(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】樹脂含浸アルミニウム不織布、樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法、積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20230607BHJP
B32B 5/10 20060101ALI20230607BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20230607BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20230607BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20230607BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20230607BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20230607BHJP
D04H 1/4234 20120101ALI20230607BHJP
D04H 3/002 20120101ALI20230607BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B29B11/16
B32B5/10
B32B5/02 B
B32B15/20
B32B27/04 Z
D06M15/564
B29C43/34
D04H1/4234
D04H3/002
D06N3/00
(21)【出願番号】P 2022102397
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2018247838の分割
【原出願日】2018-12-28
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2018152888
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518291958
【氏名又は名称】日軽メタル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 豪洋
(72)【発明者】
【氏名】蜂巣 琢磨
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-027531(JP,A)
【文献】国際公開第02/018127(WO,A1)
【文献】特開2001-145958(JP,A)
【文献】特開2012-188774(JP,A)
【文献】特開2012-229345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
15/08-15/14
B32B 1/00-43/00
B29C 39/00-39/24
39/38-39/44
43/00-43/34
43/44-43/48
43/52-43/58
45/00-45/84
67/00-67/24
70/00-70/88
C08J 5/04-5/10
5/24
D06N 1/00-7/06
H05K 5/00-5/06
B60R 13/01-13/04
13/08
D04H 1/00-18/04
D06M 15/564
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム不織布と、
前記アルミニウム不織布に含浸された樹脂と、を有し、
前記アルミニウム不織布は、複数のアルミニウム繊維を有し、複数の前記アルミニウム繊維は、間隙を有してランダムに配向されてシート状になるように結合されており、
前記樹脂は、前記アルミニウム不織布の第1面から前記第1面と反対側の第2面まで設けられ、
前記アルミニウム不織布の厚さ方向の全体で、複数の前記アルミニウム繊維の間隙に前記樹脂が含浸された樹脂含浸層が形成され
、
前記アルミニウム不織布におけるアルミニウムの含有量は200g/m
2
以上550g/m
2
以下であることを特徴とする、
樹脂含浸アルミニウム不織布。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法であって、
対向する上型と下型との間で、アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に樹脂
のみからなる樹脂層を積層する積層工程と、
前記アルミニウム不織布及び前記樹脂
層を熱圧着するとともに、前記樹脂を前記アルミニウム不織布に含浸させる熱圧着工程と、を有し、
前記アルミニウム不織布は、複数のアルミニウム繊維を有し、複数の前記アルミニウム繊維は、間隙を有してランダムに配向されてシート状になるように結合されており、
前記熱圧着工程で、
前記樹脂は、前記アルミニウム不織布の第1面から前記第1面と反対側の第2面まで含浸され、
前記アルミニウム不織布の厚さ方向の全体で、複数の前記アルミニウム繊維の間隙に前記樹脂が含浸された樹脂含浸層が形成され
、
前記アルミニウム不織布におけるアルミニウムの含有量は200g/m
2
以上550g/m
2
以下であることを特徴とする、
樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法。
【請求項3】
樹脂が含浸されたアルミニウム不織布と、
前記アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に設けられた
樹脂のみからなる樹脂層と、を有し、
前記アルミニウム不織布は、複数のアルミニウム繊維を有し、複数の前記アルミニウム繊維は、間隙を有してランダムに配向されてシート状になるように結合されており、
前記アルミニウム不織布に含浸された前記樹脂は、前記アルミニウム不織布の第1面から前記第1面と反対側の第2面まで設けられ、
前記アルミニウム不織布の厚さ方向の全体で、複数の前記アルミニウム繊維の間隙に前記樹脂が含浸された樹脂含浸層が形成され、
前記樹脂層は、前記樹脂含浸層の前記樹脂と接して積層され
、
前記アルミニウム不織布におけるアルミニウムの含有量は200g/m
2
以上550g/m
2
以下であることを特徴とする
積層体。
【請求項4】
請求項3に記載の積層体の製造方法であって、
対向する上型と下型との間で、アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に樹脂
のみからなる樹脂層を積層する積層工程と、
前記アルミニウム不織布及び前記樹脂
層を熱圧着することで、前記樹脂を前記アルミニウム不織布に含浸させるとともに前記アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に
前記樹脂層を形成する熱圧着工程と、を有し、
前記アルミニウム不織布は、複数のアルミニウム繊維を有し、複数の前記アルミニウム繊維は、間隙を有してランダムに配向されてシート状になるように結合されており、
前記熱圧着工程で、
前記樹脂は、前記アルミニウム不織布の第1面から前記第1面と反対側の第2面まで含浸され、
前記アルミニウム不織布の厚さ方向の全体で、複数の前記アルミニウム繊維の間隙に前記樹脂が含浸された樹脂含浸層が形成されるとともに、前記樹脂層は、前記樹脂含浸層の前記樹脂と接して積層され
、
前記アルミニウム不織布におけるアルミニウムの含有量は200g/m
2
以上550g/m
2
以下であることを特徴とする、
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮革積層体、シート材、皮革積層体の製造方法、樹脂含浸アルミニウム不織布、樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法、積層体、積層体の製造方法及び電子機器用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、身体の特定部分を温めるための帯状物として、皮革、海藻炭繊維を含有する不織布及びアルミニウム箔若しくは板材を積層させた帯状物が記載されている。また、特許文献2では、表皮層と、断熱層と、遠赤外線放射層と、被覆層と、を順次この順に積層した遠赤外線放射シートが記載されている。遠赤外線放射層は、炭素粒子、炭化ジルコニウム又は酸化ジルコニウム等を含浸させた不織布からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-302510号公報
【文献】特開平11-129370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の帯状物において、材料を複雑な形状へ加工する際には、アルミニウム箔と、アルミニウム箔と積層される層との強固な接着性が必要である。また、アルミニウム板材のようにある程度の厚みをもつ層を熱伝導性材料として利用した場合、複雑な形状へ加工することが難しくなる場合がある。
【0005】
また、特許文献2に記載の遠赤外線放射シートは、合成樹脂発泡体又は不織布からなる断熱層と、遠赤外線放射層と、を有するため、構成が複雑になる可能性がある。このため、特許文献2の遠赤外線放射シートは、複雑な形状へ加工することが難しくなる場合がある。
【0006】
本発明は、良好な熱伝導性を有し、様々な形状への加工が可能である皮革積層体、皮革積層体の製造方法、シート材、樹脂含浸アルミニウム不織布、樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法、積層体、積層体の製造方法及び電子機器用ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る皮革積層体は、皮革と、前記皮革に貼り合わされたアルミニウム不織布と、を有することを特徴とする。
【0008】
これによれば、アルミニウム不織布が皮革に積層されているため、皮革積層体は、熱伝導性や強度に優れる。また、アルミニウム不織布は柔軟なシート状の材料であるため、皮革積層体は、様々な形状への加工が可能である。
【0009】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体において、前記アルミニウム不織布は、複数のアルミニウム繊維を有し、複数の前記アルミニウム繊維は、間隙を有してランダムに配向されてシート状になるように結合されており、複数の前記アルミニウム繊維の間の前記間隙に樹脂が含浸されて、前記皮革と前記アルミニウム不織布とが貼り合わされることを特徴とする。これによれば、アルミニウム繊維の間に樹脂が含浸されることで、アルミニウム繊維と樹脂との接触面積が大きくなる。また、皮革に含まれる基布面又はコラーゲン層にも樹脂が接触する。これにより、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0010】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体において、前記樹脂は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする。これによれば、皮革とアルミニウム不織布とを、熱圧着等により接着する場合に、熱可塑性樹脂が流動してアルミニウム繊維の間の間隙に熱可塑性樹脂が含浸する。これにより、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0011】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体において、前記アルミニウム不織布の含有量は、200g/m2以上550g/m2以下であることを特徴とする。これによれば、皮革積層体は、良好な熱伝導性を有するとともに、良好な加工性を有する。
【0012】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体において、前記皮革は、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれかであることを特徴とする。これによれば、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれにも、アルミニウム不織布を貼り合わせることが可能である。このため、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれかを有する皮革積層体は、良好な熱伝導性を有し、様々な形状への加工が可能である。
【0013】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体において、前記皮革は、人工皮革又は合成皮革であって、前記皮革は、基布と、前記基布の一方の面に貼り合わされた表面樹脂層と、を有し、前記アルミニウム不織布は、前記基布の前記一方の面と反対側の他方の面に貼り合わされることを特徴とする。これによれば、基布の、アルミニウム不織布と貼り合わされる面に樹脂が接触することで、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0014】
本発明の一態様に係るシート材は、上記の皮革積層体を有するシート材であって、前記皮革積層体の前記皮革の表面は、人が接触又は近接する方向に面して設けられることを特徴とする。
【0015】
これによれば、シート材は良好な熱伝導性を有する。このため、熱伝導性の高いシート材は、人体からの熱をシート材の側へ移動させ、例えば冷房の空調に費やすエネルギーを減らすことができるなどの利点がある。また、アルミニウム不織布は皮革よりも電気抵抗が低く、皮革積層体として帯電性が低下する。したがって、シート材は、静電気を生じにくくさせることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る皮革積層体の製造方法は、皮革と、アルミニウム不織布とを有する皮革積層体の製造方法であって、前記皮革に、第1樹脂、前記アルミニウム不織布、第2樹脂の順に積層する積層工程と、前記皮革、前記第1樹脂、前記アルミニウム不織布及び前記第2樹脂を熱圧着する熱圧着工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
これによれば、第1樹脂と第2樹脂とでアルミニウム不織布を挟んで積層して熱圧着することで、アルミニウム繊維の間の間隙に良好に樹脂が含浸される。また、皮革に含まれる基布面又はコラーゲン層にも樹脂が接触する。これにより、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0018】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体の製造方法において、前記第1樹脂及び前記第2樹脂は熱可塑性樹脂であることを特徴とする。これによれば、熱可塑性樹脂は、熱圧着工程において溶融して、アルミニウム繊維の間の間隙に充填することができる。
【0019】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体の製造方法において、前記熱圧着工程における加圧力が、0.2MPa以上3.5MPa以下であることを特徴とする。これによれば、樹脂はアルミニウム不織布に含浸するとともに、皮革に含まれる基布面又はコラーゲン層にも接触する。このため、皮革積層体は、良好な接着強度及び熱伝導性を有する。
【0020】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体の製造方法において、前記皮革は、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれかであることを特徴とする。人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれかであっても、上記の積層工程及び熱圧着工程を適用することで皮革積層体を製造できる。
【0021】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体の製造方法において、前記熱圧着は、前記皮革の表面に対して垂直な方向に圧力を加えて圧着するホットプレスであることを特徴とする。これによれば、皮革積層体の製造方法は、1軸方向からの加圧を行う簡単な設備での製造が可能である。
【0022】
本発明の望ましい態様に係る皮革積層体の製造方法において、前記熱圧着の温度は120℃以上であることを特徴とする。これによれば、第1樹脂及び第2樹脂は、120℃以上の温度で溶融し、熱圧着工程において、アルミニウム繊維の間の間隙に充填することができる。
【0023】
本発明の一態様に係る樹脂含浸アルミニウム不織布は、アルミニウム不織布と、前記アルミニウム不織布に含浸された樹脂とを有することを特徴とする。これによれば、樹脂含浸アルミニウム不織布は、アルミニウム不織布に含浸された樹脂により、皮革等に良好に貼り合わせることができる。また、樹脂含浸アルミニウム不織布は熱伝導性及び強度に優れるため、樹脂含浸アルミニウム不織布と貼り合わされた皮革等も良好な熱伝導性及び強度を有する。
【0024】
本発明の一態様に係る樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法は、アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に樹脂を積層する積層工程と、前記アルミニウム不織布及び前記樹脂を熱圧着するとともに、前記樹脂を前記アルミニウム不織布に含浸させる熱圧着工程と、を有することを特徴とする。これによれば、アルミニウム不織布のアルミニウム繊維の間隙に、良好に樹脂を含浸させることができる。
【0025】
本発明の一態様に係る皮革積層体の製造方法は、アルミニウム不織布に樹脂が含浸された樹脂含浸アルミニウム不織布に、皮革を積層する積層工程と、前記樹脂含浸アルミニウム不織布と前記皮革とを熱圧着する熱圧着工程と、を有することを特徴とする。これによれば、樹脂含浸アルミニウム不織布が有する樹脂は、皮革に含まれる基布面又はコラーゲン層に接触する。これにより、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0026】
本発明の一態様に係る皮革積層体の製造方法は、アルミニウム不織布に第1樹脂が含浸された樹脂含浸アルミニウム不織布、第2樹脂及び皮革の順に積層する積層工程と、前記樹脂含浸アルミニウム不織布と、前記第2樹脂と、前記皮革とを熱圧着する熱圧着工程と、を有することを特徴とする。これによれば、第2樹脂は、樹脂含浸アルミニウム不織布が有する第1樹脂に接触するとともに、皮革に含まれる基布面又はコラーゲン層に接触する。これにより、第2樹脂により樹脂含浸アルミニウム不織布と皮革とが接着されて、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0027】
本発明の一態様に係る積層体は、樹脂が含浸されたアルミニウム不織布と、前記アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に設けられた樹脂層とを有することを特徴とする。これによれば、積層体は、アルミニウム不織布に含浸された樹脂及び樹脂層により、皮革等に良好に貼り合わせることができる。また、アルミニウム不織布は熱伝導性及び強度に優れるため、積層体と貼り合わされた皮革等も良好な熱伝導性及び強度を有する。
【0028】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に樹脂を積層する積層工程と、前記アルミニウム不織布及び前記樹脂を熱圧着することで、前記樹脂を前記アルミニウム不織布に含浸させるとともに前記アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に樹脂層を形成する熱圧着工程と、を有することを特徴とする。これによれば、アルミニウム不織布のアルミニウム繊維の間隙に、良好に樹脂を含浸させる工程と同じ工程で、樹脂層を形成することができる。
【0029】
本発明の一態様に係る皮革積層体の製造方法は、アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に樹脂層が設けられた積層体に、皮革を積層する積層工程と、前記積層体と前記皮革とを熱圧着する熱圧着工程と、を有することを特徴とする。これによれば、積層体が有する樹脂は、皮革に含まれる基布面又はコラーゲン層に接触する。これにより、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0030】
本発明の一態様に係る皮革積層体の製造方法は、アルミニウム不織布の少なくとも一方の面に第1樹脂層が設けられた積層体、第2樹脂及び皮革の順に積層する積層工程と、前記積層体と、前記第2樹脂と、前記皮革とを熱圧着する熱圧着工程と、を有することを特徴とする。これによれば、第2樹脂は、積層体が有する第1樹脂層に接触するとともに、皮革に含まれる基布面又はコラーゲン層に接触する。これにより、第2樹脂により積層体と皮革とが接着されて、皮革積層体は、良好な接着強度が得られる。
【0031】
本発明の一態様に係る電子機器用ケースは、上記のいずれかの皮革積層体を有することを特徴とする。
【0032】
これによれば、電子機器用ケースは、良好な熱伝導性を有する。このため、電子機器用ケースは、電子機器で発生する熱を良好に外部に放熱することができる。
【0033】
本発明の望ましい態様に係る電子機器用ケースにおいて、電子機器が収納された場合に前記電子機器と対向する裏面と、前記裏面と反対側の表面とを有し、前記裏面に前記アルミニウム不織布が設けられ、前記表面に前記皮革が設けられることを特徴とする。
【0034】
これによれば、アルミニウム不織布は、電子機器が収納された場合に皮革よりも電子機器に近い位置に設けられる。このため、電子機器で発生する熱は良好にアルミニウム不織布に伝わる。
【0035】
本発明の望ましい態様に係る電子機器用ケースは、前記皮革積層体で構成されるカバーと、前記カバーの前記裏面に設けられ、電子機器を固定するための収納体と、を有することを特徴とする。
【0036】
これによれば、収納体に電子機器を固定することで、皮革積層体で構成されるカバーに電子機器を収納することができる。
【0037】
本発明の望ましい態様に係る電子機器用ケースにおいて、前記収納体の少なくとも一部に金属板材が設けられていることを特徴とする。
【0038】
これによれば、電子機器で発生する熱は、金属板材を介して、良好にアルミニウム不織布に伝わる。
【0039】
本発明の望ましい態様に係る電子機器用ケースは、前記皮革積層体で構成されるカバーと、前記カバーの前記裏面と対向して設けられ、前記カバーの裏面との間に、前記電子機器を収納するための収納スペースを形成する収納体と、を有することを特徴とする。
【0040】
これによれば、収納スペースに電子機器を収納する態様の電子機器用ケースにも皮革積層体を適用することができる。
【0041】
本発明の望ましい態様に係る電子機器用ケースにおいて、前記収納スペースは、ポケット型のスペースであり、前記収納体の一辺に開口が設けられていることを特徴とする。
【0042】
これによれば、電子機器用ケースの構成を簡易にすることができ、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の皮革積層体、皮革積層体の製造方法、シート材、樹脂含浸アルミニウム不織布、樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法、積層体、積層体の製造方法及び電子機器用ケースによれば、良好な熱伝導性を有し、様々な形状への加工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る皮革積層体の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るアルミニウム不織布を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1変形例に係る皮革積層体の断面図である。
【
図5】
図5は、第2変形例に係る皮革積層体の断面図である。
【
図6】
図6は、皮革積層体の製造方法を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、皮革積層体を用いた自動車用シートの側面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る樹脂含浸アルミニウム不織布の断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の第3変形例に係る樹脂含浸アルミニウム不織布の断面図である。
【
図10】
図10は、樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法を説明するための説明図である。
【
図11】
図11は、樹脂含浸アルミニウム不織布を用いた皮革積層体の製造方法を説明するための説明図である。
【
図12】
図12は、樹脂含浸アルミニウム不織布を用いた皮革積層体の製造方法の変形例を説明するための説明図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態の第4変形例に係る積層体の断面図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態の第5変形例に係る積層体の断面図である。
【
図16】
図16は、積層体の製造方法を説明するための説明図である。
【
図17】
図17は、積層体を用いた皮革積層体の製造方法を説明するための説明図である。
【
図18】
図18は、積層体を用いた皮革積層体の製造方法の変形例を説明するための説明図である。
【
図19】
図19は、実施例に係る皮革積層体の断面写真である。
【
図20】
図20は、他の実施例に係る皮革積層体の断面写真である。
【
図21】
図21は、皮革積層体を用いた電子機器用ケースの平面図である。
【
図22】
図22は、電子機器を収納した場合の電子機器用ケースの側面図である。
【
図24】
図24は、皮革積層体を用いた電子機器用ケースの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0046】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る皮革積層体の斜視図である。
図2は、
図1におけるII-II’断面図である。
図3は、第1実施形態に係るアルミニウム不織布を模式的に示す平面図である。
【0047】
図1及び
図2に示すように、皮革積層体1は、皮革10と、皮革10に貼り合わされたアルミニウム不織布20と、を有する。皮革10及びアルミニウム不織布20は、いずれもシート状の材料である。アルミニウム不織布20は、皮革10の厚さ方向に重なって貼り合わされる。表面樹脂層12の表面は、皮革積層体1の表面1aとなり、裏面1bにアルミニウム不織布20が配置される。皮革積層体1の厚さは、例えば1.5mm以上、3mm以下程度である。ただし、皮革積層体1の厚さは、皮革積層体1の用途やアルミニウム不織布20の厚みに応じて適宜変更できる。
【0048】
図1及び
図2に示す皮革10は、天然皮革ではない人工皮革又は合成皮革である。
図2に示すように、皮革10は、基布11と、表面樹脂層12とを有する。皮革10が人工皮革である場合、基布11は、不織布が用いられる。人工皮革に用いられる不織布は、極細線状のナイロン繊維やポリエステル繊維等のマイクロファイバーが立体的に絡み合わされており、マイクロファイバーの隙間にポリウレタン等の樹脂が含浸されて構成される。
【0049】
また、皮革10が合成皮革である場合、基布11は、編物や織物が用いられる。合成皮革に用いられる編物は、ナイロン繊維やポリエステル繊維等の繊維束が、ループ状に形成されて、繊維束どうしが互いに絡み合ってシート状になっている。また、合成皮革に用いられる織物は、繊維束が直交するように配列されて、隣接する繊維同士が密着するようにシート状に形成される。基布11は、編物や織物をベースとして、編物や織物の上部にポリウレタン等の樹脂が塗布又は貼り合わされて構成される。
【0050】
図2に示すように、基布11は、第1面11a(一方の面)と、第1面11aと反対側の第2面11b(他方の面)とを有する。表面樹脂層12は、基布11の第1面11aに貼り合わされる。表面樹脂層12の表面は、皮革積層体1の表面1aとなる。表面樹脂層12は、例えばポリウレタン等の樹脂が用いられ、表面樹脂層12の表面には、天然皮革に似せた凹凸やシワなどの加工が施される。表面樹脂層12は単層に限定されず、複数の樹脂層を有していてもよい。例えば、表面樹脂層12は、表面を保護するための保護層や、色や模様を表示するための着色層が積層されていてもよい。
【0051】
図2に示すように、アルミニウム不織布20は、基布11の第2面11bに貼り合わされる。言い換えると、皮革積層体1の厚さ方向において、アルミニウム不織布20と表面樹脂層12との間に基布11が設けられる。アルミニウム不織布20は、基布11の第2面11bと接しており、アルミニウム不織布20と基布11の第2面11bとの間には他の部材が設けられていない。アルミニウム不織布20の厚さは、例えば1mm以上、1.5mm以下である。ただし、アルミニウム不織布20の厚さは、皮革積層体1に要求される加工性や熱伝導性に応じて適宜変更できる。
【0052】
図3に示すように、アルミニウム不織布20は、複数のアルミニウム繊維21を有する。複数のアルミニウム繊維21は、間隙22を有してランダムに配向されてシート状になるように結合される。アルミニウム繊維21は、平面視でアルミニウム繊維21が交差して接触する部分で、例えば融着、接着等により結合される。アルミニウム繊維21の材料は、アルミニウム(Al)又はアルミニウムを主成分とする合金材料が用いられる。このような構成により、アルミニウム不織布20は、良好な熱伝導性と強度を有するとともに、切断や折り曲げ等の加工も容易に行うことができる。
【0053】
アルミニウム繊維21の間隙22には、樹脂31が含浸される。樹脂31は、熱可塑性樹脂であり、例えばポリウレタン樹脂等が用いられる。なお、樹脂31は、ポリウレタン樹脂以外の熱可塑性樹脂であってもよい。
【0054】
樹脂31は、後述する熱圧着工程によりアルミニウム不織布20に含浸されて、少なくとも皮革10の基布11と接する。これにより、アルミニウム不織布20は、皮革10と貼り合わされる。ここで、
図2に示す樹脂含浸層32は、樹脂31が含浸される領域である。樹脂31は、基布11の第2面11b側から含浸され、基布11に含まれる不織布又は編物若しくは織物の樹脂繊維の一部にも含浸する。このように、樹脂含浸層32は、アルミニウム不織布20及び基布11に亘って形成されることが好ましい。これにより、皮革積層体1は、アルミニウム不織布20と皮革10との接着強度を高めることができる。皮革積層体1は、アルミニウム不織布20と皮革10との剥離が生じにくいため、様々な形状に加工、変形を行うことができる。
【0055】
なお、皮革積層体1の形状は平板状に限定されず、曲面や凹凸形状を有していてもよい。皮革積層体1を構成する各部材の材料や厚さ等も、皮革積層体1の用途に応じて適宜変更してもよい。また、樹脂31は、少なくとも基布11の第2面11bで基布11に含まれる繊維に接していればよく、樹脂含浸層32は、基布11の一部に形成されていなくてもよい。また、樹脂含浸層32は、アルミニウム不織布20の一部に形成されていなくてもよい。
【0056】
(第1変形例)
図4は、第1変形例に係る皮革積層体の断面図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態で説明した構成要素については、同じ符号を付して、説明を省略する。
図1及び
図2に示した皮革10は、人工皮革又は合成皮革であるがこれに限定されない。
【0057】
図4に示す第1変形例の皮革積層体1Aにおいて、皮革10Aは天然皮革である。皮革10Aは、コラーゲン層13と銀面層14とを有する。コラーゲン層13は、タンパク質であるコラーゲンの繊維が立体的に絡み合って構成されている。銀面層14は、コラーゲン層13の第1面13aに設けられ、皮革積層体1Aの表面1aとなる。銀面層14は、牛革などの皮革の表皮部分に近い緻密な繊維構造を有し、表皮部分(皮膚)と毛を加工処理によって取り除くことで形成される。
【0058】
アルミニウム不織布20は、コラーゲン層13の第2面13bに貼り合わされる。言い換えると、皮革積層体1Aの厚さ方向において、アルミニウム不織布20と銀面層14との間にコラーゲン層13が設けられる。
【0059】
樹脂31は、
図2に示す例と同様に、熱圧着工程によりアルミニウム不織布20に含浸されて、少なくとも皮革10Aのコラーゲン層13と接する。また、樹脂31は、コラーゲン層13の第2面13b側の一部に含浸されて、コラーゲン層13が有するコラーゲン繊維の一部に含浸する。このように、樹脂含浸層32は、アルミニウム不織布20及びコラーゲン層13に亘って形成されることが好ましい。これにより、皮革積層体1Aは、アルミニウム不織布20と皮革10Aとの接着強度を高めることができる。
【0060】
(第2変形例)
図5は、第2変形例に係る皮革積層体の断面図である。上述した第1実施形態及び第1変形例では、アルミニウム不織布20が基布11の第2面11b又はコラーゲン層13の第2面13bと接する場合を説明したが、これに限定されない。
図5に示すように、本変形例の皮革積層体1Bにおいて、アルミニウム不織布20と基布11との間に中間樹脂層33が設けられている。
【0061】
中間樹脂層33は、アルミニウム不織布20に含浸された樹脂31の一部で形成される樹脂層である。つまり、中間樹脂層33は、樹脂31と同じ樹脂材料からなる層であり、アルミニウム繊維21及び基布11の繊維が存在しない層である。本変形例において、樹脂31は、基布11の第2面11b側に含浸されて第1樹脂含浸層32aを形成する。また、樹脂31は、アルミニウム不織布20に含浸されて第2樹脂含浸層32bを形成する。これにより、樹脂31は、アルミニウム不織布20、中間樹脂層33及び基布11の第2面11b側の一部に亘って設けられる。このため、皮革積層体1Bは、アルミニウム不織布20と皮革10との接着強度を高めることができる。
【0062】
なお、中間樹脂層33は、樹脂31と異なる材料であってもよく、例えば、皮革10とアルミニウム不織布20とを貼り合わせる接着剤であってもよい。また、
図4に示した皮革積層体1Aにおいても、天然皮革である皮革10Aのコラーゲン層13と、アルミニウム不織布20との間に中間樹脂層33を設けてもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の皮革積層体1は、皮革10と、皮革10に貼り合わされたアルミニウム不織布20と、を有する。
【0064】
これによれば、アルミニウム不織布20が皮革10に積層されているため、皮革積層体1は、熱伝導性や強度に優れる。また、アルミニウム不織布20は、柔軟なシート状の材料であるため、皮革積層体1は、様々な形状への加工が可能である。
【0065】
また、皮革積層体1において、アルミニウム不織布20は、複数のアルミニウム繊維21を有する。複数のアルミニウム繊維21は、間隙22を有してランダムに配向されてシート状になるように結合される。複数のアルミニウム繊維21の間の間隙22に樹脂31が含浸されて、皮革10とアルミニウム不織布20とが貼り合わされる。これによれば、アルミニウム繊維21の間の間隙22に樹脂31が含浸されることで、アルミニウム繊維21と樹脂31との接触面積が大きくなる。また、皮革10に含まれる基布11の第2面11bにも樹脂31が接触する。これにより、皮革積層体1は、皮革10とアルミニウム不織布20との良好な接着強度が得られる。また、樹脂31は、基布11の第2面11b側の一部にも含浸する。これにより、皮革積層体1は、接着強度を高めることができる。
【0066】
また、皮革積層体1において、樹脂31は、熱可塑性樹脂である。これによれば、皮革10とアルミニウム不織布20とを、熱圧着等により接着する場合に、熱可塑性樹脂が流動してアルミニウム繊維21の間の間隙22に熱可塑性樹脂が含浸する。これにより、皮革積層体1は、良好な接着強度が得られる。
【0067】
また、皮革積層体1において、アルミニウム不織布20の含有量は、200g/m2以上550g/m2以下である。これによれば、皮革積層体1は、良好な熱伝導性を有するとともに、良好な加工性を有する。
【0068】
また、皮革積層体1、1Aにおいて、皮革10、10Aは、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれかである。これによれば、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれにも、アルミニウム不織布20を貼り合わせることが可能である。このため、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれかを有する皮革積層体1、1Aは、良好な熱伝導性を有し、様々な形状への加工が可能である。
【0069】
また、皮革積層体1において、皮革10は、人工皮革又は合成皮革であって、皮革10は、基布11と、基布11の第1面11a(一方の面)に貼り合わされた表面樹脂層12と、を有する。アルミニウム不織布20は、基布11の第1面11aと反対側の第2面11b(他方の面)に貼り合わされる。これによれば、基布11の、アルミニウム不織布20と貼り合わされる面(第2面11b)に樹脂31が接触することで、基布11に含まれる樹脂繊維と樹脂31とが接触する。このため、皮革積層体1は、良好な接着強度が得られる。
【0070】
(皮革積層体の製造方法)
図6は、皮革積層体の製造方法を説明するための説明図である。皮革積層体1の製造方法としてホットプレス装置100を用いる場合を説明する。ホットプレス装置100は、下型101と上型102とを有する。上型102は、下型101と対向して配置される。下型101の対向面101a及び上型102の対向面102aは、平坦状である。
【0071】
まず、下型101の対向面101aに、皮革10、第1樹脂34、アルミニウム不織布20、第2樹脂35の順に積層する(積層工程ST1)。皮革10の表面樹脂層12が対向面101aに向けられる。また、基布11の上に第1樹脂34が配置される。アルミニウム不織布20は、厚さ方向において、第1樹脂34と第2樹脂35との間に挟まれて配置される。第1樹脂34及び第2樹脂35は、熱可塑性樹脂であり、例えばポリウレタンが用いられる。
【0072】
ホットプレス装置100は、下型101及び上型102の温度を、例えば120℃以上に上昇させる。ホットプレス装置100は、例えば図示しない電気ヒータ等により下型101及び上型102の温度を制御することができる。なお、熱圧着温度は、第1樹脂34及び第2樹脂35の材料の融点に応じて適切に設定される。
【0073】
ホットプレス装置100は、皮革10、第1樹脂34、アルミニウム不織布20及び第2樹脂35を熱圧着する(熱圧着工程ST2)。具体的には、ホットプレス装置100は、下型101を上型102に向けて矢印で示す方向D1に移動させる。これにより、皮革10、第1樹脂34、アルミニウム不織布20及び第2樹脂35に、圧力及び熱が加えられる。このとき、各部材には、皮革10の表面に対して垂直な方向に、1軸方向の力が加えられる。
【0074】
そして、ホットプレス装置100からの熱により第1樹脂34及び第2樹脂35が溶融して、アルミニウム繊維21(
図3参照)の間隙22に流動する。同時に、第1樹脂34は、基布11の第2面11b側にも流動する。これにより、第1樹脂34及び第2樹脂35が、アルミニウム不織布20に含浸され、また、基布11の一部にも含浸されて、樹脂含浸層32が形成される。
【0075】
その後、皮革10及びアルミニウム不織布20は、上型102と下型101との間で所定時間保持され、冷却される。その後、上型102と下型101とを開放する。以上の工程により、皮革積層体1が得られる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の皮革積層体1の製造方法によれば、ホットプレス装置100は、第1樹脂34と第2樹脂35とでアルミニウム不織布20を挟んで積層して熱圧着する。これにより、アルミニウム繊維21(
図3参照)の間の間隙22に第1樹脂34及び第2樹脂35が含浸される。また、皮革10に含まれる基布11の第2面11bにも第1樹脂34が接触する。これにより、皮革積層体1は、皮革10とアルミニウム不織布20との良好な接着強度が得られる。
【0077】
また、皮革積層体1の製造方法によれば、第1樹脂34及び第2樹脂35は、熱可塑性樹脂であり、例えばポリウレタンが用いられる。このため、第1樹脂34及び第2樹脂35は、熱圧着工程ST2において溶融して、第1樹脂34及び第2樹脂35の流動によりアルミニウム繊維21の間の間隙22に充填することができる。
【0078】
また、
図6に示す皮革10は、人工皮革又は合成皮革であるが、
図4に示した天然皮革の皮革10Aを有する皮革積層体1Aにも適用可能である。すなわち、人工皮革、合成皮革又は天然皮革のいずれかであっても、積層工程ST1及び熱圧着工程ST2を適用することができ、皮革積層体1、1Aを製造できる。
【0079】
また、皮革積層体1の製造方法によれば、熱圧着工程ST2は、皮革10の表面に対して垂直な方向に圧力を加えて圧着するホットプレスである。これによれば、1軸方向からの加圧を行う簡単なホットプレス装置100での製造が可能である。
【0080】
なお、皮革積層体1の製造方法は、ホットプレスに限定されない。例えば、皮革10、第1樹脂34、アルミニウム不織布20及び第2樹脂35の各素材を、長尺のシート状にそれぞれ形成して、圧着ローラーにより熱圧着してもよい。
【0081】
なお、
図6に示す上型102及び下型101は、説明を容易にするために模式的に示したものであり、ホットプレス装置100は、皮革積層体1の形状や厚さ、材料に応じて変更できる。また、積層工程ST1において、下型101から上型102に向かって、第2樹脂35、アルミニウム不織布20、第1樹脂34、皮革10の順に積層してもよい。
【0082】
(自動車用シート材)
図7は、皮革積層体を用いた自動車用シートの側面図である。
図7に示すように、自動車用シート200は、座面201と、背もたれ202と、ヘッドレスト203とを有する。皮革積層体1は、座面201、背もたれ202及びヘッドレスト203のシート材として用いられ、各部材の、人が接触又は近接する部分に設けられる。例えば、皮革積層体1は、座面201のうち、人が座る部分に設けられる。例えば、皮革積層体1は、背もたれ202のうち、人の背中が接触又は近接する面に設けられる。例えば、皮革積層体1は、ヘッドレスト203のうち、人の頭が接触又は近接する部分に設けられる。皮革積層体1の表面1a、すなわち皮革10の表面は、人が接触又は近接する方向に面して設けられる。
【0083】
これによれば、皮革積層体1を用いたシート材は良好な熱伝導性を有する。このため、熱伝導性の高いシート材は、人体からの熱をシート材等の側へ移動させ、例えば冷房の空調に費やすエネルギーを減らすことができるなどの利点がある。また、アルミニウム不織布20は皮革10よりも電気抵抗が低く、皮革積層体1として帯電性が低下する。したがって、自動車用シート200は、静電気を生じにくくさせることができる。
【0084】
なお、
図7は、皮革積層体1を自動車用シート200のシート材として用いた場合を示したが、これに限定されない。皮革積層体1は皮革10とアルミニウム不織布20との接着強度に優れ、様々な形状に加工、変形が可能であり、幅広い製品、用途に利用可能である。例えば、皮革積層体1は、寝具、内装材、又は、ソファ、椅子、ランドセル、ベビーカー、スマホケース、靴の内革、等に適用することができる。
【0085】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る樹脂含浸アルミニウム不織布の断面図である。
図8に示すように、樹脂含浸アルミニウム不織布50は、アルミニウム不織布20と、アルミニウム不織布20に含浸された樹脂31とを有する。樹脂31は、アルミニウム繊維21の間隙22(
図3参照)に含浸されて、樹脂含浸アルミニウム不織布50の第1面50aから第2面50bまで設けられる。つまり、厚さ方向において、樹脂含浸アルミニウム不織布50の全体に樹脂含浸層32が形成される。樹脂31及びアルミニウム繊維21は、第1面50aの少なくとも一部及び第2面50bの少なくとも一部に露出する。
【0086】
樹脂含浸アルミニウム不織布50は、アルミニウム不織布20に含浸された樹脂31により、皮革10等に良好に貼り合わせることができる。また、樹脂含浸アルミニウム不織布50は、アルミニウム不織布20を有しており熱伝導性及び強度に優れる。このため、樹脂含浸アルミニウム不織布50と貼り合わされた皮革10等も良好な熱伝導性及び強度を有する。
【0087】
図9は、第2実施形態の第3変形例に係る樹脂含浸アルミニウム不織布の断面図である。本変形例の樹脂含浸アルミニウム不織布51は、厚さ方向において、第1面51a側のアルミニウム不織布20の一部に樹脂31が含浸されていない。すなわち、樹脂含浸アルミニウム不織布51は、第1面51a側にアルミニウム繊維層52が設けられ、第2面51b側に樹脂含浸層32が設けられる。アルミニウム繊維層52は、樹脂31が含浸されず、アルミニウム不織布20のアルミニウム繊維21で形成される。アルミニウム繊維層52の厚さは、樹脂含浸層32の厚さよりも薄い。
【0088】
図10は、樹脂含浸アルミニウム不織布の製造方法を説明するための説明図である。
図10に示すように、まず、下型101の対向面101aに、アルミニウム不織布20、第1樹脂36の順に積層する(積層工程ST11)。第1樹脂36は、熱可塑性樹脂であり、例えばポリウレタンが用いられる。第1樹脂36は、アルミニウム不織布20の少なくとも一方の面に積層されていればよい。また、第1樹脂36は、アルミニウム不織布20の両面に設けられていてもよい。
【0089】
ホットプレス装置100は、第1樹脂36及びアルミニウム不織布20を熱圧着する(熱圧着工程ST12)。これにより、第1樹脂36及びアルミニウム不織布20に、圧力及び熱が加えられる。そして、ホットプレス装置100からの熱により第1樹脂36が溶融して、アルミニウム繊維21(
図3参照)の間隙22に流動する。これにより、第1樹脂36はアルミニウム不織布20に含浸され、樹脂含浸アルミニウム不織布50が形成される。なお、第1樹脂36の量や流動性により、アルミニウム不織布20の、対向面101a側の面に第1樹脂36が含浸されない場合であってもよい。この場合、
図9に示す樹脂含浸アルミニウム不織布51が形成される。
【0090】
図11は、樹脂含浸アルミニウム不織布を用いた皮革積層体の製造方法を説明するための説明図である。
図11に示すように、下型101の対向面101aに、樹脂含浸アルミニウム不織布50、皮革10の順に積層する(積層工程ST21)。皮革10の表面樹脂層12が対向面102aに向けられる。また、基布11は、樹脂含浸アルミニウム不織布50の第1面50aに配置される。樹脂含浸アルミニウム不織布50の第1面50aと皮革10との間には、樹脂が設けられていない。
【0091】
ホットプレス装置100は、皮革10及び樹脂含浸アルミニウム不織布50を熱圧着する(熱圧着工程ST22)。これにより、皮革10及び樹脂含浸アルミニウム不織布50に、圧力及び熱が加えられる。そして、ホットプレス装置100からの熱により、樹脂含浸アルミニウム不織布50が有する樹脂31(
図8参照)が溶融して、樹脂31は、基布11側にも流動する。これにより、アルミニウム不織布20に含浸された樹脂31は、基布11の一部にも含浸されて、樹脂含浸アルミニウム不織布50及び基布11に樹脂含浸層32が形成される。以上の工程により、樹脂含浸アルミニウム不織布50と皮革10とが積層された皮革積層体1Cが得られる。皮革積層体1Cは、樹脂含浸アルミニウム不織布50の樹脂31が基布11側にも含浸することで、良好な接着強度が得られる。また、本実施形態では、樹脂含浸アルミニウム不織布50を用いることで、皮革10と圧着する際に樹脂層を用いる必要がなく、皮革積層体1Cの製造工程を簡略化できる。
【0092】
図12は、樹脂含浸アルミニウム不織布を用いた皮革積層体の製造方法の変形例を説明するための説明図である。
図12に示すように、下型101の対向面101aに、樹脂含浸アルミニウム不織布50、第2樹脂37、皮革10の順に積層する(積層工程ST31)。皮革10の表面樹脂層12が対向面102aに向けられる。また、基布11と樹脂含浸アルミニウム不織布50の第1面50aとの間に第2樹脂37が配置される。
【0093】
ホットプレス装置100は、皮革10、第2樹脂37及び樹脂含浸アルミニウム不織布50を熱圧着する(熱圧着工程ST32)。これにより、皮革10、第2樹脂37及び樹脂含浸アルミニウム不織布50に、圧力及び熱が加えられる。そして、ホットプレス装置100からの熱により、第2樹脂37及び樹脂含浸アルミニウム不織布50が有する樹脂31(
図8参照)が溶融する。第2樹脂37は、樹脂含浸アルミニウム不織布50の樹脂31と接するとともに基布11側にも流動する。これにより、第2樹脂37は、基布11の一部にも含浸されて、樹脂含浸層32が形成される。以上の工程により、樹脂含浸アルミニウム不織布50と皮革10とが積層された皮革積層体1Cが得られる。本変形例では、第2樹脂37を用いることで、樹脂含浸アルミニウム不織布50と皮革10との接着強度を向上させることができる。
【0094】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態に係る積層体の断面図である。
図13に示すように、積層体60は、アルミニウム不織布20と、アルミニウム不織布20の第1面20aに設けられた第1樹脂層65とを有する。アルミニウム不織布20には樹脂31が含浸されており、第1樹脂層65は、アルミニウム不織布20の樹脂31と接する。アルミニウム不織布20の第1面20aから第2面20bに亘って樹脂含浸層32が形成される。
【0095】
第1樹脂層65は、アルミニウム不織布20に含浸された樹脂31と同じ樹脂材料からなり、アルミニウム繊維21を含まない層である。積層体60は、第1樹脂層65により、皮革10等に良好に貼り合わせることができる。また、積層体60は、アルミニウム不織布20を有しており熱伝導性及び強度に優れる。このため、積層体60と貼り合わされた皮革10等も良好な熱伝導性及び強度を有する。
【0096】
図14は、第3実施形態の第4変形例に係る積層体の断面図である。
図14に示すように、本変形例の積層体61は、アルミニウム不織布20と、アルミニウム不織布20の第1面20aに設けられた第1樹脂層65と、アルミニウム不織布20の第2面20bに設けられた第2樹脂層66と、を有する。言い換えると、アルミニウム不織布20は、厚さ方向で、第1樹脂層65と第2樹脂層66との間に配置される。第2樹脂層66は、アルミニウム不織布20に含浸された樹脂31と同じ樹脂材料からなり、アルミニウム繊維21を含まない層である。このように、積層体61は、アルミニウム不織布20の第1面20a及び第2面20bに樹脂層が設けられていてもよい。
【0097】
図15は、第3実施形態の第5変形例に係る積層体の断面図である。
図15に示すように、本変形例の積層体61は、アルミニウム不織布20と、アルミニウム不織布20の第1面20aに設けられた第1樹脂層65とを有する。樹脂31は、アルミニウム不織布20の第1面20a側に含浸されており、アルミニウム不織布20の第2面20b側には、含浸されていない。すなわち、アルミニウム不織布20は、第1面20a側に樹脂含浸層32が設けられ、第2面20b側にアルミニウム繊維層52が設けられる。このような構成であっても、積層体62は、第1樹脂層65により、皮革10等に良好に貼り合わせることができる。
【0098】
図16は、積層体の製造方法を説明するための説明図である。
図16に示すように、まず、下型101の対向面101aに、アルミニウム不織布20、第1樹脂36の順に積層する(積層工程ST41)。第1樹脂36は、熱可塑性樹脂であり、例えばポリウレタンが用いられる。第1樹脂36は、アルミニウム不織布20の少なくとも一方の面に積層されていればよい。また、
図14に示す積層体61を製造する場合には、第1樹脂36は、アルミニウム不織布20の両面に設けられていてもよい。
【0099】
ホットプレス装置100は、第1樹脂36及びアルミニウム不織布20を熱圧着する(熱圧着工程ST42)。これにより、第1樹脂36及びアルミニウム不織布20に、圧力及び熱が加えられる。そして、ホットプレス装置100からの熱により第1樹脂36が溶融して、アルミニウム繊維21(
図3参照)の間隙22に流動する。これにより、第1樹脂36はアルミニウム不織布20に含浸される。また、第1樹脂36の量や流動性により、第1樹脂36の一部はアルミニウム不織布20に含浸されず、アルミニウム不織布20の第1面20aに第1樹脂層65が形成される。これにより、積層体60が製造できる。
【0100】
このような製造方法により、アルミニウム不織布20に良好に第1樹脂36を含浸させる工程と同じ工程で、第1樹脂層65を形成することができる。なお、アルミニウム不織布20の、第1樹脂層65とは反対側の面に第1樹脂36が含浸されない場合であってもよい。この場合、
図15に示す積層体62が形成できる。
【0101】
図17は、積層体を用いた皮革積層体の製造方法を説明するための説明図である。
図17に示すように、下型101の対向面101aに、積層体60、皮革10の順に積層する(積層工程ST51)。皮革10の表面樹脂層12が対向面102aに向けられる。また、基布11は、第1樹脂層65の上に配置される。積層体60の第1樹脂層65と皮革10との間には、他の樹脂が設けられていない。
【0102】
ホットプレス装置100は、皮革10及び積層体60を熱圧着する(熱圧着工程ST52)。これにより、皮革10及び積層体60に、圧力及び熱が加えられる。そして、ホットプレス装置100からの熱により、積層体60が有する第1樹脂層65が溶融して、第1樹脂層65は、基布11側にも流動する。これにより、第1樹脂層65は、基布11の一部にも含浸されて、アルミニウム不織布20及び基布11に樹脂含浸層32が形成される。以上の工程により、アルミニウム不織布20と皮革10とが積層された皮革積層体1が得られる。本実施形態では、積層体60を用いることで、皮革10と積層体60とを圧着する際に他の樹脂層を用いる必要がなく、皮革積層体1の製造工程を簡略化できる。なお、
図17は、熱圧着後の皮革積層体1において、アルミニウム不織布20と皮革10との間に第1樹脂層65が設けられていないが、これに限定されず、第1樹脂層65の一部がアルミニウム不織布20と皮革10との間に設けられていてもよい。
【0103】
図18は、積層体を用いた皮革積層体の製造方法の変形例を説明するための説明図である。
図18に示すように、下型101の対向面101aに、積層体60、第2樹脂37、皮革10の順に積層する(積層工程ST61)。皮革10の表面樹脂層12が対向面102aに向けられる。また、基布11と、積層体60が有する第1樹脂層65との間に第2樹脂37が配置される。
【0104】
ホットプレス装置100は、皮革10、第2樹脂37及び積層体60を熱圧着する(熱圧着工程ST62)。これにより、皮革10、第2樹脂37及び積層体60に、圧力及び熱が加えられる。そして、ホットプレス装置100からの熱により、第2樹脂37及び積層体60の第1樹脂層65が溶融して、第2樹脂37は、第1樹脂層65と接するとともに基布11側にも流動する。これにより、第2樹脂37は、基布11の一部にも含浸されて、樹脂含浸層32が形成される。以上の工程により、アルミニウム不織布20と皮革10とが積層された皮革積層体1が得られる。本変形例では、積層体60が第1樹脂層65を有しており、且つ、第2樹脂37を用いることで、アルミニウム不織布20と皮革10との接着強度を向上させることができる。
【0105】
(実施例)
下記表1には、実施例1から実施例18の皮革積層体、樹脂含浸アルミニウム不織布及び比較例について熱伝導を比較した結果を示す。実施例1から実施例15の皮革積層体は、上述した第1実施形態及び変形例に示したように、皮革と、アルミニウム不織布20とがホットプレスにより圧着されて貼り合わされたものである。実施例1から11に用いた皮革10は、表面樹脂層12がポリ塩化ビニルで形成されており、基布11の繊維がポリエステルにより形成されている。実施例12から15は、天然皮革を用いた。
【0106】
実施例16、17は、上述した第2実施形態に示したように、皮革及び天然皮革を有さない樹脂含浸アルミニウム不織布50である。実施例18は、皮革10と、アルミニウム不織布20とが、ホットプレスにより圧着されずに貼り合わされたものである。また、実施例1から実施例18では、アルミニウム不織布20に含浸される樹脂31として、ポリウレタンが用いられる。
【0107】
実施例1から18に示す皮革積層体及び樹脂含浸アルミニウム不織布では、アルミニウム不織布の含有量、ホットプレスによる熱圧着工程における加圧力及び熱圧着工程における真空引きの有無を異ならせている。アルミニウム不織布の含有量は、単位面積当たりのアルミニウム不織布の質量である。アルミニウム不織布の含有量は、200g/m2以上550g/m2以下である。アルミニウム不織布の含有量が200g/m2よりも少ない場合、アルミニウム繊維21同士の結合が不十分となり、皮革積層体の製造が困難となる。また、アルミニウム不織布の含有量が550g/m2よりも多い場合、皮革積層体の柔軟性が損なわれ、加工が困難になる。アルミニウム不織布の含有量を、200g/m2以上550g/m2以下とすることにより、皮革積層体は、ホットプレスによる製造が容易となり、良好な熱伝導性を有するとともに、良好な加工性を有する。
【0108】
実施例1から18に示す皮革積層体及び樹脂含浸アルミニウム不織布は、熱圧着工程における加圧力を、それぞれ0.015MPaから3.5MPaまで異ならせて製造した。また、実施例1から8及び実施例12から15に示す皮革積層体及び樹脂含浸アルミニウム不織布は、真空引き雰囲気で熱圧着工程を行い、実施例9から11に示す皮革積層体及び樹脂含浸アルミニウム不織布は、真空引きせず大気中で熱圧着工程を行った。
【0109】
比較例1、2は、アルミニウム不織布を有さず、それぞれ皮革及び天然皮革のみが用いられたシート状の試料である。
【0110】
熱伝導の比較試験は、室温約25℃、湿度約45%の試験環境下において、9gの氷を各試料片の上に載置し、氷が全て溶けるまでの時間を計測した。なお、空調による影響を除くため、試料片の上部をビニールで覆った。
【0111】
表1に示すように、比較例1、2は、それぞれ融解時間が66分である。これに対し、実施例1から18の皮革積層体及び樹脂含浸アルミニウム不織布は、いずれも融解時間が60分以下である。これらの結果から、実施例1から18の皮革積層体及び樹脂含浸アルミニウム不織布は、アルミニウム不織布を有することにより、比較例1、2に比べて熱伝導率が向上することが示された。
【0112】
実施例1から15の皮革積層体で比較すると、実施例1から5及び実施例9から15の皮革積層体は、実施例6から8の皮革積層体よりも溶融時間が短い。具体的には、実施例1から5及び実施例9から15の溶融時間は、39分以上55分以下であり、実施例6から8の溶融時間は、58分以上60分以下である。これにより、熱圧着工程における加圧力を0.2MPa以上3.5MPa以下とすることにより、皮革積層体は良好な熱伝導率が得られることが示された。
【0113】
実施例1から5と、実施例9から11を比較すると、いずれも溶融時間は55分以下である。これにより、ホットプレスによる熱圧着工程を真空引きした雰囲気で行っても、大気中で行っても、皮革積層体は良好な熱伝導率が得られることが示された。また、実施例1から5と、実施例12から15を比較すると、いずれも溶融時間は55分以下である。これにより、アルミニウム不織布に、表面樹脂層がポリ塩化ビニルで形成された皮革を貼り合わせた場合でも、天然皮革を貼り合わせた場合でも、皮革積層体は良好な熱伝導率が得られることが示された。
【0114】
また、実施例16、17に示す樹脂含浸アルミニウム不織布は、それぞれ溶融時間が41分、39分である。これにより、樹脂含浸アルミニウム不織布は熱伝導性に優れることが示され、樹脂含浸アルミニウム不織布と皮革が貼り合わされた皮革積層体も良好な熱伝導性を有する。また、実施例18に示す皮革積層体では、溶融時間が51分である。これにより、皮革積層体は、ホットプレスにより熱圧着された場合に限定されず、アルミニウム不織布と皮革とが貼り合わされることで、良好な熱伝導率が得られることが示された。
【0115】
【0116】
図19は、実施例に係る皮革積層体の断面写真である。
図20は、他の実施例に係る皮革積層体の断面写真である。
図19及び
図20は、それぞれ皮革10とアルミニウム不織布20との界面を拡大して示す断面写真である。
図19及び
図20は、それぞれ、皮革積層体を切断し、研磨加工を行った断面を、光学顕微鏡で観察した。
【0117】
図19及び
図20に示すように、いずれの皮革積層体1、1Bにおいても、アルミニウム不織布20のアルミニウム繊維21の間に樹脂31が含浸されている。また、
図19に示すように、皮革積層体1は、皮革10とアルミニウム不織布20とが接して積層されており、皮革10とアルミニウム不織布20との間に中間樹脂層33が形成されていない。つまり、
図19に示す皮革積層体1は、アルミニウム不織布20に含浸された樹脂31が、皮革10と接することで、アルミニウム不織布20と皮革10とが貼り合わされている。
【0118】
図20に示す皮革積層体1Bは、皮革10とアルミニウム不織布20との間に中間樹脂層33が形成されている。中間樹脂層33の厚さは、200μm以上350μm以下程度である。皮革積層体1Bでは、皮革10とアルミニウム不織布20とが中間樹脂層33を介して貼り合わされている。
【0119】
(電子機器用ケース)
図21は、皮革積層体を用いた電子機器用ケースの平面図である。
図22は、電子機器を収納した場合の電子機器用ケースの側面図である。
図23は、
図21のXXIII-XXIII’断面図である。
【0120】
図21から
図23に示す電子機器用ケース300は、電子機器340(
図22参照)を収納するためのケースである。電子機器340は、例えば、スマートフォン、タブレット型デバイス、携帯電話機などの携帯型の通信機器又は情報機器である。
【0121】
電子機器用ケース300は、上述した皮革積層体1を有する。具体的には、
図21に示すように、電子機器用ケース300は、カバー310と、収納体320と、金属板材330と、を有する手帳型のケースである。なお、
図21は、カバー310の裏面S2から見たときの平面図である。カバー310は、基部311と、蓋部312と、連結部313とを有する。カバー310は、皮革積層体1で構成され、基部311、蓋部312及び連結部313は、1つの連続した皮革積層体1で形成される。ただし、これに限定されず、カバー310の少なくとも一部、例えば基部311及び蓋部312が皮革積層体1で形成されていればよい。
【0122】
カバー310を開いた場合に、第1方向Dxにおいて、基部311と蓋部312との間に連結部313が設けられる。なお、以下の説明において、基部311の裏面S2に平行な方向を第1方向Dx及び第2方向Dyとする。第1方向Dxは第2方向Dyと直交する。第1方向Dxは基部311の短辺に平行な方向であり、第2方向Dyは、基部311の長辺に平行な方向である。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する。つまり、第3方向Dzは基部311の裏面S2と垂直な方向である。
【0123】
基部311には、電子機器340を固定するための収納体320が設けられる。収納体320は、例えば、樹脂製であり、底板321と、側板322とを有する。側板322は、底板321を囲んで枠状に設けられる。底板321と、側板322とで形成される空間に電子機器340が固定される。収納体320に電子機器340が固定されることで、皮革積層体1で構成されるカバー310に電子機器340を収納することができる。なお、
図21から
図23に示す収納体320は、あくまで一例であり、電子機器340を固定可能であればよく、種々の構成の収納体320が適用可能である。
【0124】
基部311及び底板321には、電子機器340のカメラやセンサ等に対応する位置にそれぞれ開口311a、開口321bが設けられている。
【0125】
連結部313は、基部311と蓋部312とを折り畳み可能に連結する。なお、連結部313に開口部やスリットなどを設けて、連結部313の柔軟性を向上させて容易に折り畳み可能にする構成としてもよい。また、蓋部312は、ポケット部314が設けられている。
【0126】
図22に示すように、カバー310は、表面S1と裏面S2とを有する。裏面S2は、電子機器340が収納された場合に、電子機器340と対向する面である。表面S1は、裏面S2と反対側の面である。
【0127】
収納体320の底板321は、基部311の裏面S2に固定される。電子機器340が収納された場合に、電子機器340の背面340bは、第3方向Dzにおいて、底板321を挟んで基部311の裏面S2と対向する。蓋部312が折り畳まれた場合に、第3方向Dzにおいて、基部311の裏面S2と蓋部312の裏面S2とが、電子機器340を挟んで対向する。蓋部312は、電子機器340の表示面340aと重なって設けられ、電子機器340の表示面340aを保護する。
【0128】
カバー310を構成する皮革積層体1は、良好な熱伝導性を有する。このため、電子機器用ケース300は、電子機器340で発生する熱を良好に外部に放熱することができる。また、裏面S2にアルミニウム不織布20が設けられ、表面S1に皮革10が設けられる。すなわち、アルミニウム不織布20は、電子機器340が収納された場合に、皮革10よりも電子機器340に近い位置に設けられる。このため、電子機器340で発生する熱は良好にアルミニウム不織布20に伝わる。また、ユーザに視認される表面S1に皮革10が設けられるので、電子機器用ケース300のデザイン性を高めることができる。
【0129】
アルミニウム不織布20は柔軟なシート状の材料であるので、皮革積層体1を様々なカバー310の外径形状に加工することが容易であり、また、開口311a、ポケット部314等の加工も容易である。
【0130】
図23に示すように、皮革10の厚さt1は、例えば、1.5mm程度である。アルミニウム不織布20の厚さt2は、例えば、1.0mm程度である。
【0131】
収納体320の底板321には、開口321aが設けられている。金属板材330は、開口321aの内部に設けられ、基部311の裏面S2と接する。電子機器340が収納された場合に、第3方向Dzにおいて、電子機器340とアルミニウム不織布20との間に金属板材330が配置される。金属板材330は、電子機器340の背面340bと接することが好ましい。金属板材330の厚さは、底板321の厚さと等しい。金属板材330及び底板321の厚さは、例えば、1.5mm程度である。金属板材330は、例えば、アルミニウムなどの良好な熱伝導性を有する金属材料で形成されている。これにより、電子機器340で発生する熱は、金属板材330を介して、良好にアルミニウム不織布20に伝わる。
【0132】
なお、金属板材330は、開口321aに設けられる構成に限定されず、収納体320の少なくとも一部に設けられていればよい。また、
図21及び
図23では、収納体320と金属板材330とを、別部材で用いる例を示したが、これに限定されない。例えば、収納体320をアルミニウムなどの金属材料で形成し、底板321に開口321aを設けない構成としてもよい。
【0133】
(電子機器用ケースの変形例)
図24は、皮革積層体を用いた電子機器用ケースの変形例を示す平面図である。
図25は、
図24のXXV-XXV’断面図である。
図24に示すように、変形例の電子機器用ケース300Aにおいて、収納体320Aは、カバー310Aの基部311Aの裏面S2と対向して設けられる。なお、カバー310Aの基部311A、蓋部312A及び連結部313Aは、
図21から
図23に示すカバー310と同様に皮革積層体1で構成される。
【0134】
収納体320Aには、開口320Aaが設けられている。収納体320Aは、電子機器340が収納された場合に、電子機器340の周縁部と重なって設けられ、開口320Aaを通して電子機器340の表示画面を視認することができる。
【0135】
図25に示すように、収納体320Aとカバー310Aの裏面S2との間に、電子機器340を収納するための収納スペースが形成される。収納スペースは、ポケット型のスペースであり、収納体320Aの外周の4辺のうち、連結部313A側の一辺320Asを除く3辺は、基部311Aの周縁部と連結されている。また、収納体320Aの一辺320Asとカバー310Aの裏面S2との間に、電子機器340を出し入れするための開口OPが設けられている。
【0136】
このような、収納スペースに電子機器340を収納する態様の電子機器用ケース300Aにおいても、カバー310Aに皮革積層体1を適用することができる。電子機器340が収納スペースに収納された場合に、電子機器340の背面340bは、カバー310Aの裏面S2に設けられたアルミニウム不織布20と接する。これにより、電子機器340で発生する熱をアルミニウム不織布20に良好に伝えることができる。
【0137】
また、収納体320Aも皮革積層体1で構成される。収納体320Aの電子機器340と対向する面にアルミニウム不織布20が設けられる。収納体320Aの電子機器340と反対側の面に皮革10が設けられる。電子機器340が収納スペースに収納された場合に、電子機器340の表示面340aの周縁部は、収納体320Aのアルミニウム不織布20と接する。これにより、電子機器340で発生する熱を良好に放熱することができる。また、本変形例では、樹脂で形成された収納体320が設けられていないので、電子機器用ケース300Aの構成を簡易にすることができる。
【0138】
なお、
図21から
図25に示した電子機器用ケース300、300Aは、あくまで一例である。カバー310、310Aの平面視での形状や、寸法、厚さは、電子機器340の種類に応じて変更できる。また、電子機器340を固定、収納するための収納体320、320Aの構成も適宜変更することができる。種々の電子機器用ケースにも皮革積層体1を適用することができる。
【符号の説明】
【0139】
1、1A、1B 皮革積層体
1a 表面
1b 裏面
10、10A 皮革
11 基布
12 表面樹脂層
13 コラーゲン層
14 銀面層
20 アルミニウム不織布
21 アルミニウム繊維
22 間隙
31 樹脂
32 樹脂含浸層
32a 第1樹脂含浸層
32b 第2樹脂含浸層
33 中間樹脂層
34、36 第1樹脂
35、37 第2樹脂
50、51 樹脂含浸アルミニウム不織布
52 アルミニウム繊維層
60、61、62 積層体
65 第1樹脂層
66 第2樹脂層
100 ホットプレス装置
200 自動車用シート
300、300A 電子機器用ケース
310、310A カバー
311、311A 基部
312、312A 蓋部
320、320A 収納体
330 金属板材
340 電子機器
ST1 積層工程
ST2 熱圧着工程