(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20230607BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2022512581
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2021013666
(87)【国際公開番号】W WO2021201019
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2020063569
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 充
(72)【発明者】
【氏名】林 栄樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 真由美
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/116653(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/032056(WO,A1)
【文献】特開2020-012621(JP,A)
【文献】特開2005-252151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1幅広面と、当該第1幅広面と対向する第2幅広面と、を有し、前記第1幅広面と前記第2幅広面との間に形成される扁平状の流路を流体が流通して被冷却デバイスを冷却する冷却装置において、
前記第2幅広面は、前記流路内に突出して流路幅方向に延設され流体流れ方向に並べて配置される複数の突起部を有し、
前記第1幅広面には、
突起部は設けられておらず、
前記突起部は、
前記流体流れ方向の上流から下流に向かって前記第1幅広面に近接するように傾斜する第1傾斜面と、
前記流体流れ方向にて前記第1傾斜面と交互に配置され、前記流体流れ方向の上流から下流に向かって前記第1幅広面から離間するように傾斜する第2傾斜面と、を有し、
前記突起部は、前記流体流れ方向に沿った断面視で、前記第1幅広面と、前記第2傾斜面と、当該第2傾斜面の前記流体流れ方向下流に隣り合う前記第1傾斜面と、に仮想的な第1の円が3点で内接するように形成される、
冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記突起部は、
前記第1傾斜面と当該第1傾斜面の前記流体流れ方向下流に隣り合う前記第2傾斜面との間に形成される山部と、
前記第2傾斜面と当該第2傾斜面の前記流体流れ方向下流に隣り合う前記第1傾斜面との間に形成される谷部と、を有し、
前記突起部は、前記流体流れ方向に沿った断面視で、前記山部の上流側の前記第1傾斜面と、当該山部の下流側の前記第2傾斜面と、前記第1幅広面と対向し前記谷部が位置する仮想的な対向面と、に仮想的な第2の円が3点で接し、かつ前記山部が前記第2の円内に入らないように形成される、
冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却装置であって、
前記第1の円の半径をRm1とし、前記第2の円の半径をRm2としたとき、Rm1>Rm2である、
冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷却装置であって、
前記流体流れ方向に隣り合う前記山部の間のピッチをPとし、前記山部と前記第1幅広面との間の距離をDvとしたとき、Rm1×P/Dvが4~40である、
冷却装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一つに記載の冷却装置であって、
前記流路幅方向に隣り合う前記突起部は、前記流体流れ方向へ互い違いになるように反対方向に傾斜し、
前記流路幅方向に隣り合う前記山部の稜線は、連続して形成され、
前記流路幅方向に隣り合う前記谷部の稜線は、連続して形成される、
冷却装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の冷却装置であって、
前記突起部は、前記流路幅方向の全幅にわたって形成される、
冷却装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一つに記載の冷却装置であって、
前記流路は、
前記突起部が設けられる中央流路と、
前記中央流路の前記流路幅方向の外側に設けられる側部流路と、
前記中央流路から前記側部流路に向かって流体が折り返すターン流路と、を有する、
冷却装置。
【請求項8】
請求項7に記載の冷却装置であって、
前記側部流路には、前記突起部が形成される、
冷却装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の冷却装置であって、
前記流路は、前記流体流れ方向の上流側よりも下流側の方が前記流路幅方向に小さくなるように形成される、
冷却装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の冷却装置であって、
前記第1幅広面は、前記被冷却デバイスの底面によって形成される、
冷却装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載の冷却装置であって、
前記突起部は、
前記第1傾斜面と当該第1傾斜面の前記流体流れ方向下流に隣り合う前記第2傾斜面との間に形成される山部と、
前記第2傾斜面と当該第2傾斜面の前記流体流れ方向下流に隣り合う前記第1傾斜面との間に形成される谷部と、
前記流路幅方向にて連続する前記山部の間の連結部のうち前記流体流れ方向の下流に突出する頂部から前記流体流れ方向下流に延びる整流フィンと、を有する、
冷却装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一つに記載の冷却装置であって、
前記第1幅広面は、流体流れ方向と、当該流体流れ方向と直交する方向と、のいずれか一方が直線状に延び、他方が直線状に延びるか若しくは円曲している、
冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被冷却デバイスを冷却する冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
JP2020-014278Aには、パワーモジュールとコンデンサ本体との間に形成される冷却水の流路(冷却装置)を備えるインバータモジュールが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、JP2020-014278Aの冷却装置では、パワーモジュールの下面にフィンを形成することで冷却水との熱交換面積を大きくしているが、流路内における冷却水の流れ方については何ら検討されていない。
【0004】
本発明は、流路内を流通する流体の流れ方によって被冷却デバイスと流体との熱交換効率を向上させることを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、第1幅広面と、当該第1幅広面と対向する第2幅広面と、を有し、前記第1幅広面と前記第2幅広面との間に形成される扁平状の流路を流体が流通して被冷却デバイスを冷却する冷却装置において、前記第2幅広面は、前記流路内に突出して流路幅方向に延設され流体流れ方向に並べて配置される複数の突起部を有し、前記第1幅広面には、突起部は設けられておらず、前記突起部は、前記流体流れ方向の上流から下流に向かって前記第1幅広面に近接するように傾斜する第1傾斜面と、前記流体流れ方向にて前記第1傾斜面と交互に配置され、前記流体流れ方向の上流から下流に向かって前記第1幅広面から離間するように傾斜する第2傾斜面と、を有し、前記突起部は、前記流体流れ方向に沿った断面視で、前記第1幅広面と、前記第2傾斜面と、当該第2傾斜面の前記流体流れ方向下流に隣り合う前記第1傾斜面と、に仮想的な第1の円が3点で内接するように形成される。
【0006】
上記態様では、突起部は、流体流れ方向に沿った断面視で、第1幅広面と、第2傾斜面と、当該第2傾斜面の流体流れ方向下流に隣り合う第1傾斜面と、に仮想的な第1の円が3点で内接するように形成される。そのため、第1傾斜面から流体流れ方向下流に隣り合う第2傾斜面に流体が流れる際に縦渦が発生して第2傾斜面に沿って流れ、仮想的な第1の円が3点で内接する空間にて大きな縦渦となる。よって、仮想的な第1の円が3点で内接する空間における被冷却デバイスと流体との熱交換効率を向上させることができる。したがって、流路内を流通する流体の流れ方によって被冷却デバイスと流体との熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却装置を上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、冷却装置を下方から見た分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III断面図であり、冷却装置の冷却水流れ方向に沿った突起部の断面図である。
【
図4】
図4は、冷却装置における第2幅広面の一部を示す底面図である。
【
図5】
図5は、冷却装置の流体流れ方向に沿った断面図であり、流体流れ方向の一部のみを示す図である。
【
図6】
図6は、突起部における流体の流れを模式的に示す底面図である。
【
図7】
図7は、突起部における流体の流れを模式的に示す側面の断面図である。
【
図8】
図8は、第1の円C1の半径をRm1とし、流体流れ方向に隣り合う山部の間のピッチをPとし、山部と第1幅広面との間の距離をDvとしたときに、Rm1×P/Dvに対する熱通過率比を示すグラフである。
【
図9】
図9は、傾斜角度θtとピッチPと距離Dvと半径Rm1とを変化させたときの各々の形状に対するRm1×P/Dvの値を示すものである。
【
図10】
図10は、傾斜角度θtの上下限値と距離Dvの上限値について示すグラフである。
【
図11】
図11は、傾斜角度θtと抵抗ΔPとの関係について示すグラフである。
【
図12】
図12は、ピッチPと熱通過率との関係について示すグラフである。
【
図13】
図13は、ピッチPと抵抗ΔPとの関係について示すグラフである。
【
図14】
図14は、レイノルズ数が異なる流体についてのRm1×P/Dvに対する熱通過率比を示すグラフである。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態の第1の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態の第2の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態の第3の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態の第4の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態の第5の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【
図21】
図21は、本発明の実施形態の第6の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【
図22】
図22は、本発明の実施形態の第7の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【
図23】
図23は、本発明の実施形態の第8の変形例に係る流路について説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る冷却装置1について説明する。
【0009】
まず、
図1から
図5を参照して、冷却装置1の全体構成について説明する。
【0010】
図1は、冷却装置1を上方から見た斜視図である。
図2は、冷却装置1を下方から見た分解斜視図である。
図3は、
図2におけるIII-III断面図であり、冷却装置1の冷却水流れ方向に沿った突起部30の断面図である。
図4は、突起部30が形成される第2幅広面12の一部を示す底面図である。
図5は、冷却装置1の冷却水流れ方向に沿った断面図であり、冷却水流れ方向の一部のみを示す図である。
【0011】
図1に示すように、冷却装置1は、入口流路2と、出口流路3と、流路20(
図2参照)を形成する本体部10と、を備える。ここでは、冷却装置1は、流路20を流通する流体としての冷却水との熱交換によって、被冷却デバイスとしてのインバータモジュール8を冷却する。
【0012】
インバータモジュール8は、例えば、車両の駆動用モータ(図示省略)を制御するものである。
図2に示すように、インバータモジュール8は、流路20内の冷却水の流れ方向に沿って3つのスイッチング素子9を有する。インバータモジュール8は、スイッチング素子9のON/OFFを切り換えることで、直流電力と交流電力とを相互に変換する。
【0013】
スイッチング素子9は、インバータモジュール8のU相,V相,及びW相のそれぞれに対応する。スイッチング素子9は、高速でON/OFFが切り換えられて発熱する。発熱したスイッチング素子9は、流路20内の冷却水と熱交換をすることで冷却される。
【0014】
図1に示すように、入口流路2は、本体部10に形成される扁平状の流路20(
図2参照)に冷却水を供給するための流路である。入口流路2は、本体部10から突出して設けられる。入口流路2は、流路20における冷却水流れ方向に沿って冷却水を供給するように、本体部10に対して傾斜して形成される。
【0015】
出口流路3は、流路20から冷却水を排出するための流路である。出口流路3は、本体部10から突出して設けられる。出口流路3は、流路20における冷却水流れ方向に沿って排出される冷却水を導くように、本体部10に対して傾斜して形成される。
【0016】
図2に示すように、本体部10は、第2幅広面12と、第1側面13と、第2側面14と、を有する。インバータモジュール8は、第1幅広面11を有する。流路20は、第1幅広面11と、第2幅広面12と、第1側面13と、第2側面14と、によって扁平に形成される。
【0017】
本実施形態では、第1幅広面11は、インバータモジュール8の底面によって形成される。即ち、冷却装置1は、本体部10とインバータモジュール8とによって構成される。この場合、インバータモジュール8に冷却水を直接接触させることで、熱交換効率を向上させることができる。
【0018】
これに代えて、本体部10が第1幅広面11を有するように形成し、当該第1幅広面11の外側にインバータモジュール8が当接するようにしてもよい。この場合、冷却装置1は、本体部10のみによって構成される。
【0019】
ここでは、冷却水が流路20内を流れる方向を、「冷却水流れ方向」(流体流れ方向)と称し、冷却水流れ方向に垂直であり、かつ第1幅広面11及び第2幅広面12に平行な方向を、「流路幅方向」と称し、冷却水流れ方向に垂直であり、かつ第1側面13及び第2側面14に平行な方向を、「流路高さ方向」と称する。なお、「冷却水流れ方向」とは、突起部30の影響を受けて進行方向が変化した局所的な冷却水の流れ方向ではなく、流路20全体として見たときの冷却水の流れ方向である。
【0020】
第1幅広面11は、冷却水流れ方向に直線状に延び、冷却水流れ方向と直交する流路幅方向にも直線状に延びる平面状に形成される。第1幅広面11は、流路20を流通する冷却水によってインバータモジュール8を冷却する。第1幅広面11には、後述する突起部30は設けられていない。
【0021】
第2幅広面12は、流路高さ方向に第1幅広面11と流路高さ分の間隔をあけて対向する。これにより、第1幅広面11と第2幅広面12との間に、扁平状の流路20が形成される。ここでは、流路20における最も狭い部分の流路高さ、即ち、後述する山部33と第1幅広面11との間の距離Dv(
図5参照)は、0.1~10[mm]である。第2幅広面12は、流路20内に突出して流路幅方向に延設される突起部30を有する。
【0022】
突起部30は、冷却水流れ方向に平行に並べて複数配置される。突起部30は、流路20における流路幅方向の全幅にわたって形成される。突起部30が形成されない部分がある場合には、当該部分を冷却水がバイパスして流れるおそれがあるが、突起部30が流路幅方向の全幅にわたって形成されることで、熱交換効率の低下を防止することができる。
【0023】
図3に示すように、突起部30は、第1傾斜面31と、第2傾斜面32と、山部33と、谷部34と、を有する。
【0024】
第1傾斜面31は、冷却水流れ方向の上流から下流に向かって第1幅広面11に近接するように傾斜する。第1傾斜面31は、平面状に形成される。第1傾斜面31は、第2幅広面12に対して傾斜角度θtだけ傾斜して設けられる。傾斜角度θtは、15~45[°]が好ましく、ここでは、30[°]である。また、第2幅広面12の厚さtは、1[mm]である。
【0025】
第2傾斜面32は、冷却水流れ方向にて第1傾斜面31と交互に配置され、冷却水流れ方向の上流から下流に向かって第1幅広面11から離間するように傾斜する。第2傾斜面32は、平面状に形成される。第2傾斜面32も同様に、第2幅広面12に対して傾斜角度θtだけ傾斜して設けられる。
【0026】
山部33は、第1傾斜面31と当該第1傾斜面31の冷却水流れ方向下流に隣り合う第2傾斜面32との間に形成される。ここでは、隣り合う山部33の間のピッチPは、11[mm]である。山部33は、第1傾斜面31と第2傾斜面32とが突き合わされた頂部に形成される。これに代えて、第1傾斜面31と第2傾斜面32とを緩やかに連結する曲面によって山部33を形成してもよく、また第1傾斜面31と第2傾斜面32とを連結する平面によって山部33を形成してもよい。
【0027】
谷部34は、第2傾斜面32と当該第2傾斜面32の冷却水流れ方向下流に隣り合う第1傾斜面31との間に形成される。谷部34は、第2傾斜面32と第1傾斜面31とが突き合わされた底部に形成される。これに代えて、第2傾斜面32と第1傾斜面31とを緩やかに連結する曲面によって谷部34を形成してもよく、また第2傾斜面32と第1傾斜面31とを連結する平面によって谷部34を形成してもよい。
【0028】
冷却水は、山部33と第1幅広面11との間の流路20を通過する際には、抵抗が小さくなるように山部33の稜線に対して垂直に近い方向に流れようとする。一方、冷却水は、谷部34と第1幅広面11との間の流路20を通過する際には、抵抗が小さい谷部34の稜線に沿った方向に流れようとする。このように、冷却水が山部33と谷部34とを交互に通過することで、一対の山部33に挟まれた谷部34にて強い旋回流(縦渦)が発生する。したがって、縦渦を効率的に発生させることができる。
【0029】
図4に示すように、流路幅方向に隣り合う突起部30は、冷却水流れ方向へ互い違いになるように反対方向に傾斜する。冷却水流れ方向に対する流路幅方向への突起部30の傾斜角度θwは、15~40[°]が好ましく、ここでは30[°]である。
【0030】
図4には、流路幅方向に隣り合う一対の突起部30のみを示しているが、流路幅方向に更に突起部30が並べて設けられる。即ち、流路幅方向に隣り合う突起部30は、流路幅方向にV字が連続するように形成される。ここでは、流路幅方向に隣り合う一対の突起部30の流路幅方向の大きさWは、12.7[mm]である。
【0031】
流路幅方向に隣り合う山部33の稜線は、連続して形成される。流路幅方向に隣り合う谷部34の稜線は、連続して形成される。これにより、流路20内における冷却水の温度分布を良好にすることができる。突起部30は、流路幅方向にて連続する山部33の間に形成される連結部35と、連結部35のうち冷却水流れ方向の下流に向かって突出する頂部36と、を有する。
【0032】
図5に示すように、突起部30は、冷却水流れ方向に沿った断面視で、第1幅広面11と、第2傾斜面32と、当該第2傾斜面32の冷却水流れ方向下流に隣り合う第1傾斜面31と、に仮想的な第1の円C1が3点で内接するように形成される。また、突起部30は、谷部34が第1の円C1内に入らないように形成される。
【0033】
同様に、突起部30は、冷却水流れ方向に沿った断面視で、山部33の上流側の第1傾斜面31と、当該山部33の下流側の第2傾斜面32と、第1幅広面11と対向し谷部34が位置する仮想的な対向面Sと、に仮想的な第2の円C2が3点で内接するように形成される。また、突起部30は、山部33が第2の円C2内に入らないように形成される。これにより、不要な抵抗上昇を伴うことなく、熱交換効率を向上させることができる。
【0034】
ここで、
図5に示すように、第1の円C1の半径をRm1とし、第2の円C2の半径をRm2とし、冷却水流れ方向に隣り合う山部33の間のピッチをPとし、山部33と第1幅広面11との間の距離をDvとする。突起部30は、第1の円C1の半径Rm1と、山部33の間のピッチPと、距離Dvと、が分かれば形状が定まる。
【0035】
このとき、第1の円C1と第2の円C2との大きさは、Rm1>Rm2の関係である。
【0036】
このように、Rm1>Rm2とすることで、山部33と第1幅広面11との間における流路20の流路断面積を充分に確保することができる。
【0037】
次に、
図5から
図14を参照して、冷却装置1の作用について説明する。
【0038】
図6は、突起部30における冷却水の流れを模式的に示す平面図である。
図7は、突起部30における冷却水の流れを模式的に示す側面の断面図である。
図8は、第1の円C1の半径をRm1とし、冷却水流れ方向に隣り合う山部33の間のピッチをPとし、山部33と第1幅広面11との間の距離をDvとしたときに、Rm1×P/Dvに対する熱通過率比を示すグラフである。
図9は、傾斜角度θtとピッチPと距離Dvと半径Rm1とを変化させたときの各々の形状に対するRm1×P/Dvの値を示すものである。
図10は、傾斜角度θtの上下限値と距離Dvの上限値について示すグラフである。
図11は、傾斜角度θtと抵抗ΔP[Pa]との関係について示すグラフである。
図12は、ピッチPと熱通過率との関係について示すグラフである。
図13は、ピッチPと抵抗ΔPとの関係について示すグラフである。
図14は、レイノルズ数Reが異なる流体についてのRm1×P/Dvに対する熱通過率比を示すグラフである。
【0039】
図6及び
図7に示すように、第1傾斜面31から冷却水流れ方向下流に隣り合う第2傾斜面32に冷却水が流れる際に縦渦が発生して第2傾斜面32に沿って流れる。そして、仮想的な第1の円C1が3点で内接する空間(
図5参照)にて、大きな縦渦となる。よって、仮想的な第1の円C1が3点で内接する空間におけるインバータモジュール8と冷却水との熱交換効率を向上させることができる。したがって、流路20内を流通する冷却水の流れ方によってインバータモジュール8と冷却水との熱交換効率を向上させることができる。
【0040】
図8の横軸は、Rm1×P/Dv(Rm1は第1の円C1の半径、Pは山部33の間(若しくは谷部34の間)のピッチ、Dvは山部33と第1幅広面11との間の距離)である。
図8の縦軸は、突起部30が形成されないフラットな流路の場合に対する熱通過率の比である。
【0041】
ここで、冷却装置1では、谷部34に向かって旋回流を発生させながら、山部33と第1幅広面11との間(距離Dvの部分)にて縮流することで、温度境界層を薄くして熱交換効率を向上させている。半径Rm1とピッチPと距離Dvとは、一連の流れを発生させるために相互に関連しているパラメータである。具体的には、半径Rm1は、距離Dvが小さくなると相対的に比率が大きくなる逆相関の関係にあり、ピッチPは、距離Dvが小さくなると相対的に比率が大きくなる逆相関の関係にある。このように、半径Rm1とピッチPと距離Dvとには、形状的な相関関係がある。よって、形状的な相関関係が流れに影響を与えるため、Rm1×P/Dvの値でピークを示すことができる。
【0042】
図8では、冷却装置1において使用頻度の高いレイノルズ数Reの範囲うち、Re=1640の場合を例として示している。
図8の各プロットは、
図9に示す各々の形状の場合を示すものである。
図8では、三角形(▲)のプロットは、距離Dvが0.6[mm]の場合であり、丸(●)のプロットは、距離Dvが1.0[mm]の場合であり、四角(■)のプロットは、距離Dvが1.4[mm]の場合である。
【0043】
図8を参照すると、距離Dvが1.0[mm]の場合に変曲点となる値、即ちRm1×P/Dvが40のときを上限として、そのときのフラットな流路の場合に対する熱通過率の比から下限値を4とする。よって、Rm1×P/Dvが4~40の範囲にあるときに、冷却装置1の性能が向上していることが分かる。したがって、Rm1×P/Dvを、4~40の範囲とすることで、熱通過率を向上させること、即ち性能向上代を大きくすることができる。なお、距離Dvが1.0[mm]の場合を基準として、距離Dvが0.6~1.4[mm]の範囲である場合も同様に、冷却装置1の性能が向上していることが分かる。
【0044】
続いて、
図10から
図14を参照して、Rm1×P/Dvにおける各パラメータの上下限値について説明する。
【0045】
図10では、横軸は傾斜角度θtであり、縦軸は熱通過率[W/m
2K]である。
図10では、三角形(▲)のプロットは、距離Dvが0.6[mm]の場合であり、丸(●)のプロットは、距離Dvが1.0[mm]の場合であり、四角(■)のプロットは、距離Dvが1.4[mm]の場合である。
【0046】
図10に示すように、距離Dvが1.4[mm]の場合には、傾斜角度θtが10~45°の範囲における熱通過率の大きさの変化は5%未満である。よって、
図10に基づき、距離Dvの上限値を1.4[mm]とし、傾斜角度θtの下限値を10[°]とし、傾斜角度θtの上限値を45[°]とする。
【0047】
図11では、横軸は傾斜角度θtであり、縦軸は抵抗ΔP[Pa]である。
図11では、三角形(▲)のプロットは、距離Dvが0.6[mm]の場合であり、丸(●)のプロットは、距離Dvが1.0[mm]の場合であり、四角(■)のプロットは、距離Dvが1.4[mm]の場合である。
【0048】
図11に示すように、距離Dvが0.6[mm]の場合には、距離Dvが1.4[mm]の場合の5倍以上の抵抗ΔPである。よって、距離Dvの下限値を0.6[mm]とする。
【0049】
図12では、横軸はピッチP[mm]であり、縦軸は熱通過率[W/m
2K]である。
図13では、横軸はピッチP[mm]であり、縦軸は抵抗ΔP[kPa]である。
図12及び
図13では、三角形(▲)のプロットは、距離Dvが0.6[mm]の場合であり、丸(●)のプロットは、距離Dvが1.0[mm]の場合であり、四角(■)のプロットは、距離Dvが1.4[mm]の場合である。
【0050】
図12及び
図13に示すように、ピッチが16.5[mm]のときには、熱通過率が下がって抵抗ΔPが増加している。よって、ピッチPの上限値を16.5[mm]とする。一方、ピッチPが5.5[mm]のときにピッチPが11.0[mm]からの熱通過率の増加は10%であるのに対して、抵抗ΔPは37%増加しており、ピッチPがこれよりも小さくなると抵抗ΔPが二次関数的に増加することが予想できる。よって、ピッチPの下限値を5.5[mm]とする。
【0051】
なお、半径Rm1の大きさは、傾斜角度θtと距離DvとピッチPとによって定まる。よって、半径Rm1の大きさの範囲は、傾斜角度θtと距離DvとピッチPとの上下限値から次のとおり求めることができる。半径Rm1の下限値は、傾斜角度θtが10[°]、距離Dvが0.6[mm]、ピッチPが5.5[mm]のときの値であり、ここでは0.54[mm]である。また、半径Rm1の上限値は、傾斜角度θtが45[°]、距離Dvが1.4[mm]、ピッチPが16.5[mm]のときの値であり、ここでは3.61[mm]である。
【0052】
図14は、
図8のグラフにて距離Dvが1.0[mm]であるときに、流体のレイノルズ数Reが異なる場合を追加したものである。
図14では、丸(●)のプロットは、流体のレイノルズ数Reが1640の場合であり、四角(■)のプロットは、流体のレイノルズ数Reが1230の場合であり、三角(▲)のプロットは、流体のレイノルズ数Reが820の場合である。
【0053】
図14に示すように、流体のレイノルズ数Reが小さくなるとピーク値の山が低くなだらかになると共に、低い方へオフセットする。しかしながら、流体のレイノルズ数Reが変わっても、全体の傾向は同じであることが分かる。
【0054】
以下、
図15から
図23を参照して、本発明の実施形態の第1から第8の変形例について説明する。
【0055】
まず、
図15から
図17を参照して、本発明の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例について説明する。
【0056】
図15は、本発明の実施形態の第1の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
図16は、
図15に示す第1の変形例における冷却水の流れを説明する平面図である。
図17は、本発明の実施形態の第2の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
【0057】
図15に示すように、流路20は、中央流路21と、側部流路22と、ターン流路23と、を有する。
【0058】
中央流路21は、インバータモジュール8における発熱量の大きな中央部分に対応する流路幅方向の位置に形成される。中央流路21には、突起部30が設けられる。よって、中央流路21を流れる冷却水によって、インバータモジュール8の中央部分を優先的に冷却することができる。
【0059】
側部流路22は、中央流路21の流路幅方向の外側に設けられる。側部流路22には、突起部30が形成される。よって、中央流路21にてインバータモジュール8と熱交換を行い温度が上昇した冷却水によって、インバータモジュール8における発熱量が比較的小さな部分を更に冷却することができる。
【0060】
ターン流路23は、中央流路21から側部流路22に向かって冷却水を折り返させる。
図16に示すように、ターン流路23にて折り返した冷却水は、側部流路22を通って出口流路3から排出される。
【0061】
以上のように、インバータモジュール8における流路幅方向の中央部分は発熱量が大きいので、当該中央部分を冷却する中央流路21に突起部30を設けることで、インバータモジュール8を効率的に冷却することができる。また、ターン流路23を介して折り返された冷却水が側部流路22を流れることによって、インバータモジュール8における発熱量が比較的小さな部分を更に冷却することができる。
【0062】
また、中央流路21だけでなく側部流路22にも突起部30が形成されることで、インバータモジュール8の熱交換効率を更に向上させることができる。
【0063】
なお、
図17に示す第2の変形例のように、インバータモジュール8の発熱量によっては、側部流路22に突起部30を形成しなくてもよい。この場合、側部流路22に突起部30を形成しないことで、冷却水の抵抗を小さくすることができる。
【0064】
次に、
図18を参照して、本発明の実施形態の第3の変形例について説明する。
【0065】
図18は、本発明の実施形態の第3の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
【0066】
図18に示すように、突起部30は、流路幅方向にて連続する山部33の間の連結部35のうち冷却水流れ方向の下流に突出する頂部36から冷却水流れ方向下流に延びる整流フィン37を更に有する。
【0067】
整流フィン37は、山部33から冷却水流れ方向下流に向けて形成される。整流フィン37は、第2傾斜面32に沿って、谷部34までの長さに形成される。
【0068】
このように、整流フィン37が設けられることで、流路幅方向に流路20が仕切られるので、整流フィン37の両側の冷却水の縦渦が干渉しあうことを抑制できる。よって、冷却水の抵抗の増加を抑制しつつ冷却性能を向上させることができる。
【0069】
次に、
図19を参照して、本発明の実施形態の第4の変形例について説明する。
【0070】
図19は、本発明の実施形態の第4の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
【0071】
図19に示すように、流路20は、幅広部25と、幅縮小部26と、幅狭部27と、を有する。流路20は、冷却水流れ方向の上流側よりも下流側の方が流路幅方向に小さくなるように形成される。
【0072】
幅広部25は、冷却水がインバータモジュール8の流路幅方向の全体を冷却するように形成される。幅広部25には、入口流路2から冷却水が流入する部分に形成される。そのため、幅広部25には、比較的温度の低い冷却水が流れる。よって、幅広部25が形成されることによって、冷却水の流速を抑えつつ、インバータモジュール8を幅広く冷却することができる。
【0073】
幅縮小部26は、幅広部25から幅狭部27に向けて徐々に流路幅を縮小する。幅縮小部26は、谷部34の稜線に沿って形成される。そのため、突起部30によって形成される縦渦の流れを妨げないように流路幅を縮小できるので、抵抗の増加を抑制することができる。
【0074】
幅狭部27は、幅広部25よりも流路幅方向に狭く形成される。幅狭部27は、インバータモジュール8における発熱量の大きな中央部分に対応する流路幅方向の位置に形成される。幅狭部27を流れる冷却水は、幅広部25を流れる冷却水よりも流速が速い。そのため、幅広部25及び幅縮小部26にてインバータモジュール8を冷却して冷却水の温度が上昇していても、流速を速くすることで幅狭部27においてインバータモジュール8を冷却することができる。
【0075】
次に、
図20から
図23を参照して、本発明の実施形態の第5の変形例から第8の変形例について説明する。
【0076】
図20は、本発明の実施形態の第5の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
図21は、本発明の実施形態の第6の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
図22は、本発明の実施形態の第7の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
図23は、本発明の実施形態の第8の変形例に係る流路20について説明する斜視図である。
【0077】
図20から
図23では、突起部30の形状が見えるように、外筒5又は内筒6の一部を切り取った状態を示している。
図20から
図23に示す各変形例では、インバータモジュール8に代えて、外形が円柱形状の電動モータ(駆動用モータ)80が被冷却デバイスとして適用される。
【0078】
図20に示す第5の変形例では、冷却装置1は、円筒状の外筒5と、外筒5の内周に間隔をあけて設けられて内周に電動モータ80を収容する円筒状の内筒6と、を備える。外筒5の内径は、内筒6の外径よりも大きく形成される。外筒5の内周には、第1幅広面11が形成され、内筒6の外周には、第2幅広面12が形成される。
【0079】
流路20は、外筒5と内筒6との間に円環状に形成される。冷却水は、流路20を中心軸方向に流れる。即ち、第1幅広面11及び第2幅広面12は、冷却水流れ方向に直線状に延び、冷却水流れ方向と直交する方向に円曲している。
【0080】
突起部30は、第2幅広面12の外周から流路20内に突出して流路幅方向に延設され冷却水流れ方向である流路20の中心軸方向に並べて配置される。突起部30は、第1幅広面11には設けられない。
【0081】
図21に示す第6の変形例では、冷却装置1は、円筒状の外筒5と、外筒5の内周に間隔をあけて設けられて内周に電動モータ80を収容する円筒状の内筒6と、を備える。外筒5の内径は、内筒6の外径よりも大きく形成される。外筒5の内周には、第1幅広面11が形成され、内筒6の外周には、第2幅広面12が形成される。
【0082】
流路20は、外筒5と内筒6との間に円環状に形成される。冷却水は、流路20を周方向に流れる。即ち、第1幅広面11及び第2幅広面12は、冷却水流れ方向に円曲しており、冷却水流れ方向と直交する方向に直線状に延びている。
【0083】
突起部30は、第2幅広面12の外周から流路20内に突出して流路幅方向に延設され冷却水流れ方向である流路20の周方向に並べて配置される。突起部30は、第1幅広面11には設けられない。
【0084】
図22に示す第7の変形例では、冷却装置1は、円筒状の外筒5と、外筒5の内周に間隔をあけて設けられて内周に電動モータ80を収容する円筒状の内筒6と、を備える。外筒5の内径は、内筒6の外径よりも大きく形成される。外筒5の内周には、第2幅広面12が形成され、内筒6の外周には、第1幅広面11が形成される。
【0085】
流路20は、外筒5と内筒6との間に円環状に形成される。冷却水は、流路20を中心軸方向に流れる。即ち、第1幅広面11及び第2幅広面12は、冷却水流れ方向に直線状に延び、冷却水流れ方向と直交する方向に円曲している。
【0086】
突起部30は、第2幅広面12の内周から流路20内に突出して流路幅方向に延設され冷却水流れ方向である流路20の中心軸方向に並べて配置される。突起部30は、第1幅広面11には設けられない。
【0087】
図23に示す第8の変形例では、冷却装置1は、円筒状の外筒5と、外筒5の内周に間隔をあけて設けられて内周に電動モータ80を収容する円筒状の内筒6と、を備える。外筒5の内径は、内筒6の外径よりも大きく形成される。外筒5の内周には、第2幅広面12が形成され、内筒6の外周には、第1幅広面11が形成される。
【0088】
流路20は、外筒5と内筒6との間に円環状に形成される。冷却水は、流路20を周方向に流れる。即ち、第1幅広面11及び第2幅広面12は、冷却水流れ方向に円曲しており、冷却水流れ方向と直交する方向に直線状に延びている。
【0089】
突起部30は、第2幅広面12の内周から流路20内に突出して流路幅方向に延設され冷却水流れ方向である流路20の周方向に並べて配置される。突起部30は、第1幅広面11には設けられない。
【0090】
以上のように、第5の変形例から第8の変形例では、第1幅広面11及び第2幅広面12は、冷却水流れ方向と、当該冷却水流れ方向と直交する方向と、のいずれか一方が直線状に延び、他方が直線状に延びるか若しくは円曲している。このように、扁平状の流路20は、必ずしも2直線を含む幾何学的な平面状のものだけでなく、曲面状に形成されるものであってもよい。具体的には、流路20は、円筒状に形成される外筒5と内筒6との間に形成されており、冷却水流れ方向に円曲していてもよく、冷却水流れ方向と直交する方向に円曲していてもよい。
【0091】
このように、第1幅広面11及び第2幅広面12が平面状に形成される場合だけでなく、流路20が円周方向に形成される場合や、流路20が幅方向に円曲する場合であっても同様に、突起部30が設けられることによって、流路20内を流通する冷却水の流れ方によって被冷却デバイスとしての電動モータ80と冷却水との熱交換効率を向上させることができる。
【0092】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0093】
第1幅広面11と、当該第1幅広面11と対向する第2幅広面12と、を有し、第1幅広面11と第2幅広面12との間に形成される扁平状の流路20を冷却水が流通してインバータモジュール8を冷却する冷却装置1において、第1幅広面11は、インバータモジュール8を冷却水によって冷却し、第2幅広面12は、流路20内に突出して流路幅方向に延設され冷却水流れ方向に並べて配置される複数の突起部30を有し、第1幅広面11には、突起部30は設けられておらず、突起部30は、冷却水流れ方向の上流から下流に向かって第1幅広面11に近接するように傾斜する第1傾斜面31と、冷却水流れ方向にて第1傾斜面31と交互に配置され、冷却水流れ方向の上流から下流に向かって第1幅広面11から離間するように傾斜する第2傾斜面32と、を有し、突起部30は、冷却水流れ方向に沿った断面視で、第1幅広面11と、第2傾斜面32と、当該第2傾斜面32の冷却水流れ方向下流に隣り合う第1傾斜面31と、に仮想的な第1の円C1が3点で内接するように形成される。
【0094】
この構成によれば、突起部30は、冷却水流れ方向に沿った断面視で、第1幅広面11と、第2傾斜面32と、当該第2傾斜面32の冷却水流れ方向下流に隣り合う第1傾斜面31と、に仮想的な第1の円C1が3点で内接するように形成される。そのため、第1傾斜面31から冷却水流れ方向下流に隣り合う第2傾斜面32に冷却水が流れる際に縦渦が発生して第2傾斜面32に沿って流れ、仮想的な第1の円C1が3点で内接する空間にて大きな縦渦となる。よって、仮想的な第1の円C1が3点で内接する空間におけるインバータモジュール8と冷却水との熱交換効率を向上させることができる。したがって、流路20内を流通する冷却水の流れ方によってインバータモジュール8と冷却水との熱交換効率を向上させることができる。
【0095】
また、突起部30は、第1傾斜面31と当該第1傾斜面31の冷却水流れ方向下流に隣り合う第2傾斜面32との間に形成される山部33と、第2傾斜面32と当該第2傾斜面32の冷却水流れ方向下流に隣り合う第1傾斜面31との間に形成される谷部34と、を有し、突起部30は、冷却水流れ方向に沿った断面視で、山部33の上流側の第1傾斜面31と、当該山部33の下流側の第2傾斜面32と、第1幅広面11と対向し谷部34が位置する仮想的な対向面Sと、に仮想的な第2の円C2が3点で接し、かつ山部33が第2の円C2内に入らないように形成される。
【0096】
この構成によれば、冷却水は、山部33と第1幅広面11との間の流路20を通過する際には、抵抗が小さくなるように山部33の稜線に対して垂直に近い方向に流れようとする。一方、冷却水は、谷部34と第1幅広面11との間の流路20を通過する際には、抵抗が小さい谷部34の稜線に沿った方向に流れようとする。このように、冷却水が山部33と谷部34とを交互に通過することで、一対の山部33に挟まれた谷部34にて強い旋回流(縦渦)が発生する。したがって、縦渦を効率的に発生させることができる。
【0097】
また、第1の円C1の半径をRm1とし、第2の円C2の半径をRm2としたとき、Rm1>Rm2である。
【0098】
この構成によれば、Rm1>Rm2とすることで、山部33と第1幅広面11との間における流路20の流路断面積を充分に確保することができる。
【0099】
また、冷却水流れ方向に隣り合う山部33の間のピッチをPとし、山部33と第1幅広面11との間の距離をDvとしたとき、Rm1×P/Dvが4~40である。
【0100】
この構成によれば、Rm1×P/Dvが4~40の範囲にあるときに、突起部30が形成されないフラットな流路よりも冷却装置1の性能が向上する。したがって、Rm1×P/Dvを、4~40の範囲とすることで、熱通過率を向上させること、即ち性能向上代を大きくすることができる。
【0101】
また、流路幅方向に隣り合う突起部30は、冷却水流れ方向へ互い違いになるように反対方向に傾斜し、流路幅方向に隣り合う山部33の稜線は、連続して形成され、流路幅方向に隣り合う谷部34の稜線は、連続して形成される。
【0102】
この構成によれば、流路20内における冷却水の温度分布を良好にすることができる。
【0103】
また、突起部30は、流路幅方向の全幅にわたって形成される。
【0104】
この構成によれば、突起部30が形成されない部分がある場合には、当該部分を冷却水がバイパスして流れるおそれがあるが、突起部30が流路幅方向の全幅にわたって形成されることで、熱交換効率の低下を防止することができる。
【0105】
また、流路20は、突起部30が設けられる中央流路21と、中央流路21の流路幅方向の外側に設けられる側部流路22と、中央流路21から側部流路22に向かって冷却水が折り返すターン流路23と、を有する。
【0106】
この構成によれば、インバータモジュール8における流路幅方向の中央部分は発熱量が大きいので、当該中央部分を冷却する中央流路21に突起部30を設けることで、インバータモジュール8を効率的に冷却することができる。また、ターン流路23を介して折り返された冷却水が側部流路22を流れることによって、インバータモジュール8における発熱量が比較的小さな部分を更に冷却することができる。
【0107】
また、側部流路22には、突起部30が形成される。
【0108】
この構成によれば、中央流路21だけでなく側部流路22にも突起部30が形成されることで、インバータモジュール8の熱交換効率を更に向上させることができる。
【0109】
なお、インバータモジュール8の発熱量によっては、側部流路22に突起部30を形成しなくてもよい。この場合、側部流路22に突起部30を形成しないことで、冷却水の抵抗を小さくすることができる。
【0110】
また、流路20は、冷却水流れ方向の上流側よりも下流側の方が流路幅方向に小さくなるように形成される。
【0111】
この構成によれば、幅狭部27を流れる冷却水は、幅広部25を流れる冷却水よりも流速が速い。そのため、幅広部25及び幅縮小部26にてインバータモジュール8を冷却して冷却水の温度が上昇していても、流速を速くすることで幅狭部27においてもインバータモジュール8を冷却することができる。
【0112】
また、第1幅広面11は、インバータモジュール8の底面によって形成される。
【0113】
この構成によれば、インバータモジュール8に冷却水を直接接触させることで、熱交換効率を更に向上させることができる。
【0114】
また、突起部30は、第1傾斜面31と当該第1傾斜面31の冷却水流れ方向下流に隣り合う第2傾斜面32との間に形成される山部33と、第2傾斜面32と当該第2傾斜面32の冷却水流れ方向下流に隣り合う第1傾斜面31との間に形成される谷部34と、流路幅方向にて連続する山部33の間の連結部35のうち冷却水流れ方向の下流に突出する頂部36から冷却水流れ方向下流に延びる整流フィン37と、を有する。
【0115】
この構成によれば、整流フィン37が設けられることで、流路幅方向に流路20が仕切られるので、整流フィン37の両側の冷却水の縦渦が干渉しあうことを抑制できる。よって、冷却水の抵抗の増加を抑制しつつ冷却性能を向上させることができる。
【0116】
また、第1幅広面11は、冷却水流れ方向と、当該冷却水流れ方向と直交する方向と、のいずれか一方が直線状に延び、他方が直線状に延びるか若しくは円曲している。
【0117】
この構成によれば、第1幅広面11が平面状に形成される場合だけでなく、流路20が円周方向に形成される場合や、流路20が幅方向に円曲する場合であっても同様に、突起部30が設けられることによって、流路20内を流通する冷却水の流れ方によって被冷却デバイスとしての電動モータ80と冷却水との熱交換効率を向上させることができる。
【0118】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0119】
例えば、上記実施形態では、冷却装置1は、インバータモジュール8又は電動モータ80を冷却するものであるが、これらに代えて、他の被冷却デバイスを冷却するものであってもよい。
【0120】
本願は、2020年3月31日に日本国特許庁に出願された特願2020-063569に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。