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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】ドライバエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2346 20110101AFI20230607BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B60R21/2346
B60R21/203
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021515890
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020013132
(87)【国際公開番号】W WO2020217824
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2019084758
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】森田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】谷貝 和男
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0073139(US,A1)
【文献】特開2001-080440(JP,A)
【文献】特開2003-320921(JP,A)
【文献】特開2000-085512(JP,A)
【文献】特開2006-297958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングホイールに収容されるエアバッグ装置であって、
膨張ガスを発生するガス発生器と;
前記膨張ガスによって膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと;
前記エアバッグの内部において、前記ガス発生器の前記乗員側を覆うように設けられ、前記膨張ガスの流れを制御するガス整流部材と;を備え、
前記ガス整流部材は、ステアリングホイールのリムに平行な面を時計の文字盤に見立てたときに、12時と6時を結ぶ線(X軸)に対して左右対称な部分を含んだ平面状のパネルから成形され、前記パネルの左右縁部同士を縫製することで、6時の方向に前記膨張ガスを排出する下方開放部が形成され、且つ前記ガス発生器の乗員側を覆う構成であり、
前記下方開放部は、前記パネルの切り欠きとして成形され、当該切り欠きの縁部は縫製されず、
縫製前の前記パネルを、前記ステアリングホイールに対して実際に設置する向きに合わせ、前記X軸と、3時と9時とを結ぶ線(Y軸)とによって仮想的に4分割したときに、12時と3時との間の右上部領域と、9時と12時との間の左上部領域とに、第1の開口部と第2の開口部が各々形成されており、
前記エアバッグは、乗員側に位置するフロントパネルと、前記ガス発生器側に位置するバックパネルと、当該フロントパネルとバックパネルとを連結するサイドパネルとを含み、
前記ガス整流部材を形成する前記パネルを縫製した状態で当該ガス整流部材を側方から見た時に、前記下方開放部は車両前方の端部から水平方向に延び、その後乗員側に向かって下方に傾斜し、当該下方開放部の乗員側端部は前記ガス整流部材の乗員側の端部まで達しないように形成されていることを特徴とするのエアバッグ装置。
【請求項2】
前記下方開放部を形成する前記切り欠きは、前記パネルの左右縁部同士の縫製前の状態で、前記12時の位置と反対側の縁部が、前記12時の位置に近い側の縁部よりも広い台形状に成形されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記台形状の前記切り欠きの下側の角部と前記連結部とを結んだ直線と、前記3時-9時方向の直線とがなす角度θが110°~170°であることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記角度θが、120°~160°であることを特徴とする請求項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記フロントパネルは、前記バックパネルよりも大きく成形されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記3時-9時の方向をY軸方向としたときに、収容状態にある前記エアバッグの前記フロントパネルの中心位置と前記ガス整流部材の中心位置とのY軸方向におけるずれが±30mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記12時-6時の方向をX軸方向としたときに、収容状態にある前記エアバッグの前記フロントパネルの中心位置と前記ガス整流部材の中心位置とのX軸方向におけるずれが±30mm以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグの収容状態において、前記ガス整流部材が前記フロントパネルと接するように配置されることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記12時の方向に前記膨張ガスを排出する上方開放部が更に形成され、当該上方開放部は、前記下方開放部よりも小さい開口面積を有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
前記ガス整流部材と前記エアバッグとは、前記ガス発生器の外周付近の連結部において互いに連結されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
前記第1及び第2の開口部の面積は、前記下方開放部の開口面積よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項12】
前記第1及び第2の開口部の面積は、840mm~4800mmであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項13】
収容状態の前記エアバッグの乗員側表面を覆うカバーが設けられ、
前記カバーは、前記エアバッグが展開したときに開放する構造であり、
前記第1及び第2の開口部の少なくとも一部は、前記エアバッグが展開したときに、前記カバーの表面よりも乗員側に突出した位置にあることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項14】
収容状態の前記エアバッグの乗員側表面を覆うカバーが設けられ、
前記カバーは、前記エアバッグが展開したときに開放する構造であり、
前記下方開放部の少なくとも一部は、前記エアバッグが展開したときに、前記カバーの表面よりも乗員側に突出した位置にあることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグ装置に関し、特に、ステアリングホイールに収容されるドライバエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグは、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆるドライバエアバッグや、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグや、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員の側部(シートの側部)で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。
【0003】
ドライバエアバッグ装置や助手席の乗員を保護する助手席用エアバッグ装置のような所謂フロントエアバッグ装置においては、エアバッグの速やかな展開によって乗員を拘束することと、当該エアバッグに進入してきた乗員のダメージを低減することが要求される。
【0004】
特に、ドライバエアバッグ装置においては、ドライバがステアリングホイールに衝突する事態を回避する必要がある。通常、ステアリングホイールのリムは、垂直に対して傾いた状態で取り付けられているため、ステアリングホイールの下側部分がドライバ側に最も近くなる。このため、ステアリングホイールの中心付近から展開するエアバッグは、速やかにドライバの腹部付近(下方)に向かって展開する必要がある。すなわち、ステアリングホイールの面を時計に見立てた場合の6時方向に素早く展開することが要求される。
【0005】
上記のように、ステアリングホイールの下方に向かってエアバッグが速やかに展開するように工夫されたエアバッグ装置は存在するものの、十分な効果を得ることができないか、構造が複雑になる等の問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、比較的簡素な構造でありながら、エアバッグの展開挙動・形状を適切に制御することにより、乗員の拘束性能を向上させることができるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るエアバッグ装置は、車両のステアリングホイールに収容されるエアバッグ装置であって、膨張ガスを発生するガス発生器と;前記膨張ガスによって膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと;前記エアバッグの内部において、前記ガス発生器の前記乗員側を覆うように設けられ、前記膨張ガスの流れを制御するガス整流部材とを備える。
前記ガス整流部材は、ステアリングホイールのリムに平行な面を時計の文字盤に見立てたときに、12時と6時を結ぶ線(X軸)に対して左右対称な部分を含んだ平面状のパネルから成形され、前記パネルの左右縁部同士を縫製することで、6時の方向に前記膨張ガスを排出する下方開放部が形成され、且つ前記ガス発生器の乗員側を覆う構成である。
そして、縫製前の前記パネルを、前記ステアリングホイールに対して実際に設置する向きに合わせ、前記X軸と、3時と9時とを結ぶ線(Y軸)とによって仮想的に4分割したときに、12時と3時との間の右上部領域と、9時と12時との間の左上部領域とに、第1の開口部と第2の開口部が各々形成されている。
【0008】
ここで、「左右対称」とは、12時の位置と6時の位置を結んだ線(Y軸)に対して対称の意味である。また、全ての範囲にわたって左右対称である他、部分的に左右対称である場合も含み、更には、完全な対称に限らず、実質的に対称な状態も含むものである。本発明においては、1枚のパネルを中心線(Y軸)に沿って重ね合わせて、縁部を縫製することで容易にガス整流部材が成形されることが重要である。また、「乗員側」とは、ステアリングホイールのリムを含む面に垂直な方向や、当該垂直な方向から若干傾斜した方向を含む意味である。
【0009】
12時、3時、6時、9時の方向とは、ステアリングホイールを時計の文字盤に見立てた場合の位置であるが、車両直進時のステアリングの向きが基準であり、上又は進行方向を12時とし、この12時の位置を基準にして時計回りに90度回転した位置を3時、180度回転した位置を6時、270度回転した位置を9時とする。
【0010】
上記のような本発明によれば、エアバッグ装置が作動したときに、ガス発生器から放出されたガスは、エアバッグ全体に充填される前にガス整流部材に流れ込む。その後、多くの膨張ガスは下方開放部からエアバッグ内部に流れ出し、一部の膨張ガスは第1の開口部及び第2の開口部からエアバッグ内部に流れ出ることになる。このため、エアバッグは展開初期の段階で6時の方向に速やかに展開し、乗員(ドライバ)とステアリングホイールとの間に入り込んで、乗員の腹部を速やかに拘束することができる。
【0011】
前記下方開放部は、前記パネルの切り欠きとして成形され、当該切り欠きの縁部は縫製されない構造とすることができる。前記下方開放部を形成する前記切り欠きは、前記パネルの左右縁部同士の縫製前の状態で、前記12時の位置と反対側の縁部が、前記12時の位置に近い側の縁部よりも広い台形状に成形することができる。ここで、前記台形状の前記切り欠きの下側の角部と前記連結部とを結んだ直線と、前記3時-9時方向の直線とがなす角度θが110°~170°とし、更に、120°~160°とすることが好ましい。
発明者による実験の結果、上記のような角度θの設定とすることで、良好な展開挙動を得ることができた。
【0012】
前記12時の方向に前記膨張ガスを排出する上方開放部が更に形成され、当該上方開放部は、前記下方開放部よりも小さい開口面積を有する構造とすることができる。
【0013】
ここで、「開口面積」は、左右縁部同士の縫製後のガス整流部材において、当該ガス整流部材が完全に展開完了した状態で、開口(開放)される部分の縁によって閉じられて出来る面の面積をいう。この閉じられて出来る面は、平面形状、曲面形状、またはそれらの複合形状などの少なくとも一つから構成され、それら形状自体が屈曲している場合も含まれる。なお、「開口部の面積」と言う場合にも、同様な意味である。
【0014】
前記ガス整流部材と前記エアバッグとを、前記ガス発生器の外周付近の連結部において互いに連結することができる。
【0015】
前記第1及び第2の開口部の面積は、前記下方開放部の開口面積よりも小さくすることが好ましい。前記第1及び第2の開口部の面積は、840mm~4800mmとすることができる。
【0016】
収容状態の前記エアバッグの乗員側表面を覆うカバーが設けられ、当該カバーは、前記エアバッグが展開したときに開放する構造とし、前記第1及び第2の開口部の少なくとも一部は、前記エアバッグが展開したときに、前記カバーの表面よりも乗員側に突出した位置にくるように構成することができる。
【0017】
収容状態の前記エアバッグの乗員側表面を覆うカバーが設けられ、前記カバーは、前記エアバッグが展開したときに開放する構造とし、前記下方開放部の少なくとも一部が、前記エアバッグが展開したときに、前記カバーの表面よりも乗員側に突出した位置にくるようにすることが好ましい。
【0018】
このような構造を採用することにより、エアバッグの展開によってカバーを開放するまでの間は、カバーを押し上げる力を最大限に発揮し、カバーが開放した後にはガス整流部材が本来の機能を発揮して、適切にガスの流れを制御することになる。
【0019】
前記エアバッグは、乗員側に位置するフロントパネルと、前記ガス発生器側に位置するバックパネルと、当該フロントパネルとバックパネルとを連結するサイドパネルとを含むことができる。そして、前記3時-9時の方向をY軸方向としたときに、収容状態にある前記エアバッグの前記フロントパネルの中心位置と前記ガス整流部材の中心位置とのY軸方向におけるずれを±30mm以下とすることが好ましい。同様に、前記12時-6時の方向をX軸方向としたときに、収容状態にある前記エアバッグの前記フロントパネルの中心位置と前記ガス整流部材の中心位置とのX軸方向におけるずれを±30mm以下とすることが好ましい。
【0020】
前記エアバッグの収容状態において、前記ガス整流部材が前記フロントパネルと接するように配置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係るエアバッグ装置が適用可能なステアリングホイールの外観形状を示す平面図である。
図2図2は、本発明に係るエアバッグ装置が作動し、エアバッグが展開した様子を示す側面図である。
図3図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグのパネル構造を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材のパネル構造を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第1実施例に係るエアバッグのフロントパネルとガス整流部材との位置関係を示す正面図であり、展開したエアバッグをドライバ側から見た様子(一部透視)を示す。
図6図6(A)は、本発明の第1実施例に係るエアバッグが展開した状態を示す斜視図であり、同図(B)は(A)の一部を拡大したものである。
図7図7は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材のパネル構造を示す平面図である。
図8図8は、本発明の第3実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材のパネル構造を示す平面図である。
図9図9は、本発明の第4実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材のパネル構造を示す平面図である。
図10図10は、本発明の第5実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材のパネル構造を示す平面図である。
図11図11は、本発明の第6実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材のパネル構造を示す平面図である。
図12図12は、本発明の第7実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材のパネル構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、 本発明の実施形態に係るエアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るエアバッグ装置10が適用可能なステアリングホイール12の外観形状を示す平面図である。図2は、本発明に係るエアバッグ装置10が作動し、エアバッグ16が展開した様子を示す側面図である。
本発明に係るエアバッグ装置10は、ステアリングホイール12の中心付近に収容される。なお、「12時」、「3時」、「6時」、「9時」とは、ステアリングホイール(あるいは、エアバッグの展開方向と垂直な面)をドライバ側から見たときに、時計の時刻を示す位置に対応する。
【0023】
本発明に係るエアバッグ装置10は、膨張ガスを発生するガス発生器14と;膨張ガスによって膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグ16と;エアバッグ16の内部において、ガス発生器の乗員D側を覆うように設けられ、膨張ガスの流れを制御するガス整流部材18とを備えている。
【0024】
図3は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置10に採用されるエアバッグ16のパネル構造を示す平面図である。エアバッグ16は、乗員D側に位置する円形のフロントパネル20と、ガス発生器14側に位置する円形のバックパネル22と、当該フロントパネル20とバックパネル22の外周に連結されるサイドパネル24とから構成されている。フロントパネル20は、バックパネル22よりも大きく成形されている。
【0025】
フロントパネル20の外周縫製部20aがサイドパネル24の縫製部24aと縫製によって連結され、バックパネル22の外周縫製部22aがサイドパネル24の縫製部24bと縫製によって連結される。
バックパネル22の中心には、ガス発生器14が挿入される連結孔26が形成されている。また、連結孔26の外側には、整流部材18との連結部28が形成されている。
【0026】
図4は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置10に採用される整流部材18のパネル構造を示す平面図である。図4において、(A)は縫製前のパネル30を示し、(B)は縫製された状態のパネル30を示す。
【0027】
図4(A)に示すように、ガス整流部材18は、左右対称なパネル30から成形され、ステアリングホイール12のリムに平行な面を時計の文字盤に見立てたときに、6時の方向に膨張ガスを排出する下方開放部32が形成されている。そして、パネル30の左右縁部同士を縫製(36a,36b)することで、ガス発生器14の乗員D側を覆うようになっている(図6参照)。
【0028】
ここで、「左右対称」とは、12時の位置と6時の位置を結んだ線(Y軸)に対して、左右対称である意味である。また、「乗員側」とは、ステアリングホイール12のリムを含む面に垂直な方向や、当該垂直な方向から若干傾斜した方向を含む意味である。
【0029】
図4(A)に示すように、縫製前の平面状のパネル30を、ステアリングホイール12に対して実際に設置する向きに合わせ、12時と6時とを結ぶ線(Y軸)と、3時と9時とを結ぶ線(X軸)とによって仮想的に4分割したときに、12時と3時との間の右上部領域と、9時と12時との間の左上部領域とに、長丸形状の第1の開口部34bと第2の開口部34aが各々形成されている。
【0030】
第1及び第2の開口部34b,34aの面積は、下方開放部32の面積(切り欠かれた部分の面積)よりも小さく、例えば、840mm~4800mmとすることができる。
【0031】
なお、上述したように、12時、3時、6時、9時の方向とは、ステアリングホイールを時計の文字盤に見立てた場合の位置であるが、車両直進時のステアリングの向きが基準であり、上又は進行方向を12時とし、この12時の位置を基準にして時計回りに90度回転した位置を3時、180度回転した位置を6時、270度回転した位置を9時とする。
【0032】
ガス整流部材18を成形するパネル30の中心には、ガス発生器14が挿入される連結孔35が形成されている。また、連結孔35の外側には、バックパネル22との連結部39が形成されている。
【0033】
パネル30の下方開放部32は、切り欠きとして成形されており、当該切り欠き32の縁部は縫製されない。ここで、下方開放部32を形成する切り欠きは、12時の位置と反対側の縁部が広い台形状に成形されている。また、ガス整流部材18(パネル30)の12時の方向には、下方開放部32よりも小さい開口面積の上方開放部38を形成することができる。ただし、図6図10図12に示すように、上方開放部38を形成することなく、上方部分を縫製によって閉じた状態とすることもできる。
【0034】
ガス整流部材18とエアバッグ16のバックパネル22とは、ガス発生器14の外周付近の連結部(28,39)において互いに連結される。そして、台形状の切り欠き32の下側の角部P1と連結部39の最も近い位置P2とを結んだ直線と、3時-9時方向の直線(X軸)とがなす角度θは、110°~170°、好ましくは、120°~160°とする。
発明者による実験の結果、上記のような角度θの設定とすることで、良好な展開挙動を得ることができた。
【0035】
図4(A),(B)において、パネル30は、中心を通るY軸(12時-6時方向)に沿って、折り重ねられ、縫製ライン36a,36bに沿って縫製されるようになっている。
【0036】
図5は、エアバッグ16のフロントパネル20とガス整流部材18との位置関係を示す正面図であり、展開したエアバッグ16をドライバD側から見た様子(一部透視)を示す。ここで、3時-9時の方向をX方向とし、12時-6時の方向をY方向としたときに、収容状態にあるエアバッグ16のフロントパネル20の中心位置とガス整流部材18の中心位置Cとが一致することが好ましいが、少なくとも、X方向及びY方向におけるずれを各々±30mm以下とする。
また、エアバッグ16の収容状態において、ガス整流部材18がフロントパネル20と接するように折り畳まれ、収容される。
【0037】
図6(A)は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ16が展開した状態を示す斜視図であり、同図(B)は(A)の一部を拡大したものである。図6(B)に示すように、収容状態のエアバッグ16の乗員D側には、エアバッグ16が展開したときに、ヒンジ42aを支点として開放するカバー42が設けられている。
【0038】
第1及び第2の開口部34b,34aの少なくとも一部は、エアバッグ16が展開したときに、カバー42の表面(ヒンジ42a)よりも乗員D側に突出した位置にくるように構成されている。更に、下方開放部32についても同様に、下方開放部32の少なくとも一部が、エアバッグ16が展開したときに、カバー42の表面(ヒンジ42a)よりも乗員D側に突出した位置にくるように構成されている。このような構造を採用することにより、エアバッグ16の展開によってカバー42を開放するまでの間は、カバー42を押し上げる力を最大限に発揮し、カバー42が開放した後にはガス整流部材18が本来の機能を発揮して、適切にガスの流れを制御することになる。
【0039】
上記のような本実施例によれば、エアバッグ装置10が作動したときに、ガス発生器14から放出されたガスは、エアバッグ16全体に充填される前にガス整流部材18に流れ込む。その後、多くの膨張ガスは下方開放部32からエアバッグ16の内部に流れ出し、一部の膨張ガスは第1の開口部34b及び第2の開口部34aからエアバッグ16の内部に流れ出ることになる。このため、エアバッグ16は展開初期の段階で6時の方向に速やかに展開し、乗員(ドライバD)とステアリングホイール12との間に入り込んで、乗員Dの腹部を速やかに拘束することができる。
【0040】
以下、本発明の第2実施例~第6実施例について説明するが、何れの実施例も上述した第1実施例のガス整流部材18のパネル構造を変更したものであるため、第1実施例との相違点のみを説明する。すなわち、上述した第1実施例と対応する構成要素については、下二桁を同一の符号として、3桁目のみを変更して示し、概ね同一の機能、構造の場合には重複した説明は省略する。
【0041】
図7は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材118のパネル130の構造を示す平面図である。この実施例においては、下方開放部132の台形形状が横長になっており、角度θが第1実施例よりも大きくなっている。また、パネル130の左右縁部136a,136bの間に1枚のパネル140を介在させて、ガス整流部材118としてのX軸方向の厚みを増加させている。
【0042】
図8は、本発明の第3実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材218のパネル230の構造を示す平面図である。この実施例においては、第2実施例と同様に、下方開放部232の台形形状が横長になっており、角度θが第1実施例よりも大きくなっている。また、第1及び第2の開口部234b,234aが長円ではなく、完全な円形となっている。
【0043】
図9は、本発明の第4実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材318のパネル330の構造を示す平面図である。この実施例においては、パネル330の形状自体は第1実施例と完全に同一であるが、縫製ライン336a,336bが曲線ではなく直線のみで成形されている。
【0044】
図10は、本発明の第5実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材418のパネル430の構造を示す平面図である。この実施例においては、他の実施例と異なる外観形状のパネル430を採用しており、Y方向の長さ(高さ)が比較的大きくなっている。このため、エアバッグ16が展開したときに、第1及び第2の開口部434b,434aがカバー42(図6参照)よりも、更に大きく乗員D側に突出することになる。
【0045】
図11は、本発明の第6実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材518のパネル530の構造を示す平面図である。この実施例においては、他の実施例と異なり、下方開放部532が極端に横長に成形されており、従って、角度θが非常に大きくなっている。このため、縫製後に形成される下方開放部532の開口面積が大きくなる。
【0046】
図12は、本発明の第7実施例に係るエアバッグ装置に採用されるガス整流部材618のパネル構造を示す平面図である。図12において、(A)は縫製前のパネル630を示し、(B)は縫製された状態のパネル630を示す。この実施例は、図8に示された第3実施例と類似しており、パネル630の外周における縫製箇所636のみが相違する。
【0047】
本実施例においては、パネル630の外周部分の縫製ライン636が、12時の位置で途切れることなく、連続している。そのため、(B)図に示すように、縫製後におけるガス整流部材618の12時側(上方部分)が完全に閉じた状態となる。そして、その結果、インフレータから放出された膨張ガスは、下方開放部632と第1及び第2の開口部634b,634aのみからエアバッグの内部に流出することになる。
【0048】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
図1
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12