(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20230607BHJP
E04G 21/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
G06Q50/08
E04G21/00 ESW
(21)【出願番号】P 2022054549
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-188419(JP,A)
【文献】特開2012-2036(JP,A)
【文献】特開2018-35626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
E04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち着目する第1着目大ブロックデータにおいて、前記第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する分割基準点設定部と、
前記第1分割基準点から任意の2方向に延びる第1軸線および第2軸線と、前記第1分割基準点から前記第1軸線および前記第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成する軸線生成部と、
前記第1分割基準点を原点として、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線に沿って、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で前記第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する小ブロック生成部と、
を備えたコンクリート打設管理装置。
【請求項2】
前記分割基準点設定部は、前記複数の小ブロックを前記第3軸線方向から見た断面変化が不連続となる位置である断面変化面内に前記第1分割基準点を設定する請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項3】
前記軸線生成部は、
前記第1軸線および前記第2軸線を含む平面が、水平面となるように前記第1軸線および前記第2軸線を生成し、
前記第3軸線が、鉛直線となるように前記第3軸線を生成する、請求項1または2に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項4】
前記第1軸線および前記第2軸線は、互いに直交する請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項5】
前記分割基準点設定部は、前記大ブロックデータのうち前記第1着目大ブロックデータとは異なる第2着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第2分割基準点を設定し、
前記第2分割基準点に対して、前記第1分割基準点および前記第1着目大ブロックデータに対して生成された複数の小ブロックのデータを、前記第1分割基準点が前記第2分割基準点と重なるように移動させる移動部を、さらに備え、
前記小ブロック生成部は、移動させられた、前記第1分割基準点および前記第1着目大ブロックデータに対して生成された複数の小ブロックのデータに基づいて、前記第2着目大ブロックデータに対して、複数の小ブロックを生成する請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項6】
前記所定サイズの大ブロックは、所定期間で打設可能なコンクリート量に応じて決定される請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項7】
前記所定サイズの小ブロックは、コンクリート運搬車の運搬可能量に応じて決定される請求項1~6のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項8】
構造物の3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち着目する第1着目大ブロックデータにおいて、前記第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する分割基準点設定ステップと、
前記第1分割基準点から任意の2方向に延びる第1軸線および第2軸線と、前記第1分割基準点から前記第1軸線および前記第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成する軸線生成ステップと、
前記第1分割基準点を原点として、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線に沿って、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で前記第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する小ブロック生成ステップと、
を含むコンクリート打設管理方法。
【請求項9】
構造物の3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち着目する第1着目大ブロックデータにおいて、前記第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する分割基準点設定ステップと、
前記第1分割基準点から任意の2方向に延びる第1軸線および第2軸線と、前記第1分割基準点から前記第1軸線および前記第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成する軸線生成ステップと、
前記第1分割基準点を原点として、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線に沿って、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で前記第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する小ブロック生成ステップと、
をコンピュータに実行させるコンクリート打設管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、管理者が、リフト領域を指定し、指定されたリフト領域について、所定値以下であって、ほぼ均等分割となる位置を指定し、指定された高さ位置を境界面として、リフト領域を各層に分割して輪切りモデルを生成し、生成した輪切りモデルの上面図において、所定の個数となるように複数のブロックに分割し、他の各層についても、同様にブロックに分割することにより、領域分割処理を行うことが開示されている(同文献段落[0056]~[0059]、
図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、管理者が、所定値以下であって、ほぼ均等分割となる位置を指定しなければならず、領域分割処理の手順が煩雑となっており、ブロックを容易に生成することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理装置は、
構造物の3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち着目する第1着目大ブロックデータにおいて、前記第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する分割基準点設定部と、
前記第1分割基準点から任意の2方向に延びる第1軸線および第2軸線と、前記第1分割基準点から前記第1軸線および前記第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成する軸線生成部と、
前記第1分割基準点を原点として、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線に沿って、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で前記第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する小ブロック生成部と、
を備えた。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理方法は、
構造物の3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち着目する第1着目大ブロックデータにおいて、前記第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する分割基準点設定ステップと、
前記第1分割基準点から任意の2方向に延びる第1軸線および第2軸線と、前記第1分割基準点から前記第1軸線および前記第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成する軸線生成ステップと、
前記第1分割基準点を原点として、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線に沿って、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で前記第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する小ブロック生成ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理プログラムは、
構造物の3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち着目する第1着目大ブロックデータにおいて、前記第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する分割基準点設定ステップと、
前記第1分割基準点から任意の2方向に延びる第1軸線および第2軸線と、前記第1分割基準点から前記第1軸線および前記第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成する軸線生成ステップと、
前記第1分割基準点を原点として、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線に沿って、前記第1軸線、前記第2軸線および前記第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で前記第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する小ブロック生成ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分割基準点を基準として所定サイズの小ブロックを生成するので、所定サイズの小ブロックを容易に生成することができ、効率的な打設管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の前提技術におけるコンクリート打設管理の概要を説明するための図である。
【
図1B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割基準点設定の概要を説明するための図である。
【
図1C】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による軸線設定の概要を説明するための図である。
【
図1D】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割操作の概要を説明するための図である。
【
図1E】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置による複数モデルを含む場合の分割基準点設定の概要を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置が有する打設量テーブルの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の動作概要を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのコンクリート打設管理装置100について、
図1A~
図5を用いて説明する。コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設計画に合わせて構造物を所定サイズの小ブロックに分割して、コンクリートの打設計画等を立て、効率的なコンクリート打込みを管理するための装置である。
【0012】
通常、構造物のコンクリート打設を行う場合、アジテータ車(コンクリート運搬車)で未硬化のコンクリートを運搬し、例えば、1日の施工領域に組み立てられた型枠内に、順次、未硬化のコンクリートを打ち込む。そして、先に打ち込まれたコンクリートが硬化する前に、次のコンクリートを打ち重ね、バイブレータなどによりコンクリートを締め固め、打ち重ねたコンクリートと打ち重ねられたコンクリートとの両方のコンクリートを一体化させる。この打込みから一体化までの作業を繰り返すことで、施工領域へのコンクリート打込みが完了する。コンクリートの打込み完了後は、一定期間養生して硬化させ、組み立てた型枠の脱型を行う。
【0013】
この場合、例えば、
図1Aに示したような構造物に、コンクリートを順次打ち込むときに、先行して打込んだコンクリートが硬化する前に、打ち重ねられたコンクリートと打ち重ねたコンクリートとをバイブレータなどによって一体化させる必要がある。なお、打重ね時間とは、先のコンクリートの打込が終了してから次のコンクリートの打込が始まるまでの時間をいう。打重ね時間の開始は、先の未硬化のコンクリートの流し込みが終わった時刻とし、バイブレータなどによる締固めが続いたとしても、この打重ね時間の計測はスタートさせる。これは、未硬化のコンクリートの流し込みが終了した時点から、既にコンクリートの硬化が始まっているからである。このとき、コンクリートの打重ね時間が管理時間(例えば、コンクリート標準示方書に準ずる管理時間)を超過すると、コンクリートの打継ぎ部分にコールドジョイントなどが発生し、弱部となるおそれがある。そのため、構造物のコンクリート打設においては、材料練り混ぜからの時間管理や、コンクリートの打込み順序、打重ね時間の管理などが重要となる。
【0014】
ここで、コンクリートの施工領域の規模が大きくなると、多量のコンクリートが必要となり、コンクリートを運搬するために必要となるアジテータ車の台数が多くなる。さらに、大規模構造物のコンクリートを打ち込むためには、アジテータ車の運搬可能量などに応じて、当該構造物を複数の層に分けるなどして、順序立ててコンクリートを打ち込まなければならず、コンクリートの層数も多くなる傾向にある。そのため、打ち継ぎ部も多くなるので、コールドジョイント150などの弱部が発生することがないように、コンクリートの打重ね時間や供給量などを考慮した上で、打込み速度、打込み順序や打込み層厚などを決めてコンクリートの打設計画160を立てる必要があった。
【0015】
しかしながら、コンクリートの打設計画160を立てるために、構造物をいくつかの層へ分割したり、所定サイズの小ブロックへ分割したりする作業は、構造物の2次元設計図を用いて、現場において現場作業者の手作業で行われていた。そのため、層分割や小ブロック分割を行ってどういった順序で打ち込むかという打設計画を立てることは困難な場合が多く、現場作業者の負担になっていた。そこで、ユーザは、コンクリート打設管理装置100を用いることにより、コンクリートの供給量や打込み速度などの基本条件に基づいて、層分割や小ブロック分割、各小ブロックの打込み順序の設定を容易に行えるようになる。
【0016】
次に、
図1B~
図1Eを参照して、コンクリート打設管理装置100を用いた、打設計画の管理について説明する。まず、
図1Bに示したように、3次元CAD(Computer-Aided Design)などを用いて設計した構造物の3次元データ等を含む3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100に接続されたモニターやディスプレイ、ユーザが所持するタブレットやスマートフォンなどの携帯端末等のディスプレイ140などに表示される。なお、3次元設計情報120には、例えば、工区や工期などの情報も含まれている。また、3次元設計情報120は、予め3次元CADなどを用いて作成されている。
【0017】
3次元設計情報120は、所定期間に打設可能なコンクリートの量に応じて設定された施工領域であり、複数の大ブロック123,124,125,126に分けられている。施工領域は、例えば、1日で打設可能なコンクリートの打設範囲として設定される。例えば、大ブロック123に着目して、この大ブロック123を所定サイズの小ブロックに分割する場合を考える。
【0018】
まず、
図1Bに示したように、ユーザは、小ブロックへの分割対象として着目する大ブロック123(着目大ブロック)において、小ブロックへの分割の基準となる分割基準点121を指定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが指定した位置に分割基準点121を設定する。ここで、分割基準点121は、大ブロック123を、どの位置を基準にどの方向へ分割するかの基準となる点である。
【0019】
図1Bに示した例では、大ブロック123の頂点部分(底面左下)に、分割基準点121を設定している。なお、分割基準点121は、頂点部分以外にも設定することが可能であり、例えば、頂点と頂点との間の辺の部分や、側面部分(表面部分)の任意の位置、大ブロック123の内部の任意の位置などに設定することができる。ユーザは、他の大ブロック124,125,126についても、大ブロック123と同様の操作を行って、分割基準点を設定することができる。
【0020】
次に、
図1Cに示したように、軸線の設定を行う。すなわち、分割基準点121を原点と考えて、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが、指定した位置にX軸方向の端点122を設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、端点122を通過する線分として、X軸127を生成させる。生成された軸線(X軸127)は、図示したように、例えば、大ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。
【0021】
また、Y軸、Z軸についても同様に、ユーザが、指定した各軸線の端点の位置に基づいて、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、指定した各端点を通過する線分として、Y軸、Z軸を生成させる。そして、生成された各軸線(Y軸、Z軸)は、大ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。各軸線(X軸127、Y軸、Z軸)は、大ブロック123の縦横高さ方向に平行な線分となっている。
【0022】
続いて、
図1Dに示したように、ユーザは、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割するために必要なパラメータの設定を行う。ユーザが設定するパラメータは、例えば、等幅分割(分割の間隔)、均等分割(分割数及び丸め幅)、層厚などである。これらのパラメータは、例えば、ディスプレイ140の右側に表示されたパラメータ設定用ウィンドウの所定のボックスに数値を入力することにより設定される。
【0023】
ここで、等幅分割は、所定幅(所定の分割間隔)で構造物を分割して、所定サイズの小ブロックを得る場合をいう。この場合、例えば、分割基準点121から、800mm間隔で構造物の分割線が生成され、表示されるようになる(
図1D参照)。
【0024】
また、均等分割は、所定の分割数の小ブロックが生成されるように構造物を分割する場合をいう。丸め幅は、例えば、均等分割する際の、分割により生成される各小ブロックの大きさの単位を決めるものである。例えば、丸め幅を100mmと設定すると、生成される小ブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、100mm刻みの単位である、600mm、700mm、800mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。同様に、例えば、丸め幅を10mmと設定すると、生成されるブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、10mm刻みの単位である、810mm、820mm、830mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。
【0025】
このように、丸め幅を設定して、小ブロックのサイズの端数を調整することにより、各小ブロックの体積等の管理が容易になるため、コンクリートの打設管理を容易に行えるようになる。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定されたパラメータに従って、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割する。所定サイズの小ブロックに分割したら、小ブロックのそれぞれに、打込み順を設定することにより、コンクリートの打設を適切に管理することができる。打込み順の設定は、例えば、層毎に行われるが、これには限定されない。
【0026】
図1Eに示したように、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物が含まれている場合には、例えば、それぞれの構造物に対して分割基準点を設定することにより、構造物全体として、小ブロックに分割する。なお、このような、1つの構造物として、複雑な形状を有している構造物と考えられる場合には、複数の異なる形状を有する構造物同士が結合したものと考えることが可能である。
【0027】
そして、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物を含む場合、それぞれの構造物の接続部分は、Z軸方向から、構造物全体を見た場合、断面変化が不連続となる位置である断面変化面となっている。
【0028】
そして、このような断面変化面が存在するときに、例えば、1つの分割基準点131を基準に、構造物を分割する場合、断面変化面を跨る部分で連続してコンクリートを打ち込むことになり、断面変化面が弱部となってしまう。そのため、この断面変化面に境界を設けて管理する必要がある。したがって、断面変化面が出現するたびに、分割基準点131の設定が必要となる。例えば、断面変化面を跨いでコンクリートを打ち込んだ場合、未硬化のコンクリートからの水分上昇(ブリーディング)等が発生し、断面変化面にブリーディングが集中して、弱部となる恐れがある。よって、断面変化面が存在する場合には、断面変化面が境界面となるように、分割基準点131を設定することが好ましい。このように、断面変化面に分割基準点131を設定することで(断面変化面を境界面とすることで)、断面変化面を跨ぐ小ブロックが生成されることを抑制することができる。
【0029】
以上のように、ユーザは、3次元設計情報130に対して、分割基準点131を複数設定し、設定した分割基準点131のそれぞれについて、分割幅や分割数などのパラメータを設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定された分割基準点131やパラメータに基づいて、構造物を所定サイズの小ブロックに分割する。
【0030】
次に
図2を参照して、コンクリート打設管理装置100の構成について説明する。コンクリート打設管理装置100は、取得部201、分割基準点設定部202、軸線生成部203および小ブロック生成部204を有する。
【0031】
取得部201は、構造物の3次元設計情報120(130)を取得する。3次元設計情報は、3次元CADを用いて生成された構造物(コンクリート構造物)の3次元データであり、工区や工程などの設計情報を含む情報であるが、ここに示した情報以外の情報を含んでもよい。また、構造物は、工程や工区、部材名(構造物の部品名)に応じた所定ブロックに分けられていてもよく、3次元設計情報120には、この所定ブロックに関するデータが含まれていてもよい。
【0032】
ここで、工程は、例えば、1日に行えるコンクリートの打設量に応じて設定される期間であり、例えば、構造物全体に対して、あるいは、部材名に対して、設定される。また、工区は、施工単位として区切られた区域のことであり、例えば、構造物全体に対して、当該構造物を構成する各部材ごとに区切られた区域である。
【0033】
なお、3次元設計情報は、コンクリート打設管理装置100において生成されても、コンクリート打設管理装置100以外の装置において生成されてもよい。
【0034】
分割基準点設定部202は、取得した3次元設計情報120に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち、着目する第1着目大ブロックデータ(例えば、大ブロック123,124,125,126のそれぞれについてのデータ)において、第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する。
【0035】
ここで、例えば、分割基準点121は、大ブロック123(大ブロック123のデータ)を分割して複数の小ブロックを生成する際に、大ブロック123を分割するための基準とする点である。
【0036】
分割基準点は、任意の位置に設定することも可能である。すなわち、分割基準点は、構造物の3次元設計情報120上の点(位置)のみならず、構造物の3次元設計情報120上の点から離れた点(位置)、例えば、作業空間内の任意の点(位置)に設定することも可能である。
【0037】
また、分割基準点は、複数設定することも可能である。例えば、構造物の形状が複雑な場合や、構造物全体として、複数の構造物の組み合わせとなっている場合などに、構造物の形状などに応じて、複数の分割基準点を設定することも可能である。
【0038】
さらに、構造物の3次元設計情報120に断面変化面が含まれている場合には、断面変化面に分割基準点を設定する。ここで、断面変化面は、例えば、構造物を鉛直方向から見た場合、構造物の断面変化が不連続となっている位置を含む面となっている。すなわち、断面変化面は、一般的に、構造物の水平方向の断面形状が変わる水平面をいうが、断面の取り方は、構造物の鉛直方向に水平な面には限られない。構造物の任意の軸方向に対して垂直な平面の断面形状の変化する面も断面変化面に含まれる。そのため、断面変化面に分割基準点を設定することにより、断面変化面を跨いだ小ブロックの形成を防ぐよう、制御することができる。例えば、構造物全体として複数の構造物が含まれているような場合には、各構造物同士の結合部分は、断面変化面となるため、このような構造物の場合、分割基準点設定部202は、当該断面変化面に分割基準点を設定する。
【0039】
また、断面変化面は、3次元CADを用いて構造物の設計を行った段階で、例えば、CADのオペレータ等により予め設定される。そのため、例えば、コンクリートの打設現場で、現場担当者が、構造物の3次元設計情報を見た場合、構造物の3次元データを含む3次元設計情報には、断面変化面を表示することが可能になっている。そのため、断面変化面に分割基準点121を設定する場合であっても、3次元設計情報120に表示された断面変化面を参考にして、分割基準点121を設定することができる。また、分割基準点設定部202においても、断面変化面を表示することは可能である。
【0040】
軸線生成部203は、第1分割基準点(分割基準点121)から任意の2方向に延びる第1軸線(X軸127)および第2軸線(Y軸)と、第1分割基準点から第1軸線および第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線(Z軸)と、を生成する。
【0041】
軸線は、大ブロック123などを分割する際の基準となる線分となる。例えば、大ブロック123などの分割においては、各軸線(X軸127、Y軸、Z軸)と直交するような分割線により、大ブロック123などを分割することとなるが、各軸線は、この場合の基準となる。なお、分割線は、各軸線に直交するものでなくてもよい。
【0042】
なお、上述のように、ユーザが、X軸やY軸の延びる方向を指定しても、また、コンクリート打設管理装置100において、X軸やY軸の延びる方向を自動的に決定してもよい。また、X軸やY軸の延びる方向は、いずれの方向であってもよい。さらに、ここで生成された各軸線は、他の大ブロック124,125,126のそれぞれで共用しても、また、他の大ブロック124,125,126のそれぞれに独自の軸線を生成してもよい。また、各軸線は、大ブロック123,124,125,126のそれぞれの分割の際に基準とする線分であるので、大ブロック123,124,125,126や構造物の縦横高さ方向に沿ったものでなくてもよい。
【0043】
また、例えば、軸線生成部203は、第1軸線および第2軸線を含む平面が水平面となるように第1軸線および第2軸線を生成し、さらに、第3軸線が鉛直線となるように第3軸線を生成する。このように、第1軸線(X軸127)と第2軸線(Y軸)とを含む平面が、水平面となるようにし、第3軸線が鉛直線となるようにすると、実際の構造物の建設状態において、コンクリートの打設管理を行えるようになるため有利である。
【0044】
さらに、軸線生成部203は、第1軸線(X軸127)と第2軸線(Y軸)とが、互いに直交するように、第1軸線および第2軸線を生成する。構造物の断面形状が、例えば、矩形や円形、半円形、菱形などの場合には、第1軸線および第2軸線が直交するように軸線を生成すると、その後の、小ブロックへの分割において、打設管理の容易な小ブロックを生成することができるようになる。
【0045】
小ブロック生成部204は、第1分割基準点(分割基準点121)を原点として、第1軸線(X軸127)、第2軸線(Y軸)および第3軸線(Z軸)のそれぞれを所定間隔または所定分割数で第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する。なお、ブロック分割をする際には、任意の幅でブロックを分割することも可能である。
【0046】
生成される小ブロックは、例えば、大ブロック123(第1着目大ブロック)を、分割基準点121を基準として、各軸線(X軸127、Y軸、Z軸)に沿って、所定の間隔(例えば、数百mm間隔)または分割数で分割して得られる。
【0047】
なお、大ブロック123の分割は、所定間隔による分割と、所定分割数による分割とを組み合わせてもよい。すなわち、例えば、X軸方向およびY軸方向には、所定間隔(数百mm間隔)で、Z軸方向には、所定分割数で、大ブロック123を分割してもよい。そして、このように生成された複数の小ブロックについて、打設順を設定することにより、コンクリートの打設を適切に管理することができる。打設順の設定は、例えば、層毎に行われるが、これには限定されない。また、打設順の設定は、隣接する小ブロックの配置や数などに応じても行われる。
【0048】
さらに、小ブロックへの分割は、生成される小ブロックの幅を任意のサイズに設定して行うことも可能である。すなわち、上述の手順により生成された小ブロックのサイズについて、小ブロックのサイズの微調整を行うことにより、生成された小ブロック同士がよりバランスの取れた構成とすることができる。また、生成される小ブロックのそれぞれについて、個別にサイズを設定することにより、大ブロック123,124,125,126などを複数の小ブロックに分割することができる。
【0049】
例えば、一旦所定間隔で大ブロックを分割して、小ブロックを生成し、生成された小ブロックについて、小ブロックの幅を任意のサイズに設定して、個別に微調整を行うことができる。例えば、
図1Dの右側に示した表の幅の列に示された数値を変更することにより小ブロックのサイズを調整することができる。
【0050】
例えば、「番号」の列が4の行(4番目の小ブロック)の幅が、現状では、700mmであるものを、50mm増やして750mmとし、4番目の小ブロックが増えた分を他の小ブロックで吸収するようにする。例えば、「番号」の列が3の行(3番目の小ブロック)の幅が、現状では、800mmであるものを、50mm減らして750mmとするように、小ブロックのサイズを調整することができる。このように、生成された小ブロックの幅の数値を変更することにより、小ブロックのサイズを調整できる。
【0051】
また、
図1Dの右側に示した表において、行を追加したり、所定の行を削除したりすることにより小ブロックのサイズを調整することができる。例えば、所定分割数で、大ブロックを分割した場合、生成された小ブロックの幅(サイズ)が、想定よりも大きくなった際に、行を1つ追加、つまり、小ブロックを1つ増やして、生成された小ブロックの幅を調整することができる。これとは反対に、例えば、所定分割数で、大ブロックを分割したが、生成された小ブロックの幅が、想定よりも小さくなった際に、行を1つ削除、つまり、小ブロックを1つ減らして、生成された小ブロックの幅を調整することもできる。
【0052】
さらに、上述したように、所定間隔や所定分割数で大ブロックを分割する方法だけではなく、小ブロックの生成前に、生成される小ブロックのサイズをそれぞれ個別に指定して、指定されたサイズで小ブロックのそれぞれを生成することも可能である。これにより、小ブロックが生成された際に、それ以前に生成された小ブロックとの関係や全体のバランスなどを確認しながら、大ブロックを分割することが可能となる。
【0053】
また、所定分割数で、大ブロック123を分割する場合、例えば、大ブロック123の1辺の長さと、分割数との関係で、端数が生じることがある。この場合、丸め幅を設定することにより、端数を調整することができる。例えば、丸め幅を100mmと設定すると、所定分割数で分割されて生成される各小ブロックは、辺の長さが100mm単位(例えば、800mmや700mm・・・)の小ブロックとなる。また、例えば、丸め幅を10mmと設定すると、生成される各小ブロックは、辺の長さが10mm単位(例えば、750mmや760mm・・・)の小ブロックとなる。
【0054】
例えば、大ブロック123のX軸方向の長さが、4,700mmの場合に、分割数を6とし、丸め幅を100mmとすると、800mmの辺を持つ小ブロックが、5個生成され、700mmの辺を持つ小ブロックが1個生成される(
図1D等参照)。このように、丸め幅を設定することにより、サイズが極端に異なる小ブロックの生成を抑制できるので、コンクリートの打設管理が容易になる。丸め幅を設定するブロックの位置は、対象軸(X軸、Y軸、Z軸)の中央や端部への指定ができる。ここで、対象軸の中央とは、例えば、
図1Dの右側に示した表(X軸が表示されている)の番号4(4行目のセル)の行であり、この行に丸め幅が設定され、この行が端数のサイズの行となる。また、対象軸の端部とは、
図1Dの右側に示した表の番号1や番号6(1行目のセルや6行目のセル)の行であり、これらの行に丸め幅が設定され、これらの行が端数のサイズの行となる。
【0055】
なお、所定分割数(均等分割)で大ブロックを分割した場合、対象軸の中央の行に端数のサイズの小ブロックが生成され、所定間隔(等幅分割)で大ブロックを分割した場合、対象軸の端部に端数のサイズの小ブロックが生成されるようにすることができる。なお、端数サイズの小ブロックが生成される位置は、ここに示した位置には限定されない。
【0056】
また、所定間隔(例えば、700mm間隔)で大ブロック123を分割した際に、所定間隔以下(700mm以下)のサイズの小ブロックが生成された場合(端数が生じた場合)、所定間隔以下の小ブロックは、そのままのサイズで残してもよい。例えば、所定間隔以下の小ブロックのサイズが600mm程度であれば、そのままのサイズで当該小ブロックを残してもよい。
【0057】
しかしながら、例えば、所定間隔以下の小ブロックのサイズが、50mmであれば、この所定間隔以下の小ブロックを他の1つの小ブロックに組み込んでも、他の複数の小ブロックに振り分けてもよい。例えば、他の複数の小ブロックが5個ある場合、10mmずつ他の複数の小ブロックに振り分けてもよい。この場合、他の複数の小ブロックのサイズは、ユーザが当初指定した所定間隔よりも10mm大きいサイズとなる。
【0058】
なお、生成された小ブロックのそれぞれは、コンクリートの打設開始、打設終了の時刻などを管理するための単位となり、隣接する小ブロックとの間で、打重ね時間などを計算するための単位ともなる。
【0059】
小ブロックのサイズは、例えば、所定期間(例えば、1日)で打設可能なコンクリート量やアジテータ車1台が運搬可能なコンクリートの量などに応じて決定されるが、小ブロックのサイズの決定方法は、これらには限定されない。また、コンクリートの打重時間をより詳細に管理したい場合には、小ブロックのサイズをより小さい値に設定することも可能である。これとは反対に、コンクリートの打重ね時間を大まかに管理できればよい場合には、小ブロックのサイズをより大きい値に設定することも可能である。小ブロックのサイズは、例えば、分割間隔や分割数を調整することにより、変更することができる。
【0060】
次に
図3を参照して、コンクリート打設管理装置100が有する打設量テーブル301の一例について説明する。打設量テーブル301は、構造物打設量311に関連付けて工区打設量312および期間打設量313を記憶する。構造物打設量311([m
3])は、コンクリート打設予定の構造物の体積、つまり、コンクリート打設に必要なコンクリートの全量である。工区打設量312([m
3])は、1つの工区に含まれる構造物の一部の体積、つまり、当該構造物の一部に対して必要なコンクリート量である。期間打設量313([m
3])は、工区に含まれる構造物の一部について、所定期間、例えば、1日の打設対象となる構造物の一部の体積、つまり、当該構造物の一部に対して必要なコンクリート量である。そして、コンクリート打設管理装置100は、打設量テーブル301を参照して、小ブロックのサイズを決定する。
【0061】
また、例えば、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが指定した所定間隔や所定分割数で大ブロック123等を分割した場合に生成される小ブロックの体積が、許容最大体積を超えるような場合には、警告を出すようにしてもよい。
【0062】
図4を参照して、コンクリート打設管理装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0063】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。3次元設計情報データ441は、コンクリートの打設対象となる構造物の3次元CADデータなどを含むデータである。分割基準点座標データ442は、設定された分割基準点の座標位置を示すデータである。軸線データ443は、生成された各軸線の方向や、他の軸線との関係などのデータである。間隔データ444は、例えば、ユーザにより指定された大ブロックの分割間隔について、およびどの軸線に沿って所定間隔で分割するかについてのデータである。分割数データは、ユーザにより指定された大ブロックの分割数について、およびどの軸線に沿って所定分割数で分割するかについてのデータである。
【0064】
送受信データ446は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域447を有する。
【0065】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、打設量テーブル301を格納する。打設量テーブル301は、
図3に示した、構造物打設量311と工区打設量312などとの関係を管理するテーブルである。
【0066】
ストレージ450は、さらに、取得モジュール451、分割基準点設定モジュール452、軸線生成モジュール453および小ブロック生成モジュール454を格納する。取得モジュール451は、構造物の3次元設計情報を取得するモジュールである。分割基準点設定モジュール452は、大ブロックを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる分割基準点を設定するモジュールである。軸線生成モジュール453は、分割基準点から任意の2方向へ延びる第1軸線および第2軸線と、第1軸線および第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成するモジュールである。小ブロック生成モジュール454は、大ブロックを各軸線の方向に沿って、所定間隔または所定分割数で分割して複数の小ブロックを生成するモジュールである。これらのモジュール451~454は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域447に読み出され、実行される。制御プログラム455は、コンクリート打設管理装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0067】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート打設管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0068】
次に
図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。
【0069】
ステップS501において、コンクリート打設管理装置100は、構造物の3次元設計情報を取得する。ステップS503において、コンクリート打設管理装置100は、取得した3次元設計情報に含まれる大ブロックのうち着目する大ブロックを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる分割基準点を設定する。
【0070】
ステップS505において、コンクリート打設管理装置100は、設定した分割基準点から任意の方向に延びる第1軸線(X軸127)を生成する。ステップS507において、コンクリート打設管理装置100は、設定した分割基準点から、第1軸線とは異なる方向へ延びる第2軸線(Y軸)を生成する。ステップS509において、コンクリート打設管理装置100は、第1軸線(X軸)および第2軸線(Y軸)を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線(Z軸)を生成する。
【0071】
ステップS511において、コンクリート打設管理装置100は、コンクリート打設管理装置100は、所定間隔または所定分割数の入力を受け付ける。ステップS513において、コンクリート打設管理装置100は、第1軸線、第2軸線および第3軸線に沿って、第1軸線、第2軸線および第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で着目する大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する。
【0072】
本実施形態によれば、分割基準点を基準として所定サイズの小ブロックを生成するので、所定サイズの小ブロックを容易に生成することができ、効率的で、容易なコンクリートの打設管理を行うことができる。また、様々な形状の構造物を所望のサイズの小ブロックに分割するので、容易なコンクリートの打設管理を行うことができる。また、断面変化面に分割基準点を設定できるので、断面変化面を跨いで小ブロックが生成されてしまうことを防止できる。
【0073】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理装置700について、
図6~8を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係るコンクリート打設管理装置700の構成を説明するための図である。本実施形態に係るコンクリート打設管理装置700は、上記第1実施形態と比べると、移動部を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0074】
例えば、構造物として、
図6に示したような、水路601を考える。水路601は、中央部が窪んだ凹型の形状をしており、この形状が相当な長さ続いている。そして、水路601の3次元設計情報として、図示したように、水路601がいくつかの大ブロック611,612,613に分かれている。大ブロック611,612,613のそれぞれは、例えば、1日に打設可能なコンクリートの量などに応じて設計されている。
【0075】
まず、最初の大ブロック611を第1着目大ブロックとして、分割基準点621を図示した位置に設定する。そして、設定された分割基準点621を基準として、所定間隔または所定分割数で大ブロック611(第1着目大ブロック)を分割して、複数の小ブロックを生成する(
図6の点線参照)。
【0076】
ここで、水路601は、凹型の長い構造物であり、水路601を工区や工期などで区切った大ブロック(611,612,613)が所定数連続して連結された構造物と見ることもできる。このように、構造物としての水路601においては、同じ形状の大ブロックが複数出現するため、同じ操作や設定等(所定間隔や所定分割数等の設定)を行わなければならず、操作等が煩雑となる。
【0077】
大ブロック612を2番目の着目大ブロック(第2着目大ブロック)として、複数の小ブロックに分割する場合には、大ブロック611で行ったように、再度、所定間隔や所定分割数などの設定が必要となる。
【0078】
そのため、大ブロック612においては、分割基準点622の設定以外の操作については、大ブロック611において行った操作や設定等をそのまま大ブロック612へ移動させて、同様の操作を行えるようにしている。大ブロック611の設定などを移動させることにより、大ブロック612においても、大ブロック611と同様に、大ブロック612を分割して小ブロックを生成することができる(
図6の点線参照)。
【0079】
また、大ブロック613においても、大ブロック612で行ったのと同様に、分割基準点623を設定し、その他の操作等については、大ブロック611で行った操作や設定等をそのまま大ブロック613へ移動させる。そして、大ブロック613においても、大ブロック611と同様に、大ブロック613を分割して小ブロック生成することができる(
図6の点線参照)。これ以降の大ブロックにおいても同様の操作等を行うことにより、大ブロックを分割して、複数の小ブロックを生成することができる。
【0080】
このように、同形状や相似形の大ブロックが複数回現れる構造物においては、分割基準点の設定を行えば、その他の設定や操作については、前の大ブロックで行ったものを移動させる(コピーする)ことにより、本実施形態においては、操作の簡便化を図っている。
【0081】
次に
図7を参照してコンクリート打設管理装置700の構成について説明する。コンクリート打設管理装置700は、移動部701をさらに備える。まず、分割基準点設定部202は、大ブロックデータのうち第1着目大ブロックデータ(大ブロック123のデータ)とは異なる第2着目大ブロックデータ(例えば、大ブロック124のデータ)を所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第2分割基準点を設定する。なお、この場合、大ブロック123と大ブロック124とは同じ立体形状および体積を持つものとする。また、この場合、小ブロックは、大ブロック123のみに生成されているものとする。
【0082】
移動部701は、設定した第2分割基準点に対して、第1分割基準点(分割基準点121)および第1着目大ブロックデータに対して生成された複数の小ブロックのデータを、第1分割基準点(分割基準点121)が第2分割基準点と重なるように移動させる。
【0083】
そして、小ブロック生成部204は、移動させられた、第1分割基準点(分割基準点121)および第1着目大ブロックデータに対して生成された複数の小ブロックのデータに基づいて、第2着目大ブロックデータ(大ブロック124のデータ)に対して、複数の小ブロックを生成する。例えば、小ブロック生成部204は、大ブロック123に対して生成された小ブロックのデータをそのままコピーして、大ブロック124に対して複数の小ブロックを生成する。
【0084】
このように、一度生成した小ブロックのデータをコピーすることにより、同じ立体形状や相似立体形状などを持つ大ブロックについて、分割基準点を設定するだけで、小ブロックを容易に生成することが可能となる。そのため、同じ立体形状が複数回繰り返される構造物において、小ブロックを容易に生成できるようになる。
【0085】
次に
図8に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置700の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図7のコンクリート打設管理装置700の各機能構成を実現する。
【0086】
ステップS801において、コンクリート打設管理装置700は、第1着目大ブロックデータとは異なる第2着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第2分割基準点を設定する。ステップS803において、コンクリート打設管理装置700は、ステップS801において設定された第2分割基準点に対して、第1分割基準点および第1着目大ブロックデータに対して生成された複数の小ブロックのデータを、第1分割基準点が第2分割基準点と重なるように移動させる。すなわち、第1着目大ブロックデータに対して生成された複数の小ブロックのデータを第2着目大ブロックにコピーする。ステップS805において、コンクリート打設管理装置700は、ステップS803において、移動させられた、第1分割基準点(分割基準点121)および第1着目大ブロックデータに対して生成された複数の小ブロックのデータに基づいて、第2着目大ブロックデータに対して、複数の小ブロックを生成する。
【0087】
本実施形態によれば、所定間隔や所定分割数を再度設定する必要がないので、所定サイズの小ブロックをより簡便に生成することができ、効率的で、容易なコンクリートの打設管理を行うことができる。
【0088】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0089】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【要約】
【課題】所定サイズの小ブロックを容易に生成することができ、効率的な打設管理を行うこと。
【解決手段】コンクリート打設管理装置であって、構造物の3次元設計情報を取得する取得部と、取得した前記3次元設計情報に含まれ、所定期間に打設可能なコンクリートの量に基づいて設定された施工領域を示す複数の大ブロックデータのうち着目する第1着目大ブロックデータにおいて、第1着目大ブロックデータを所定サイズの小ブロックに分割するための基準となる第1分割基準点を設定する分割基準点設定部と、第1分割基準点から任意の2方向に延びる第1軸線および第2軸線と、第1分割基準点から第1軸線および第2軸線を含む平面に垂直な方向に延びる第3軸線と、を生成する軸線生成部と、第1分割基準点を原点として、第1軸線、第2軸線および第3軸線に沿って、第1軸線、第2軸線および第3軸線のそれぞれを所定間隔または所定分割数で第1着目大ブロックデータを分割した複数の小ブロックを生成する小ブロック生成部と、を備えた。
【選択図】
図2