くなることにより減少することをもたらすことができる。
【0116】
図25は、長手方向の長さと共にスミア密度が変化する燃料要素における歪み限界、歪み、および分数スミア密度を(正規化された単位または区域における)長手方向の位置の関数として示している。プロファイル2000は、上記分数スミア密度を長手方向の位置の関数として示し、かつ、正規化された上記長手方向の位置の区域ごとに区分されたスミア密度を擬似曲線でフィッティングしたものとして示される。上記分数スミア密度のプロファイル2000は、中央部(長手方向の位置0.5)における約45%と約50%との間から、端部(長手方向の位置0および位置1.0)における約70%まで変化し、逆ガウス分布に近い形状を有する。プロファイル2010は、上記燃料要素の長手方向の長さにわたる歪みの分布を示し、実質的に逆コサインの形状を有する。プロファイル2010は、上記システムと、上記燃料における選択的に変化したスミア密度および時間積分された束との物理学の関数であり、長手方向の中央部に向かって歪みのピークを有する分布を生成する。基準プロファイル2020は、上記システムの歪み限界の最大値を示している。プロファイル2010の歪みと、基準プロファイル2020の歪み限界との差(プロファイル2010とプロファイル2020との間の斜線領域2030a・2030bを参照)は、歪み限界に達する上記燃料要素の中央部において、上記燃料物質に起因する縁部近傍の位置における歪みの安全マージンの量を表す。上記の図は、最大歪みに達する燃料柱の単一の長手方向の位置としての例を示しているが、上記燃料柱の1または複数の部分が、上記歪み限界に達してもよく、歪みの他の曲線或いは、上記燃料要素の長さに沿って同じ歪みの閾値を有してもよい。
【0117】
図25は、上記システム(基準プロファイル2020)について、長手方向の位置の関数として一定の値を有する歪み限界の最大値を示している。しかし、上述の図に示された一定の歪み限界は一例に過ぎず、可変歪み限界を含むその他の歪み限界は、幾つかの位置ではより高い歪みを許容し、その他の位置ではより低い歪みを許容することが可能である。当業者であれば、本願に開示された複数のスミア燃料は、可変の歪み限界に適応し、より高い歪み限界の関連する位置でより多くの歪みを許容するように調整できることを認識することができる。
【0118】
図26は、燃料要素の長手方向の長さに沿ってスミア密度が変化する上記燃料要素を製造する例示的な方法2100を示している。上記燃料要素の各区域における選択されたスミア密度は、図19図22、および図23を参照して上述したような任意の適切な方法で決定されてもよい(2110)。クラッドが提供されてもよく(2112)、該クラッドは内側容積を定義する。上述したように、上記クラッドは、1または複数のライナーを含んでもよく、燃料組成物を収容するための任意の適切な物質を備えてもよく、管状の壁を含んでもよい。以下の方法は、上記燃料要素の長手方向の長さに沿った12個の区域と、3つの一般的な部分(第1の端部、中央部分、および第2の端部)とを参照して説明されているが、任意の数の区域および/または部分が、所望の製造および/または動作の所望の忠実性を達成するために適宜使用されることができる。さらに、各区域および/または部分は、上記燃料要素の長手方向の長さに沿った他の区域および/または部分と同様の長さおよび/またはサイズおよび形状であってもよく、上記区域および/または部分は、決定され選択されたスミア密度分布プロファイルについて、同じ上記燃料要素内の他の区域および/または部分に対し適宜異なる長さであってもよい。
【0119】
核分裂可能な核燃料物質を含む第1の核分裂可能な組成物は、核燃料要素の第1の長手方向端部付近のクラッドにおける内側容積の第1の部分に配置されてもよい(2114)。第1の核分裂可能な組成物は、上記クラッドの内面と熱伝達接触していてもよい。第1の核分裂可能な組成物は、第1のスミア密度を有してもよい。第1の部分内で、上記スミア密度は、当該部分における決定されたスミア密度を達成するために、上記燃料要素の長さに沿った長手方向の位置の関数として、連続的に変化でき、階段状に変化でき、不変にでき、或いはそれらの組み合わせも可能である。
【0120】
上記核分裂可能な組成物を上記クラッドに配置することは、上述の任意の技術を用いて達成されてもよく、該技術は、ペレット(または上記核分裂可能な組成物の他の胴体形状、例えば粉末、微粒子、スラグなど)を挿入することを含んでもよいが、これに限定されるものではなく、また、焼結、振動、ブロー成形、タンピングなどのような、上記核分裂可能な組成物を圧縮または固結させる追加の工程を含んでもよい。
【0121】
また、上記第1の核分裂可能な核燃料物質と同じであっても異なっていてもよい核分裂可能な核燃料物質を含む第2の核分裂可能な組成物は、上記中央部分付近の上記クラッドにおける内側容積の第2の部分に配置されてもよい(2116)。上記クラッドの内側容積の第2の部分は、第1の部分に隣接してもよく、かつ/または、第1の部分から離間していてもよい。第2の核分裂可能な組成物は、上記クラッドと熱伝達接触していてもよく、第2のスミア密度を有していてもよい。第2のスミア密度は、第1のスミア密度と異なっていてもよい。上記燃料要素の燃焼度プロファイルを平坦化するために、第2のスミア密度は第1のスミア密度よりも小さくてもよく、幾つかの場合では(例えば、第1の長手方向端部が上記燃料集合体における冷却剤の入口点付近であり、かつ、第2の長手方向端部は、上記燃料集合体における冷却剤の出口点付近である場合では)、冷却剤の温度差を補償してもよい。第2の部分内で、上記スミア密度は、当該部分における決定されたスミア密度を達成するために、上記燃料要素の長さに沿った長手方向の位置の関数として、連続的に変化でき、階段状に変化でき、不変にでき、或いはそれらの組み合わせも可能である。
【0122】
また、第1の核分裂可能な核燃料物質および/または第2の核分裂可能な核燃料物質と同じであっても異なっていてもよい核分裂可能な核燃料物質を含む第3の核分裂可能な組成物は、上記核燃料要素の第2の長手方向端部付近の上記クラッドにおける内側容積の第3の部分に配置されてもよい(2118)。上記クラッドの内側容積の第3の部分は、第2の中央部分に隣接してもよく、かつ/または、第2の中央部分から離間していてもよい。第3の核分裂可能な組成物は、上記クラッドと熱伝達接触していてもよく、第3のスミア密度を有していてもよい。第3のスミア密度は、第1のスミア密度および/または第2のスミア密度と異なっていてもよい。上記燃料要素の燃焼度プロファイルを平坦化するために、第3のスミア密度は第2のスミア密度よりも大きくてもよい。幾つかの場合では、第3のスミア密度が第1のスミア密度よりも小さいことが妥当であってもよい。第3の部分内で、上記スミア密度は、当該部分における決定されたスミア密度を達成するために、上記燃料要素の長さに沿った長手方向の位置の関数として、連続的に変化でき、階段状に変化でき、不変にでき、或いはそれらの組み合わせも可能である。
【0123】
第1の長手方向端部の付近である第1の部分は、ステップ2110にて決定されたスミア密度分布の選択された忠実度について、任意の数の区域に適宜分割されてもよい。一例では、第1部分は2つの区域を含んでもよい。この例では、第1の部分の第1の区域は、上記燃料要素の第1の長手方向端部の付近である。クラッドは、第4のスミア密度を有する第4の核分裂可能な組成物を含んでもよい。第4のスミア密度は、第1の部分における第1のスミア密度と異なっていても同じであってもよい。第1の部分の第2の区域は、第1の区域に隣接していてもよく、第5のスミア密度を有する第5の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第5のスミア密度は、第1のスミア密度および/または第4のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第5のスミア密度は、第4のスミア密度より小さくてもよい。第4のスミア密度および第5のスミア密度の体積平均は、第1の部分全体の第1のスミア密度と等しくてもよい。
【0124】
付加的にかつ/または代替的に、第2の端部の付近である第3の部分は、ステップ2110にて決定されたスミア密度分布の選択された忠実度について、任意の数の区域に適宜分割されてもよい。一例では、第3の部分は2つの区域を含んでもよく、第3の部分における区域の数は、第1の部分および/または第2の部分における区域の数と比べて、適宜、同じでもよいし、大きくてもよいし、或いは小さくてもよい。この例では、第3の部分の第4の区域は、(第1の部分が第1および第2の区域を有し、第2の部分が1つの区域を有する場合)上記燃料要素の第2の部分の付近である。クラッドは、第6のスミア密度を有する第6の核分裂可能な組成物を含んでもよい。第6のスミア密度は、第3の部分における第3のスミア密度と異なっていても同じであってもよい。第3の部分の第5の区域は、第4の区域に隣接していてもよく、第7のスミア密度を有する第7の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第7のスミア密度は、第3のスミア密度および/または第6のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第7のスミア密度は、第6のスミア密度より小さくてもよい。第6のスミア密度および第7のスミア密度の体積平均は、第3の部分全体の第3のスミア密度と等しくてもよい。
【0125】
上記燃料要素の長さに沿ったスミア密度について、分布または変化のより高い忠実度を提供するために、追加の区域および/または部分を実施してもよい。この例では、3つの部分と12つの区域とを有する燃料要素が説明されている。第1、第2、および第3の部分におけるスミア密度は、図26に関して上述した通りであってもよい。
【0126】
第1の長手方向端部の付近である第1の部分は、ステップ2110にて決定されたスミア密度分布の選択された忠実度について、任意の数の区域に適宜分割されてもよい。この例では、第1の部分は5つの区域を含んでもよい。この例では、第1の部分の第1の区域は、上記燃料要素における第1の長手方向端部の付近である。クラッドは、第4のスミア密度を有する第4の核分裂可能な組成物を含んでもよい。第4のスミア密度は、第1の部分における第1のスミア密度と異なっていても同じであってもよい。第1の部分の第2の区域は、第1の区域に隣接していてもよく、第5のスミア密度を有する第5の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第5のスミア密度は、第1のスミア密度および/または第4のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第5のスミア密度は、第4のスミア密度より小さくてもよい。第1の部分の第3の区域は、第2の区域に隣接していてもよく、第6のスミア密度を有する第6の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第6のスミア密度は、第1、第4、および/または第5のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第6のスミア密度は、第5のスミア密度より小さくてもよい。第1の部分の第4の区域は、第3の区域に隣接していてもよく、第7のスミア密度を有する第7の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第7のスミア密度は、第1、第4、第5、および/または第6のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第7のスミア密度は、第6のスミア密度より小さくてもよい。第1の部分の第5の区域は、第4の区域に隣接していてもよく、第8のスミア密度を有する第8の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第8のスミア密度は、第1、第4、第5、第6、および/または第7のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第8のスミア密度は、第7のスミア密度より小さくてもよい。第4、第5、第6、第7、および第8のスミア密度の体積平均は、第1の部分全体の第1のスミア密度と等しくてもよい。
【0127】
第2の中央部分は、ステップ2110にて決定されたスミア密度分布の選択された忠実度について、任意の数の区域に適宜分割されてもよい。この例では、第2の部分は2つの区域を含んでもよい。この例では、第2の部分における上記燃料要素の第6の区域は、上記燃料要素の第1の部分付近であり、第9のスミア密度を有する第9の核分裂可能な組成物を含んでもよい。第9のスミア密度は、第2の部分における第2のスミア密度と異なっていても同じであってもよい。第2の部分の第7の区域は、第6の区域に隣接していてもよく、第10のスミア密度を有する第10の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第10のスミア密度は、第2のスミア密度および/または第9のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第10のスミア密度は、第9のスミア密度と同じであってもよい。第9および第10のスミア密度の体積平均は、第2の部分全体の第2のスミア密度と等しくてもよい。
【0128】
付加的にかつ/または代替的に、第2の長手方向端部の付近である第3の部分は、ステップ2110にて決定されたスミア密度分布の選択された忠実度について、任意の数の区域に適宜分割されてもよい。一例では、第3の部分は5つの区域を含んでもよく、第3の部分における区域の数は、第1の部分および/または第2の部分における区域の数と比べて、適宜、同じでもよいし、大きくてもよいし、或いは小さくてもよい。この例では、第3の部分における上記燃料要素の第8の区域は、上記燃料要素の第2の部分の付近であり、第11のスミア密度を有する第11の核分裂可能な組成物を含んでもよい。第11のスミア密度は、第3の部分における第3のスミア密度と異なっていても同じであってもよく、幾つかの場合では、第2の中央部分の第2のスミア密度および/または第8の区域の第10のスミア密度よりも大きくてもよい。第3の部分の第9の区域は、第8の区域に隣接していてもよく、第12のスミア密度を有する第12の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第12のスミア密度は、第3のスミア密度および/または第7のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第12のスミア密度は、第11のスミア密度よりも大きくてもよい。第3の部分において第9の区域に隣接する第10の区域は、第13のスミア密度を有する第13の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第13のスミア密度は、第3、第11、および/または第12のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第13のスミア密度は、第12のスミア密度よりも大きくてもよい。第3の部分において第10の区域に隣接する第11の区域は、第14のスミア密度を有する第14の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第14のスミア密度は、第3、第11、第12、および/または第13のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第14のスミア密度は、第13のスミア密度よりも大きくてもよい。第3の部分の第12の区域は、第11の区域に隣接し、かつ、上記燃料要素における第2の長手方向端部の付近であってもよく、第15のスミア密度を有する第15の核分裂可能な組成物がその中に配置されていてもよい。第15のスミア密度は、第3、第11、第12、第13、および/または第14のスミア密度と同じであっても異なっていてもよく、幾つかの場合では、第15のスミア密度は、第14のスミア密度よりも大きくてもよい。第11、第12、第13、第14、および第15のスミア密度の体積平均は、第3の部分全体の第3のスミア密度と等しくてもよい。
【0129】
この例では、第1~第12の区域のうちの任意の1つまたは複数の中において、上記スミア密度は、当該部分における決定されたスミア密度を達成するために、上記燃料要素の長さに沿った長手方向の位置の関数として、連続的に変化でき、階段状に変化でき、不変にでき、或いはそれらの組み合わせも可能である。
【0130】
図27は、個々の燃料要素(例えば、燃料要素2702)を多数保持する燃料集合体ダクト2706を含む例示的な構成2700を示す。上記燃料要素の各々は、クラッドの内面との熱伝達接触している核分裂可能な組成物(例えば、核分裂可能な組成物2710)を貯蔵する管状内側容積を定義するクラッド(例えば、クラッド2704)を含む。或る実施形態では、各燃料要素は、上記燃料要素の長手方向の軸に沿った位置によって選択的に変化するスミア密度プロファイルによって定義される。上述の他の実施形態に関して説明したように、上記選択的に変化するスミア密度は、上記燃料要素の自然な歪みの点を相殺するようになっていてもよい。例えば、局所的に増加したスミア密度の領域は、他の手法で局所的に減少した歪みを示す燃料要素2702の領域と一致するように意図的に配置されてもよい。同様に、局所的に減少したスミア密度の領域は、他の手法で局所的に増加した歪みを示す燃料要素2702の領域と一致するように意図的に配置されてもよい。
【0131】
さらに他の実施形態では、燃料要素2702が有する上記長手方向の軸に沿ったスミア密度プロファイルは、燃料集合体ダクト2706に沿って自然発生する高歪みの点を概括的に反映する点において高歪みの点を提供するようになっている。例えば、燃料集合体ダクト2706は、高歪みの位置2712の例のように、長手方向の軸に沿った種々の高さにおける自然な歪み点を有してもよい。例えば、燃料集合体ダクト2706の内壁と外壁との圧力差により発生する駆動力によって、燃料集合体ダクト2706の壁が、張力を受けて膨張し、長手方向の軸に沿った1または複数の領域に近い(例えば、高歪み位置2712の近い)内部の上記燃料要素から離れる。この局所的な膨張により、燃料集合体ダクト2706の壁は、外側に曲がり、上記燃料要素と上記燃料集合体ダクトの壁との間隙が広がることができる。この効果により、冷却剤は、中心の燃料要素の間を流れるよりも中心の燃料要素を迂回することが可能となり、これにより、熱水圧の不利益が生じる。
【0132】
或る実施形態では、燃料要素2702は、燃料集合体ダクト2706の高歪み点に対応する、上記長手方向の軸に沿った高さにおいて局所的に高くなった歪みの1つまたは複数の点を有する。一般に、燃料集合体ダクト2706における増加した歪みの点は、束および圧力の分布を分析することによって特定することができる。例えば、高歪み点は、束および圧力が最も高い複数の領域と相関し得る。燃料集合体ダクト2706の高歪み領域が特定されると、ダクト集合体2706の長手方向の軸に沿ってスミア密度および/またはクラッド厚さを選択的に変化させることによって、対応する高歪み領域を燃料要素2702に生成することができる。
【0133】
本発明をその実施形態と共に説明してきたが、追加、削除、修正、および代替は、添付のクレームに定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされてもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0134】
本願明細書における、実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関し、当業者であれば、文脈および/または本願に適合しているかぎり、複数形を単数形に置き換え、および/または、単数形を複数形に置き換えることができる。本願明細書を明瞭にするため、本願明細書においては、さまざまな単複の置換について明記しない。
【0135】
本願明細書に記載されている主題は、他の構成要素の内部に含まれるか、または、他の構成要素と接続されたさまざまな構成要素を図示していることがある。そのように描写された構造は単に例示的なものであり、実際、同じ機能を実現可能な他の多くの構造を導入してもよいことを理解すべきである。概念的な意味では、同じ機能を実現するために複数の構成要素が効果的に連携するように配置され、これにより、所望の機能が実現される。このことから、本願明細書において特定の機能を実現するために結合される任意の二つの構成要素は、所望の機能を実現するために、構造または中間部品とは無関係に、たがいに連携するとみなすことができる。同様に、そのように連携している任意の二つの構成要素は、所望の機能を実現するために、たがいと「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」とみなすこともでき、そのように連携可能な任意の二つの構成要素は、所望の機能を実現するために、たがいと「動作可能に結合可能である」とみなすこともできる。動作可能に結合可能な構成要素の具体例には、物理的に対にすることが可能な構成要素、および/または、物理的に相互作用している構成要素、および/または、無線で相互作用可能な構成要素、および/または、無線で相互作用している構成要素、および/または、論理的に相互作用している構成要素、および/または、論理的に相互作用可能な構成要素が含まれるが、上記具体例は、これらには限定されない。
【0136】
いくつかの例では、本願明細書において一つまたは複数のコンポーネントが「するように構成される」「によって構成される」「するように構成可能な」「するように動作可能な/動作する」「なされた/なし得る」「可能な」「するのに適合可能な/適合する」などと表現されてもよい。当業者であれば「一般的に、そのような用語(例えば「するように構成される」)は、文脈上そうでないことが明らかでないかぎり、活性化した状態の構成要素、および/または、活性化していない状態の構成要素、および/または、スタンバイ状態の構成要素を包含すること」を理解できるであろう。
【0137】
本願明細書に記載されている本主題の特定の態様を示し、かつ、説明してきたが、当業者であれば「本願明細書の教示に基づき、本願明細書に記載されている主題、および、より広い態様から逸脱しない範囲内で変形および変更が可能である」ことは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲は、その範囲内において、本願明細書に記載されている主題の真の精神および範囲の中に含まれるすべての変形および変更を含んでいる。「本願明細書(特に添付の特許請求の範囲(例えば、特許請求の範囲の本文))において使用されている用語は、一般的にオープンタームであることが意図されている(例えば、「を含んでいる」との用語は「を含んでいるが、それに限定されない」と解釈されるべきであり、「を有している」との用語は「を少なくとも有している」と解釈されるべきであり、「を含む」との用語は「を含むが、それに限定されない」と解釈されるべきである)」ことは当業者によって理解されるであろう。さらに、当業者であれば「導入された請求項の記載中の特定の数値に意図がある場合には、そのような意図がその請求項中において明確に記載されており、そのような記載がない場合には、そのような意図は存在しないこと」を理解するであろう。理解を促すために、例えば、後続の添付の特許請求の範囲では、請求項の記載を導入するために「少なくとも一つの」および「一つ以上の」といった導入句を使用することがある。しかし、そのような句を使用したからといって「“a”または“an”といった不定冠詞により請求項の記載を導入した場合、同一の請求項内に『一つ以上の』または『少なくとも一つの』といった導入句と“a”または“an”といった不定冠詞との両方が含まれているときでも、当該導入された請求項の記載を含む特定の請求項が、当該請求項の記載を一つのみ含む例に限定されるということが示唆される」と解釈されるべきでない(例えば、“a”および/または“an”は、通常は、「少なくとも一つの」または「一つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。請求項の記載を導入するために定冠詞を使用する場合にも同様のことが当てはまる。さらに、導入された請求項の記載において、特定の数が明確に記載されている場合であっても、当業者は「そのような記載は、通常は、少なくとも記載された数を含んでいることを意味する、と解釈されるべきである(例えば、他に修飾子がない単なる『二つの記載事項』は、一般的に、『少なくとも二つの記載事項』または『二つ以上の記載事項』を意味する)」ことを認識するであろう。さらに、「A、BおよびCなどのうち少なくとも一つ」に類する伝統的表現法が使用される場合、一般に、そのような構造は、当業者がその伝統的表現法を理解するであろうという点が意図されている(例えば、「A、BおよびCのうち少なくとも一つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、および/または、AとBとCのすべてなどを有するシステムを含むが、これに限定されない)。また、「A、BまたはCなどのうち少なくとも一つ」に類する伝統的表現法が使用される場合、一般に、そのような構造は、当業者がその伝統的表現法を理解するであろうという点が意図されている(例えば、「A、BまたはCのうち少なくとも一つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、および/または、AとBとCのすべてなどを有するシステムを含むが、これに限定されない)。さらに、「二つ以上の代替用語を表す離接語および/または離接句は、一般的に(文脈上そうでないことが明らかでないかぎり)、明細書中であろうと、特許請求の範囲の中であろうと、図面中であろうと、それらの用語のうちの一つ、それらの用語のうちのいずれか、または、それらの用語の両方を含む可能性を意図すること」が当業者によって理解されるべきであろう。例えば、「AまたはB」との句は、「A」「B」または「AおよびB」の可能性を含むことが一般的に理解されるであろう。
【0138】
添付の特許請求の範囲に関し、当業者であれば「請求項中に記載されている複数の動作は、一般的に任意の順序で行われてもよい」ことを理解できるであろう。また、「各種動作の流れがシーケンス中で提示されている場合であっても、当該各種動作は、図示されている順序とは異なる順序で実行してもよいし、または、並列的に実行してもよいこと」を理解すべきである。そうした代替順序の一例は、文脈上そうでないことが明らかでないかぎり、重複して(overlapping)、交互的に(interleaved)、割り込んで(interrupted)、再度順序づけされて(reordered)、逐次的に(incremental)、先立って(preparatory)、追加的に(supplemental)、同時に(simultaneous)、逆の順序で(reverse)、または、他のさまざまな順序で、行うことを含む。また、「~に応答して」(responsiveto)、「~に関連して」(related to)などの用語、または、過去形の形容詞は、文脈上そうでないことが明らかでないかぎり、そうした変形を排除することを意図しないことが通常である。
【0139】
上述の具体例の工程および/または装置および/または技術は、本願明細書の任意の箇所に開示された工程および/または装置および/または技術のより一般的な代表であると、当業者は理解するだろう。本願明細書の任意の箇所とは、特許請求の範囲および/または本願の任意の記載である。
【0140】
多様な態様および実施形態が本願明細書において開示されたが、その他の態様およびその他の実施形態は、当業者に明らかである。本願明細書に開示された上記多様な態様および実施形態は、説明を目的とするものであって限定を意図するものではなく、その真の範囲および精神は、特許請求の範囲によって示されている。
【0141】
態様1.
燃料集合体のための燃料要素を備える装置であって、
該燃料要素は、管状の内側容積を有し、かつ、該管状の内側容積の少なくとも一部に核分裂性組成物を貯蔵し、
前記核分裂性組成物は、前記燃料要素の内面と熱伝達接触し、かつ、スミア密度プロファイルによって定義され、
該スミア密度プロファイルは、前記燃料要素の長手方向の軸に沿う位置に応じて選択的に変化し、かつ、局所的に増加したスミア密度を有する少なくとも1つの領域を含み、
前記局所的に増加したスミア密度を有する少なくとも1つの領域は、局所的に減少した中性子束を有する少なくとも1つの領域に対応するように配置される装置。
【0142】
態様2.
前記スミア密度プロファイルは、局所的に増加したスミア密度を有する複数の領域を含み、前記局所的に増加したスミア密度を有する複数の領域は、局所的に減少した中性子束を有する複数の領域に対応する、態様1に記載の装置。
【0143】
態様3.
前記スミア密度プロファイルは逆ガウス形状に近似する、態様1に記載の装置。
【0144】
態様4.
前記スミア密度プロファイルはステップ関数に従って変化する、態様1に記載の装置。
【0145】
態様5.
前記スミア密度プロファイルは、前記燃料要素の第1の端部の方が、前記燃料要素の反対側の第2の端部よりも高い、態様1に記載の装置。
【0146】
態様6.
前記燃料要素の前記第1の端部は、燃料集合体内の冷却剤入口地点に近接し、前記燃料要素の前記反対側の第2の端部は、前記燃料集合体の冷却剤出口地点に近接する、態様5に記載の装置。
【0147】
態様7.
前記燃料要素の前記スミア密度は、前記長手方向の軸の第1の端部または第2の端部の何れかよりも、前記長手方向の軸の中央部の方が低い、態様1に記載の装置。
【0148】
態様8.
前記燃料要素は、少なくとも3つの部分を備え、
第1の部分は、前記燃料要素の第1の長手方向端部に近接し、第3の部分は、前記燃料要素の第2の長手方向端部に近接し、かつ、第2の部分は、第1の部分および第3の部分の間であり、
前記第1の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の平均スミア密度よりも大きく、かつ、
前記第3の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の前記スミア密度よりも大きいことを特徴とする、態様1に記載の装置。
【0149】
態様9.
前記第3の部分の前記平均スミア密度は、前記第2の部分の前記平均スミア密度よりも小さい、態様8に記載の装置。
【0150】
態様10.
燃料要素を製造する方法であって、
燃料要素の長手方向の軸に沿って燃料歪みをモデル化するステップと、
モデル化された燃料歪みを相殺するために、局所的に減少した歪みの少なくとも1つの領域が、局所的に増加したスミア密度の領域に対応するように、前記燃料要素の長手方向の軸に沿ってスミア密度プロファイルをモデル化するステップと、
前記燃料要素の内面と熱伝達接触し、かつ、モデル化されたスミア密度プロファイルに基づくスミア密度を有する核分裂可能な組成物を貯蔵する管状の内側容積を有するように、前記燃料要素を構成するステップとを含む方法。
【0151】
態様11.
前記スミア密度プロファイルにより、前記燃料要素の前記長手方向の軸に沿った複数の位置において平均燃焼度が増加する、態様10に記載の方法。
【0152】
態様12.
モデル化されたスミア密度は、逆ガウス形状に近似している、態様10に記載の方法。
【0153】
態様13.
前記燃料要素のスミア密度は、前記燃料要素の第1の端部の方が、前記燃料要素の反対側の第2の端部よりも高い、態様10に記載の方法。
【0154】
態様14.
前記燃料要素の前記第1の端部は、燃料集合体内の冷却剤入口地点に近接し、前記燃料要素の前記反対側の第2の端部は、前記燃料集合体の冷却剤出口地点に近接する、態様13に記載の方法。
【0155】
態様15.
前記燃料要素は、少なくとも3つの部分を備え、
第1の部分は、前記燃料要素の第1の長手方向端部に近接し、第3の部分は、前記燃料要素の第2の長手方向端部に近接し、かつ、第2の部分は、前記第1の部分および第3の部分の間であり、
前記第1の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の平均スミア密度よりも大きく、かつ、
前記第3の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の前記平均スミア密度よりも大きいことを特徴とする態様10に記載の方法。
【0156】
態様16.
前記モデル化されたスミア密度プロファイルは、前記燃料要素内の中性子束の減少領域に対応するスミア密度の増加領域を含む、態様10に記載の方法。
【0157】
態様17.
前記燃料要素を構成するステップは、前記モデル化された燃料歪みを相殺するために、前記長手方向の軸に沿って可変であるクラッド厚さを有するように前記燃料要素を構成するステップを含む態様10に記載の方法。
【0158】
態様18.
燃料要素を製造する方法であって、
クラッドを提供するステップと、
第1の平均スミア密度を有する第1の核分裂可能な組成物を、前記クラッドの内側容積における第1の端部部分内に、前記クラッドの内面と熱伝達接触させて配置するステップと、
第1の平均スミア密度よりも小さい第2の平均スミア密度を有する第2の核分裂可能な組成物を、前記クラッドの内側容積における中央部分内に、前記クラッドの内面と熱伝達接触させて配置するステップと、
第2の平均スミア密度よりも大きい第3の平均スミア密度を有する第3の核分裂可能な組成物を、前記クラッドの内側容積における第2の端部部分内に、前記クラッドの内面と熱伝達接触させて配置するステップとを含む方法。
【0159】
態様19.
前記第1の核分裂可能な組成物のスミア密度は、前記第1の端部部分内の減少するステップ関数に従って変化し、かつ、前記第2の核分裂可能な組成物のスミア密度は、前記第2の端部部分内の増加するステップ関数に従って変化する、態様18に記載の方法。
【0160】
態様20.
前記第1の端部部分および前記第2の端部部分は、等しい長さであり、前記第1の平均スミア密度は、前記第3の平均スミア密度よりも大きい、態様18に記載の方法。
【0161】
態様21.
スミア密度は、前記燃料要素の長さに沿って連続的に変化し、かつ、逆ガウス形状に近似している、態様18に記載の方法。
【0162】
態様22.
燃料要素を製造する方法であって、
燃料要素の長手方向の軸に沿って燃料歪みをモデル化するステップと、
モデル化された燃料歪みを相殺するために、局所的に減少した歪みの少なくとも1つの領域が、局所的に増加したクラッド厚さの領域に対応するように前記燃料要素の前記長手方向の軸に沿ってクラッド厚さプロファイルをモデル化するステップと、
前記燃料要素の内面と熱伝達接触し、かつ、モデル化されたクラッド厚さプロファイルに基づくクラッド厚さを有する核分裂可能な組成物を貯蔵する管状の内側容積を有するように前記燃料要素を構成するステップとを含む方法。
【0163】
態様23.
燃料集合体を製造する方法であって、
複数の燃料要素を保持するように構成された燃料ダクト集合体の長手方向の軸に沿って歪みプロファイルを決定するステップと、
前記燃料ダクト集合体内に燃料要素が配置されたときに、前記燃料ダクト集合体の局所的に増加した歪みの領域に空間的に対応する局所的に増加した歪みの領域を含む歪みプロファイルを有する燃料要素を構成するステップとを含む方法。
【0164】
態様24.
前記燃料要素を構成するステップは、前記長手方向の軸に沿って可変である、スミア密度プロファイルおよびクラッド厚さプロファイルの少なくとも1つを有するように前記燃料要素を構成するステップを含む、態様23に記載の方法。
【0165】
態様25.
燃料要素を製造する方法であって、
均一なスミア密度の燃料要素の長手方向の軸に沿って燃料歪みをモデル化するステップと、
モデル化された燃料歪みを相殺するために、前記燃料要素において決定された動作特性としての中性子束分布に基づいて決定された、前記燃料要素の長手方向の軸に沿った燃料歪みのプロファイルとしての中性子束プロファイルに示される、局所的に減少した中性子束を有する少なくとも1つの領域が、局所的に増加したスミア密度の領域に対応するように、前記燃料要素の長手方向の軸に沿ってスミア密度プロファイルをモデル化するステップと、
前記燃料要素の内面と熱伝達接触し、かつ、モデル化されたスミア密度プロファイルに基づくスミア密度を有する核分裂可能な組成物を貯蔵する管状の内側容積を有するように、前記燃料要素を構成するステップとを含む方法。
【0166】
態様26.
前記スミア密度プロファイルにより、前記燃料要素の前記長手方向の軸に沿った複数の位置において平均燃焼度が増加する、態様25に記載の方法。
【0167】
態様27.
モデル化されたスミア密度は、逆ガウス形状に近似している、態様25に記載の方法。
【0168】
態様28.
前記燃料要素のスミア密度は、前記燃料要素の第1の端部の方が、前記燃料要素の反対側の第2の端部よりも高い、態様25に記載の方法。
【0169】
態様29.
前記燃料要素の前記第1の端部は、燃料集合体内の冷却剤入口地点に近接し、前記燃料要素の前記反対側の第2の端部は、前記燃料集合体の冷却剤出口地点に近接する、態様28に記載の方法。
【0170】
態様30.
前記燃料要素は、少なくとも3つの部分を備え、
第1の部分は、前記燃料要素の第1の長手方向端部に近接し、第3の部分は、前記燃料要素の第2の長手方向端部に近接し、かつ、第2の部分は、前記第1の部分および第3の部分の間であり、
前記第1の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の平均スミア密度よりも大きく、かつ、
前記第3の部分の平均スミア密度は、前記第2の部分の前記平均スミア密度よりも大きいことを特徴とする態様25に記載の方法。
【0171】
態様31.
前記モデル化されたスミア密度プロファイルは、前記燃料要素内の中性子束の減少領域に対応するスミア密度の増加領域を含む、態様25に記載の方法。
【0172】
態様32.
前記燃料要素を構成するステップは、前記モデル化された燃料歪みを相殺するために、前記長手方向の軸に沿って可変であるクラッド厚さを有するように前記燃料要素を構成するステップを含む態様25に記載の方法。
【0173】
態様33.
クラッドを提供するステップと、
第1の平均スミア密度を有する第1の核分裂可能な組成物を、前記クラッドの内側容積における第1の端部部分内に、前記クラッドの内面と熱伝達接触させて配置するステップと、
第1の平均スミア密度よりも小さい第2の平均スミア密度を有する第2の核分裂可能な組成物を、前記クラッドの内側容積における中央部分内に、前記クラッドの内面と熱伝達接触させて配置するステップと、
第2の平均スミア密度よりも大きい第3の平均スミア密度を有する第3の核分裂可能な組成物を、前記クラッドの内側容積における第2の端部部分内に、前記クラッドの内面と熱伝達接触させて配置するステップとを含む態様25に記載の方法。
【0174】
態様34.
前記第1の核分裂可能な組成物のスミア密度は、前記第1の端部部分内の減少するステップ関数に従って変化し、かつ、前記第2の核分裂可能な組成物のスミア密度は、前記第2の端部部分内の増加するステップ関数に従って変化する、態様33に記載の方法。
【0175】
態様35.
前記第1の端部部分および前記第2の端部部分は、等しい長さであり、前記第1の平均スミア密度は、前記第3の平均スミア密度よりも大きい、態様33に記載の方法。
【0176】
態様36.
スミア密度は、前記燃料要素の長さに沿って連続的に変化し、かつ、逆ガウス形状に近似している、態様33に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0177】
図1A】高速原子炉コアを有する一例の核分裂炉を示す図である。
図1B図1Bおよび図1Cは、燃料要素の一例の実施形態の斜視図であり、第1実施形態は一般的な直線的な形状であり(図1B)、第2実施形態は一般的な円筒形状である(図1C)。
図1C図1Bおよび図1Cは、燃料要素の一例の実施形態の斜視図であり、第1実施形態は一般的な直線的な形状であり(図1B)、第2実施形態は一般的な円筒形状である(図1C)。
図2図2ないし図6は、それぞれ、図1Bに示す燃料要素の断面A-A、B-B、C-Cに沿った横断面図である。
図3図2ないし図6は、それぞれ、図1Bに示す燃料要素の断面A-A、B-B、C-Cに沿った横断面図である。
図4図2ないし図6は、それぞれ、図1Bに示す燃料要素の断面A-A、B-B、C-Cに沿った横断面図である。
図5図2ないし図6は、それぞれ、図1Bに示す燃料要素の断面A-A、B-B、C-Cに沿った横断面図である。
図6図2ないし図6は、それぞれ、図1Bに示す燃料要素の断面A-A、B-B、C-Cに沿った横断面図である。
図7】燃料ペレットの一例の実施形態を示す横断面図である。
図8】燃料ペレットの密度が長手方向の長さに沿って変化するような第1の一例の燃料要素の一部を示す横断面図である。
図9】燃料ペレットの密度が長手方向の長さに沿って変化するような第2の一例の燃料要素の一部を示す横断面図である。
図10】燃料要素の長手方向の長さに沿って量子化された区域を形成するための内側容積における異なる階層に位置づけられた異なる核分裂可能な核燃料装荷の燃料ペレットを有する燃料要素の一例の実施形態を概略的に示す図である。
図11A】環状スラグの胴体の内側に核分裂可能な組成物を含む環状スラグの実施形態において、個別にまたは組み合わせて、含まれることができる一例の特性を有する容積形状を示す図である。
図11B】環状スラグの胴体の内側に核分裂可能な組成物を含む環状スラグの実施形態において、個別にまたは組み合わせて、含まれることができる一例の特性を有する容積形状を示す図である。
図12A】環状スラグの胴体の内側に核分裂可能な組成物を含む環状スラグの実施形態において、個別にまたは組み合わせて、含まれることができる一例の特性を有する容積形状を示す図である。
図12B】環状スラグの胴体の内側に核分裂可能な組成物を含む環状スラグの実施形態において、個別にまたは組み合わせて、含まれることができる一例の特性を有する容積形状を示す図である。
図13A】クラッドを構成する壁の内側に配置された、図11A-Bおよび図12A-Bにおけるもののような、環状スラグを示す燃料要素の概略的な横断面図である。
図13B】クラッドを構成する壁の内側に配置された、図11A-Bおよび図12A-Bにおけるもののような、環状スラグを示す燃料要素の概略的な横断面図である。
図14図14ないし図18は、それぞれ、図1Cに示す燃料要素の断面A’-A’、B’-B’、C’-C’に沿った横断面図である。
図15図14ないし図18は、それぞれ、図1Cに示す燃料要素の断面A’-A’、B’-B’、C’-C’に沿った横断面図である。
図16図14ないし図18は、それぞれ、図1Cに示す燃料要素の断面A’-A’、B’-B’、C’-C’に沿った横断面図である。
図17図14ないし図18は、それぞれ、図1Cに示す燃料要素の断面A’-A’、B’-B’、C’-C’に沿った横断面図である。
図18図14ないし図18は、それぞれ、図1Cに示す燃料要素の断面A’-A’、B’-B’、C’-C’に沿った横断面図である。
図19】燃料要素の長さに沿ってスミア密度の選択された変化を決定する一例の方法のフローチャートである。
図20】燃料要素の一例の実施形態に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(%)のグラフである。
図21】燃料要素の他の一例の実施形態に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(分数)のグラフである。
図22A】燃料要素の他のいくつかの一例の実施形態に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(分数)のグラフである。
図22B】燃料要素の他のいくつかの一例の実施形態に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としてのスミア密度(分数)のグラフである。
図23】長手方向の位置の関数としての一定のスミア密度を有する燃料要素に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としての燃焼度(%FIMA)を示すグラフである。
図24】長手方向の位置の関数としての変化するスミア密度を有する燃料要素に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としての燃焼度(%FIMA)を示すグラフである。
図25】長手方向の位置の関数としての変化するスミア密度を有する燃料要素に対する(任意の単位での)長手方向の位置の関数としての歪みを示すグラフである。
図26】燃料要素の長さに沿ってスミア密度の選択された変化を有する燃料要素を製造する一例の方法のフローチャートである。
図27】個々の燃料要素の個数を保持する燃料集合体ダクトを含む一例のシステムを示す。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
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図25
図26
図27