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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】車両衝突の車両テレマティクス
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230607BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/09 F
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021502572
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019041830
(87)【国際公開番号】W WO2020018435
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】16/035,861
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/289,797
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517411036
【氏名又は名称】ケンブリッジ モバイル テレマティクス,インク.
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE MOBILE TELEMATICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シア、キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】ミラーノ、ジェロニモ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン-グン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー、ウィリアム
【審査官】稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0061151(US,A1)
【文献】松下幸,OBDIIアダプターとTorque PRO,CarCLUB-Cruise-,日本,2013年02月07日,http://cruise1999.blog96.fc2.com/blog-entry-272.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
H04M 1/00
1/24-1/82
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両衝突の開始時刻前のモバイル装置の状態を文書化する方法であって、
プロセッサが、車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突の1つまたは複数の特徴に対応する1つまたは複数の文章のフレーズを組み立てることを含む、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示を含む、文書自動生成工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記モバイル装置の前記状態は、通話に関連する状態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通話に関連する状態は、進行中の通話を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記通話に関連する状態は、進行中の通話を含まない、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記通話に関連する状態は、ハンズフリー状態を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数のセンサは、前記車両とは別個のテレマティクス装置に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モバイル装置は、前記テレマティクス装置を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数のセンサは、加速度計、速度計、気圧計、ジャイロスコープ、コンパス、および位置センサのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数のセンサは、カメラまたは他の撮像装置を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ユーザ装置は、自動車安全機関、保険会社、緊急サービス、前記モバイル装置のユーザ、および前記車両のユーザのうちの少なくとも1つに関連付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記文書は、前記車両衝突の前記特徴に関して人間が読める記述的記載を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記文章のフレーズは、(a)時刻、(b)位置または方向、および(c)速度のうちの少なくとも1つを特定する請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記車両にはない、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数のメトリックスに基づき、前記車両の車両衝撃の方向を決定する工程と、
前記車両衝撃の前記方向を含む、前記車両衝突に関する文書を生成する工程と、を備える請求項1に記載の方法。
【請求項15】
車両衝突に関連付けられる道路に対するユーザの熟知度を文書化する方法であって、
プロセッサが、車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突に関連付けられた道路を決定する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突に関連付けられた前記道路に対する前記車両のユーザの熟知度を決定する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示と、前記道路に対する前記ユーザの前記熟知度とを含む、文書自動生成工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を備える方法。
【請求項16】
車両衝突中の車両のヨーイングを文書化する方法であって、
プロセッサが、車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突中の前記車両のヨーレートを決定する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示と、既定の閾値を超える前記ヨーレートに基づき、前記車両衝突中に前記車両はヨーイングしていたという記載とを含む、文書自動生成工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を備える方法。
【請求項17】
車両の衝突後に発生する前記車両のユーザに関連付けられる人間の歩行を文書化する方法であって、
プロセッサが、車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、前記車両のユーザに関連付けられた人間の歩行を検出する工程であって、前記人間の歩行は前記車両衝突後に発生する、工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示と、前記ユーザの前記人間の歩行に基づき、前記衝突後に前記車両の前記ユーザが歩いていたという記載とを含む、文書自動生成工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を備える方法。
【請求項18】
車両衝突中の車両の複数の位置を文書化する方法であって、
プロセッサが、車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻の前記車両の第1位置および前記車両衝突の終了時刻の前記車両の第2位置を決定する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突の1つまたは複数の特徴に対応する1つまたは複数の文章のフレーズを組み立てることを含む、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示と、前記車両衝突中の前記車両の前記第1位置および前記第2位置を示す1つまたは複数のマーカを含む地図とを含む、文書自動生成工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を備える方法。
【請求項19】
車両衝突中に車両に関連付けられたエアバッグが展開されたことを文書化する方法であって、
プロセッサが、車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する命令を実行する工程と、
前記プロセッサが、前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突中の前記車両の位置に対応する第1高度変化率および前記エアバッグの展開に起因して上昇させられる前記車両内の気圧の変化に対応する第2高度変化率を計算する工程と、
前記プロセッサが、前記第1高度変化率と前記第2高度変化率との差を計算する工程と、
前記プロセッサが、前記車両衝突の1つまたは複数の特徴に対応する1つまたは複数の文章のフレーズを組み立てることを含む、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示と、既定の閾値を満足する前記差に基づき、前記車両に関連付けられた前記エアバッグが展開されたという記載とを含む、文書自動生成工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を備える方法。
【請求項20】
車両衝突の開始時刻前のモバイル装置の状態を文書化するシステムであって、前記システムは、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行可能な命令の記憶部と、を備え、前記プロセッサは、
車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する工程と、
前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する工程と、
前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する工程と、
前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する工程と、
前記車両衝突の1つまたは複数の特徴に対応する1つまたは複数の文章のフレーズを組み立てることを含む、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示を含む、工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を行うシステム。
【請求項21】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに車両衝突の開始時刻前のモバイル装置の状態を文書化するための演算を実行させる命令を有する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記演算は、
車両における1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する工程と、
前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻を特定する工程と、
前記車両衝突中の前記車両のデータを受信する工程と、
前記データに基づき、前記車両衝突の前記開始時刻前のモバイル装置の状態を判定する工程と、
前記車両衝突の1つまたは複数の特徴に対応する1つまたは複数の文章のフレーズを組み立てることを含む、前記車両衝突に関する文書を自動的に生成する工程であって、前記文書は、前記車両衝突の前記開始時刻前の前記モバイル装置の前記状態の表示を含む、工程と、
前記文書をユーザ装置に通信してユーザに提示する工程と、を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両衝突の車両テレマティクスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車安全機関と損害査定人は、車両衝突を取り巻くイベントを理解することに大きな関心を持つ。従来、専門家は、衝突後に衝突現場で取られた測定値を使用して衝突を再現しようとしてきた。事後に衝突の詳細を再現して理解することは、困難で、時間がかかり、しばしば不正確である。車両テレマティクスの進歩により、衝突の前、最中、および後の車両動作データの収集が可能になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は車両衝突の車両テレマティクスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般に、ある態様では、車両に関連する衝突の文書は自動的に生成される。車両のテレマティクス装置に関連付けられた1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータが受信される。テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻に開始し終了時刻に終了する車両衝突期間が決定される。テレマティクスデータに基づき、車両衝突期間中の車両に関連付けられた1つまたは複数のメトリックスが決定される。1つまたは複数のメトリックスに基づき、車両衝突に関して人間が読める文書が自動的に生成する、文書自動生成が行われる。
【0005】
実装は以下の特徴の1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでよい。衝突検出構成要素を使用して、衝突検出モデルに基づき、テレマティクスデータが車両衝突に関連付けられている確率が計算される。人間が読める文書は、1つまたは複数のメトリックスの記述を含む車両衝突の記載を備える。車両衝突に関して人間が読める文書が表示される。衝突メトリックス構成要素を使用して、テレマティクスデータに基づき、第1高度変化率および第2高度変化率が計算される。衝突メトリックス構成要素を使用して、第1高度変化率と第2高度変化率との差が計算される。衝突メトリックス構成要素を使用して、所定の閾値を満足する差に基づき、車両に関連付けられたエアバッグが展開されたと判定される。衝突メトリックス構成要素を使用して、テレマティクスデータに基づき、テレマティクス装置に関連付けられた1つ以上の軸の1つまたは複数のピーク加速度値が計算される。衝突メトリックス構成要素を使用して、1つまたは複数のピーク加速度値に基づき、加速イベントを計算する。加速イベントは、テレマティクス装置に関連付けられた1つ以上の軸の各々の1つのピーク加速値のみを含む。衝突メトリックス構成要素を使用して、加速イベントに基づき、テレマティクス装置に関連付けられた1つ以上の軸の各々の加速度の定性的測定が決定される。加速イベントに基づき、車両の車両衝撃の方向が計算される。加速イベントに基づき、車両衝撃前の車両の操作が計算される。1つまたは複数のメトリックスに基づき、車両衝突の深刻度スコアが計算される。テレマティクスデータに基づき、車両衝突期間の開始時刻後に発生する人間の歩行が識別される。文書自動生成は、衝突の特徴をテレマティクスデータから導出する工程を備える。衝突の特徴は、衝突の第1衝撃前のイベントを含む。衝突の特徴は、衝突の最終衝撃後のイベントを含む。衝突の特徴は、車速を含む。衝突の特徴は、衝突の第1衝撃後かつ衝突の最終衝撃前のイベントを含む。衝突の特徴は、衝突の最大衝撃に関して決定されたイベントを含む。衝突の特徴は、衝突中の車両の位置または方向に関連付けられた特徴を含む。人間が読める文書は、衝突記述を含む。文書自動生成工程は、衝突の特徴に対応する所定の文章のフレーズを組み立てる工程を含む。文章のフレーズは時刻を特定する。文章のフレーズは位置または方向を特定する。文章のフレーズは速度を特定する。
【0006】
一般に、ある態様では、車両テレマティクスシステムは車両衝突の文書を自動的に生成する。システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行可能な命令の記憶部と、を備えて以下の動作を実行する。動作には、テレマティクス装置に関連付けられた1つまたは複数のセンサからテレマティクスデータを取得する工程と、テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻に開始し終了時刻に終了する車両衝突期間を計算する工程と、テレマティクスデータに基づき、車両衝突期間中の車両に関連付けられた1つまたは複数のメトリックスを決定する工程と、1つまたは複数のメトリックスに基づき、車両衝突に関して人間が読める文書を自動的に提供する工程と、が挙げられる。
【0007】
実装は以下の特徴の1つまたは2つ以上の組み合わせを含んでよい。1つまたは複数のセンサは、加速度計、速度計、気圧計、ジャイロスコープ、コンパス、および位置センサのうちの少なくとも1つを含む。システムは、車両衝突に関して人間が読める文書を表示するユーザインタフェース、を備える。車両衝突に関して人間が読める文書は、1つまたは複数のメトリックスの記述を含む車両衝突の記載を含む。1つまたは複数のメトリックスは、衝突継続時間、衝撃の数、平均加速度、車両衝突中のヨーイング、車両衝撃の方向、エアバッグ展開の表示、車両横転の表示、車両操作の表示、車両が衝突後に運転されたかどうかの表示、および車両衝突中の環境条件の表示のうちの少なくとも1つを含む。システムは、テレマティクスデータ、車両衝突期間、1つまたは複数のメトリックス、および車両衝突に関して人間が読める文書のうちの1つまたは複数を遠隔サーバに通信する通信回路を備える。遠隔サーバは、自動車安全機関、保険会社、緊急サービス、テレマティクス装置のユーザ、および車両のユーザのうちの少なくとも1つに関連付けられる。テレマティクス装置はモバイル装置を含む。追加的命令がプロセッサによって実行可能であり、衝突検出構成要素が、衝突検出モデルに基づき、テレマティクスデータが車両衝突に関連付けられている確率を計算する工程を行う。追加的命令がプロセッサによって実行可能であり、テレマティクスデータに基づき、車両衝突期間の開始時刻後に発生する人間の歩行を識別する工程を行う。
【0008】
これらおよびその他の態様、特徴、ならびに実装は、(a)方法、装置、システム、構成要素、プログラム製品、ビジネス方法、機能を実行するための手段またはステップ、および他の方法として表現でき、(b)特許請求の範囲を含む以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両衝突の上面図。
図2】ブロック図。
図3】ブロック図。
図4】ブロック図。
図5】時間に対するパラメータのグラフ。
図6】時間に対するパラメータのグラフ。
図7】時間に対するパラメータのグラフ。
図8】時間に対するパラメータのグラフ。
図9】表。
図10】車両の図示。
図11】ユーザインタフェース要素の図示。
図12A】衝突の文書。
図12B】衝突中のテレマティクスデータのプロット。
図12C】車両の図示および加速度のグラフ。
図12D】地図および道路の3次元ビュー。
図13】加速度データのプロット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「車両衝突」という用語は、例えば、車両と、別の車両、歩行者、動物、静止物体、道路の破片などの1つまたは複数の物体との間の任意の衝突または一連の衝突、および車両横転中等の、車両と地面との間の任意の衝突または一連の衝突を含むよう広く使用される。
【0011】
「車両衝突期間」という用語は、例えば、車両衝突の過程で発生する車両衝撃の一部または全てにわたる任意の期間を含むよう広く使用される。いくつかの例では、車両衝突期間はまた、最初の車両衝突の前およびそれにつながる期間、ならびに最後の車両衝突の後およびその結果として生じる期間を含み得る。
【0012】
「走行データ」という用語は、例えば、2つの位置間を走行中に蓄積された車両のテレマティクスデータのセグメントを含むよう広く使用される。いくつかの例では、車両衝突期間中に蓄積されたデータは、走行データの一部またはセグメントを表す。
【0013】
「車両」という用語は、例えば、特に自動車、トラック、自転車、オートバイ、またはRV車等の任意の種類の地上の乗り物を含むよう広く使用される。
「テレマティクスデータ」という用語は、例えば、車両動作、車両状態、運転者状態または挙動に関する任意の種類の情報、または車両で取得され、例えば該車両から離れた別の装置または場所に無線で通信される他の情報を含むよう広く使用される。いくつかの場合では、テレマティクスデータは、車両で取得され、該車両で演算されて要約テレマティクスデータ等の他のテレマティクスデータを導出する情報を含む。
【0014】
「衝突メトリックス」という用語は、例えば、車両衝撃、車両衝突、車両動作、車両状態、運転者状態もしくは挙動、または車両衝突に関連するその他の情報の任意の側面または特徴を特徴付ける任意の測定値、性能指数、または他の値を含むよう広く使用される。いくつかの場合では、衝突メトリックスは、車両衝突期間中のテレマティクスデータまたは車両の他の情報に基づく。衝突メトリックスは、アルゴリズム、式、変換、または任意の他の計算処理を使用して、テレマティクスデータから決定され得る。
【0015】
いくつかの実装においては、本明細書で説明する手法は、テレマティクスデータまたは該テレマティクスデータ(場合によっては他の情報)の分析を使用して、車両衝突、車両衝突期間、車両衝突期間の開始と終了、車両衝突期間の1つまたは複数の衝突メトリックス、および車両衝突の1つまたは複数の衝突スコアを検出する。テレマティクスデータ、分析結果、衝突メトリックス、衝突スコア、またはそれらの組み合わせに基づいて、本手法は、例えば、テレマティクスデータ、分析結果、衝突メトリックス、衝突スコア、その他の情報、またはそれらの組み合わせを提示する、車両衝突に関して人間が読める1つまたは複数の文書(例えば説明)を自動的に生成および提供する。他のアクティビティもまた実行可能である。本手法(ハードウェア、ソフトウェア、またはその両方)は「車両衝突システム」または単に「システム」とも呼ばれる。
【0016】
図1に示されるように、走行中の車両衝突は、車両衝突に関連する車両102の時刻T1での第1衝撃100より前の時刻T0で始まる車両衝突期間中に発生すると考えられてよい。車両の位置、速度、加速度、または軌道、車両の状態、車両の運転者状態および挙動、ならびに時刻T0から始まる他の様々なパラメータは、少なくとも部分的に直接かつ短い期間(T0からT1まで)内で、第1衝撃に至った可能性がある。理論的には、T0より前のアクティビティやイベントが事故に至ったり、間接的に事故の原因になったりする可能性があるが、車両衝突の原因と性質を理解しようとするユーザにとってはあまり重要ではない。これらの初期の期間も考慮に入れてシステムで使用できるが、以下で説明する例では、時刻T0から始まる車両衝突期間に焦点を当てる。
【0017】
一般的には、T0からT1までの期間は10秒未満の継続時間(例えば、1秒から30秒の範囲の継続時間)だが、いくつかの場合では10秒より長くなり得る。図示の例では、車両102の第1衝撃100は、ガードレールに対する衝突であり得る。第1衝撃後、例においては例えば第2車両106に対する第2衝撃104が時刻T2で発生する。第2衝撃後、車両102は、車両衝突期間の終了T3で停止点108までさらに走行し得る。ある意味では、衝突は第2衝撃の直後に終了したが、T2からT3までの期間中のアクティビティやイベントは、車両衝突の性質と原因に関する重要な情報を提供し得る。このため、代表的な例では、T0からT2までの期間に加えて、T2からT3までの期間に本手法が適用される。車両衝突期間は、一般的には、全体の車両走行中に経過する時間の一部にすぎない。いくつかの場合では、車両衝突の合計の継続時間は、最短で5秒(またはそれより短い)、最長で15秒(またはそれより長い)になり得る。
【0018】
車両衝突期間中の車両の動作の詳細(例えば、位置、速度、およびさまざまな方向の加速度)、車両の状態、車両の運転者の状態および挙動、および他の要因に関して一部がテレマティクスデータとして取得できる情報は、特に車両衝突の衝撃それぞれのタイミングと発生、車両衝突の結果、および車両衝突の原因を示す。システムは、テレマティクスデータおよび他の情報を取得して使用し、車両衝突、車両衝突期間、車両衝突期間の開始と終了、車両衝突期間の1つまたは複数の衝突メトリックス、および車両衝突の1つまたは複数の衝突スコアを検出する。上記のように、テレマティクスデータ、分析結果、衝突メトリックス、衝突スコア、またはそれらの組み合わせに基づいて、本手法は、例えば、テレマティクスデータ、分析結果、衝突メトリックス、衝突スコア、その他の情報、またはそれらの組み合わせを提示する、車両衝突に関して人間が読める1つまたは複数の文書(例えば説明)を自動的に生成および提供する。
【0019】
図2に示されるように、自動衝突文書化システム200は、システムの一部である装置226のハードウェア構成要素とソフトウェアアプリケーションとの間でデータを通信するためのハードウェア構成要素221、ソフトウェアアプリケーション223、およびデータ通信チャネル225を含んでよい。構成要素および装置のいくつかは、システム200内の1つまたは複数のプロセッサ227によって実行されるコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読記憶媒体229として実装されてよい。図2に示されるシステム200は、上記および下記のものを含む、追加的な、より少ない、または代替的な構成要素を含んでよい。図2の左上に示されている要素は、図2に図示されかつ本明細書に記載される車両、サーバ、他のコンピュータ、および他の構成要素に分散され得る構成要素および装置を表していることに注意すべきである。
【0020】
図2に示されるように、システム200は、本明細書に記載されるアクティビティおよび機能を実行するよう連携する様々な装置を含んでよい。装置は、車両102中または上にあるテレマティクス装置202、モバイル装置204、サーバ206、およびコンピュータ212を含み得る。テレマティクス装置202は、車両102に関連付けられたテレマティクスデータを測定、処理、および通信するためのセンサおよびモジュール203を含んでよい。例えば、テレマティクス装置202は、特に車両の位置および速度を検出するためのGPS(全地球測位システム)等の位置センサ、1つまたは複数の次元で車両の加速度を検出するための加速度計、ジャイロスコープ、速度センサ、または気圧センサを(センサおよび専用モジュール203として)1つまたは複数含んでよい。一般的に、テレマティクス装置202は、特に1つまたは複数の重量センサ、エンジンセンサ、オルタネータセンサ、振動センサ、電圧センサ、酸素センサ、生体測定センサ、ECU(電子制御ユニット)装置、カメラ、マイク、またはそれらの組み合わせ等の、車両の状態または車両の運転者の状態または挙動に関連するデータを検出するための任意の数の他のセンサまたはモジュールを含んでよい。テレマティクス装置202はまた、以下に記載するように、データを処理および記憶するためのメモリ209および1つまたは複数のプロセッサ211、ならびにシステム200の他の構成要素または装置との有線または無線通信を可能にする送受信機213を含むことができる。
【0021】
いくつかの場合では、テレマティクス装置202は、例えば、車両102のOBD(オンボード診断)ポート207を介して接続される後付けのテレマティクス装置、または車両102の製造中に搭載されるOEMテレマティクス装置でよい。いくつかの例では、テレマティクス装置202は、全内容が参照により組み込まれる2014年10月31日に出願された「System and Method for Obtaining Vehicle Telematics Data」との発明の名称を有する米国特許出願第14/529812に記載された種類のタグ等の、車両102に配置または固定されたタグ装置であってよい。いくつかの実装においては、テレマティクス装置202は、スマートフォン、ウェアラブル装置、またはポータブルな他の装置204を含んでよく、必ずしも専用のテレマティクス装置である必要はなく、必ずしも車両のOBDポートに接続されているとも限らない。テレマティクス装置202は、電池式、車両102の電気系統に接続される、またはその両方であってよい。
【0022】
いくつかの実装においては、テレマティクス装置202は、無線チャネル205を介してモバイル装置204に、またはモバイル装置を介してサーバにテレマティクスデータを通信してよい。モバイル装置204は、例えば、車両の運転者によって一時的に車両102内に持ち込まれる、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはウェアラブルコンピューティング装置等のポータブルコンピューティング装置であってよい。通信を可能にするため、例えば、Bluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)、RFID(無線周波数識別)、NFC(近距離無線通信)、またはそれらの組み合わせ等の有線または無線の通信チャネル205が、テレマティクス装置202とモバイル装置204との間で確立されてよい。しかしながら、テレマティクス装置202は、データを収集および記憶して、後でモバイル装置が存在し通信可能に接続された時にモバイル装置204に(およびモバイル装置を介してサーバに)転送することが可能なので、モバイル装置204が車両102内に常に存在する必要はない。さらに、テレマティクス装置202は、モバイル装置204とは別個であると記載されているが、いくつかの実装においては、テレマティクス装置202およびモバイル装置204の機能は、例えば、GPS、加速度計、気圧計、ジャイロスコープ、またはモバイル装置204に組み込まれた他のセンサおよびモジュールを使用することによって組み合わされる。このようにして、モバイル装置204は、テレマティクス装置202によって取得されたデータの代わりに、またはその補足として、車両102に関連付けられたテレマティクスデータを取得することができる。
【0023】
車両102に関連付けられたテレマティクスデータを受信または取得した後、モバイル装置204は、いくつかの実装においては、インターネット、セルラーネットワーク、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、衛星ネットワーク、任意の他の適切なデータ通信ネットワーク、またはそれらの組み合わせであってよいネットワーク208を介して、テレマティクスデータを中央サーバ206に送信220することができる。その後中央サーバ206は、テレマティクスデータを、他のユーザおよび車両情報とともに、中央サーバ206と通信可能なデータベース210に記憶してよい。データベース210は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、光学ストレージドライブ、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、1つまたは複数の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を使用して実装されてよい。
【0024】
図3を参照すると、中央サーバ206は、データバス339によって相互接続された1つまたは複数のプロセッサ300、メモリ302、および通信インタフェース304等のハードウェアおよびソフトウェア構成要素を含んでよい。メモリ302は任意の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であってよく、プロセッサ300によって実行可能なコンピュータ可読命令を記憶することができる。メモリ302は、衝撃および衝突検出モジュール306(単に「衝突検出モジュール」と呼ぶことがある)、衝突期間モジュール308、衝撃および衝突メトリックスモジュール310(単に「衝突メトリックスモジュール」と呼ぶことがある)、衝突スコアリングモジュール341、ならびに衝撃および衝突文書化モジュール312(単に「衝突文書化モジュール」と呼ぶことがある)に関連付けられた実行可能な命令を記憶して、中央サーバ206または他の構成要素および装置が、テレマティクスデータおよび他の情報を処理して車両102が車両衝撃または車両衝突を経験したかどうかを検出する工程、車両衝突期間の衝突メトリックスを決定する工程、および車両衝撃または車両衝突に関して人間が読める文書を自動的に提供する工程等の、本明細書に記載される技術を実行することを可能にしてよい。「車両衝突」という用語は、単独もしくは他の単語と使用されて、車両衝突もしくは車両衝撃、またはその両方を指すために使用されることがある。
【0025】
「モジュール」という用語は、例えば、1つまたは複数のアクティビティ、機能、または機構を実行するためにプロセッサによって実行可能な任意のコード、プログラム、ソフトウェアオブジェクト、または他のソフトウェア装置もしくは配置を含むよう広く使用される。
【0026】
中央サーバ206、他の構成要素、または装置は、通信インタフェース304を使用して、テレマティクスデータ、衝突メトリックス、および他の情報の中から車両衝突に関して人間が読める文書等の生データまたは処理済のデータを、システム200の他の構成要素または装置と送受信することができる。例えば、中央サーバ206、他の構成要素、または装置は、記憶のためのデータベース210と、ネットワーク208を使用してモバイル装置204と、テレマティクス装置202と、またはインターネットもしくは任意の他の適切なデータ通信ネットワークであってよいネットワーク214を使用してリモートコンピューティング装置212との間で、データを送受信してよい。
【0027】
リモートコンピューティング装置212は、例えば、自動車安全機関、保険会社、緊急サービス、モバイル装置204のユーザ、車両102の所有者、またはこれらの組み合わせに関連付けられた1つまたは複数のコンピューティング装置、サーバ、またはその両方を含んでよい。中央サーバ206はまた、モバイル装置204、テレマティクス装置202、リモートコンピューティング装置212、またはそれらの組み合わせに対して、例えば、データの視覚化、対話、またはさらなる処理を可能にするソフトウェア、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)等のインタフェース、またはウェブサービスを提供できる。
【0028】
中央サーバ206は、車両102に関連付けられたテレマティクスデータを処理するものとして記載されているが、モバイル装置204またはリモートコンピューティング装置212等のシステム200の他の構成要素および装置は、中央サーバ206に加えて、それと共同で、またはその代わりにテレマティクスデータを処理して、本明細書に記載される技術を実行してよい。図2には、1つの中央サーバ206、1つのデータベース210、および1つのリモートコンピューティング装置212のみが示されているが、システム200は、任意の数のネットワークを使用して通信可能に接続された任意の数の(単一の場所に位置するまたは分散される)コンピューティング装置およびデータ記憶装置を含んでよい。
【0029】
図4に示されるように、車両衝突に関して人間が読める文書を自動的に生成する処理は、アクティビティ、例えば、1つまたは複数の車両衝突を個別にまたは車両衝突の一部として検出する工程400と、1つまたは複数の車両衝撃から車両衝突が発生したと判定する工程401と、車両衝突期間を計算する工程402と、車両衝突に関連する衝突メトリックスを計算する工程404と、車両衝突スコアを計算する工程405と、車両衝突に関して人間が読める文書を自動的に生成する処理406と、を含む一連のアクティビティを含んでよい。いくつかの例では、自動衝突文書化システム200は、図1に示される車両衝突期間T0-T3等の所与の車両衝突期間における車両衝突に関して人間が読める文書を提供してよい。いくつかの場合では、システムは最初に、例えば、衝突検出モジュール306を使用して、1つまたは複数のあり得る車両衝撃または車両走行全体にわたる車両衝突を検出してよい(ステップ400)。システムは次に、走行中の車両衝撃を含むあり得る車両衝突の一部または全てに関して人間が読める文書を提供してよい。
【0030】
図5を参照すると、車両走行全体(図5はその一部のみを示す)にわたる車両衝撃、車両衝突、および車両衝突期間の検出は、システム200の車両衝突検出モジュール306に、テレマティクスデータ504(およびその他の情報)に基づき、各時点においてまたは車両走行の期間内の複数の時点にまたがる短い期間中に、1つまたは複数のあり得る車両衝撃502を計算により特定させて、テレマティクスデータが車両衝撃または車両衝突(1つまたは複数の衝撃を含む)を示しているかどうかを判定することを含む。図5に示される例のテレマティクスデータは、車両走行中の連続時間507での(長手方向、横方向、および垂直方向の3軸沿いの)加速度データ505(上のグラフ)と、車両衝突期間の部分を含む車両走行中の連続時間507で判定されたGPS速度509とを含む。
【0031】
例えば、システム(例えば、サーバ、他の装置、または構成要素)は、走行500の部分に関連付けられたテレマティクスデータ504を、3秒セグメント等のセグメントに分割して(ただし、各セグメントの長さは、様々な実装において約1秒から約10秒までの範囲内でよい)、次に、テレマティクスデータ504を使用して各セグメントに関して以下の特徴の1つまたは複数を計算および記憶してよい。
【0032】
accel_after_span - セグメントの終了後にテレマティクスデータが存在する場合、以下のようにセグメント後の加速度の量を決定する。衝突後3秒から開始して衝突後13秒間まで継続し(他の例では期間はこれらの値と異なってよい)、各加速度データポイントとデータポイント前後の10秒間(つまり、データポイントは10秒間の中心)の加速度の中央値との差の大きさを計算し、これらの差の値から90パーセンタイルの大きさをセグメント後の加速度の量と見なす。セグメントの終了から3秒後にテレマティクスデータが存在しない場合、加速度はaccel_after_span=0と見なされる。いくつかの実装においては、3秒セグメント毎のデータポイントの数は45であり、後に記載する例では、3秒間隔毎のデータポイントの数は9である。他の割合のデータポイントの集合も使用可能である。
【0033】
accel_impact_max - 10秒枠の加速度の中央値からのセグメント内の各加速度の生の最大偏差。
accel_impact_offset - 10秒枠の加速度の中央値から加速度の最大偏差が発生した場合のセグメントへの秒数。
【0034】
accel_impact_offset_rel - 10秒枠の加速度の中央値から加速度の最大偏差が発生した場合のセグメントへの時間の割合。
accel_impact_speed - 10秒枠の加速度の中央値から加速度の最大偏差の直前のGPS速度。
【0035】
crack_like - セグメントのテレマティクスデータが車両衝突、したがって車両衝突の発生を示唆していることを示すブール変数。ブール変数は、次の式が真であるか偽であるかに応じて、1または0の値を取る。time_before_end<180[秒]、frac_into_drive>0.8、gps_speed_since<10[時速]、accel_after_span<10[m/s]、accel_impact_max>15[m/s]、およびaccel_impact_offset<10[m/s]。
【0036】
duration - セグメントの長さ[秒]。
frac_into_drive - セグメントが開始する車両走行継続時間の割合(例えば、セグメントが走行の開始時にある場合、frac_into_driveは0。セグメントが走行の終了にある場合、frac_into_driveは1)。
【0037】
time_before_end - セグメントの開始から走行の終了までの秒数。
gps_accel_avg - セグメントの台形補間を仮定したセグメント中のGPS速度の平均変化。
【0038】
gps_accel_min - セグメント中のGPS速度から導出される最小加速度。
gps_speed_after - セグメント終了時のGPS速度。
【0039】
gps_speed_change - セグメントの開始からセグメントの終了までのGPS速度の正味の変化。
gps_speed_since - セグメントの終了後5秒を超えて発生するGPS速度の全てのデータポイントの75パーセンタイルの速度等のセグメントの終了後のGPS速度。セグメントの終了後5秒を超えてデータポイントが発生しない場合、gps_speed_sinceは0である。
【0040】
以下の表(および図13)は、上記の計算の具体例を示す。
表は、以下のタイムスタンプで表される走行開始と走行終了に基づく。
走行開始タイムスタンプ1511036759.14秒
走行最終タイムスタンプ1511037668.81秒
この例では、走行は特定の3秒セグメント中に発生するセグメントデータポイントを含む。便宜上、走行のデータポイントの残りのセグメントは省略されている。
【0041】
【表1】
【0042】
以下の表は、セグメントの各データポイントの追加の派生データを示す。
【0043】
【表2】
【0044】
以下の表は、セグメントの終了後3から13秒の間に発生するタイムスタンプ付きのデータポイントを示して、特徴accel_after_spanの計算を明確化する。
【0045】
【表3】
【0046】
以下の表は、上記の各データポイントの追加データを示す。
【0047】
【表4】
【0048】
以下の特徴は、上記のデータポイントに基づき計算される。
【0049】
【表5】
【0050】
テレマティクスデータのパラメータと対応する特徴とを組み合わせて、セグメントが衝突を含むかどうかの結論を出す。例えば、上記の例では、accel_impact_maxの値は18.55m/sであったが、これは実際の衝突中に発生すると思われる比較的大きな値である。さらに、accel_after_spanの値は0.75m/s^2であったが、これは衝突後に加速が比較的少ない車が停止する場合に予想される小さな値である。この例は特に、衝突を含むと判定され得るセグメントに対応する。
【0051】
他のパラメータ、特徴、および対応する方程式も、衝突が発生したと推測するのに効果的であり得る。例えば、加速度信号の高次微分であるジャークおよびスナップは、衝突のさらなる証拠を提供し得る。
【0052】
セグメントごとに上記の特徴の1つまたは複数を計算した後、システム200は、衝突検出モジュール306によって生成されデータベース210に記憶されるモデル等の、衝撃および衝突検出モデル551(単に「衝突検出モデル」とも呼ぶ)に特徴を供給して、特定のセグメント中に開始する車両衝撃または車両衝突506が発生した確率を決定してよい。衝突確率は、衝突がそのセグメントで発生した、または複数の衝撃を含む衝突がそのセグメントで発生した単純な確率として表されてよい。
【0053】
衝突検出モデル551は、衝突506の確率を決定するための分類モデルまたは他のアルゴリズムを含んでよい。例えば、モデルは、1つまたは複数の特にランダムフォレスト、線形回帰、二分決定木、パターンマッチング手法、ニューラルネットワーク、ガウス過程、またはそれらの組み合わせから導出されてよい。いくつかの場合では、衝突検出モデルは、1つまたは複数の上記の特徴を使用して訓練されてよい。
【0054】
セグメント内で発生した(または発生し始めた)衝撃または衝突506の確率が決定されると、システム200は、1つまたは複数のフィルタ553を適用して、特定のセグメントは、あり得る車両衝撃または車両衝突502可能性を含むか、またはその開始に当たるかどうかを判定してよい。例えば、衝突506の確率が、80%を超える、90%を超える、95%を超える、または99%を超える等の特定の閾値を超える場合、システムは、セグメントを、あり得る車両衝突または車両衝突を含むまたは開始するものとしてマークしてよく、および車両衝撃の時刻または車両衝突の開始を記録してよい。システムはまた、セグメントの特徴があり得る車両衝撃または車両衝突と見なされるためには1つまたは複数の以下の条件を満たすことを必要としてよい。GPS_speed_changeが少なくとも-10m/sかつaccel_impact_maxが少なくとも4m/sであること、衝撃または衝突を誤って示唆するGPS速度のアーチファクトの可能性が高い場合、車両衝撃または車両衝突が走行の開始直後ではないこと、GPSは、車両衝突後、測定誤差を含めて約10から12秒以内にゼロに収束するため、車両衝突の継続時間は12秒未満になること、および、最大加速衝撃の時間は、ブレーキが最初に発生したセグメントの開始後、長くなり過ぎないこと、例えば、-0.2<accel_impact_offset_rel<0.9であること。
【0055】
走行500に関連するセグメント中に1つまたは複数のあり得る車両衝撃または車両衝突502を検出した後、システム200は、いくつかの実装においては、1つまたは複数の車両衝突のそれぞれについて車両衝突期間508を計算してよい(ステップ402)。そのために、システム200は、例えば、衝突期間モジュール308に含まれる車両衝突期間アルゴリズム535を利用して、テレマティクスデータ504、上記特徴、他の情報、またはそれらの組み合わせに基づき車両衝突期間502の開始時刻および終了時刻を決定してよい。
【0056】
いくつかの実装においては、車両衝突期間アルゴリズムは、本明細書では「アウトイン方法」557および「インアウト方法」559と呼ばれる、車両衝突期間を決定するための2つの方法、ならびに診断テスト561を含んでよい。いくつかの実装においては、アルゴリズムは最初の段階としてアウトイン方法を使用し、診断テストでアウトインアルゴリズムが成功しなかったと判定した場合、インアウト方法にフォールバックしてよい。(他の分析アプローチに基づく様々な他の車両衝突アルゴリズムもまた可能である。これらの代替車両衝突アルゴリズムは、データ中にウィンドウをスライドさせ、閾値を超えたテレマティクスデータに基づき各ウィンドウの領域に「衝突」または「非衝突」というラベルを付ける工程と、ラベル付けされた衝突領域の一群を、データストリームの一部を「衝突」または「非衝突」として分類可能なニューラルネットまたはサポートベクターマシン等の機械学習アルゴリズムに提供する工程と、隠れ状態の関数が「衝突」または「非衝突」ラベルを提供する隠れマルコフモデルまたはLSTMの場合と同様に内部状態を使用してデータをモデル化する工程と、を含む。)。
【0057】
アウトイン方法は、車両衝突期間の広い(過度に長い継続時間)推定から開始し、それが車両衝突期間508の実際の継続時間と呼ばれるものと一致するまで期間を狭めてよい。例えば、アウトイン方法は、走行500を推定される「衝突前」セグメント、「衝突」セグメント、および「衝突後」セグメントに分割することから開始してよい。車両衝突502の開始時刻の(例えば)10秒より前に終了する任意のセグメントが、衝突前セグメントとして指定される。車両衝突期間の開始時刻から(例えば)10秒以内に開始する任意のセグメントが、衝突セグメントとして指定される。車両衝突の開始時刻から(例えば)10秒を超えて開始する任意のセグメントが、衝突後セグメントとして指定される。推定される車両衝突期間の開始時刻は、アルゴリズムが、任意の軸で衝突前セグメントの平均方向加速度から(例えば)4m/sを超えて異なる加速度データ等の所定の閾値を満たすテレマティクスデータ504のサンプルに遭遇するまで、または処理が推定される車両衝突期間508の開始時刻に達するまで、増加(例えば、時間の後方に移動)してよい。さらに、推定される車両衝突期間の終了時刻は、アルゴリズムが、任意の軸で衝突後セグメントの平均方向加速度から4m/sを超えて異なる加速度データ等の所定の閾値を満たすテレマティクスデータ504のサンプルに遭遇するまで、またはアルゴリズムが車両衝突期間508の終了時刻に達するまで、減少(時間の前方に移動)してよい。結果の車両衝突セグメントの開始時刻および終了時刻は、特定の車両衝突502の車両衝突期間508のアウトイン推定を定義してよい。
【0058】
インアウト方法は、車両衝突(衝撃)502の時刻に置かれた車両衝突期間の狭い(比較的短い継続時間)推定から開始し、それが実際の車両衝突期間508と一致するまで期間の継続時間を延長してよい。例えば、インアウト方法は、走行500を推定される「衝突前」セグメントおよび「衝突後」セグメントに分割することから開始してよい。衝突前セグメントは、実際の車両衝突502の開始時刻の10秒より前に終了するテレマティクスデータ504のセグメントに対応してよい。衝突後セグメントは、実際の車両衝突の時刻の10秒より後に開始するテレマティクスデータのセグメントに対応してよい。実際の車両衝突の開始時刻から開始して、車両衝突期間508の推定される開始時刻は、アルゴリズムが、どの軸でも衝突後セグメントの平均方向加速度データから(例えば)4m/sを超えて異ならない方向加速度データの2秒のサンプル等の所定の閾値を満たすテレマティクスデータ504のサンプルに遭遇するまで、時間の後方に(例えば、早期に)移動することによって決定されてよい。車両衝突期間508の推定される終了時刻は、アルゴリズムが、どの軸でも衝突前セグメントの平均方向加速度データから(例えば)4m/sを超えて異ならない方向加速度データの2秒のサンプル等の所定の閾値を満たすテレマティクスデータ504のサンプルに遭遇するまで、車両衝突の開始時刻から時間の前方に(例えば、後期に)移動することによって決定されてよい。結果の開始時刻および終了時刻は、車両衝突502の車両衝突期間508のインアウト推定を定義してよい。
【0059】
アウトイン方法およびインアウト方法を使用して車両衝突期間508の開始時刻および終了時刻の推定を計算した後、衝突期間アルゴリズムは、診断テストを使用して、例えば、車両衝突期間のアウトイン推定が、6秒未満(または1秒から20秒の範囲内の別の適切な閾値)等の所定の閾値よりも短い継続時間を有するかどうか判定することによって、アウトイン方法が成功したかどうかを判定してよい。アウトイン推定の継続時間が閾値を満たす場合、アルゴリズムは、車両衝突期間508と車両衝突502の開始時刻および終了時刻とが、アウトイン推定の車両衝突期間とその開始時刻および終了時刻とに等しいと判定してよい。
【0060】
アウトイン推定の継続時間が所定の閾値を満たさない場合、アルゴリズムは、推定が、衝突にしては異常に長い継続時間であるため、車両衝突の全体にわたって一貫した加速が連続的に存在することがインアウト方法でチェックされることによって実証される必要があると判定してよい。これに基づき実証された場合、アルゴリズムは、車両衝突期間508と車両衝突502の開始時刻および終了時刻とが、インアウト推定の車両衝突期間とその開始時刻および終了時刻とに等しいと判定してよい。
【0061】
いくつかの実装においては、アルゴリズムは、インアウトまたはアウトイン方法の一方のみの結果に依存せずに、例えば、アウトイン推定およびインアウト推定の車両衝突期間とその開始時刻および終了時刻との最小、最大、または平均に基づき両方のアルゴリズムの結果を考慮してよい。
【0062】
車両衝突の車両衝突期間を決定または別の方法で取得した後、システム200は、他の情報の中から、車両衝突期間に関連付けられたテレマティクスデータに基づき、車両衝突に関連する1つまたは複数の衝撃メトリックスまたは衝突メトリックス(衝撃メトリックスまたは衝突メトリックスを単に「衝突メトリックス」と呼ぶことがある)を決定してよい(ステップ404)。いくつかの実装においては、システム200は、以下に記載するように、衝突メトリックスモジュール310を使用して、1つまたは複数の衝突メトリックスを計算してよい。
【0063】
いくつかの場合では、システム200は、以下の衝突メトリックスの1つまたは複数を計算することができる。特に車両衝突期間の継続時間、車両衝突期間の前、最中、および後の車両の速度、車両衝突期間の開始時刻の速度と終了時刻の速度との差、車両衝突期間の前、最中、後の最小および最大の横方向、長手方向、および垂直方向の車両の加速度、車両衝突期間中に経験した最大合計平面加速度、車両衝突期間中の車両のジャイロスコープ方向および角速度、車両衝突期間中の各瞬間のGPS座標、車両衝突期間中に車両エアバッグが展開したかどうか、車両衝突期間中に車両が横転したかどうか、車両衝突期間中の1つまたは複数の衝撃の時間、方向、および説明、衝撃前の運転の継続、ブレーキ、または加速、1つまたは複数の衝撃後の急ハンドル、回避操作、または歩行等の運転者行動、衝突の深刻度、およびこれらの衝突メトリックスの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0064】
いくつかの実装においては、システム200は、車両衝突期間中に1つまたは複数の車両エアバッグが展開されたかどうかを、テレマティクスデータに含まれる例えば気圧測定値およびGPS測定値に基づき決定してよい。一般に、エアバッグの展開は車両内の気圧を上昇させ、その結果、図6に示すようなGPS高度602の下向きのスパイクによって裏付けられない気圧高度600の下向きのスパイクが発生する。したがって、システムは、気圧高度600の変化率とGPS高度602の変化率との間の不一致を検出して、1つまたは複数の車両エアバッグが展開されたかどうかを決定し得る。そのために、システム200は最初に、テレマティクスデータに含まれる気圧信号およびGPS高度信号の両方の一次導関数を計算してよい。システム200は次に、GPS信号に対して5秒幅(または1秒から15秒の範囲内の別の期間)および気圧信号に対して2秒幅(または0.1秒から5秒の範囲内の別の期間)のウィンドウ平均フィルタ、および15秒幅(または3秒から30秒の範囲内の別の期間)で中央に配置されたウィンドウ内の各信号の5パーセンタイル値を取得するメディアンフィルタ等の1つまたは複数のフィルタを使用して導関数信号を平滑化してよい。フィルタリングされた2つの信号の値の差の平均が、例えば、1秒間隔で-0.9m/s未満(他の閾値も使用可能)であるとシステムが判定した場合、この出来事が識別され、エアバッグ展開として保存されてよい。展開時刻は、この条件を満たす車両衝突期間内の直近時刻として記録される。
【0065】
システム200はまた、車両衝突期間中の1つまたは複数の衝撃の時間または時刻、および車両に対する各衝撃の方向(すなわち、車両の基準枠からの衝撃の相対方向)を判定してよい。図7に示されるように、いくつかの実装においては、システム200は初めに、監視する車両に関連付けられたテレマティクスデータに含まれる長手方向702、横方向704、および垂直方向706の加速度信号のそれぞれについて、1回または複数回のピーク加速度700を特定してよい。そのために、システムは、長手方向702、横方向704、または垂直方向706の加速度信号とその平均値との絶対差および加速度信号の二次微分の絶対値を計算する絶対量ピーク検出アルゴリズム等の、1つまたは複数のピーク検出アルゴリズム560を利用してよい。システムは次に、絶対差が、例えば12m/s(または5m/sから25m/sの範囲の別の値)を超え、かつ二次微分の絶対値が(同様に)、例えば800m/s4(または100m/s4から3200m/s4の範囲の別の値)を超えるたびに特定の加速度信号のピーク700として記録してよい。絶対量ピーク検出アルゴリズムが長手方向702、横方向704、および垂直方向706の加速度信号のいずれにおいてもピーク700を検出できない場合、システムは、最大極値ピーク検出アルゴリズムを使用してよい。最大極値アルゴリズムでは、システムは特定軸の加速度信号を取得し、その平均値を差し引くことから開始してよい。システムは次に、この演算から生じた結果の信号における2つの最大値を特定してよい。これらの値のいずれかまたは両方が極値である場合、システムは、値に関連付けられた時刻をピーク700に対応するものとして記録してよい。
【0066】
各軸におけるピーク加速度700の1つまたは複数の時刻を決定した後、システム200は、隣接するピークを合成して、本明細書において「加速イベント」と呼ぶものを生成してよい。例えば、システムは、1つまたは複数のピーク701、703を合成して、図8に示されるような加速イベント800を生成してよい。いくつかの実装においては、各加速イベント800は、加速の各軸上の最大で1つのピーク700に対応することができるが、いくつかの加速イベントは、1つまたは2つの軸からの加速データのみを含んでよい。いくつかの実装においては、システムは、動的プログラミングアルゴリズムを使用して1つまたは複数の加速度イベント800を決定することができる。入力は長手方向702、横方向704、および垂直方向706の加速度信号のそれぞれについての1回または複数回のピーク加速度700であり、出力は、加速イベントが各軸からの複数のピークを含まず、かつ例えば1秒(または0.2から5秒の範囲内の別の閾値)を超えて離れた時刻を有するピークも含まないように、これらの時間または時刻を加速イベント800にグループ化したものである。これらの制約に従い、システムは初めに、生成された加速イベントの総数、そして次に、全イベント内の隣接するピーク間の時間差の合計の最小化を試みてよい。
【0067】
図9に示されるように、いくつかの実装においては、システム200は、各加速イベント800を処理して、各軸で経験される定量的加速を、加速イベント800の定性的(場合によっては自然言語)記載802に変換してよい。そのために、システムは、例えば、方向および強度に基づいて、1つまたは複数の閾値を加速イベント800中に各軸で経験される定量的加速に適用してよい。このデータを使用して、システムは、図9に示すように、加速イベント800を加速イベントの定性的記載802を含む1つまたは複数のビン902に分類してよい。定性的記載802は、例えば、加速イベント800が衝撃によるものであったかどうか、および車両のどこに衝撃が発生したか、加速イベントが車両のスロットリングまたはブレーキングによるものであったかどうか、ならびに加速イベントが方向転換の結果であったかどうか、および車両がどの方向に方向転換したかを特に示してよい。定性的記載は、それぞれの加速度軸904にも関連付けられていることに注意すべきである。
【0068】
例えば、システムが、加速イベント800中に強い負の長手方向加速があると判定した場合、システムは、定性的記載906「正面衝突」を加速イベント800に関連付けてよい。加速イベント800の定性的記載906をエアバッグ展開等の他の衝突メトリックスと合成することにより、システム200は、以下に記載するように、衝突に関して人間が読める文書で使用される、車両衝突の注釈付きタイムライン804を作成することができる。車両衝突期間中の特定の時刻805に発生するイベントは、視覚的に、文章で、またはその2つを組み合わせて、タイムラインに沿った異なる時点に関連付けられてよい。
【0069】
図10に示されるように、システム200は、加速イベントに関して、車両の4つの側面のそれぞれについて衝突確率1000を計算してよい。例えば、システムは、加速イベント800、その定性的記載802、またはその両方により報告されるような最大の加速度を有する軸が、より高い衝突確率1000を有すると判定してよい。いくつかの実装においては、システムは、例えば、車両の前部への衝突確率1000を下げることによってブレーキを補償してよい。さらに、異なる方向に横方向加速度のスパイクが2つある場合、システムは最初のスパイクが衝突に関連している可能性が高いと判定してよい。4つの側面のそれぞれについて衝突確率1000を判定した後、システム200は、確率を、衝突方向1002の統一された最善の推測に合成してよい。
【0070】
いくつかの実装においては、システム200は、テレマティクスデータまたは他の情報を使用して、衝突前の運転の継続、ブレーキ、加速、またはその両方、急ハンドル、回避操作、車両衝突期間後の歩行、別の行動、またはそれらの組み合わせ等の、運転者の状態または挙動を特定およびラベル付けしてよい。例えば、システムは、車両衝突期間の終了後、車両の速度が、30秒を超える任意の時点(または0から300秒の範囲の別の時間閾値)において、例えば、20kph(または5kphから30kphの範囲内の別の速度閾値)を超えたかをチェックすることで、運転者が運転を継続したかどうかを判定してよい。
【0071】
車両衝突期間の前または車両衝突期間中に発生する1つまたは複数の衝撃の前に、運転者がアクセルを踏んだか、ブレーキをかけたか、またはその両方を行ったかどうかを判定するため、システムは初めに主衝撃時刻、つまり車両衝突期間中に最大の加速度を持つ衝撃の時刻を計算してよい。車両衝突期間の開始時刻から開始して、システムは次に、例えば少なくとも1秒持続し、その間、全ての長手方向加速度サンプルが、例えば、3m/s(または1m/sから20m/sの範囲内の閾値)未満である最初の時間のブロック(例えば、時間セグメント)を探してよい。次に、システムは、隣接するブロックの終了時刻から、例えば、主衝撃時刻の0.5秒前(または0.1秒から3秒の範囲内の閾値)までの全ての長手方向加速度サンプルをチェックして、長手方向加速度が0m/s等の所与の閾値(または-3m/sから0m/sの範囲内の閾値)よりも小さいサンプルがあるか、また0m/s等の所与の閾値(または0m/sから3m/sの範囲内の閾値)よりも大きいサンプルがあるかどうかを確認してよい。第1の閾値を下回るサンプルがあり、第2の閾値を超えるサンプルがない場合、運転者は衝突前にブレーキをかけていたと見なされ得る。第1の閾値を下回るサンプルがなく、第2の閾値を超えるサンプルがある場合、運転者は衝突前にアクセルを踏んでいたと見なされ得る。より複雑な例では、衝突前に運転者が加速と減速の両方を行ったかを判定するために分析が可能である。
【0072】
システムはまた、左の横方向加速度ピーク(すなわち、横方向加速度のピーク>0(または0m/sから3m/sの範囲内の閾値))が主衝撃時刻の前に発生したかどうか、および左方向への急ハンドルを示す、右の横方向加速度ピーク(すなわち、横方向加速度のピーク<0(または-3m/sから0m/sの範囲内の閾値))が主衝撃時刻の後に発生したかどうかを判定することによって、1つまたは複数の衝撃の前に運転者が左、右、または両方向に急ハンドルを切ったかどうかを判定してよい。システムは、主衝撃時刻の前の右の横方向加速度ピークをチェックし、続いて右方向への急ハンドル(またはその逆もしくは一連の急ハンドル操作)を示す、主衝撃時刻の後の左の横方向加速度ピークをチェックしてもよい。どちらも存在しない場合、システムは急ハンドルが発生しなかったと判定してよい。同様に、いくつかの実装においては、システムは、例えば、主衝撃時刻前の速度と主衝撃時刻の速度との差が5kph(または1kphから10kphの範囲内の閾値)等の所定の閾値を超えるかどうかを判定することによって、運転者が車両衝突期間中に回避操作を試みたかどうかを判定してよい。
【0073】
より複雑な分析では、車両衝突期間中のそのような操作の他の組み合わせが判定され、タイムライン上にイベントとして特定され、文章で、視覚的に、またはその両方として表現されてよい。
【0074】
いくつかの実装においては、システムは、車両衝突期間後または衝突後に運転者が車両から歩き去ったかどうかを判定可能である。そのために、システムは、運転者によって所持されるモバイル装置204等の装置から受信したデータを利用して、全内容が参照により本明細書に組み込まれる「Telematics Using Personal Mobile Devices」との発明の名称を有する米国特許8457880B1に記載されるような人間の歩行の特徴的な特性を検出してよい。歩行検出は、例えば、運転者は重傷になってはいないが、車両を離れることを正当化するのに衝突または衝撃が充分激しいことを示すことによって、衝突または衝撃の深刻度を理解するのに有用になり得る。
【0075】
いくつかの実装においては、システム200は、車両衝突(または衝撃)の深刻度を計算してよい。特に、システム200は、図11に示されるように、車両衝突のスコア(深刻度スコアなど)1100を計算してよく、また、車両衝突に関して人間が読める文書の一部として、深刻度スコア1100のテキストのもしくはグラフィカルな描写、または両方を含む深刻度スコアメータ1102を提供してよい。深刻度スコア1100は、スコア値が高いほど、車両衝突または衝撃の深刻度が高いことを示す以下のパラメータの1つまたは複数、またはそれらの組み合わせの最大、平均、または加重平均を計算することによって決定されてよい。
スコア名:スコア式
speed_score:min(impact_speed/130.0,1)
すなわち、1と(impact_speed/130)の小さい方
delta_v_score:max(min(delta_v/100.0,1),0)
すなわち、(delta_v/100)と1の小さい方を計算して、この値が正の場合はそれを使用、それ以外の場合は0を使用
mean_accel_score:max(min(delta_v/delta_t/15.0,1),0)
すなわち、(delta_v/(delta_t*15)と1の小さい方を計算して、この値が正の場合はそれを使用、それ以外の場合は0を使用
lon_score:min(abs_lon/25.0,1)
すなわち、(abs_lon/25)と1の小さい方を計算
lat_score:min(abs_lat/20.0,1)
すなわち、(abs_lat/20)と1の小さい方を計算
airbag_score:airbag_deployed=偽の場合は0.0、真の場合は1.0、不明な場合は0.5
direction_score:正面からの衝撃の場合は1.0、後方からの衝撃の場合は0.33、側面等の他の衝撃の場合は0.67ただしdelta_v>10
drive_after_score:ユーザが衝突後に運転を継続した場合は0.0、他の場合は1.0
braking_score:ユーザが衝突の前にブレーキをかけた、または衝突速度が20kph未満の場合は0.0、他の場合は1.0
様々な他の要因、式、およびそれらの組み合わせを使用して、保険会社、政府機関、他の当事者等のユーザに関心となり得る、深刻度値、非深刻度値、または車両衝突もしくは衝撃の深刻さ、コスト、影響、もしくはその他の特性に関する他の測定値を決定できる。
【0076】
再び図4を参照すると、上記の1つまたは複数の衝突メトリックスを単独で、または他の情報とともに使用して、衝撃、車両衝突、またその両方に関して人間が読める文書を自動的に生成できる。文書は、人間のユーザが簡単に処理および理解できる形式で組み立ておよび整理される、文章、画像、ビデオコンテンツ、グラフィカルな要素、グラフ、チャート、表、その他のコンテンツアイテム、およびそれらの組み合わせを含むことができる。システム200は、他の情報の中から、1つまたは複数の衝突メトリックスに基づいて、車両衝突または車両衝撃に関して人間が読める文書を自動的に提供してよい(ステップ406)。
【0077】
いくつかの実装においては、中央サーバ206は、例えば、衝突文書化モジュール312を使用して、車両衝突または車両衝撃に関して人間が読める文書を生成してよい。中央サーバ206は次に、通信インタフェース304を使用して、記憶用のデータベース210、ネットワーク208を使用するモバイル装置204、またはリモートコンピューティング装置212等の、システム200の1つまたは複数の他の構成要素に、ネットワーク214、他の装置、またはそれらの組み合わせを使用して文書を提供してよい。
【0078】
人間が読める文書は、特に紙、コンピュータ可読ファイル、一連のコンピュータ可読命令、電子メール、Webページ、Webサービス、アプリケーション、モバイルアプリケーション、または通知等の、様々な形式またはその組み合わせで提供されてよい。受信されると、モバイル装置204、リモートコンピューティング装置212、または他の受信装置は、車両衝突または車両衝撃に関して人間が読める文書を印刷、表示、またはその両方を行ってよい。いくつかの実装においては、人間が読める文書は対話型であってよく、また中央サーバ206は、モバイル装置204またはリモートコンピューティング装置212に、文書の表示、対話、およびさらなる処理を可能にする、アプリケーション等のソフトウェア、またはAPIまたはウェブサービス等のインタフェースを提供してよい。他の実装においては、テレマティクス装置202、モバイル装置204、またはリモートコンピューティング装置212は、車両衝突に関して人間が読める文書を生成してよく、その文書の表示、対話、およびさらなる処理のため、システム200内のローカルまたは他の構成要素に文書を提供してよい。
【0079】
システムはまた、ユーザが衝突または衝撃の統計的特徴を理解できるよう、複数の車両衝突または衝撃が集約された文書を提供することができる。情報の集約は、地理、時間帯、月、関連する車両の運転者の人口統計学的特性、車両の特性、および様々な他の特性に従って行われてよい。このようにして、衝突文書化モジュールは、複数の衝突に関する英語の説明(例えば、衝突に関する統計的結論についての英語の説明)を一度に与えるような、複数の衝突を網羅する記述、例えば、「2018年4月中にボストンから20マイル以内で起きた衝突の大部分は、車両の右側への衝突だった」を構成できる。
【0080】
さらに、本手法は、データの他の表示および分析ができるよう、文書の生成に使用される生データを構造化された方法で提供してよい。例えば、文書は、すべての衝突のタイムスタンプ、方向、および強度を値のリストとして表してよい。このような値を使用して、例えば、一度の衝突中に車両の各側が被った相対的な損傷量を示す円グラフを作成してよい。
【0081】
いくつかの場合では、衝突の文書が口頭で(音声で)提供されてよい。そのような状況では、記述のテキストは上記のように作成されるが、可聴音声はテキスト読み上げ合成ソフトウェアを使用して生成される。記述は、1つまたは複数の衝突または衝撃を査定する際に、コンピュータ画面を簡単に閲覧できない損害査定人やその他のオペレータにとって有用になり得る。
【0082】
文書の記述は、衝撃の直前の運転を反映する追加的特徴によって補足されてよい。例えば、システムは、運転者が自身の通っている道路を熟知しているかどうかを示すことができる。熟知度は、28日(または1日から1年の範囲内の期間)等の一定期間にわたる運転の過去の履歴を調べ、地図に一致した経路から抽出された道路区分を調べることによって判定されてよい。衝突に関連する1つまたは複数の道路区分を期間内に2回以下(または0から20の範囲の閾値)しか通らなかった場合、その道路区分を「熟知していない」と見なされる。地図の一致が利用できない場合は、地図に一致した道路区分の代わりにGPS位置が使用できる。運転手が上記の意味で道路を熟知していないように思われる場合、テキストの記述には「運転手は過去28日間にこの道路を1回しか通らなかった」等の文が追加され得る。または、道路区分を「熟知している」と見なされる場合は、「運転者はこの道路を熟知しており、過去28日間に14回通った」等の文が追加されてよい。
【0083】
第二に、車両衝突に先立つ通話に関する情報も記述に含めることができる。特に、スマートフォンのシステムAPIをポーリングして通話状態情報を取得し、この情報をクラウド上のサーバに送信することで、システムはユーザが電話をかけたかどうかを判定でき、通話がハンズフリー装置またはハンドセットで行われたかどうかを検出できてよい。電話がかけられた場合は、テキストの記述には「衝突の3分前。衝突の30秒前に通話が終了」等の文が追加できる。
【0084】
第三に、衝突直後に運転者が歩いていると思われるかどうかに関する情報を記述に含めてよい。これは、運転者の電話からの加速度データを使用するか、電話に固有の歩行分類子を使用することによって判定できる。このデータを元に、「運転者は衝突後に車両を降りて歩き回った」という形式の文を記述に追加してよい。
【0085】
人間が読める文書のユーザには、保険会社、政府機関、民間企業、車両所有者、車両製造者、道路設計者、および様々な他の当事者が含まれてよい。
図12乃至図12Dは、車両衝突に関して人間が読める文書1200の例を示す。一般に、車両衝突に関して人間が読める文書1200は、例えば、1つまたは複数の特徴およびメトリックスを示す車両衝突または車両衝突に関する他の情報の、テキストの記載1201、グラフィカルな記載1202、上記の他の種類のコンテンツのいずれか、またはそれらの組み合わせを含んでよい。図12Aを参照すると、いくつかの実装においては、文書1200は、車両衝突に関する、例えば、英語の文を含む自然言語記載を含んでよい。該英語の文が示すものとしては、1つまたは複数の車両衝突の場所、車両衝突の日付、車両衝突の時間または車両衝突期間中の特徴、車両衝突の継続時間、車両衝突の深刻度、車両衝突の前、最中、および後の車両の最小、最大、平均、または瞬間速度および加速、車両衝突中の速度と加速度の変化、車両衝突中の車両のジャイロスコープ方向および角速度、車両衝突中の衝撃の数、車両衝突中の衝撃の方向、車両衝突中の車両のヨーイング、車両エアバッグが展開したかどうか、車両が横転したかどうか、車両の運転手が何らかの回避操作を試みたかどうか更には何の操作だったか、車両衝突期間中に車両のブレーキまたはスロットルが使用されたかどうか、車両衝突の衝撃の前に運転者が減速する時間があったかどうか、車両衝突期間の後に車両が運転されたかどうか、車両衝突期間の後に運転者が車両を降りたかどうか、車両衝突期間の後の運転者の歩行、天候条件、温度、雲の範囲、太陽の位置、太陽が運転者に向いているかどうか等の車両衝突期間中の環境条件、車両衝突期間の生のテレマティクスデータ、車両衝突期間中の衝突メトリックスデータ、ならびに車両衝突に関連するその他の特徴およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
例えば、車両衝突の自然言語記述1202は、特定の車両衝突に関して以下のことを述べることができる。「運転手は、2017年9月2日の11:35:26に米国においてウォルサムのムーディーストリートを時速49kmで走行していた。11時35分28秒、車両が時速48kmで走行中に車両左側で衝突が発生した。衝突イベントは、車両が時速29kmに達した11:35:30に終了した。衝突中に車両はヨーイングしていた。衝突イベントの後、運転者は走行を中止した。」
いくつかの実装においては、車両衝突に関して人間が読める文書1200は、衝突再現データ1204を含み、車両衝突に関連する衝突メトリックスおよび他の特徴のテキストのまたはグラフィカルな要約を提供してよい。文書1200は、深刻度スコアメータ1102を含み、車両衝突の深刻度スコア1100のテキストのおよびグラフィカルな描写を提供してよい。
【0087】
図12Bに示されるように、車両衝突に関して人間が読める文書1200は、車両衝突の注釈付きタイムライン804を含んでよい。上記のように、注釈付きタイムライン804は、1つまたは複数の加速イベント800または他のイベント、それらの定性的記載802、および車両衝突に関連する他のメトリックスまたは特徴のインジケータを含んでよい。いくつかの実装においては、文書1200は、図7を参照して検討したような1つまたは複数の加速度ピーク700のインジケータを備えた長手方向702、横方向704、および垂直方向の706加速度信号を含んでよい。
【0088】
文書1200は、車両衝突期間中の車両のGPS速度、または車両衝突期間中に車両が経験する横方向、長手方向、および/または垂直方向の加速度等の、他のテレマティクスデータのテキストのまたはグラフィカルな表現を含んでよい。例えば、文書1200は、図12Cに示されるように、車両衝突期間中に車両が経験する横方向および長手方向の加速度のすべての点についての線分プロット1206を含んでよい。いくつかの実装においては、文書1200は、車両の4つの側面のそれぞれについての衝突確率1000の視覚化、および衝撃の方向の統一された最善の推測(図示せず)を含んでよい。
【0089】
図12Dに示されるように、いくつかの実装においては、文書1200は、衝突の地図1208を含んでよい。衝突の地図1208は、車両衝突または車両衝突期間の開始1210および終了1212のGPS位置を示すマーカを含んでよい。文書1200は、車両衝突が起きた通りおよび周辺地域の画像を含む車両衝突のストリートビュー1214を含んでよい。いくつかの実装においては、ユーザは、ストリートビュー1214と対話して、地図1208上に配置された可動マーカ1216を使用すること等によって、ビューを回転させたり、ビューを通りに沿って移動させたりしてよい。
【0090】
いくつかの実装においては、車両衝突の文書は次のように生成される。上記のように、テレマティクスデータから、衝突の以下の特徴を導出することができる。特に、衝突範囲(例えば、衝突継続時間)、衝突期間の開始時と終了時の車両の速度、衝突期間中に発生した衝撃のタイムスタンプ、衝突後に運転者が目的地まで運転を継続したかどうか、衝突中に車両が横転したかどうか、衝突中にエアバッグが展開したかどうか、および運転者が第1衝撃前に急ハンドルまたはブレーキ操作を行ったかどうかが挙げられる。これらの特徴から、システムは衝突記述を生成するためにさらにいくつかの特徴を計算する。
【0091】
システムは、全ての衝撃を比較し、重力からの偏差が最大である衝撃のタイムスタンプを取得することにより、最大衝撃のタイムスタンプを計算する。
システムは、衝突の緯度と経度を、最大衝撃のタイムスタンプに最も近いテレマティクスデータの緯度と経度の読み取り値として計算する。
【0092】
システムは、太陽方位角とGPS方位の異なりが45度未満であったかどうか、(例えば、気象観測のデータベースに問い合わせをすることで判定される)空は晴れていたかまたは部分的に曇りであったかどうか、および最大衝撃時の太陽高度は0から45度の間だったかどうかに基づき、衝突時に運転者が太陽に向いていたかどうかを計算する。
【0093】
システムは、各衝突方向を取得し、それに(本開示で前述したように)深刻度および方向を割り当て、左右前後の各方向の総重量を合計して最大衝突強度の方向を判定することにより、自動車の最も損傷した側を計算する。
【0094】
システムは、衝突中に車がヨーイングしていたかどうかを、ジャイロスコープが測定したヨーレートが最大衝撃時に毎秒6ラジアンを超えたかどうかに基づき、計算する。
システムは、地図データベースに問い合わせをして、衝突の緯度と経度に最も近い通りを特定することにより、衝突が発生した通りの名前を計算する。
【0095】
衝突文書化モジュールは、決定された上記の値を用いて以下の手順に従って記述を生成する。
モジュールは、「運転者は、CRASH_START_TIMEにCRASH_START_SPEED km/hでSTREET_LOCATIONを走行していた」という文章で始める。STREET_LOCATIONは、通りの言語表記である(例:「ネブラスカ州、リンカーンの大通り」)。CRASH_START_SPEEDは、衝突期間の開始時の速度(kph)である。CRASH_START_TIMEは、衝突開始時の言語表記時刻、例えば、「2018年6月4日の12:01:45」である。
【0096】
ブレーキ操作のみが試みられた場合、モジュールは「運転者は衝突前にブレーキをかけ始めた」という文章を記述に追加する。急ハンドル操作のみが試みられた場合、モジュールは「運転者は衝突前に急ハンドルを切り始めた」という文章を記述に追加する。ブレーキおよび急ハンドル操作の両方が試みられた場合、モジュールは「運転者は衝突前にブレーキをかけ、また急ハンドルを切り始めた」という文章を記述に追加する。
【0097】
モジュールが車の最も損傷した側を判定した場合、モジュールは「車両がLARGEST_IMPACT_SPEED km/hで走行中、LARGEST_IMPACT_TIMEに車両のHIT_DIRECTION側で衝突が発生した。衝突イベントは、車両がCRASH_END_SPEED km/hの速度に達したCRASH_END_TIMEに終了した。」という文章を記述に追加する。そうでない場合は、モジュールは「車両がLARGEST_IMPACT_SPEED km/hで走行中、LARGEST_IMPACT_TIMEに衝突が発生した。衝突イベントは、車両がCRASH_END_SPEED km/hの速度に達したCRASH_END_TIMEに終了した。」という文章を追加する。LARGEST_IMPACT_TIMEは、最大衝撃の言語表記時刻、例えば、「2018年6月4日の12:01:46」である。HIT_DIRECTIONは、「左」、「右」、「前」、または「後」のいずれかである。LARGEST_IMPACT_SPEEDは、最大衝撃時の速度(kph)である。CRASH_END_TIMEは、衝突期間の終了時の言語表記時刻、例えば、「2018年6月4日の12:01:48」である。CRASH_END_SPEEDは、衝突期間の終了時の速度(kph)である。
【0098】
車両がヨーイングしていると判定された場合、モジュールは「衝突中に車両はヨーイングしていた。」という文章を記述に追加する。
モジュールは、エアバッグが展開されたと判定した場合、モジュールは「エアバッグがAIRBAG_DEPLOY_TIMEに展開された」という文章を記述に追加する。AIRBAG_DEPLOY_TIMEは、エアバッグ展開の言語表記時刻、例えば、「2018年6月4日の12:01:47」である。
【0099】
モジュールは、車両が横転したと判定した場合、「衝突の結果、車両が横転した」という文章を記述に追加する。
モジュールは、運転者が太陽に向いていたと判定した場合、「運転者が太陽に向かって運転していたため、まぶしさおよび/または視界不良が発生した可能性がある。」という文章を記述に追加する。
【0100】
モジュールは、運転者が運転を継続したと判定した場合、「衝突イベント後に運転者は目的地に向かって運転を継続した。」という文章を記述に追加する。そうでない場合は、「衝突イベント後、運転者は走行を継続しなかった。」という文章を記述に追加する。
【0101】
様々な他のデータ要素が、記述の要素の基礎を構成することができる。記述は、データ要素の所与のセットに対して幅広い方法で表現され得る。
他の実装もまた以下の請求項の範囲内である。
[付記1]
車両に関連する衝突の文書を自動的に生成する方法であって、前記方法は、
前記車両のテレマティクス装置に関連付けられた1つまたは複数のセンサによって生成されたテレマティクスデータを受信する工程と、
前記テレマティクスデータに基づき、車両衝突の開始時刻に開始し終了時刻に終了する車両衝突期間を決定する工程と、
前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突期間中の前記車両に関連付けられた1つまたは複数のメトリックスを決定する工程と、
前記1つまたは複数のメトリックスに基づき、前記車両衝突に関して人間が読める文書を自動的に生成する、文書自動生成工程と、を備える方法。
[付記2]
衝突検出構成要素が、衝突検出モデルに基づき、前記テレマティクスデータが車両衝突に関連付けられている確率を計算する工程、を備える付記1に記載の方法。
[付記3]
前記人間が読める文書は、前記1つまたは複数のメトリックスの記述を含む前記車両衝突の記載を備える、付記1に記載の方法。
[付記4]
前記車両衝突に関して前記人間が読める文書を表示する工程、を備える付記3に記載の方法。
[付記5]
衝突メトリックス構成要素が、前記テレマティクスデータに基づき、第1高度変化率および第2高度変化率を計算する工程と、
前記衝突メトリックス構成要素が、前記第1高度変化率と前記第2高度変化率との差を計算する工程と、
前記衝突メトリックス構成要素が、所定の閾値を満足する前記差に基づき、前記車両に関連付けられたエアバッグが展開されたと判定する工程と、を備える付記1に記載の方法。
[付記6]
衝突メトリックス構成要素が、前記テレマティクスデータに基づき、前記テレマティクス装置に関連付けられた1つ以上の軸の1つまたは複数のピーク加速度値を計算する工程と、
前記衝突メトリックス構成要素が、前記1つまたは複数のピーク加速度値に基づき、加速イベントを計算する工程であって、前記加速イベントは、前記テレマティクス装置に関連付けられた1つ以上の軸の各々の1つのピーク加速値のみを含む工程と、
前記衝突メトリックス構成要素が、前記加速イベントに基づき、前記テレマティクス装置に関連付けられた前記1つ以上の軸の各々の加速度の定性的測定を決定する工程と、を備える付記1に記載の方法。
[付記7]
前記加速イベントに基づき、前記車両の車両衝撃の方向を計算する工程、を備える付記6に記載の方法。
[付記8]
前記加速イベントに基づき、車両衝撃前の前記車両の操作を計算する工程、を備える付記6に記載の方法。
[付記9]
前記1つまたは複数のメトリックスに基づき、前記車両衝突の深刻度スコアを計算する工程、を備える付記1に記載の方法。
[付記10]
前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突期間の前記開始時刻後に発生する人間の歩行を識別する工程、を備える付記1に記載の方法。
[付記11]
車両衝突の文書を自動的に生成する車両テレマティクスシステムであって、前記システムは、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行可能な命令の記憶部と、を備え、前記プロセッサは、
テレマティクス装置に関連付けられた1つまたは複数のセンサからテレマティクスデータを取得する工程と、
前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突の開始時刻に開始し終了時刻に終了する車両衝突期間を計算する工程と、
前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突期間中の車両に関連付けられた1つまたは複数のメトリックスを決定する工程と、
前記1つまたは複数のメトリックスに基づき、前記車両衝突に関して人間が読める文書を自動的に提供する工程と、を行うシステム。
[付記12]
前記1つまたは複数のセンサは、加速度計、速度計、気圧計、ジャイロスコープ、コンパス、および位置センサのうちの少なくとも1つを含む、付記11に記載のシステム。
[付記13]
前記車両衝突に関して前記人間が読める文書を表示するユーザインタフェース、を備える付記11に記載のシステム。
[付記14]
前記車両衝突に関して前記人間が読める文書は、前記1つまたは複数のメトリックスの記述を含む前記車両衝突の記載を備える、付記11に記載のシステム。
[付記15]
前記1つまたは複数のメトリックスは、衝突継続時間、衝撃の数、平均加速度、前記車両衝突中のヨーイング、車両衝撃の方向、エアバッグ展開の表示、車両横転の表示、車両操作の表示、前記車両が衝突後に運転されたかどうかの表示、および前記車両衝突中の環境条件の表示のうちの少なくとも1つを含む、付記11に記載のシステム。
[付記16]
前記テレマティクスデータ、前記車両衝突期間、前記1つまたは複数のメトリックス、および前記車両衝突に関して前記人間が読める文書のうちの1つまたは複数を遠隔サーバに通信する通信回路を備える、付記11に記載のシステム。
[付記17]
前記遠隔サーバは、自動車安全機関、保険会社、緊急サービス、前記テレマティクス装置のユーザ、および前記車両のユーザのうちの少なくとも1つに関連付けられる、付記16に記載のシステム。
[付記18]
前記テレマティクス装置はモバイル装置を含む、付記11に記載のシステム。
[付記19]
前記プロセッサによって実行可能な追加的命令を備え、
衝突検出構成要素が、衝突検出モデルに基づき、前記テレマティクスデータが車両衝突に関連付けられている確率を計算する工程を行う、付記11に記載のシステム。
[付記20]
前記プロセッサによって実行可能な追加的命令を備え、
前記テレマティクスデータに基づき、前記車両衝突期間の前記開始時刻後に発生する人間の歩行を識別する工程を行う、付記11に記載のシステム。
[付記21]
前記文書自動生成工程は、前記衝突の特徴を前記テレマティクスデータから導出する工程を備える、付記1に記載の方法。
[付記22]
前記衝突の前記特徴は、前記衝突の第1衝撃前のイベントを含む、付記21に記載の方法。
[付記23]
前記衝突の前記特徴は、前記衝突の最終衝撃後のイベントを含む、付記21に記載の方法。
[付記24]
前記衝突の前記特徴は、車速を含む、付記21に記載の方法。
[付記25]
前記衝突の前記特徴は、前記衝突の第1衝撃後かつ前記衝突の最終衝撃前のイベントを含む、付記21に記載の方法。
[付記26]
前記衝突の前記特徴は、前記衝突の最大衝撃に関して決定されたイベントを含む、付記21に記載の方法。
[付記27]
前記衝突の前記特徴は、前記衝突中の前記車両の位置または方向に関連付けられた特徴を含む、付記21に記載の方法。
[付記28]
前記人間が読める文書は、衝突記述を含む、付記1に記載の方法。
[付記29]
前記文書自動生成工程は、前記衝突の特徴に対応する所定の文章のフレーズを組み立てる工程を含む、付記1に記載の方法。
[付記30]
前記文章のフレーズは、(a)時刻、(b)位置または方向、および(c)速度のうちの少なくとも1つを特定する付記29に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13