(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ビット携行具
(51)【国際特許分類】
B25H 3/00 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
B25H3/00 Z
(21)【出願番号】P 2021201200
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2023-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521543543
【氏名又は名称】橋口 勇一
(74)【代理人】
【識別番号】100190160
【氏名又は名称】隅田 俊隆
(72)【発明者】
【氏名】橋口 勇一
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-096283(JP,A)
【文献】国際公開第2017/065662(WO,A1)
【文献】特開2009-034793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンクに凹溝が形成されたビットを吊り下げて保持するビット携行具であって、
横置き略円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の円周方向に沿って回動自在に内設される略円筒形状の内筒部材とを有する携行具本体を備え、
該携行具本体は、前記ビットの前記凹溝が係止される1又は2以上の吊下げ部を有し、
前記吊下げ部は、前記外筒部材の円周方向に沿って延設されるとともに、前記シャンクの外径よりも短くかつ前記凹溝の外径よりも長い幅長さに形成される外筒スリット部と、少なくとも一部が前記外筒スリット部の上端と重なる位置に穿設されて前記シャンクを挿入可能な外筒孔部と、前記外筒スリット部と対応するように前記内筒部材の円周方向に沿って延設される内筒スリット部と、少なくとも一部が前記内筒スリット部の上端と重なる位置に穿設されて前記シャンクを挿入可能な内筒孔部とを備えており、
前記外筒孔部と前記内筒孔部とが一致するように前記内筒部材を回動させてから前記シャンクを前記外筒孔部と前記内筒孔部とに挿入し、次いで、前記凹溝を前記外筒スリット部及び前記内筒スリット部の両縁に係止させながら前記シャンクをスライド移動させることにより前記ビットを吊下げ保持し、
さらに、前記内筒スリット部が前記外筒孔部と重なるように前記内筒部材を回動させて、前記外筒孔部の両側部分を前記内筒スリット部両側の面部で閉塞させることにより、前記シャンクが前記外筒孔部から離脱しないように前記凹溝と前記内筒スリット部との係止を維持するようにしたことを特徴とするビット携行具。
【請求項2】
前記外筒スリット部及び前記内筒スリット部には、前記吊下げ部に吊下げられている2以上の前記ビットの中から1の前記ビットを離脱させるときに、他のビットを回避させておくことができる逃げスリットが延設されることを特徴とする請求項1記載のビット携行具。
【請求項3】
前記逃げスリットは、前記外筒スリット部の上端及び前記内筒スリット部の上端にそれぞれ形成されることを特徴とする請求項2記載のビット携行具。
【請求項4】
前記携行具本体は、前記吊下げ部が内面で対向して形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のビット携行具。
【請求項5】
前記外筒部材は、前記携行具本体の略円筒形端部方向からみて左右両側に形成される前記
外筒スリット部の間に補強部が形成されることを特徴とする請求項4記載のビット携行具。
【請求項6】
前記携行具本体は、使用者に対して着脱自在に取り付けられるようにする装着部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のビット携行具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具の先端に取り付けられるビットを携行するときに使用されるビット携行具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネジやボルト締め、穴あけといった回転操作が伴う作業には、ビットと呼ばれる先端工具を取り付けた電動工具等が用いられている。ビットは、シャンク(軸部)の先端にドライバーやソケット、ドリル等が形成され、後端部を電動工具等のビットホルダーに着脱自在に取り付けられ、用途に応じて交換することができる。このため、作業者はビットの交換を現場ですぐに行えるように、種類やサイズが異なる複数のビットをまとめて携行できるようにする携行具を使用している。
【0003】
ビットの携行具としては、例えば、複数の保持穴を設けると共に、互いに摺動自在に嵌合可能な形状とした蟻及び蟻溝をそれぞれ形成した保持体を複数個組み合わせてなるドライバビット用保持具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のドライバビット用保持具によれば、保持穴にビットを挿入して保持させることができるので、複数本のビットを一纏めにして携行することができる。しかしながら、保持穴はビットが容易に脱落しないようにビットの外径と略同一の内径に形成されるため、使用者は保持具からビットを着脱するときには力を入れて両手で操作しなければならず、スピーディな交換操作に支障が生じ得た。
【0004】
そこで、ビットの着脱操作をスピーディに行える携行具として、ビットを吊下げて保持可能としたビット携帯用ホルダーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このビット携帯用ホルダーは、電動工具等に装着したときにビットホルダーと係止するくびれ部でビットを掛止できるようにしたものであり、掛止されたビットを上下方向にスライド移動可能に構成されるスリット長孔の掛止孔と、この掛止孔の上部に連設されたビットの外径より径大でビットを挿脱自在な出入孔部とを備えた吊下げ部を有する。これによれば、ビットをスライド移動させれば簡単に着脱ができるので、当該操作をスピーディに行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-323652号公報
【文献】特開2015-96283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載のビット携帯用ホルダーは、掛止されたビットが吊下げ状態でなくなると、ビットが掛止孔を勝手にスライド移動して出入孔部から不用意に外れてしまう虞がある。例えば、ビットが保持されたビット携帯用ホルダーを机等の上に置いたときには、ホルダーを動かしただけでビットが勝手にスライド移動してしまい、その状態でホルダーを持ち上げたときにビットが出入孔部から外れるといった事態が生じうる。そうなると、使用者は外れたビットを改めてホルダーに掛止しなければならず非常に手間となる。
【0007】
そこで、本発明は、ビットの着脱操作を簡単かつスピーディに行うことができるとともに、ビットが不用意に外れてしまうことのないビット携行具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、シャンクに凹溝が形成されたビットを吊り下げて保持するビット携行具であって、横置き略円筒形状の外筒部材と、該外筒部材の円周方向に沿って回動自在に内設される略円筒形状の内筒部材とを有する携行具本体を備え、該携行具本体は、前記ビットの前記凹溝が係止される1又は2以上の吊下げ部を有し、前記吊下げ部は、前記外筒部材の円周方向に沿って延設されるとともに、前記シャンクの外径よりも短くかつ前記凹溝の外径よりも長い幅長さに形成される外筒スリット部と、少なくとも一部が前記外筒スリット部の上端と重なる位置に穿設されて前記シャンクを挿入可能な外筒孔部と、前記外筒スリット部と対応するように前記内筒部材の円周方向に沿って延設される内筒スリット部と、少なくとも一部が前記内筒スリット部の上端と重なる位置に穿設されて前記シャンクを挿入可能な内筒孔部とを備えており、前記外筒孔部と前記内筒孔部とが一致するように前記内筒部材を回動させてから前記シャンクを前記外筒孔部と前記内筒孔部とに挿入し、次いで、前記凹溝を前記外筒スリット部及び前記内筒スリット部の両縁に係止させながら前記シャンクをスライド移動させることにより前記ビットを吊下げ保持し、さらに、前記内筒スリット部が前記外筒孔部と重なるように前記内筒部材を回動させて、前記外筒孔部の両側部分を前記内筒スリット部両側の面部で閉塞させることにより、前記シャンクが前記外筒孔部から離脱しないように前記凹溝と前記内筒スリット部との係止を維持するようにしたことを特徴とするビット携行具、である。
【0009】
本発明にかかるビット携行具は、上記の特許文献2に記載のビット携帯用ホルダーと同じくビットのシャンクに形成される凹溝(くびれ部)を係止させてビットを吊下げ保持する構成を採用するものであり、吊下げられたビットが不用意にホルダーから外れないようにシャンクの離脱を防止する機構をさらに備えたものである。すなわち、携行具本体を横置き略円筒形状の外筒部材と、この外筒部材に回動自在に内設される内筒部材とを備えて構成し、携行具本体に形成される吊下げ部にビットの凹溝を係止させることによってビットを吊下げ保持できるようにしている。そして、内筒部材を回動させて位置を一致させた外筒孔部と内筒孔部とにビットのシャンクを挿入し、凹溝を外筒スリット部及び内筒スリット部の両縁に嵌め合わせながらビットをスライド移動させると、凹溝が吊下げ部と係止状態となってビットを吊下げ保持できるようになる。
【0010】
さらに、ビットが吊下げられた状態、すなわちビットの凹溝が吊下げ部に係止された状態のまま内筒部材を摺動させると、内筒孔部と外筒孔部の位置がずれるのと同時に、外筒孔部の両側部分が内筒スリット部の両側の面部によって閉塞されて、外筒孔部の幅方向の直径長さが内筒スリット部の幅長さにまで狭められた状態となる。これにより、ビットが外筒孔部の位置まで不用意にスライド移動しても、凹溝と吊下げ部とが係止されたままとなるので、ビットが不用意に離脱するのを防止できるようになる。
【0011】
なお、以下において「スリット部」という場合は、外筒スリット部と内筒スリット部とが重なって形成されるスリット部をいうものとし、「孔部」という場合は、外筒孔部と内筒孔部との位置が一致したときに形成される孔部をいうものとする。
【0012】
また、前記外筒スリット部及び前記内筒スリット部には、前記吊下げ部に吊下げられている2以上の前記ビットの中から1の前記ビットを離脱させるときに、他のビットを回避させておくことができる逃げスリット部が延設されるようにしてもよく、この逃げスリット部は、前記外筒スリット部の上端及び前記内筒スリット部の上端にそれぞれ形成されてもよい。
【0013】
逃げスリット部は、吊下げ部に複数のビットが保持されている場合に、目的のビットだけを取り外せるようにするものである。すなわち、逃げスリット部は、目的のビットをスリット部から孔部までスライド移動できるように、そのスライド経路を塞がないように他のビットを回避させるものである。これにより、吊下げ部に複数のビットが吊下げられているときでも、目的のビットだけを取り外せるようになるので操作がスムーズに行えるようになる。
【0014】
また、前記携行具本体は、前記吊下げ部が内面で対向して形成されるようにしてもよい。
【0015】
こうすることで、携行具本体の略全面を利用して吊下げ部を形成することができるので、より多くのビットを吊下げられるようになる。
【0016】
また、前記外筒部材は、前記携行具本体の内面で対向して形成される前記外筒スリット部の間に補強部が形成されるようにしてもよい。
【0017】
携行部本体にスリット部及び孔部を備える吊下げ部を複数形成すると、携行具本体の剛性が低下して変形等しやすくなる虞がある。そこで、外筒スリット部の下部に補強部を形成してこれを防止するようにしてもよい。
【0018】
また、前記携行具工具本体は、使用者に対して着脱自在に取り付けられるようにする装着部材をさらに備えてもよい。
【0019】
装着部材を設けることで、使用者が着用する衣服やバッグ等に取り付けできるようになる。こうすることで、使用者はビット携行具にアクセスしやすくなるので、ビットの交換操作をより行いやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るビット携行具によれば、横置き略円筒形状の携行具本体を、外筒部材と内筒部材とで形成し、外筒部材と内筒部材とにそれぞれ外筒スリット部及び内筒スリット部(スリット部)、外筒孔部及び内筒孔部(孔部)とを備える吊下げ部が形成されているので、ビットのシャンクを孔部に挿入してから、スリット部の両縁に凹溝を係止させながらスライド移動させることでビットを吊下げ保持することができる。これにより、ビットをしっかりと保持しつつも着脱操作を簡単かつスピーディに行えるようになる。さらに、内筒部材を回動させることで、外筒孔部の両側を内筒スリット部の両側の面部で閉塞することができるので、ビットが孔部の位置まで不用意にスライド移動したときでも、ビットが吊下げ部から離脱するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例にかかるビット携行具の斜視図である。
【
図2】実施例にかかるビット携行具の分解斜視図である。
【
図4】実施例にかかるビット携行具の正面図であって、(a)は外筒孔部の両側を閉塞させたロック状態、(b)は内筒部材を摺動させて外筒孔部を開放させたロック解除状態である。
【
図5】外筒孔部がロック解除状態のときのA-A断面図である。
【
図6】外筒孔部がロック状態のときのA-A断面図である。
【
図7】吊下げ部に2本のビットが保持されている場合に、1のビットを逃げスリット部に回避させて他のビットを取り外す方法を説明するA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ビットと呼ばれる作業工具を携行可能に保持するためのビット携行具に関するものである。ビットとは、ドライバーやレンチを用いるネジやボルト、ナットの緩締やドリルを用いる穴あけ加工といった回転を伴う作業を行うときに電動工具等に取り付けられる先端工具である。本発明に係るビット携行具で保持可能なビットは、シャンクと呼ばれる軸部分の後端側に、電動工具のビットホルダーと係止される凹溝が形成されるものであればよく、工具部分の形状は限定されるものではない。
【0023】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例】
【0024】
図1から
図3には、実施例にかかるビット携行具1が示されている。ビット携行具1は、携行具本体100を備える。携行具本体100は、外筒部材200と、これに回動自在に内設される内筒部材300とを備える。外筒部材200及び内筒部材300は、いずれも横置き略円筒形状の部材からなり、内筒部材300は、その外径長さが外筒部材200の内径長さと略同一に形成される。外筒部材200と内筒部材300とは、それぞれ、所定形状にカットされたステンレス製の板材を湾曲させて形成されている。
【0025】
携行具本体100の周面には、ビットBを吊下げて保持するための吊下げ部110が、携行具本体100の正面側100aと背面側100bとにそれぞれ4つずつ並列に形成されている。吊下げ部110は、外筒部材200に形成される外筒スリット部201及び外筒孔部202と、内筒部材300に形成される内筒スリット部301及び内筒孔部302とを備えて構成される。
【0026】
外筒スリット部201及び内筒スリット部301は、それぞれ外筒部材200及び内筒部材300の円周方向に沿って延びる長孔として形成され、両者が重なってスリット部111が構成される。外筒スリット部201及び内筒スリット部301の幅長さは、ビットBのシャンクBSの外径より短くかつ凹溝BCの外径より長く形成される。すなわち、外筒スリット部201及び内筒スリット部301は、それらの両縁が凹溝BCに嵌まる程度の幅長さとなっている。外筒孔部202及び内筒孔部302は、それぞれ外筒スリット部201及び内筒スリット部301と連なる上端位置に穿設され、両者が重なり合ったときに孔部112が構成される。外筒孔部202及び内筒孔部302の直径長さは、ビットBのシャンクBSの外径より長く形成される。すなわち、外筒孔部202及び内筒孔部302は、シャンクBSを差し込むことができる程度の大きさとなっている。このようにして形成される吊下げ部110にビットBの凹溝BCを係止させることによって、携行具本体100にビットBを吊下げられるようになる。すなわち、孔部112にシャンクBSを差し込んでから、凹溝BCにスリット部111の両縁を嵌め合わせつつビットBをスライド移動させると、スリット部111の両縁に凹溝BCが係止されてビットBが吊下げ保持されるようになる。なお、背面側100bに形成される吊下げ部110の内筒孔部302の高さ位置は、正面側100aに形成される内筒孔部302よりもやや低い位置となっている。
【0027】
さらに、吊下げ部110の外筒孔部202及び内筒孔部302の上方には、それぞれ逃げスリット部203、303が連設されている。逃げスリット部203、303は、外筒スリット部201及び内筒スリット部301と同じ幅長さに形成される。
【0028】
また、内筒部材300には、レバー310が形成されている。このレバー310を操作することで内筒部材300を回動させることができる。一方、外筒部材200には、レバー310が収容される切欠部210が形成される。切欠部210は横向き凹形に形成されており、その上辺と下辺とにレバー310を当接させることができる。こうすることで、レバー310が移動可能な角度、すなわち、内筒部材300の回動可能な角度を、切欠部210内部の大きさの範囲内に規制することができる。
【0029】
外筒部材200の上部には、携行具本体100を使用者に装着させるための装着部材400が設けられている。装着部材400はカラビナ401を備えており、外筒部材200の上端部分を折曲して形成されてなる平板部220に設けられた取付孔220aに鐶402を介して取り付けられる。
【0030】
図4には、内筒部材300の回動前後の様子を携行具本体100の正面側100aからみた状態が示されている。
図4(a)には、レバー310が起立した状態が示されている。このとき、内筒孔部302は外筒孔部202の上方にずれた位置に配置され、外筒孔部202の両側部分202a、202bには、内筒スリット部301の両側にある面部301a、301bが配置されている。なお、ここでは図示されていないが、このとき、背面側100bの吊下げ部110では、内筒孔部302が外筒孔部202の下方にずれた位置に配置され、外筒孔部202の両側部分には内筒部材300の逃げスリット部303両側の面部が配置された状態となっている。
【0031】
図4(b)には、レバー310が倒された状態が示されている。このとき、内筒部材300は
図4(a)に示す状態から矢印方向に回動されており、内筒孔部302が外筒孔部202と一致するとともに内筒スリット部302の両側の面部302a、302bが下方にずれることによって、孔部112が形成されている。なお、ここでは図示されていないが、このとき、背面側100bの吊下げ部110では、内筒孔部302が外筒孔部202と一致するとともに逃げスリット部303両側の面部が上方にずれることにより孔部112が形成された状態となっている。このように、内筒部材300を回動させることによって、外筒孔部202の両側部分202a、202bを閉塞又は開放することができる。これにより、吊下げ保持されたビットBが孔部112から離脱しないようにロック又はその解除が可能となる。なお、外筒部材200の底面には、補強部204が形成されている。携行具本体100には、複数の吊下げ部110が形成されているため、携行具本体100に外力が加わったときに変形する虞がある。そこで、外筒部材200に補強部204を形成している。補強部204は、外筒部材200の底面であって、正面側100aと背面側100bとにある吊下げ部110の間に形成されている。
【0032】
図5には、吊下げ部110にビットBを吊下げ保持する方法が説明されている。ビットBを吊下げ部110に保持させるときは、レバー310を倒れた状態にして内筒部材300を回動させておく。このとき、携行具本体100の正面側100a及び背面側100bにある吊下げ部110では、外筒孔部202と内筒孔部302とが一致して孔部112が形成されて、ビットBを差し込みできるようになっている。この孔部112にビットBを差し込み、凹溝BCにスリット部111の両縁を嵌め合わせながらビットを下方にスライド移動させると、凹溝BCがスリット部111に係止されてビットBが吊下げ保持されることとなる。
【0033】
図6には、吊下げ部110に吊下げられたビットBが不意に離脱しないようにロックする方法が説明されている。離脱を防止するためのロック操作は、レバー310を起立させた状態にして内筒部材300を回動させるだけでよい。こうすることで、孔部112を構成していた内筒孔部302が、正面側100aでは下方へ、背面側100bでは上方へずれた状態となる。同時に、正面側100aでは逃げスリット部303両側の面部303a、303bが下降し、背面側100bでは内筒スリット部302両側の面部302a、302bが上昇して、それぞれの外筒孔部202の両側部分202a、202bが閉塞された状態となる。こうしておくことで、ビットBが外筒孔部202の位置まで不用意にスライド移動したときでも、凹溝BCは逃げスリット部303両側の面部303a,303b又は内筒スリット部302両側の面部302a、302bに係止された状態に保つことができるので、ビットBが離脱するのを防止することができる。
【0034】
図7には、携行具本体100の背面側100bに設けた吊下げ部110に保持されたビットB1,B2から、ビットB1のみを取り外す方法が説明されている。吊下げ部110は長孔からなるスリット部111として形成されるため、そこには複数のビットB1、B2を重ねるようにして吊下げ保持させることが可能である。しかしながら、複数のビットB1、B2を吊下げておくと、下方側に保持されるビットB1だけを取り外したい場合には、先に上方側に保持されるビットB2を取り外さなければビットB1の取り外しができない。そうすると、使用者はビットB2を取り外して手に持ちながらビットB1の取り外し操作を行わなければならず、操作が非常に煩雑となる。こうした事態を回避すべく、逃げスリット部203、303を利用して、ビットB2を保持したままビットB1を取り外せるようにしている。
【0035】
まず、
図7(a)に示すように、スリット部111に沿ってビットB2を上方にスライド移動させる。次いで、
図7(b)に示すように、内筒部材300の逃げスリット部303が外筒部材200の逃げスリット部203と一致させた状態となるように内筒部材300を回動させて、ビットB1を逃げスリット部203,303までさらにスライド移動させる。このとき、ビットB2の凹溝BCは逃げスリット部203,303に係止された状態となっているので、ビットB2は吊下げ部110から離脱することはない。そして、
図7(c)に示すように、ビットB2を
図7(b)の状態で保持したまま、ビットB1を孔部112までスライド移動させてシャンクB2を吊下げ部110から引き抜く。こうすることで、ビットB2を取り外すことなく、ビットB1を取り外すことができる。
【0036】
本実施例にかかるビット携行具10によれば、外筒部材200に内筒部材300を内設し、この内筒部材300を回動させて吊下げ部110を構成する外筒孔部201を内筒スリット部302又は逃げスリット部303の両側の面部で閉塞させることができるので、吊下げ部110に吊り下げられたビットBが不用意に離脱するのを防止することができる。また、吊下げ部110を携行具本体100の内面で対向するようにして複数配置しているので、より多くのビットBを吊下げ保持させることができる。さらに、吊下げ部110に逃げスリット部203、303が形成されるので、1つの吊下げ部110に複数のビットB1,B2を重ねるようにして吊下げ保持しているときでもビットB2を取り外さずに目的のビットB1を取り外すことができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【0038】
例えば、上記実施例では、携行具本体100を構成する外筒部材200及び内筒部材300をステンレス製の板材を湾曲形成して作成しているが、これに限定されるものではなく、容易に変形しない程度の剛性を備える素材から作成することができる。例えば、鉄や銅、アルミといったステンレス以外の金属を用いて作成してもよいし、樹脂材料を成形して作成してもよい。また、異なる素材を組み合わせてもよいし、外筒部材200と内筒部材300とで異なる素材を用いてもよい。
【0039】
また、逃げスリット部203,303、補強部204、装着部材400は省略することもできる。また、吊下げ部110は、携行具本体100の正面側100a又は背面側100bの片方に設けるようにしてもよい。
【0040】
また、装着部材400は、外筒部材200に形成した平板部210を介して携行具本体100に取り付けられているが、これに限定されるものではなく、容易に外れたりしない手段を用いて取り付けることができる。例えば、正面視略三角形に形成した平板部210の形状を湾曲面を有する矩形等の他の形状に形成してもよいし、装着部材400を溶接等の固着手段によって取り付けてもよい。
【0041】
また、他の使用例として、使用者の用途に応じて外筒部材200と内筒部材300とを分離させて別々に使用することも可能である。例えば、装着部材400が取り付けできる外筒部材200を携行用として用い、内筒部材300を据え置き用として用いるといったこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るビット携行具は、電動工具の使用に際して、これに取り付けられる先端工具としてのビットを複数まとめて携行するときに用いることができるので産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0043】
1 ビット携行具
100 携行具本体
110 吊下げ部
200 外筒部材
201 外筒スリット部
202 外筒孔部
203 逃げスリット部
204 補強部
300 内筒部材
301 内筒スリット部
302 内筒孔部
303 逃げスリット部
400 装着部材
B ビット
BS シャンク
BC 凹溝
【要約】 (修正有)
【課題】ビットの着脱操作を簡単かつスピーディに行うことができるとともに、ビットが不用意に外れてしまうことのないビット携行具を提供すること。
【解決手段】携行具本体100を、横置き略円筒形状の外筒部材200と、外筒部材200に回動自在に内設される略円筒形状の内筒部材300とで構成し、外筒部材200の円周方向に沿って延設されるとともに、シャンクBSの外径よりも短くかつ凹溝BCの外径よりも長い幅長さに形成される外筒スリット部201と、少なくとも一部が外筒スリット部201の上端と重なる位置に穿設されてシャンクBSを挿入可能な外筒孔部202と、外筒スリット部201と対応するように内筒部材300の円周方向に沿って延設される内筒スリット部301と、少なくとも一部が内筒スリット部301の上端と重なる位置に穿設されてシャンクBSを挿入可能な内筒孔部302とから吊下げ部110を構成する。
【選択図】
図1