(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】脳の厚さ情報に基づいた脳収縮疾患の階層的診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230608BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20230608BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230608BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B10/00 H
G06T7/00 612
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2022514616
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2020011787
(87)【国際公開番号】W WO2021045505
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0109012
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】512196600
【氏名又は名称】サムソン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ソン、チョン キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン フン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、サン ウォン
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0292551(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0174171(US,A1)
【文献】特開2007-279942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0130848(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0078033(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1886000(KR,B1)
【文献】国際公開第2018/186589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のMRIイメージをメッシュモデリングして灰白質表面メッシュと白質表面メッシュとを生成する脳構造モデリング部と、
前記灰白質表面メッシュと前記白質表面メッシュとの対応点間の距離を収集及び分析して、脳の厚さ情報を獲得する脳の厚さ抽出部と、
診断モデル学習が要請されれば、脳の厚さ情報と診断情報とで構成された学習データを多数個生成及び保存する学習データ生成部と、
前記診断情報に基づいて前記脳の厚さ情報を階層構造のグループに分類及び分析してグループ別の特徴情報を獲得し、グループ階層構造とグループ別の特徴情報とを反映して階層分類器を生成及び学習させる診断モデル学習部と、
診断対象者のMRIイメージが新たに入力されれば、新たな脳の厚さ情報を獲得した後、前記階層分類器を通じて前記新たな厚さ情報と最も高い類似度を有するグループを階層的に検索し、グループの検索結果に基づいて脳収縮疾患の種類を確認及び通報する脳収縮疾患診断部と、を含
み、
前記診断モデル学習部は、脳収縮疾患が正常状態であるか、痴呆状態であるかを区分するための第1分類器と、
痴呆状態である場合に、アルツハイマー型痴呆状態であるか、前頭側頭葉型痴呆状態であるかを区分するための第2分類器と、
前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、行動変異前頭側頭葉型痴呆状態であるか、原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第3分類器と、
原発性進行性失語症状態である場合に、非流暢性変異原発性進行性失語症状態であるか、意味変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第4分類器と、
を生成及び学習することを特徴とする、
脳の厚さ情報基盤の脳収縮疾患の階層的診断装置。
【請求項2】
多数のMRIイメージをメッシュモデリングして灰白質表面メッシュと白質表面メッシュとを生成する脳構造モデリング部と、
前記灰白質表面メッシュと前記白質表面メッシュとの対応点間の距離を収集及び分析して、脳の厚さ情報を獲得する脳の厚さ抽出部と、
診断モデル学習が要請されれば、脳の厚さ情報と診断情報とで構成された学習データを多数個生成及び保存する学習データ生成部と、
前記診断情報に基づいて前記脳の厚さ情報を階層構造のグループに分類及び分析してグループ別の特徴情報を獲得し、グループ階層構造とグループ別の特徴情報とを反映して階層分類器を生成及び学習させる診断モデル学習部と、
診断対象者のMRIイメージが新たに入力されれば、新たな脳の厚さ情報を獲得した後、前記階層分類器を通じて前記新たな厚さ情報と最も高い類似度を有するグループを階層的に検索し、グループの検索結果に基づいて脳収縮疾患の種類を確認及び通報する脳収縮疾患診断部と、を含み、
前記診断モデル学習部は、脳収縮疾患が正常状態であるか、痴呆状態であるかを区分するための第1分類器と、
痴呆状態である場合に、アルツハイマー型痴呆状態であるか、前頭側頭葉型痴呆状態であるかを区分するための第2分類器と、
前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、行動変異前頭側頭葉型痴呆状態であるか、非流暢性変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第3分類器と、
前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、行動変異前頭側頭葉型痴呆状態であるか、意味変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第4分類器と、
前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、非流暢性変異原発性進行性失語症状態であるか、意味変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第5分類器と、
を生成及び学習することを特徴とする、
脳の厚さ情報基盤の脳収縮疾患の階層的診断装置。
【請求項3】
前記脳構造モデリング部は、既定の基準テンプレートによって灰白質表面と白質表面とをリサンプリングして頂点のそれぞれの脳表面上の位置を一致させる機能をさらに含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の脳の厚さ情報基盤の脳収縮疾患の階層的診断装置。
【請求項4】
前記厚さ情報のそれぞれに含まれたノイズを除去するノイズ除去部をさらに含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の脳の厚さ情報基盤の脳収縮疾患の階層的診断装置。
【請求項5】
前記診断モデル学習部は、前記脳の厚さ情報のデータ次元を縮小させる次元縮小部と、
前記診断情報に基づいて前記脳の厚さ情報を階層構造のグループに分類した後、線形判別分析を通じてグループ別の特徴情報を獲得し、グループ階層構造とグループ別の特徴情報とを反映して階層分類器を生成及び学習させる階層分類器学習部と、
を含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の脳の厚さ情報基盤の脳収縮疾患の階層的診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳の厚さ情報を獲得及び学習して脳収縮疾患を診断することができ、特に、脳収縮疾患の亜型を階層的に診断可能にする脳の厚さ情報に基づいた脳収縮疾患の階層的診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
社会が発展するにつれて、アルツハイマー病(Alzheimer Diseases)のような退行性神経疾患(Neurodegenerative Diseases)が増加している。退行性神経疾患の場合、脳と関連した疾患であるために、非侵襲的に診断する方法が必要である。
【0003】
このような非侵襲的脳関連疾患の診断方法としては、脳MRIを用いる診断方法が主に用いられているが、これは、脳組織の状態の診断に最も良い方法であると言える。これは、脳CTに比べて頭蓋骨による人工陰影の影響がなくて、脳幹、小脳、側頭葉部位の病巣を詳しく診断することができ、脳梗塞の早期発見、脳管流状態の微細診断が可能であり、同時に脳血管状態を綿密に診断することができるためである。
【0004】
MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、磁力によって発生する磁場を用いて生体の任意の断層像を得る画像法である。MRIでは、画像変数を調節することにより、多様な画像が得られ、弛緩時間が短い組織を明るくする画像法をT1強調画像法、T2弛緩時間が長い組織を明るく見えるようにする画像法をT2強調画像法と称する。また、T2弛緩時間が長いほど画像に明るく表れるように画像変数を調節することにより、分子画像と細胞画像とに最も適したT2強調画像が得られる。
【0005】
しかし、このような非侵襲的に脳疾患如何を判断する場合、正確度が落ちるという問題点がある。
【0006】
このような非侵襲的診断方法を用いる従来技術の脳疾患分析装置は、単純に診断対象が脳疾患にかかったか否かのみ正確に判断することができ、障害類型、さらには障害の予後予測についてMRI画像から観察される病変の意味導出に主に医師の個人的経験に依存した。
【0007】
したがって、脳疾患の発生有無だけではなく、アルツハイマー型痴呆(AD)、前頭側頭葉型痴呆(FTD)、原発性進行性失語症(PPA)、非流暢性変異原発性進行性失語症(nfvPPA)、意味変異原発性進行性失語症(svPPA)の脳収縮群亜型(AD、bvFTD、SD、PNFA)まで階層的に診断可能にする必要性が次第に台頭しつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記問題点を解決するためのものであって、本発明は、MRIイメージを用いて脳の厚さ情報を獲得及び学習して脳収縮疾患を診断し、これにより、さらに脳収縮疾患の亜型を階層的に診断可能にする脳の厚さ情報に基づいた脳収縮疾患の階層的診断装置を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、前述した目的に制限されず、言及されていないさらなる目的は、下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、本発明の一実施形態によれば、多数のMRIイメージをメッシュモデリングして灰白質表面メッシュと白質表面メッシュとを生成する脳構造モデリング部;前記灰白質表面メッシュと前記白質表面メッシュとの対応点間の距離を収集及び分析して、脳の厚さ情報を獲得する脳の厚さ抽出部;診断モデル学習が要請されれば、脳の厚さ情報と診断情報とで構成された学習データを多数個生成及び保存する学習データ生成部;前記診断情報に基づいて前記脳の厚さ情報を階層構造のグループに分類及び分析してグループ別の特徴情報を獲得し、グループ階層構造とグループ別の特徴情報とを反映して階層分類器を生成及び学習させる診断モデル学習部;及び診断対象者のMRIイメージが新たに入力されれば、新たな脳の厚さ情報を獲得した後、前記階層分類器を通じて前記新たな厚さ情報に対応する脳収縮疾患の種類を階層的に確認及び通報する脳収縮疾患診断部;を含む脳の厚さ情報基盤の脳収縮疾患の階層的診断装置を提供する。
【0011】
前記診断モデル学習部は、脳収縮疾患が正常状態であるか、痴呆状態であるかを区分するための第1分類器;痴呆状態である場合に、アルツハイマー型痴呆状態であるか、前頭側頭葉型痴呆状態であるかを区分するための第2分類器;前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、行動変異前頭側頭葉型痴呆状態であるか、原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第3分類器;原発性進行性失語症状態である場合に、非流暢性変異原発性進行性失語症状態であるか、意味変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第4分類器;を生成及び学習することを特徴とする。
【0012】
または、前記診断モデル学習部は、脳収縮疾患が正常状態であるか、痴呆状態であるかを区分するための第1分類器;痴呆状態である場合に、アルツハイマー型痴呆状態であるか、前頭側頭葉型痴呆状態であるかを区分するための第2分類器;前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、行動変異前頭側頭葉型痴呆状態であるか、非流暢性変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第3分類器;前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、行動変異前頭側頭葉型痴呆状態であるか、意味変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第4分類器;前頭側頭葉型痴呆状態である場合に、非流暢性変異原発性進行性失語症状態であるか、意味変異原発性進行性失語症状態であるかを区分するための第5分類器;を生成及び学習することを特徴とする。
【0013】
前記脳構造モデリング部は、既定の基準テンプレートによって灰白質表面と白質表面とをリサンプリングして頂点のそれぞれの脳表面上の位置を一致させる機能をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記脳収縮疾患の階層的診断装置は、前記厚さ情報のそれぞれに含まれたノイズを除去するノイズ除去部をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
そして、前記診断モデル学習部は、前記脳の厚さ情報のデータ次元を縮小させる次元縮小部;及び前記診断情報に基づいて前記脳の厚さ情報を階層構造のグループに分類した後、線形判別分析を通じてグループ別の特徴情報を獲得し、グループ階層構造とグループ別の特徴情報とを反映して階層分類器を生成及び学習させる階層分類器学習部;を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、MRIイメージから脳収縮疾患亜型を分類することができる脳の厚さ情報を抽出し、該抽出された脳の厚さ情報に対して曲面基盤のノイズ除去、線形基盤の次元縮小及びマシンラーニングアルゴリズムを使用して、最終的に正常(NC)、脳収縮群亜型(AD、bvFTD、nfvPPA、svPPA)を階層的に診断することにより、脳収縮疾患の種類をより正確かつ具体的に把握可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による脳の厚さ情報に基づいた脳収縮疾患の階層的診断装置を示す図面である。
【
図2】脳疾患グループの階層構造を示す図面である。
【
図3】本発明の一実施形態による脳収縮疾患の診断方法を説明する図面である。
【
図4】本発明の一実施形態による診断モデルの具現例を示す図面である。
【
図5】本発明の他の実施形態による診断モデルの具現例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の内容は、単に本発明の原理を例示する。したがって、当業者は、たとえ本明細書に明確に説明ないしは図示されていないとしても、本発明の原理を具現し、本発明の概念と範囲とに含まれた多様な装置を発明することができるものである。また、本明細書に列挙されたあらゆる条件付き用語及び実施形態は、原則的に、本発明の概念が理解されるための目的のみで明らかに意図され、このように特別に列挙された実施形態及び状態に制限的ではないと理解しなければならない。
【0019】
また、本発明の原理、観点及び実施形態だけではなく、特定の実施形態を列挙するあらゆる詳細な説明は、このような事項の構造的及び機能的均等物を含むように意図されると理解しなければならない。また、このような均等物は、現在公知の均等物だけではなく、将来開発される均等物、すなわち、構造と無関係に同じ機能を行うように発明されたあらゆる素子を含むものと理解しなければならない。
【0020】
したがって、例えば、本明細書のブロック図は、本発明の原理を具体化する例示的な回路の概念的な観点を示すものと理解しなければならない。同様に、あらゆるフローチャート、状態変換図、擬似コードなどは、コンピュータで読取り可能な媒体に実質的に示すことができ、コンピュータまたはプロセッサが明らかに示されているか否かを問わず、コンピュータまたはプロセッサによって行われる多様なプロセスを示すものと理解しなければならない。
【0021】
プロセッサまたはこれと類似した概念として表示された機能ブロックを含む図面に示された多様な素子の機能は、専用ハードウェアだけではなく、適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行する能力を有したハードウェアの使用によって提供されうる。プロセッサによって提供される時、前記機能は、単一専用プロセッサ、単一共有プロセッサまたは複数の個別的プロセッサによって提供され、これらのうち一部は共有される。
【0022】
また、プロセッサ、制御またはこれと類似した概念として提示される用語の明確な使用は、ソフトウェアを実行する能力を有したハードウェアを排他的に引用して解析されてはならず、制限なしにデジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ソフトウェアを保存するためのROM、RAM及び非揮発性メモリを暗示的に含むものと理解しなければならない。周知寛容の他のハードウェアも含まれる。
【0023】
本明細書の特許請求の範囲において、詳細な説明に記載の機能を行うための手段として表現された構成要素は、例えば、前記機能を行う回路素子の組み合わせまたはファームウェア/マイクロコードなどを含むあらゆる形式のソフトウェアを含む機能を行う、あらゆる方法を含むものと意図され、前記機能を行うように、前記ソフトウェアを実行するための適切な回路と結合される。このような特許請求の範囲によって定義される本発明は、多様に列挙された手段によって提供される機能が結合され、請求項が要求する方式と結合されるために、前記機能を提供することができる如何なる手段も、本明細書から把握されるものと均等なものであると理解しなければならない。
【0024】
前述した目的、特徴及び長所は、添付図面と関連した次の詳細な説明を通じてより明白になり、それにより、当業者が本発明の技術的思想を容易に実施することができる。また、本発明を説明するに当って、本発明と関連した公知の技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合に、その詳細な説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による脳の厚さ情報に基づいた脳収縮疾患の階層的診断装置を示す図面である。
【0026】
図1を参照すれば、本発明の脳収縮疾患の階層的診断装置100は、脳構造モデリング部110、脳の厚さ抽出部120、ノイズ除去部130、学習データ生成部140、診断モデル学習部150、及び脳収縮疾患診断部160などを含んで構成される。
【0027】
脳構造モデリング部110は、多数のMRIイメージのような3次元ボリュームイメージをメッシュモデリングして多角形メッシュデータ構造を有する灰白質表面と白質表面とを生成する。この際、MRIイメージは、特に、T1強調画像であることが望ましい。
【0028】
多角形メッシュは、面(face)と頂点(vertex)とからなるメッシュで表現されるが、個人別に抽出された脳表面メッシュの面と頂点との個数が互いに変わり、このような場合、個人間の比較分析が難しくなる。
【0029】
これにより、本発明は、標準脳構造に対応する基準テンプレートを事前獲得及び保存した後、これを通じて灰白質表面と白質表面とをリサンプリング(re-sampling)して頂点ID別の脳表面上の位置がほとんど一致する新たな頂点を抽出することにより、個人間の特徴比較が可能になるようにする。
【0030】
脳の厚さ抽出部120は、脳構造モデリング部110を通じて獲得された灰白質表面メッシュと白質表面メッシュとに基づいて互いに位置対応する頂点対(すなわち、対応点対)を抽出し、これらの距離を収集及び分析して脳の厚さ情報を獲得する。すなわち、脳の厚さ情報を通じて脳収縮による灰白質の厚さ変化程度を把握する。
【0031】
参考までに、脳構造モデリング部110を通じて生成及びリサンプリングされた脳表面には、ノイズが多く、多くのノイズによって個人別に抽出された脳の厚さ情報にもノイズが多く発生する。このようなノイズは、局部的(locally)に微細に飛ぶ性質を有する。
【0032】
これにより、本発明のノイズ除去部130は、脳の厚さ情報を周波数ドメインに変換した後、ラプラス-ベルトラミ演算子(Laplace Beltrami Operator、LBO)のようなノイズ除去法を通じて脳の厚さ情報に含まれた高周波成分(すなわち、局部的に微細に飛ぶノイズ成分)をいずれも除去する。
【0033】
学習データ生成部140は、装置学習が要請される時に選択的に動作活性化され、これは、多数患者のそれぞれに対応する脳の厚さ情報と診断情報とを獲得及び結合して多数の学習データを生成する。
【0034】
診断モデル学習部150は、再び次元縮小部151と階層分類器学習部152とで構成されて、多数の学習データをマシンラーニングして脳収縮疾患の診断のための診断モデルを生成する。
【0035】
資源縮小部151は、主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)のような次元縮小法を通じて脳の厚さ情報のデータ次元を実際収縮比較が可能な次元に縮小させる。すなわち、脳収縮疾患の種類によって脳収縮部位が変わるので、本発明は、表1のような比率(比率例示)で、脳部位別に収縮することを主要成分として抜いて、その位置の特徴のみを強調させ、実際適用時に、例示(比率反映適用例示)は、表2のように進行しうる。
【表1】
【表2】
【0036】
階層分類器学習部152は、学習データに含まれた脳の厚さ情報を診断情報に基づいて
図2でのような階層構造の脳疾患グループに分類した後、線形判別分析(Linear Discriminant Analysis、LDA)、サポートベクターマシン(support vector machine、SVM)のような特徴抽出法を通じてグループ間の特徴(feature)が遠ざかる、グループ内で特徴が近くなるマトリックス(matrix)計算及び適用してグループ別の1次元特徴情報を抽出する。そして、このようなグループ階層構造とグループ別の特徴情報とに基づいて階層分類器を生成及び学習させた後、これらで構成された診断モデルを獲得及び保存する。
【0037】
最後に、脳収縮疾患診断部160は、疾患診断が要請される時に動作活性化される。これは、診断対象者のMRIイメージに対応する脳の厚さ情報が新たに獲得されれば、診断モデル内の階層分類器を通じて脳疾患グループとの類似度を階層的に分析して、診断対象者の脳の厚さ情報に対応する脳収縮疾患の種類を最終的に識別及び通報する。
【0038】
このように、本発明は、脳収縮疾患亜型を分類することができる脳の厚さ情報をMRIイメージから抽出し、該抽出された脳の厚さ情報に対して曲面基盤のノイズ除去、線形基盤の次元縮小及びマシンラーニングアルゴリズムを使用して、脳収縮疾患を
図2でのように階層的に診断可能にする。
【0039】
すなわち、診断対象者の脳収縮疾患が正常(NC)状態と痴呆(Disease)状態であるかを1次確認した後、痴呆状態である場合、アルツハイマー型痴呆(Alzheimer’s Disease、AD)状態であるか、前頭側頭葉型痴呆(Frontotemporal Dementia、FTD)状態であるかを2次確認し、FTD状態であれば、行動変異前頭側頭葉型痴呆(Behavior Variables FTD、bvFTD)状態であるか、原発性進行性失語症(Primary Progressive Aphasia、PPA)状態であるかを3次確認し、PPA状態であれば、非流暢性変異原発性進行性失語症(Nonfluent/agrammatic Variant PPA、nfvPPA)状態であるか、意味変異原発性進行性失語症(Semantic Variant PPA、svPPA)状態であるかを4次確認する手続きを通じて、ユーザの脳収縮疾患の種類を診断する。もちろん、このような脳収縮疾患の種類は、必要に応じて多様に調整される。例えば、nfvPPA及びsvPPAの代わりに、進行性非流暢性失語症(Progressive Nonfluent Aphasia、PNFA)、意味性痴呆(Semantic Dementia、SD)が適用可能である。
【0040】
さらに、このように構成される脳収縮疾患の階層的診断装置は、独立したハードウェア装置として具現可能であるが、必要な場合、従来の医療装備にプラグインされる形態または医療装置に設置及び実行されるソフトウェアプログラムの形態として具現可能である。
【0041】
以下、
図3及び
図4を参考にして、本発明の一実施形態による脳収縮疾患の階層的診断装置の動作方法についてより詳しく説明する。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態による脳収縮疾患の診断方法を説明する図面であって、本発明の脳収縮疾患の診断方法は、大きく学習段階と診断段階とで構成される。
【0043】
まず、学習段階では、多数患者の医療画像、診断情報などが保存されているデータベースサーバなどに接続してNC、AD、bvFTD、nfvPPA、svPPAのそれぞれの脳収縮疾患を経験している患者のMRIイメージと診断情報とを獲得する(ステップS11)。
【0044】
そして、MRIイメージのそれぞれをメッシュモデリングして灰白質表面メッシュと白質表面メッシュとを生成した後、既定の基準テンプレートによってリサンプリングすることにより、患者間の関連性(correspondence)を確保する(ステップS12)。
【0045】
そして、リサンプリングされた灰白質表面メッシュと白質表面メッシュとの対応点対をいずれも抽出し、これらの距離を収集及び分析して、患者のそれぞれの脳の厚さ情報を抽出した後(ステップS13)、脳の厚さ情報に含まれたノイズ(すなわち、局部的に微細に飛ぶ性質を有する高調波)を除去する(ステップS14)。
【0046】
そして、ステップS14を通じて獲得された脳の厚さ情報に患者診断情報を追加して多数の学習データを生成する(ステップS15)。
【0047】
ステップS15を通じて多数の学習データが生成完了し、主成分分析(PCA)を通じて脳の厚さ情報のデータ次元を縮小する(ステップS16)。
【0048】
そして、次元縮小された脳の厚さ情報を診断情報に基づいて階層的グループに分類した後、線形判別分析を通じてグループ別の特徴情報を抽出する。そして、グループの階層構造とグループ別の特徴情報とを反映して脳収縮疾患を階層的に診断することができる階層分類器を生成及び学習し、これらで構成された診断モデルを生成及び保存する(ステップS17)。
【0049】
このような学習段階が完了すれば、診断段階が行われる。
【0050】
もし、MRI装置を通じて診断対象者のMRIイメージが新たに獲得されれば(ステップS21)、前述したステップS12ないしステップS15と同じ方式で診断対象者の脳の厚さ情報を獲得する(ステップS22~ステップS25)。
【0051】
そうすると、診断モデルの階層分類器を通じて診断対象者の脳の厚さ情報と最も高い類似度を有するグループを階層的に検索し、最も高い類似度を有するグループに対応する診断情報を脳収縮疾患の診断情報として獲得及び出力する(ステップS26)。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態による診断モデルの具現例を示す図面であって、
図4を参照すれば、本発明の診断モデルは、NCグループとDementiaグループとを区分するための第1分類器、ADグループとFTDグループとを区分するための第2分類器、bvFTDグループとPPAグループとを区分するための第3分類器、nfvPPAグループとsvPPAグループとを区分するための第4分類器で構成されることが分かる。
【0053】
このような状態で診断対象者の脳の厚さ情報が獲得されれば、第1ないし第4分類器を次のように順次に用いて脳の厚さ情報による脳収縮疾患が階層的に診断されるようにする。
【0054】
まず、(1)第1分類器を通じて診断対象者の脳の厚さ情報がNCグループとDementiaグループとのうち何れかのグループとさらに類似しているかを確認する。
(2)NCグループとの類似度がさらに高ければ、正常状態であると判断し、Dementiaグループとの類似度がさらに高ければ、第2分類器を通じてFTDグループとADグループとの類似度を追加計算する。
(3)ADグループとの類似度がさらに高ければ、AD状態であると判断し、FTDグループとの類似度がさらに高ければ、第3分類器を通じてbvFTDグループとPPAグループとの類似度を追加計算する。
(4)bvFTDグループとの類似度がさらに高ければ、bvFTD状態であると判断し、PPAグループとの類似度がさらに高ければ、第4分類器を通じてnfvPPAグループとsvPPAグループとの類似度を追加計算する。
そして、(5)nfvPPAグループとの類似度がさらに高ければ、nfvPPA状態であると判断し、svPPAグループとの類似度がさらに高ければ、svPPA状態であると判断する。
【0055】
図5は、本発明の他の実施形態による診断モデルの具現例を示す図面であって、
図5を参照すれば、本発明の診断モデルは、NCグループとDementiaグループとを区分するための第1分類器、ADグループとFTDグループとを区分するための第2分類器、bvFTDグループとnfvPPAグループとを区分するための第3分類器、bvFTDグループとsvPPAグループとを区分するための第4分類器、nfvPPAグループとsvPPAグループとを区分するための第5分類器で構成されても良い。
【0056】
このような場合には、まず、(1)第1分類器を通じて診断対象者の脳の厚さ情報がNCグループとDementiaグループとのうち何れかのグループとさらに類似しているかを確認する。
(2)NCグループとの類似度がさらに高ければ、正常状態であると判断し、Dementiaグループとの類似度がさらに高ければ、第2分類器を通じてFTDグループとADグループとの類似度を追加計算する。
(3)ADグループとの類似度がさらに高ければ、AD状態であると判断し、FTDグループとの類似度がさらに高ければ、第3分類器、第4分類器、第5分類器を同時利用してbvFTDグループとnfvPPAグループとの類似度、bvFTDグループとsvPPAグループとの類似度、nfvPPAグループとsvPPAグループとの類似度をそれぞれ計算する。
(4)第3ないし第5分類器の重複チェック結果、総3個グループ(bvFTD、nfvPPA、svPPA)で2票を得たグループがある場合には、診断対象者が当該グループに対応する脳収縮疾患の状態であると判断し、総3個グループでそれぞれ1票ずつ得た場合には、分類器で距離が最も遠いグループを基準に脳収縮疾患の状態を決定する。
【0057】
このように、本発明は、脳収縮疾患の種類を階層的に把握可能にする階層分類器を構成することにより、診断対象者の脳収縮疾患の種類をより詳細かつ具体的に診断及び通報できるようになる。
【0058】
前述した本発明による方法は、コンピュータで実行されるためのプログラムで製作されてコンピュータで読み取り可能な記録媒体に保存され、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例としては、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピー(登録商標)ディスク、光データ記録装置などがあり、また、キャリアウェーブ(例えば、インターネットを介した伝送)の形態で具現されるものも含む。
【0059】
コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、ネットワークで連結されたコンピュータシステムに分散されて、分散方式でコンピュータで読み取り可能なコードとして保存されて実行可能である。そして、前記方法を具現するための機能的な(function)プログラム、コード及びコードセグメントは、本発明が属す技術分野のプログラマーによって容易に推論されうる。
【0060】
以上、本発明の望ましい実施形態について図示して説明したが、本発明は、前述した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を外れずに、当業者によって多様な変形実施が可能であるということはいうまでもなく、このような変形実施は、本発明の技術的思想や展望から個別的に理解されてはならない。