(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】足場非依存性細胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20230607BHJP
【FI】
C12N5/077
(21)【出願番号】P 2021525327
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 IL2019051219
(87)【国際公開番号】W WO2020095305
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-07-01
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592024572
【氏名又は名称】イッサム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ナーミアス,ヤーコブ
(72)【発明者】
【氏名】コヘン,メラブ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/011805(WO,A2)
【文献】特開2006-246715(JP,A)
【文献】特開2001-278808(JP,A)
【文献】特表2017-536853(JP,A)
【文献】特表平11-506449(JP,A)
【文献】J. Clin. Invest. (1994) Vol.93, No.4, pp.1525-1532
【文献】The Journal of Biological Chemistry (1999) Vol.274, No.42, pp.30139-30145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合組織細胞の細胞群および液体のインビトロ細胞増殖培地を含む組成物であって、前記結合組織細胞の少なくとも70%が足場非依存性増殖が可能であり、前記足場非依存性結合組織細胞の少なくとも70%が表面に接着しておらず、かつ前記インビトロ細胞増殖培地が血清を欠いて
おり、前記結合組織細胞が線維芽細胞および脂肪細胞からなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
前記足場非依存性結合組織細胞が、インビトロ細胞増殖培地中で500万細胞/mLよりも大きい密度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
マイクロキャリアビーズを欠いている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
マトリックスをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記マトリックスが植物由来のマトリックスであり、前記足場非依存性結合組織細胞が脂肪細胞
であり、前記組成物が培養肉である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記マトリックスがコラーゲンマトリックス、真皮マトリックス、および代替の真皮マトリックスから選択され、前記組成物が皮革である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記マトリックスが、穀類、グルテンまたはマメ科植物由来である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
足場非依存性細胞株を生産する方法であって:
a. インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させるステップ;
b. 前記凝集体を液体中で単一の細胞に機械的に崩壊させるステップ;および
c. 少なくとも4世代、液体培養物中で前記単一の細胞を増殖させるステップを含み;
それにより、前記足場非依存性細胞株を生産し、
液体培養物は無血清であ
り、
前記足場依存性細胞株は線維芽細胞株であり、
前記足場非依存性細胞株は結合組織細胞の細胞群であり、前記結合組織細胞は線維芽細胞および脂肪細胞からなる群から選択される、方法。
【請求項9】
足場依存性細胞株の倍加時間を減少させるための方法であって:
a. インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させるステップ;
b. 前記凝集体を液体中で単一の細胞に機械的に崩壊させるステップ;および
c. 少なくとも4世代、液体培養物中で前記単一の細胞を増殖させるステップを含み;
それにより、前記足場依存性細胞株の倍加時間を減少させ、
液体培養物は無血清であ
り、
前記足場依存性細胞株は結合組織細胞の細胞群であり、前記結合組織細胞は線維芽細胞および脂肪細胞からなる群から選択される、方法。
【請求項10】
前記凝集体を増殖させることが非接着性のディッシュで行われる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記単一の細胞を増殖させることが、シェーカーまたはスピナーフラスコで行われる、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シェーカーまたはスピナーフラスコで増殖させることが、40RPM未満のスピン速度での最大1回の継代と、それに続く80RPMから100RPMの間のスピン速度での少なくとも3回の継代とを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記足場依存性細胞株が線維芽細胞株であり、前記足場非依存性細胞株が線維芽細胞株である、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記足場非依存性細胞株が、結合組織細胞
の細胞群であって、前記結合組織細胞の少なくとも70%が足場非依存性増殖が可能である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記減少させることが、倍加時間を50時間以下に低下させる、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[001]本出願は、「足場非依存性細胞およびその使用」と題された、2018年11月8日に出願された米国特許出願第62/757,275号の優先権の利益を主張し、その内容の全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[002]本発明は、足場依存性細胞からの足場非依存性細胞の生成の分野における。
【背景技術】
【0003】
[003]不死化細胞および初代細胞の両方の組織培養は、接着細胞および浮遊細胞の両方で行うことができる。懸濁液中で細胞を増殖させることには、1つの容器ではるかに高密度の細胞を培養できるという明らかな利点がある。バイオリアクターおよび他の懸濁液リアクターは、1mLあたり数千万細胞の密度での培養が可能である。しかしながら、多くの細胞型は接着細胞としてのみ培養できるため、実際に一度に培養できる細胞の数は厳しく制限される。細胞数の最大化が最も重要である商業的培養については(ワクチン生産など)、接着細胞株を懸濁液中で増殖できる細胞株に変換することが非常に重要である。凝集体やマイクロキャリアなしに、単一の細胞として懸濁液中で増殖した細胞は、さらに理想的である。
【0004】
[004]この時点まで、非常にわずかな細胞株が、接着から浮遊に容易に変換できる。接着的に増殖する間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)は、スフェロイドとして懸濁液中で増殖させることもできる。しかしながら、MSCは単一の細胞培養物としては増殖しないため、懸濁液中では他の細胞への足場が必要である。羊膜細胞、網膜細胞、および胚性幹細胞は、懸濁液中での培養に成功しているが、線維芽細胞は、接触(細胞接触またはマイクロキャリア)することなく増殖する浮遊細胞に実際に変換されていない。線維芽細胞は、懸濁液中での培養が特に難しいことがわかっている(Jordanら、An avian cell line designed for production of highly attenuated viruses,Vaccine 2009)。線維芽細胞は、メチルセルロースなどの担体を用いて増殖されており、培養条件によっては凝集体および/または病的な細胞が生成されるが、完全に懸濁した健全な線維芽細胞株は、依然として大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
[005]本発明は、足場非依存性増殖が可能な結合組織細胞の濃縮された細胞群を提供する。それらの細胞を含む組成物、ならびにそれらの細胞を生産する方法も提供される。
[006]第1の態様によれば、結合組織細胞の濃縮された細胞群が提供され、ここで結合組織細胞の少なくとも70%が足場非依存性増殖が可能である。
【0006】
[007]別の態様によれば、本発明の濃縮された細胞群を含む組成物が提供される。
[008]別の態様によれば、足場非依存性細胞株を生産する方法であって、インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させること、凝集体を液体中で単一の細胞に機械的に崩壊させること、および少なくとも4世代、液体培養物中で単一の細胞を増殖させることを含み;それにより、足場非依存性細胞株を生産する、方法が提供される。
【0007】
[009]足場依存性細胞株の倍加時間を減少させるための方法であって、インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させること、凝集体を液体中で単一の細胞に機械的に崩壊させること、および少なくとも4世代、液体培養物中で単一の細胞を増殖させることを含み;それにより、足場依存性細胞株の倍加時間を増加させる、方法。
【0008】
[010]いくつかの実施形態によれば、結合組織細胞の少なくとも95%は、足場非依存性増殖が可能である。いくつかの実施形態によれば、結合組織細胞の100%は、足場非依存性増殖が可能である。
【0009】
[011]いくつかの実施形態によれば、足場非依存性結合組織細胞の少なくとも20%が活発に増殖している。
[012]いくつかの実施形態によれば、足場非依存性結合組織細胞は、少なくとも4回の細胞分裂の間、足場非依存性増殖が可能である。
【0010】
[013]いくつかの実施形態によれば、結合組織細胞は、線維芽細胞または線維芽細胞から自然に分化し得る細胞型である。いくつかの実施形態によれば、結合組織細胞は線維芽細胞である。いくつかの実施形態によれば、線維芽細胞から自然に分化し得る細胞型は、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、骨細胞、筋線維芽細胞、筋芽細胞および筋細胞からなる群から選択される。
【0011】
[014]いくつかの実施形態によれば、足場非依存性結合組織細胞は、インタクトな細胞膜を含む。
[015]いくつかの実施形態によれば、濃縮された細胞群は、50時間以下の倍加時間を含む。いくつかの実施形態によれば、濃縮された細胞群は、18時間から22時間の間の倍加時間を含む。
【0012】
[016]いくつかの実施形態によれば、足場非依存性結合組織細胞は、液体培養において少なくとも85%が単一の細胞として増殖する。
[017]いくつかの実施形態によれば、結合組織細胞は、哺乳動物の結合組織細胞である。いくつかの実施形態によれば、結合組織細胞は鳥類の結合組織細胞である。
【0013】
[018]いくつかの実施形態によれば、結合組織細胞は、培養肉を生産することが可能である。
[019]いくつかの実施形態によれば、感染後に濃縮された細胞群によって生産されるウイルスの収量は、感染後に同数の足場依存性結合組織細胞によって生産される収量と等しいかまたはより多い。
【0014】
[020]いくつかの実施形態によれば、足場非依存性線維芽細胞は、接着性増殖できない。
[021]いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、液体のインビトロ細胞増殖培地をさらに含み、足場非依存性結合組織細胞の少なくとも70%が表面に接着していない。
【0015】
[022]いくつかの実施形態によれば、インビトロ細胞増殖培地は血清を欠いている。
[023]いくつかの実施形態によれば、足場非依存性結合組織細胞は、インビトロ細胞増殖培地中で500万細胞/mLよりも大きい密度である。
【0016】
[024]いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、マイクロキャリアビーズを欠いている。
[025]いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、マトリックスをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、マトリックスは、野菜由来のマトリックスであり、足場非依存性結合組織細胞は脂肪細胞に分化し、組成物は培養肉である。いくつかの実施形態によれば、マトリックスは、コラーゲンマトリックス、真皮マトリックスおよび代替の真皮マトリックスから選択され、組成物は皮革である。
【0017】
[026]いくつかの実施形態によれば、凝集体を増殖させることは、非接着性のディッシュで行われる。
[027]いくつかの実施形態によれば、単一の細胞を増殖させることは、シェーカーまたはスピナーフラスコで行われる。
【0018】
[028]いくつかの実施形態によれば、シェーカーまたはスピナーフラスコで増殖させることは、40RPM未満のスピン速度での最大1回の継代と、それに続く80RPMから100RPMの間のスピン速度での少なくとも3回の継代を含む。
【0019】
[029]いくつかの実施形態によれば、足場依存性細胞株は線維芽細胞株であり、足場非依存性細胞株は線維芽細胞株である。
[030]いくつかの実施形態によれば、足場非依存性細胞株は、本発明の濃縮された細胞群である。
【0020】
[031]いくつかの実施形態によれば、減少させることは、倍加時間を50時間以下に低下させる。
[032]本発明のさらなる実施形態および適応性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているものの、説明のみのために与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】[033]
図1:プラスチック上で増殖させたDF-1線維芽細胞の写真。
【
図2】[034]
図2:播種16時間後にAggrewell上に形成されたDF-1線維芽細胞のスフェロイドの写真。
【
図3】[035]
図3:非接着性の10cmペトリディッシュ上で増殖するスフェロイド、大きな凝集体、および単一の細胞の写真(4日目)。
【
図4】[036]
図4:様々な継代でのシェーカーフラスコ内のDF-1細胞の倍加時間の棒グラフ。
【
図5】[037]
図5:単一の細胞懸濁液として増殖している34回目の継代でのDF-1足場非依存性細胞の写真を示す図である。
【
図6-1】[038]
図6A~E:(6A~D)継代数による(6A)FMT-SCF-1、FMT-SCF-2、FMT-SCF-3、(6B)FMT-SCF-4、FMT-SCF-5、(6C)FMT-SBF-1、FMT-SCF-2、および(6D)FMT-SCF-3の倍加時間および生存率の組み合わせ棒および線グラフ。棒は各継代での倍加時間を表し、線は生存率を表す。
【
図6-2】[038]
図6A~E:(6A~D)継代数による(6A)FMT-SCF-1、FMT-SCF-2、FMT-SCF-3、(6B)FMT-SCF-4、FMT-SCF-5、(6C)FMT-SBF-1、FMT-SCF-2、および(6D)FMT-SCF-3の倍加時間および生存率の組み合わせ棒および線グラフ。棒は各継代での倍加時間を表し、線は生存率を表す。
【
図6-3】[038]
図6A~E:(6A~D)継代数による(6A)FMT-SCF-1、FMT-SCF-2、FMT-SCF-3、(6B)FMT-SCF-4、FMT-SCF-5、(6C)FMT-SBF-1、FMT-SCF-2、および(6D)FMT-SCF-3の倍加時間および生存率の組み合わせ棒および線グラフ。棒は各継代での倍加時間を表し、線は生存率を表す。
【
図6-4】[038]
図6A~E:(6A~D)継代数による(6A)FMT-SCF-1、FMT-SCF-2、FMT-SCF-3、(6B)FMT-SCF-4、FMT-SCF-5、(6C)FMT-SBF-1、FMT-SCF-2、および(6D)FMT-SCF-3の倍加時間および生存率の組み合わせ棒および線グラフ。棒は各継代での倍加時間を表し、線は生存率を表す。
【
図6-5】[038]
図6A~E:(6A~D)継代数による(6A)FMT-SCF-1、FMT-SCF-2、FMT-SCF-3、(6B)FMT-SCF-4、FMT-SCF-5、(6C)FMT-SBF-1、FMT-SCF-2、および(6D)FMT-SCF-3の倍加時間および生存率の組み合わせ棒および線グラフ。棒は各継代での倍加時間を表し、線は生存率を表す。
【
図6-6】(6E)単一の細胞として顕著な(>90%)増殖を示す様々な細胞株の細胞懸濁液の顕微鏡写真。
【
図6-7】(6E)単一の細胞として顕著な(>90%)増殖を示す様々な細胞株の細胞懸濁液の顕微鏡写真。
【
図7-1】[039]
図7A~B:脂肪細胞培養の開始から4日目と7日目にLipidTOXで染色された(7A)ニワトリおよび(7B)ウシ脂肪細胞の顕微鏡写真。
【
図7-2】[039]
図7A~B:脂肪細胞培養の開始から4日目と7日目にLipidTOXで染色された(7A)ニワトリおよび(7B)ウシ脂肪細胞の顕微鏡写真。
【
図8-1】[040]
図8A~F:(8A-C)培養鶏肉のナゲットおよび(8D-F)培養牛肉の写真。(8A)グリルした培養鶏肉の照り焼きナゲットの写真。(8B)培養鶏肉のナゲット(左下)および農場飼育鶏肉のナゲット(右上)の写真。(8C)培養(左下)および農場飼育(右上)鶏肉のナゲットの断面写真。(8D~F)(8D)ボウル内の未調理の培養牛肉、(8E)培養牛肉のケバブ、および(8F)培養牛肉のケバブの断面の写真。
【
図8-2】[040]
図8A~F:(8A-C)培養鶏肉のナゲットおよび(8D-F)培養牛肉の写真。(8A)グリルした培養鶏肉の照り焼きナゲットの写真。(8B)培養鶏肉のナゲット(左下)および農場飼育鶏肉のナゲット(右上)の写真。(8C)培養(左下)および農場飼育(右上)鶏肉のナゲットの断面写真。(8D~F)(8D)ボウル内の未調理の培養牛肉、(8E)培養牛肉のケバブ、および(8F)培養牛肉のケバブの断面の写真。
【
図8-3】[040]
図8A~F:(8A-C)培養鶏肉のナゲットおよび(8D-F)培養牛肉の写真。(8A)グリルした培養鶏肉の照り焼きナゲットの写真。(8B)培養鶏肉のナゲット(左下)および農場飼育鶏肉のナゲット(右上)の写真。(8C)培養(左下)および農場飼育(右上)鶏肉のナゲットの断面写真。(8D~F)(8D)ボウル内の未調理の培養牛肉、(8E)培養牛肉のケバブ、および(8F)培養牛肉のケバブの断面の写真。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[041]いくつかの実施形態では、本発明は、足場非依存性増殖が可能である結合組織細胞の濃縮された細胞群を提供する。本発明はさらに、それらの細胞を含む組成物、およびそれらの細胞を生産する方法に関する。足場依存性細胞株の倍加時間を減少させる方法も提供される。
【0023】
[042]第1の態様により、結合組織細胞の濃縮された細胞群が提供され、ここで、前記濃縮された細胞群は、足場非依存性増殖が可能な結合組織細胞を含む。
[043]別の態様により、足場非依存性結合組織細胞の細胞群が提供される。
【0024】
[044]本明細書で使用される場合、「足場非依存性増殖」という用語は、基質に接着していないままの細胞増殖を指す。足場非依存性増殖は、非接着性増殖または液体培養を指す場合もある。多くの細胞株は、増殖のために接着する基質が必要である。同様に、生物の多くの細胞は、増殖するために細胞-細胞接触が必要である。いくつかの実施形態では、足場非依存性増殖は、細胞が培地に囲まれている増殖である。いくつかの実施形態では、足場非依存性増殖は、細胞が別の細胞または表面に接触していないものである。いくつかの実施形態では、表面は、組織培養ディッシュまたはマイクロビーズなどの人工表面である。いくつかの実施形態では、表面は別の細胞である。いくつかの実施形態では、足場非依存性増殖は、スフェロイドまたは凝集体としての増殖ではない。いくつかの実施形態では、足場非依存性増殖は、溶液中の単一の細胞としての増殖である。本明細書で使用される場合、「足場非依存性増殖が可能な結合組織細胞」および「足場非依存性結合組織細胞」という用語は同義的であり、交換可能に使用される。
【0025】
[045]いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%は、液体培養において単一の細胞として増殖する。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、少なくとも70%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも75%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも80%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも85%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも90%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも95%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも97%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも99%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、70%から90%の間の足場非依存性結合組織細胞が、液体培養において単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、少なくとも90%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、70%から80%の間の足場非依存性結合組織細胞が、液体培養において単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、液体培養は血清を含む。いくつかの実施形態では、液体培養は無血清である。いくつかの実施形態では、液体培養は血清を含み、細胞の少なくとも90%が単一の細胞として増殖する。いくつかの実施形態では、液体培養は無血清であり、70%から80%の間の細胞が単一の細胞として増殖する。
【0026】
[046]本明細書で使用される場合、「結合組織細胞」という用語は、結合組織を構成する様々な細胞型を指す。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、線維芽細胞、軟骨細胞、骨細胞、脂肪細胞、および平滑筋細胞から選択される。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、骨細胞、筋線維芽細胞、衛星細胞、筋芽細胞および筋細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、脂肪細胞、骨芽細胞、骨細胞、筋線維芽細胞、衛星細胞、筋芽細胞、および筋細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は、胚性線維芽細胞ではない。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は、胚性線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は、胎児線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞は真皮線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、線維芽細胞または線維芽細胞から分化し得る細胞型である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、間葉系幹細胞(MSC)ではない。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、MSCに由来する細胞ではない。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、MSCから誘導することができない細胞である。いくつかの実施形態では、細胞型は、線維芽細胞から自然に分化し得る。いくつかの実施形態では、細胞型は、自然の線維芽細胞分化から生じる。本明細書で使用される場合、「自然分化という用語」は、実験室で人工的に達成できるようなトランス分化ではなく、天然で生じる分化を指すために使用される。いくつかの実施形態では、自然分化は脱分化ではない。いくつかの実施形態では、線維芽細胞から自然に分化し得る細胞型は、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、骨細胞、筋線維芽細胞、筋芽細胞および筋細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、線維芽細胞から自然に分化し得る細胞型は、脂肪細胞、骨芽細胞、骨細胞、筋線維芽細胞、筋芽細胞および筋細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、線維芽細胞から自然に分化し得る細胞型は、脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、多能性細胞ではない。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、間葉系幹細胞ではない。
【0027】
[047]いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物はウシである。いくつかの実施形態では、ウシは乳牛である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は鳥類細胞である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は魚細胞である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、食用動物からのものである。いくつかの実施形態では、細胞は家畜からのものである。いくつかの実施形態では、家畜動物は、乳牛、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、魚およびシチメンチョウから選択される。いくつかの実施形態では、家畜動物は、乳牛、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、魚、アヒル、ガチョウ、およびシチメンチョウから選択される。いくつかの実施形態では、家畜動物は、乳牛、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、およびシチメンチョウから選択される。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、鳥類細胞およびウシ細胞から選択される。いくつかの実施形態では、ウシ細胞は乳牛細胞である。いくつかの実施形態では、鳥類細胞はニワトリ細胞である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、乳牛細胞およびニワトリ細胞から選択される。いくつかの実施形態では、ニワトリ細胞はニワトリ線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、乳牛細胞は乳牛線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、ニワトリ線維芽細胞は、DF-1細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は不死化されている。いくつかの実施形態では、細胞は不死化されていない。いくつかの実施形態では、細胞は一次細胞に由来する。
【0028】
[048]いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%は、足場非依存性増殖が可能な結合組織細胞である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群の100%は、足場非依存性増殖が可能な結合組織細胞である。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、足場非依存性増殖が可能な結合組織細胞の細胞群である。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、足場非依存性結合組織細胞の細胞群である。いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞の細胞群は本質的に純粋である。いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞の細胞群は、足場依存性細胞を欠いている。いくつかの実施形態では、本質的に純粋であるものは、少なくとも70、75、8、85、90、95、97、99または100%の純度を含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0029】
[049]いくつかの実施形態では、結合組織細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%は、足場非依存性増殖が可能である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、結合組織細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%は、足場非依存性細胞である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも70%が足場非依存性増殖が可能である。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも95%が足場非依存性増殖が可能である。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも99%が足場非依存性増殖が可能である。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも100%が足場非依存性増殖が可能である。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、接着的に増殖する細胞を含まない。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、接着細胞を含まない。
【0030】
[050]いくつかの実施形態では、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または100%の足場非依存性結合組織細胞が活発に増殖している。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。活発な増殖は、増殖細胞がポジティブに染色されるKi67染色によって評価できる。いくつかの実施形態では、細胞は突然変異誘発されない。いくつかの実施形態では、細胞は照射されない。
【0031】
[051]いくつかの実施形態では、足場非依存性増殖が可能な細胞は、培地および/または非接着プレートにおける増殖中に生存している。いくつかの実施形態では、生存細胞はインタクトな細胞膜を有する。PI、Hoechst、Trypan Blueなどの生/死色素を用いた生/死染色を行って、生存細胞のパーセンテージを評価し、ならびに細胞膜完全性を評価することができる。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%の生存細胞を含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0032】
[052]いくつかの実施形態では、足場非依存性細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、7、10、12、15、17、20、22、25、27、30、32、34、35、37または40の細胞分裂で、足場非依存性増殖が可能である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。細胞分裂は、本明細書において継代とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、足場非依存性細胞は、無限に足場非依存性増殖が可能である。いくつかの実施形態では、足場非依存性細胞は、少なくとも1継代、足場非依存性増殖が可能である。足場非依存性細胞は、少なくとも4継代、足場非依存性増殖が可能である。足場非依存性細胞は、少なくとも34継代、足場非依存性増殖が可能である。いくつかの実施形態では、足場非依存性細胞は、接着性増殖できない。いくつかの実施形態では、足場非依存性細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%は、接着性増殖できない。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0033】
[053]いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、60、55、50、45、40、39、39、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21または20時間未満の倍加時間を含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、倍加時間は平均倍加時間である。いくつかの実施形態では、倍加時間は50時間以下である。いくつかの実施形態では、倍加時間は40時間以下である。いくつかの実施形態では、倍加時間は35時間以下である。いくつかの実施形態では、倍加時間は30時間以下である。いくつかの実施形態では、倍加時間は28時間以下である。いくつかの実施形態では、倍加時間は26時間以下である。いくつかの実施形態では、倍加時間は25時間以下である。いくつかの実施形態では、倍加時間は22時間以下である。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、22時間から18時間の間の倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、25時間から18時間の間の倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、21時間から26時間の間の倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、22時間から26時間の間の倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、21時間から27時間の間の倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、26時間から34時間の間の倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、28時間から32時間の間の倍加時間を含む。
【0034】
[054]いくつかの実施形態では、倍加時間は、足場依存性細胞株の倍加時間とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、倍加時間は、等価の足場依存性細胞または細胞株の倍加時間とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、同じ細胞型の足場依存性細胞株と比較して、減少した倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、浮遊細胞株と比較して、減少した倍加時間を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、胚性幹細胞(ESC)と比較して、減少した倍加時間を含む。ESCの倍加時間は、当該技術分野において周知で、36~40時間の間であり、平均して約38時間である。
【0035】
[055]いくつかの実施形態では、減少は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%の倍加時間の減少である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、足場非依存性DF-1細胞株は、13~24時間の間の倍加時間を有する。いくつかの実施形態では、足場依存性DF-1細胞株は、13~24時間の間の倍加時間を有する。いくつかの実施形態では、浮遊細胞株は、24~60時間の倍加時間を有する。
【0036】
[056]いくつかの実施形態では、結合組織細胞の濃縮された細胞群は、その結合組織の細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、細胞マーカーは、同じ結合組織の足場依存性細胞において発現されるレベルと匹敵するレベルで発現される。いくつかの実施形態では、匹敵するとは、足場依存性細胞のレベルの+/-5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%以内である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、細胞型の少なくとも1、2、3、4、または5つの細胞マーカーが発現される。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、足場非依存性細胞は、結合組織細胞型の時点でマーカーの発現により依然として識別可能である。いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞は、等価の足場依存性細胞の細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、マーカーは、同等のレベルで発現される。
【0037】
[057]本明細書で使用される場合、「等価の足場依存性細胞」という用語は、本発明の方法によって足場非依存性細胞に変換された足場依存性細胞を指す。それらは同じ細胞型であり、非接着的に増殖する能力が変更されている以外は改変されていないので、細胞は等価である。
【0038】
[058]遺伝子およびタンパク質発現を測定する方法は、当該技術分野で周知である。特定の細胞型の細胞マーカーは、タンパク質マーカー、および/またはRNAマーカーであり得る。例えば、RNAは、いくつか方法を挙げると、RT-PCR、定量PCR、ノーザンブロッティング、またはインサイツハイブリダイゼーションによって測定できる。タンパク質発現は、例えば、FACS、ウエスタンブロッティング、ELISAまたは免疫組織化学/免疫染色によって測定することができる。細胞マーカーの発現を正確に測定することができる任意の方法を採用してもよい。
【0039】
[059]様々な結合組織細胞型のマーカーは当該技術分野で周知であり、例えば、線維芽細胞のマーカーとしてのCD34、アルファアクチン、および線維芽細胞特異的タンパク質1(FSP1);軟骨細胞についてのアグリカン、II型コラーゲン、およびCRTAC1;脂肪細胞についてのPref-1、FABP4、アディポネクチンおよびレプチン;骨細胞についてのDMP-1、FGF-23およびビグリカン、骨芽細胞についてのアルカリホスファターゼ、BAP1、コラーゲンIおよびオステオカルシン、平滑筋芽細胞におけるアルファ平滑筋アクチン、カルポニン1、VE-カドヘリンおよびデスミンを含む。マーカーの他の例は、いくつか例を挙げると、R&D Systems(rndsystems.com)およびCell Signaling Technology(cellsignal.com)など、抗体を生産している多くの企業のウェブサイトに見出すことができる。
【0040】
[060]いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、培養肉を生産することが可能である。いくつかの実施形態では、結合組織細胞は、培養肉の生産に使用するためのものである。
【0041】
[061]別の態様により、培養肉を生産するための本発明の細胞群の使用が提供される。
[062]別の態様により、本発明の細胞群を含む組成物が提供される。
[063]いくつかの実施形態では、組成物は、マトリックスをさらに含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは有機マトリックスである。いくつかの実施形態では、マトリックスは無機マトリックスである。いくつかの実施形態では、マトリックスは、コラーゲンまたはコラーゲンベースのマトリックスである。いくつかの実施形態では、マトリックスは真皮マトリックスである。いくつかの実施形態では、マトリックスは真皮代替マトリックスである。いくつかの実施形態では、マトリックスは無血清マトリックスである。いくつかの実施形態では、マトリックスはスキャフォールドである。いくつかの実施形態では、スキャフォールドは多孔質スキャフォールドである。多孔質スキャフォールドの例には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール酸、PLGA、およびヒドロキシプロピルセルローススキャフォールドが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、マトリックスは生分解性である。
【0042】
[064]いくつかの実施形態では、マトリックスは、植物由来のマトリックスである。いくつかの実施形態では、マトリックスは、野菜由来のマトリックスである。いくつかの実施形態では、植物は野菜である。いくつかの実施形態では、植物は、穀類、グルテンおよびマメ科植物から選択される。いくつかの実施形態では、植物は、マメ科植物、マメ科、穀類科、および擬穀類から選択される。マメ科には、例えば、アルファルファ、エンドウ豆、豆、レンズ豆、イナゴマメ、大豆、およびピーナッツが含まれる。穀類科には、例えば、トウモロコシ、米、小麦、大麦、ソルガム、キビ、オーツ麦、ライ麦、トリトケール、およびフォニオが含まれる。擬穀類には、例えば、ソバ、キノア、チアが含まれる。いくつかの実施形態では、マメ科植物はそう(so)またはエンドウ豆である。いくつかの実施形態では、マメ科植物は大豆である。いくつかの実施形態では、植物由来のマトリックスは、大豆タンパク質マトリックスである。いくつかの実施形態では、植物由来のマトリックスは、エンドウ豆タンパク質マトリックスである。
【0043】
[065]いくつかの実施形態では、本発明の細胞は、マトリックス中で培養される。いくつかの実施形態では、本発明の細胞は、マトリックス上に層状になっている。いくつかの実施形態では、本発明の細胞は、マトリックスと混合される。いくつかの実施形態では、本発明の細胞および植物タンパク質は混合される。いくつかの実施形態では、植物タンパク質は、エンドウ豆タンパク質および大豆タンパク質から選択される。いくつかの実施形態では、植物タンパク質は大豆タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、タンパク質の高水分押出物である。
【0044】
[066]いくつかの実施形態では、マトリックスは灌流システム内にある。いくつかの実施形態では、マトリックスは、食用中空繊維カートリッジである。いくつかの実施形態では、マトリックスは、マトリックス全体に均一に分布した栄養素供給をさらに含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、統合血管ネットワークをさらに含む。例えば、カートリッジの繊維は、セルロース(FiberCell、#C3008)、酢酸セルロースなどの食用の天然または合成ポリマーでできており、細胞は繊維を取り囲む塊を形成する。セルロースは、GRASとしてFDAに承認されており、水分を制御するために使用され、および細切りチーズ、パン、および様々なソースの安定剤である。
【0045】
[067]いくつかの実施形態では、本発明の細胞およびマトリックスを含む組成物は、培養肉である。いくつかの実施形態では、培養肉中の細胞は線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、培養肉中の細胞は脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、培養肉中の細胞は筋芽細胞である。いくつかの実施形態では、培養肉は食用肉である。本発明のいくつかの実施形態によれば、食用肉は、約100×106細胞/グラムから約500×106細胞/グラムの範囲の密度、例えば、約200×l06細胞/グラムの密度を有するナゲットのパテの形態である。
【0046】
[068]いくつかの実施形態では、培養肉は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45または50%の細胞を含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、培養肉は、少なくとも20%の細胞を含む。いくつかの実施形態では、培養肉は、少なくとも30%の細胞を含む。いくつかの実施形態では、培養肉は培養鶏肉であり、少なくとも20%の鶏肉脂肪細胞を含む。いくつかの実施形態では、培養肉は培養牛肉であり、少なくとも30%の牛肉脂肪細胞を含む。いくつかの実施形態では、パーセンテージは重量のパーセンテージである。いくつかの実施形態では、パーセンテージは質量のパーセンテージである。いくつかの実施形態では、パーセンテージは体積のパーセンテージである。
【0047】
[069]いくつかの実施形態では、本発明の細胞およびマトリックスを含む組成物は、皮革である。いくつかの実施形態では、皮革は合成皮革である。いくつかの実施形態では、本発明の細胞およびコラーゲンマトリックス、真皮マトリックスまたは代替の真皮マトリックスを含む組成物は、皮革である。いくつかの実施形態では、組成物は、皮革として構成される。いくつかの実施形態では、組成物は、皮革のように見えるおよび/または感じるように構成される。いくつかの実施形態では、皮革の細胞は、線維芽細胞である。
【0048】
[070]本明細書で使用される場合、「培養肉」という用語は、動物細胞のインビトロ培養によって生産された肉を指す。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、培養肉の生産のために血清なしで増殖される。いくつかの実施形態では、培養肉の生産の使用のための濃縮された細胞群は、遺伝子改変されていない。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、培養肉の生産のために特定の細胞型に分化する。いくつかの実施形態では、特定の細胞型は、脂肪細胞、筋細胞、骨芽細胞、骨細胞および軟骨細胞から選択される。いくつかの実施形態では、特定の細胞型は、脂肪細胞、筋細胞、骨芽細胞、および骨細胞から選択される。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、培養肉の生産のために特定の組織に分化する。いくつかの実施形態では、特定の組織は、脂肪、筋肉、骨、および軟骨から選択される。
【0049】
[071]培養肉を生産する方法は、当該技術分野において周知であり、任意の既知の方法を使用することができる。そのような方法の1つは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願PCT/IL2017/050790に見出される。
【0050】
[072]いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は、目的の生産物を生産する際に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、目的の生産物はワクチンである。いくつかの実施形態では、目的の生産物は、グリコシル化タンパク質である。いくつかの実施形態では、目的の生産物は、ウイルスまたはウイルス断片である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、生ウイルス、変異ウイルス、弱毒化ウイルス、およびウイルス断片から選択される。生産は商業的に興味深いであろう。
【0051】
[073]別の態様により、本発明の濃縮された細胞群のワクチン生産における使用が提供される。培養線維芽細胞でのワクチン生産は当該技術分野で周知であり、ウイルスが細胞内で増加することとなり(上清中または溶解した細胞から)大量のウイルスを産生するように、線維芽細胞を生ウイルスおよび/または弱毒化ウイルスに感染させ、ワクチンまたはワクチンの成分として使用し得ることを含み得る。
【0052】
[074]本明細書で使用される場合、「ウイルス」という用語は、天然に存在するウイルスのみでなく、弱毒化ウイルス、再集合ウイルス、ワクチン株、ならびに組換えウイルスおよびそれらに由来するウイルスベクターもまた含む。使用できるウイルスの例には、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ヘルペスウイルス、ヘパドナウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、サーコウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、ビルナウイルス(birnavriruses)およびレトロウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
[075]いくつかの実施形態では、感染後に濃縮された細胞群によって生産されるウイルスおよび/またはワクチンの収量は、等価の足場依存性結合組織細胞によって生産される収量に等しいかまたはより多い。いくつかの実施形態では、収量は、等しい数の等価の足場依存性結合組織細胞よりも多い。いくつかの実施形態では、収量は、同じ容量の容器内の等価の足場依存性結合組織細胞によって生産されるウイルスおよび/またはワクチンよりも多い。いくつかの実施形態では、収率は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%より多い。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0054】
[076]いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は培地中にある。いくつかの実施形態では、培地は無血清培地である。いくつかの実施形態では、培地は化学的に定義された培地である。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群は凍結乾燥される。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群はインビトロである。いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群はエクスビボである。
【0055】
[077]本明細書で使用される場合、「化学的に定義された培地」という用語は、細胞のインビトロ培養に適した増殖培地を指し、その培地の全ての化学成分は既知である。化学的に定義された培地は当該技術分野で周知であり、本明細書に記載のものを含めて、そのような任意の培地、例えば非限定的な例として、UltraCULTURE(商標)培地(Lonza)、XerumFree(商標)培地(TNC Bio)およびBIO-MPM-1 SFM(Biological Industries)を使用してもよい。
【0056】
[078]別の態様により、本発明の濃縮された細胞群および液体培地を含む組成物が提供される。
[079]いくつかの実施形態では、液体培地は、インビトロ細胞増殖培地である。いくつかの実施形態では、液体培地は、浮遊細胞増殖培地である。いくつかの実施形態では、液体培地は、接着細胞増殖培地である。いくつかの実施形態では、液体培地は、化学的に定義された培地である。いくつかの実施形態では、培地は、無血清培地である。いくつかの実施形態では、液体培地は、凍結溶液である。いくつかの実施形態では、組成物は、解凍され、増殖培地に再懸濁されるように製剤化される。いくつかの実施形態では、凍結溶液は、DMSOを含む。いくつかの実施形態では、凍結溶液は、ウシ胎児血清を含む。いくつかの実施形態では、液体培地は、薬学的に許容される溶液である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される溶液は、薬学的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントを含む。いくつかの実施形態では、液体培地は、酸を含む。いくつかの実施形態では、酸は、アスコルビン酸である。いくつかの実施形態では、酸は、プルロン酸である。
【0057】
[080]本明細書で使用される場合、「液体インビトロ増殖培地」は、細胞のインビトロ増殖に十分な栄養素を含む液体を指す。いくつかの実施形態では、培地は、組織培養培地である。インビトロ増殖培地および組織培養培地は当該技術分野で周知であり、増殖している特定の細胞に合わせて調整することができる。任意の既知の培地を使用することができる。いくつかの実施形態では、培地は、血清を含む。いくつかの実施形態では、培地は、無血清である。いくつかの実施形態では、培地は化学的に定義される。いくつかの実施形態では、培地は、ウイルス粒子、および/またはレトロウイルス粒子を欠いている。いくつかの実施形態では、培地は浮遊細胞培地である。いくつかの実施形態では、培地は、DMEM基本培地を含む。いくつかの実施形態では、培地は、DMEM/F12基本培地を含む。いくつかの実施形態では、培地は、UltraCULTURE培地を含む。いくつかの実施形態では、培地は、抗生物質を含む。いくつかの実施形態では、培地は、抗生物質を欠いている。いくつかの実施形態では、培地は、界面活性剤で補充される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、プルロン酸を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、プルロニック(登録商標)F68である。いくつかの実施形態では、培地は、プルロン酸で補充される。いくつかの実施形態では、培地は、プルロニック(登録商標)F68で補充される。いくつかの実施形態では、培地は、L-グルタミンおよび/またはその誘導体で補充される。いくつかの実施形態では、培地は、GlutaMAXで補充される。いくつかの実施形態では、培地は、10%FBS、GlutaMAXおよび0.01%プルロニック(登録商標)F68を含むDMEMである。いくつかの実施形態では、培地は、15%FBS、GlutaMAXおよび0.01%プルロニック(登録商標)F68を含むDMEMである。いくつかの実施形態では、培地は、15%FBS、GlutaMAXおよび0.01%プルロニック(登録商標)F68を含むDMEM/F12である。いくつかの実施形態では、培地は、0.01%プルロニック(登録商標)F68を有するUltraCULTURE、GlutaMAXである。いくつかの実施形態では、培地は、CHO細胞培地に基づいており、CHO培地の例には、PowerCHO、PeproGrow、およびEX-CELLが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
[081]本明細書で使用される場合、「担体」、「賦形剤」、または「アジュバント」という用語は、活性剤ではない医薬組成物の任意の成分を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、非毒性、不活性固体、半固体液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料、任意のタイプの製剤補助剤、または単に滅菌水性培地、例えば食塩水を指す。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖質、コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽、ゼラチン、タルク;ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油などの油脂類;プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類、寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水、リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬製剤に使用される他の非毒性適合物質である。本明細書で担体として役立つことができる物質のいくつかの非限定的な例には、糖質、デンプン、セルロースおよびその誘導体、粉末(powered)トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール類、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リン酸塩緩衝液、ココアバター(坐剤ベース)、乳化剤、および他の医薬製剤に使用される他の非毒性の薬学的に適合物質が含まれる。ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤および潤滑剤、ならびに着色剤、香味剤、賦形剤、安定剤、抗酸化剤、および保存剤もまた存在してもよい。本明細書で企図される組成物を製剤化するために、任意の非毒性、不活性、および効果的な担体を使用してもよい。この点に関して適切な薬学的に許容される担体、賦形剤、および希釈剤は、The Merck Index、第13版、Budavariら、編、Merck&Co.、Inc.、Rahway、N.J.(2001);CTFA(化粧品・トイレタリー・フレグランス協会)International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、第10版(2004);および「Inactive Ingredient Guide,」、米国食品医薬品局(FDA)医薬品評価研究センター(CDER)管理局に記載されるもののように、当業者に周知であり、これら全ての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本組成物において有用な薬学的に許容される賦形剤、担体および希釈剤の例には、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、およびDMSOが含まれる。これらの追加の不活性成分、ならびに効果的な製剤および投与手順は、当技術分野で周知であり、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるGoodman and Gillman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Gilmanら編、Pergamon Press(1990);Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.(1990);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia、Pa.、(2005)などの標準的な教科書に記載されている。ここに記載の組成物はまた、血清中のペプチドまたはポリペプチドの半減期を増加させるリポソーム、ISCOMS、徐放性粒子、および他のビヒクルなどの人工的に作成された構造に含まれ得る。リポソームには、エマルション、発泡体、ミセル(micelies)、不溶性単層、液晶、リン脂質分散液、ラメラ層などが含まれる。ここに記載されているペプチドと共に使用するためのリポソームは、一般に中性および負に帯電したリン脂質およびコレステロールなどのステロールを含む標準的な小胞形成脂質から形成される。脂質の選択は、一般的にリポソームのサイズおよび血中の安定性などの考慮事項によって決定される。リポソームを調製するための様々な方法が、例えば、Coligan、J.E.ら、Current Protocols in Protein Science、1999、John Wiley&Sons、Inc.、New Yorkによって概説されるように、利用可能であり、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、および第5,019,369号も参照されたい。
【0059】
[082]担体は、全体として、本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%から約99.99999重量%を含み得る。
[083]いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の細胞以外の細胞を欠いている。いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の細胞に接着する支持細胞を欠いている。いくつかの実施形態では、組成物は、遺伝子改変された添加物を欠いている。いくつかの実施形態では、組成物はヒト成分を欠いている。
【0060】
[084]いくつかの実施形態では、濃縮された細胞群の細胞は、培地中の単一の細胞である。いくつかの実施形態では、培地中の細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%は、単一の細胞として増殖している。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、細胞の70~100%の間は、単一の細胞として増殖している。いくつかの実施形態では、培地は、血清を含み、細胞の少なくとも90%が単一の細胞として増殖している。いくつかの実施形態では、培地は、血清を含み、細胞の90~100%が単一の細胞として増殖している。いくつかの実施形態では、培地は、無血清であり、細胞の少なくとも70%が単一の細胞として増殖している。いくつかの実施形態では、培地は、無血清であり、細胞の少なくとも80%が単一の細胞として増殖している。いくつかの実施形態では、培地は、無血清であり、細胞の70~90%の間が単一の細胞として増殖している。いくつかの実施形態では、培地は、無血清であり、細胞の少なくとも90%が単一の細胞として増殖している。いくつかの実施形態では、培地は、無血清であり、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50%より多い細胞が単一の細胞として増殖している。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0061】
[085]いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99または100%が表面に接着していない。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、表面は人工表面である。いくつかの実施形態では、表面は、培地を保持する容器の表面である。いくつかの実施形態では、表面は、別の細胞である。いくつかの実施形態では、表面は、マイクロキャリアである。いくつかの実施形態では、組成物は、マイクロキャリアを欠いている。本明細書で使用される場合、「マイクロキャリア」という用語は、液体培養物中の細胞の増殖を可能にする支持マトリックスまたはスキャフォールドを指す。いくつかの実施形態では、マイクロキャリアは、非接着性容器内で接着細胞を増殖させるためのものである。いくつかの実施形態では、マイクロキャリアは、バイオリアクターでの増殖のためのものである。いくつかの実施形態では、非接着性含有物は、バイオリアクターである。いくつかの実施形態では、マイクロキャリアは、接着細胞が接着するための人工スキャフォールドである。いくつかの実施形態では、マイクロキャリアは、マイクロキャリアビーズである。本明細書で使用される場合、細胞がマイクロキャリアに固定されているため、マイクロキャリアに接着している間の増殖は、足場非依存性増殖ではない。
【0062】
[086]いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞は、インビトロ細胞増殖培地中で少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000万細胞/mLの密度である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞は、少なくとも500万細胞/mLの密度である。いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞は、インビトロ細胞増殖培地中で100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000万細胞/mLよりも大きい密度である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞は、500万細胞/mLよりも大きい密度である。いくつかの実施形態では、足場非依存性結合組織細胞は、等価の足場依存性細胞を同じ容積で増殖させることによって達成できるよりも高い密度である。足場非依存性細胞の特定の利点の1つは、等価の足場依存性細胞と比較して、同じ空間ではるかにより高い密度で多数増殖できることである。これにより、多数の細胞、大量のウイルス/ワクチン、および大量の培養肉の生産が可能になる。
【0063】
[087]別の態様により、足場非依存性結合組織細胞が脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞、骨細胞、またはそれらの組み合わせに分化する、本発明の濃縮された細胞群を含む人工肉組成物が提供される。いくつかの実施形態では、人工肉組成物は、脂肪細胞を含む。いくつかの実施形態では、人工肉組成物は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%の脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞、骨細胞、またはそれらの組み合わせを含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0064】
[088]別の態様により、足場非依存性細胞株を生産する方法が提供され、この方法は:
a. インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させること;
b. 凝集体を単一の細胞に機械的に崩壊させること;および
c. 少なくとも4継代、液体培養物中で単一の細胞を増殖させることを含み;
それにより、足場非依存性細胞株を生産する。
【0065】
[089]別の態様により、足場依存性細胞株の倍加時間を減少させる方法が提供され、この方法は:
a. インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させること;
b. 凝集体を単一の細胞に機械的に崩壊させること;および
c. 少なくとも4継代、液体培養物中で単一の細胞を増殖させることを含み;
これにより、足場非依存性細胞株の倍加時間を減少させる。
【0066】
[090]いくつかの実施形態では、足場非依存性細胞株は、本発明の濃縮された細胞群である。いくつかの実施形態では、足場依存性細胞株は、結合組織細胞株であり、足場非依存性細胞株は、同じ結合組織の細胞株である。いくつかの実施形態では、足場依存性細胞株は、線維芽細胞株であり、足場非依存性細胞株は、線維芽細胞株である。いくつかの実施形態では、線維芽細胞株は、DF-1であり、足場非依存性細胞株は、足場非依存性DF-1株である。いくつかの実施形態では、足場依存性細胞株は、市販の細胞株である。いくつかの実施形態では、足場依存性細胞株は、一次細胞に由来する。いくつかの実施形態では、一次細胞は、足場依存性細胞株を生産するために不死化される。
【0067】
[091]いくつかの実施形態では、増殖する凝集体は、非接着性のディッシュにおいて行われる。いくつかの実施形態では、非接着性のディッシュは、ペトリディッシュである。いくつかの実施形態では、非接着性のディッシュは、Aggrewellディッシュ(Aggrewell dish)である。いくつかの実施形態では、AggrewellディッシュはAggrewell800ディッシュである。いくつかの実施形態では、非接着性のディッシュは、ヒドロゲル微細構造アレイである。いくつかの実施形態では、非接着性のディッシュは、InSphereoディッシュである。いくつかの実施形態では、非接着性のディッシュは、少なくとも6、12、24、48、72、96、128、256、300、400、500、600、700、800、900または1000ウェルを含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、ディッシュは、単一の凝集体またはスフェロイドのみが形成できるような小さなウェルを含む。いくつかの実施形態では、各ウェルに、1000~10000、1000~9000、1000~8000、1000~7000、1000~6000、1000~5000、1000~4000、1000~3000、2000~10000、2000~9000、2000~8000、2000~7000、2000~6000、2000~5000、2000~4000、2000~3000、3000~10000、3000~9000、3000~8000、3000~7000、3000~6000、3000~5000、または3000~4000個の間の細胞を播種する。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、各ウェルに3000~4000個の間の細胞を播種する。いくつかの実施形態では、凝集体は、機械的な崩壊の前に少なくとも12、18、24、36または48時間増殖する。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0068】
[092]いくつかの実施形態では、この方法は、機械的な崩壊の前に、界面活性剤でプレコートした非接着性のディッシュに凝集体を移動させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、機械的な崩壊は、勢いをつけたピペッティングを含む。いくつかの実施形態では、機械的な崩壊は、延長期間にわたって繰り返される。いくつかの実施形態では、延長期間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、または7日である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0069】
[093]いくつかの実施形態では、単一の細胞の増殖は、シェーカーまたはスピナーフラスコで行われる。いくつかの実施形態では、単一の細胞の増殖は、シェーカーフラスコで行われる。いくつかの実施形態では、単一の細胞の増殖は、スピナーフラスコで行われる。いくつかの実施形態では、単一の細胞の増殖は、最初に高密度で、わずかに振とうまたは無振とうで、その後、より高速で振とうすることで増殖させることを含む。いくつかの実施形態では、わずかに振とうまたは無振とうとは、最大40、35、30、25、20、15、10、5、3、2、1または0回転/分(RPM)である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、わずかに振とうまたは無振とうとは、40回転/分(RPM)以下である。いくつかの実施形態では、わずかに振とうまたは無振とうとは、最大6、12、18または24時間である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、わずかに振とうまたは無振とうとは、最大1、2、3、4、または5回の継代である。いくつかの実施形態では、わずかに振とうまたは無振とうとは、最大1回の継代である。いくつかの実施形態では、わずかに振とうまたは無振とうとは、一晩である。
【0070】
[094]いくつかの実施形態では、より高速の振とうは、少なくとも60、80、100、120、140または160RPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、より高速の振とうは、60~160、60~140、60~120、60~100、60~90、60~80、80~160、80~140、80~120、80~100、または80~90の間のRPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、より高速の振とうは、少なくとも2、3、4、5、7、または10回の継代である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0071】
[095]いくつかの実施形態では、振とうは、初速度で行われ、その後、より高速に増加される。いくつかの実施形態では、初速度は、約40、50、60、70、80、90、または100RPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、初速度は、最大40、50、60、70、80、90、または100RPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、初速度は、少なくとも40、50、60、70、80、90、または100RPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、より高速は、約60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200RPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、高速は、最大で60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200RPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、高速は、少なくとも60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200RPMである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、初速度は、80RPMであり、より高速は、100RPMである。
【0072】
[096]いくつかの実施形態では、増加は、継代1、2、3、4または5回目の後に起こる。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、増加は継代3回目の後に起こる。いくつかの実施形態では、増加は継代2、3、4、5または6回目の前に起こる。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、増加は、継代1から6、1から5、1から4、1から3、2から6、2から5、2から4、2から3、3から6、3から5、または3から4回目の間で起こる。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0073】
[097]いくつかの実施形態では、本方法は、バイオリアクターへの移送をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、2、5、7、10、15、20、25、30、34または35継代のための培養をさらに含む。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0074】
[098]いくつかの実施形態では、減少させることは、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%の倍加時間の減少である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、減少させることは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20時間の減少である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0075】
[099]いくつかの実施形態では、細胞は、所望の濃度に希釈される。いくつかの実施形態では、細胞は、所望の濃度に、または所望の濃度以下に希釈される。いくつかの実施形態では、所望の濃度は、約600,000細胞/mLである。いくつかの実施形態では、所望の濃度は、約400,000、500,000、600,000、700,000または800,000細胞/mLである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、所望の濃度は、400,000から800,000、400,000から700,000、400,00から600,000、500,000から800,000、500,000から700,000、500,000から600,000、600,000から800,000の間、600,000、700,00細胞/mLである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0076】
[0100]いくつかの実施形態では、細胞は、望ましくない濃度に達した時に希釈される。いくつかの実施形態では、細胞は、望ましくない濃度に達するか、またはそれを超える時に希釈される。いくつかの実施形態では、望ましくない濃度は、約1,200,000細胞である。いくつかの実施形態では、望ましくない濃度は、約1,000,000細胞である。いくつかの実施形態では、望ましくない濃度は、約800,000、900,000、1,000,000、1,100,000、1,200,000、1,300,000、1,400,000、または1,500,000細胞/mLである。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、望ましくない濃度は、800,000から1,500,000、800,000から1,300,000、800,000から1,200,000、800,000から1,000,000、900,000から1,500,000、900,000から1,300,000、900,000から1,200,000、900,000から1,000,000、1,000,000から1,500,000、1,000,000から1,300,000、1,000,000から1,200,000、または1,000,000から1,100,000の間である。各々の可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0077】
[0101]別の態様により、本発明の濃縮された細胞群を、前記ウイルスを用いて感染させ、ウイルス粒子が生産されるのに十分な時間、前記細胞群を増殖させ、およびウイルス粒子を収穫し、それによってウイルスワクチンを生産する、抗ウイルスワクチンを生産する方法が提供される。
【0078】
[0102]本明細書で使用される場合、値と組み合わされた際の「約」という用語は、参照値のプラスマイナス10%を指す。例えば、約1000ナノメートル(nm)の長さは、1000nm±100nmの長さを指す。
【0079】
[0103]本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の言及対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」への言及は、複数のそのようなポリヌクレオチドを含み、「ポリペプチド(the polypeptide)」への言及は、当業者に知られている1つまたは複数のポリペプチドおよびその等価物への言及などを含む。特許請求の範囲は、任意選択の要素を除外するために起草される場合があることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項要素の記載に関連して「単独」、「のみ」などの排他的な用語を使用したり、「否定的」限定を使用したりするための先行的根拠として役立つことを意図している。
【0080】
[0104]「A、B、およびCなどの少なくとも1つ」に類似する慣例が使用されている場合、一般に、そのような構成は、当業者がその慣例を理解するだろうという意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、および/またはA、B、Cを一緒に有するシステムなどを含むが、これらに限定されない。)。明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を表す実質的に任意の離接語および/または句は、用語の1つ、いずれかの用語、または両方の用語を含む可能性が企図されていることが理解されるべきであることは、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0081】
[0105]明確性のために、別々の実施形態の文脈で記載されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態内に組み合わせて提供することも可能であることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別個にまたは任意の適切なサブコンビネーションで提供し得る。本発明に係る実施形態の全ての組み合わせは、あたかも1つ1つの組み合わせが個別におよび明示的に開示されているかのように、本発明によって具体的に包含され、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態およびその要素の全てのサブコンビネーションもまた、あたかも1つ1つのそのようなサブコンビネーションが個別におよび明示的に本明細書に開示されているかのように、本発明によって具体的に包含され、本明細書に開示される。
【0082】
[0106]本発明の追加の目的、利点、および新規の特徴は、限定することを意図していない以下の実施例を検討すれば、当業者に明らかになるであろう。さらに、上の明細書に説明され、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の様々な実施形態および態様の各々は、以下の実施例において実験的に裏付けられている。
【0083】
[0107]上の明細書に説明され、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的に裏付けられている。
【実施例】
【0084】
[0108]一般に、本明細書で使用される命名法、および本発明で利用される実験手順には、分子的、生化学的、微生物学的および組換えDNA技術が含まれる。そのような技術は、文献で詳しく説明されている。例えば、全てが参照により組み込まれる”Molecular Cloning:A laboratory Manual” Sambrookら、(1989);”Current Protocols in Molecular Biology” 巻I-III Ausubel、R.M.編(1994);Ausubelら、”Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989);Perbal、”A Practical Guide to Molecular Cloning”、John Wiley&Sons、New York(1988);Watsonら、”Recombinant DNA”、Scientific American Books、New York;Birrenら(編) ”Genome Analysis:A Laboratory Manual Series”、巻1~4、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1998);米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号および第5,272,057号に記載される方法論;”Cell Biology:A Laboratory Handbook”、巻I-III Cellis、J.E.編(1994);”Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique” by Freshney、Wiley-Liss、N.Y.(1994)、第3版;”Current Protocols in Immunology” 巻I-III Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編)、”Basic and Clinical Immunology”(第8版)、Appleton&Lange、Norwalk、CT(1994);MishellおよびShiigi(編)、”Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual” CSHL Press(1996);を参照されたい。他の一般的な参考文献は、本明細書全体で提供されている。
【0085】
材料および方法
材料
[0109]DMEM、DMEM/F12基本培地およびPolaxamer 188溶液F-68(Pluronic(登録商標))は、Sigma-Aldrichから購入した。L-アナリルL-グルタミン(GlutaMAX)、熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン-ストレプトマイシン、およびトリプシンEDTAはBiological Industriesから購入した。TypLE(商標)酵素はFisher Scientificから購入した。Aggrewell800はSTEMCELL Technologiesから購入した。TriForestシェーカーフラスコはTriForest Labwareから購入し、T75細胞培養フラスコはGreiner Bio-oneから購入した。
【0086】
細胞源および培地
[0110]UMNSAH/DF-1(ATCC:CRL-12203)は、ATCCから購入し、5%CO
2下の加湿組織培養インキュベーター中、39℃で増殖させた(
図1)。
【0087】
[0111]ニワトリ線維芽細胞は、11日目に特定病原体除去(SPF)卵から単離され、培養中に自然発生的に不死化された。培養培地は、10%FBS、L-アナリル-L-グルタミンおよびペニシリンストレプトマイシンを補充したDMEMであった。
【0088】
[0112]ウシ胎児線維芽細胞は、特定病原体除去(SPF)胎児から単離され、培養中に自然発生的に不死化された。培養培地は、10%FBS、L-アナリル-L-グルタミンおよびペニシリンストレプトマイシンを補充したDMEMであった。成牛の線維芽細胞は、獣医の管理下でコーシャの屠殺牛の死体から得られた真皮切片から分離された。細胞は増殖によって得られ、培養中に自然発生的に不死化された。培養培地は、10%FBS、L-アナリル-L-グルタミンおよびペニシリンストレプトマイシンを補充したDMEMであった。
【0089】
実施例1:浮遊培養へのスフェロイドベース適応
[0113]DF-1ニワトリ線維芽細胞株の116万個の細胞を、Aggrewell800プレートに播種した(3867細胞/マイクロウェル)。24時間のインキュベーションの後、ウェル内の培地の半分を交換した。翌日、Aggrewell内に形成されたスフェロイド(
図2)を機械的に分離し、0.01%F-68を補充した培養培地中のPluronic(登録商標)F-68でプレコートした非接着性の10cmペトリディッシュに移した。細胞凝集体を、4日間連続培養中に勢いをつけたピペッティングによって機械的に崩壊させた(
図3)。培養7日目に、スフェロイドを、0.01%F-68を補充した3mlの培養培地中のシェーカーインキュベーターに移し、80、100、または140RPMの速度で3日間振とうした。適応プロセスの最後では、400,000から800,000細胞/mLの細胞密度で、79%の生存率であることが、トリパンブルー排除アッセイにより示された。
【0090】
実施例2:浮遊培養への直接シェーカーフラスコ適応
[0114]適応プロセスからの1600から4000万個の細胞を、0.01%F-68を補充した80mlの培養培地を含む250mLのシェーカーフラスコ中に、200,000から500,000細胞/mLの最終密度まで直接播種した。細胞を一晩沈降させて凝集させた後、80RPMのシェーカーインキュベーターに移した。細胞増殖をモニターして、経時的に記録した。各継代で、細胞を酵素的に消化し、200,000細胞/mLで再播種する前に計測した。シェーカー速度を継代3で80RPMから100RPMに増加させた。倍加時間は最初の2継代で60時間から52時間に減少し、5~7継代内で20~28時間に安定した(
図4)。凝集体は各継代と共により低頻度となり、継代34までに培養物の5~10%に達した(
図5)。最終的に、低濃度の細胞では、凝集体のパーセンテージは5%未満にさえなる。
【0091】
実施例3:浮遊培養への直接スピナーフラスコ適応
[0115]同様に、適応プロセスからの1600万個の細胞を、0.01%F-68を補充した80mlの培養培地を含む250mLのコーニングガラススピナーフラスコ中に、200,000細胞/mLの最終密度まで直接播種した。細胞を一晩沈降させて凝集させ、その後、60から90RPMでスピンさせた。細胞増殖をモニターし、経時的に記録した。各継代で、細胞を酵素的に消化し、200,000細胞/mLで再播種する前に計測した。倍加時間および培養挙動は、シェーカーフラスコで観察されたものと等価であった。第一世代の倍加時間は62時間であった。
【0092】
実施例4:無血清培養培地への適応
[0116]適応プロセスからの1600万個の細胞を、0.01%F-68を補充した80mlの培養培地を含む250mLのシェーカーフラスコ中に、200,000細胞/mLの最終密度まで分割した。細胞は培養3日目までに120万細胞/mLの密度に達した。次に、各フラスコに80mL UltraCULTURE培地を添加することにより、培養物を600,000細胞/mLに希釈した。次の日、細胞は100万細胞/mLの密度に達し、2.5%のFBS濃度まで無血清培地中に再び希釈した。24時間以内に細胞は120万細胞/mLに達し、収穫後、300gで5分間遠心分離した。得られた細胞ペレットを最終的にUltraCULTURE無血清培地に再懸濁し、継代10、26、34で、細胞を血清非存在下で懸濁液中、培養した。
【0093】
実施例5:スケーラブル攪拌バイオリアクターでの増殖
[0117]継代34(無血清)で4億個の細胞を、BIOSTAT Aユニットによって制御される2リットルのガラス製バイオリアクター(Sartorius)に、UltraCULTURE中で400,000細胞/mLの最終濃度まで播種した。275 RPM、設定値pH7.1および酸素飽和度60%で培養物を維持した。細胞は20時間の倍加時間で増殖し、生存率は約95%であった。流加反応器では最大濃度3000万細胞/mL、灌流反応器では2億5000万細胞/mLが可能であった。
【0094】
実施例6:不死化した初代ニワトリおよびウシ線維芽細胞の足場非依存性増殖。
[0118]市販の細胞株に加えて、ニワトリおよびウシ線維芽細胞の異なる株が、不死化された初代細胞から生成された。FMT-SCF-1およびFMT-SCF-2は、ブロイラーRoss308ニワトリ胚の自然発生的に不死化したニワトリ胎児線維芽細胞に由来し(
図6A、E)、FMT-SCF-3、SCF-4、およびSCF-5株はイスラエルのBaladiニワトリ胚性線維芽細胞から由来していた(
図6B、E)。FMT-SBF-1およびFMT-SBF-2は、黒アンガス牛の自然発生的に不死化したウシ胎児線維芽細胞に由来し(
図6C、E)、FMT-SBF-3株は、ベルギーブルー牛の自然発生的に不死化した真皮線維芽細胞に由来していた(
図6D-E)。
【0095】
[0119]DF-1細胞について記載されているように、トリおよびウシ線維芽細胞の両方が、足場依存性から足場非依存性に変換された。特に、5%CO2の加湿インキュベーター内で、100RPMで振とうするシェーカーフラスコ法を採用した。ニワトリ細胞は39℃で培養し、ウシ細胞は37℃で培養した。3日毎に細胞を継代し、30万細胞/mlで再播種した。得られた細胞株は100%足場非依存性であり、容器に接着している細胞は観察されなかった。同じことがDF-1細胞でも観察されたため、これらの細胞株は真に足場非依存性である。
【0096】
[0120]FMT-SCF-1およびFMT-SCF-2は、約16~18継代後、18時間から25時間の間の安定した倍加時間に達した(
図6A)。初期の継代では、100時間を超える倍加時間が観察され、ほとんどの倍加は少なくとも40時間かかった。生存率は一貫して94%を超え、一般的には97%を超えていた。
【0097】
[0121]FMT-SCF-3、FMT-SCF-4、およびFMT-SCF-5は、より大きな変動を示したが、平均して21時間から26時間の間で安定した倍加時間に達した(
図6B)。FMT-SCF-3については、40時間以上かかっていた倍加時間の低下が、すでに継代5で見られたが、これは、FMT-SCF-4についても、継代6で観察された。FMT-SCF-5では、初期時点から倍加時間が減少しており、30時間を超える測定は1回のみであった(継代1で)。生存率は再び一貫して94%を超えていた。
【0098】
[0122]FMT-SBF-1およびFMT-SBF-2は、最初の数回の継代において高い倍加時間を示したが、これは、一般には22時間から27時間の間に安定した(
図6C)。生存率は再び一貫して94%を超え、一般的には97%を超えていた。FMT-SBF-1は特に安定していたが、FMT-SBF-2の場合は、倍加時間がより長い数回の継代を示した。FMT-SBF-3の場合は、初期の継代であっても、30台後半のより低い倍加時間を示した。倍加時間は平均して約30時間に減少したが、26~36時間の範囲でいくらかの変動があった(
図6D)。生存率も良く、一貫して90%を超え、平均して約95%であった。
【0099】
[0123]初代細胞に由来する全ての足場非依存性細胞株は、培養中に90%を超える単一の細胞を示した(
図6E)。どの細胞株についても、それらを高密度で増殖したとき、数個の細胞の非常に小さな塊だけが観察された。低密度では、細胞株は97%を超える単一の細胞として増殖した。
【0100】
[0124]初代細胞に由来する足場非依存性細胞もまた、スピナーフラスコ法を使用して誘導可能である。それらは無血清培地中で増殖させることもでき、攪拌バイオリアクター用にスケールアップもできる。
【0101】
実施例7:足場非依存性脂肪細胞および培養肉の生成。
[0125]ニワトリおよびウシの足場非依存性線維芽細胞を、標準的な分化プロトコルによって足場非依存性脂肪細胞に分化させた。FMT-SCF-2(ニワトリ非接着性線維芽細胞)およびFMT-SBF-1(ウシ非接着性線維芽細胞)を、PPARガンマアゴニストと共に200μMオレイン酸を含む脂肪生成培地で増殖した。合成阻害剤(ロシグリタゾン)および天然阻害剤(プリスタン酸)の両方を試験した。
【0102】
[0126]脂肪細胞への分化の発生を決定するために、細胞を脂質生産についてアッセイした。4日目と7日目に細胞を収穫し、黒色96ウェルプレートに再播種し、2時間インキュベートした後、4%PFAで固定した。固定した細胞は、中性の脂肪滴を緑色に染色するLipidTOXで染色された。細胞核はHoechstを用いて青色に対比染色された。4日目で、細胞はすでに脂肪滴についてポジティブに染色されており、脂肪細胞の存在を示している;染色は7日目に増加した(
図7A-B)。脂質生産は、ニワトリ細胞(
図7A)およびウシ細胞(
図7B)の両方で、ならびに合成阻害剤および天然阻害剤の両方で見られた。
【0103】
[0127]足場非依存性脂肪細胞を使用して、標準的なプロトコルに従って培養肉を作製した。まず、ニワトリの脂肪細胞を大豆タンパク質の高水分押出と組み合わせた。重量で20%の脂肪細胞と80%の大豆タンパク質の比率を使用した。脂肪細胞は、大豆タンパク質と直接混合することもできたか、または大豆タンパク質でコーティングして、培養鶏肉のナゲットを生産した(
図8A)。最終生産物には、そのうち1%未満が飽和脂肪である約11%の総脂肪が含まれ;そのうち1%未満が糖質である1%の炭水化物が含まれ;および約19%のタンパク質が含まれていた。培養鶏肉は、外部(
図8B)および内部(
図8C)の外観、食感および味において、農場で飼育された鶏肉と比較して良好な結果であった。
【0104】
[0128]培養牛肉も生産された。ウシ脂肪細胞をテクスチャード加工の小麦タンパク質と組み合わせて、牛挽肉に匹敵する混合物を生産した(
図8D)。同様に、脂肪細胞をテクスチャード加工の大豆タンパク質と混合して、牛肉のケバブを生産した(
図8E-F)。重量で30%の脂肪細胞と70%のテクスチャード加工タンパク質の比率を使用した。最終生産物には、約18%の脂肪が含まれ、そのうち1%未満が飽和脂肪、約7%の炭水化物(うち1%未満が糖質)、および約17%のタンパク質が含まれていた。培養牛肉は、外部(
図8E)および内部(
図8F)の両方の外観、食感、味で、農場で飼育した牛肉と比較して良好な結果であった。
【0105】
[0129]これまで本発明をその特定の実施形態と共に記載してきたが、多くの代替案、修正、および変形が、当業者にとって明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神と広い範囲に含まれる全てのそのような代替案、修正および変形を包含することが意図されている。
発明の態様
[態様1]結合組織細胞の濃縮された細胞群であって、前記結合組織細胞の少なくとも70%が足場非依存性増殖が可能である、濃縮された細胞群。
[態様2]前記結合組織細胞の少なくとも95%が足場非依存性増殖が可能である、態様1に記載の濃縮された細胞群。
[態様3]前記結合組織細胞の100%が足場非依存性増殖が可能である、態様1または2に記載の濃縮された細胞群。
[態様4]前記足場非依存性結合組織細胞の少なくとも20%が活発に増殖している、態様1から3のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様5]前記足場非依存性結合組織細胞が、少なくとも4回の細胞分裂の間、足場非依存性増殖が可能である、態様1から4のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様6]前記結合組織細胞が、線維芽細胞または線維芽細胞から自然に分化し得る細胞型である、態様1から5のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様7]前記結合組織細胞が、線維芽細胞である、態様6に記載の濃縮された細胞群。
[態様8]線維芽細胞から自然に分化し得る前記細胞型が、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、骨細胞、筋線維芽細胞、筋芽細胞および筋細胞からなる群から選択される、態様6に記載の濃縮された細胞群。
[態様9]前記足場非依存性結合組織細胞がインタクトな細胞膜を含む、態様1から8のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様10]前記濃縮された細胞群が50時間以下の倍加時間を含む、態様1から9のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様11]前記濃縮された細胞群が18時間から22時間の間の倍加時間を含む、態様10に記載の濃縮された細胞群。
[態様12]前記足場非依存性結合組織細胞が、液体培養において少なくとも85%が単一の細胞として増殖する、態様1から11のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様13]前記結合組織細胞が、哺乳動物の結合組織細胞である、態様1から12のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様14]前記結合組織細胞が、鳥類の結合組織細胞である、態様1から13のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様15]前記結合組織細胞が、培養肉を生産することが可能である、態様1から14のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様16]感染後に前記濃縮された細胞群によって生産されるウイルスの収量が、感染後に同数の足場依存性結合組織細胞によって生産される収量と等しいかまたはより多い、態様1から15のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様17]前記足場非依存性線維芽細胞が接着性増殖できない、態様1から16のいずれかに記載の濃縮された細胞群。
[態様18]態様1から17のいずれかに記載の濃縮された細胞群を含む、組成物。
[態様19]液体のインビトロ細胞増殖培地をさらに含み、前記足場非依存性結合組織細胞の少なくとも70%が表面に接着していない、態様18に記載の組成物。
[態様20]前記インビトロ細胞増殖培地が血清を欠いている、態様19に記載の組成物。
[態様21]前記足場非依存性結合組織細胞が、インビトロ細胞増殖培地中で500万細胞/mLよりも大きい密度である、態様19または20に記載の組成物。
[態様22]マイクロキャリアビーズを欠いている、態様18から21のいずれかに記載の組成物。
[態様23]マトリックスをさらに含む、態様18に記載の組成物。
[態様24]前記マトリックスが野菜由来のマトリックスであり、前記足場非依存性結合組織細胞が脂肪細胞に分化し、前記組成物が培養肉である、態様23に記載の組成物。
[態様25]前記マトリックスがコラーゲンマトリックス、真皮マトリックス、および代替の真皮マトリックスから選択され、前記組成物が皮革である、態様18に記載の組成物。
[態様26]足場非依存性細胞株を生産する方法であって:
a. インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させるステップ;
b. 前記凝集体を液体中で単一の細胞に機械的に崩壊させるステップ;および
c. 少なくとも4世代、液体培養物中で前記単一の細胞を増殖させるステップを含み;
それにより、前記足場非依存性細胞株を生産する、方法。
[態様27]足場依存性細胞株の倍加時間を減少させるための方法であって:
a. インビトロで足場依存性細胞株の凝集体を増殖させるステップ;
b. 前記凝集体を液体中で単一の細胞に機械的に崩壊させるステップ;および
c. 少なくとも4世代、液体培養物中で前記単一の細胞を増殖させるステップを含み;
それにより、前記足場依存性細胞株の倍加時間を増加させる、方法。
[態様28]前記凝集体を増殖させることが非接着性のディッシュで行われる、態様26または27に記載の方法。
[態様29]前記単一の細胞を増殖させることが、シェーカーまたはスピナーフラスコで行われる、態様26から28のいずれかに記載の方法。
[態様30]前記シェーカーまたはスピナーフラスコで増殖させることが、40RPM未満のスピン速度での最大1回の継代と、それに続く80RPMから100RPMの間のスピン速度での少なくとも3回の継代とを含む、態様29に記載の方法。
[態様31]前記足場依存性細胞株が線維芽細胞株であり、前記足場非依存性細胞株が線維芽細胞株である、態様26から30のいずれかに記載の方法。
[態様32]前記足場非依存性細胞株が態様1から17のいずれかに記載の濃縮された細胞群である、態様31に記載の方法。
[態様33]前記減少させることが、倍加時間を50時間以下に低下させる、態様27から32のいずれかに記載の方法。