(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 9/04 20060101AFI20230608BHJP
F02K 7/02 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
F02B9/04
F02K7/02
(21)【出願番号】P 2018242143
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591206887
【氏名又は名称】株式会社テクノバ
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】内藤 健
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第5737632(JP,B2)
【文献】国際公開第2011/155248(WO,A1)
【文献】特表2009-536730(JP,A)
【文献】特表2010-523985(JP,A)
【文献】特開2019-086291(JP,A)
【文献】実開平02-127741(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 1/00-9/10
F02K 7/00
F02M 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から導入された流体が圧縮する反応室と、当該反応室内の一定領域に向って前記流体を複数箇所から噴射する噴射手段とを備え、
所定の触媒物質を併用し、前記複数箇所から噴射された前記流体を前記一定領域内の衝突部で衝突させることにより、前記反応室内の前記流体を圧縮し
、生じた膨張気流により動力を発生させるエンジンにおいて、
前記噴射手段では、水素成分若しくは重水素成分を含む第1の流体による噴流と、当該第1の流体よりも高密度となる第2の流体による噴流とが前記衝突部に向って噴射され、
前記反応室では、
前記第2の流体の噴流により狭められた空間内での前記第1の流体の衝突圧縮による反応を利用し、前記第2の流体により前記膨張気流を発生させることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記噴射手段は、前記第1の流体を噴射する第1の噴射口と、前記第2の流体を噴射する第2の噴射口とを備え、前記第1の流体の噴射と
前記第2の流体の噴射とが異なる場所から行われることを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【請求項3】
前記噴射手段からの前記流体を噴射制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段では、前記第1の流体の噴射時期と前記第2の流体の噴射時期とが異なるタイミングで行われるように、前記噴射手段を噴射制御することを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【請求項4】
前記第2の噴射口が前記第1の噴射口よりも前記衝突部に近い位置に設けられることを特徴とする請求項2記載
のエンジン。
【請求項5】
前記噴射手段は、前記第1及び第2の流体を混合した状態の噴流を前記衝突部に向って噴射することを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【請求項6】
前記触媒物質は、前記第1及び/又は第2の流体に混合された状態でこれら流体噴流とともに前記噴射手段から前記反応室に供給され、及び/又は、前記衝突部を含む所定空間に予め設置されることを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【請求項7】
前記触媒物質は、パラジウム、ニッケル、ジルコニウム、銅、マグネシウム、リチウム、ケイ素、白金の何れか、若しくはそれら何れかの組み合わせによる合金であることを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【請求項8】
前記触媒物質は、粒径が500nm以下のナノサイズの粒子の集合体であることを特徴とする請求項7記載
のエンジン。
【請求項9】
前記噴射手段からの前記流体を噴射制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段では、始動時において、前記第1の流体の噴射量を前記第2の流体よりも多くし、所定時間経過後、前記第1の流体の噴射量を前記第2の流体よりも少なくすることを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【請求項10】
前記触媒物質は、
前記反応室内での前記第1の流体の水素
成分若しくは重水素
成分に対し、10
-16%から50%までの
質量に設定されることを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【請求項11】
前記噴射手段は、前記反応室への前記流体の供給量を調整するバルブ機構を含み、
前記バルブ機構は、前記流体の通過状態を可変に開閉動作するリードバルブと、当該リードバルブの開閉動作を調整するカム機構とを備え、
前記リードバルブは、前記流体が内外間で通過する貫通路と、当該通過時の上流側と下流側との圧力差を利用して当該貫通路を開閉する方向に動作可能に設けられた可動体とを含み、
前記カム機構は、所定のタイミングにおいて前記可動体の動作を規制可能に設けられることを特徴とする請求項1記載
のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素系の流体を利用したエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、多数のノズルから燃焼室の中央部に向けて集中的に噴出した気体燃料の噴流群をパルス状で一点衝突させることによる圧縮方式(多重衝突パルス噴流圧縮方式)を見出し、当該圧縮方式を利用したエンジンを既に提案している(特許文献1参照)。この圧縮方式では、複数方向からの噴流が、その衝突点付近の微小領域で気体を封鎖して自己圧縮することとなり、圧縮比が30:1以上の高圧縮化が可能になるとともに、放出熱の低減による熱効率向上が可能となる。また、放射状に拡散しようとする燃焼騒音を噴流群によって燃焼室の中央部に封鎖し、高圧縮にも拘らず低騒音化も実現可能となる。更に、噴流群が燃焼後の高温ガスをも包み込むことで、当該高温ガスを燃焼室の壁面に近づき難くし、当該壁面での冷却損失が他の構造よりも大幅に低減され、この点も熱効率の向上に資することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の圧縮方式を利用する上で、気体噴流とともに液体噴流を燃焼室に噴射することにより、液体が気体よりも高密度であることから、気体噴流のみの場合によりも高圧縮が可能になると考えられる。しかしながら、液体噴流を使用すると、その吸熱による燃焼室の温度低下を招来することになり、燃焼反応の発生には不利である。そこで、本発明者は、所定の触媒の存在下で水素や重水素等を利用した反応を前記圧縮方式に併用することで、燃焼室内の更なる高温、高圧縮化が見込めることを知見した。
【0005】
本発明は、このような発明者らの知見に基づいて案出されたものであり、その目的は、従来の多重衝突パルス噴流圧縮方式に所定の触媒の存在下で水素や重水素等を利用した反応を適用することで、熱効率の更なる向上に資するエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、外部から導入された流体が圧縮する反応室と、当該反応室内の一定領域に向って前記流体を複数箇所から噴射する噴射手段とを備え、所定の触媒物質を併用し、前記複数箇所から噴射された前記流体を前記一定領域内の衝突部で衝突させることにより、前記反応室内の前記流体を圧縮し、生じた膨張気流により動力を発生させるエンジンにおいて、前記噴射手段では、水素成分若しくは重水素成分を含む第1の流体による噴流と、当該第1の流体よりも高密度となる第2の流体による噴流とが前記衝突部に向って噴射され、前記反応室では、前記第2の流体の噴流により狭められた空間内での前記第1の流体の衝突圧縮による反応を利用し、前記第2の流体により前記膨張気流を発生させる、という構成を採っている。
【0007】
なお、本特許請求の範囲及び本明細書において、「液体」、「気体」は、それぞれ超臨界状態の流体をも含む概念として用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水素ガスや重水素ガスを含む気体を第1の流体とし、所定の液体を第2の流体としたときに、反応室には、噴射手段から気体噴流とともに液体噴流が噴射され、それら噴流群が衝突部で衝突して圧縮する。この際、気体に比べ高密度となる液体の圧縮を利用することができ、気体噴流のみの場合に比べて反応室内での流体の高圧縮が可能になる。ここで、液体噴流による反応室の温度低下は、液体噴流による更なる高圧縮による温度上昇と、同時に発生する発熱によって補うことができ、従来よりも高温化、高圧縮化を実現することができる。つまり、本発明に係るエンジンでは、単位時間当たりのエネルギー量が燃焼反応の10倍から100倍レベルとなり、放射能ゼロでの高エネルギーの抽出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るエンジンの主要構造を説明するための概念図である。
【
図2】ピストンを通じてエネルギーが抽出される適用例に係るエンジン全体の概略縦断面図である。
【
図3】
図2のエンジンに適用されるバルブ機構の概略断面図である。
【
図4】リードバルブとカム機構を表す概略斜視図である。
【
図5】本体から可動体が離れた状態を表すリードバルブの概略側面図である。
【
図6】リードバルブの弁開閉角度とピストンの状態とを対応させた位相図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1には、本実施形態に係るエンジンの主要構造を説明するための概念図が示されている。このエンジン10は、密度の異なる第1及び第2の流体噴流を所定位置で衝突させることで圧縮するとともに、当該衝突によって発生す
る反応を利用して動力を発生させる構造となっている。
【0012】
このエンジン10は、流体噴流の圧縮及び前記反応を発生させる反応室11と、反応室11内の一定領域に向って所定の流体を複数箇所から噴射する噴射手段12と、噴射手段12での流体噴射を制御する制御手段13とを有する。
【0013】
前記反応室11では、その中央付近に位置する衝突点P(衝突部)で、噴射手段12から噴射された流体の噴流群が衝突することにより当該流体が圧縮される。
【0014】
前記噴射手段12は、図示しないタンクから供給される流体が、反応室11の周囲の複数箇所から一点の衝突点Pに向って噴射可能に設けられる。この噴射手段12は、第1の流体として所定の気体を噴射する気体噴射口15(第1の噴射口)と、第2の流体として液体を噴射する液体噴射口16(第2の噴射口)とを備えている。これら各噴射口15,16は、特に限定されるものではないが、
図1に示されるように、反応室11の壁面に沿って交互に配置され、それぞれ異なる場所から衝突点Pに向って各流体が噴射される。なお、各噴射口15,16の数についても、特に限定されるものではなく、
図1で例示した平面視8箇所の構成が更に上下に設けられる。また、各噴射口15,16は、ノズルや噴射弁によって構成されており、本発明の作用を奏する限りにおいて、様々な流速、圧力等の条件で流体を噴出可能となっている。例えば、各噴射口15,16をそれぞれ13箇所とし、それらの上流圧力が10MPa、反応室11の初期圧力を0.1MPaとした場合、流体噴流の衝突後、少なくとも1000MPaの圧縮状態を得ることが可能となる。また、各噴射口15,16からの流体は、その上流側に配置された図示しないロータリーバルブやピストンバルブにより、パルス状(間欠状)に噴射されるようになっている。
【0015】
前記気体噴射口15から噴射される気体としては、水素ガスや重水素ガス、若しくはそれらの何れかを含む気体が挙げられる。
【0016】
前記液体噴射口16から噴射される液体としては、所定の液体(以下、「基液」と称する)に所定の触媒物質を混合した混合液が挙げられる。
【0017】
ここでの基液としては、液体噴射口16の上流に位置する前記タンクで液体状態となるあらゆる液体を適用することができ、例えば、水、液体水素、液体重水素等を含む液体やそれら何れかを混合した液体が挙げられる。また、反応室11内での気化を極力抑制するために、グリセリンを混合した水を基液とすることもできる。更に、液体の炭化水素燃料やアルコール等を基液として用いると、後述するように、燃焼反応を発生させることも可能である。要するに、基液としては、反応室11内での前記反応を阻害しない液体であれば何でも良い。
【0018】
また、前記触媒物質としては、前記反応を促進可能となる物質で、基液中に沈下せずに、基液とともに液体噴射口16から反応室11内に噴射可能なサイズ若しくは性質を有する粒子の集合体であれば何でも良い。具体的に、触媒物質としては、鉛までの元素の中で、常温常圧で固体の元素からなるものであれば何でも良く、パラジウム、ニッケル、ジルコニウム、銅、マグネシウム、リチウム、ケイ素、白金等の何れか、若しくは、それら何れかの組み合わせからなる合金を挙げることができる。特に、パラジウム、ニッケル、ジルコニウム、銅、ケイ素、白金は、更に安定した前記反応の発生につながり易い。また、触媒物質としては、500nm以下となるナノサイズの粒径を有するものが使用されることで安定な反応が起こり易い。更に、触媒物質の質量としては、反応室11内で水素成分や重水素成分に対し、燃焼反応と同等のエネルギー効果が得られる10-16%以上で、50%未満が好ましい。なお、この触媒物質は、液体噴射口16から噴射される液体に混合せずに、気体噴射口15から噴射される気体に混合しても良い。
【0019】
前記制御手段13では、気体噴射口15からの気体噴流と液体噴射口16からの液体噴流との噴射制御を行うようになっており、気体噴射口15と液体噴射口16での噴射時期が、同時若しくは異なるタイミングで行われる。
【0020】
ここで、先ず、気体噴射口15から気体噴流の噴射を行い、その後のタイミングで液体噴射口16から液体噴流による噴射を行う場合には、反応室11の中央の衝突点Pで気体噴流が衝突圧縮した後で、衝突点Pの周囲から液体噴流群で包みながら狭い空間内での圧縮が行われ、温度上昇効果及び圧縮効果を更に高めることができる。
【0021】
逆に、先ず、液体噴射口16から液体噴流の噴射を行い、その後のタイミングで気体噴射口15から気体噴流による噴射を行う場合には、各液体噴射口16から液体噴流により、反応室11の中央付近の空間を囲い込みながら閉鎖することで反応室11の容積を狭めて内部温度を上昇させた状態で、その後、気体噴射口15からの気体噴流の噴射による前記反応を行うことができる。なお、この場合と同等の効果を奏するために、液体噴射口16の位置を気体噴射口15よりも衝突点Pに近づける構造を採用しても良い。
【0022】
また、前記制御手段13では、気体噴射口15からの気体噴流量と液体噴射口16からの液体噴流量の制御を行うこともできる。例えば、始動時においては、液体噴流による冷却作用の影響を低減させて高温状態を長時間維持するために、気体噴流量が液体噴流量よりも多くする。そして、所定時間経過後の通常時では、液体噴流量を増やし、例えば、気体噴流量と液体噴流量の比を1:1程度とする。この通常時においては、始動時に比べ、液体噴流量の増大による圧縮効果が増大するものの、液体による冷却作用による高温状態の低下が始動時の発熱で補われることで、高エネルギーの放出が可能となる。
【0023】
以上の構成のエンジン10においては、例えば、液体が沸騰して生じた膨張気流を推力としてエネルギーを取り出すことができる。また、反応室11内の流体圧縮により、タービンやピストンを通じてエネルギーを取り出すこともできる。更に、反応室11内の圧力変化がパルス状となることから、MHD発電も可能となる。
【0024】
以上の本実施形態によれば、反応室11において、気体噴流の衝突のみならず、気体よりも高密度となる液体噴流の衝突をも利用することで、気体噴流のみの衝突よりも高圧縮化が促進される。また、液体噴射口16からの液体噴流は、衝突の前後の温度上昇によって急速に気化し、その膨張流を利用した圧縮作用を奏することにもなる。更に、液体による発熱の冷却制御も可能となる。本発明者らの知見によれば、前記エンジン10において、液体噴流及び気体噴流の圧力を0.5MPa程度とし、反応室11の初期圧力を大気圧以下にした場合、最大圧力が5万MPa、最大温度が30万度程度と推算される。この結果、本発明によれば、従来の多重衝突パルス噴流圧縮方式を利用して気体噴流のみを衝突させた場合に比べ、圧力が1000倍程度、最大温度が100倍程度に増大すると考えられる。
【0025】
なお、反応室11には、ある程度の酸素が存在するように、所定のタイミングで外気を吸入可能な構造とすることもでき、反応室11内に酸素が存在する状態で燃焼反応を行うこともできる。この場合、液体噴射口16から、炭化水素燃料やアルコール等を反応室11の衝突点Pに向って噴射することにより、これらの液体噴流の衝突による圧縮状態の下で、前記反応とともに燃焼反応を発生させることも可能となり、更に高いエネルギーの抽出が可能となる。
【0026】
また、衝突点Pにレーザ光を照射するレーザ照射装置を設け、流体噴流による圧縮効果を更に高めることもできる。
【0027】
更に、前記噴射手段12としては、前述の液体及び気体を予め混合させた混合流体を噴射する噴射口を反応室11の周囲の複数箇所に配置し、それぞれ噴射口からの混合流体による噴流を衝突点Pに向って噴射しても良い。
【0028】
また、前記触媒物質は、衝突点P付近に固定配置することもでき、この場合の量としては、特に限定されるものではないが、反応室11の容積の1/3程度を例示できる。
【0029】
次に、前記エンジン10での発生エネルギーをピストンで抽出するタイプへの適用例について説明する。
【0030】
このエンジン10は、
図2に示されるように、前述
の反応を利用した反応室11内の膨張気流によりピストン21を同図中上下動させ、当該ピストン21に繋がるクランクシャフト22を回転して動力を抽出できるようになっている。
【0031】
このエンジン10における噴射手段12としては、ピストン21の上下動に連動し、反応室11への流体の供給量を調整するバルブ機構24を更に備えている。
【0032】
このバルブ機構24は、各噴射口15,16から図示しない前記タンクにそれぞれ繋がる各流路の途中に設けられており、
図3に示されるように、円筒状のバルブケース26と、バルブケース26内に収容され、流体の通過状態を可変に開閉動作するリードバルブ27と、リードバルブ27の開閉動作を調整するカム機構28とを備えている。
【0033】
前記バルブケース26は、前記タンク側となる流路の上流側に連通する入口部26Aと、各噴射口15,16側となる流路の下流側に連通する出口部26Bと、リードバルブ27とカム機構28が収容されるとともに、出口部26Bに繋がる内部空間26Cとを有している。
【0034】
前記リードバルブ27は、前記流路の上流側と下流側との間での流体の通過状態を可変に開閉動作する。このリードバルブ27は、
図4にも示されるように、錐体状の外形をなす中空の本体30と、本体30の表面に対して離間接近する方向に動作可能に配置された弾性板からなる可動体31とにより構成される。
【0035】
前記本体30は、その内部空間30A(
図3参照)に前記入口部26Aが繋がっているとともに、本体30の内外間で貫通する貫通穴30Bが表面部分に形成されている。従って、流路の上流側から入口部26Aに流入した流体は、可動体31が本体30の表面から離れた開放状態のときに、本体30の内部空間30Aから貫通穴30Bを通過して本体30の外側に放出可能となっている。当該放出された流体は、バルブケース26の内部空間26Cから出口部26Bに流出することとなる。従って、貫通穴30Bの内側は、流体がリードバルブ27の内外間で通過する貫通路を構成する。
【0036】
前記可動体31は、その一端側を支点にして、他端側が本体30の表面に対して離間接近可能に動作可能な弾性を有し、本体30の表面に接触する方向に付勢されており、可動体31の全面が本体30の表面に接触したときに貫通穴30Bを閉塞するようになっている。また、当該閉塞状態から、可動体31が本体30の表面に対して離れると前記開放状態となり、その離間距離が増大すると、本体30の内外間の流体の通過量が増大するようになっている。
【0037】
前記カム機構28は、可動体31の一端側に外周面が接触可能に配置されたカム33と、カム33を回転可能に支持する回転軸34と、回転軸34に繋がって回転軸34周りにカム33を回転させるモータ35とにより構成されている。
【0038】
前記カム33は、その回転に伴い、可動体31の弾性変位により、
図5に示されるように、可動体31との表面接触状態を維持しながらその接触位置を変化させ、本体30と可動体31との間の離間角度となる弁開閉角度θを変化させる形状及びサイズに設けられる。
【0039】
前記モータ35は、その駆動により、クランクシャフト22の回転角度(クランク角)に対応するピストン21の位置に連動して弁開閉角度θが変化するように、カム33を回転させるようになっている。すなわち、
図6に示されるように、ピストン21の動作に関する曲線Aと、カム33の回転に対応する弁開閉角度θに関する曲線Bとの間で同図の関係が得られるように、カム33が回転される。具体的には、図示省略しているが、反応室11に通じる排気穴が、ロータリーバルブかピストンバルブによって開き、反応室11の容積を減少する方向にピストン21が移動する排気行程の際(領域A1)と、当該排気行程が終了して前記排気穴が閉じてから、逆方向にピストン21が移動する際に、ピストン21が中央位置に達するまで(領域A2)は、弁開閉角度が0度、すなわち、リードバルブ27での流体の流通を遮断した閉塞状態を維持するカム33の回転位置とされる。従って、領域A2の時間、すなわち、排気行程が終了してからピストン21が中央位置に達するまでの時間帯は、リードバルブ27が閉塞状態となって反応室11内に負圧を生成しその状態が継続される。その後、ピストン21が反応室11の容積を増大する方向に更に移動すると(領域A3)、カム33の形状により、リードバルブ27での流体の流通を許容する開放状態に移行する。この際、瞬時に流体が反応室11内に導入され、当該流体の噴流群により、前述した衝突噴流が発生して流体の圧縮が行われるとともに、原子凝集反応が生じることになる。そして、ピストン21の移動とともに、弁開閉角度θが最大角度まで次第に増大してから徐々に減少する。そして、反応室11の容積を最大にするピストン21の位置から、再び当該容積を減少する方向に移動すると、リードバルブ27が閉塞状態となる。
【0040】
以上のバルブ機構24では、リードバルブ27に、所定のタイミングにおいて可動体31の動作を規制可能となるカム機構28を併用したことから、流体の導入を促進する反応室11の負圧状態を所定時間維持した後で、反応室11に対する流体の導入を瞬時に行うことが可能となる。
【0041】
なお、モータ35の代わりに、クランクシャフト22の回転に同期してカム33を連動させる機構を採用することもできる。
【0042】
なお、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 エンジン
11 反応室
12 噴射手段
13 制御手段
15 気体噴射口(第1の噴射口)
16 液体噴射口(第2の噴射口)
24 バルブ機構
27 リードバルブ
28 カム機構
30B 貫通穴(貫通路)
31 可動体
P 衝突点(衝突部)