(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】電磁波レーダを用いたコンクリート構造物の入隅部における非破壊探査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 22/02 20060101AFI20230608BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20230608BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20230608BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G01N22/02 Z
G01N22/00 Y
G01S13/88
G01V3/12 B
(21)【出願番号】P 2019017360
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】594007995
【氏名又は名称】株式会社ランドアート
(74)【代理人】
【識別番号】100133271
【氏名又は名称】東 和博
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 繁
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156247(JP,A)
【文献】特開2016-188545(JP,A)
【文献】米国特許第05814731(US,A)
【文献】特開2018-071983(JP,A)
【文献】特開2010-145375(JP,A)
【文献】藤枝繁,コンパクト高周波電磁波レーダを用いたコンクリート内部3D可視化技術 ストラクチャスキャンSIR‐EZ XT,検査技術,2018年,Vol.23 No.9,pp.53-56
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
G01S 13/00-13/95
G01V 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波レーダを用いたコンクリート構造物
の壁面とこれに直角なコンクリート表面との間の入隅部における非破壊探査方法において、
電磁波レーダ装置からの電磁波をコンクリート構造物に輻射してコンクリート構造物
の壁面とこれに直角なコンクリート表面との間の入隅部に位置する埋設物
の鉄筋または空隙部
の耐震スリットを探査するにあたり、
コンクリート構造物の
前記入隅部に、6~9の比誘電率をもち、当該入隅部に向けて登りとなる斜面を有し、
縦断面視して、斜面の起点側となる鋭角状の前端部と、斜面の終点側となる鋭角状の頂部と、入隅部の角部に配置される直角部とからなる直角三角形のくさび形形状をなし、内部に反射物を有しない、
御影石からなるくさび形電磁波伝搬物質体を、
前記頂部および直角部が前記コンクリート構造物の壁面に当接するように配置し、当該くさび形電磁波伝搬物質体の斜面に沿って電磁波レーダ装置を、
前記入隅部に位置する埋設物の鉄筋または空隙部の耐震スリットの向きと直交する向きに走行させることにより、電磁波伝搬軸がコンクリート構造物の表面に対し斜めになるように電磁波をコンクリート構造物に輻射してコンクリート構造物
の壁面とこれに直角なコンクリート表面との間の入隅部に位置する埋設物
の鉄筋または空隙部
の耐震スリットを探査することを特徴とする、
電磁波レーダを用いたコンクリート構造物の入隅部における非破壊探査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波レーダを用いたコンクリート構造物の非披壊探査方法法及び装置に関し、なかでもコンクリート構造物の入隅部における非破壊探査方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の入隅部を探査する場合、アンテナ部前面とアンテナ部中央(送信アンテナと受信アンテナの中央)の電波伝搬軸の距離が短い小型の電磁波レーダ装置が用いられる。
【0003】
従来より、電磁波レーダ装置を用いてコンクリート構造物の内部を探査する方法として、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生するひび割れを検出する方法(特許文献1)、鉄筋コンクリート構造物の内部の鉄筋の腐食部を測定する方法(特許文献2)、コンクリート構造物のクラックや空洞を検出する方法(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-155551号公報
【文献】特開2009-244076号公報
【文献】特開2008-39429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法は、
図7および
図8に示すように、小型の電磁波レーダ装置10のアンテナ部前面とアンテナ部中央の電波伝搬軸との間に距離があるため、コンクリート構造物1の入隅部2に探査が困難な測定死角Wが生じており、入隅部2に配置される耐震スリット(空隙部)3や鉄筋(埋設物)4を探知することが難しかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、これまで死角となっていたコンクリート構造物の入隅部に配置される埋設物または空隙部を非破壊で探査可能とする、電磁波レーダを用いたコンクリート構造物の入隅部における非破壊探査方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る電磁波レーダを用いたコンクリート構造物の入隅部における非破壊探査方法は、
電磁波レーダを用いたコンクリート構造物の壁面とこれに直角なコンクリート表面との間の入隅部における非破壊探査方法において、
電磁波レーダ装置からの電磁波をコンクリート構造物に輻射してコンクリート構造物の壁面とこれに直角なコンクリート表面との間の入隅部に位置する埋設物の鉄筋または空隙部の耐震スリットを探査するにあたり、
コンクリート構造物の前記入隅部に、6~9の比誘電率をもち、当該入隅部に向けて登りとなる斜面を有し、縦断面視して、斜面の起点側となる鋭角状の前端部と、斜面の終点側となる鋭角状の頂部と、入隅部の角部に配置される直角部とからなる直角三角形のくさび形形状をなし、内部に反射物を有しない、御影石からなるくさび形電磁波伝搬物質体を、前記頂部および直角部が前記コンクリート構造物の壁面に当接するように配置し、当該くさび形電磁波伝搬物質体の斜面に沿って電磁波レーダ装置を、前記入隅部に位置する埋設物の鉄筋または空隙部の耐震スリットの向きと直交する向きに走行させることにより、電磁波伝搬軸がコンクリート構造物の表面に対し斜めになるように電磁波をコンクリート構造物に輻射してコンクリート構造物の壁面とこれに直角なコンクリート表面との間の入隅部に位置する埋設物の鉄筋または空隙部の耐震スリットを探査することを主要な特徴とする。
【0013】
御影石は、比誘電率がコンクリートに近く安定しており、内部に金属を有せず、強固である。コンクリートでくさび形電磁波伝搬物質体を作製した場合は、御影石に比べて強度が弱く、鉄筋を配置しなければならず、不要な反射や鉄筋による測定死角が発生し、コンクリート構造物内の埋設物や空隙部の判別が難しくなる。
【0014】
くさび形電磁波伝搬物質体をコンクリートで作製した場合、含水率により比誘電率にばらつきが生じやすく、比誘電率の補正が煩雑になる。木材で作製したくさび形電磁波伝搬物質体は、比誘電率がコンクリート構造物と大きく異なるため、両者の境界面での反射が大きく電磁波が減衰し、波形がひずむ。
【0015】
6~9の比誘電率をもつ硬質な物質としては、マイカを主要構成部材とするセラミック部材が該当する。くさび形電磁波伝搬物質体の比誘電率は6~8であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、コンクリートとほぼ同じ6~9の比誘電率をもち、内部に鉄筋等の反射物がない、くさび形電磁波伝搬物質体をコンクリート構造物の入隅部に置き、その斜面に鉛って電磁波レーダ装置を走行し、コンクリート構造物の表面に対して斜めに電磁波を幅射することで、送信アンテナおよび受信アンテナの中央位置からアンテナ幅射面に対して直角方向に延びる電磁波伝搬軸を入隅部内に到達させることが可能となり、従来の方法に比べて、入隅部の測定死角を解消することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明によれば、コンクリート構造物の入隅部における埋設物や空隙部の有無、それらの深度および位置を確実に探査し、探査範囲および探査精度を向上させ、それらの作業効率を向上させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電磁波レーダを用いた本発明の非破壊探査装置を用いてコンクリート構造物の入隅部の耐震スリットを探査する方法を示す図、
【
図2】
図1の探査方法により得られた反射波形を示す図、
【
図3】本発明の非破壊探査装置を用いてコンクリート構造物の入隅部の鉄筋を探査する方法を示す図、
【
図4】くさび形電磁波伝搬物質体の比誘電率を求めるための説明図、
【
図5】コンクリート構造物の比誘電率を求めるための説明図、
【
図6】くさび形電磁波伝搬物質体を用いてコンクリート構造物内の埋設物の深度および位置を求めるための説明図、
【
図7】電磁波レーダを用いた従来方法によるコンクリート構造物の入隅部の耐震スリットに対する測定死角を示す説明図、
【
図8】電磁波レーダを用いた従来方法によるコンクリート構造物の入隅部の鉄筋に対する測定死角を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
図1および
図2は本発明に係る第1の実施形態を示すもので、これらの図において、符号Sは非破壊探査装置(以下、探査装置という)、符号1はコンクリート構造物を示している。
【0020】
図1は、同探査装置Sを用いてコンクリート構造物1の入隅部2にある耐震スリット(空隙部)3の有無を確認する方法の一例を示しており、同図に示すように、探査装置Sは、電磁波レーダ装置10と、くさび形電磁波伝搬物質体20と、本体制御部30を備えている。
【0021】
電磁波レーダ装置10は、送信アンテナ11および受信アンテナ12と、車輪13を備えている。送信アンテナ11はコンクリート構造物1に対し電磁波を輻射し、受信アンテナ12はコンクリート構造物1の埋設物や空隙部からの反射波を受信する。車輪13には起点からの移動距離を測定する距離計(エンコーダ)が組み込まれている。また、送受信アンテナ11、12の中心軸、すなわち、電磁波伝搬軸14は、アンテナ輻射面15に対し直角方向に延びるとともに、アンテナ部前面16とアンテナ部後面17間の中央に位置している。
【0022】
くさび形電磁波伝搬物質体20は、コンクリート構造物1の入隅部2に配置されるもので、入隅部2に向けて登りとなる斜面21を有し、図示例の場合、縦断面視して、斜面21の起点側となる鋭角状の前端部22と、斜面21の終点側となる鈍角状の頂部23と、入隅部2の角部に配置される直角部24とからなる直角三角形のくさび形形状をしている。
【0023】
斜面21の傾斜角αは、電磁波レーダ装置10のアンテナ部前面16が頂部23と接する位置で、電磁波伝搬軸14がくさび形電磁波伝搬物質体20の直角部24を通ることになる角度を基準とし、適切な走査距離Lを考慮して決定される。
【0024】
上記くさび形電磁波伝搬物質体20は、コンクリートに近い6~8の比誘電率をもち、内部に鉄筋等の反射物を有しない構造となっている。このため、本実施形態ではくさび形電磁波伝搬物質体20として御影石が採用されている。
【0025】
本体制御部30は、ケーブル31を介して電磁波レーダ装置10と接続されており、電磁波レーダ装置10の送信アンテナ11および受信アンテナ12を制御し、また、電磁波レーダ装置10からのデータ(反射波、測定距離)に基づき、測定結果をディスプレイ部32に表示する。
【0026】
上記構造の探査装置Sを用いてコンクリート構造物1の入隅部2にある耐震スリット(空隙部)3の有無を確認する場合、まず、くさび形電磁波伝搬物質体20をコンクリート構造物1の入隅部2に配置する。具体的には、頂部23および直角部24がコンクリート構造物1の壁面5に当接するようにくさび形電磁波伝搬物質体20を入隅部2に配置する。
【0027】
次に、くさび形電磁波伝搬物質体20の斜面21上の起点SPに電磁波レーダ装置10を配置し、当該レーダ装置10のアンテナ部前面16が壁面5に当接するまで斜面21上を移動しながら走査する。
【0028】
電磁波レーダ装置10が斜面21上を走査する間、送信アンテナ11から電磁波が電磁波伝搬物質体20を通じてコンクリート表面6に輻射されるが、電磁波伝搬軸14が耐震スリット3に至ると、送信アンテナ11から輻射される電磁波が耐震スリット3(の空気層と)の境界面により反射し、反射波を受信アンテナ12が受信し、反射波データを本体制御部30に送信する。
【0029】
本体制御部30には、電磁波レーダ装置10の車輪13に組み込まれた距離計から得られる走査距離データも送信され、ディスプレイ部32に、横軸を走査距離とする反射波形が表示される。
図2に反射波形の図を示す。ディスプレイ部32上に耐震スリット3の境界面で反射される反射波が表示されるので、入隅部2における耐震スリット3の有無を確認することができる。
【0030】
本実施形態の探査装置Sを用いた探査方法によると、くさび形電磁波伝搬物質体20の斜面21に沿って、電磁波レーダ装置10を走査することにより、コンクリート構造物1の表面に対し斜めに電磁波が幅射され、送受信アンテナ11、12の中央位置からアンテナ轄射面15に対して直角方向に伸びる電磁波伝搬軸14を入隅部2内部に到達させることができ、従来方法による測定死角Wを解消する。
【0031】
図3は本発明に係る第2の実施形態を示すもので、コンクリート構造物1の入隅部2に配置される鉄筋(埋設物)4を探査する例である。
【0032】
図3に示すように、くさび形電磁波伝搬物質体20の斜面21上の起点SP(
図1参照)に電磁波レーダ装置10を配置し、斜面21上を移動しながら走査すると、
図8に示すように従来方法では入隅部2の測定死角Wにあった鉄筋4Aが走査範囲、すなわち測定範囲内に入るので、これまで未確認であった鉄筋4Aを確認することができる。
【0033】
同様に、
図3の点線に示すように、くさび形電磁波伝搬物質体20の頂部25を下にして入隅部2に配置し、くさび形電磁波伝搬物質体20の斜面21上の起点から電磁波レーダ装置10を斜面21に沿って下向きに走査すると、
図8に示すように従来方法では入隅部2の測定死角Wにあった壁面5内部の鉄筋4Bが走査範囲内に入るので、これまで未確認であった鉄筋4Bを確認することができる。
【0034】
これにより、探査装置Sを用いることにより、コンクリート構造物1の入隅部2における床内部の鉄筋4および壁体内部の鉄筋4に対し、
図8に示す従来の測定死角Wを、最小限の測定死角W1に大幅に削減することができる。
【0035】
図4ないし
図6は、くさび形電磁波伝搬物質体20を用いて、コンクリート構造物1の埋設物の位置および深度を測定する原理と方法を示している。
【0036】
電磁波レーダ装置10は、電磁波の送信から、反射物質からの反射波の受信までの往復電磁波伝搬時間Tを測定する機器である。(1)式に示す通り、往復電磁波伝搬時間Tと伝搬物質によって決まる電磁波の速度c/√εの積によって決まり,それを片道にすること(1/2)により,埋設物の深度Dを求めることができる。
D = (1/2)・(c/√ε)・T (1)
【0037】
ここで、c = 3×108m/secであり、また、ε(比誘電率)は伝搬物質によって異なる係数である(空気1,プラスチック2~3,御影石6,コンクリート6~8,水81)。そのため、埋設物の深度Dを求めるためには、くさび形電磁波伝搬物質体の比誘電率εを事前に求める必要がある。
【0038】
図4を参照して、くさび形電磁波伝搬物質体20の比誘電率は次のようにして求める。電磁波レーダ装置10を用いて、位置P
1,P
2における電磁波の送信から、くさび形電磁波伝搬物質体20の底面からの反射波の受信までの電磁波伝搬時間t
1,t
2を測定する。得られた電磁波伝搬時間t
1,t
2から位置P
1とP
2の相対深度d
2-d
1を求める。
d
2-d
1 =(1/2)・(c/√ε
a)・(t
2-t
1) (2)
【0039】
なお、相対深度d
2-d
1の真値は、電磁波伝搬物質の角度αと位置P
1,P
2間の距離l
aより求めることができる。
d
2-d
1 =l
a・tanα (3)
(2)(3)式を用いて、以下の(4)式により、くさび形伝搬物質体20の比誘電率ε
aを求めることができる。
【0040】
図5を参照して、走査対象となるコンクリート構造物1のコンクリートの比誘電率は次のようにして求める。電磁波レーダ装置10を用いて、鉄筋の直上の位置P
3とそこからl
bの距離にある位置P
4における電磁波の各送信から、鉄筋からの反射波の各受信までの電磁波伝搬時間t
3,t
4を測定する。得られた電磁波伝搬時間t
3,t
4から深度d
3,d
4を求める。
d
3 = (1/2)・(c/√ε
b)・(t
3) (5)
d
4 = (1/2)・(c/√ε
b)・(t
4) (6)
【0041】
なお、深度d
3の真値は、位置P
3,P
4間の距離l
bと、位置P
4における深度d
4より求めることができる。
(d
3)
2 =(d
4)
2 -(l
b)
2 (7)
(5)(6)(7)式を用いて、以下の(8)式により、コンクリートの比誘電率ε
bを求めることができる。
【0042】
図6を参照して、くさび形伝搬物質体20を介したコンクリート内部の鉄筋4の位置と深度は次にようにして求める。まず、電磁波レーダ装置10を用いて、起点から鉄筋の直上の位置P
5までの距離lを求め、あわせて鉄筋4の直上の位置P
5における電磁波の、二つの物質を通過した送信から、鉄筋からの反射波の受信までの電磁波伝搬時間t
5 を測定する。起点から鉄筋の直上の位置P
5までの距離lと電磁波伝搬物質体20の傾斜角αより,深度d
5aを求める。
d
5a =l・tanα (9)
【0043】
次に(4)より求めたくさび形電磁波伝搬物質体20の比誘電率ε
aを使って電磁波伝搬時間t
5aを求める。
t
5a =(2√ε
a/c)・d
5a (10)
コンクリート中の伝搬時間t
5b は、
t
5b =t
5 - t
5a (11)
であることから、コンクリート中の深度d
5b は、
となり、深度d
5 は、(9)(12)より
d
5 = d
5a + d
5b (13)
で求めることができる。
【0044】
以上の原理および手順により、入隅部2に配置されたくさび形電磁波伝搬物質体20の斜面21に沿って起点から電磁波レーダ装置10で走査し、得られた鉄筋4からの反射波、電磁波伝播時間、傾斜角α、くさび形電磁波伝搬物質体20およびコンクリート構造物1の比誘電率から、鉄筋4の位置と深度を求めることができる。
【0045】
以上説明したように、本発明の電磁波レーダ装置を用いた非破壊探査方法によると、コンクリートとほぼ同じ6~8の比誘電率をもち、内部に鉄筋等の反射物がない、くさび形電磁波伝搬物質体20をコンクリート構造物1の入隅部2に配置し、その斜面21に沿って電磁波レーダ装置10を走査することで、電磁波伝搬軸14を入隅部2内に到達させることができ、従来の方法に比べて、
図7および
図8に示すような入隅部2の測定死角Wを解消するか、小さくすることができる。
【0046】
これにより、コンクリート構造物1の入隅部2における埋設物や空隙部の有無、それらの深度および位置を確実に探査し、探査範囲および探査精度を向上させ、それらの作業効率を向上させることができる。
【0047】
本実施形態では、コンクリート構造物1の入隅部2における探査方法について説明したが、これに限らず、電磁波レーダ装置10の電磁波伝搬軸14を入射できない測定死角のある部位に対し、上記くさび形電磁波伝搬物質体20を用いることで、測定死角を解消または減少させることができる。
【0048】
かくして、本発明によると、コンクリート構造物の入隅部における探査作業を確実にかつ効率的に行うことができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、コンクリート構造物の入隅部における探査方法および探査装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 コンクリート構造物
2 入隅部
3 耐震スリット(空隙部)
4,4A,4B 鉄筋(埋設物)
5 壁面
6 コンクリート表面
10 電磁波レーダ装置
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
13 車輪
14 電磁波伝搬軸
15 アンテナ輻射面
16 アンテナ部前面
17 アンテナ部後面
20 くさび形電磁波伝搬物質体
21 斜面
22 前端部
23 頂部
24 直角部
30 本体制御部
31 ケーブル
32 ディスプレイ部
S 探査装置
SP 起点
L 走査距離
W,W1 測定死角
α 傾斜角