IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中科知影(北京)科技有限公司の特許一覧 ▶ 中国科学院生物物理研究所の特許一覧

<>
  • 特許-マルチチャネル原子磁気検出器 図1A
  • 特許-マルチチャネル原子磁気検出器 図1B
  • 特許-マルチチャネル原子磁気検出器 図2
  • 特許-マルチチャネル原子磁気検出器 図3
  • 特許-マルチチャネル原子磁気検出器 図4
  • 特許-マルチチャネル原子磁気検出器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】マルチチャネル原子磁気検出器
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/032 20060101AFI20230608BHJP
   G01R 33/26 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G01R33/032
G01R33/26
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021533592
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2019124051
(87)【国際公開番号】W WO2020119642
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】201811503710.0
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521254579
【氏名又は名称】中科知影(北京)科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】COGNITIVE MEDICAL IMAGING LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】302037630
【氏名又は名称】中国科学院生物物理研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(72)【発明者】
【氏名】王 帆
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004462(JP,A)
【文献】特開2016-028674(JP,A)
【文献】特開2011-158497(JP,A)
【文献】特開2016-050837(JP,A)
【文献】特開2014-215151(JP,A)
【文献】特開平04-104243(JP,A)
【文献】特開2015-099152(JP,A)
【文献】特開2013-242295(JP,A)
【文献】特開2007-167616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/032
G01R 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの検出アセンブリを備えたマルチチャネル原子磁気検出器であって、
各検出アセンブリは、
同一平面上に位置する複数の検出ガス室と、
前記検出アセンブリ内で光源からの偏光ビームを1回反射することのみによって、前記偏光ビームを前記複数の検出ガス室に分配する光分割部材と、を備え、
前記偏光ビームは、所定の入射方向に沿って前記光源から前記光分割部材上に入射し、
前記光分割部材は、前記入射方向に沿って見たときに中心点に対して中心対称であり、
各組の検出ガス室の複数の検出ガス室は、前記入射方向に沿って見たときに前記中心点に対して中心対称に配置されるか、又は、
前記光分割部材は、前記入射方向に沿って見たときに所定の対称軸に対して軸対称であって、各組の検出ガス室の複数の検出ガス室は、前記入射方向に沿って見たときに前記対称軸に対して軸対称である、マルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項2】
同一光源からの1束の偏光ビームを前記検出アセンブリの各検出ガス室に分配するための前記光分割部材を更に備える、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項3】
前記複数の検出ガス室のうちの少なくとも一部の検出ガス室は2束の偏光ビーム又は拡張された1束の幅の広い偏光ビームを受光する、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの検出アセンブリを収容するためのハウジングを更に備える、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項5】
前記光源はハウジングに収容される、請求項4に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項6】
前記光源はハウジング外に設置される、請求項4に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項7】
各検出アセンブリは、
光路上に対応する検出ガス室の後方に設置され、対応する検出ガス室を通過した偏光ビームの情報を検出するための複数の光電検出器を備え、
前記複数の光電検出器は、前記入射方向に沿って見たときに前記中心点に対して中心対称であるか、又は、前記入射方向に沿って見たときに前記対称軸に対して軸対称に配置されている、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項8】
各検出アセンブリは、
光路上に光分割部材と対応する検出ガス室との間に設置され、偏光ビームを円偏光ビームに変換するための複数の偏光デバイスを備え、
前記複数の偏光デバイスは、前記入射方向に沿って見たときに前記中心点に対して中心対称であるか、又は、前記入射方向に沿って見たときに前記対称軸に対して軸対称に配置されている、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項9】
各検出アセンブリは、変調コイルを備え、
各検出アセンブリの複数の検出ガス室が同一組の変調コイルを共有する、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項10】
各検出アセンブリは、
各組の変調コイルが各検出ガス室に対して設置され、且つ共通のコントローラにより協調制御される複数組の変調コイルを備える、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項11】
前記原子磁気検出器は2つ以上の検出アセンブリを備え、前記2つ以上の検出アセンブリはそれぞれ互いに平行し且つ互いにずれる異なる平面上に配置される、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項12】
前記原子磁気検出器は2つ以上の検出アセンブリを備え、前記2つ以上の検出アセンブリは同一平面上に互いにずれるように配置される、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項13】
前記2つ以上の検出アセンブリの光分割部材は共通の光源からの共通の偏光ビームを各検出ガス室に分配する、請求項11又は12に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項14】
前記光分割部材は、前記入射方向に沿って見たときに前記中心点に対して中心対称であって、
各検出アセンブリは、均一間隔を隔て、前記入射方向に沿って見たときに前記中心点に対して中心対称に配置されている4つの検出ガス室を備える、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項15】
前記光分割部材は、前記入射方向に沿って見たときに前記中心点に対して中心対称であって、
各検出アセンブリは、前記入射方向に沿って見たときに前記対称軸に対して軸対称に配置されている2つの検出ガス室を備える、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【請求項16】
前記光分割部材は、前記入射方向に沿って見たときに前記中心点に対して中心対称であって、
各検出アセンブリは、前記入射方向に沿って見たときに前記対称軸に対して前記光分割部材の両側に軸対称に配置されている4つの検出ガス室を備え、一方側の2つの検出ガス室が互いに隣接し、他方側の2つの検出ガス室が互いに隣接する、請求項1に記載のマルチチャネル原子磁気検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は原子磁気検出器に関し、特にマルチチャネル原子磁気検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ポンピング原子検出技術はビームにより原子ガスを分極し、原子スピンの磁気効果を利用して微弱磁界の測定を実現する技術である。20世紀90年代以来、原子スピンの新たな物理的効果、新たな操作原理及び方法の発見に伴い、特に2002年に人類は原子スピンを操作してスピン交換緩和なし状態(SERF、Spin Exchange Relaxation Free)を実現し始めることが可能になった後、SERF状態の原子スピンの歳差に基づいて超高感度の磁界測定を実現することについての研究は注目されている。このような方法は従来の関連測定方法の実現する感度を大幅に超えることができ、人類が世界を認識する新しいツールを手に入れるようにする。光ポンピング原子検出技術に基づく原子磁力計(即ち、原子磁気検出器)は室温環境において動作でき、液体ヘリウムで冷却する必要がなく、体積が小さく質量が軽く、且つ半導体プロセスにより量産を低コストで実現することができ、脳磁図、心磁図及び他の医学、生物、材料分野における弱界磁検出に将来性を見出す。
【0003】
SERFメカニズムは早くても1973年にプリンストン大学のHapper教授等の人に発見される。2002年に、プリンストン大学のRomalis教授がリードするグループは初めてSERF原理に基づく原子磁力計を提示し、シングルチャネル感度は7fT/Hz1/2に達し、且つ現在0.16fT/Hz1/2に達し、一番良いSQUID磁力計が達することのできるレベル(0.91fT/Hz1/2)を超える。
【0004】
中国特許公開第CN108459282A号には、検出ガス室、レーザ光源、変調コイル及び検出装置を備える原子磁力計/磁気勾配計が記載されている。レーザ光源により生成された励起ビームは検出ガス室内のアルカリ金属蒸気を分極させ、変調コイルはアルカリ金属蒸気に対して既知強度の変調磁界を生成し、レーザ光源により生成された検出ビームはアルカリ金属蒸気を通過した後に検出装置により検出され、これにより、変調磁界に基づいて検出ガス室での測定対象の磁界強度又は勾配情報を取得する。単一の該原子磁力計/勾配計に1つのみの検出ガス室が含まれることは、シングルチャネル検出である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の少なくとも1つの実施例に係るマルチチャネル原子磁気検出器であって、少なくとも1つの検出アセンブリを備え、各検出アセンブリは、同一平面上に位置する複数の検出ガス室と、光源からの偏光ビームを前記複数の検出ガス室に分配するための光分割部材とを備え、各組の検出ガス室の複数の検出ガス室は光分割部材に対して中心対称又は軸対称に配置されている。
【0006】
一実施例では、前記光分割部材は同一光源からの1束の偏光ビームを前記検出アセンブリの各検出ガス室に分配することに用いられる。
【0007】
一実施例では、各組の検出ガス室の複数の検出ガス室は光分割部材に対して軸対称に配置されている。且つ、前記光分割部材は複数の光源からの複数束の偏光ビームのうちの各束の偏光ビームをそれぞれ複数の検出ガス室のうちの互いに軸対称である検出ガス室に分配し、各検出ガス室が少なくとも1束の偏光ビームを受光する。
【0008】
更に、一実施例では、複数の検出ガス室のうちの少なくとも一部の検出ガス室は2束の偏光ビーム又は拡張された1束の幅広い偏光ビームを受光することができる。
【0009】
一実施例では、前記マルチチャネル原子磁気検出器は更に、前記少なくとも1つの検出アセンブリを収容するためのハウジングを備える。
【0010】
一実施例では、前記光源はハウジングに収容される。
【0011】
一実施例では、前記光源はハウジング外に設置される。
【0012】
一実施例では、各検出アセンブリは更に、光路上に対応する検出ガス室の後方に設置され、且つ光分割部材に対しても中心対称又は軸対称であって、対応する検出ガス室を通過した偏光ビームの情報を検出するための複数の光電検出器を備える。
【0013】
一実施例では、各検出アセンブリは更に、光路上に光分割部材と対応する検出ガス室との間に設置され、且つ光分割部材に対しても中心対称又は軸対称であり、偏光ビームを円偏光ビームに変換するための複数の偏光デバイスを備える。
【0014】
一実施例では、各検出アセンブリは、変調コイルを備え、各検出アセンブリの複数の検出ガス室が同一組の変調コイルを共有する。
【0015】
該実施例では、複数の検出ガス室が1組の変調コイルを共有するため、複数組の変調コイルを使用することによるクロストーク問題を回避し、且つ検出器の体積を減少させる。
【0016】
他の実施例では、各検出アセンブリは更に、各組の変調コイルが各検出ガス室に対して設置され、且つ共通のコントローラにより協調制御される複数組の変調コイルを備える。
【0017】
該実施例では、複数組の変調コイルの協調制御はクロストークの減少に役立つ。
【0018】
一実施例では、前記原子磁気検出器は2つ以上の検出アセンブリを備え、前記2つ以上の検出アセンブリはそれぞれ互いに平行し且つ互いにずれる平面上に配置される。
【0019】
一実施例では、前記原子磁気検出器は2つ以上の検出アセンブリを備え、前記2つ以上の検出アセンブリは同一平面上に互いにずれるように配置される。
【0020】
一実施例では、前記2つ以上の検出アセンブリの光分割部材は共通の光源からの共通の偏光ビームを各検出ガス室に分配する。
【0021】
該実施例では、2つ以上の検出アセンブリの各検出ガス室は共通の偏光ビームからの光を使用し、従って、検出騒音の低減に役立つ。
【0022】
一実施例では、各検出アセンブリは、同一平面上に光分割部材に対して均一間隔を隔てて中心対称に配置されている4つの検出ガス室を備える。
【0023】
一実施例では、各検出アセンブリは、同一平面上に光分割部材に対して軸対称に配置されている2つの検出ガス室を備える。
【0024】
一実施例では、各検出アセンブリは、同一平面上に光分割部材に対して軸対称に配置されている4つの検出ガス室を備え、一方側の2つの検出ガス室が互いに隣接し、他一方側の2つの検出ガス室が互いに隣接する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下に実施例に必要な図面を簡単に説明する。理解されるように、以下の図面に本開示のいくつかの実施例のみを示すため、範囲を制限するものと見なされるべきではない。当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の関連図面に想到しうる。
【0026】
図1A図1Aは本開示の一実施例に係る原子磁気検出器の模式的なブロック図である。
図1B図1Bは本開示の他の実施例に係る原子磁気検出器の模式的なブロック図である。
図2図2図1Aに示される原子磁気検出器の透視図である。
図3図3は本開示の他の実施例に係る原子磁気検出器の透視図である。
図4図4は本開示の別の実施例に係る原子磁気検出器を示す図である。
図5図5は本開示の更なる実施例に係る原子磁気検出器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態に係る原子磁気検出器を詳しく説明する。本開示の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下に本開示の実施例の図面を参照しながら、本開示の実施例の技術案を明確且つ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本開示の一部の実施例であり、全部の実施例ではない。
【0028】
従って、図面を参照して提供する下記本開示の実施例の詳細な説明は保護を要求する本開示の範囲を制限するためのものではなく、本開示の選択実施例を示すものである。本開示の実施例に基づいて、当業者が進歩性のある労働を必要とせずに取得する他の実施例は、いずれも本開示の保護範囲に属する。また、明確性及び簡潔性のために、公知機能及び構造の説明は省略してもよい。
【0029】
以下の説明及び特許請求の範囲に使用される用語及び語句はその文言上の意味に限らず、公開者により本開示の明確で一致する理解を伝達することに用いられる。従って、当業者であれば理解されるように、本開示の各実施例の下記説明は説明のためのものであって、添付の特許請求の範囲及びその均等物により制限される本開示を制限するためのものではない。
【0030】
本開示に使用される「一実施例」又は「該実施例」は本開示の一実施例において説明される特徴が該実施形態のみに用いられることを意味せず、一実施形態の特徴が他の実施形態に用いられ又は他の実施例の特徴と組み合わせて別の実施形態を得ることもできる。すべてのこれらの実施例はいずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。
【0031】
現在、すべての小型化された原子磁気検出器はいずれもシングルチャネル磁力計又は磁気勾配計であり、ハウジングの寸法、加工難度、変調コイルのクロストーク等の要素により、検出点の密度が低く、高密度の測定を行うことが困難である。また、各磁力計又は磁気勾配計は独立した光源を使用するため、各チャネルの製造コストが高いだけでなく、異なる光源間の光強度及び偏光性の差異により検出器間の信号の背景雑音レベルの差異も比較的大きく、隣接する検出器の勾配計算及び騒音低減処理を行うとき、より良い効果を得ることが困難である。
【0032】
本開示のいくつかの実施例に係るマルチチャネル原子磁気検出器であって、少なくとも1つの検出アセンブリを備え、各検出アセンブリは、同一平面上に位置する複数の検出ガス室と、光源からの偏光ビームを前記複数の検出ガス室に分配するための光分割部材とを備え、各組の検出ガス室の複数の検出ガス室は光分割部材に対して中心対称又は軸対称に配置されている。
【0033】
複数の検出ガス室は光分割部材に対して中心対称又は軸対称に配置されており、光分割部材からの分割光を受光するため、マルチチャネル検出を実現する。該原子磁気検出器は構造が簡単で、検出密度が高く、騒音を抑制しやすく、且つ複数の検出ガス室の相対位置が固定される。
【0034】
図1Aは本開示の一実施例に係る原子磁気検出器100の模式的なブロック図である。図2図1Aに示される原子磁気検出器100の透視図である。
【0035】
図1A及び図2に示すように、原子磁気検出器100は1つの検出アセンブリを備え、前記検出アセンブリは光分割部材110、偏光デバイス120、検出ガス室130、光電検出器140、変調コイル150、磁界補償コイル160及びハウジング170を備え、前記ハウジング170は光分割部材110、偏光デバイス120、検出ガス室130、光電検出器140、変調コイル150及び磁界補償コイル160を収容する。なお、その実施例では、原子磁気検出器100は複数の検出アセンブリを備えてもよく、ハウジング170は該複数の検出アセンブリを収容する。
【0036】
本実施例では、検出ガス室130は4つあり、該4つの検出ガス室130は同一平面上に配置され、光分割部材110に対して中心対称に配置されており、且つ該4つの検出ガス室130は光分割部材110を共有する。
【0037】
本実施例では、原子磁気検出器100のハウジング170内に複数の検出ガス室130が含まれ、マルチチャネルの磁力又は磁気勾配検出を効果的に実現する。複数の検出ガス室130は同一光分割部材110を取り囲んで中心対称に配置されており、該光分割部材110からの分割光を受光する。これにより、検出密度を著しく向上させ、原子磁気検出器100内の複数の検出ガス室130の相対位置の固定及び安定化を確保する。また、このような中心対称に配置されている構造は設計が簡単で、組立及び製造コストが低い。
【0038】
原子磁気検出器は更にレーザ光源180(図1A参照)及びコリメーションデバイス190(図1A参照)を備えてもよい。レーザ光源180は必要に応じて特定波長と偏光特性を有する偏光ビームを生成することに用いられる。偏光ビームはコリメーション等の処理を経て光分割部材110に入射する。光分割部材110は受光された偏光ビームをそれぞれ各検出ガス室130に分配する。本例では、1つのレーザ光源180は1束の偏光ビームを生成し、且つ光分割部材110は該束の偏光ビームを各検出ガス室130に分配する。
【0039】
実施例では、光分割部材110を取り囲んで中心対称に配置され且つ均一間隔を隔てる4つの検出ガス室130は同一光分割部材110を共有することにより、同一光源からの同一束の偏光ビームを使用する。従って、複数の検出ガス室130のそれぞれが異なる光源からの異なる偏光ビームを使用する場合と比べて、偏光ビーム間の騒音の相違が磁気情報検出に与えた影響を除去又は減少し、騒音低減効率を向上させる。これは、原子磁気検出器100が磁気勾配測定に基づく場合に特に有利であり、勾配による騒音低減効率を向上させる。
【0040】
本例では、原子磁気検出器100はハウジング170の内部に設置されるレーザ光源180を備え、4つの検出ガス室130は同一レーザ光源180を共有する。本例では、複数の検出ガス室130は同一レーザ光源180を共有し、従って、レーザ光源180の使用数及びコストを低減し、原子磁気検出器100が占有する必要のある体積を減少させて、より高い検出密度を有させる。複数の検出ガス室130が共有するレーザ光源180は1つに限らない。例えば、いくつかの例では、複数の磁検出器室130は1つ以上(例えば、2つ)のレーザ光源180を共有することができる。且つ、いくつかの例では、原子磁気検出器100は1つのレーザ光源180のほか、更に他の予備レーザ光源180を備えてもよい。
【0041】
他の例では、レーザ光源180は図1Bに示されるように、ハウジング170外に設置されてもよい。次に、光ファイバー等の光ガイドデバイスによってレーザ光源180により生成された偏光ビームを光分割部材110に案内する。該例では、複数の検出ガス室130は光分割部材110を共有して、同一束の偏光ビームからの偏光ビームを受光する。これにより、原子磁気検出器100が占有する必要のある体積を減少させて、より高い検出密度を有させることにも役立ち、検出騒音の低減にも役立つ。
【0042】
図2に示すように、光分割部材110は4つの45°傾斜面を有するピラミッド状のプリズムであってもよい。各傾斜面は1つの検出ガス室130に向かい、光分割部材110によって受光された垂直方向において伝播する偏光ビームを垂直方向と直角をなす水平方向において伝播する複数の偏光ビームに反射させて、各偏光ビームを各対応する検出ガス室130に分配する。
【0043】
検出ガス室130はアルカリ金属ガスを収容する。偏光ビームはアルカリ金属原子を分極させることに用いられてもよく、アルカリ金属原子の歳差挙動を検出することに用いられてもよい。変調コイル150は既知強度の変調磁界を生成することに用いられる。該既知強度の変調磁界は被検出磁界に重畳されることにより、共同で分極されたアルカリ金属原子に作用する。検出するための偏光ビームは検出ガス室130を通過してアルカリ金属原子と作用し、該偏光ビームの光場偏光状態を変化させる。
【0044】
例えば、本実施例では、光電検出器140は4つある。各光電検出器140は光路上に各検出ガス室130の後方に設置され、光分割部材110に対しても中心対称である。光電検出器140のそれぞれは対応する検出ガス室130を通過した偏光ビームを受光して検出することにより、検出ガス室130での測定対象磁界に関わる情報、例えば磁力情報又は磁気勾配情報を取得する。
【0045】
また、例えば、偏光デバイス120は4つあり、各偏光デバイス120は光路上に光分割部材110と検出ガス室130との間に設置され、検出ガス室130に案内しようとする偏光ビームを円偏光ビームに変換することに用いられる。偏光デバイス120は1/4波長板であってもよい。
【0046】
本実施例では、4つの検出ガス室130は1組の変調コイル150を共有する。1組の変調コイル150は共同で作用して有効な変調磁界を生成する1対又は複数対の変調コイル150を示す。例えば、本例では、1組の変調コイル150は1対の独立したコイルであってもよく、又は3つの互いに垂直である方向に配置される3対のコイルであってもよい。
【0047】
4つの検出ガス室130が1組の変調コイル150を共有することは有利である。そうすると、コイルの使用コストを低減することができ、更に各検出ガス室130のそれぞれが独立した変調コイル150を使用する場合に生成した複数の変調コイル150の間のクロストークを除去することができ、且つ原子磁気検出器100内の検出ガス室130を互いに接近させることができる。従来のシングルチャネル原子磁気検出器と比べて、本実施例に係る原子磁気検出器100は検出密度が高く、占有体積が小さい。
【0048】
また、注意されるように、4つの検出ガス室130は必ず1組の変調コイル150を共有しなければならないものではなく、本開示はこれに限らない。他の例では、原子磁気検出器100は4組の変調コイルを有することにより、それぞれ4つの検出ガス室130に用いられることができる。該4組の変調コイルは共通のコントローラにより協調制御されることにより、マルチチャネル検出を行ってクロストークを減少する。
【0049】
本実施例によれば、原子磁気検出器100は更に4組の磁気補償コイル160を備える。明確のために、図2には1つの検出ガス室130を取り囲んで設置される1組の磁気補償コイル160を示すが、それぞれ他の3つの検出ガス室を取り囲んで設置される他の3組の磁気補償コイル160を省略する。各組の磁気補償コイル160はそれぞれ各検出ガス室130に対して磁界補償を行うことに用いられ、これにより、環境騒音磁界を相殺する。本例では、磁気補償コイル160は3対のヘルムホルツコイルである。
【0050】
また、他の実施例では、変調コイル150は更に磁界補償を行うための補償コイルとして使用されてもよく、別に単なる磁気補償コイル160を設置する必要がない。別の実施例では、4つの検出ガス室130は1組の磁気補償コイル160を共有することができる。
【0051】
なお、当業者であれば理解されるように、検出ガス室130の数は4つに限らない。光分割部材110に対して中心対称に配置されていれば、3つ、5つ、6つ等であってもよい。本実施例では、均一間隔を隔てて4つの検出ガス室130を配置することは、光分割部材110及び偏光デバイス120等の構造を簡素化することに役立つ。
【0052】
他の実施例では、複数の検出ガス室130は中心対称に配置されており、且つ複数の検出ガス室130のうちのいくつかの検出ガス室130は均一間隔を隔てて配置されることなく、互いに隣接してもよい。
【0053】
図3は本開示の他の実施例に係る原子磁気検出器200の透視図である。
【0054】
図3に示すように、図1A及び図2に示される原子磁気検出器100と類似し、原子磁気検出器200は1つの検出アセンブリを備え、前記検出アセンブリは光分割部材210、偏光デバイス220、検出ガス室230、光電検出器240、変調コイル250、磁気補償コイル260及びハウジング270を備え、前記ハウジング270は光分割部材210、偏光デバイス220、検出ガス室230、光電検出器240、変調コイル250及び磁気補償コイル260を収容する。本開示の重要な側面の混同を回避するために、実施例1に係る原子磁気検出器100と同様又は類似の部材の詳細な説明は省略する。なお、その実施例では、原子磁気検出器200は複数の検出アセンブリを備えてもよく、ハウジング270は該複数の検出アセンブリを収容する。
【0055】
図2に示される原子磁気検出器100との相違点は、原子磁気検出器200が同一平面上に配置される4つの検出ガス室230を備え、該4つの検出ガス室230が光分割部材210に対して軸対称に配置されており、2つの検出ガス室230が互いに隣接し、もう2つの検出ガス室230が互いに隣接することである。
【0056】
本実施例では、原子磁気検出器200のハウジング270内に複数の検出ガス室230が含まれ、マルチチャネルの磁力又は磁気勾配検出を効果的に実現する。複数の検出ガス室230は同一光分割部材210に対して軸対称に配置されており、該光分割部材210からの分割光を受光する。これにより、検出密度を著しく向上させ、同一原子磁気検出器200内の複数の検出ガス室230の相対位置の固定及び安定化を確保する。また、このような軸対称に配置されている構造は設計が簡単で、組立及び製造コストが低い。
【0057】
実施例1における原子磁気検出器100と類似し、本実施例に係る原子磁気検出器200は更に1つのレーザ光源(図3に図示せず)及びコリメーションデバイス(図3に図示せず)を備える。該レーザ光源は1束の偏光ビームを生成し、光源インターフェースはコリメーションデバイスによりコリメーションされた該偏光ビームを受光して光分割部材210に伝送することに用いられる。光分割部材210は受光された偏光ビームを4束のビームに分配して、互いに軸対称である2つの検出ガス室230に分配し、各検出ガス室230に1束の偏光ビームを受光させる。
【0058】
他の例では、光分割部材210は更にレーザ光源から発する偏光ビームを2束の幅広いビームに分配して、該2束の幅広いビームをそれぞれ両側に分配することができる。これにより、各束の偏光ビームは同一側に位置する2つの検出ガス室230に同時に分配される。ここで、「幅広いビーム」は拡張されたビームを示し、「幅広い偏光ビーム」は拡張された偏光ビームを示す。
【0059】
別の例では、原子磁気検出器200は2つのレーザ光源を備えてもよく、該レーザ光源は2束の偏光ビームを生成し、該2束の偏光ビームのうちの各束の偏光ビームは光分割部材210により互いに軸対称である2つの検出ガス室230に分配され、各検出ガス室230に1束の偏光ビームを受光させる。
【0060】
光分割部材210に対して軸対称に配置されている4つの検出ガス室230は同一レーザ光源からの同一偏光ビームの光を全体又は部分的に受光する。これにより、レーザ光源の使用数及びコストを低減し、原子磁気検出器200が占有する必要のある体積を減少させて、より高い検出密度を有させ、且つ、それぞれのレーザ光源を使用する場合に複数の光源の間の騒音差異を除去又は減少し、騒音低減効率を向上させる。好ましくは、上記の1つのレーザ光源を使用する例では、光分割部材210に対して軸対称に配置されている4つの検出ガス室230はいずれも同一レーザ光源からの同一偏光ビームの光を受光する。これにより、レーザ光源の数及びコスト、原子磁気検出器200が占有する必要のある体積は更に低減され、騒音低減効率は更に向上される。
【0061】
図3に示すように、光分割部材210は2つの45°傾斜面を有するプリズムであってもよい。該各傾斜面は隣接する2つの検出ガス室230に向かい、光分割部材210によって受光された垂直方向において伝播する偏光ビームを垂直方向と直角をなす水平方向において伝播する複数の偏光ビームに反射させて、各偏光ビームを対応する検出ガス室230に分配する。
【0062】
検出ガス室230はアルカリ金属ガスを収容する。光電検出器240は4つあり、各光電検出器240は光路上に各検出ガス室230の後方に設置され、光分割部材210に対しても軸対称である。偏光デバイス220は4つあり、各偏光デバイス220は光路上に光源アセンブリと検出ガス室230との間に設置され、検出ガス室230に案内しようとする偏光ビームを円偏光ビームに変換することに用いられる。
【0063】
他の例では、同一側に位置する隣接する2つの検出ガス室230は1つの偏光デバイス220を共有することができる。
【0064】
本実施例では、4つの検出ガス室230は1組の変調コイル250を共有する。これにより、コイルの使用コストを低減することができ、更に各検出ガス室230のそれぞれが独立した変調コイル250を使用する場合に生成した複数の変調コイル250の間のクロストークを除去することができ、原子磁気検出器200内の検出ガス室230を互いに接近させることができる。従来のシングルチャネル原子磁気検出器と比べて、本実施例に係る原子磁気検出器200は検出密度が高く、占有体積が小さい。
【0065】
なお、当業者であれば理解されるように、検出ガス室230の数は4つに限らない。光源アセンブリに対して軸対称に配置されていれば、他の数例えば2つ、6つ等であってもよい。
【0066】
他の実施例では、一方側に位置する隣接する上記2つの検出ガス室230を1つの一体化された検出ガス室に一体的に組み合わせてもよい。即ち、該他の実施例では、2つの一体化された検出ガス室は光源アセンブリに対して軸対称に配置されている。該他の実施例では、原子磁気検出器は1束の偏光光を生成する1つの光源を備え、光分割部材は偏光ビームをそれぞれ各一体化された検出ガス室に分配し、各検出ガス室に1束の幅広い偏光ビームを受光させる。該偏光ビームは対応する一体化された検出ガス室を通過して該一体化された検出ガス室の後方に位置する2つの光電検出器に伝送される。これにより、各一体化された検出ガス室は2点での検出を実現することができ、検出密度を更に向上させる。
【0067】
一方側に位置する隣接する2つの検出ガス室230を1つの一体化された検出ガス室に一体的に組み合わせる他の例では、原子磁気検出器は2つのレーザ光源を備えてもよく、該レーザ光源は2束の偏光ビームを生成し、該2束の偏光ビームのうちの各束の偏光ビームは光分割部材210により両側に位置する該一体化された検出ガス室に分配され、各一体化された検出ガス室に2束の偏光ビームを受光させる。該偏光ビームはそれぞれ対応する一体化された検出ガス室を通過して該一体化された検出ガス室の後方に位置する2つの光電検出器に伝送される。
【0068】
他の実施例では、原子磁気検出器は更に、以上に記載された原子磁気検出器100の検出アセンブリ又は原子磁気検出器200の検出アセンブリと異なる平面に位置するもう1つの検出アセンブリを備えてもよい。
【0069】
図4は本開示の別の実施例に係る原子磁気検出器を示す図である。図4に示すように、該原子磁気検出器は原子磁気検出器100と類似する。それらの相違点は、原子磁気検出器が、光分割部材110、偏光デバイス120、検出ガス室130、光電検出器140、変調コイル150及び磁界補償コイル160を備える1つの検出アセンブリ10のほかに、該検出アセンブリに平行するようにずれる他の平面上に位置するもう1つの検出アセンブリ11を更に備えることにある。同様に、該もう1つの検出アセンブリ11は光分割部材111、偏光デバイス、光電検出器、変調コイル151、補償コイル、及び光源アセンブリに対して中心対称に配置されている4つの検出ガス室131を備える。これにより、原子磁気検出器の検出密度は更に向上される。該4つの検出ガス室131は4つの検出ガス室130にそれぞれ位置合わせるように配置されてもよいが、本開示はこれに限らない。理解されるように、検出アセンブリは2つに限らず、2つ以上であってもよい。且つ、各検出アセンブリは必ず同様に配置されなければならないものではない。
【0070】
本実施例では、各検出アセンブリの検出ガス室は同一レーザ光源を共有する。これにより、レーザ光源の使用数及びコストを更に低減し、原子磁気検出器が占有する必要のある体積を減少させて、より高い検出密度を有させる。
【0071】
また、該2つの検出アセンブリのそれぞれは1つの光分割部材110、111を有し、該2つの光分割部材110、111は同一光源からの同一偏光ビームを各組の検出アセンブリの各検出ガス室130、131に入射する。光路上に前方に位置する検出アセンブリ10の光分割部材110は半透過半反射特性を有してもよく、受光された偏光ビームの一部を該検出アセンブリ10の各検出ガス室130に反射する。同時に、受光された偏光ビームのもう一部をもう1つの光分割部材111に透過することが許容される。
【0072】
該2つの検出アセンブリ10、11のそれぞれは更に1組の変調コイル150、151を有する。2組の変調コイル150、151は、クロストークを回避するように一定距離にずれる。
【0073】
別の実施例では、原子磁気検出器は更に、以上に記載された原子磁気検出器100の検出アセンブリ又は原子磁気検出器200の検出アセンブリと同一平面に位置し且つ該平面に平行するように互いにずれるもう1つの検出アセンブリを備えてもよい。
【0074】
図5は本開示の更なる実施例に係る原子磁気検出器を示す図である。該原子磁気検出器は原子磁気検出器100と類似する。それらの相違点は、原子磁気検出器が、光分割部材110、偏光デバイス120、検出ガス室130、光電検出器140、変調コイル150及び磁界補償コイル160を備える1つの検出アセンブリ10のほかに、該検出アセンブリと同一平面上に互いにずれるように位置するもう1つの検出アセンブリ12を更に備える。該2つの検出アセンブリ10、12は同じであってもよく、異なってもよい。
【0075】
本実施例では、各検出アセンブリ10、12は同一レーザ光源を共有する。即ち、該2つの検出アセンブリ10、12の光分割部材110、112、113は共通の光源からの共通の偏光ビームを各検出ガス室に分配する。具体的に、該レーザ光源により生成された偏光ビームは追加の光分割部材113により分配され、生成されたビームは各組の検出アセンブリ10、12の光分割部材110、112に入射し、次に光分割部材110、112により各組の検出アセンブリ10、12の各検出ガス室に分配される。ことにより、レーザ光源の使用数及びコストを更に低減し、原子磁気検出器が占有する必要のある体積を減少させて、より高い検出密度を有させる。
【0076】
他の例では、上記2組の検出アセンブリ10、12はそれぞれ独立したレーザ光源を使用してもよい。
【0077】
本開示の範囲は上記説明される実施形態によって制限されるものではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物により制限されるものである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5