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特許7291219音響波共振器を作製するための複合基板、および表面音響波共振器および作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】音響波共振器を作製するための複合基板、および表面音響波共振器および作製方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/08 20060101AFI20230607BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H03H3/08
H03H9/25 C
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2021527083
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2020099638
(87)【国際公開番号】W WO2021139117
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】202010018484.8
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520281859
【氏名又は名称】中芯集成電路(寧波)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 河
(72)【発明者】
【氏名】羅 海龍
(72)【発明者】
【氏名】李 偉
(72)【発明者】
【氏名】斉 飛
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-246583(JP,A)
【文献】特表2010-536217(JP,A)
【文献】特開2015-162905(JP,A)
【文献】特表2018-537672(JP,A)
【文献】特開2006-340007(JP,A)
【文献】特開2010-050736(JP,A)
【文献】特開2019-092096(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031748(WO,A1)
【文献】特開2017-224890(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068828(WO,A1)
【文献】特開平07-168662(JP,A)
【文献】特表2018-506930(JP,A)
【文献】実開昭52-063327(JP,U)
【文献】国際公開第2007/129496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法であって、
背向する第1表面と、第2表面とを含む基板を提供するステップと、
前記第1表面に、前記第2表面に向かって凹む第1凹部を形成するステップと、
前記第1凹部に嵌入された圧電片を提供するステップであって、前記圧電片は、前記第1凹部の形状と合致し、結合方法により前記第1凹部の底面と前記圧電片とを結合するステップとを含み、
前記圧電片は、外側壁が前記第1凹部の内側壁によって取り囲まれるように前記第1凹部に嵌合され、前記第1凹部の底面と前記圧電片の底面とが結合され、
前記第1凹部の底面と前記圧電片の底面とが結合された状態では、前記圧電片は、前記複合基板の平面視にて、外形が前記第1凹部の形状と合致する、
ことを特徴とする音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項2】
前記結合方法は、共有結合、接着結合、溶融結合のうちの1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項3】
前記結合方法が前記接着結合であ、前記接着結合は、前記第1凹部および/または前記圧電片の底面に接着剤を形成し、前記接着剤を用いて前記基板と、前記圧電片とを結合するステップを含または、
前記結合方法が前記溶融結合であ、前記溶融結合は、前記第1凹部に第1結合層を形成し、および/または前記圧電片の底面に第2結合層を形成し、前記第1結合層および/又は前記第2結合層を介して前記基板と、前記圧電片とを結合するステップを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項4】
前記結合方法が前記溶融結合であ、前記第1結合層および/または第2結合層の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリシリコンまたは金属を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項5】
結合を行うステップ前に、前記第1凹部の底面および/または前記圧電片の底面に音響波反射層を形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項6】
前記音響波反射層が、単層フィルム層または多層フィルム層である、ことを特徴とする請求項5に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項7】
前記音響波反射層の材料は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、モリブデン、アルミニウム、タングステン、タリウム、カリウムのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項8】
前記結合を行うステップ前に、前記第1凹部の底面に応力緩衝層を形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項9】
前記応力緩衝層上に応力補償層を形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項8に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項10】
前記基板がシリコン基板であり、
前記応力緩衝層が酸化ケイ素であり、
前記応力補償層が窒化ケイ素である、ことを特徴とする請求項9に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項11】
結合を行うステップ前に、まず、前記第1凹部の底面に音響波反射層を形成し、続いて応力緩衝層、応力補償層を形成し、
または、前記第1凹部の底面に前記応力緩衝層、前記応力補償層を形成した後に、前記音響波反射層を形成し、
または、前記第1凹部に前記応力緩衝層、前記応力補償層を形成し、前記応力緩衝層、前記応力補償層の少なくとも一方を前記音響波反射層とする、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項12】
前記第1凹部の底面に突起を形成し、前記圧電片の底面に第2凹部を形成し、または、前記第1凹部の底面に前記第2凹部を形成し、前記圧電片の底面に前記突起を形成するステップと、
前記突起を、複合基板の非デバイス領域に位置するように前記第2凹部の形状と合致させ、前記圧電片を前記第1凹部に嵌入するとき、前記第2凹部と前記突起とを係合させるステップとをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項13】
前記突起を形成するステップは、前記第1凹部の底面または前記圧電片の底面をパターニングして前記突起を形成するステップと、
または、前記第1凹部の底面または前記圧電片の底面に誘電体層またはポリシリコン層を形成し、前記誘電体層または前記ポリシリコン層をエッチングして前記突起を形成するステップを含む、ことを特徴とする請求項12に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項14】
前記突起を前記第1凹部の底面に形成し、前記突起を形成する前または後に、前記第1凹部に応力緩衝層、応力補償層、および/または音響波反射層を形成する、ことを特徴とする請求項12に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項15】
前記圧電片の頂面を前記基板よりも高くし、前記圧電片を前記基板に結合した後、前記圧電片を研磨薄化するステップと、
前記突起を前記第1凹部の底面に形成し、前記突起を研磨薄化の研磨停止層とし、または、前記突起の頂面に前記研磨停止層を形成するステップとをさらに含む、ことを特徴とする請求項12に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項16】
前記突起を前記第1凹部の底面に形成し、
前記突起は、材質が誘電体層またはケイ素であり、切断トラック上に分布されるストライプ状構造である、ことを特徴とする請求項12に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項17】
前記突起の頂面を前記第1表面よりも高く又は前記第1表面と面一とし、かつ前記突起の頂面は前記圧電片で覆われていない、ことを特徴とする請求項16に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項18】
前記応力緩衝層、前記応力補償層の厚さが、それぞれ0.08μm~1μmであり、0.08μm~1μmである、ことを特徴とする請求項9に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項19】
前記第1結合層または前記第2結合層の厚さが0.3μm~10μmである、ことを特徴とする請求項4に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項20】
前記基板と前記圧電片とを結合した後に、前記圧電片の頂面を前記第1表面よりも高く又は前記第1表面と面一とする、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項21】
前記圧電片の頂面が前記第1表面よりも高く、
前記圧電片の上面を前記複合基板の上面と面一となるように薄化するステップを含み、
薄化するステップは、
前記圧電片の頂面を機械的に研磨し、前記圧電片を25μm~35μmまでに薄化するステップと、
化学機械粗研磨を用いて、前記圧電片を4μm~6μmまでに薄化するステップと、
化学機械研磨を用いて、前記圧電片を0.6μm~0.7μmまでに薄化するステップと、
イオンビームトリミングプロセスにより前記圧電片の上面をトリミングするステップであって、トリミングされた前記圧電片の表面の厚さの均一性を2%未満とするステップとをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項22】
前記圧電片の頂面をイオンビームトリミングした後に、
前記圧電片の結晶格子損傷を修復するように、炉心管やレーザ光を用いて前記圧電片をアニール処理するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項21に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項23】
前記圧電片の材料は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを含み、
前記圧電片は、単結晶である、ことを特徴とする請求項1に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法。
【請求項24】
表面音響波共振器の作製方法であって、
請求項1~23のいずれか一項に記載の音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法により前記複合基板を作製するステップと、
前記圧電片の頂面に、第1インターデジタル変換器および第2インターデジタル変換器を形成するステップとを含む、ことを特徴とする表面音響波共振器の作製方法。
【請求項25】
背向する第1表面と、第2表面とを含み、前記第1表面に前記第2表面に向かって凹む第1凹部が設けられる基板と、
外側壁が前記第1凹部の内側壁によって取り囲まれるように前記第1凹部に嵌合され、底面が前記基板の前記第1凹部の底面と結合された圧電片であって、頂面が前記第1表面よりも高く、又は前記第1表面と面一となる圧電片とを含み、
前記第1凹部の底面と前記圧電片の底面とが結合された状態では、前記圧電片は、複合基板の平面視にて、外形が前記第1凹部の形状と合致する、
ことを特徴とする音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項26】
前記圧電片と前記基板との間において、前記第1凹部上に順次位置する応力緩衝層および応力補償層を有し、
および/または、前記圧電片と前記基板との間に、音響波反射層を有する、ことを特徴とする請求項25に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項27】
前記圧電片と前記基板との間に、前記第1凹部上に順次位置する応力緩衝層および応力補償層を有し、
前記応力緩衝層、前記応力補償層のうちの少なくとも1つを音響波反射層とする、ことを特徴とする請求項25に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項28】
前記音響波反射層の材料は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、モリブデン、アルミニウム、タングステン、タリウム、カリウムのうちの少なくとも1つを含み、
前記基板がシリコン基板であり、
前記応力緩衝層が酸化ケイ素であり、
前記応力補償層が窒化ケイ素または炭化ケイ素である、ことを特徴とする請求項26または27に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項29】
前記第1凹部の底面、前記圧電片の底面のうちのいずれか一方には複数の突起を有し、いずれか他方には前記突起と係合する第2凹部を有し、
前記突起は、前記第2凹部に係合し、
前記突起と前記第2凹部とは、前記複合基板の非デバイス領域に位置する、ことを特徴とする請求項25に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項30】
前記突起は、前記第1凹部の底面に形成され、材質が誘電体層またはポリシリコンであり、
前記突起は、切断トラック上に分布されるストライプ状構造である、ことを特徴とする請求項29に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項31】
前記突起の頂面は、前記第1表面よりも高く、または前記第1表面と面一となり、前記圧電片で覆われていない、ことを特徴とする請求項30に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項32】
前記応力補償層の厚さが0.08μm~1μmであり、
前記応力緩衝層の厚さが0.08μm~1μmである、ことを特徴とする請求項27または28に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項33】
前記圧電片の材料は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを含み、
前記圧電片は、単結晶である、ことを特徴とする請求項25に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項34】
前記基板は、音響反射構造を含む、ことを特徴とする請求項25に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項35】
前記音響反射構造は、キャビティまたはブラッグ反射層を含む、ことを特徴とする請求項34に記載の音響波共振器を作製するための複合基板。
【請求項36】
請求項25~35のいずれか一項に記載の音響波共振器を作製するための複合基板を含む、ことを特徴とする表面音響波共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造の分野に関し、特に音響波共振器を作製するための複合基板、および表面音響波共振器および作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信技術の発展に伴って、移動データの伝送量も急速に上昇している。したがって、周波数リソースが限られて、及び可能な限り少ないモバイル通信装置を使用すべきである条件の下で、無線基地局、マイクロ基地局、または中継局などのワイヤレス電力伝送装置の送信パワーを向上させることは考慮しなければならない問題となり、同時に、モバイル通信装置フロントエンド回路におけるフィルタ電力に対する要求もますます高まることも意味する。タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムは、表面音響波(SAW)デバイスの圧電材料として広く用いられている。
【0003】
表面音響波とは、圧電片の表面で発生して伝播し、圧電片の深さが深くなるにつれて振幅が急速に減少する弾性波である。表面音響波フィルタの基本構造は、圧電特性を有する基板材料の研磨面上に、2つの音響電気変換器ーインターデジタル変換器(Interdigital Transducer、IDT)を作製し、それぞれ送信変換器と受信変換器として機能することである。送信変換器は、RF信号を音響表面波に変換し、基板の表面上で伝播し、一定の遅延を経た後、受信変換器により音響信号を電気信号に変換して出力し、フィルタリング過程は、電気から音への圧電変換及び音から電気への圧電変換で実現される。
【0004】
従来の解決手段では、音響波デバイスの圧電片が基板上に形成され、圧電片と基板との結合強度が不足し、脱落が発生しやすい。また、圧電片は横方向変形による破砕が生じることも現在直面している問題となっている。
【0005】
したがって、圧電片と基板との結合強度をどのように強化し、圧電片の横方向変形による破砕を防ぐか、現在の研究課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、圧電片と基板とを結合する際に、結合強度が低いことによる圧電片脱落や、圧電片の横方向変形による圧電片破砕問題を解決するための音響波共振器を作製するための複合基板、および表面音響波共振器および作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するために、本発明によれば、
背向する第1表面と、第2表面とを含む基板を提供するステップと、
前記第1表面に、前記第2表面に向かって凹む第1トレンチを形成するステップと、
前記第1トレンチに嵌入された圧電片を提供するステップであって、前記圧電片は、前記第1トレンチの形状と合致し、結合方法により前記第1トレンチの底面と前記圧電片とを結合するステップとを含む音響波共振器を作製するための複合基板の作製方法が提供される。
【0008】
本発明によれば、
前記複合基板を提供するステップと、前記圧電片の頂面に、第1インターデジタル変換器および第2インターデジタル変換器を形成するステップとを含む、前記複合基板を用いた表面音響波共振器の作製方法がさらに提供される。
【0009】
本発明によれば、
背向する第1表面と、第2表面とを含み、前記第1表面に前記第2表面に向かって凹む第1トレンチが設けられる基板と、
前記第1トレンチに嵌入され、前記基板と結合する圧電片であって、頂面が前記第1表面よりも高く、又は前記第1表面と面一となる圧電片とを含む音響波共振器を作製するための複合基板がさらに提供される。
【0010】
本発明によれば、
前記複合基板を含む表面音響波共振器がさらに提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである:
圧電片を第1トレンチに嵌入することで、第1トレンチの側壁が圧電片の移動を阻止し、圧電片の脱落を防止することができ、結合強度を向上させる。第1トレンチは、圧電片の横方向変形を制限し、圧電片の変形による破砕リスクを低減することもできる。また、現在、表面音響波共振器を作製するのは、圧電片を同じサイズのシリコンウェハに結合するのが一般的であり、シリコンウェハの仕様は、典型的には、12インチ、8インチ、6インチがあり、シリコンウェハの生産ラインが8インチのラインであれば、8インチの圧電片を採用し、6インチの圧電片に対して6インチの生産ラインに適用し、すなわち、8インチのラインにおいて6インチの圧電片を利用できない。本発明は、圧電片の仕様が一定である場合、異なる仕様の生産ラインに適応することが可能である。
さらに、結合層として二酸化ケイ素、ケイ素、窒化ケイ素を用いて、圧電片または第1トレンチの底部に堆積することにより直接形成することができ、半導体プロセスに適用することができ、また、二酸化ケイ素層は、圧電片の温度補償層として機能することもできる。
さらに、第1トレンチの底部に応力緩衝層、応力補償層が形成され、応力補償層は、結合層の応力を打ち消し合うために用いられ、応力緩衝層は、応力補償層と基板応力との差が大きいという問題を解決し、また、応力緩衝層と応力補償層は、音響波反射機能も備え、音響波を圧電片内へ反射させ、音響波エネルギーの損失を低減することができる。
さらに、第1トレンチの底部に複数の突起を設け、圧電片の底面に突起と合致する第2トレンチを設けることで、一方、圧電片と基板との結合強度を増加させることができ、他方、突起の高さが第1表面よりも少し高い場合には、突起を研磨停止層として機能することができ、圧電片の厚さの制御に有利である。
さらに、圧電材料が比較的脆く、切断時に破裂しやすく、材料が誘電体層やケイ素である突起を切断トラック上に分布させる場合には、切断時に圧電材料を避け、窒化ケイ素やケイ素材料などの誘電体材料を切断することにより、圧電基板を切断するときの破裂問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法のステップの流れの模式図である。
図2】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
図3】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
図4】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
図5】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
図6】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
図7】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
図8】本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
図9A】本発明の第2実施例に係る複合基板の作製方法の異なるステップに対応する構成図である。
図9B】本発明の第2実施例に係る複合基板の作製方法の異なるステップに対応する構成図である。
図10】本発明の第2実施例に係る複合基板の作製方法の異なるステップに対応する構成図である。
図11】本発明の第2実施例に係る複合基板の作製方法の異なるステップに対応する構成図である。
図12】本発明の第2実施例に係る複合基板の作製方法の異なるステップに対応する構成図である。
図13】本発明の第2実施例に係る複合基板の作製方法の異なるステップに対応する構成図である。
図14】本発明の第2実施例に係る複合基板の作製方法の異なるステップに対応する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面と具体的な実施例を参照しながら、本発明についてさらに詳細に説明する。以下の説明と図面によって、本発明の利点と特徴はさらに明らかになる。なお、本発明の技術手段の概念は、様々な異なる形態で実現することができ、
図面はすべて、本発明の実施例を容易かつ明白に説明するために、非常に簡略化された形で非正確な割合を用いているが、本発明の実施例は、図に示される領域の特定形状だけに限定されないことを理解されたい。
【0014】
素子や層が「上にある」、「と隣接する」、他の素子または層「に接続される」または「に結合される」と称される場合、それは、他の素子または層の上に直接にある、隣接する、または他の素子または層に接続してもよく、結合してもよく、または中間の素子または層が存在してもよい。逆に、素子が「の上に直接にある」、「と直接隣接する」、他の素子または層「に直接接続される」または「に直接結合される」と称される場合、中間の素子または層は存在しないことを了解されたい。「第1」「第2」「第3」など用語を用いて、様々な素子、構成部品、領域、層および/または一部について説明してもよいが、これらの素子、構成部品、領域、層および/または一部は、これらの用語によって限定されるべきではないことを了解されたい。これらの用語は、1つの素子、構成部品、領域、層または一部と別の素子、構成部品、領域、層または一部との間で区別するためのものである。したがって、本発明の教示を逸脱しない範囲内で、以下で説明する第1素子、構成部品、領域、層、または一部は、第2素子、構成部品、領域、層、または一部として表すことができる。
「下に」「下方に」「下方の」「の下に」、「の上に」「上方の」などの空間関係用語は、図面に示す1つの素子または特性と他の素子または特性との関係を容易に説明するためのものである。空間関係用語は、図面に示す配向に加えて、使用および動作中のデバイスの異なる配向を含むことを意図することを了解されたい。例えば、図面に示すデバイスを反転すると、次に、「他の素子の下の方にある」または「その下の」または「その下にある」素子または特性は、他の素子または特性「上」に配向されると記載する。したがって、例示的な用語「下方に」と「下に」は、上と下の2つの配向を含むことができる。デバイスは、付加的に配向(90度回転または他の配向)することができ、本明細書で使用される空間記述語もそれに応じて解釈される。
本明細書で使用される用語は、特定の諸実施例を説明するためのみのものであって、本発明を限定することは意図されていない。本明細書で使用される場合、単数形式の「一」、「1つ」および「前記/該」も、文脈では別の方法を特に指摘しない限り、複数の形態を含むことが意図される。用語「構成」および/または「含む」は、本明細書で使用される場合、特性、整数、ステップ、動作、素子、および/または構成部品の存在を特定するが、一つ以上の他の特性、整数、ステップ、工程、素子、構成部品、および/またはその集合の存在または追加を除外しないことが認識されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目の任意およびすべての組み合わせを含む。
本明細書に記載の方法が一連のステップを含み、本明細書に示されるこれらのステップの順序は、必ずしもこれらのステップを実行できる唯一の順序ではなく、一部の前記ステップを省略してもよく、及び/または、本明細書に説明されていない一部の他のステップを該方法に追加してもよい。ある図面における部材が他の図面における部材と同じであるが、すべての図面からこれらの部材を容易に認識できるが、図面の説明を明瞭にするために、本明細書は、すべての同じ部材の符号を各図にマーキングすることない。
【0015】
本発明は、複合基板の作製方法を提供する。
図1は、本発明に係る複合基板の作製方法のフローチャートであり、図1を参照すると、該方法は、対向する第1表面と、第2表面とを含む基板を提供するステップであって、第1表面に第2表面に向かって凹む第1トレンチを形成するステップS01と、圧電片を提供するステップであって、圧電片は、第1トレンチの形状と合致し、結合方法により第1トレンチの底面と圧電片とを結合するステップS02とを含む。圧電片を第1トレンチに嵌入することで、第1トレンチの側壁が圧電片の移動を阻止し、圧電片の脱落を防止することができ、結合強度を向上させる。第1トレンチは、圧電片の横方向変形を制限し、圧電片の変形による破砕リスクを低減することもできる。また、現在、表面音響波共振器を作製するのは、圧電片を同じサイズのシリコンウェハに結合するのが一般的であり、シリコンウェハの仕様は、典型的には、12インチ、8インチ、6インチがあり、シリコンウェハの生産ラインが8インチのラインであれば、8インチの圧電片を採用し、6インチの圧電片に対して6インチの生産ラインに適用し、すなわち、8インチのラインにおいて6インチの圧電片を利用できない。本発明は、圧電片の仕様が一定である場合、異なる仕様の生産ラインに適応することが可能である。
【0016】
第一実施例:
以下、図2図8を参照しながら、複合基板の作製方法についてさらに詳細に説明する。図2図8は、本発明の第1実施例に係る複合基板の作製方法の各ステップに対応する構成図である。
【0017】
図2および図3を参照すると、ステップS01を実行し、対向する第1表面と、第2表面とを含む基板10を提供し、第1表面に第2表面に向かって凹む第1トレンチ101を形成する。
【0018】
基板10は、圧電片の支持体として、より低い熱膨張係数があり、かつ半導体加工プロセスに適応できる。本実施例では、基板は、8インチのシリコンウェハであり、厚さが約600~800μmである。他の実施例では、基板10は、サファイア、水晶、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、シリコンゲルマニウムカーボン(SiGeC)、ヒ化インジウム(InAs)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、または他のIII/V化合物半導体のうちの少なくとも一種であってもよい。サイズは、12インチ、6インチ、4インチなどであってもよい。
【0019】
第1トレンチ101は、後期プロセスでその中に嵌入された圧電片を収容するために用いられる。形成された第1トレンチ101の大きさは、圧電片を第1トレンチ101に都合よく埋め込むように圧電片のサイズと合致する。本実施例における形成された第1トレンチ101は、円形であり、直径が6インチよりもわずかに大きく、本実施例では、第1トレンチ101の深さが0.5~10μmである。第1トレンチ101の深さは、最終的に必要な圧電片の設定厚さによって決定され、本実施例における研磨後の圧電片の厚さが0.3~10μmに設定される。
【0020】
本実施例では、エッチングプロセスにより基板10の第1表面に所定サイズの第1トレンチ101が形成される。具体的なエッチングステップとは、フォトリソグラフィプロセスを用いてエッチングを要するトレンチ位置をフォトレジストオンし、特殊な化学品を用いてウエットエッチングを行い、基板10を所定サイズのトレンチ101にエッチングし、結晶格子に沿ってレイヤ毎にエッチングするため、最後に形成されたエッチング底面が非常に平坦であり、後続の結合プロセスに有利であり、また、プロセス時間を制御することで、エッチングの深さを正確に制御することができる。エッチングの側面も非常に平坦な表面が得られ、その側面傾斜角が45度から90度の間にある(トレンチの側壁と底面との間のなす角を指し、トレンチの開口は、上が大きく下が小さく、90度に近づくことが望ましい)。圧電片を第1トレンチ101に嵌入できることを保証するために、トレンチ底面のサイズは、圧電片と基本的に等しい。
【0021】
図4図8を参照すると、ステップS02を実行し、第1トレンチに嵌入した圧電片20を提供し、圧電片20は、第1トレンチ101の形状と合致し、結合方法により第1トレンチ101の底面と圧電片20とを結合する。なお、ここでの形状合致は、形状が同じであることを意味するのではなく、圧電片を第1トレンチに嵌入できることを保証する必要があり、両者の形状がほぼ同じであればよい。例えば、第1トレンチの側面傾斜角が90度であれば、両者の形状は、ほぼ同じであり、側面傾斜角が90度でなければ、両者の形状は、同じではなくて、全体において形状がほぼ合致しているだけであり、圧電片を第1トレンチに嵌入できることを保証し、かつ隙間が生じすぎない。
【0022】
図4を参照すると、本実施例では、圧電片20は、6インチの圧電ウェハであり、厚さが300~600μm程度である。圧電片20の材料は、例えば、リン酸リチウム、炭酸リチウム、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、石英(Quartz)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ガリウム酸リチウム、ゲルマニウム酸リチウム、ゲルマニウム酸チタンまたは鉛亜鉛チタナイトなどのウルツ鉱型結晶構造を有する圧電材料およびそれらの組み合わせの圧電結晶または圧電セラミックを含む。圧電片20の材質がニオブ酸リチウムであり、軸方向が41°、基準辺方向が64°である場合、圧電片の伝送損失は小さいと考えられる。圧電片20の材質がタンタル酸リチウムであり、軸方向が42°、基準辺方向が112°である場合、圧電片の伝送損失は小さいと考えられる。本実施例では、圧電片20は単結晶である。
【0023】
本実施例では、結合方法は、溶融結合を使用しており、具体的な結合方法について、図5を参照して、第1トレンチの底面および側壁に第1結合層13を形成し、図6を参照して、圧電片の底面(第1トレンチに対向する面)に第2結合層21を形成し、図7を参照して、第1結合層13および第2結合層21を介して圧電片20と基板10とを結合することである。第1トレンチ101の底面および圧電片20の底面に、それぞれ結合層が形成され、圧電片20を両面結合層を介して第1トレンチ101に嵌入する。
【0024】
第1結合層13および第2結合層21の材質は、結合機能を実現できるものであればよく、例えば、結合材料は、二酸化ケイ素、ポリシリコン、窒化ケイ素または金属を含む。これらの結合材料は、圧電片20または第1トレンチ101の底部に堆積方法によって直接形成されてもよく、半導体プロセスに適用することができ、また、二酸化ケイ素層は、圧電片の温度補償層として機能することもできる。第1結合層13が酸化ケイ素材料であり、基板10がシリコン基板である場合、熱酸化方法を用いて第1結合層13を形成してもよい。結合要求を満たすために、第1結合層13、第2結合層21の厚さは、一般に0.3μmより大きく、プロセス時間およびコストから考えると、第1結合層13、第2結合層21も厚すぎるのに適していないため、第1結合層13、第2結合層21の厚さは、一般に0.3~1μmとする。
【0025】
本実施例では、第1結合層13を形成する際に、第1結合層が第1トレンチ外の基板10の上面に同時に形成されており、該部分の第1結合層は、除去するか保留するか、実際のプロセスニーズに応じて決定することができる。本実施例では、基板および圧電片の両方の上に結合層が形成されるが、圧電片上だけに第2結合層が形成されていてもよく、基板は、該第2結合層と結合しやすい材質、例えば、ケイ素を用いる。基板上に第1結合層が形成されていてもよく、該第1結合層の材質は、圧電片と結合しやすい材質を選んで用いる。したがって、本発明における溶融結合は、第1トレンチおよび/または圧電片を形成する底面に、第2結合層を形成するステップと、結合層を介して基板と圧電片とを結合するステップとを含み、図中の実施例に示す二層結合に限定されるものではない。本発明においては、基材と圧電片とを結合する形態は、上記の溶融結合に限定されるものではなく、共有結合または接着結合であってもよい。共有結合方法を採用すれば、圧電片の底面、第1トレンチの底面に対してその表面が要求される滑らかさになるように平坦化処理を行う必要があり、圧電片の底面、第1トレンチの底面を両者の間の分子力により結合できるようにする。接着結合を採用すれば、圧電片20および/または第1トレンチ101の底面にエポキシ樹脂接着剤などの接着剤を形成することにより、第1トレンチ101の底部に圧電片20を貼り付ける。また、本実施例では、第1トレンチ101の底面に第1結合層13を形成するステップ前に、応力緩衝層11および応力補償層12を形成するステップをさらに含む。第1トレンチの底部に応力緩衝層、応力補償層が形成され、応力補償層は、結合層の応力を打ち消し合うために用いられ、応力緩衝層は、応力補償層と基板応力との差が大きいという問題を解決する。基板10と圧電片20との間の応力を緩衝、打ち消し合わないと、両者の間に応力差が大きくなりやすく、基板10反り現象が生じるおそれがある。本実施例では、応力緩衝層11、応力補償層12の少なくとも一方が音響波反射層であり、音響波反射機能も備え、圧電片中の音響波が応力緩衝層11または応力補償層12に伝達されると、音響波が圧電片内に反射され、音響波のエネルギーの損失を低減する。
【0026】
ここで、基板10の材質は、シリコンを選んで用い、応力緩衝層11の材質は、二酸化ケイ素を含み、応力補償層12の材質は、窒化ケイ素、炭化ケイ素または窒化ホウ素、またはモリブデン、アルミニウム、タングステンまたはタリウムなどの金属材料を含む。このうち、窒化ケイ素、炭化ケイ素または窒化ホウ素、或いはモリブデン、アルミニウム、タングステン、タリウムまたはカリウム材料からなる応力補償層12は、同時に音響波反射機能も備え、音響波反射層として機能することができる。応力緩衝層および応力補償層の厚さは、0.08μmから1μmの範囲であってもよく、具体的な厚さ値は、応力補償の目標および音響波反射の要求に応じて調整することができる。本発明においては、応力緩衝層、応力補償層を形成することなく、第1トレンチの底面および/または圧電片の底面に音響波反射層を形成してもよい。音響波反射層が、単層フィルム層または多層フィルム層である。音響波反射層の材料は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、モリブデン、アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む。応力緩衝層、応力補償層の両方を形成してもよいし、音響波反射層を形成してもよい。結合を行う前に、まず、第1トレンチの底面に音響波反射層を形成し、その後応力緩衝層、応力補償層を形成するか、または第1トレンチの底面に応力緩衝層、応力補償層を形成した後に音響波反射層を形成する。
【0027】
本実施例では、上記の結合層、応力緩衝層、応力補償層を形成した後に、各層の薄膜に対してイオンビームトリミングプロセスをそれぞれ行い、各層の薄膜の表面を滑らかに平坦化させ、後続の結合プロセスにおける基板と圧電片との結合強度を増加させることができる。また、結合強度を向上させるために、少なくとも第1結合層13または第2結合層21を表面活性化するステップを含み、表面活性化の措置として、オゾン水処理、UVオゾン処理、プラズマ処理、イオンビーム処理のいずれかを利用することができる。
【0028】
図7を参照すると、位置合わせ装置により垂直光学的な位置合わせを実行して、圧電片20を第1トレンチ101に嵌入した後、第1結合層13と第2結合層21とを結合することができる。なお、本発明実施例では、圧電片20は、第1トレンチ101に嵌入しており、第1トレンチ101の側壁が圧電片20の移動を規制し、結合強度を強化する役割を果たしている。後期プロセスで圧電片20を薄くするときに、圧電片20は基板10から剥離されない。また、複合基板上にSAW共振器などのデバイスを形成する過程では、圧電片は、トレンチの係合配置及び側面結合の二重保障があるため、各プロセスの影響を受けることが困難であり、例えば高温プロセスの影響を受けて基板10から剥離する。一方、圧電片20は、第1トレンチ101内に位置するため、第1トレンチ101の側壁が圧電片20の横方向変形を制限し、圧電片20の横方向変形による破砕問題(例えば、温度の影響を受ける)を改善する。また、第1トレンチ101の側壁に第1結合層13、応力緩衝層11、応力補償層12がさらに形成されており、圧電片20の側壁のために保護層と音響波反射層を形成し、圧電片の破砕や音響波漏れを防止する。
【0029】
図8を参照すると、圧電片20を設定厚さになるように圧電片20の頂面を薄くするプロセスを行う。本実施例では、薄くするプロセスは、以下のステップを含む。
【0030】
ステップ1において、圧電片20の上面を機械的に研磨し、圧電片20を25~35μmまで薄くする。物理機械研磨装置を用いて、圧電片20の上面を粗研磨し、研磨精度に対する要求は低く、従来の研磨装置を利用すればよく、研磨時間を減少させるために、より速い研磨速度を有する装置を選択してもよい。ステップ2において、化学機械粗研磨を用いて、圧電片20を4~6μmまで薄くする。化学機械研磨(CMP)を用いて圧電片20の上面に対して比較的細かい研磨を行う。ステップ3において、化学機械研磨を用いて、圧電片20を0.6~0.7μmまで薄くする。化学機械研磨(CMP)を続けて用いて圧電片20の上面に対してより細かい研磨を行う。本実施例では、上述した3つのステップの研磨を実行した後、イオンビームトリミングプロセスにより圧電片20の上面をトリミングするステップとをさらに含み、トリミングされた圧電片20の表面粗さ指数(最も厚い部分と最も薄い部分との高さ差)が10nm未満になる。イオンビームのトリミングを経た後、ナノレベルに達することが可能であり、圧電片20の表面全体に対してトリミングを実現するだけでなく、局部の高さに対して調整することも実現できる。本実施例では、イオンビームトリミングプロセスは、イオンビーム電流が25mA~200mAであり、ウェハ全体の走査時間が30秒~10分間であるパラメータを用いる。
【0031】
本実施例では、圧電片20の上面をトリミングした後、圧電片20の結晶格子損傷を修復するために、炉心管やレーザ光を用いて圧電片20に対してアニール処理を行うステップをさらに含む。炉心管アニールは、横型炉、立式炉、高速熱処理装置(RTP)のような高温炉内に基板10を入れ、1100~1200度の温度で2~5分間加熱するステップを含む。レーザアニールは、圧電片20の局所温度を1100度~1300度まで加熱し、溶融状態に達し、再結晶して損傷を修復するために、圧電片に30秒~600秒の0.8~015ジュール/cm2のパルスレーザ光を作用させるステップを含む。アニール処理後の圧電片20は、より優れた圧電特性を有する。二種類のアニールの違いは、第1の方法で基板10と圧電片20とを全体的に加熱することであり、第2の方法で圧電片の表面のみを加熱することが可能である。
【0032】
本実施例では、第1トレンチに傾斜角が存在し、圧電片と第1トレンチの側面との間に比較的大きい隙間が存在する場合には、基板と圧電片とを結合した後に、先に圧電片と第1トレンチとの間の隙間を充填するための一層の充填層を堆積させることができる。該充填層は、隙間内のみに充填されてもよいし、圧電片頂面(基板と相背する面)および第1トレンチの前の基板表面の一部を同時に覆ってもよい。充填層が圧電片頂面(基板と相背する面)および第1トレンチの前の基板表面の一部を同時に覆う場合には、圧電片を薄くする際に、まず、圧電片頂面の充填層を薄くし、その後、圧電片を設定厚さまで薄くする必要がある。第1トレンチ以外の基板上の充填層部分を薄くするか否かは、実際のニーズに応じて決定することができる。または、圧電片を一定の厚さまで薄くした後、上記で説明した充填層を形成するステップを実行してもよい。ここで、充填層は、二酸化ケイ素などの誘電体層を採用することができ、この場合、二酸化ケイ素は温度補償層として機能することができる。充填層は、応力緩衝作用を有する誘電体層を採用することもでき、圧電片と基板との間の応力を緩和させる。
【0033】
第二実施例:
本実施例は、第1トレンチの底面に突起が形成され、圧電片の底面に第2トレンチが形成されるか、または、第1トレンチの底面に第2トレンチが形成され、圧電片の底面に突起が形成され、突起は、第2トレンチの形状と合致し、複合基板の非デバイス領域に位置し、圧電片を第1トレンチに嵌入すると、第2トレンチと突起とが係合する点で、第一実施例とは異なる。
【0034】
具体的には、図9A図12を参照すると、第1結合層13を形成するステップ前に、第1トレンチの底面に複数の突起30を形成するステップをさらに含み、突起30の高さが第1表面よりも低くしてもよいし、第1表面よりも高くしてもよい。図9Aを参照すると、突起30の高さが第1表面よりも低く、図9Bを参照すると、突起30の高さは第1表面に揃えられる。
【0035】
図11および図12を参照すると、第2結合層21を形成するステップ前または後に、圧電片20の第1トレンチ101と対向する面に、突起30に合致する複数の第2トレンチ31を形成するステップをさらに含む。圧電片20を第1トレンチ101に嵌入すると、第2トレンチ31と突起30とが係合する。他のステップは、第一実施例と同様である。図11を参照すると、第2トレンチ31の形状は、突起30の形状と合致し、突起を都合よく収容できることを基準として突起30よりもわずかに大きいサイズとする。ドライエッチングプロセスにより圧電片20の底面に第2トレンチ31を形成することができる。圧電片20の底面に第2結合層21を形成する必要がある場合には、第2トレンチ31は、第2結合層21を形成する前に形成してもよいし、第2結合層21を形成した後に形成してもよい。図11を参照すると、第2結合層21を形成した後に第2トレンチ31が形成される場合には、第2トレンチ31の底部には第2結合層がない。図12を参照すると、第2結合層21を形成する前に第2トレンチ31が形成される場合には、第2トレンチ31の底部および側面(図示せず)にも第2結合層21が形成される。突起の頂部に第1結合層、応力緩衝層、応力補償層が形成され、又は第2トレンチの底面に第1結合層が形成される場合には、異なるフィルム層の厚さおよび形成必要な圧電片の厚さに応じて、所望の高さの突起および所望の深さの第2トレンチを形成することができる。
【0036】
図9A図9Bを参照すると、突起30の形成方法は、エッチングにより第1トレンチを形成した後、フォトリソグラフィプロセスを用いて第1トレンチの底面をパターニングして突起30を形成するステップと、またはエッチングにより第1トレンチを形成した後、第1トレンチの底面に誘電体層を堆積させ、誘電体層をエッチングして突起30を形成するステップとを含む。その後、応力緩衝層、応力補償層および第1結合層を形成する。突起30の作用により圧電片と基板10との結合面積を増加させ、これにより両者の結合強度を向上させる。図9Bを参照すると、突起30の高さは第1表面に揃えられる場合、突起30の形成方法は、基板10をパターニングして、突起30を有する第1トレンチ101を形成するステップをさらに含むことができる。この場合、突起30は、圧電片と基板との結合強度を向上させるだけではなく、突起30の高さは基板10の第1表面よりも高く、または基板10の第1表面に揃えられる場合には、研磨停止層として機能することができる。図9Bおよび図13を参照すると、圧電片の頂面が基板よりも高く、圧電片を基板に結合した後、圧電片20に対して研磨薄くするプロセス(図14を参照)を行うステップと、突起30が第1トレンチの底面に形成されるか、または突起30頂面に研磨停止層を形成するステップであって、突起30が研磨薄くするプロセスの研磨停止層として機能するステップとをさらに含む。突起30が研磨停止層として機能することは2つの場合に分けられ、1番目の場合、突起の材質は基板の材質と異なり、堆積プロセスにより窒化ケイ素などの誘電体層を形成した後、誘電体層に対してフォトリソグラフィプロセスを実行して突起を形成し、この場合、突起自体が研磨停止層として機能することができる。2番目の場合、突起を形成した後に、応力緩衝層および応力補償層も形成されるため、突起頂面に位置する応力緩衝層または応力補償層が研磨停止層として機能することができる。例えば、応力補償層は、窒化ケイ素を選択することができ、該応力補償層が研磨停止層として機能することもできる。
【0037】
図14を参照すると、本実施例では、2番目の場合を用いて、応力補償層は、窒化ケイ素を選択し、圧電片を研磨薄くする用の停止層として機能することができる。図10は、突起の1つの配列図であり、ここで、突起30がメッシュ状に配列され、突起30が第1トレンチの底面に形成され、突起30の材質が誘電体層またはケイ素であり、突起が切断トラック上に分布され、ストライプ状構造である。圧電片自体の材質が比較的脆く、切断時に破裂しやすいが、本実施例では、切断トラック上に材料が誘電体層やケイ素材料である突起を分布することで、切断時に圧電材料を避け、窒化ケイ素などの誘電体材料を切断し、そうすることにより、圧電基板を切断するときの破裂問題を解決することができる。本実施例では、突起頂面は第1表面よりも高いか、または同じ高さにあり、かつ突起頂面は圧電片で覆われていない。そうすることにより、複合基板を切断する際に、圧電材料を切断することを完全に避けることができる。もちろん、本発明において、突起の分布形態は、図10に示す形態に限定されず、点状分散分布であってもよく、結合強度を向上する役割を果たしている。また、本発明において、第1トレンチの底面に突起を形成する前に、第1トレンチに応力緩衝層、応力補償層、および/または音響波反射層を形成してもよい。
【0038】
第二実施例は、主に突起および第2トレンチを形成するか否か点で、第一実施例とは異なり、他のステップについては、第一実施例と同じであるため、ここでの説明を省略する。
【0039】
第三実施例:
本発明第三実施例によれば、複合基板がさらに提供される。図8は、本発明一実施例に係る複合基板の構造概略図であり、図8を参照すると、該複合基板は、基板10と、圧電片20とを含み、基板10は、対向する第1表面と、第2表面とを含み、第1表面に第2表面に向かって凹む第1トレンチが設けられ、圧電片20は、第1トレンチに嵌入して基板10と結合し、その頂面が第1表面よりも高いか、または複合基板表面と平面である。本実施例では、複合基板の表面は平面である。結合方法は、共有結合、接着結合、溶融結合のうちの1つを含む。具体的な結合方法の説明については方法部分に関連する記載を参照されたい。
【0040】
続けて図8を参照すると、本実施例では、第1トレンチの底部、側壁には第1結合層が形成され、圧電片体と第1トレンチとに対向する表面には第2結合層が設けられる。本実施例では、第1結合層と第1トレンチの底部との間には、応力緩衝層と、応力補償層とをさらに含み、ここで、応力補償層は、応力緩衝層と第1結合層との間に位置する。なお、第一実施例の方法部分における結合層、応力緩衝層、応力補償層の材料、厚さおよび分布位置、作用に関連する部分において参照によりここに援用されることができるため、説明を省略する。本発明において、溶融接合の方法は、上記の説明に限定されるものではなく、第1結合層が第1トレンチの底部、側壁に設けられ、および/または第2結合層が圧電片と第1トレンチとに対向する表面に設けられるという要求を満足すればよい。本発明の他の実施例では、圧電片と基板との間に音響波反射層を備え、音響波反射層は、応力緩衝層、応力補償層の上面または下面、または両方との間に位置していてもよく、または、前記基板の間に、第1トレンチ上に順次位置する応力緩衝層および応力補償層を有してもよく、応力緩衝層、応力補償層のうちの少なくとも1つは、音響波反射層とする。方法に関連する一部分において参照によりここに援用されることができる。
【0041】
図9A図9Bを参照すると、他の実施例では、第1トレンチ101内に複数の突起30をさらに含む。図11図12を参照すると、圧電片20の底面には、突起30と合致する複数の第2トレンチ31を含み、図13図14を参照すると、突起30は、第2トレンチに係合する。突起と第2トレンチを設けることで、一方、圧電片と基板との結合強度を増加させることができ、他方、圧電片の上頂面に対して薄くするプロセスを行う際に、突起を研磨停止層として機能し、圧電片の厚さの制御に有利である。本実施例では、突起と第2トレンチとの設置形態は、図9A図9Bおよび図11図12に示す形態に限定されず、圧電片底面に突起を設け、第1トレンチ底面に第2トレンチを設けてもよい。すなわち、本発明における第1トレンチ底面、圧電片底面のうち、一方には複数の突起を有し、他方には突起と合致する第2トレンチを有し、突起は、第2トレンチに係合し、かつ突起および第2トレンチは、いずれも複合基板の非デバイス領域に位置する。ここで、突起が第1トレンチの底面に形成される場合には、突起の材質が誘電体層またはケイ素であり、突起が切断トラック上に分布され、ストライプ状構造である。突起頂面は第1表面よりも高いか、または同じ高さにあり、かつ突起頂面は圧電片で覆われていないと、圧電基板を切断するときの破裂問題を解決することができる。方法部分における突起の材質、分布、利点などに関連する部分において参照によりここに援用されることができる。他の実施例では、基板は、キャビティまたはブラッグ反射層を含む音響反射構造をさらに含む。音響反射構造は、圧電片体から基板に入力された縦方向音響波を圧電片内に反射させ、音響波のエネルギー損失を減少させるために用いられる。
【0042】
第四実施例:
本発明第四実施例によれば、表面音響波共振器の作製方法がさらに提供される。
当該方法は、複合基板を提供するステップと、圧電片の頂面に、第1インターデジタル変換器および第2インターデジタル変換器を形成するステップとを含む。一実施例では、複合基板に音響反射構造を形成し、音響反射構造によって囲まれた領域の上方に、第1インターデジタル変換器および第2インターデジタル変換器を形成する。一実施例では、音響反射構造が第1キャビティであり、第1キャビティを形成するステップは、基板の第2表面にエッチングプロセスにより第1キャビティを形成するステップであって、第1キャビティの底部は、圧電片の第2表面または第2結合層または第1結合層を露出させるステップと、基板の第2表面に結合して第1キャビティを封止する第2基板を提供するステップと、を含む。第1キャビティを形成するステップ前に、基板の厚さを0.5~5μmになるように基板の第2表面を薄くするステップをさらに含み、第2基板の厚さが300~500μmである。他の実施例では、音響反射構造がブラッグ反射層であり、ブラッグ反射層を形成するステップは、基板の第2表面にエッチングプロセスにより第2キャビティを形成するステップであって、第2キャビティの底部は、圧電片の底面または第1結合層または第2結合層を露出させるステップと、第2キャビティの底部に、少なくとも2組の交差する第1音響インピーダンス層および第2音響インピーダンス層を形成するステップとを含み、ここで、第1音響インピーダンス層の硬度は、第2音響インピーダンス層の硬度よりも高く、第1音響インピーダンス層の材料は、タングステンを含む金属または炭化ケイ素、金剛石を含む誘電体から構成され、第2音響インピーダンス層は、酸化ケイ素または窒化ケイ素を含む。
【0043】
本発明によれば、上記の複合基板を含む表面音響波共振器がさらに提供される。
【0044】
なお、本明細書に記載される様々な実施例は、いずれも関連する態様を用いて説明されているので、各実施例の間同じまたは同様の部分について、相互参照すればよい。各実施例は、他の実施例と異なる点を重点として説明し、特に、構造実施例の場合、方法実施例と実質的に同様であるため、説明が比較的簡単であり、これに関連する点は方法実施例の説明部分を参照すればよい。
【0045】
以上の説明は、本発明のより好ましい実施例の説明にすぎず、本発明の特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、上記開示された方法および技術内容に基づいて行ういかなる変更、修飾は、いずれも本発明の技術的解決手段の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0046】
10 基板
101 第1トレンチ
11 応力緩衝層
12 応力補償層
13 第1結合層
20 圧電片
21 第2結合層
30 突起
31 第2トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14