(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質に結合する抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20230608BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230608BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230608BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230608BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230608BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230608BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230608BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230608BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230608BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230608BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230608BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P25/00
G01N33/53 V
(21)【出願番号】P 2018559466
(86)(22)【出願日】2017-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2017046445
(87)【国際公開番号】W WO2018123979
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2016251106
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業「ヒトIgG特異的修飾技術による多様な機能性抗体医薬の創出」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和キリン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信明
(72)【発明者】
【氏名】中野 了輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐二
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-502346(JP,A)
【文献】特表2002-523472(JP,A)
【文献】特表2004-511570(JP,A)
【文献】特開平05-170667(JP,A)
【文献】TOKUHARA, Naoki., et al.,N-type Calcium Channel in the Pathogenesis of Experimental Autoimmune Encephalomyelitis,The Journal of Biologocal Chemistry,2010年10月22日,Vol. 285, No. 43,p. 33294-33306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
C12N 15/00
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(以下MOGと記載)に結合する抗体または該抗体の抗原結合性断片であって、該抗体が下記(a)~(n)、(o1)~(o22)からなる群より選ばれる1である、抗体または該抗体の抗原結合性断片。
(a)重鎖可変領域(以下VHと記載する)のアミノ酸配列が配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域(以下VLと記載する)のアミノ酸配列が配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのアミノ酸配列が配列番号15に記載されるアミノ酸配列含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)VHのアミノ酸配列が配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(d)重鎖抗体の重鎖可変領域(以下VHHと記載する)のアミノ酸配列が配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む抗体の抗原結合性断片、
(e)VHのアミノ酸配列が配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号157に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(f)VHのアミノ酸配列が配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号167に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(g)VHのアミノ酸配列が配列番号172に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号177に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(h)VHのアミノ酸配列が配列番号182に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号187に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(i)VHのアミノ酸配列が配列番号192に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号197に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(j)VHのアミノ酸配列が配列番号202に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号207に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(k)VHのアミノ酸配列が配列番号212に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号217に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(l)VHのアミノ酸配列が配列番号222に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号227に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(m)VHのアミノ酸配列が配列番号232に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号237に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(n)VHのアミノ酸配列が配列番号242に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号247に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o1)VHのアミノ酸配列が配列番号252に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号254に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o2)VHのアミノ酸配列が配列番号256に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号258に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o3)VHのアミノ酸配列が配列番号260に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号262に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o4)VHのアミノ酸配列が配列番号264に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号266に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o5)VHのアミノ酸配列が配列番号268に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号270に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o6)VHのアミノ酸配列が配列番号272に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号274に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o7)VHのアミノ酸配列が配列番号276に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号278に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o8)VHのアミノ酸配列が配列番号280に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号282に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o9)VHのアミノ酸配列が配列番号284に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号286に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o10)VHのアミノ酸配列が配列番号288に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号290に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o11)VHのアミノ酸配列が配列番号292に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号294に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o12)VHのアミノ酸配列が配列番号296に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号298に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o13)VHのアミノ酸配列が配列番号300に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号302に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o14)VHのアミノ酸配列が配列番号304に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号306に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o15)VHのアミノ酸配列が配列番号308に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号310に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o16)VHのアミノ酸配列が配列番号312に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号314に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o17)VHのアミノ酸配列が配列番号316に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号318に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o18)VHのアミノ酸配列が配列番号320に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号322に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o19)VHのアミノ酸配列が配列番号324に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号326に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o20)VHのアミノ酸配列が配列番号328に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号330に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o21)VHのアミノ酸配列が配列番号332に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号334に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、および
(o22)VHのアミノ酸配列が配列番号336に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号338に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項2】
抗体が脳滞留性を有する請求項1に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片。
【請求項3】
抗体または該抗体の抗原結合性断片がバイスペシフィック抗体である、請求項1または2に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片。
【請求項4】
バイスペシフィック抗体がMOGと脳に存在する抗原に結合する、請求項3に記載のバイスペシフィック抗体。
【請求項5】
バイスペシフィック抗体がMOGに結合する抗原結合部位と、脳に存在する抗原に結合する抗原結合部位とを含む、請求項3または4に記載のバイスペシフィック抗体。
【請求項6】
抗体の抗原結合性断片がFab、Fab’、F(ab’)
2、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)、
およびVH
Hからなる群より選ばれる1である、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体の抗原結合性断片。
【請求項7】
抗体が遺伝子組換え抗体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片。
【請求項8】
抗体がマウス抗体、ラット抗体、ラビット抗体、アルパカ抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体からなる群より選ばれる1である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のMOGに結合する抗体または該抗体の抗原結合性断片に、下記(a)~(c)からなる群より選ばれる少なくとも1つを結合させた融合抗体または融合抗体の抗原結合性断片。
(a)親水性高分子、
(b)両親媒性高分子、および
(c)機能性分子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体
または該抗体の抗原結合性断片を産生する
細胞。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体
または該抗体の抗原結合性断片をコードする塩基配列を含む核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸を含むベクターを含む形質転換細胞。
【請求項13】
請求項10に記載の
細胞または請求項12に記載の形質転換細胞を培養し、培養液から請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片を採取することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片の製造方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片を含む、脳に存在する抗原の検出または測定用の組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体または該抗体の抗原結合性断片を含む、脳疾患の診断または治療するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myelin oligodendrocyte glycoprotein;MOG)に結合する抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を産生するハイブリドーマ、該抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を含む核酸、当該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該抗体または該抗体断片の製造方法、該抗体または該抗体断片を含む組成物、ならびに該抗体または該抗体断片を用いた脳に存在する抗原を検出または測定する方法、脳疾患を診断または治療する方法、抗体の脳滞留性を向上させる方法、および脳内の抗体量を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1986年にマウス抗CD3抗体、muromonab-CD3(OKT3)が最初の抗体医薬品としてFDAから承認を受けて以来、数多くの抗体医薬品が開発されている。1994年には、マウス抗体のもつ抗原性を低減するために、マウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を連結したキメラ抗体abciximabが承認を受けている。
【0003】
さらに抗原性を低減するために、マウス抗体の可変領域の抗原結合に重要な働きをもつ相補性決定領域(complementarity determining region、以下CDR)をヒト抗体のフレームワーク領域(frame work region、以下FR)に移植するヒト化抗体技術が開発され、1997年にヒト化抗CD20抗体dacizumabが承認を受けている。
【0004】
また、ヒトの抗体配列ライブラリを用いたファージディスプレイ技術が用いられるようになり、ファージディスプレイ技術で取得した最初の抗体として、完全ヒト抗TNFα抗体adalimumabが2002年に承認されている。CD20、CD52、TNFα、HER2、EGFR等を標的抗原とした抗体医薬品が、既に60品目以上が承認されている(非特許文献1)。
【0005】
このように、抗体は幅広く認知された医薬品フォーマットとなっている。これまでに承認された抗体医薬品のうち大部分はがんや免疫疾患を対象とするものであり、全体の約75%以上を占めている。
【0006】
中枢神経疾患の治療においても、抗体などのバイオロジクスの重要性が高まっており、アミロイドβに対するモノクローナル抗体がアルツハイマー病において研究されていることや、神経保護作用を有する各種神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor;BDNF、glial-derived neurotrophic factor;GDNF)が中枢神経疾患において神経保護作用を示すことが動物モデルで報告されている(非特許文献2)。
【0007】
しかしながら、中枢神経系では、抗体を末梢に投与した場合に他の臓器と比べて送達量が低く、抗体移行率(脳脊髄液(cerebrospinal fluid;CSF)中濃度と血清濃度の比)は0.1-0.3%と報告されている(非特許文献3-5)。
【0008】
脳及び脊髄を含む中枢神経系において薬剤送達量が低下する理由として、血液脳関門(Blood Brain Barrier;BBB)と呼ばれる血液と脳との組織液間での物質輸送を制限する機構が挙げられる。血液脳関門は、血管内皮細胞の細胞間接合による物理的・非特異的な制御機構と、排出トランスポーターによる基質特異的な排出機構を有しており、異物若しくは薬物から中枢神経系を保護し、恒常性の維持に重要な役割を果たしている。
【0009】
しかしながら、血液脳関門の存在により、中枢神経系では薬剤投与時の有効濃度が得られにくく、薬剤開発が困難になっている。例えば、ハーラー症候群(ムコ多糖症I型)に対するα-L-イズロニダーゼや、ハンター症候群(ムコ多糖症II型)に対するイズロン酸2-スルファターゼの静脈内投与による酵素補充療法が行われているが、酵素の分子量が大きく血液脳関門を通過しないため、中枢神経症状に対する有効性は認められていない(非特許文献6-9)。また、一定量の組換え酵素を定期的に継続投与するため、中和抗体の産生等の副作用が現れることが報告されている(非特許文献10)。
【0010】
また、脳内濃度を高めるために、バイオロジクスを髄腔内または脳内に直接投与する試みも行われている。例えば、ハンター症候群(ムコ多糖症II型)の患者の脳障害の進行を防止するために、イズロン酸2-スルファターゼを患者の脳内に投与する方法が報告されている(特許文献1)。しかしながら、髄腔内または脳内への直接投与は侵襲性が高い(非特許文献11)。
【0011】
そのため、バイオロジクスのような高分子物質の脳内濃度を高めるために、様々な送達技術が研究されている。例えば、脳血管内皮細胞に発現している膜蛋白質に結合し、高分子物質と膜蛋白質の複合体を形成させてエンドサイトーシスにより血液脳関門を通過させる方法が複数報告されている。
【0012】
報告されている技術のほとんどは、受容体介在性トランスサイトーシス(receptor-mediated transcytosis、以下RMT)を利用したものであり、標的となる脳血管内皮発現受容体としては、例えばトランスフェリン受容体、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体、及び低比重リポ蛋白質受容体ファミリー(LDLRf)がある。
【0013】
抗トランスフェリン受容体抗体と神経成長因子との融合蛋白質を作製することにより、トランスフェリン受容体を介した血液脳関門通過技術が報告されている。抗トランスフェリン受容体抗体を用いた技術としては、抗トランスフェリン受容体抗体と抗ベーターセクレターゼ(BACE1)抗体とのバイスペシフィック抗体(特許文献2および3、並びに非特許文献12および13)や、抗アミロイドβ抗体のカルボキシル末端側に抗トランスフェリン受容体の一価抗体を融合させた融合抗体(特許文献4、非特許文献14)が報告されている。
【0014】
抗トランスフェリン受容体抗体と抗BACE1抗体とのバイスペシフィック抗体による脳送達は、マウスにおいて20mg/kg体重で抗体を投与した際に脳での抗体取り込み量がコントロールの約4倍に増加することが報告されている(非特許文献13)。
【0015】
また、抗トランスフェリン受容体抗体を表面に有するリポソームに薬剤を内包させることで、薬剤を血液脳関門において通過させる技術が報告されている。抗ラットトランスフェリン受容体抗体とイムノミセル融合体により、ラット脳での取り込み量が約2~5倍に増加することが報告されている(非特許文献9)。
【0016】
また、抗インスリン受容体抗体のカルボキシル末端側に神経栄養因子や酵素または抗アミロイド抗体を融合した融合蛋白質を作製することにより、インスリン受容体を介した血液脳関門通過技術が報告されている(非特許文献16-19)。
【0017】
アカゲザルにおいて、標識抗ヒトインスリン受容体抗体とGDNFとの融合抗体を投与した2時間後の脳での取り込み量が、GDNFと比較して約15倍となることが報告されている(非特許文献17)。
【0018】
しかしながら、トランスフェリン受容体やインスリン受容体は脳血管内皮細胞だけでなく、肝臓など全身で発現しているため、これらの技術では中枢神経系への薬剤送達量の増大とともに肝臓などにも薬剤送達が起こる(非特許文献20)。さらに、全身で抗原が発現しているため、抗体の血中半減期が短い(非特許文献12)。
【0019】
また、脳血管内皮膜発現抗原であるTMEM30Aに対する抗体(Fc5)が、RMT様の活性を示すことが報告されている(特許文献5、並びに非特許文献21および22)。Fc5はラマ由来のシングルドメインの重鎖抗体の重鎖可変領域(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain antibody、以下VHH)抗体であり、Fc5とヒトFc融合体がコントロールIgGと比較して脳送達が増加することが、in vitro BBBモデルおよびラットin vivoモデルにおいて示されている。
【0020】
Fc5由来の単鎖抗体(single chain antibody;scFv)と代謝型グルタミン酸受容体1型(metabotropic glutamate receptor type I、以下mGluRI)抗体との融合体が、コントロール単鎖抗体とmGluRI抗体との融合体と比較して、ラットモデルでのCSF曝露が高まることが報告されているが、増加量としては5倍程度である(非特許文献23)。
【0021】
また、IgG抗体は胎児性Fc受容体(neonatal Fc receptor;FcRn)によって脳内から循環血液方向へ速やかに排出されることが報告されており(非特許文献24および25)、例えばラットにおけるIgGの脳内投与後の脳内半減期は48分間と短い(非特許文献24)。
【0022】
MOGは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する蛋白質であり、ミエリンを構成している。ヒトMOGの全長は218アミノ酸からなり、中枢神経系においてミエリンの最外層で発現しており、細胞接着及び細胞表面相互作用において役割を果たしている(非特許文献26-28)。
【0023】
多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)のような中枢神経のグリア細胞が自己免疫により攻撃される炎症性疾患において、MOGは自己抗原候補であると考えられている(非特許文献29および30)。MS患者において、血清中の抗MOG抗体の濃度は低いが、中枢神経内でも抗MOG抗体が検出されることが報告されている(非特許文献29)。
【0024】
この理由として、MSのような病態時には液性因子の漏出と炎症性細胞の侵入により血液脳関門の破綻が起こり、抗体が中枢神経系に移行しやすくなっていることが報告されている(非特許文献30および31)。さらに、中枢神経系に浸潤したB細胞や形質細胞により自己抗体が中枢神経系内局所で産生されていることが報告されている(非特許文献30、32および33)。
【0025】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis;EAE)は、MSと多くの病態を共有することから、MSの病態研究において使用されているモデルである。MOGタンパク質またはペプチドを動物に免疫することにより、EAEが誘導できることが報告されている(非特許文献34)。
【0026】
また、EAEを誘導した動物に抗MOG抗体を投与することでEAEスコアが増悪するという報告(非特許文献29および35)があるが、抗体投与後1-2日後(非特許文献29)または4日後(非特許文献35)がEAEスコアのピークを示しており、一過的である。一方で、正常な動物に抗MOG抗体のみを投与してもEAEは発症しないことが報告されている(非特許文献36および37)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】国際公開第2012/023623号
【文献】国際公開第2016/081640号
【文献】国際公開第2016/081643号
【文献】国際公開第2014/033074号
【文献】カナダ国特許第2623841号明細書
【非特許文献】
【0028】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
非特許文献29、35はEAEモデルに抗MOG抗体を投与すると、当該抗体が脳内で検出されることが記載されているが、正常な動物の末梢に抗MOG抗体を投与したときに、脳内での存在を検出できる抗MOG抗体の報告はない。
【0030】
本発明は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myelin oligodendrocyte glycoprotein;MOG)に結合するMOG結合分子及び該分子を用いた方法に関する。具体的には、MOGに結合する抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を産生するハイブリドーマ、該抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を含む核酸、当該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該抗体または該抗体断片の製造方法、該抗体または該抗体断片を含む組成物、ならびに該抗体または該抗体断片を用いた脳に存在する抗原を検出または測定する方法、脳疾患を診断または治療する方法、抗体の脳滞留性を向上させる方法、および脳内の抗体量を増加させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するための手段として、本発明はMOGに結合するMOG結合分子及び該分子を用いた方法、具体的には抗体または該抗体断片を提供する。
【0032】
すなわち、本発明は以下の(1)~(22)に関する。
(1)ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(以下MOGと記載)に結合する抗体または該抗体断片。
(2)抗体が脳滞留性を有する(1)に記載の抗体または該抗体断片。
(3)抗体が下記(a)~(r)からなる群より選ばれる1である、(1)または(2)に記載の抗体または該抗体断片。
(a)重鎖可変領域(以下VHと記載する)の相補性決定領域(以下、CDR)1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号4、5および6に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域(VL)のCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号10、11および12に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号16、17および18に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号22、23および24に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号28、29および30に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号34、35および36に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(d)重鎖抗体の重鎖可変領域(以下VHHと記載する)のCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号40、41および42に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(e)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号153、154および155に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号158、159および160に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(f)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号163、164および165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号168、169および170に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(g)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号173、174および175に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号178、179および180に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(h)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号183、184および185に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号188、189および190に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(i)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号193、194および195に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号198、199および200に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(j)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号203、204および205に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号208、209および210に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(k)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号213、214および215に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号218、219および220に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(l)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号223、224および225に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号228、229および230に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(m)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号233、234および235に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号238、239および240に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(n)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号243、244および245に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号248、249および250に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o)前記(a)~(n)に記載の少なくとも1つの抗体と、MOGへの結合について競合する抗体、
(p)前記(a)~(n)に記載のいずれか1つの抗体が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体、および
(q)前記(a)~(n)に記載のいずれか1つの抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体。
(r)前記(a)~(n)に記載のいずれか1つの抗体のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体。
(4)抗体が下記(a)~(n)、(o1)~(o22)および(p)からなる群より選ばれる1である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の抗体または該抗体断片。
(a)VHのアミノ酸配列が配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのアミノ酸配列が配列番号15に記載されるアミノ酸配列含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)VHのアミノ酸配列が配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(d)VHHのアミノ酸配列が配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(e)VHのアミノ酸配列が配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号157に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(f)VHのアミノ酸配列が配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号167に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(g)VHのアミノ酸配列が配列番号172に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号177に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(h)VHのアミノ酸配列が配列番号182に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号187に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(i)VHのアミノ酸配列が配列番号192に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号197に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(j)VHのアミノ酸配列が配列番号202に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号207に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(k)VHのアミノ酸配列が配列番号212に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号217に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(l)VHのアミノ酸配列が配列番号222に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号227に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(m)VHのアミノ酸配列が配列番号232に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号237に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(n)VHのアミノ酸配列が配列番号242に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号247に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o1)VHのアミノ酸配列が配列番号252に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号254に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o2)VHのアミノ酸配列が配列番号256に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号258に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o3)VHのアミノ酸配列が配列番号260に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号262に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o4)VHのアミノ酸配列が配列番号264に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号266に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o5)VHのアミノ酸配列が配列番号268に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号270に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o6)VHのアミノ酸配列が配列番号272に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号274に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o7)VHのアミノ酸配列が配列番号276に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号278に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o8)VHのアミノ酸配列が配列番号280に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号282に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o9)VHのアミノ酸配列が配列番号284に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号286に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o10)VHのアミノ酸配列が配列番号288に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号290に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o11)VHのアミノ酸配列が配列番号292に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号294に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o12)VHのアミノ酸配列が配列番号296に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号298に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o13)VHのアミノ酸配列が配列番号300に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号302に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o14)VHのアミノ酸配列が配列番号304に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号306に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o15)VHのアミノ酸配列が配列番号308に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号310に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o16)VHのアミノ酸配列が配列番号312に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号314に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o17)VHのアミノ酸配列が配列番号316に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号318に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o18)VHのアミノ酸配列が配列番号320に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号322に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o19)VHのアミノ酸配列が配列番号324に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号326に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o20)VHのアミノ酸配列が配列番号328に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号330に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o21)VHのアミノ酸配列が配列番号332に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号334に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、および
(o22)VHのアミノ酸配列が配列番号336に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号338に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
(p)前記(a)~(n)及び(о1)~(о22)に記載のいずれか1つの抗体のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体。
(5)抗体または該抗体断片がバイスペシフィック抗体である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の抗体または該抗体断片。
(6)バイスペシフィック抗体がMOGと脳に存在する抗原に結合する、(5)に記載のバイスペシフィック抗体。
(7)バイスペシフィック抗体がMOGに結合する抗原結合部位と、脳に存在する抗原に結合する抗原結合部位とを含む、(5)または(6)に記載のバイスペシフィック抗体。
(8)抗体断片がFab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)、VHHおよびCDRを含むペプチドからなる群より選ばれる1である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の抗体断片。
(9)抗体が遺伝子組換え抗体である、(1)~(8)のいずれか1つに記載の抗体および該抗体断片。
(10)抗体がマウス抗体、ラット抗体、ラビット抗体、アルパカ抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体からなる群より選ばれる1である、(1)~(9)のいずれか1つに記載の抗体および該抗体断片。
(11)(1)~(10)のいずれか1つに記載のMOGに結合する抗体または該抗体断片に、下記(a)~(c)からなる群より選ばれる少なくとも1つを結合させた融合抗体または融合抗体断片。
(a)親水性高分子、
(b)両親媒性高分子、および
(c)機能性分子。
(12)(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
(13)(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体をコードする塩基配列を含む核酸。
(14)(13)に記載の核酸を含むベクターを含む形質転換細胞。
(15)(12)に記載のハイブリドーマまたは(14)に記載の形質転換細胞を培養し、培養液から(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体または該抗体断片を採取することを含む、(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体または該抗体断片の製造方法。
(16)(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体または該抗体断片を含む、組成物。
(17)脳に存在する抗原の検出または測定用の組成物である、(16)に記載の組成物。
(18)脳疾患の診断または治療をするための組成物である、(16)に記載の組成物。
(19)(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体若しくは該抗体断片、または(16)に記載の組成物を用いて、脳に存在する抗原を検出または測定する方法。
(20)(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体若しくは該抗体断片、または(16)に記載の組成物を用いて、脳疾患を診断または治療する方法。
(21)(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体または該抗体断片若しくは融合抗体または融合抗体断片、または(16)に記載の組成物を用いて、抗体または該抗体断片若しくは融合抗体または融合抗体断片の脳滞留性を向上させる方法。
(22)(1)~(11)のいずれか1つに記載の抗体または該抗体断片若しくは融合抗体または融合抗体断片、または(16)に記載の組成物を用いて、脳内の抗体量または該抗体断片量若しくは融合抗体量または融合抗体断片量を増加させる方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明のMOG結合分子は、MOGに特異的に結合することで結合分子自体の脳滞留性を増加させるだけでなく、その他の分子をMOG結合分子に修飾することで脳内への輸送、滞留させることで、脳疾患の治療に応用することができる。本発明の具体的なMOG結合分子としては、抗体が挙げられる。本発明の抗体または該抗体断片は、脳内のMOGに結合することにより、脳滞留性を有する抗体である。それゆえ、本発明の抗体または該抗体断片は、脳に存在する抗原(MOG、またはMOGと脳に存在するその他の抗原)の検出または測定用の組成物、脳疾患の診断用の組成物、および脳疾患を治療するための医薬組成物として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、MOGに結合するscFv提示ファージクローンのrMOG-FLAG_Fcに対する結合性をELISAにより解析した結果である。縦軸にrMOG-FLAG_Fcに対する吸光度、横軸に各ファージクローンが提示するscFv抗体の名称を表す。
【
図2】
図2は、各抗MOG抗体のHEK細胞、ラットMOG/HEK細胞、マウスMOG/HEK細胞、カニクイザルMOG/HEK細胞またはヒトMOG/HEK細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に細胞数を、横軸に蛍光強度を表す。点線のヒストグラムはネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体の結合性を、実線のヒストグラムは各MOG抗体の結合性を示す。
【
図3】
図3(A)および(B)は、抗MOG抗体のラット脳移行性評価の結果である。
図3(A)は、ラットに抗体を投与して4日後の、血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は投与した抗体を示す。
図3(B)は、ラットに抗体を投与して4日後の、脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は脳重量あたりの抗体量(ng/g 脳)、横軸は投与した抗体を示す。いずれの図においても、白い棒グラフがネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体を、黒い棒グラフが抗MOG抗体を表す。
【
図4】
図4(A)および(B)は、抗MOG抗体のラット脳移行性評価の結果である。
図4(A)は、ラットに抗体を投与して4日後及び10日後の、血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は抗体を投与してからの日数(日)を示す。
図4(B)は、ラットに抗体を投与して4日後及び10日後の、脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は脳重量あたりの抗体量(ng/g 脳)、横軸は抗体を投与してからの日数(日)を示す。いずれの図においても、白ひし形はネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体を、白四角は抗トランスフェリン受容体抗体OX26抗体を、黒三角は抗MOG抗体MOG01抗体を示す。
【
図5】
図5は、各種バイスペシフィック抗体のHEK293F細胞、ラットMOG/HEK293F細胞またはヒトMOG/HEK293F細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に細胞数を、横軸に蛍光強度を表す。点線のヒストグラムはネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体の結合性を、実線のヒストグラムは各バイスペシフィック抗体の結合性を示す。
【
図6】
図6は、各種バイスペシフィック抗体のヒト乳癌細胞株SK-BR-3に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に細胞数を、横軸に蛍光強度を表す。点線のヒストグラムはネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体の結合性を、実線のヒストグラムは各バイスペシフィック抗体の結合性を示す。
【
図7】
図7(A)および(B)は、MOGに結合するバイスペシフィック抗体のラット脳移行性評価の結果である。
図7(A)は、ラットに抗体を投与して10日後の、血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は使用したバイスペシフィック抗体を示す。
図7(B)は、ラットに抗体を投与して10日後の、脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は脳重量あたりの抗体量(ng/g 脳)、横軸は使用したバイスペシフィック抗体を示す。
【
図8】
図8(A)および(B)は、抗MOG01抗体のマウス脳移行性評価の結果である。
図8(A)は、マウスに抗体を投与して3、6、10、14、21、28日後の、血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は時間(日)を示す。
図8(B)は、マウスに抗体を投与して3、6、10、14、21、28日後の、脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/g 脳)、横軸は時間(日)を示す。いずれの図においても、白丸はネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体を、黒四角はMOG01 scFv-hG4PEを示す。
【
図9】
図9(A)~(C)は、抗MOG01抗体のマウス脳移行性イメージング評価の結果である。
図9(A)は、マウスにネガティブコントロールであるAlexa FluorR 488標識抗AVM抗体とAlexa FluorR 488標識抗MOG01抗体を投与して6日後の脳の蛍光強度測定データ、
図9(B)は14日後の脳の蛍光強度測定データである。
図9(C)は6日後および14日後の脳中蛍光量を投与抗体の蛍光強度で補正した値である。縦軸は脳中蛍光量/投与抗体の蛍光量(%)、横軸は投与した抗体を示す。
【
図10】
図10(A)~(C)は、AVMとMOGに結合する各種バイスペシフィック抗体の構造を示す。
図10(A)はAVM-MOG01 IgG4PE(R409K)抗体、
図10(B)はAVM IgG4PE(R409K)_MOG01 Fab抗体、
図10(C)はAVM IgG4PE(R409K)_MOG01sscFv抗体の構造を示す。
【
図11】
図11(A)および(B)は、AVMとMOGに結合する各種バイスペシフィック抗体の構造を示す。
図11(A)はAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv2抗体およびAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv4抗体、
図11(B)はAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体~AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dsc
Fv11抗体の構造を示す。
【
図12】
図12(A)~(C)は、各種バイスペシフィック抗体のヒトMOG/L929細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に平均蛍光強度を、横軸に抗体濃度を表す。
図12(A)では、白丸がAVM IgG4PE(R409K)抗体(ネガティブコントロール)、黒四角がAVM-MOG01 IgG4PE(R409K)抗体を示す。
図12(B)では、白丸がAVM IgG4PE(R409K)_AVMsscFv抗体(ネガティブコントロール)、黒四角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01sscFv抗体を示す。
図12(C)では、白丸がAVM IgG4PE(R409K)_AVM Fab抗体(ネガティブコントロール)、黒四角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01 Fab抗体を示す。
【
図13】
図13(A)および(B)は、各種バイスペシフィック抗体のヒトMOG/L929細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に平均蛍光強度を、横軸に抗体濃度を表す。
図13(A)では、白四角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv抗体、白丸がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv2抗体、白三角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv4抗体を示す。
図13(B)では、白ひし形がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体、黒ひし形がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体、白丸がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv6抗体、黒丸がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv7抗体、白三角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv8抗体、黒三角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv9抗体、白四角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv10抗体、黒四角がAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv11抗体を示す。
【
図14】
図14(A)および(B)は、各種バイスペシフィック抗体のマウス脳移行性評価の結果である。縦軸は抗体濃度、横軸は使用したバイスペシフィック抗体を示す。
図14(A)および(B)は、それぞれ、AVM IgG4PE(R409K)抗体(ネガティブコントロール)とAVM-MOG01 IgG4PE(R409K)抗体を投与10日後の血清中および脳組織中の抗体濃度を示す。
【
図15】
図15(A)および(B)は、各種バイスペシフィック抗体のマウス脳移行性評価の結果である。縦軸は抗体濃度、横軸は使用したバイスペシフィック抗体を示す。
図15(A)および(B)は、それぞれ、AVM IgG4PE(R409K)_AVMsscFv抗体(ネガティブコントロール)およびAVM IgG4PE(R409K)_MOG01sscFv抗体を投与10日後の血清中および脳組織中の抗体濃度を示す。
【
図16】
図16(A)および(B)は、各種バイスペシフィック抗体のマウス脳移行性評価の結果である。縦軸は抗体濃度、横軸は使用したバイスペシフィック抗体を示す。
図16(A)および(B)は、それぞれ、AVM IgG4PE(R409K)_AVM Fab抗体(ネガティブコントロール)およびAVM IgG4PE(R409K)_MOG01 Fab抗体を投与10日後の血清中および脳組織中の抗体濃度を示す。
【
図17】
図17(A)~(D)は、各種バイスペシフィック抗体のマウス脳移行性評価の結果である。縦軸は抗体濃度、横軸は使用したバイスペシフィック抗体を示す。AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv抗体に対応するネガティブコントロールはAVM IgG4PE(R409K)_AVMdscFv抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体に対応するネガティブコントロールはAVM IgG4PE(R409K)_AVMdscFv3抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体に対応するネガティブコントロールはAVM IgG4PE(R409K)_AVMdscFv5抗体である。
図17(A)は抗体投与10日後の血清中の抗体濃度を示す。
図17(B)は抗体投与10日後の脳組織中の抗体濃度を示す。
図17(C)は抗体投与28日後の血清中の抗体濃度を示す。
図17(D)は抗体投与28日後の脳組織中の抗体濃度を示す。
【
図18】
図18は、MOG抗体の類似クローンのscFvのアミノ酸配列であり、MOG301抗体の類似クローンを示す。
【
図19】
図19は、MOG抗体の類似クローンのscFvのアミノ酸配列であり、MOG303抗体の類似クローンを示す。
【
図20】
図20は、MOG抗体の類似クローンのscFvのアミノ酸配列であり、MOG307抗体の類似クローンを示す。
【
図21】
図21は、MOG抗体の類似クローンのscFvのアミノ酸配列であり、MOG310抗体の類似クローンを示す。
【
図22】
図22(A)および(B)は、MOG抗体の類似クローンのscFvのアミノ酸配列である。
図22(A)はMOG329抗体の類似クローンを、
図22(B)はMOG456抗体の類似クローンを示す。
【
図23】
図23は、抗MOG抗体のExpi293F細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に細胞数を、横軸に蛍光強度を表す。点線のヒストグラムはネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体の結合性を、実線のヒストグラムは各MOG抗体の結合性を示す。
【
図24】
図24は、抗MOG抗体のマウスMOG/Expi293F細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に細胞数を、横軸に蛍光強度を表す。点線のヒストグラムはネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体の結合性を、実線のヒストグラムは各MOG抗体の結合性を示す。
【
図25】
図25は、抗MOG抗体のヒトMOG/Expi293F細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に細胞数を、横軸に蛍光強度を表す。点線のヒストグラムはネガティブコントロールとして用いた抗AVM抗体の結合性を、実線のヒストグラムは各MOG抗体の結合性を示す。
【
図26】
図26は、酵素融合抗体MOG01 IgG4PE(R409K)-ASMのヒトMOG/L929細胞に対する結合性を、フローサイトメーターにより解析した結果である。縦軸に平均蛍光強度を、横軸に抗体濃度を表す。
【
図27】
図27は、抗ASM抗体(LSBio社製)のMOG01 IgG4PE(R409K)-ASMおよびAVM IgG4PE(R409K)-ASMに対する結合性を、ELISA法により解析した結果である。縦軸は吸光度、横軸は固相した抗体名を示す。ネガティブコントロールとして、MOG01 IgG4PE およびAVM IgG4PEを用いた。細い斜線の棒グラフが抗ASM抗体5μg/mLのデータ、太い斜線の棒グラフが抗ASM抗体1μg/mLのデータ、白色の棒グラフが抗ASM抗体0.2μg/mLのデータを示す。
【
図28】
図28(A)および(B)は、酵素融合抗体MOG01 IgG4PE(R409K)-ASMおよびAVM IgG4PE(R409K)-ASMのマウス脳移行性評価の結果である。縦軸は抗体濃度、横軸は使用した酵素融合抗体を示す。
図28(A)は抗体投与10日後の血清中の抗体濃度を示す。
図28(B)は抗体投与10日後の脳組織中の抗体濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(Myelin-oligodendrocyte glycoprotein、以下MOGと記載)に結合する抗原結合分子に関する。より具体的には、本発明はMOGに結合する抗体または該抗体断片に関するものである。
【0036】
本発明のMOG結合分子としては、MOGに特異的に結合し当該分子が脳内に滞留する分子であればいずれの分子形態でもよく、タンパク質、核酸、有機合成された低分子化合物/高分子化合物などいずれの分子であってもよい。具体的には組換えタンパク質や抗体、アプタマー、低分子スクリーニングで得られる低分子化合物などいずれのものでもよいが、好ましくは抗体及び該抗体断片が挙げられる。MOG結合分子は、MOGの細胞外領域に結合する分子であることが好ましい。
【0037】
MOGは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するタンパク質であり、ミエリンを構成している。例えば、ヒトMOGの全長は218アミノ酸からなり、中枢神経系においてミエリンの最外層で発現しており、細胞接着及び細胞表面相互作用において役割を果たしている。
【0038】
本発明のMOG結合分子が結合するMOGの動物種は、マウス、ラット、カニクイザルおよび/またはヒトなどが挙げられるが、特にこれらの種に限定されるものではなく、抗体の用途に応じて、適切な動物種を選択することができる。例えば、本発明の抗体をヒトの医薬用途で用いる場合、該抗体は少なくともヒトのMOGに結合する抗体であることが好ましい。
【0039】
本発明において、ヒトMOGとしては配列番号78に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号AAB08088のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号78に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号AAB08088のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒトMOGの機能を有するポリペプチド、あるいは配列番号78に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号AAB08088のアミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列から成り、かつヒトMOGの機能を有するポリペプチドなどが挙げられる。
【0040】
配列番号78に記載のアミノ酸配列またはNCBIアクセッション番号AAB08088で示されるアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、Nucleic acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)]などを用いて、例えば配列番号78のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNAに、部位特異的変異を導入することにより得ることができる。
【0041】
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、好ましくは1個~数十個、例えば、1~20個、より好ましくは1個~数個、例えば、1~5個のアミノ酸である。
【0042】
マウスMOGのアミノ酸配列[配列番号74、NCBIアクセッション番号NP_034944]、ラットMOGのアミノ酸配列[配列番号68、NCBIアクセッション番号AAA41628]、およびカニクイザルMOGのアミノ酸配列[配列番号76、NCBIアクセッション番号NP_001271785]についても同様のことがいえる。
【0043】
ヒトMOGをコードする遺伝子としては、配列番号77に記載の塩基配列、およびNCBIアクセッション番号U64564の塩基配列が挙げられる。配列番号77に記載の塩基配列若しくはNCBIアクセッション番号 U64564の塩基配列において、1以上の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列から成り、かつMOGの機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、配列番号77に記載の塩基配列若しくはNCBIアクセッション番号U64564の塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列、好ましくは80%以上の相同性を有する塩基配列、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列から成り、かつMOGの機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子または配列番号77に記載の塩基配列、若しくはNCBIアクセッション番号U64564の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAから成り、かつMOGの機能を有するポリペプチドをコードする遺伝子なども本発明においてMOGをコードする遺伝子に含まれる。
【0044】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号77に記載の塩基配列またはNCBIアクセッション番号U64564の塩基配列を含むDNAをプローブに用いた、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザンブロット・ハイブリダイゼーション法またはDNAマイクロアレイ法などにより得られるハイブリダイズ可能なDNAのことをいう。
【0045】
具体的には、ハイブリダイズしたコロニー若しくはプラーク由来のDNA、または該配列を有するPCR産物若しくはオリゴDNAを固定化したフィルターあるいはスライドガラスを用いて、0.7~1.0mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University, (1995)]を行った後、0.1~2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターまたはスライドガラスを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
【0046】
ハイブリダイズ可能なDNAとしては配列番号77に記載の塩基配列、またはNCBIアクセッション番号U64564の塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
【0047】
マウスMOGの塩基配列[配列番号73、NCBIアクセッション番号NM_010814]、ラットMOGの塩基配列[配列番号67、NCBIアクセッション番号M99485]、およびカニクイザルMOGの塩基配列[配列番号75、NCBIアクセッション番号NM_001284856]についても同様のことがいえる。
【0048】
MOGの機能としては、ミエリン上での細胞接着及び細胞表面相互作用等への関与が挙げられる。
【0049】
真核生物のタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列には、しばしば遺伝子の多型が認められる。本発明において用いられる遺伝子に、このような多型によって塩基配列に小規模な変異を生じた遺伝子も本発明におけるMOGをコードする遺伝子に包含される。
【0050】
本発明における相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよいが、塩基配列については、BLAST[J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値など、アミノ酸配列については、BLAST2[Nucleic Acids Res.,25, 3389 (1997)、Genome Res., 7, 649 (1997)、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/information3.htmL]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
【0051】
デフォルトのパラメータとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、-E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、-q(Penalty for nucleotide mismatch)が-3、-r(reward for nucleotide match)が1、-e(expect value)が10、-W(wordsize)が塩基配列の場合は11残基、アミノ酸配列の場合は3残基、-y[Dropoff(X)for blast extensions in bits]がblastnの場合は20、blastn以外のプログラムでは7、-X(X dropoff value for gapped alignment in bits)が15および-Z(final X dropoff value for gapped alignment in bits)がblastnの場合は50、blastn以外のプログラムでは25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/htmL/blastcgihelp.htmL)。
【0052】
上記の各種MOGのアミノ酸配列の部分配列を含むポリペプチドは、当業者に公知の方法によって作製することができる。具体的には、上記の各種MOGのアミノ酸配列をコードするDNAの一部を欠失させ、これを含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養することにより作製することができる。また、上記と同様の方法により、各種MOGのアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得ることができる。
【0053】
さらに、各種MOGのアミノ酸配列からなるポリペプチド、または各種MOGのアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法、t-ブチルオキシカルボニル(tBoc)法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0054】
本発明において、ヒトMOGの細胞外領域は、配列番号78またはNCBIアクセッション番号AAB08088に記載のアミノ酸配列において、30番目から154番目または232番目から247番目のアミノ酸配列をいい、30番目から154番目のアミノ酸配列であることが好ましい。
【0055】
マウスMOGの細胞外領域は、配列番号74またはNCBIアクセッション番号NP_034944に記載のアミノ酸配列において、30番目から157番目または232番目から247番目のアミノ酸配列をいい、30番目から157番目のアミノ酸配列であることが好ましい。ラットMOGの細胞外領域は、配列番号68またはNCBIアクセッション番号AAA41628に記載のアミノ酸配列において、28番目から155番目または230番目から245のアミノ酸配列をいい、28番目から155番目のアミノ酸配列であることが好ましい。
【0056】
カニクイザルMOGの細胞外領域は、配列番号76またはNCBIアクセッション番号NP_001271785に記載のアミノ酸配列において、30番目から154番目または232番目から247番目のアミノ酸配列をいい、30番目から154番目のアミノ酸配列であることが好ましい。
【0057】
本発明の抗体がMOGの細胞外領域に結合することは、MOG発現細胞または組換えMOGタンパク質に対する本発明の抗体の結合性を、ELISA、フローサイトメトリーおよび表面プラズモン共鳴法などを用いて測定することにより確認することができる。また、公知の免疫学的検出法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを組み合わせて確認することもできる。
【0058】
本発明のMOG結合分子は脳内のMOGに特異的に結合することで脳滞留性を有する分子であり、例えば抗体は、脳内のMOGに結合することにより、脳滞留性を有する抗体である。また、本発明の抗体は、動物の末梢に投与したときに、末梢から脳の血液脳関門を透過して脳内に移行し、脳内のMOGに結合することにより、脳滞留性を有する抗体である。本発明の抗体は、脳滞留性に優れた抗体、または脳滞留性が向上した抗体であることが好ましい。
【0059】
本発明において、脳滞留性とは、被験動物に対象物を投与したときに、該対象物が脳内に留まる性質をいう。即ち、脳内への移行の増加、脳内への蓄積の増加、脳内から脳外への移行の低下、脳内から脳外への排出の低下、および脳内分解の低下から選らばれる少なくともいずれか1つによって該対象物の脳内濃度(又は脳内量)が増加すること、または検出可能な程度に一定濃度存在することを意味する。
【0060】
本発明において、脳滞留性が優れる、脳滞留性が高い、又は脳滞留性が向上していることとは、対象物を被験動物に投与した際に、コントロールと比べて、投与から同日経過後の該対象物の脳内濃度(又は脳内量)が増加すること、または、当該対象物が脳内で長期間検出可能な程度に一定濃度(量)存在することを意味する。
【0061】
これらの現象は、コントロールと比べて、該対象物の脳内への移行の増加、脳内への蓄積の増加、脳内から脳外への移行の低下、脳内から脳外への排出の低下、および脳内分解の低下のうち、少なくともいずれか1つによって生じる。
【0062】
本発明において、脳滞留性が優れる、脳滞留性が高い、又は脳滞留性が向上していることとは、例えば、被験動物に該対象物を投与したときに、コントロールと比べて投与後1~10日、好ましくは投与後2~10日、3~10日、より好ましくは4~10日の該対象物の脳内濃度(量)が高いこと、または当該対象物の脳内濃度(又は脳内量)のピークが投与後4日目以降、好ましくは投与後5日目以降、6日目以降、7日目以降、8日目以降、9日目以降、より好ましくは10日目以降であることなどが挙げられる。
【0063】
脳滞留性に優れた抗体、脳滞留性が高い抗体または脳滞留性が向上した抗体は、コントロール抗体と比べて、脳内での抗体濃度(抗体量)が高い抗体、または脳内に長期間存在し得る特徴を備えた抗体であればいずれの抗体であってもよい。
【0064】
例えば、コントロール抗体と比べて、脳内への移行性及び/又は脳内蓄積性が高い特徴、脳内から脳外への移行性、排出性及び/又は脳内分解性が低い特徴、並びに脳内から脳外への移行性、排出性及び/又は脳内分解性に比べて、脳内への移行性及び/又は脳内蓄積性が高い特徴などを備えた抗体が挙げられる。
【0065】
したがって、本発明の抗体または該抗体断片としては、抗体または該抗体断片を動物に投与した場合、コントロール抗体と比べて、投与から同日経過後の脳内の抗体濃度(又は抗体量)が高い抗体若しくは該抗体断片、または、脳内に長期間存在することができる抗体若しくは該抗体断片などが挙げられる。
【0066】
脳内での抗体濃度(又は抗体量)の変化はいかなるものでもよく、例えば、測定期間中に脳内の抗体濃度が一度ピークに達した後、徐々に抗体濃度が低下する場合、脳内の抗体濃度がピークに達した後、その抗体濃度を維持し続けている場合、または抗体投与後に脳内での抗体濃度が増加し続けている場合などが挙げられる。
【0067】
本発明の抗体または該抗体断片としては、例えば、ラットへの投与後4日目若しくは10日目にコントロール抗体よりも脳内の抗体濃度または抗体量が高い抗体、ラットへの投与後4日目から10日目の間に、脳内の抗体濃度若しくは抗体量が維持されている、若しくは増加する抗体、またはラットへの投与後10日目以降にも脳内での存在が明確に確認できる抗体などをいうが、これらに限定されない。
【0068】
コントロール抗体としては、被験抗体と同じ種又はサブクラスの抗体であればいずれの抗体でもよいが、例えば、抗アベルメクチン(AVM)抗体などを用いることができる。
【0069】
本発明において、脳内としては、例えば、脳実質、脳室内、脳脊髄液中などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明において、動物に抗体を投与する方法としては、例えば、静脈投与または脳室内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、経鼻投与、脊髄腔内投与などが挙げられるが、これらの方法に限定されない。
【0071】
本発明において抗体の脳滞留性を測定する方法としては、例えば、動物に抗体を投与して数日経過後に脳組織を回収し、ホモジナイズして遠心分離後の上清中の抗体濃度を測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出する方法、回収した脳組織を用いて公知の免疫学的手法を用いて抗体の存在を検出する方法、または標識を施した抗体を動物に投与し、in vivoイメージングシステムで経時的に当該抗体の存在を検出する方法などが挙げられる。
【0072】
本発明の抗体としては、下記(a)~(q)からなる群より選ばれる1の抗体が挙げられる。
(a)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号4、5および6に記載されるアミノ酸配列であって、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号10、11および12に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号16、17および18に記載されるアミノ酸配列であって、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号22、23および24に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号28、29および30に記載されるアミノ酸配列であって、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号34、35および36に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(d)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号40、41および42に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(e)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号153、154および155に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号158、159および160に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(f)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号163、164および165に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号168、169および170に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(g)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号173、174および175に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号178、179および180に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(h)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号183、184および185に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号188、189および190に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(i)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号193、194および195に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号198、199および200に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(j)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号203、204および205に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号208、209および210に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(k)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号213、214および215に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号218、219および220に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(l)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号223、224および225に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号228、229および230に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(m)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号233、234および235に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号238、239および240に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(n)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号243、244および245に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号248、249および250に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o)前記(a)~(n)に記載の少なくとも1つの抗体と、MOGへの結合について競合する抗体、
(p)前記(a)~(n)に記載のいずれか1つの抗体が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体、および
(q)前記(a)~(n)に記載のいずれか1つの抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体。
【0073】
本発明の抗体としては、上記(a)~(n)に記載されるいずれか1つの抗体のVHのCDR1~3およびVLのCDR1~3のアミノ酸配列と、それぞれ85%以上、好ましくは90%以上の相同性を示す抗体のVHのCDR1~3およびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を有する抗体を含む。90%以上の相同性としてより好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%の相同性などが挙げられる。
【0074】
本発明において、上記(a)~(n)に記載される抗体の一態様としては、それぞれヒト抗MOGモノクローナル抗体MOG01抗体、MOG09抗体、MOG14抗体およびアルパカ抗MOGモノクローナルVHH抗体iMOG-3Rim1-S32抗体が挙げられる。他には、iMOG-3Rim1-S32のヒト型キメラ抗体、およびiMOG-3Rim1-S32のヒト化抗体なども挙げられる。
【0075】
本発明において上記(o)の抗体とは、上記(a)~(n)に記載の抗体を第1抗体とした時に、該第1抗体とMOGとの結合を阻害する第2抗体をいう。
【0076】
本発明において上記(p)の抗体とは、上記(a)~(n)に記載の抗体を第1抗体、および第1抗体が結合するエピトープを第1エピトープとした場合、当該第1エピトープを含む、第2エピトープに結合する第2抗体をいう。
【0077】
また、本発明の上記(q)の抗体とは、上記(a)~(n)に記載の抗体を第1抗体、および第1抗体が結合するエピトープを第1エピトープとした場合に、当該第1エピトープに結合する第2抗体をいう。
【0078】
また、本発明の抗体として、具体的には、下記(a)~(n)、(o1)~(o22)からなる群より選ばれる1の抗体も挙げられる。
(a)VHのアミノ酸配列が配列番号3に記載されるアミノ酸配列であって、かつVLのアミノ酸配列が配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのアミノ酸配列が配列番号15に記載されるアミノ酸配列であって、かつVLのアミノ酸配列が配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)VHのアミノ酸配列が配列番号27に記載されるアミノ酸配列であって、かつVLのアミノ酸配列が配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(d)VHHのアミノ酸配列が配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(e)VHのアミノ酸配列が配列番号152に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号157に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(f)VHのアミノ酸配列が配列番号162に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号167に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(g)VHのアミノ酸配列が配列番号172に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号177に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(h)VHのアミノ酸配列が配列番号182に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号187に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(i)VHのアミノ酸配列が配列番号192に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号197に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(j)VHのアミノ酸配列が配列番号202に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号207に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(k)VHのアミノ酸配列が配列番号212に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号217に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(l)VHのアミノ酸配列が配列番号222に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号227に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(m)VHのアミノ酸配列が配列番号232に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号237に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(n)VHのアミノ酸配列が配列番号242に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号247に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o1)VHのアミノ酸配列が配列番号252に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号254に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o2)VHのアミノ酸配列が配列番号256に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号258に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o3)VHのアミノ酸配列が配列番号260に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号262に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o4)VHのアミノ酸配列が配列番号264に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号266に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o5)VHのアミノ酸配列が配列番号268に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号270に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o6)VHのアミノ酸配列が配列番号272に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号274に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o7)VHのアミノ酸配列が配列番号276に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号278に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o8)VHのアミノ酸配列が配列番号280に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号282に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o9)VHのアミノ酸配列が配列番号284に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号286に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o10)VHのアミノ酸配列が配列番号288に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号290に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o11)VHのアミノ酸配列が配列番号292に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号294に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o12)VHのアミノ酸配列が配列番号296に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号298に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o13)VHのアミノ酸配列が配列番号300に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号302に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o14)VHのアミノ酸配列が配列番号304に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号306に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o15)VHのアミノ酸配列が配列番号308に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号310に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o16)VHのアミノ酸配列が配列番号312に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号314に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o17)VHのアミノ酸配列が配列番号316に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号318に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o18)VHのアミノ酸配列が配列番号320に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号322に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o19)VHのアミノ酸配列が配列番号324に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号326に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o20)VHのアミノ酸配列が配列番号328に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号330に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(o21)VHのアミノ酸配列が配列番号332に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号334に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、および
(o22)VHのアミノ酸配列が配列番号336に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号338に記載されるアミノ酸配列を含む抗体。
【0079】
本発明の抗体としては、上記(a)~(n)、(o1)~(o22)に記載されるいずれか1つの抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列と、それぞれ85%以上、好ましくは90%以上の相同性を示す抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を有する抗体を含む。90%以上の相同性としてより好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%の相同性などが挙げられる。
【0080】
本発明において、上記(a)~(n)、(o1)~(o22)に記載される抗体の一態様としては、それぞれヒト抗MOGモノクローナル抗体MOG01抗体、MOG09抗体、MOG14抗体およびアルパカ抗MOGモノクローナルVHH抗体iMOG-3Rim1-S32抗体が挙げられる。他には、iMOG-3Rim1-S32ヒト型キメラ抗体、およびiMOG-3Rim1-S32ヒト化抗体なども挙げられる。
【0081】
本発明においてEUインデックスとは、シーケンス・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト第5版(1991)に示されるアミノ酸残基の位置をいう。以下に示すアミノ酸残基の位置は、特に記載の無い場合は全てEUインデックスに記載されるアミノ酸残基の位置を示す。
【0082】
抗体分子はイムノグロブリン(以下、Igと記載する)とも称され、その基本的な構造は重鎖(Heavy chain、以下H鎖と記す)および軽鎖(Light chain、以下L鎖と記す)と呼ばれるポリペプチドをそれぞれ二つずつ有する四量体である。
【0083】
また、H鎖はN末端側よりH鎖可変領域(VHとも表記される)、H鎖定常領域(CHとも表記される)、L鎖はN末端側よりL鎖可変領域(VLとも表記される)、L鎖定常領域(CLとも表記される)の各領域により、それぞれ構成される。
【0084】
CHは各サブクラスごとに、α、δ、ε、γおよびμ鎖がそれぞれ知られている。CHはさらに、N末端側よりCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインの各ドメインにより構成される。
【0085】
ドメインとは、抗体分子の各ポリペプチドを構成する機能的な構造単位をいう。また、CH2ドメインとCH3ドメインを併せてFc(Fragment,crystallizable)領域または単にFcという。CLは、Cλ鎖およびCκ鎖が知られている。
【0086】
CHがα、δ、ε、γおよびμ鎖である抗体のサブクラスは、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという。各抗体のサブクラスには動物によってアイソタイプが存在するものがあり、ヒトではIgAにはIgA1およびIgA2、IgGにはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のアイソタイプが存在する。
【0087】
本発明におけるCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびFc領域は、EUインデックスにより、N末端からのアミノ酸残基の番号で特定することができる。
【0088】
具体的には、CH1はEUインデックス118~215番のアミノ酸配列、ヒンジはEUインデックス216~230番のアミノ酸配列、CH2はEUインデックス231~340番のアミノ酸配列、CH3はEUインデックス341~447番のアミノ酸配列、およびFc領域はEUインデックス231~447番のアミノ酸配列とそれぞれ特定される。
【0089】
本発明の抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体およびオリゴクローナル抗体のいずれの抗体をも包含する。ポリクローナル抗体とは、異なるクローンの抗体産生細胞が分泌する抗体分子の集団をいう。モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体であり、ただ一つのエピトープ(抗原決定基ともいう)を認識し、モノクローナル抗体を構成するアミノ酸配列(一次配列)が均一である抗体をいう。オリゴクローナル抗体とは、複数の異なるモノクローナル抗体を混合した抗体分子の集団をいう。
【0090】
本発明におけるモノクロ-ナル抗体としては、ハイブリドーマにより産生される抗体、または抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により産生される遺伝子組換え抗体を挙げられる。
【0091】
エピトープとは、モノクローナル抗体が認識し、結合する単一のアミノ酸配列、アミノ酸配列からなる立体構造、翻訳後修飾されたアミノ酸配列および翻訳後修飾されたアミノ酸配列からなる立体構造などが挙げられる。
【0092】
翻訳後修飾されたアミノ酸配列としては、糖鎖がOH置換基を有するTyrおよびSerに結合したO結合型糖鎖、NH2置換基を有するGlnおよびAsnに結合したN結合型糖鎖ならびに硫酸分子がOH置換基を有するTyrに結合し、チロシン硫酸化されたアミノ酸配列が挙げられる。
【0093】
本発明の抗体が結合するMOGのエピトープは、MOGの一部のドメインを欠失させた欠損体、他のタンパク質由来のドメインと置換させた変異体およびMOGの部分ペプチド断片等を用いて抗体の結合実験を行うことにより決定することができる。また、上記欠損体または変異体の発現細胞を用いて抗体の結合実験を行うこともできる。
【0094】
または、本発明の抗体が結合するMOGのエピトープは、タンパク質分解酵素にて消化したMOGのペプチド断片に本発明の抗体を添加し、既知の質量分析法を用いてエピトープマッピングを行うことによっても決定することができる。
【0095】
本発明の抗体としては、マウス抗体、ラット抗体、ハムスター抗体、ラビット抗体、ラマ抗体、ラクダ抗体、アルパカ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(「相補性決定領域(Complementarity Determining Region;CDR)移植抗体」ともいう)およびヒト抗体などの遺伝子組換え抗体も含まれる。
【0096】
本発明において、キメラ抗体とは、VHおよびVLと、CHおよびCLとが異なる動物種に由来する抗体をいう。ヒト以外の動物(非ヒト動物)の抗体のVHおよびVLと、ヒト抗体のCHおよびCLからなる抗体は、ヒト型キメラ抗体、マウス以外の動物の抗体のVHおよびVLと、マウス抗体のCHおよびCLからなる抗体は、マウス型キメラ抗体といい、その他のキメラ抗体も同様の方法で命名される。
【0097】
非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット、ラマ、ラクダ、アルパカ等、ハイブリドーマを作製する、または抗体ファージライブラリを作製することが可能な動物であれば、いかなるものも用いることができる。
【0098】
ハイブリドーマとは、非ヒト動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウスなどに由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生する細胞をいう。
【0099】
抗体ファージライブラリは免疫グロブリン可変領域の遺伝子をファージにクローニングして、その表面に抗原結合分子を発現させて作製したライブラリをいう。使用されるファージはM13ファージなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0100】
ファージに提示される抗原結合分子は、いかなる形態でもよいが、scFv、FabやVHHなどの抗体断片であることが好ましい。
【0101】
本発明において、抗体ファージライブラリは、免疫ライブラリ、ナイーブライブラリおよび合成ライブラリのうちいずれのライブラリでもよい。
【0102】
免疫ライブラリは抗原で免疫された動物や、患者のリンパ球由来の抗体遺伝子をもとに構築された抗体ファージライブラリをいう。ナイーブライブラリは、正常の動物または健常人のリンパ球由来の抗体遺伝子をもとに構築された抗体ファージライブラリをいう。合成ライブラリは、ゲノムDNAにおけるV遺伝子や再構築された機能的なV遺伝子のCDRを、適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドで置換したライブラリをいう。
【0103】
キメラ抗体の作製方法として、以下にヒト型キメラ抗体の作製方法を記載する。その他のキメラ抗体についても同様の方法で作製することができる。
【0104】
ヒト型キメラ抗体は、モノクローナル抗体を生産する非ヒト動物細胞由来のハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0105】
また、非ヒト動物由来の抗体ファージライブラリよりVHおよびVLをコードする遺伝子をクローニングし、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することもできる。
【0106】
ヒト化抗体とは、非ヒト動物抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの対応するCDRに移植した抗体をいう。VHおよびVLのCDR以外の領域はフレームワーク領域(以下、FRと表記する)と称される。
【0107】
ヒト化抗体は、非ヒト動物抗体のVHのCDRのアミノ酸配列と任意のヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列からなるVHのアミノ酸配列をコードするcDNAと、非ヒト動物抗体のVLのCDRのアミノ酸配列と任意のヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列からなるVLのアミノ酸配列をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト化抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0108】
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、ヒト抗体ファージライブラリおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等も含まれる。
【0109】
ヒト抗体は、ヒトイムノグロブリン遺伝子を保持するマウス(Tomizuka K. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 97, 722-7, 2000.)に所望の抗原を免疫することにより、取得することができる。また、ヒト由来のB細胞から抗体遺伝子を増幅したファージディスプレイライブラリを用いて所望の結合活性を有するヒト抗体を選択することにより、免疫を行わずにヒト抗体を取得することができる(Winter G. et al., Annu Rev Immunol.12:433-55. 1994)。
【0110】
さらに、EBウイルスを用いてヒトB細胞を不死化することにより、所望の結合活性を有するヒト抗体を生産する細胞を作製し、ヒト抗体を取得することができる(Rosen A. et al., Nature 267, 52-54.1977)。
【0111】
ヒト抗体ファージライブラリは、ヒト(健常人または患者)のリンパ球から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFv、およびVHH等の抗体断片を表面に発現させたファージのライブラリである。該ライブラリより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
【0112】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が宿主動物の染色体内に組込まれた動物をいう。具体的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞を他のマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニック動物を作製することができる。
【0113】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製は、通常のヒト以外の哺乳動物で行われているハイブリドーマ作製方法により得たヒト抗体産生ハイブリドーマを培養して培養物中にヒト抗体を産生蓄積させ、該培養物から抗体を精製することにより行うことができる。
【0114】
本発明の抗体は、重鎖のみで構成される重鎖抗体を包含する。重鎖抗体は、ラマ、ラクダ、アルパカなどのラクダ科の動物から取得される抗体、および当該抗体をもとに作製した遺伝子組換え抗体をいう。
【0115】
本発明において抗体断片は、抗体の断片であって、かつ抗原結合活性を有するものをいう。例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、single chain Fv (scFv)、diabody、dsFv、複数のCDRを含むペプチド、およびVHHなどが挙げられる。また、本発明の抗体断片には、該抗体断片に抗体の定常領域又はFcの全長又は一部を融合させた抗体断片、定常領域又はFcを含む抗体断片など、抗体の部分断片を含みかつMOG結合活性を有するものであればいずれの抗体断片も含まれる。
【0116】
Fabは、IgG抗体をタンパク質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合(S-S結合)で結合した、分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0117】
F(ab’)2は、IgGをタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のS-S結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0118】
Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のS-S結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0119】
scFvは、1本のVHと1本のVLとを4個のGlyおよび1個のSer残基からなるリンカー(G4S)を任意の個数つなげたリンカーペプチドなどの適当なペプチドリンカー(P)を用いて連結した、VH-P-VLないしはVL-P-VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0120】
Diabodyは、抗原結合特異性の同じまたは異なるscFvが2量体を形成した抗体断片で、同じ抗原に対する2価の抗原結合活性または異なる抗原に対する特異的な抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0121】
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のS-S結合を介して結合させたものをいう。
【0122】
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、CDR同士を直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
【0123】
本発明の抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法、またはtBoc法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0124】
VHHは、重鎖抗体の可変領域であり、nanobodyともいう。
本発明の抗体断片は、上述したいずれの抗体断片又は該部分断片を含みかつMOG結合活性を有する抗体断片であればいずれのものも含む。
【0125】
本発明において、一つの抗原結合部位を有する抗体または該抗体断片を一価抗体という。一価抗体のフォーマットとしては、国際公開第2014/054804号、国際公開第2011/090754号、国際公開第2007/048037号、および国際公開第2012/116927号などに記載される、抗原結合部位を一つ有する抗体または該抗体断片のフォーマットなどが挙げられる。
【0126】
本発明において、3つ以上の異なる抗原またはエピトープに結合する1分子の抗体または該抗体断片をマルチスペシフィック抗体という。また、本発明において、2つの異なる抗原またはエピトープに結合する1分子の抗体または該抗体断片をバイスペシフィック抗体という。
【0127】
マルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体のフォーマットとしては、国際公開第2009/131239号、国際公開第2014/054804号、国際公開第01/077342号、米国特許出願公開2007/0071675号明細書、国際公開2007/024715号、Wu et al.,[Nature Biotechnology,2007,25(11),p.1290-1297]、Labrijn et al., [PNAS 2013, vol.110, no.13, p5145-5150]、Jong et al., [http://dx.doi.org/10.1371/journal.pbio.1002344]、Kontermann et al., [mAbs 2012, vol.4, issue2, p182-197]、Spiess et al., [Molecular Immunology 67 (2015) 95-106]、 Ridgway et al., [Protein engineering, 1996 vol.9 no.7 pp617-621、国際公開第2009/080251号、国際公開第2010/151792号および国際公開第2014/033074号などに記載されるフォーマットなどが挙げられる。
【0128】
バイスペシフィック抗体として具体的には、以下に記載するバイスペシフィック抗体などが挙げられる。
(1)抗体の二つの重鎖のうち、一方の重鎖(重鎖A)のCH3にS354C/T366W、もう一方の重鎖(重鎖B)のCH3にY349C/T366S/L368A/Y407Vのアミノ酸改変を加えたバイスペシフィック抗体。
(2)抗体のC末端に抗体断片を融合させたバイスペシフィック抗体。
(3)抗体のN末端に抗体断片を融合させたバイスペシフィック抗体。
【0129】
上記(1)に記載するバイスペシフィック抗体は、重鎖AのVHを含む抗原結合部位がMOGに結合し、重鎖BのVHを含む抗原結合部位が脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体でもよいし、その逆でもよい。
【0130】
上記(2)に記載するバイスペシフィック抗体は、抗体を構成する二つの重鎖の一方のC末端に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体と、二つの重鎖の両方に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体、いずれのバイスペシフィック抗体であってもよい。また、抗体の重鎖のC末端と抗体断片との間に適当なリンカーが存在していてもよい。
【0131】
上記(2)に記載するバイスペシフィック抗体が有する抗体断片は、scFv、FabおよびVHHなどが好ましいが、特にこれらに限定されない。
【0132】
上記(2)に記載するバイスペシフィック抗体は、N末端の抗原結合部位がMOGに結合し、C末端の抗原結合部位が脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体でもよいし、その逆でもよい。
【0133】
上記(3)に記載するバイスペシフィック抗体は、抗体を構成する二つの重鎖または軽鎖の少なくともいずれか1つのN末端に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体をいう。また、抗体の重鎖および/または軽鎖のN末端と抗体断片との間に適当なリンカーが存在していてもよい。上記(3)に記載するバイスペシフィック抗体が有する抗体断片は、scFv、FabおよびVHHなどが好ましいが、特にこれらに限定されない。
【0134】
また、上記(3)に記載するバイスペシフィック抗体としては、重鎖のN末端からVH1-CH1-VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3という構造を有するバイスペシフィック抗体、および上記重鎖構造を有し、かつVH1とVH2がそれぞれVLと抗原結合部位を形成しているバイスペシフィック抗体などが挙げられる。VH1およびVH2が抗原結合部位を形成するVLは、同じアミノ酸配列であってもよいし、異なるアミノ酸配列であってもよい。
【0135】
本発明において、マルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体は、MOGに結合するマルチスペシフィック抗体およびバイスペシフィック抗体であればいかなる抗体でもよい。なかでも、MOGと脳に存在する抗原に結合するマルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体が好ましく、MOGに結合する抗原結合部位と、脳に存在する抗原に結合する抗原結合部位とを含むマルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体がより好ましい。
【0136】
本発明において、脳に存在する抗原とは、タンパク質、糖鎖、および脂質などが挙げられ、なかでもタンパク質であることが好ましい。
【0137】
脳に存在するタンパク質としては、例えば、MOG、Prion、5T4、AFP、ADAM-10、ADAM-12、ADAM17、AFP、AXL、BSG、C5、C5R、CA9、CA72-4、CCL11、CCL2、CCR1、CCR4、CCR5、CCR6、CD2、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD18、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD29、CD30、CD32B、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40LG、CD44、CD47、CD52、CD55SC1、CD56、CD66E、CD71、CD72、CD74、CD79a、CD79b、CD80、CD86、CD95、CD98、CD137、CD147、CD138、CD168、CD200、CD248、CD254、CD257、CDH3、CEA、CEACAM1、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM8、Claudin3、Claudin4、c-Met、CS-1、CSF2RA、CSPG-4、CTLA4、CRF-1、Cripto、CXCR4、CXCR5、DLL4、DR4、DR5、ED-B、EFNA2、EGFR、EGFRvIII、ETBR、ENPP3、EPCAM、EphA2、ERBB2、ERBB3、ERBB4、FAPα、FAS、FcγRI、FCER2、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT1、FOLH1、FOLR1、GDF2、GFR、GLP1R、glypican-3、GPNMB、GRP78、HB-EGF、HGF、HLA-DRβ、ICAM1、IFNA1、IFNA1、IgE、IgE-Fc、IGF1R、IL10、IL12B、IL13、IL15、IL17A、IL1A、IL1B、IL2RA、IL4、IL5、IL5RA、IL6、IL6R、IL9、IL2Rα、IL2Rβ、IL2Rγ、INSR、ITGA2、ITGA2B2、ITGB3、ITGA4、ITGB7、ITGA5、ITGAL、ITGAV、ITGB3、ITGB2、KDR、L1CAM、mesothelin、MMP14、MMP15、MST1R、MSTN、MUC1、MUC4、MUC16、MUC5AC、myostatin、NECTIN4、NGF、NOTCH、NRG1、NRP、OX40、OX40L、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PD1、PDL1、PSCA、SLAM7、SLC44A4、TAG-72、TCR、TGFB1、TGFB2、TGFBR、TNF、TNFR、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF12A、TNFSF13、TNFSF14、TNFSF2、TNFSF7、TRAILR2、TRKA、TRKB、TRKC、VEGF、VEGFR、VLA-4、CGRP、alpha-synuclein、TDP-43、Tau、FUS、Amyloid-beta(Aβ)、APP、BACE1、Presenilin、LINGO-1、Nogo、polyQ、androgen receptor、huntingtin、ataxin 1、ataxin 2、RGMA、Phospho-Tau、またはPhospho-alpha-synucleinなどが挙げられるが、これらのタンパク質に限定されるものではない。
【0138】
脳に存在する糖鎖としては、例えば、Lewis-x、Lewis-y、またはCD15などが挙げられるが、これらの糖鎖に限定されるものではない。
【0139】
脳に存在する脂質としては、例えば、GD1a、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3またはPhosphatidylserineなどが挙げられるが、これらの脂質に限定されるものではない。
【0140】
本発明の抗体または該抗体断片は、翻訳後修飾されたいかなるアミノ酸を含む抗体をも包含する。翻訳後修飾としては、例えば、H鎖のC末端におけるリジン残基の欠失[リジン・クリッピング(lysine clipping)]、およびポリペプチドのN末端におけるグルタミン残基のピログルタミン(puroGlu)への変換などが挙げられる[Beck et al, Analytical Chemistry, 85, 715-736(2013)]。
【0141】
本発明の抗体または該抗体断片は、Fc領域のアミノ酸改変を行っていてもよい。Fc領域のアミノ酸改変としては、例えば、抗体を安定化させるため、または血中半減期を制御するためのアミノ酸改変などが挙げられる。Fc領域のアミノ酸改変としては、具体的には例えば、国際公開第2006/033386号、国際公開第2006/075668号、国際公開第2011/122011号、および国際公開第2009/125825号などが挙げられる。
【0142】
本発明の抗体または該抗体断片は、抗体または該抗体断片が修飾された融合抗体または該融合抗体断片も包含する。抗体を修飾する方法は特に限定されず、所望のアミノ酸残基および糖鎖を修飾できるものであればいずれの方法も用いることができる。
【0143】
例えば、化学反応を利用した化学修飾[抗体工学入門、地人書館(1994);Kolb et al., Angew Chem Int Ed Engl. 40. 2004-21, 2001]や、遺伝子組換え技術を利用し、組換えタンパク質発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入して発現させる遺伝子工学的手法での修飾などが挙げられる。
【0144】
本発明において、抗体または該抗体断片を修飾する分子としては、例えば、親水性高分子、両親媒性高分子、および機能性分子などが挙げられる。前記親水性高分子、両親媒性高分子としては、例えば、ポリオキシアルキレン、ポリオールまたは多糖を含む分子などが挙げられる。
【0145】
ポリオキシアルキレンとしては、例えば、直鎖または分岐鎖からなるポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下PEGと記載する)、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンエチレングリコールなどが挙げられる。
【0146】
ポリオールまたは多糖を含む分子としては、例えば、直鎖または分岐鎖からなるポリグリセロールからなるアミロース、デキストラン、プルランまたはグリコーゲン等のホモまたはヘテロ多糖類等が挙げられる。
【0147】
親水性高分子または両親媒性高分子を含む分子の分子量は特に限定されないが、100Da以上であることが好ましく、例えば、100Da~100kDaであることが好ましい。
【0148】
機能性分子としては、例えば、抗原結合分子およびその断片、薬物、生理活性ペプチド、生理活性タンパク質、核酸、放射性標識化合物、糖鎖、脂質または蛍光化合物などが挙げられる。抗原結合分子などの機能性分子で修飾された結果、二重特異性を有する分子は、バイスペシフィック抗体である。
【0149】
抗原結合分子としては、例えば、抗体、受容体、およびリガンドなどが挙げられる。
【0150】
抗原結合分子の断片としては、前記抗原結合分子の断片であって、抗原結合活性を有するものであれば、いかなるものでもよい。
【0151】
薬物としては、例えば、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗剤、抗ウイルス剤、抗生物質、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン重合阻害剤、ホルモン療法剤、ホルモン拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白阻害剤、白金錯体誘導体、M期阻害剤若しくはキナーゼ阻害剤などの抗癌剤[臨床腫瘍学、癌と化学療法社(1996)]、ハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、またはマレイン酸クロルフェニラミン若しくはクレマシチンのような抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤[炎症と抗炎症療法、医歯薬出版株式会社(1982)]などが挙げられる。
【0152】
抗癌剤としては、例えば、メルタンシン、エムタンシン、アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、5-フルオロウラシル、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、ペプロマイシン、エストラムスチン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、メスナ、イリノテカン(CPT-11)、ノギテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、ヒドロキシカルバミド、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、ゴセレリン、リュープロレニン、フルタミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロプラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、エルロチニブ、FMS-like tyrosine kinase 3(Flt3)阻害剤、vascular endothelial growth factor receptor(VEGFR)阻害剤、fibroblast growth factor receptor(FGFR)阻害剤、タルセバなどのepidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤、ラディシコール、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、ラパマイシン、アムサクリン、オール-トランスレチノイン酸、サリドマイド、レナリドマイド、アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、金チオマレート、D-ペニシラミン、ブシラミン、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ラパマイシン、ヒドロコルチゾン、ベキサロテン(ターグレチン)、タモキシフェン、デキサメタゾン、プロゲスチン類、エストロゲン類、アナストロゾール(アリミデックス)、ロイプリン、アスピリン、インドメタシン、セレコキシブ、アザチオプリン、ペニシラミン、金チオマレート、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマシチン、トレチノイン、ベキサロテン、砒素、ボルテゾミブ、アロプリノール、カリケアマイシン、イブリツモマブチウキセタン、タルグレチン、オゾガミン、クラリスロマシン、ロイコボリン、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、スラミン、メトトレキセート、メイタンシノイドまたはその誘導体などが挙げられる。
【0153】
薬物と抗体または該抗体断片とを結合させる方法としては、上述の方法の他、グルタールアルデヒドを介して薬物と抗体のアミノ基間を結合させる方法、または水溶性カルボジイミドを介して薬物のアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などが挙げられる。
【0154】
生理活性ペプチドまたは生理活性タンパク質としては、例えば、インターフェロン(以下、IFNと記す)-α、IFN-β、IFN-γ、インターロイキン(以下、ILと記す)-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)など、NK細胞、マクロファージ、または好中球などの免疫担当細胞を活性化するサイトカイン若しくは増殖因子、ヒドラーゼ、リアーゼおよびイソメラーゼ等のタンパク質分解酵素、酸性スフィンゴミエリナーゼ等の酵素、リシン、ジフテリアトキシン、またはONTAKなどの細菌毒素および植物毒素等の毒素、細胞膜傷害活性を有する抗菌ペプチド、細胞膜結合性または細胞膜透過性を有するペプチド、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0155】
核酸としては、ヌクレオチドまたは該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であればいかなる分子であってもよく、例えば、siRNA、microRNA、アンチセンスRNA、DNAアプタマーなどが挙げられる。
【0156】
放射性標識化合物としては、診断用または治療用用途に使用される核種であればよく、例えば、3H、14C、32P、33P、35S、51Cr、57CO、18F、153Gd、159Gd、64Cu、68Ge、166Ho、115In、113In、112In、111In、131I、125I、123I、121I、140La、177Lu、54Mn、99Mo、103Pd、142Pr、149Pm、186Re、188Re、211At、105Rh、97Ru、153Sm、47Sc、75Se、85Sr、99Tc、201Ti、113Sn、117Sn、133Xe、169Yb、175Yb、90Yおよび65Zn等、または上述の核種を含む化合物が挙げられる。
【0157】
放射性標識化合物は、クロラミンT法などによって抗体に直接結合させることができる。また、放射性標識化合物をキレートする物質を抗体に結合させてもよい。キレート剤としては、例えば、DOTA、PA-DOTA、TRITAおよびDTPA等が挙げられ、キレート剤によって修飾された抗体、キレート剤を介して放射性標識化合物が標識された修飾化抗体も本発明の抗体に含まれる。
【0158】
糖鎖としては、例えば、フコース、マンノース、グルコース、アロース、アルトース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、リポアラビノマンナン、ルイスX型三糖およびシアリルルイスX型四糖等を含む、単糖、二糖類またはオリゴ糖等が挙げられる。また、イムノアジュバントとして知られる糖鎖を含む天然物でもよく、β(1→3)グルカン(レンチナン、シゾフィラン)、またはαガラクトシルセラミド(KRN7000)などが挙げられる。
【0159】
脂質としては、例えば、脂肪酸と各種アルコールとのエステルおよびその類似体である単純脂質(中性脂質)が挙げられる。例えば、油脂(例えば、トリアシルグリセロール)、ろう(例えば、高級アルコールの脂肪酸エステル)、ステロールエステル、コレステロールエステル、ビタミンの脂肪酸エステル等、脂肪酸とアルコールのほかにリン酸、糖、硫酸、アミンなど極性基をもつ複合脂質、例えば、リン脂質(例えば、グリセロリン脂質およびスフィンゴリン脂質等)および糖脂質(例えば、グリセロ糖脂質およびスフィンゴ糖脂質等)、単純脂質および複合脂質の加水分解によって生成する化合物のうち脂溶性のものをさす誘導脂質、例えば、脂肪酸、高級アルコール、脂溶性ビタミン、ステロイド、炭化水素等が挙げられる。
【0160】
蛍光化合物としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などのフルオレセイン系列、ローダミン系列、Cy3、Cy5、エオシン系列、アレクサフルオロ系列およびNBD系列等の蛍光色素、アクリジニウムエステル、またはロフィンなどの発光物質ならびに緑色蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性タンパク質等が挙げられる。
【0161】
本発明の抗体または該抗体断片は、上述の親水性高分子または両親媒性高分子、および機能性分子は直接または適当なリンカーを介して結合させることができる。リンカーとしては、例えば、エステル、ジスルフィド、ヒドラゾンおよびジペプチド等が挙げられる。
【0162】
本発明の抗体または該抗体断片を遺伝子工学的な手法によって修飾し、融合抗体または融合抗体断片を作製する場合には、抗体をコードするcDNAにタンパク質をコードするcDNAを連結させ、融合抗体または融合抗体断片をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入して融合抗体または融合抗体断片を発現させることにより、融合抗体または融合抗体断片を作製することができる。
【0163】
本発明の組成物は、本発明の抗体または該抗体断片を含有する組成物であればいかなるものでもよい。かかる組成物は、抗体または該抗体断片の他に、適当なキャリア、安定化剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0164】
本発明の組成物としては、例えば、本発明の抗体または該抗体断片を含む検出用または測定用の組成物などが挙げられる。本発明の組成物としては、例えば、本発明の抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬組成物(治療剤)などが挙げられ、薬理学的に許容しうる担体とともに所望の剤型に製剤化される。
【0165】
本発明において、検出用または測定用の組成物とは、本発明の抗体または該抗体断片を含んでおり、本発明の抗体または該抗体断片が特異的に結合する抗原を検出または測定できるものであればいかなる組成物でもよい。本発明の抗体または該抗体断片が特異的に結合する抗原としては、MOGまたは、MOGおよび脳に存在する抗原などが挙げられる。
【0166】
本発明の抗体または該抗体断片は動物に投与すると脳内のMOGに結合し、脳に滞留する性質を有する。したがって、当該抗体または該抗体断片を含む検出用または測定用の組成物を用いることにより、当該抗体の脳内における維持、または脳内における抗体濃度の向上が可能となり、長期間にわたってMOG、またはMOGおよび脳に存在する抗原を検出または測定すること、および/またはMOGまたは、MOGおよび脳に存在する抗原を高感度に検出または測定することもできる。
【0167】
例えば、検出用または測定用の組成物がMOGと脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体を含む組成物であるときには、当該バイスペシフィック抗体が結合するMOGおよび脳に存在する抗原を長期間検出または測定すること、並びに/またはMOGおよび脳に存在する抗原を高感度に検出または測定することができる。
【0168】
また、例えば、検出用または測定用の組成物が、放射性標識化合物または蛍光色素で標識されたMOGに結合する融合抗体または融合抗体断片を含む組成物であるときには、MOGを長期間検出または測定すること、および/またはMOGを高感度に検出または測定することができる。
【0169】
本発明の抗体を含有する医薬組成物(治療剤)は、本発明の抗体または該抗体断片が特異的に結合する抗原が発現している疾患であればいずれの疾患の治療剤でもよいが、脳疾患の治療剤が好ましい。
【0170】
脳疾患としては、例えば、アルツハイマー病、前駆期アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脳腫瘍、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、黒質線状体変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳変性症、脳血管障害、てんかん、片頭痛、多動性障害、クロイツフェルトヤコブ病、大脳皮質基底核変性症、ライソゾーム病、うつ病、およびジストニアなどが挙げられる。
【0171】
本発明の抗体は、動物に投与すると脳内のMOGに結合し、脳に滞留する性質を有する。したがって、当該抗体または該抗体断片を含有する治療剤を用いることで、脳内における該抗体または該抗体断片の長期間にわたる維持、脳内における抗体濃度の向上が可能となり、上記の疾患に対して治療効果を示すことができる。
【0172】
例えば、治療剤がMOGと脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体を含む治療剤であるときには、当該バイスペシフィック抗体が結合する、脳に存在する抗原に関連する脳疾患に対して治療効果を示すことができる。
【0173】
また、例えば、治療剤が低分子薬剤で修飾されたMOGに結合する融合抗体または融合抗体断片であるときには、当該低分子薬剤が標的とする脳疾患に対して治療効果を示すことができる。このとき、該低分子薬剤を単体で用いるときよりも、本発明の治療剤を用いたときのほうが、治療効果が高いことが好ましい。
【0174】
本発明の抗体または該抗体断片を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体または該抗体断片のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
【0175】
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、皮内、筋肉内、脳室内、脊髄腔内、鼻腔内、腹腔内若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられ、特に好ましくは静脈内または脳室内投与などが挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、またはテープ剤などが挙げられる。
【0176】
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、および体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg~20mg/kgである。
【0177】
また、本発明は、本発明の抗体または該抗体断片を用いて抗体を脳内に滞留させる方法、抗体の脳滞留性を向上させる方法、および脳内の抗体濃度(又は抗体量)を高める方法をも包含する。
【0178】
また、本発明は、MOGに結合するペプチド、該ペプチドをコードする塩基配列を含む核酸、該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該形質転換細胞を培養し、培養液から前記ペプチドを採取することを含む、前記ペプチドの製造方法、前記ペプチドを含む組成物、または前記ペプチドまたは前記組成物を用いて、脳に存在する抗原を検出または測定する方法、脳疾患を診断若しくは治療する方法、ペプチドの脳滞留性を向上させる方法、または脳内のペプチド量を増加させる方法に関する。
【0179】
本発明のペプチドは、ペプチドが修飾された融合ペプチドを含む。
【0180】
MOGに結合するペプチドに関する各種用語の定義等は、特に記載がない限り、上述したMOGに結合する抗体について記載した用語の定義等と同じものを用いる。
【0181】
以下に、本発明の抗体または該抗体断片の製造方法、疾患の治療方法、および疾患の診断方法などについて、具体的に説明する。
【0182】
1.抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原となるMOGまたはMOG発現細胞は、MOG全長またはその部分長をコードするcDNAを含む発現ベクターを、大腸菌、酵母、昆虫細胞または動物細胞などに導入することで得ることができる。また、MOGは、MOGを多量に発現している各種動物細胞株、動物細胞および動物組織などからMOGを精製することによっても得ることができる。
【0183】
また、これら動物細胞株、動物細胞および動物組織などをそのまま抗原として使用することもできる。さらに、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によりMOGの部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。
【0184】
MOGまたはMOGの部分配列を有する合成ペプチドには、C末端またはN末端にFLAGまたはHisなどの公知のタグが付加されていてもよい。
【0185】
本発明で用いられるMOGは、Molecular Cloning,A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)やCurrent Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)などに記載された方法などを用い、例えば、以下の方法により、MOGをコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
【0186】
まず、MOGをコードする部分を含む完全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。上記完全長cDNAの代わりに、完全長cDNAをもとにして調製された、ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を用いてもよい。次に、得られた該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。
【0187】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞における自律複製または染色体中への組込みが可能で、ポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置に、適当なプロモーターを含有しているものであればいずれも用いることができる。宿主細胞としては、大腸菌などのエシェリヒア属などに属する微生物、酵母、昆虫細胞または動物細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
【0188】
大腸菌などの原核生物を宿主細胞として用いる場合、発現ベクターは、原核生物中で自律複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、ヒトMOGをコードする部分を含むDNA、および転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。また、該発現ベクターには、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。さらに、該組換えベクターには、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
【0189】
該発現ベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ配列(SD配列ともいう)と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6~18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
【0190】
また、MOGをコードするDNAの塩基配列としては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより目的とするMOGの生産率を向上させることができる。
【0191】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(以上、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、pKK233―2(ファルマシア社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-8(キアゲン社製)、pKYP10(日本国特開昭58-110600号公報)、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry, 48, 669 (1984)]、pLSA1[Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescript II SK(-)(ストラタジーン社製)、pTrs30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、pTrs32[大腸菌JM109/pTrS32(FERM BP-5408)より調製]、pGHA2[大腸菌IGHA2(FERM BP-400)より調製、日本国特開昭60-221091号公報]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP-6798)より調製、日本国特開昭60-221091号公報]、pTerm2(米国特許第4,686,191号明細書、米国特許第4,939,094号明細書、米国特許第160,735号明細書)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J. Bacteriol., 172, 2392 (1990)]、pGEX(ファルマシア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)またはpME18SFL3などが挙げられる。
【0192】
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターまたはT7プロモーターなどの、大腸菌またはファージなどに由来するプロモーターが挙げられる。また、例えば、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーターまたはlet Iプロモーターなどの人為的に設計改変されたプロモーターなどが挙げられる。
【0193】
宿主細胞としては、例えば、大腸菌XL1-Blue、大腸菌XL2-Blue、大腸菌DH1、大腸菌MC1000、大腸菌KY3276、大腸菌W1485、大腸菌JM109、大腸菌HB101、大腸菌No.49、大腸菌W3110、大腸菌NY49または大腸菌DH5αなどが挙げられる。
【0194】
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、使用する宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)、Molecular & General Genetics, 168, 111 (1979)]が挙げられる。
【0195】
動物細胞を宿主として用いる場合、発現ベクターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pcDNAI、pCDM8(フナコシ社製)、pAGE107[日本国特開平3-22979号公報;Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAS3-3(日本国特開平2-227075号公報)、pCDM8[Nature, 329, 840 (1987)]、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J. Biochemistry, 101, 1307 (1987)]、pAGE210、pME18SFL3、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、N5KG1val(米国特許第6,001,358号明細書)、INPEP4(Biogen-IDEC社製)、pCI(Promega社製)およびトランスポゾンベクター(国際公開第2010/143698号)などが挙げられる。
【0196】
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のimmediate early(IE)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーターまたはモロニーマウス白血病ウイルスのプロモーター若しくはエンハンサーが挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0197】
宿主細胞としては、例えば、ヒト白血病細胞Namalwa細胞、サル細胞COS細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHO細胞[Journal of Experimental Medicine, 108, 945 (1958); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 60 , 1275 (1968); Genetics, 55, 513 (1968); Chromosoma, 41, 129 (1973); Methods in Cell Science, 18, 115 (1996); Radiation Research, 148, 260 (1997); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216 (1980); Proc. Natl. Acad. Sci., 60, 1275 (1968); Cell, 6, 121 (1975); Molecular Cell Genetics, Appendix I, II (pp. 883-900)];ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞(CHO/DG44細胞)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216(1980)]、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DUkXB11(ATCC CCL-9096)、Pro-5(ATCC CCL-1781)、CHO-S(Life Technologies、Cat#11619)、Pro-3、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NS0、マウスミエローマ細胞SP2/0-Ag14、シリアンハムスター細胞BHKまたはHBT5637(日本国特開昭63-000299号公報)などが挙げられる。
【0198】
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2-227075号公報)またはリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]などが挙げられる。
【0199】
以上のようにして得られるMOGをコードするDNAを組み込んだ発現ベクターを保有する微生物または動物細胞などの由来の形質転換体を培地中で培養し、培養液中に該MOGを生成蓄積させ、該培養液から採取することにより、MOGを製造することができる。該形質転換体を培地中で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
【0200】
真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖または糖鎖が付加されたMOGを得ることができる。
【0201】
誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドなどを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはインドールアクリル酸などを培地に添加してもよい。
【0202】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)]、EagleのMEM培地[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology, 8, 396 (1959)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)]若しくはIscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)培地またはこれら培地に牛胎児血清(FBS)などを添加した培地などが挙げられる。培養は、通常pH6~8、30~40℃、5%CO2存在下などの条件下で1~7日間行う。また、培養中に必要に応じて、カナマイシンまたはペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
【0203】
MOGをコードする遺伝子の発現方法としては、例えば、直接発現以外に、分泌生産または融合タンパク質発現などの方法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]が挙げられる。
【0204】
MOGの生産方法としては、例えば、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、または宿主細胞外膜上に生産させる方法が挙げられ、使用する宿主細胞または生産させるMOGの構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
【0205】
MOGが宿主細胞内または宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J. Biol. Chem., 264, 17619 (1989)]、ロウらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86, 8227 (1989)、Genes Develop., 4, 1288 (1990)]、日本国特開平05-336963号公報または国際公開第94/23021号などに記載の方法を用いることにより、MOGを宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。また、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを用いた遺伝子増幅系(日本国特開平2-227075号公報)を利用してMOGの生産量を上昇させることもできる。
【0206】
得られたMOGは、例えば、以下のようにして単離、精製することができる。MOGが細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザーまたはダイノミルなどを用いて細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社製)などのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)などのレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロースなどのレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、または等電点電気泳動などの電気泳動法などの手法を単独または組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0207】
MOGが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、上記と同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該MOGの不溶体を回収する。回収した該MOGの不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該MOGを正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法によりポリペプチドの精製標品を得ることができる。
【0208】
MOGまたはその糖修飾体などの誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において該MOGまたはその糖修飾体などの誘導体を回収することができる。該培養物を上記と同様に遠心分離などの手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0209】
また、本発明において用いられるMOGは、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンストケムテック社製、パーキン・エルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジインストルメント社製、シンセセル-ベガ社製、パーセプチブ社製または島津製作所社製などのペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0210】
(2)動物の免疫と融合用抗体産生細胞の調製
3~20週令のマウス、ラット、ラビットまたはハムスターなどの動物に、(1)で得られる抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。また被免疫動物としてラマ、アルパカ、ラクダなどの動物を用いることもできる。
【0211】
免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に、例えば、フロインドの完全アジュバント、または水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどの適当なアジュバントとともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)またはKLH(Keyhole Limpet hemocyanin)などのキャリアタンパク質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
【0212】
マウスやラットに免疫する際、抗原の投与は、1回目の投与の後、1~2週間おきに5~10回行う。各投与後3~7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を酵素免疫測定法[Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]などを用いて測定する。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示した動物を融合用抗体産生細胞の供給源とする。
【0213】
抗原の最終投与後3~7日目に、免疫した動物より脾臓などの抗体産生細胞を含む組織を摘出し、抗体産生細胞を採取する。脾臓細胞を用いる場合には、脾臓を細断、ほぐした後、遠心分離し、さらに赤血球を除去して融合用抗体産生細胞を取得する。
【0214】
その他の被免疫動物についても同様の方法で免疫を行い、抗体産生細胞を取得することができる。免疫間隔や最後の免疫から組織の摘出までの期間は、被免疫動物の動物種に合わせて適切な条件を選択することができる。
【0215】
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を用い、例えば、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1(P3-U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology, 18, 1 (1978)]、P3-NS1/1-Ag41(NS-1)[European J. Immunology, 6, 511 (1976)]、SP2/0-Ag14(SP-2)[Nature, 276, 269 (1978)]、P3-X63-Ag8653(653)[J. Immunology, 123, 1548 (1979)]またはP3-X63-Ag8(X63)[Nature, 256, 495 (1975)]などが用いられる。
【0216】
該骨髄腫細胞は、正常培地[グルタミン、2-メルカプトエタノール、ジェンタマイシン、FBS、および8-アザグアニンを加えたRPMI1640培地]で継代し、細胞融合の3~4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
【0217】
(4)細胞融合とモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
(2)で得られる融合用抗体産生細胞と(3)で得られる骨髄腫細胞をMinimum Essential Medium(MEM)培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、融合用抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5~10:1になるよう混合し、遠心分離した後、上清を除く。
【0218】
沈澱した細胞群をよくほぐした後、ポリエチレングリコール-1000(PEG-1000)、MEM培地およびジメチルスルホキシドの混液を37℃で、攪拌しながら加える。さらに1~2分間毎にMEM培地1~2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。
【0219】
遠心分離後、上清を除く。沈澱した細胞群をゆるやかにほぐした後、HAT培地[ヒポキサンチン、チミジン、およびアミノプテリンを加えた正常培地]中にゆるやかに細胞を懸濁する。この懸濁液を5%CO2インキュベーター中、37℃にて7~14日間培養する。
【0220】
培養後、培養上清の一部を抜き取り、後述のバインディングアッセイなどのハイブリドーマの選択方法により、MOGに反応し、MOGではない抗原に反応しない細胞群を選択する。次に、限界希釈法によりクローニングを行い、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
【0221】
(5)精製モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8~10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを腹腔内に注射する。10~21日でハイブリドーマは腹水癌化する。
【0222】
このマウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、40~50%硫酸アンモニウムで塩析し、カプリル酸沈殿法、DEAE-セファロースカラム、プロテインA-カラムまたはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGまたはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
【0223】
また、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、10%FBSを添加したRPMI1640培地などで培養した後、遠心分離により上清を除き、Hybridoma SFM培地に懸濁し、3~7日間培養する。
【0224】
得られた細胞懸濁液を遠心分離し、得られた上清よりプロテインA-カラムまたはプロテインG-カラムによる精製を行ない、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得ることもできる。なお、Hybridoma SFM培地には5%ダイゴGF21を添加することもできる。
【0225】
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。タンパク質量の定量は、ローリー法または280nmでの吸光度より算出する。
【0226】
(6)抗体の選択
抗体の選択は以下に示すように、フローサイトメトリーを用いて、MOG発現細胞への抗体の結合性を測定することなどにより行う。MOG発現細胞は、細胞表面上にMOGが発現していればいずれの細胞でもよく、例えば、動物細胞、動物細胞株および(1)で得られるMOG強制発現細胞株などが挙げられる。
【0227】
MOG発現細胞を96ウェルプレートなどのプレートに分注した後、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清または精製抗体などの被験物質を分注し、反応させる。反応後の細胞を1~10%bovine serum albumin(BSA)を含むPBS(以下、BSA-PBSと記す)などで、よく洗浄した後、第2抗体として蛍光試薬などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。BSA-PBSなどでよく洗浄した後、フローサイトメーターを用いて標識化抗体の蛍光量を測定することにより、MOG発現細胞に対して特異的に反応する抗体を選択する。
【0228】
また、抗体の選択は、以下に記載するELISAまたは表面プラズモン共鳴を用いて、モノクローナル抗体のMOG発現細胞またはMOGタンパク質などへの結合性を測定することにより行うこともできる。MOGタンパク質は、MOGの一部のドメインからなるタンパク質であっても、GSTなどのタグが付加しているタンパク質であってもよい。
【0229】
ELISAは、MOG発現細胞またはMOGタンパク質を96ウェルプレートなどのプレートに分注した後、BSA-PBSでブロッキングし、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清または精製抗体などの被験物質を分注し、反応させる。次に、PBSなどでよく洗浄した後、第2抗体として蛍光試薬などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。
【0230】
その後PBSなどでよく洗浄した後、発色試薬を添加する。最後に反応停止液で発色反応を止めて、マイクロプレートリーダーで各ウェルにおける吸光度を測定することにより、MOG発現細胞またはMOGタンパク質に対して特異的に反応する抗体を選択する。
【0231】
表面プラズモン共鳴は、公知のプロトコールを用いて、適切なセンサーチップに抗体を固相化し、MOGタンパク質をアナライトとすることでMOGに結合する抗体のアフィニティーを測定することができる。
【0232】
得られた抗体のアフィニティーより、MOGタンパク質に対して所望のアフィニティーを有する抗体を選択することができる。また、センサーチップにMOGタンパク質を固相化し、抗体をアナライトとして、MOGに結合する抗体のアフィニティーを測定することもできる。
【0233】
また、本発明の抗体と競合してMOGに結合する抗体は、上述のフローサイトメトリーやELISAを用いた測定系に、被験抗体を添加して反応させることで取得できる。すなわち、被験抗体を加えた時に本発明の抗体とMOGとの結合が阻害される抗体をスクリーニングすることにより、MOGのアミノ酸配列、またはその立体構造への結合について、本発明の抗体と競合する抗体を取得することができる。
【0234】
また、本発明の抗体が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体は、上述のスクリーニング方法で取得された抗体のエピトープを公知の方法で同定し、同定したエピトープを含む合成ペプチド、またはエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチド等を作製し、免疫することで取得することができる。
【0235】
更に、本発明の抗体が結合するエピトープと、同じエピトープに結合する抗体は、上述のスクリーニング方法で取得された抗体のエピトープを同定し、同定したエピトープの部分的な合成ペプチド、またはエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチド等を作製し、免疫することで、取得することができる。
【0236】
(7)ファージディスプレイ法による抗体の取得
(7-1)抗体ファージライブラリの作製方法
本発明において、抗体ファージライブラリは免疫ライブラリ、ナイーブライブラリおよび合成ライブラリを用いることができる。各ライブラリの作製方法を以下に記載する。
【0237】
免疫ライブラリは、上記(1)と同様の方法で免疫した動物、または患者由来のリンパ球を、ナイーブライブラリは正常な動物または健常人由来のリンパ球を採取し、RNAを抽出して逆転写反応反応によりcDNAを合成する。
【0238】
このcDNAを鋳型にしてPCRで増幅した抗体遺伝子断片をファージミドベクターに挿入し、該ファージミドベクターで大腸菌を形質転換する。得られた形質転換体にヘルパーファージを感染させると、抗体遺伝子がライブラリ化された抗体ファージライブラリを得ることができる。
【0239】
また、合成ライブラリはゲノムDNAにおけるV遺伝子や再構築された機能的なV遺伝子のCDRを、適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドで置換し、当該V遺伝子を挿入したファージミドベクターで大腸菌を形質転換する。得られた形質転換体にヘルパーファージを感染させると、抗体ファージライブラリを得ることができる。
【0240】
リンパ球由来のcDNA、抗体ファージライブラリは市販のものを用いることもできる。
【0241】
ファージミドベクターはpCANTAB 5E(Amersham Pharmacia社)、pUC118/pUC119ベクター(TaKaRa社)、pBlueScript II Phagemid Vector(Agilent Technologies社)、およびpKSTV-02(Miyazaki et al, J. Biochem. 2015;1)などを用いることができる。
【0242】
ヘルパーファージはM13KO7ヘルパーファージ(Invitrogen社)、VCSM13 Interference Resistant Helper Phage(Agilent Technologies社)、R408 Interference Resistant Helper Phage(Agilent Technologies社)などを用いることができる。
【0243】
ファージディスプレイには、ファージベクターも用いることができる。繊維状ファージのg3pを提示分子とするペプチドファージライブラリ(New England Biolabs社製など)およびg7p、g8p、g9pを提示分子とする方法などがある。
【0244】
また、T7ファージを用いたファージディスプレイ用をいることもできる。T7ファージへのディスプレイシステムにはT7Selectベクター(Novagen社)などがある。
【0245】
(7-2)抗体ファージクローンの選択
(7-1)で作製した抗体ファージライブラリからの抗体ファージクローンの選択は、以下に示すELISA法を用いて行うことができる。
【0246】
イムノチューブにMOGを固相化し、ブロッキングバッファーでチューブをブロッキングする。チューブの各ウェルに上記(7-1)で作製した抗体ファージライブラリを加えて反応させる。次に、ウェルを洗浄し、蛍光標識された抗ファージ抗体を加えて反応させた後、再びウェルを洗浄して発色液を添加する。その後反応停止液で発色反応を止めて、マイクロプレートリーダーで各ウェルにおける吸光度を測定する。これにより、MOGに結合する抗体ファージクローンを選択する。
【0247】
2.遺伝子組換え抗体の作製
遺伝子組換え抗体の作製例として、以下にヒト型キメラ抗体およびヒト化抗体の作製方法を示す。遺伝子組換えのマウス抗体、ラット抗体、ラビット抗体、ハムスター抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、アルパカ抗体、およびヒト抗体、各種キメラ抗体、ならびに重鎖抗体なども同様の方法で作製することができる。
【0248】
(1)遺伝子組換え抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAが組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAをそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
【0249】
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCHおよびCLを用いることができる。例えば、ヒト抗体のγ1サブクラスのCHおよびκクラスのCLなどを用いる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAには、cDNAを用いるが、エキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることもできる。
【0250】
動物細胞用発現ベクターには、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnol., 3, 133 (1990)]、pAGE103[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pHSG274[Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 1527 (1981)]、pSG1bd2-4[Cytotechnol., 4, 173 (1990)]またはpSE1UK1Sed1-3[Cytotechnol., 13, 79 (1993)]などを用いる。
【0251】
動物細胞用発現ベクターのうちプロモーターとエンハンサーには、SV40の初期プロモーター[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスLTR[Biochem. Biophys. Res. Commun., 149, 960 (1987)]または免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell, 41, 479 (1985)]とエンハンサー[Cell, 33, 717 (1983)]などが挙げられる。
【0252】
遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、遺伝子組換え抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、抗体H鎖およびL鎖が同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)の遺伝子組換え抗体発現用ベクター[J.Immunol. Methods, 167, 271(1994)]を用いるが、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプを用いることもできる。タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、pEE18[Hybridoma, 17, 559 (1998)]などを用いる。
【0253】
(2)ヒト以外の動物由来の抗体のV領域をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
非ヒト抗体のVHおよびVLをコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析は以下のようにして行うことができる。
【0254】
(2-1)ハイブリドーマ法で抗体を取得した場合
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージまたはプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリを作製する。
【0255】
前記ライブラリより、非ヒト抗体のC領域部分またはV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VH若しくはVLをコードするcDNAを有する組換えファージまたは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージまたは組換えプラスミド上の目的とする非ヒト抗体のVHまたはVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVHまたはVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定する。
【0256】
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製するヒト以外の動物には、マウス、ラット、ハムスター、ラビット、ラマ、ラクダ、またはアルパカなどを用いるが、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなる動物も用いることができる。
【0257】
ハイブリドーマ細胞からの全RNAの調製には、チオシアン酸グアニジン-トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymol., 154, 3 (1987)]、またはRNA easy kit(キアゲン社製)などのキットなどを用いる。
【0258】
全RNAからのmRNAの調製には、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]、またはOligo-dT30<Super>mRNA Purification(登録商標)Kit(タカラバイオ社製)などのキットなどを用いる。また、Fast Track mRNA Isolation(登録商標)Kit(インビトロジェン社製)、またはQuickPrep mRNA Purification(登録商標)Kit(ファルマシア社製)などのキットを用いてハイブリドーマ細胞からmRNAを調製することもできる。
【0259】
cDNAの合成およびcDNAライブラリの作製には、公知の方法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1, John Wiley & Sons (1987-1997)]、またはSuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(インビトロジェン社製)若しくはZAP-cDNA Synthesis(登録商標)Kit(ストラタジーン社製)などのキットなどを用いる。
【0260】
cDNAライブラリの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターには、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express[Strategies, 5, 58 (1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research, 17, 9494 (1989)]、λZAPII(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning:A Practical Approach, I, 49 (1985)]、Lambda BlueMid(クローンテック社製)、λExCell、pT7T3-18U(ファルマシア社製)、pCD2[Mol. Cell. Biol., 3, 280 (1983)]またはpUC18[Gene, 33, 103 (1985)]などを用いる。
【0261】
ファージまたはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリを導入する大腸菌には、該cDNAライブラリを導入、発現および維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1-Blue MRF’[Strategies, 5, 81 (1992)]、C600[Genetics, 39, 440 (1954)]、Y1088、Y1090[Science, 222, 778 (1983)]、NM522[J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)]、K802[J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)]またはJM105[Gene, 38, 275 (1985)]などを用いる。
【0262】
cDNAライブラリからの非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAクローンの選択には、アイソトープ若しくは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法、またはプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]などを用いる。
【0263】
また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNAまたはcDNAライブラリを鋳型として、Polymerase Chain Reaction法[以下、PCR法と表記する、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition , Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1, John Wiley & Sons (1987-1997)]を行うことよりVHまたはVLをコードするcDNAを調製することもできる。
【0264】
選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法などにより該cDNAの塩基配列を決定する。塩基配列解析方法には、例えば、ジデオキシ法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)]などの反応を行った後、ABI PRISM3700(PEバイオシステムズ社製)またはA.L.F.DNAシークエンサー(ファルマシア社製)などの塩基配列自動分析装置などを用いる。
【0265】
(2-2)ファージディスプレイ法により抗体を取得した場合
選択したファージクローンのプラスミドベクターから、ベクター部分またはV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VHまたはVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVHまたはVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定することができる。
【0266】
ハイブリドーマ法またはファージディスプレイ法のいずれの手法においても、決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかをそれぞれ確認する。
【0267】
分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、更にはそれらが属するサブグループを知ることができる。
【0268】
また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することによって見出すことができる。
【0269】
また、得られたVHおよびVLの完全なアミノ酸配列を用いて、例えば、SWISS-PROTまたはPIR-Proteinなどの任意のデータベースに対してBLAST法[J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)]などの相同性検索を行い、VHおよびVLの完全なアミノ酸配列が新規なものかを確認できる。
【0270】
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、それぞれ非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングすることで、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
【0271】
非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAの3’末端側と、ヒト抗体のCHまたはCLの5’末端側とを連結するために、連結部分の塩基配列が適切なアミノ酸をコードし、かつ適当な制限酵素認識配列になるように設計したVHおよびVLのcDNAを作製する。
【0272】
作製されたVHおよびVLのcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現する様にそれぞれクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築する。
【0273】
また、非ヒト抗体VHまたはVLをコードするcDNAを、適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAを用いてPCR法によりそれぞれ増幅し、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターにクローニングすることもできる。
【0274】
(4)ヒト化抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。
【0275】
非ヒト抗体のVHまたはVLのCDRのアミノ酸配列を移植するための、ヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列をそれぞれ選択する。選択するFRのアミノ酸配列には、ヒト抗体由来のものであれば、いずれのものでも用いることができる。
【0276】
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]などを用いる。抗体の結合活性の低下を抑えるため、元の抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)のFRのアミノ酸配列を選択する。
【0277】
次に、選択したヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列に、もとの抗体のCDRのアミノ酸配列をそれぞれ移植し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をそれぞれ設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列をそれぞれ設計する。
【0278】
設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR反応を行う。この場合、PCR反応での反応効率および合成可能なDNAの長さから、好ましくはVH、VL各々について各6本の合成DNAを設計する。
【0279】
さらに、両端に位置する合成DNAの5’または3’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターへ容易にクローニングすることができる。
【0280】
PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにそれぞれクローニングし、(2)に記載の方法と同様の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
【0281】
または、設計したDNA配列に基づき、VH全長およびVL全長を各々1本の長鎖DNAとして合成したものを、上記PCR増幅産物に代えて用いることもできる。さらに、合成長鎖DNAの両端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターへ容易にクローニングすることができる。
【0282】
(5)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、非ヒト抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元の非ヒト抗体に比べて低下する[BIO/TECHNOLOGY, 9, 266 (1991)]。
【0283】
ヒト化抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、および抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらのアミノ酸残基を元の非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換することにより、低下した抗原結合活性を上昇させることができる。
【0284】
抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を同定するために、X線結晶解析[J. Mol. Biol., 112, 535 (1977)]またはコンピューターモデリング[Protein Engineering, 7, 1501 (1994)]などを用いることにより、抗体の立体構造の構築および解析を行うことができる。また、それぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討することを繰り返し、試行錯誤することで必要な抗原結合活性を有するヒト化抗体を取得できる。
【0285】
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸残基は、改変用合成DNAを用いて(4)に記載のPCR反応を行うことにより、改変させることができる。PCR反応後の増幅産物について(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
【0286】
(6)ヒト化抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、構築した遺伝子組換え抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングし、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。
【0287】
例えば、(4)および(5)で得られるヒト化抗体のVHまたはVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’または3’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングする。
【0288】
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
(3)および(6)で得られる遺伝子組換え抗体発現ベクター、またはそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行い、作製した多種類のヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体の抗原結合活性を効率的に評価することができる。
【0289】
発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、例えば、COS-7細胞[American Type Culture Collection(ATCC)番号:CRL1651]を用いる[Methods in Nucleic Acids Res., CRC press, 283 (1991)]。
【0290】
COS-7細胞への発現ベクターの導入には、DEAE-デキストラン法[Methods in Nucleic Acids Res., CRC press (1991)]、またはリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]などを用いる。
【0291】
発現ベクターの導入後、培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性は酵素免疫抗体法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを用いて測定する。
【0292】
(8)遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の取得と遺伝子組換え抗体の調製
(3)および(6)で得られた遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株を得ることができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法[日本国特開平2-257891号公報、Cytotechnology, 3, 133 (1990)]などを用いる。
【0293】
遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DUKXB11(ATCC CCL-9096)、Pro-5(ATCC CCL-1781)、CHO-S(Life Technologies、Cat#11619)、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(ATCC番号:CRL1662、またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NS0、マウスミエローマ細胞SP2/0-Ag14(ATCC番号:CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC番号:CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(Dihydrofolate Reductase、以下、dhfrと表記する)が欠損したCHO細胞(CHO/DG44細胞)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216 (1980)]などを用いる。
【0294】
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素などのタンパク質、N-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素などのタンパク質若しくは細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与するタンパク質などの活性が低下または欠失した宿主細胞、例えば、α1,6-フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular genetics, 12, 55 (1986)]などを用いることもできる。
【0295】
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株は、G418硫酸塩(以下、G418と表記する)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択する(日本国特開平2-257891号公報)。
【0296】
動物細胞培養用培地には、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX-CELL301培地(ジェイアールエイチ社製)、IMDM培地(インビトロジェン社製)若しくはHybridoma-SFM培地(インビトロジェン社製)、またはこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いる。
【0297】
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性はELISA法などにより測定できる。また、dhfr遺伝子増幅系(日本国特開平2-257891号公報)などを利用して、形質転換株の産生する遺伝子組換え抗体の発現量を向上させることができる。
【0298】
遺伝子組換え抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA-カラムを用いて精製する[Monoclonal Antibodies - Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]。また、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過などのタンパク質の精製で用いられる方法を組み合わせることもできる。
【0299】
精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法[Nature, 227, 680 (1970)]、またはウェスタンブロッティング法[Monoclonal Antibodies - Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]など用いて測定することができる。
【0300】
(9)抗体断片の作製方法
本発明の抗体断片は、公知の方法に従い作製することができる。本発明の抗体断片は、上記(1)~(8)にて記載した方法に従い作製した抗体を、酵素などで切断することにより作製してもよいし、所望の抗体断片をコードする塩基配列を調製し、遺伝子工学的な手法で作製してもよい。
【0301】
(10)一価抗体の作製方法
本発明において、一価抗体は、国際公開第2014/054804号、国際公開第2011/090754号、国際公開第2007/048037号、および国際公開第2012/116927号などに記載する方法などで作製することができる。
【0302】
(11)バイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体の製造方法
本発明のバイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体は、上述した抗体の製造方法に準じて作製することができる。例えば、国際公開第2009/131239号、国際公開第2014/054804号、国際公開第01/077342号、米国特許出願公開第2007/0071675号明細書、国際公開第2007/024715、Wu et al.,[Nature Biotechnology,2007,25(11),p.1290-1297]、Labrijn et al.,[PNAS 2013, vol.110, no.13, p5145-5150]、Jong et al., [http://dx.doi.org/10.1371/journal.pbio.1002344]、Kontermann et al., [mAbs 2012, vol.4, issue2, p182-197]、Spiess et al., [Molecular Immunology 67 (2015) 95-106]、Ridgway et al., [Protein engineering, 1996 vol.9 no.7 pp617-621、国際公開第2009/080251、国際公開第2010/151792および国際公開第2014/033074などに記載される方法を用いて作製することができる。
【0303】
例えば脳に存在する抗原に結合するIgG抗体のC末端に、MOGに結合するscFvを融合させたバイスペシフィック抗体の発現ベクターは、以下に記載する方法で作製することができ、上述した抗体の発現方法および抗体の精製方法に準じて当該バイスペシフィック抗体を作製することができる。また、その他には、抗体のC末端に抗体断片を融合させたバイスペシフィック抗体も同様の方法で作製することができる。
【0304】
脳に存在する抗原に結合するIgG抗体の重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、PCR法によりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片を増幅する。次に、MOGに結合する抗体の塩基配列を鋳型として、当該抗体のVHおよびVL適切なリンカーで結合させたscFv領域の塩基配列を、PCR法などを用いて調製する。上記二つの領域をPCR法などで結合させ、得られた遺伝子断片をpCIベクターなどの適切なベクターに挿入する。
【0305】
また、脳に存在する抗原に結合するIgG抗体の軽鎖領域(VLおよびCL)の遺伝子断片、および当該抗体のVHの遺伝子断片を、それぞれ適切な鋳型を用いたPCR法により増幅し、上記ベクターの適切な位置に挿入する。
【0306】
また、本発明のバイスペシフィック抗体は、化学的手法により、IgG抗体に抗体断片を含む抗原結合部位を結合させて作製することもできる。
【0307】
3.抗体または該抗体断片の活性評価
本発明において、抗体または該抗体断片の活性評価は、以下のように行うことができる。
【0308】
(1)MOGに対する結合活性
本発明の抗体または該抗体断片のMOGに対する結合活性は、前述の1-(6)に記載のフローサイトメトリー、ELISA、および表面プラズモン共鳴検出などを用いて測定する。また、蛍光抗体法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373 (1993)]を用いて測定することもできる。
【0309】
本発明の抗体または該抗体断片がMOGに結合する一価抗体である場合にも、同様の方法で当該一価抗体のMOGへの結合活性を測定することができる。本発明の抗体または該抗体断片がMOGと脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体である場合にも、同様の方法で当該バイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体のMOGまたは脳に存在する抗原への結合活性を測定することができる。
【0310】
(2)脳滞留性の測定方法
本発明の抗体または該抗体断片の脳滞留性は以下に記載する方法で測定することができる。
【0311】
動物に抗体または該抗体断片を投与して数日経過後に脳組織を回収し、ホモジナイズして遠心分離後の上清中の抗体または該抗体断片の濃度を測定し、単位脳重量あたりの抗体または該抗体断片の量を算出する方法、または回収した脳組織を用いて公知の免疫学的手法により抗体または該抗体断片の存在を検出する方法などが挙げられる。また、薬理学的に許容される標識を施した抗体または該抗体断片を動物に投与し、in vivoイメージングシステムで経時的に当該抗体または該抗体断片の存在を検出する方法などが挙げられる。
【0312】
用いる動物は、本発明の抗体または該抗体断片の用途に応じた適切な動物を選択することができる。
【0313】
(3)ADCC、CDCの測定方法
ヒトMOG発現細胞またはMOGと脳に存在する抗原が発現している細胞に対する本発明の抗体または該抗体断片のCDC、またはADCCは公知の測定方法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373(1993); Current protocols in Immunology, Chapter7. Immunologic studies in humans, Editor, John E, Coligan et al., John Wiley & Sons,Inc.,(1993)]により測定することができる。
【0314】
4.抗体また抗体断片のエフェクター活性を制御する方法
本発明の抗体または該抗体断片のエフェクター活性を制御する方法としては、抗体またはFcを含む該抗体断片のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(国際公開第2005/035586号、国際公開第2002/31140号、国際公開第00/61739号)、または抗体若しくは該抗体断片のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法などが知られている。本発明の抗体または該抗体断片にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。
【0315】
エフェクター活性とは、抗体または該抗体断片のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、ADCC、CDC、またはマクロファージ若しくは樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibody-dependent phagocytosis、ADP)などが知られている。
【0316】
エフェクター活性の測定法として、例えば、標的細胞、エフェクターとしてヒト末梢血単核球(PBMC)、そして標的細胞特異的な抗体または該抗体断片を混合し、4時間程度インキュベーションした後、細胞傷害の指標として遊離してきた乳酸脱水素酵素(LDH)を測定することができる。他には、遊離51Cr法またはフローサイトメトリー法などによってエフェクター活性を測定することもできる。
【0317】
抗体のFcのN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体またはFcを含む抗体断片のエフェクター活性を増加または低下させることができる。抗体または該抗体断片のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、α1,6-フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体または該抗体断片を発現することで、フコースが結合していない抗体または該抗体断片を取得することができる。フコースが結合していない抗体または該抗体断片は高いADCCを有する。
【0318】
一方、抗体または該抗体断片のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6-フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体または該抗体断片を発現させることで、フコースが結合している抗体または該抗体断片を取得できる。フコースが結合している抗体または該抗体断片は、フコースが結合していない抗体または該抗体断片よりも低いADCCを有する。
【0319】
また、抗体または該抗体断片のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCCまたはCDCを増加または低下させることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0148165号明細書に記載のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体または該抗体断片のCDCを増加させることができる。
【0320】
また、米国特許第6,737,056号明細書、米国特許第7,297,775号明細書または米国特許第7,317,091号明細書に記載のアミノ酸改変を行うことで、ADCCまたはCDCを、増加させることも低下させることもできる。
【0321】
また本発明の抗体または該抗体断片には、上述の抗体または該抗体断片が含む定常領域におけるアミノ酸改変または糖鎖改変に合わせて、例えば、日本国特開第2013-165716号公報または日本国特開第2012-021004号公報などに記載のアミノ酸改変を行うことにより、Fc受容体への反応性を制御することで血中半減期を制御した抗体または該抗体断片も含まれる。
【0322】
さらに、上述の方法を組み合わせて、一つの抗体または該抗体断片に使用することにより、エフェクター活性や血中半減期が制御された抗体または該抗体断片を取得することができる。
【0323】
5.本発明の抗体または該抗体断片を用いた疾患の治療方法
本発明の抗体または該抗体断片は、脳内にMOGが発現している動物の脳疾患の治療に用いることができる。
【0324】
脳疾患としては、例えば、アルツハイマー病、前駆期アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脳腫瘍、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、黒質線状体変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳変性症、脳血管障害、てんかん、片頭痛、多動性障害、クロイツフェルトヤコブ病、大脳皮質基底核変性症、ライソゾーム病、うつ病、ジストニアなどが挙げられる。
【0325】
本発明の抗体または該抗体断片が治療できる脳疾患は、本発明の抗体または該抗体断片が結合する抗原、および本発明の融合抗体または融合抗体断片にて抗体または該抗体断片を修飾する分子の種類などによって異なる。
【0326】
本発明の抗体または該抗体断片を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体または該抗体断片のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の方法により製造した医薬製剤として提供される。
【0327】
投与経路としては、例えば、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、脳室内、腹腔内投与、皮内投与、経鼻投与、脊髄腔内投与若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏またはテープ剤などが挙げられる。
【0328】
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などが挙げられる。
【0329】
乳剤またはシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール若しくは果糖などの糖類、ポリエチレングリコール若しくはプロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油若しくは大豆油などの油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤またはストロベリーフレーバー若しくはペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造する。
【0330】
カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖若しくはマンニトールなどの賦形剤、デンプン若しくはアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはタルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース若しくはゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤またはグリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造する。
【0331】
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤または噴霧剤などである。注射剤は、塩溶液若しくはブドウ糖溶液、またはその両者の混合物からなる担体などを用いて製造する。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて製造する。
【0332】
噴霧剤は受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ本発明の抗体または該抗体断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体などを用いて製造する。担体としては、例えば乳糖またはグリセリンなどを用いる。また、エアロゾルまたはドライパウダーとして製造することもできる。さらに、上記非経口剤においても、経口投与に適当な製剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
【0333】
6.本発明の抗体または該抗体断片を用いた脳に存在する抗原の検出若しくは測定方法、または疾患の診断方法
本発明の抗体または該抗体断片を用いて、MOG、またはMOGと脳に存在する抗原とを検出または測定することができる。また、MOG、またはMOGと脳に存在する抗原とを検出または測定することにより、脳内にMOGが発現している動物の脳疾患を診断することができる。
【0334】
脳疾患としては、例えば、アルツハイマー病、前駆期アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脳腫瘍、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、黒質線状体変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳変性症、脳血管障害、てんかん、片頭痛、多動性障害、クロイツフェルトヤコブ病、大脳皮質基底核変性症、ライソゾーム病、うつ病、ジストニアなどが挙げられるが、本発明の抗体または該抗体断片が診断できる脳疾患は、本発明の抗体または該抗体断片が結合する抗原、および本発明の融合抗体または融合抗体断片にて抗体または該抗体断片を修飾する分子の種類などによって異なる。
【0335】
脳内にMOGが発現している動物の脳疾患の診断は、例えば、患者または患者動物の脳内に存在するMOGを免疫学的手法により検出または測定して行うことができる。また、患者または患者動物の脳内の細胞に発現または存在しているMOGをフローサイトメトリーなどの免疫学的手法を用いて検出することにより診断を行うことができる。
【0336】
本発明の抗体または該抗体断片として、MOGに結合する一価抗体を用いるときには、上記と同様の方法で脳内のMOGを測定することができる。本発明の抗体または該抗体断片としてMOGと脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体を用いるときには、上記と同様の方法で脳内のMOGまたは脳に存在する抗原を検出または測定することができる。
【0337】
免疫学的手法とは、標識を施した抗原または抗体などを用いて、抗体量または抗原量を検出または測定する方法である。例えば、放射性物質標識免疫抗体法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法、ウエスタンブロット法または物理化学的手法などを用いる。
【0338】
放射性物質標識免疫抗体法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体または該抗体断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する。
【0339】
酵素免疫測定法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、さらに酵素などで標識を施した抗イムノグロブリン抗体または該抗体断片を反応させた後、基質を添加して反応液の吸光度を吸光光度計で測定する。例えば、サンドイッチELISA法などを用いる。酵素免疫測定法で用いる標識体としては、公知[酵素免疫測定法、医学書院(1987)]の酵素標識を用いることができる。
【0340】
例えば、アルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識またはビオチン標識などを用いる。サンドイッチELISA法は、固相に抗体を結合させた後、検出または測定対象である抗原をトラップさせ、トラップされた抗原に第2の抗体を反応させる方法である。
【0341】
前記ELISA法では、検出または測定したい抗原を認識する抗体であって、抗原認識部位の異なる2種類の抗体を準備し、そのうち、第1の抗体を予めプレート(例えば、96ウェルプレート)に吸着させ、次に第2の抗体をFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素またはビオチンなどで標識しておく。
【0342】
上記の第1の抗体が吸着したプレートに、生体内から分離された、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水または眼液などを反応させた後、第2の抗体を反応させ、標識物質に応じた検出反応を行う。濃度既知の抗原を段階的に希釈して作成した検量線より、被験サンプル中の抗原濃度を算出する。
【0343】
サンドイッチELISA法に用いる抗体としては、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれを用いてもよい。また、抗体の代わりにFab、Fab’またはF(ab)2などの抗体断片を用いてもよい。サンドイッチELISA法で用いる2種類の抗体の組み合わせとしては、異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体または該抗体断片の組み合わせでもよいし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体またはそれらの抗体断片との組み合わせでもよい。
【0344】
蛍光免疫測定法は、文献[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック (1987)]などに記載された方法で測定する。蛍光免疫測定法で用いる標識体としては、公知[蛍光抗体法、ソフトサイエンス社(1983)]の蛍光標識を用いることができる。例えば、FITCまたはRITCなどを用いる。
【0345】
発光免疫測定法は文献[生物発光と化学発光 臨床検査42、廣川書店(1998)]などに記載された方法で測定する。発光免疫測定法で用いる標識体としては、公知の発光体標識が挙げられ、アクリジニウムエステルまたはロフィンなどを用いる。
【0346】
ウエスタンブロット法は、抗原または抗原を発現した細胞などをSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)-PAGE(ポリアクリルアミドゲル)[Antibodies - A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]で分画した後、該ゲルをポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜またはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に抗原を認識する抗体または該抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素標識またはビオチン標識などを施した抗マウスIgG抗体または結合断片を反応させた後、該標識を可視化することによって測定する。一例を以下に示す。
【0347】
MOGのアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現している細胞や組織を溶解し、還元条件下でレーンあたりのタンパク量として0.1~30μgをSDS-PAGE法により泳動する。泳動されたタンパク質をPVDF膜にトランスファーし1~10%BSAを含むPBS(以下、BSA-PBSと表記する)に室温で30分間反応させブロッキング操作を行う。
【0348】
ここで本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、0.05~0.1%のTween-20を含むPBS(以下、Tween-PBSと表記する)で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgGを室温で2時間反応させる。
【0349】
Tween-PBSで洗浄し、ECL Western Blotting Detection Reagents(アマシャム社製)などを用いて本発明の抗体または該抗体断片が結合したバンドを検出することにより、MOGのアミノ酸配列を有するポリペプチドを検出する。
【0350】
ウェスタンブロッティングでの検出に用いられる抗体または該抗体断片としては、天然型の立体構造を保持していないポリペプチドに結合できる抗体または該抗体断片が用いられる。
【0351】
物理化学的手法は、例えば、抗原であるMOGと本発明の抗体または該抗体断片とを結合させることにより凝集体を形成させて、この凝集体を検出することにより行う。この他に物理化学的手法として、毛細管法、一次元免疫拡散法、免疫比濁法またはラテックス免疫比濁法[臨床検査法提要、金原出版(1998)]などを用いることもできる。
【0352】
ラテックス免疫比濁法は、抗体または抗原を感作させた粒径0.1~1μm程度のポリスチレンラテックスなどの担体を用い、対応する抗原または抗体により抗原抗体反応を起こさせると、反応液中の散乱光は増加し、透過光は減少する。この変化を吸光度または積分球濁度として検出することにより被験サンプル中の抗原濃度などを測定する。
【0353】
MOGが発現している細胞の検出または測定は、公知の免疫学的検出法を用いることができるが、中でも、免疫沈降法、免疫細胞染色法、免疫組織染色法または蛍光抗体染色法などを用いることが好ましい。
【0354】
免疫沈降法は、MOGを発現した細胞などを本発明の抗体または該抗体断片と反応させた後、プロテインG-セファロースなどのイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させる。または以下のような方法によっても行うことができる。
【0355】
ELISA用96ウェルプレートに上述した本発明の抗体または該抗体断片を固相化した後、BSA-PBSによりブロッキングする。抗体が、例えば、ハイブリドーマ培養上清などの精製されていない状態である場合には、抗マウスイムノグロブリン、抗ラットイムノグロブリン、プロテイン-Aまたはプロテイン-GなどをあらかじめELISA用96ウェルプレートに固相化し、BSA-PBSでブロッキングした後、ハイブリドーマ培養上清を分注して結合させる。
【0356】
次に、BSA-PBSを捨てPBSでよく洗浄した後、ヒトMOGを発現している細胞や組織の溶解液を反応させる。よく洗浄した後のプレートより免疫沈降物をSDS-PAGE用サンプルバッファーで抽出し、上記のウェスタンブロッティングにより検出する。
【0357】
免疫細胞染色法または免疫組織染色法は、抗原を発現した細胞または組織などを、場合によっては抗体の通過性を良くするため界面活性剤やメタノールなどで処理した後、本発明の抗体と反応させ、さらにFITCなどの蛍光標識、ペルオキシダーゼなどの酵素標識またはビオチン標識などを施した抗イムノグロブリン抗体またはその結合断片と反応させた後、該標識を可視化し、顕微鏡にて顕鏡する方法である。
【0358】
また、蛍光標識の抗体と細胞を反応させ、フロ-サイトメーターにて解析する蛍光抗体染色法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック (1987)]により検出を行うことができる。特に、本発明の抗体または該抗体断片は、蛍光抗体染色法により天然型の立体構造を保持して発現している細胞の検出ができる。
【0359】
また、蛍光抗体染色法のうち、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などを用いた場合には、形成された抗体-抗原複合体と、抗体-抗原複合体の形成に関与していない遊離の抗体または抗原とを分離することなく、抗原量または抗体量を測定できる。
【0360】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0361】
[実施例1]抗MOG抗体の取得
(1)ヒト抗体ファージライブラリでの抗体の取得
ヒトPBMC由来のcDNAから、PCRにてVH遺伝子断片、VL遺伝子断片を増幅させた。VH遺伝子断片とVL遺伝子断片をファージミドベクターpCANTAB 5E(Amersham Pharmacia社製)にそれぞれ挿入し、大腸菌TG1(Lucigen社製)を形質転換してプラスミドを得た。
【0362】
得られたプラスミドをM13KO7 Helper Phage(Invitrogen社製)に感染させることで、VH遺伝子、VL遺伝子がライブラリ化されたヒト抗体M13ファージライブラリを得た。
【0363】
このヒト抗体M13ファージライブラリを用いて、下記のファージディスプレイ法を用いて、抗ラットMOG(rMOG)モノクローナル抗体を取得した。MAXISORP STARTUBE(NUNC社製)に、後述する実施例4のrMOG-FLAG_Fcを固相化し、SuperBlock Blocking Buffer(Thermo社製)を用いてrMOG-FLAG_Fcが結合していない部位をブロックした。
【0364】
該チューブにヒト抗体M13ファージライブラリを室温下で1時間反応させ、PBSまたは0.1% Tween20含有PBS(以下PBS-Tと記載する)で洗浄後に0.1MのGly-HCl(pH2.2)でファージを溶出した。溶出液はTris-HCl(pH8.5)を加えて中和した。溶出したファージは、TG1コンピテントセルに感染させ、ファージを増幅した。
【0365】
その後、再度MAXISORP STARTUBEに固相化したrMOG-FLAG_Fcと反応させて、洗浄および溶出を実施した。この操作を繰り返し、rMOG-FLAG_Fcに特異的に結合するscFvを提示したファージを濃縮した。濃縮されたファージを単クローン化し、ELISAにてrMOG-FLAG_Fcへの結合性を有する3つのクローンを選択した。
【0366】
ELISAには、MAXISORP(NUNC社製)にrMOG-FLAG_Fcを固相化し、SuperBlock Blocking Buffer(Thermo社製)を用いてrMOG-FLAG_Fcが結合していない部位をブロックした。ネガティブコントロールとして、FLAG_Fcを固相化したプレートも用意した。
【0367】
各ウェルに各々のファージクローンを加え、室温下で30分間反応させた後、各ウェルをPBS-Tで洗浄した。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された抗M13抗体(GEヘルスケア社製)を10%ブロックエース(大日本製薬株式会社製)含有PBS-Tで希釈した溶液を、各ウェルに加え、室温下30分間インキュベートした。
【0368】
マイクロプレートを、PBS-Tで3回洗浄後、TMB発色基質液(DAKO社製)を加え、室温下でインキュベートした。各ウェルに0.5M硫酸を加えて発色反応を止め、波長450nm(参照波長570nm)での吸光度をマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社製)で測定した。得られた結果を
図1に示す。
【0369】
図1に示すように、3種のファージクローンは、いずれもrMOG-FLAG Fcに結合することが確認できた。一方、いずれのファージクローンもFLAG Fcには結合しなかった(データ非表示)。
【0370】
rMOG-FLAG_Fcに結合したクローンについて配列解析を行い、抗MOG抗体ファージミドベクターpCANTAB_MOG01、pCANTAB_MOG09およびpCANTAB_MOG14を取得した。
【0371】
以降の文章において、pCANTAB_MOG01、pCANTAB_MOG09およびpCANTAB_MOG14を用いて発現させたファージが提示する抗MOG scFv抗体の名称を、それぞれMOG01抗体、MOG09抗体およびMOG14抗体と記載する。各種抗MOG scFv抗体のVHまたはVLをコードする塩基配列、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表1に示す。
【0372】
【0373】
(2)アルパカ抗体ライブラリでの抗体の取得
免疫原としてrMOG-FLAG_Fcと初回はコンプリートアジュバント、2および3回目はインコンプリートアジュバントとのエマルジョンを作製し、アルパカに免疫した。
【0374】
免疫されたアルパカの血液(50mL)からリンパ球(2×107細胞)を採取し、得られた細胞からRNA IsoPlus(TAKARA社製)を用いてRNAを抽出した。さらに、SuperScript(登録商標)III First-Strand Synthesis System for RT-PC(Invitrogen社製)を使った逆転写反応によりcDNAを合成後、アルパカIgG2(Short hinge-heavy chain antibody)、IgG3(Long hinge-heavy chain antibody)に特異的なプライマーを使用して、VHH遺伝子の増幅を行った。
【0375】
VHH遺伝子断片をファージミドベクターpKSTV-02(Miyazaki et al, J. Biochem. 2015;1に記載)に挿入し、MicroPulser エレクトロポレーター(BioRad社製)を使ったエレクトロポレーションにより大腸菌TG1を形質転換した(形質転換体のタイターはIgG2が2.6×107、IgG3が3.2×107であった)。
【0376】
得られた形質転換体にM13KO7 Helper Phage(Invitrogen社製)を感染させることで、VHH遺伝子がライブラリ化されたアルパカ抗体M13ファージライブラリを得た。
【0377】
このアルパカ抗体M13ファージライブラリを用いて、下記のバイオパニングの手法を用いて、抗MOG抗体を取得した。イムノチューブにrMOG-GST(4μg/2mL)を固相化し、0.5%BSAを用いてrMOG-GSTが結合していない部位をブロックした。
【0378】
該チューブにアルパカ抗体M13ファージライブラリを室温下で1時間反応させ、PBS-Tで洗浄後に0.1MのGly-HCl(pH2.7)でファージを溶出した。溶出液はTris-HCl(pH9.1)を加えて中和した。溶出したファージは、大腸菌TG1に感染後、ファージを増幅した。その後、再度イムノチューブに固相化したrMOG-GSTと反応させて、洗浄および溶出を実施した。
【0379】
この操作をIgG2では3回、IgG3では2回繰り返し、rMOG-GSTに特異的に結合するVHHを提示したファージを濃縮した。濃縮されたファージからIgG2およびIgG3のVHHを提示しているファージクローンをそれぞれ96個単クローン化し、ELISAにてrMOG-GSTへの結合性を有するクローンを選択した。
【0380】
ELISAでは、MAXISORP(NUNC社製)にrMOG-GSTを固相化(50ng/50μL)し、0.5%BSAを用いてrMOG-GSTが結合していない部位をブロックした。各ウェルに各々のファージクローンを加え、室温下で1時間反応させた後、各ウェルをPBS-Tで5回洗浄した。
【0381】
次いで、ビオチン化抗M13ファージ抗体(Abcam社製)と西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたストレプトアビジン(Vector社製)を各ウェルに50μL加え、室温下1時間インキュベートした。
【0382】
マイクロプレートを、PBS-Tで洗浄後、TMB発色基質液(CALBIOCHEM社製)を各ウェルに加え、室温下でインキュベートした。各ウェルに1Mの塩酸を加えて発色反応を止め、波長450nm(参照波長570nm)での吸光度をマイクロプレートリーダー(Model 680XR、BioRad社製)で測定した。
【0383】
rMOG-GSTに結合したクローンについて配列解析を行い、抗MOG VHH抗体iMOG-3Rim1-S32抗体を取得した。iMOG-3Rim1-S32抗体のVHHをコードする塩基配列、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表2に示す。
【0384】
【0385】
[実施例2]抗体発現ベクターの構築
(1)抗MOG抗体の発現ベクターの構築
ヒトIgG型の抗MOG抗体を作製するために、実施例1で取得したヒト抗体ファージライブラリ由来抗MOG scFv抗体の各可変領域のアミノ酸配列をコードするDNA配列をヒトIgG抗体定常領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列に組みこんだ各種抗MOG抗体の発現ベクターを以下に記載する方法で作製した。
【0386】
ヒトIgGのラムダ鎖定常領域をコードする塩基配列を合成し、N5KG4PEベクター(国際公開第2002/088186号に記載)のBglII-EcoRIサイトに挿入し、N5LG4PEベクターを作製した。
【0387】
MOG01抗体およびMOG09抗体の各VH、VLのアミノ酸配列をコードする塩基配列をN5LG4PEに挿入した発現ベクターを、それぞれN5LG4PE_MOG01、N5LG4PE_MOG09と命名した。また、MOG14抗体のVH、VLのアミノ酸配列をコードする塩基配列をN5KG4PEベクターに挿入した発現ベクターをN5KG4PE_MOG14と命名した。
【0388】
(1-1)MOG01抗体発現ベクターN5LG4PE_MOG01
ファージミドベクターpCANTAB_MOG01を鋳型として、プライマー1(配列番号43)およびプライマー2(配列番号44)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりVL領域の遺伝子断片を増幅した。PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で45秒間からなる反応を30サイクル実施した。実施例2に記載するPCRは、特に記載がない限り、上記の条件で行った。
【0389】
PCR産物を鋳型としてプライマー3(配列番号45)およびプライマー2(配列番号44)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりVL領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加した。
【0390】
得られた遺伝子断片をN5LG4PEベクターのBglII-BlpIサイトに挿入し、N5LG4PE_MOG01VLを得た。次にpCANTAB_MOG01を鋳型として、プライマー4(配列番号46)およびプライマー5(配列番号47)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりVH領域の遺伝子断片を増幅した。
【0391】
PCR産物を鋳型としてプライマー6(配列番号48)およびプライマー5(配列番号47)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりVH領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加した。得られた遺伝子断片をN5LG4PE_MOG01VLベクターのSalI-NheIサイトに挿入し、N5LG4PE_MOG01を得た。
【0392】
(1-2)MOG09抗体発現ベクターN5LG4PE_MOG09
上記(1-1)と同様の方法でN5LG4PE_MOG09を作製した。ファージミドベクターpCANTAB_MOG09を鋳型として、VL領域の遺伝子断片の増幅には、プライマー7(配列番号49)およびプライマー8(配列番号50)、VL領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加するときには、プライマー3(配列番号45)およびプライマー8(配列番号50)、VH領域の遺伝子断片を増幅には、プライマー9(配列番号51)およびプライマー10(配列番号52)、VH領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加するときには、プライマー6(配列番号48)およびプライマー10(配列番号52)を用いた。
【0393】
(1-3)MOG14抗体発現ベクターN5KG4PE_MOG14
上記(1-1)と同様の方法でN5KG4PE_MOG14を作製した。ファージミドベクターpCANTAB_MOG14を鋳型として、VL領域の遺伝子断片の増幅には、プライマー11(配列番号53)およびプライマー12(配列番号54)、VL領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加するときには、プライマー3(配列番号45)およびプライマー12(配列番号54)を使用した。得られたシグナル配列が付加されたVL領域の遺伝子断片をN5KG4PEベクターのBglII-BsiWIサイトに挿入し、N5KG4PE_MOG14VLを得た。
【0394】
次にpCANTAB_MOG14を鋳型として、VH領域の遺伝子断片の増幅には、プライマー13(配列番号55)およびプライマー14(配列番号56)、VH領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加するときには、プライマー6(配列番号48)およびプライマー14(配列番号56)を使用した。得られたシグナル配列が付加されたVH領域の遺伝子断片をN5KG4PE_MOG14VLのSalI-NheIサイトに挿入し、N5KG4PE_MOG14を得た。
【0395】
(1-4)iMOG-3Rim1-S32抗体発現ベクターN5G4PEFc_iMOG-3Rim1-S32
ヒトIgG4PEのFc領域をコードする遺伝子にシグナル配列を付加した配列を合成し、プライマー25(配列番号79)およびプライマー26(配列番号80)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりヒトFc領域の遺伝子断片を増幅した。
【0396】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で60秒間からなる反応を30サイクル実施した。得られたFc遺伝子断片をN5KG4PEベクターのBglII-BamHIサイトに挿入し、N5G4PEFcベクターを作製した。
【0397】
iMOG-3Rim1-S32のVHHのアミノ酸配列をコードする塩基配列をN5G4PEFcに挿入した発現ベクターを、N5G4PEFc_iMOG-3Rim1-S32と命名した。VHH-Fc発現ベクターを以下に記載する方法で作製した。
【0398】
iMOG-3Rim1-S32のVHHの塩基配列を合成し、プライマー15(配列番号57)およびプライマー16(配列番号58)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりVHH領域の遺伝子断片を増幅した。PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で60秒間からなる反応を30サイクル実施した。得られたVHH遺伝子断片をN5G4PEFcベクターのEcoRI-BglIIサイトに挿入し、N5G4PEFc_iMOG-3Rim1-S32を得た。
【0399】
(2)抗Avermectin抗体の発現ベクターN5LG4PE_AVM
ネガティブコントロール抗体として、キメラ抗Avermectin(AVM)抗体を上記(1-1)と同様の方法で作製した。AVM抗体のVH、VLのアミノ酸配列をコードする塩基配列をN5LG4PEに挿入した発現ベクターを、N5LG4PE_AVMと命名した。
【0400】
SDラットにAVMを免疫し、通常の方法で抗AVM抗体産生ハイブリドーマを樹立した。該ハイブリドーマ由来の抗AVM抗体の可変領域を鋳型として、VL領域の遺伝子断片の増幅には、プライマー29(配列番号83)およびプライマー30(配列番号84)、VL領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加するときには、プライマー3(配列番号45)およびプライマー30(配列番号84)を使用した。
【0401】
VH領域の遺伝子断片の増幅には、プライマー31(配列番号85)およびプライマー32(配列番号86)、ならびにVH領域の遺伝子断片にシグナル配列を付加するときには、プライマー6(配列番号48)およびプライマー32(配列番号86)を使用した。
【0402】
(3)抗ラットトランスフェリン受容体抗体OX26抗体の発現ベクターN5KG4PE(R409K)_OX26
抗ラットトランスフェリン受容体抗体のポジティブコントロール抗体として[Protein Engineering, 12, 787-796, 1999]に記載された抗ラットトランスフェリン受容体抗体OX26抗体を作製した。OX26抗体のVH、VLのアミノ酸配列をコードする塩基配列をN5KG4PE(R409K)(国際公開第2002/088186号に記載)に挿入した発現ベクターを、上記(1-1)と同様の方法で作製し、N5KG4PE(R409K)_OX26と命名した。
【0403】
OX26抗体のVLのアミノ酸配列をコードする遺伝子を合成して鋳型とし、VL領域の遺伝子断片の増幅には、プライマー40(配列番号94)およびプライマー41(配列番号95)、ならびにVH領域の遺伝子断片の増幅にはプライマー42(配列番号96)およびプライマー43(配列番号97)を使用した。
【0404】
[実施例3]バイスペシフィック抗体の発現ベクターの構築
(1)Her2とMOGに結合するバイスペシフィック抗体の発現ベクターの作製
HER2とMOGに結合するバイスペシフィック抗体の発現ベクターpCI-Trastuzumab-hKG4PE(R409K)_MOG01scFvを以下の方法で作製した。当該バイスペシフィック抗体は、抗HER2抗体のIgGの2本のH鎖のC末端に抗MOG抗体のscFvが融合したものである。
【0405】
重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、プライマー17(配列番号59)およびプライマー18(配列番号60)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片を増幅した。
【0406】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で2分間からなる反応を30サイクル実施した。ファージミドベクターpCANTAB_MOG01を鋳型として、プライマー19(配列番号61)およびプライマー20(配列番号62)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりscFv領域(以下MOG01scFvと記載)の遺伝子断片を増幅した。
【0407】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で90秒間からなる反応を30サイクル実施した。次に、上記のCH1-Hinge-CH2-CH3領域およびMOG01scFv領域を鋳型とし、プライマー17(配列番号59)およびプライマー20(配列番号62)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、CH1-Hinge-CH2-CH3-MOG01scFvを増幅した。
【0408】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で2分間からなる反応を30サイクル実施した。得られた遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-hG4PE(R409K)_MOG01scFvベクターを作製した。
【0409】
抗HER2抗体(Trastuzumab)(国際公開第1999/57134号に記載)のVLのアミノ酸配列をコードする遺伝子を合成して鋳型とし、プライマー21(配列番号63)およびプライマー22(配列番号64)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりVL領域の遺伝子断片を増幅した。
【0410】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で45秒間からなる反応を30サイクル実施した。N5KG4PEベクター(国際公開第2002/088186号に記載)を鋳型とし、プライマー27(配列番号81)およびプライマー28(配列番号82)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりCL領域の遺伝子断片を増幅した。
【0411】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で45秒間からなる反応を30サイクル実施した。得られた遺伝子断片VL及びCLを鋳型としプライマー21(配列番号63)およびプライマー28(配列番号82)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRにより遺伝子断片を増幅した。
【0412】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で90秒間からなる反応を30サイクル実施した。得られた遺伝子断片をpCI-hG4PE(R409K)_MOG01scFvに挿入し、pCI-TrastuzumabVL-hKG4PE(R409K)_MOG01scFvを得た。
【0413】
次にTrastuzumabのVHのアミノ酸配列をコードする遺伝子を合成して鋳型とし、プライマー23(配列番号65)およびプライマー24(配列番号66)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりVH領域の遺伝子断片を増幅した。PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で45秒間からなる反応を30サイクル実施した。
【0414】
得られた遺伝子断片をpCI-TrastuzumabVL-hKG4PE(R409K)_MOG01scFvに挿入し、pCI-Trastuzumab-hKG4PE(R409K)_MOG01scFvを得た。
【0415】
(2)AVMとMOGに結合するバイスペシフィック抗体の発現ベクターの作製
また、AVMとMOGに結合するバイスペシフィック抗体の発現ベクターをpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFvを以下に記載する方法で作製した。当該バイスペシフィック抗体は、抗AVM抗体のIgGのC末端に抗MOG抗体のscFvが融合したものである。
【0416】
N5LG4PE_AVMを鋳型として、プライマー33(配列番号87)およびプライマー34(配列番号88)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりAVM軽鎖領域の遺伝子断片を増幅した。PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で60秒間からなる反応を30サイクル実施した。
【0417】
N5LG4PE_AVMを鋳型として、プライマー35(配列番号89)およびプライマー32(配列番号86)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりAVM VH領域の遺伝子断片を増幅した。
【0418】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で45秒間からなる反応を30サイクル実施した。得られた遺伝子断片を上記で作製したpCI-hG4PE(R409K)_MOG01scFvに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFvを得た。
【0419】
(3)抗AVM抗体のIgGのC末端に抗AVM抗体のscFvが融合した抗体の発現ベクターの作製
ネガティブコントロール抗体として、抗AVM抗体のIgGのC末端に抗AVM抗体のscFvが融合した抗体の発現ベクターをpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVM scFvと命名した。
【0420】
重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、プライマー36(配列番号90)およびプライマー37(配列番号91)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片を増幅した。
【0421】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で2分間からなる反応を30サイクル実施した。AVM scFvの合成遺伝子を鋳型として、プライマー38(配列番号92)およびプライマー39(配列番号93)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、PCRによりscFv領域の遺伝子断片を増幅した。
【0422】
PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で90秒間からなる反応を30サイクル実施した。次に、上記のCH1-Hinge-CH2-CH3領域およびAVM scFv領域を鋳型とし、プライマー36(配列番号90)およびプライマー39(配列番号93)、ならびにKOD plus DNA Polymerase(東洋紡社製)を用いて、CH1-Hinge-CH2-CH3-AVM scFvを増幅した。PCRは、94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で2分間からなる反応を30サイクル実施した。
【0423】
得られた遺伝子断片を上記pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVM scFvを得た。
【0424】
[実施例4]
可溶型MOG抗原、可溶型HER2抗原の作製
(1)FLAG-Fcが結合したラットMOGの細胞外ドメインタンパク質の作製
ラットMOGの可溶性抗原として、C末端にFLAG-Fcが付加されたMOGの細胞外ドメインタンパク質を以下に記載する方法で作製した。rMOGをコードする塩基配列を配列番号67に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号68に示す。
【0425】
MOGの細胞外ドメインの遺伝子配列を合成し、FLAG-Fcが挿入されたINPEP4(IDEC社製)ベクターのBglII-XbaIサイトに挿入することにより、C末側にFLAG-Fcが付加されたMOGの細胞外ドメインを発現するプラスミドベクターINPEP4_rMOG-FLAG-Fcを作製した。rMOG-FLAG-Fcの塩基配列を配列番号69に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号70に示す。
【0426】
INPEP4_rMOG-FLAG-FcをExpi293(商標)Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて浮遊性293細胞に導入して培養し、一過性発現系でタンパク質を発現させた。ベクター導入4日後に培養上清を回収し、孔径0.22μmのメンブランフィルター(MILLIPORE社製)で濾過した。
【0427】
この培養上清中のMOG-FLAG-Fcタンパク質をProteinA樹脂(MabSelect SuRe、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてアフィニティー精製した。洗浄液としてリン酸緩衝液を用いた。
【0428】
プロテインAに吸着させたタンパク質を、20mMクエン酸ナトリウム、50mM NaCl緩衝液(pH3.4)により溶出し、1M Tris-HCl Buffer Solution(pH8.0)を含むチューブに回収した。
【0429】
次に、VIVASPIN(Sartrius stealin社製)を用いた限外ろ過とNAPカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により溶出液の溶媒をPBSに置換後、孔径0.22μmのメンブランフィルター(Millex-GV、MILLIPORE社製)でろ過滅菌を行った。溶液中の精製した各MOG-FLAG-Fcタンパク質の濃度は280nmの吸光度により測定した。
【0430】
(2)GSTが結合したMOGの細胞外ドメインタンパク質の作製
ラットMOGの可溶性抗原として、C末端にGSTが付加されたMOGの細胞外ドメインタンパク質を以下に記載する方法で作製した。
【0431】
MOGの細胞外ドメインの遺伝子配列を合成し、GSTが挿入されたN5ベクター(IDEC社製)のBglII-KpnIサイトに挿入することにより、C末側にGSTが付加されたMOGの細胞外ドメインを発現するプラスミドベクターN5_rMOG-GSTを作製した。rMOG-GSTの塩基配列を配列番号71に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号72に示す。
【0432】
ヒトHER2の可溶性抗原として、C末端にGSTが付加されたHER2の細胞外ドメインタンパク質を以下に記載する方法で作製した。HER2の細胞外ドメインの遺伝子配列を合成し、GSTが挿入されたN5ベクター(IDEC社製)のBglII-KpnIサイトに挿入することにより、C末側にGSTが付加されたHER2の細胞外ドメインを発現するプラスミドベクターN5_hHER2-GSTを作製した。hHER2-GSTの塩基配列を配列番号71に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号72に示す。
【0433】
N5_rMOG-GST、N5_hHER2-GSTをExpi293(商標)Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて浮遊性293細胞に導入して培養し、一過性発現系でタンパク質を発現させた。ベクター導入4日後に培養上清を回収し、孔径0.22μmのメンブランフィルター(MILLIPORE社製)で濾過した。
【0434】
この培養上清中のタンパク質をGlutathione Sepharose 4B(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてアフィニティー精製した。洗浄液としてリン酸緩衝液を用いた。Glutathione Sepharose 4Bに吸着させたタンパク質を、50mM Tris-HCl、10mM reduced glutatione (pH8.0)により溶出した。
【0435】
次に、VIVASPIN(Sartrius stealin社製)を用いた限外ろ過とNAPカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により溶液中の溶媒をPBSに置換後、孔径0.22μmのメンブランフィルター(Millex-GV、MILLIPORE社製)でろ過滅菌を行った。溶液中の精製したrMOG-GSTタンパク質、hHER2-GSTタンパク質の濃度は280nmの吸光度により測定した。
【0436】
[実施例5]膜型MOG抗原発現ベクターの作製
ラットMOG(rMOG)、マウスMOG(mMOG)、サルMOG(cMOG)およびヒトMOG(hMOG)の全長遺伝子配列を合成し、それぞれの遺伝子配列をpEF6/V5-His(Thermo Fisher Scientific社製)ベクターのBamHI-NotIサイトに挿入することにより、各種MOGの膜発現用プラスミドベクターpEF6_rMOG、pEF6_mMOG、pEF6_cMOGおよびpEF6_hMOGを作製した。
【0437】
mMOGをコードする塩基配列を配列番号73に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号74に示す。cMOGをコードする塩基配列を配列番号75に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号76に示す。hMOGをコードする塩基配列を配列番号77に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号78に示す。
【0438】
[実施例6]各種抗体の調製
実施例2および実施例3で作製した抗体発現プラスミドベクターをExpi293TM Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて浮遊性293細胞に導入して培養し、一過性発現系で抗体を発現させた。
【0439】
ベクター導入4日後に培養上清を回収し、孔径0.22μmのメンブランフィルター(MILLIPORE社製)で濾過した。この培養上清中のタンパク質をProteinA樹脂(MabSelect SuRe、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてアフィニティー精製した。洗浄液としてリン酸緩衝液を用いた。プロテインAに吸着させた抗体を、20mMクエン酸ナトリウム、50mM NaCl緩衝液(pH3.4)により溶出し、1M Tris-HCl Buffer Solution(pH8.0)を含むチューブに回収した。
【0440】
次に、VIVASPIN(Sartrius stealin社製)を用いた限外ろ過とNAPカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により溶出液の溶媒をPBSに置換後、孔径0.22μmのメンブランフィルター(Millex-GV、MILLIPORE社製)でろ過滅菌を行った。抗体溶液の280nmの吸光度を測定し、濃度1mg/mLを1.40Optimal densityと換算することで、精製抗体の濃度を算出した。
【0441】
実施例2に記載の抗MOG抗体の発現ベクターN5LG4PE_MOG01、N5LG4PE_MOG09、N5KG4PE_MOG14およびN5G4PEFc_iMOG-3Rim1-S32を用いて発現した抗MOGヒトIgG抗体をそれぞれMOG01抗体、MOG09抗体、MOG14抗体およびiMOG-3Rim1-S32抗体と記載する。
【0442】
実施例3で作製した各種バイスペシフィック抗体発現ベクターpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVM scFv、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv、およびpCI-Trastuzumab-hKG4PE(R409K)_MOG01scFvを発現させて得た抗体をそれぞれAVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv抗体、およびTrastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01scFv抗体と命名した。
【0443】
[実施例7]フローサイトメーターによる抗MOG抗体のMOGに対する結合性の評価
実施例6で得た抗MOG抗体MOG01抗体、MOG09抗体、MOG14抗体およびiMOG-3Rim1-S32抗体のMOGへの結合を以下の手順に従いfluorescence activated cell sorting (FACS)法により評価した。
【0444】
実施例5で作製した各種膜型MOG抗原発現ベクターをFreeStyle(商標)293 Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて浮遊性293細胞に導入して培養し、一過性発現系で膜型抗原を発現させた。上記の細胞を用いて、以下に記載する方法で抗MOG抗体の反応性を解析した。
【0445】
rMOG/HEK293F、mMOG/HEK293F、cMOG/HEK293およびhMOG/HEK293細胞をそれぞれ、5×105cells/mLの濃度で0.1%NaN3、1%FBS含有PBSのStaining Buffer(SB)に懸濁し、96穴丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した。
【0446】
遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)の後、上清を除去し、ペレットへ実施例6で得た10μg/mLの各抗体を加えて懸濁した後、氷温下で30分間静置した。さらに遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)して上清を除去し、ペレットをSBで洗浄後に、1μg/mLのRPE蛍光標識ヤギ抗ヒト抗体(Southern Bioblot社製)を加え、氷温下30分間インキュベートした。
【0447】
SBで洗浄後、SBに懸濁し、フローサイトメーターFACS CANTO II、(ベクトンディッキンソン社製)で各細胞の蛍光強度を測定した。得られた結果を
図2に示す。なお、ネガティブコントロールとして、抗AVM抗体を用いた。
【0448】
図2に記載されるように、rMOG/HEK293F細胞及びmMOG/HEK293F細胞に対して、抗MOG抗体であるMOG01抗体、MOG09抗体、MOG14抗体およびiMOG-3Rim1-S32抗体は、いずれも結合活性を示した。また、MOG01抗体およびMOG14抗体は、いずれもcMOG/HEK293細胞及びhMOG/HEK293細胞にも結合活性を示した。
【0449】
よって、抗MOGヒトIgG抗体MOG01およびMOG14は、ラット、マウスMOGだけでなく、カニクイザルおよびヒトMOGの全てを認識して、結合することが明らかになった。
【0450】
[実施例8]表面プラズモン共鳴検出による抗MOG抗体のMOGに対する結合性の評価
実施例6で得た抗MOG抗体MOG01抗体、MOG09抗体、MOG14抗体およびiMOG-3Rim1-S32抗体のラットMOGへのアフィニティーをBiacore T-100(GE Healthcare)を用いて測定した。
【0451】
CM5センサーチップ上にHuman antibody Captureキットを用いて各抗体を固定化し、実施例4で作製したrMOG-GSTをアナライトとして結合能を評価した。得られたセンサグラムについてBIAevaluation softwareにより解析を行うことで解離定数(KD値)を算出した。得られた結果を表3に示す。
【0452】
【0453】
表3に示すように、各抗MOG抗体の解離定数(KD値)は2.1×10-11(M)~4.0×10-8(M)であり、いずれの抗体も良好なアフィニティーを示すことが明らかになった。MOG09抗体では、解離速度定数kdが機器測定範囲外となり、KD値が一意に決定できていない。
【0454】
[実施例9]抗MOG抗体のラット脳移行性評価
ラットに抗体を尾静脈(i.v.)投与後、尾静脈採血を行った。採血と同じ日に、ペントバルビタール麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収し、その重さを測定した。また、回収した脳組織にバッファー溶液を加えホモジナイズし、遠心分離後、上清に溶出された抗体溶液を回収した。その容量を測定するとともに抗体濃度をAlphaLISA(PerkinElmer社製)により測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出した。
【0455】
抗MOG抗体MOG01抗体、MOG14抗体、およびiMOG-3Rim1-S32抗体、ならびにネガティブコントロールの抗AVM抗体について、MOG01抗体およびMOG14抗体は1mg/kg体重、iMOG-3Rim1-S32抗体は5mg/kg体重の量で抗体を投与して4日後の血清中の抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を
図3(A)および(B)に示す。
【0456】
図3(A)および(B)に示すように、抗MOG抗体のいずれの抗体についても、ネガティブコントロール(AVM)と比較して、血清中の抗体濃度は変化しなかったが、脳内の抗体量が5-10倍に増加することが示された。
【0457】
抗MOG抗体MOG01抗体、抗トランスフェリン受容体抗体OX26抗体、およびネガティブコントロールの抗AVM抗体について、5mg/kg体重の量で抗体を投与して4日後及び10日後の血清中の抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を
図4(A)および(B)に示す。
【0458】
図4(A)に示すように、OX26抗体では、4日後の血清中の抗体濃度が評価した抗体の中で最も低く、10日後には検出感度以下になるなど抗体の血中動態が悪かった。抗MOG抗体であるMOG01抗体では、投与4日後、10日後の血清中の抗体濃度に大きな変化はなく、ネガティブコントロールと同程度の抗体濃度であった。これより、MOG01抗体の血中半減期はネガティブコントロールと同定度であるといえる。
【0459】
また、
図4(B)に示すように、脳内の抗体量については、ネガティブコントロールは投与から4日後の時点で評価した抗体の中で最も抗体量が低く、10日後にはわずかではあるが、さらに抗体量が減少した。
【0460】
OX26抗体は、投与4日後から10日後の間に急速に抗体量が減少し、投与10日後の抗体量はネガティブコントロール以下になるのに対し、MOG01抗体では、投与4日後から10日後の間に抗体量が増加し、投与4日後の抗体量はネガティブコントロールの約2.5倍、投与10日後の抗体量はネガティブコントロールの約10倍となった。
【0461】
以上により、抗MOG抗体MOG01抗体は、血清中ではネガティブコントロールと同定度の抗体濃度を示しながらも、脳内の抗体量を投与4日後には、ネガティブコントロールの約2.5倍に、投与10日後には、ネガティブコントロールおよびOX26抗体の約10倍に高められることが示された。
【0462】
[実施例10]フローサイトメーターによるMOGのバイスペシフィック抗体のMOGまたはHER2に対する結合性の評価
実施例6で得たMOGとHer2に結合するバイスペシフィック抗体Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体、MOGとAVMに結合するバイスペシフィック抗体AVM IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体、およびAVMに結合する抗体AVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv抗体のMOGまたはHER2への結合を以下の手順に従いfluorescence activated cell sorting(FACS)法により評価した。
【0463】
実施例5で作製した膜型MOG抗原発現ベクターをFreeStyle(商標)293Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて浮遊性293細胞に導入して培養し、一過性発現系で膜型抗原を発現させた。
【0464】
HEK293F細胞、rMOG/HEK293F細胞、hMOG/HEK293F細胞およびヒト乳癌細胞株SK-BR-3細胞を、それぞれ5×105細胞/mLの濃度で0.1%NaN3、1% FBS含有PBSのStaining Buffer(SB)に懸濁し、96穴丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した。
【0465】
遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)の後、上清を除去し、ペレットへ実施例6で得た10μg/mLの各抗体を加えて懸濁した後、氷温下で30分間静置した。さらに遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)して上清を除去し、ペレットをSBで洗浄後に、1μg/mLのRPE蛍光標識ヤギ抗ヒト抗体(Southern Bioblot社製)を加え、氷温下30分間インキュベートした。
【0466】
SBで洗浄後、SBに懸濁し、フローサイトメーターFACS CANTO II(ベクトンディッキンソン社製)で各細胞の蛍光強度を測定した。なお、ネガティブコントロールとして、10μg/mLの抗AVM抗体を用いた。HEK293F細胞、rMOG/HEK293F細胞、およびhMOG/HEK293細胞に対する結合性解析の結果を
図5に示す。
【0467】
図5より、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体、Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体では、rMOG/HEK293F細胞、hMOG/HEK293細胞への結合がみられることから、バイスペシフィック抗体の形状であっても、ラットMOGおよびヒトMOGへの結合性を保持していることが示された。
【0468】
ヒト乳癌細胞株SK-BR-3細胞に対する結合性解析の結果を
図6に示す。当該細胞には、HER2が発現していることが知られている。
【0469】
図6より、Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体はバイスペシフィック抗体の形状であっても、HER2への結合性を保持していることが示された。
【0470】
[実施例11]表面プラズモン共鳴検出によるMOGのバイスペシフィック抗体のMOGに対する結合性の評価
MOGのバイスペシフィック抗体のMOGへのアフィニティーを実施例8と同様の方法で測定し、結果を表4に示す。
【0471】
【0472】
表4に示すように、各バイスペシフィック抗体の解離定数(KD値)は、AVM
IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体で2.0×10-7(M)、Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体で1.0×10-7(M)であり、いずれのMOGのバイスペシフィック抗体についても良好なアフィニティーを示すことが明らかになった。
【0473】
Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体では、結合速度定数ka、および解離速度定数kdが機器測定範囲外となり、KD値が一意に決定できていない。
【0474】
[実施例12]表面プラズモン共鳴検出によるMOGのバイスペシフィック抗体のHER2に対する結合性の評価
MOGとHER2に結合するバイスペシフィック抗体Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体のHER2へのアフィニティーをBiacore T-100(GE Healthcare)を用いて測定した。
【0475】
CM5センサーチップ上にHuman antibody Captureキットを用いて各抗体を固定化し、実施例4で作製したHER2-GSTをアナライトとして、MOG-Her2バイスペシフィック抗体の結合能を評価した。得られたセンサグラムについてBIAevaluation softwareにより解析を行うことで解離定数(KD値)を算出した。結果を表5に示す。
【0476】
【0477】
表5に示すように、Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体のHER2に対する解離定数(KD値)は、3.7×10-9(M)であり、良好なアフィニティーを示す抗体であることが明らかになった。
【0478】
[実施例13]MOGのバイスペシフィック抗体のラット脳移行性評価
各バイスペシフィック抗体AVM IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体、Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv 抗体、およびAVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv抗体のラットでの
脳移行性を実施例9と同様の方法で
評価した。5mg/kg体重の量で抗体を投与して10日後の血清中の抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を
図7(A)および(B)に示す。
【0479】
図7(A)に示すように、バイスペシフィック抗体のネガティブコントロールであるAVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv抗体と比較して、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体、Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体では、血清中の抗体濃度に差はなかった。
【0480】
一方、
図7(B)に示すように、バイスペシフィック抗体のネガティブコントロールであるAVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv抗体と比較して、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体、Trastuzumab IgG4PE(R409K)_MOG01 dscFv抗体では、脳内の抗体量が約10倍に高まることが示された。
【0481】
以上より、MOGに結合するバイスペシフィック抗体は、MOGに結合しないバイスペシフィック抗体よりも、脳内の抗体量を約10倍高めることができる一方で、血中半減期には変化がないことが示された。
【0482】
[実施例14]抗MOG01抗体のマウス脳移行性評価
(1)抗体量測定
マウスに抗体を35nmol/kgで尾静脈(i.v.)投与して数日後、尾静脈採血を行った。採血と同じ日に、ペントバルビタール麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収し、その重さを測定した。また、回収した脳組織にバッファー溶液を加えホモジナイズし、遠心分離後、上清に溶出された抗体溶液を回収した。その容量を測定するとともに抗体濃度をAlphaLISA(PerkinElmer社製)により測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出した。
【0483】
抗MOG01ヒトIgG抗体ならびにネガティブコントロールの抗AVMヒトIgG抗体について、抗体を投与して3、6、10、14、21、28日後の血清中の抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量をそれぞれ
図8(A)および(B)に示す。
【0484】
図8(A)に示すように、抗MOG01ヒトIgG抗体は、ネガティブコントロールと比較して、血清中の抗体濃度に差はなかった。一方で、
図8(B)に示すように、28日間にわたり脳内の抗体量を数十倍に高められることが示された。
【0485】
(2)イメージング解析
抗MOG01ヒトIgG抗体ならびにネガティブコントロールの抗AVMヒトIgG抗体について、Alexa FluorR 488 Protein Labeling Kit(Molecular Probes社製)にて標識を行った。標識後の抗体を、AF488-MOG01 IgG4PE抗体、AF488-AVM IgG4PE抗体とする。
【0486】
標識後の抗体を10mg/kgでマウスに尾静脈(i.v.)投与数日後、トマトレクチン投与を行い、頬採血を行った。採血後、ペントバルビタール麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収し、IVIS Spectrum(パーキンエルマー社製)にて蛍光強度を測定した。6日後の脳イメージング像を
図9(A)、14日後の脳イメージング像を
図9(B)に示す。投与抗体の蛍光強度で補正後の脳中蛍光量を
図9(C)に示す。
【0487】
図9(A)~(C)に示すように、抗MOG01抗体は、ネガティブコントロールと比較して、脳内全域に渡って抗体量を数十倍に高められることが示された。
【0488】
[実施例15]各種バイスペシフィック抗体発現ベクターの構築
図10(A)~(C)並びに
図11(A)および(B)に記載する構造を有するAVMとMOGに結合するバイスペシフィック抗体発現ベクターを以下の方法で作製した。当該バイスペシフィック抗体の名称および抗体発現ベクターの名称を表6に、抗体発現ベクターの名称と抗体の塩基配列、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表7に示す。
【0489】
【0490】
【0491】
(1)
図10(A)の構造に関するバイスペシフィック抗体発現ベクターの構築
(1-1)pCI-AVM-hLG4PE(R409K/S354C/T366W)-FLAG tagベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3(R409K/S354C/T366W)領域の遺伝子断片を増幅し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K/S354C/T366W)-FLAG tagベクターを作製した。
【0492】
(1-2)pCI-MOG01-hLG4PE(R409K/Y349C/T366S/L368A/Y407V)-His tagベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3(R409K/Y349C/T366S/L368A/Y407V)-His tag領域の遺伝子断片を増幅した。また、N5LG4PE_MOG01を鋳型として、MOG01軽鎖領域の遺伝子断片とMOG01 VH領域の遺伝子断片をPCRにより増幅した。得られた遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-MOG01-hLG4PE(R409K/Y349C/T366S/L368A/Y407V)-His tagベクターを作製した。
【0493】
(2)
図10(B)の構造に関するバイスペシフィック抗体発現ベクターの構築
(2-1)pCI-AVM-hLG4PE(R409K)-linker-MOG01VL-CLベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker-MOG01VL-CL領域の遺伝子断片を増幅し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)-linker-MOG01VL-CLベクターを作製した。
【0494】
(2-2)pCI-MOG01VH-CHベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりMOG01VH-CH領域の遺伝子断片を増幅し、pCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-MOG01VH-CHベクターを作製した。
【0495】
(3)
図10(C)の構造に関するバイスペシフィック抗体発現ベクターの構築
(3-1)pCI-AVM-hLG4PE(R409K/S354C/T366W)-linker-MOG01scFv-FLAG tagベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3(R409K/S354C/T366W)-linker領域の遺伝子断片を増幅した。また、MOG01scFvを鋳型として、PCRによりlinker-MOG01scFv領域の遺伝子断片を増幅した。さらに上記のPCR産物を鋳型として、PCRによりlinker-MOG01scFv-FLAG tag領域の遺伝子断片を増幅した。CH1-Hinge-CH2-CH3(R409K/S354C/T366W)-linker領域とlinker-MOG01scFv-FLAG tag領域の遺伝子断片をpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVM scFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K/S354C/T366W)-linker-MOG01scFv-FLAG tagベクターを作製した。
【0496】
(3-2)pCI-AVM-hLG4PE(R409K/Y349C/T366S/L368A/Y407V)-His tagベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3(R409K/Y349C/T366S/L368A/Y407V)-His tag領域の遺伝子断片を増幅し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K/Y349C/T366S/L368A/Y407V)-His tagベクターを作製した。
【0497】
(4)
図11(A)および(B)の構造を有するバイスペシフィック抗体発現ベクターの構築
(4-1)pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFvベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片を増幅した。また、MOG01scFvを鋳型として、PCRによりMOG01のVH領域、VL領域の遺伝子断片を増幅した。CH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片とMOG01のVH領域、VL領域の遺伝子断片をpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv2ベクターを作製した。
【0498】
同様に、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv3ベクター、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv4ベクター、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv5ベクター、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv6ベクター、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv7ベクター、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv8ベクター、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv9ベクター、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv10ベクターと、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv11ベクターを作製した。
【0499】
(5)ネガティブコントロールとなる抗体の発現ベクターの構築
ネガティブコントロールとなる抗体を以下の方法で作製した。当該抗体の名称および抗体発現ベクターの名称を表8に、抗体発現ベクターの名称と抗体の塩基配列、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表9に示す。
【0500】
【0501】
【0502】
(2-1)pCI-AVM-hLG4PE(R409K)ベクターの作製
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりAVMのVH領域、VL領域ならびに抗体定常領域の遺伝子断片を増幅し、pCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)ベクターを作製した。
【0503】
(2-2)pCI-AVM-hLG4PE(R409K)-linker-AVMVL-CLベクターの作製
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker-AVMVL-CL領域の遺伝子断片を増幅し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVM scFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)-linker-AVMVL-CLベクターを作製した。
【0504】
(2-3)pCI-AVMVH-CHベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりAVMVH-CH領域の遺伝子断片を増幅し、pCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-AVMVH-CHベクターを作製した。
【0505】
(2-4)pCI-AVM-hLG4PE(R409K/S354C/T366W)-linker-AVMscFv-FLAG tagベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3(R409K/S354C/T366W)-linker領域の遺伝子断片を増幅した。また、N5LG4PE_AVMを鋳型として、PCRによりlinker-AVMscFv-FLAG tag領域の遺伝子断片を増幅した。CH1-Hinge-CH2-CH3(R409K/S354C/T366W)-linker領域とlinker-AVMscFv-FLAG tag領域の遺伝子断片をpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVM scFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K/S354C/T366W)-linker-AVMscFv-FLAG tagベクターを作製した。
【0506】
(2-5)pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFvベクターの構築
合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片を増幅した。また、N5LG4PE_AVMを鋳型として、PCRによりAVMのVH領域、VL領域の遺伝子断片を増幅した。CH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片とAVMのVH領域、VL領域の遺伝子断片をpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFvのNheI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFv3ベクターとpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFv5ベクターを作製した。
【0507】
[実施例16]各種バイスペシフィック抗体の調製
実施例6に記載した方法で、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01 Fab抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv2抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv4抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv6抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv7抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv8抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv9抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv10抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv11抗体、AVM IgG4PE(R409K)_AVM Fab抗体、AVM IgG4PE(R409K)_AVMdscFv3抗体およびAVM IgG4PE(R409K)_AVMdscFv5抗体を調製した。
【0508】
AVM-MOG01 IgG4PE(R409K)抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01sscFv抗体およびAVM IgG4PE(R409K)_AVMsscFv抗体は、下記に記載する方法で調製した。抗体発現プラスミドベクターをExpi293(商標) Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて浮遊性293細胞に導入して培養し、一過性発現系で抗体を発現させた。
【0509】
ベクター導入4日後に培養上清を回収し、孔径0.22μmのメンブランフィルター(MILLIPORE社製)で濾過した。この培養上清中のタンパク質をNi Sepharose樹脂(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてHis tagによるアフィニティー精製した。洗浄液として20mM Imidazole-リン酸緩衝液を用いた。
【0510】
Ni Sepharose樹脂に吸着させた抗体を、500mM Imidazole-リン酸緩衝液により溶出した。次に、VIVASPIN(Sartrius stealin社製)を用いた限外ろ過とNAPカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により溶出液の溶媒をPBSに置換した。
【0511】
このHis tag精製後のタンパク質をFLAG抗体アフィニティゲル(Sigma-Aldrich社製)を用いてアフィニティー精製した。洗浄液としてリン酸緩衝液を用いた。FLAG抗体アフィニティゲルに吸着させた抗体を、20mMクエン酸ナトリウム、50mM NaCl緩衝液(pH3.4)により溶出し、1M Tris-HCl Buffer Solution(pH8.0)を含むチューブに回収した。
【0512】
次に、VIVASPIN(Sartrius stealin社製)を用いた限外ろ過とNAPカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により溶出液の溶媒をPBSに置換後、孔径0.22μmのメンブランフィルター(Millex-GV、MILLIPORE社製)でろ過滅菌を行った。抗体溶液の280nmの吸光度を測定し、精製抗体の濃度を算出した。
【0513】
[実施例17]フローサイトメーターによる各種バイスペシフィック抗体のMOGに対する結合性の評価
実施例6および実施例16で得た各種バイスペシフィック抗体およびネガティブコントロール抗体のMOGに対する結合を以下の手順に従いfluorescence activated cell sorting(FACS)法により評価した。
【0514】
実施例5で得たpEF6_hMOGを、HilyMax(同仁化学社製)を用いてマウス結合組織由来線維芽細胞L929[American Type Culture Collection(ATCC)番号:CCL-1]に導入した。遺伝子導入後の細胞を抗生物質Blasticidin(Invitrogen社製)により選抜した後、限界希釈法によるクローニングを行い、hMOGを細胞表面に発現したL929細胞(以下、hMOG/L929と略記する)を用いて、以下に記載する方法で各種バイスペシフィック抗体の反応性を解析した。
【0515】
hMOG/L929を0.1% NaN
3、1% FBS含有PBSのStaining Buffer(SB)に懸濁し、96穴丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した。遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)の後、上清を除去し、ペレットへ実施例6および実施例16で得た各種MOG01バイスペシフィック抗体を加えて懸濁した後、氷温下で30分間静置した。さらに遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)して上清を除去し、ペレットをSBで洗浄後に、1μg/mLのRPE蛍光標識ヤギ抗ヒト抗体(Southern Biotech社製)を加え、氷温下30分間インキュベートした。SBで洗浄後、SBに懸濁し、フローサイトメーターFACS CANTO II、(ベクトンディッキンソン社製)で各細胞の蛍光強度を測定した。結果を
図12(A)~(C)並びに
図13(A)および(B)に示す。
【0516】
図12(A)~(C)並びに
図13(A)および(B)に示すように、各種バイスペシフィック抗体はいずれもMOGへの結合性を有していることを確認した。特にAVM IgG4PE(R409K)_MOG01Fab抗体[
図10(B)、
図12(C)]、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv6抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv7抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv8抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv9抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv10抗体、およびAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv11抗体[
図11(B)、
図13(B)]で結合性が高いことが明らかとなった。
【0517】
[実施例18]表面プラズモン共鳴検出による各種バイスペシフィック抗体のMOGに対する結合性の評価
実施例6および実施例16で得られた各種バイスペシフィック抗体のMOGへの結合を実施例8と同様の方法で評価した。得られた結果を表10および表11に示す。
【0518】
【0519】
【0520】
表10および表11に示すように、各MOGのバイスペシフィック抗体の解離定数(KD値)は1.2×10-8(M)~2.0×10-7(M)であり、いずれの抗体も良好なアフィニティーを示すことが明らかになった。
【0521】
特にAVM-MOG01 IgG4PE(R409K)抗体[
図10(A)]、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01Fab抗体[
図10(B)]、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体[
図11(B)]では結合性が高いことが明らかとなった。
【0522】
[実施例19]各種バイスペシフィック抗体のマウス脳移行性評価
実施例6および実施例16で得た各種バイスペシフィック抗体およびネガティブコントロール抗体のマウス脳移行性を実施例14の方法で評価した。
【0523】
AVM-MOG01 IgG4PE(R409K)抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01sscFv抗体およびAVM IgG4PE(R409K)_MOG01 Fab抗体について、抗体を5mg/kgで投与し、10日後での血清中抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を
図14(A)~
図16(B)に示す。
【0524】
図14(A)、
図15(A)および
図16(A)に示すように、いずれのMOG01改変抗体でも、ネガティブコントロールと比較して血清中の抗体濃度に差はなかった。一方、
図14(B)、
図15(B)および
図16(B)に示すように、ネガティブコントロールと比較して、AVM-MOG01 IgG4PE(R409K)抗体では約8倍、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01sscFv抗体では約12倍、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01 Fab抗体では約30倍に脳内の抗体量が高まることが示された。
【0525】
以上より、MOGに結合する各種バイスペシフィック抗体は、MOGに結合しないネガティブコントロール抗体よりも、脳内の抗体量を高めることができる一方で、血中半減期には変化がないことが示された。
【0526】
AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体およびAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体について、抗体を5mg/kgで投与し、10日後および28日後での血清中抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を
図17(A)~(D)に示す。
【0527】
図17(A)および(C)に示すように、いずれのバイスペシフィック抗体でも、ネガティブコントロールと比較して血清中の抗体濃度に差はなかった。一方、
図17(B)および(D)に示すように、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv抗体、AVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv3抗体およびAVM IgG4PE(R409K)_MOG01dscFv5抗体では、28日間にわたり脳内の抗体量を数十倍に高められることが示された。また、
図17(D)に示すように、28日後の脳内の抗体量が高いバイスペシフィック抗体は、MOGへの結合性も高く(表11)、MOG結合活性と脳内抗体量が相関することが明らかになった。
【0528】
[実施例20]抗MOG01抗体より強いMOGへの結合性を示す新規MOG抗体の取得
(1)FLAG-Fcが結合した可溶型ヒトMOG抗原および可溶型マウスMOG抗原の細胞外ドメインタンパク質の作製
ヒトMOGとマウスMOGの可溶性抗原として、C末端にFLAG-Fcが付加されたMOGの細胞外ドメインタンパク質を発現するプラスミドベクターINPEP4_hMOG-FLAG-FcとINPEP4_mMOG-FLAG-Fcを実施例4に記載する方法で作製した。hMOG-FLAG-Fcの塩基配列を配列番号100に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号101に示し、mMOG-FLAG-Fcの塩基配列を配列番号102に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号103に示した。FLAG-Fcが結合したMOGの細胞外ドメインタンパク質は、実施例4に記載する方法で一過性発現させ、精製して取得した。
【0529】
(2)GSTが結合したMOGの細胞外ドメインタンパク質の作製
ヒトMOGとマウスMOGの可溶性抗原として、C末端にGSTが付加されたMOGの細胞外ドメインタンパク質を発現するプラスミドベクターN5_hMOG-GSTとN5_mMOG-GSTを実施例4に記載する方法で作製した。hMOG-GSTの塩基配列を配列番号104に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号105に示し、mMOG-GSTの塩基配列を配列番号106に、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号107に示した。GSTが結合したMOGの細胞外ドメインタンパク質は、実施例4に記載する方法で一過性発現させ、精製して取得した。
【0530】
(3)ヒト抗体産生マウスからの抗MOG抗体の取得
ヒト抗体産生マウス(Ishida& Lonberg, IBC’s 11th Antibody Engineering, Abstract 2000; Ishida, I. et al., Cloning & Stem Cells 4, 85-96 (2002)および石田 功 (2002) 実験医学 20, 6, 846-851)に、hMOG-GSTとmMOG-GSTを百日咳ワクチンとアラムゲルと混合して、腹腔内または皮内に投与した。
【0531】
初回免疫以降、hMOG-GSTとmMOG-GSTを3回免疫した。最終免疫から4日後に、腹腔内投与を行った個体から解剖して脾臓を採材し、赤血球除去試薬(SIGMA社製)にて赤血球を除去後、CELLBANKER 1(日本全薬工業株式会社製)にて凍結した。皮内投与を行った個体からは、解剖により腋下リンパ節を採材し、赤血球除去試薬にて赤血球を除去後、CELLBANKER 1にて凍結した。得られた脾臓細胞と腋下リンパ節の細胞から、RNeasy Plus Mini kit(QIAGEN社製)を用いてRNAを抽出し、SMARTer RACE cDNA増幅キット(Clontech社製)にてcDNAを合成した。合成したcDNAを用いて実施例1に記載の方法でヒト抗体産生マウス由来ファージライブラリを作製した。
【0532】
このヒト抗体産生マウス由来ファージライブラリを用いて、ファージディスプレイ法により抗ヒトMOGモノクローナル抗体を取得した。ファージディスプレイ法及びクローニングELISAは、hMOG-FLAG_FcとmMOG-FLAG_Fcを用いて、実施例1に記載した方法で行った。
【0533】
hMOG-FLAG_Fc、mMOG-FLAG_FcおよびhMOG/Expi293F細胞に結合したクローンについて配列解析を行い、抗MOG抗体ファージミドベクターpCANTAB_MOG301、pCANTAB_MOG303、pCANTAB_MOG307、pCANTAB_MOG310、pCANTAB_MOG312、pCANTAB_MOG326、pCANTAB_MOG329、pCANTAB_MOG446、pCANTAB_MOG456およびpCANTAB_MOG473を取得した。
【0534】
以降の文章において、pCANTAB_MOG301、pCANTAB_MOG303、pCANTAB_MOG307、pCANTAB_MOG310、pCANTAB_MOG312、pCANTAB_MOG326、pCANTAB_MOG329、pCANTAB_MOG446、pCANTAB_MOG456およびpCANTAB_MOG473を用いて発現させたファージが提示する抗MOG scFv抗体の名称を、それぞれMOG301抗体、MOG303抗体、MOG307抗体、MOG310抗体、MOG312抗体、MOG326抗体、MOG329抗体、MOG446抗体、MOG456抗体およびMOG473抗体と記載する。
【0535】
各種抗MOG抗体のVHまたはVLをコードする塩基配列、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表12に示す。
【0536】
【0537】
また、それぞれMOG301抗体には相同性91~93%の類似配列クローン(MOG426、MOG428)、MOG303抗体には相同性85~95%の類似配列クローン(MOG313、MOG314、MOG315、MOG331、MOG357、MOG476)、MOG307抗体には相同性97~99%の類似配列クローン(MOG323、MOG341、MOG354、MOG355)、MOG310抗体には相同性85~98%の類似配列クローン(MOG308、MOG316、MOG319、MOG320、MOG338、MOG352、MOG359、MOG478)、MOG329抗体には相同性85%の類似配列クローン(MOG470)、およびMOG456抗体には相同性84%の類似配列クローン(MOG418)がMOG結合性を指標にしたファージディスプレイ法により得らた。これらの類似クローンはhMOG-FLAG_Fc、mMOG-FLAG_FcおよびhMOG/Expi293F細胞に結合することが確認されたことから、各抗体クローンのアミノ酸配列と相同性の高い抗体クローンも同様にMOG結合活性を有する抗体であることが明らかになった。
【0538】
類似クローンのVHまたはVLをコードする塩基配列、当該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表13に、類似クローンのアミノ酸配列の比較を
図18~
図22(B)に示す。
【0539】
【0540】
[実施例21]抗MOG scFv-Fc抗体の作製
ファージミドベクターpCANTAB_MOG01を鋳型として、PCRによりscFv領域の遺伝子断片を増幅した。重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、PCRによりHinge-CH2-CH3領域の遺伝子断片を増幅した。得られた遺伝子断片をN5KG4PEベクター(国際公開第2002/088186号に記載)に挿入し、N5-MOG01 scFv-hG4PEベクターを作製した。
【0541】
ファージミドベクターpCANTAB_MOG301を鋳型として、PCRによりscFv領域の遺伝子断片を増幅した。重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、PCRによりHinge-CH2-CH3領域の遺伝子断片を増幅した。得られた遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-MOG301 scFv-hG4PE(R409K)ベクターを作製した。
【0542】
同様の方法で、表12に示す各種抗MOG抗体のscFv領域の遺伝子断片を挿入した抗体発現ベクターを作製し、それぞれpCI-MOG303 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG307 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG310 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG312 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG326 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG329 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG446 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG456 scFv-hG4PE(R409K)およびpCI-MOG473 scFv-hG4PE(R409K)と命名した。
【0543】
作製した抗MOG抗体の発現ベクターを、実施例6に記載した方法で調製した。抗MOG抗体の発現ベクターpCI-MOG301 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG303 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG307 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG310 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG312 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG326 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG329 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG446 scFv-hG4PE(R409K)、pCI-MOG456 scFv-hG4PE(R409K)およびpCI-MOG473 scFv-hG4PE(R409K)を発現させてMOG301 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG303 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG307 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG310 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG312 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG326 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG329 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG446 scFv-hG4PE(R409K)抗体、MOG456 scFv-hG4PE(R409K)抗体およびMOG473 scFv-hG4PE(R409K)抗体をそれぞれ取得した。
【0544】
[実施例22]フローサイトメーターによる抗MOG抗体のMOGに対する結合性の評価
実施例21で得た抗MOG抗体のMOGへの結合を実施例7と同様の方法で評価した。結果を
図23~25に示す。
【0545】
図23~25に示すように、MOG01 scFv-hG4PE、MOG301 scFv-hG4PE(R409K)、MOG303 scFv-hG4PE(R409K)、MOG307 scFv-hG4PE(R409K)、MOG310 scFv-hG4PE(R409K)、MOG312 scFv-hG4PE(R409K)、MOG326 scFv-hG4PE(R409K)、MOG329 scFv-hG4PE(R409K)、MOG446 scFv-hG4PE(R409K)、MOG456 scFv-hG4PE(R409K)およびMOG473 scFv-hG4PE(R409K)はいずれも、hMOG/Expi293F細胞およびmMOG/Expi293F細胞に結合活性を示した。
【0546】
[実施例23]表面プラズモン共鳴検出による抗MOG抗体のMOGに対する結合性の評価
実施例21で得たMOG01 scFv-hG4PE、MOG301 scFv-hG4PE(R409K)、MOG303 scFv-hG4PE(R409K)、MOG307 scFv-hG4PE(R409K)、MOG329 scFv-hG4PE(R409K)、MOG446 scFv-hG4PE(R409K)、MOG456 scFv-hG4PE(R409K)およびMOG473 scFv-hG4PE(R409K)のヒトMOGおよびマウスMOGへの結合を実施例8と同様の方法で評価した。アナライトには、hMOG-GSTとmMOG-GSTを用いた。ヒトMOGへの結合性評価の結果を表14に、マウスMOGへの結合性評価の結果を表15に示す。
【0547】
【0548】
【0549】
表14および表15に示すように、各抗MOG抗体のヒトMOGに対する解離定数(KD値)は1.0×10-10(M)~3.6×10-9(M)、マウスMOGに対する解離定数(KD値)は1.9×10-10(M)~6.9×10-9(M)であり、いずれの抗体も良好なアフィニティーを示すことが明らかになった。MOG01 scFv-hG4PEでは、結合速度定数kaが機器測定範囲外となり、KD値が一意に決定できていない。
【0550】
[実施例24]酵素融合抗体の作製
抗MOG01IgG抗体および抗AVMIgG抗体のC末端に酸性スフィンゴミエリナーゼ(Acid Sphingomyelinase;ASM)が融合した酵素融合抗体を以下に記載する方法で作製した。抗MOG01IgG抗体のC末端にASMが融合した抗体の発現ベクターをpCI-MOG01-hLG4PE(R409K)_ASM、抗AVMIgG抗体のC末端にASMが融合した抗体の発現ベクターをpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_ASMと命名した。
【0551】
配列番号150に示すASMの合成遺伝子を鋳型として、PCRによりlinker-ASM領域の遺伝子断片を増幅した。また、合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH1-Hinge-CH2-CH3(R409K)領域の遺伝子断片を合成した。N5LG4PE_MOG01を鋳型として、MOG01軽鎖領域の遺伝子断片とMOG01 VH領域の遺伝子断片をPCRにより増幅した。
【0552】
得られた遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-MOG01-hLG4PE(R409K)_ASMベクターを作製した。合成遺伝子を鋳型として、PCRによりCH2-CH3領域の遺伝子断片を増幅した。CH2-CH3領域とlinker-ASM領域の遺伝子断片をpCI-AVM-hLG4PE(R409K)ベクターのPmlI-BamHIサイトに挿入し、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_ASMを作製した。
【0553】
pCI-MOG01-hLG4PE(R409K)_ASMとpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_ASMを実施例6に示す方法で発現、精製した。pCI-MOG01-hLG4PE(R409K)_ASMを発現させて得た抗体をMOG01 IgG4PE(R409K)-ASM、pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_ASMを発現させて得た抗体をAVM IgG4PE(R409K)-ASMと命名した。
【0554】
[実施例25]酵素融合抗体の活性評価
MOG01 IgG4PE(R409K)-ASMのMOG発現細胞への結合性を実施例23と同様の方法により確認した結果を
図26に示す。また、MOG可溶性抗原への結合性を実施例8と同様の方法により確認した結果、MOG01 IgG4PE(R409K)-ASMの解離定数(KD値)は2.9×10
-9(M)であり、良好なアフィニティーを示した。
【0555】
作製したMOG01 IgG4PE(R409K)-ASMおよびAVM IgG4PE(R409K)-ASMへ、抗ASM抗体(LSBio社製)が結合することを以下に示すELISA法で確認した。
【0556】
ELISAでは、MAXISORP(NUNC社製)にMOG01 IgG4PE(R409K)-ASMおよびAVM IgG4PE(R409K)-ASMを固相化(100ng/50μL)し、SuperBlock Blocking Buffer(Thermo社製)を用いてMOG01 IgG4PE(R409K)-ASMおよびAVM IgG4PE(R409K)-ASMが結合していない部位をブロックした。ネガティブコントロールとして、抗MOG01IgG抗体および抗AVMIgG抗体を固相化(50ng/50μL)したプレートも用意した。各ウェルに0.2、1、5μg/mLの濃度にPBS-Tで希釈した抗ASM抗体を加え、室温下で1時間反応させた後、各ウェルをPBS-Tで洗浄した。
【0557】
次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された抗Mouse Immunoglobulins抗体(Dako社製)をPBS-Tで希釈した溶液を各ウェルに加え、室温下1時間反応させた。TMB発色基質液(DAKO社製)を加え、室温下でインキュベートした。各ウェルに2M塩酸を加えて発色反応を止め、波長450nm(参照波長570nm)での吸光度を測定した。得られた結果を
図27に示す。
【0558】
図27に示すように、作製したASM融合抗体は、抗ASM抗体によって認識され、結合されることが示された。また、作製したMOG01 IgG4PE(R409K)-ASMおよびAVM IgG4PE(R409K)-ASMのスフィンゴミエリナーゼ活性をスフィンゴミエリナーゼ活性測定キット(Echelon Biosciences社製)を用いて測定した結果、作製したASM融合抗体が酵素活性を有していることが確認された。
以上の結果から、MOG抗体に酵素を融合させた酵素融合抗体は抗原結合活性、酵素活性いずれも保持されていることが確認された。
【0559】
[実施例26]酵素融合抗体のマウス脳移行性評価
実施例24で得たASM融合抗体のマウス脳移行性を実施例14と同様の方法で評価した。ASM融合抗体を5mg/kgで投与し、10日後での血清中抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を
図28に示す。
【0560】
図28に示すように、MOG01 IgG4PE(R409K)-ASMは、AVM IgG4PE(R409K)-ASMと比較して血清中の抗体濃度に差はなかった。一方で、MOG01 IgG4PE(R409K)-ASMではAVM IgG4PE(R409K)-ASMと比較して約58倍に脳内の抗体量が高まることが示された。
【0561】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年12月26日付けで出願された日本特許出願(特願2016-251106号)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【配列表フリーテキスト】
【0562】
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配列番号134-人工配列の説明:pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv9の抗体配列の塩基配列(シグナル配列除く)
配列番号135-人工配列の説明:pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv9の抗体配列のアミノ酸配列(シグナル配列除く)
配列番号136-人工配列の説明:pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv10の抗体配列の塩基配列(シグナル配列除く)
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配列番号139-人工配列の説明:pCI-AVM-hLG4PE(R409K)_MOG01scFv11の抗体配列のアミノ酸配列(シグナル配列除く)
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配列番号289-人工配列の説明:MOG341のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
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配列番号291-人工配列の説明:MOG354のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号292-人工配列の説明:MOG354のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号293-人工配列の説明:MOG354のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
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配列番号295-人工配列の説明:MOG355のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号296-人工配列の説明:MOG355のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号297-人工配列の説明:MOG355のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
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配列番号299-人工配列の説明:MOG308のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号300-人工配列の説明:MOG308のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号301-人工配列の説明:MOG308のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号302-人工配列の説明:MOG308のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号303-人工配列の説明:MOG316のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号304-人工配列の説明:MOG316のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号305-人工配列の説明:MOG316のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号306-人工配列の説明:MOG316のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号307-人工配列の説明:MOG319のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号308-人工配列の説明:MOG319のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号309-人工配列の説明:MOG319のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号310-人工配列の説明:MOG319のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号311-人工配列の説明:MOG320のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号312-人工配列の説明:MOG320のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号313-人工配列の説明:MOG320のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号314-人工配列の説明:MOG320のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号315-人工配列の説明:MOG338のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号316-人工配列の説明:MOG338のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号317-人工配列の説明:MOG338のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号318-人工配列の説明:MOG338のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号319-人工配列の説明:MOG352のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号320-人工配列の説明:MOG352のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号321-人工配列の説明:MOG352のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号322-人工配列の説明:MOG352のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号323-人工配列の説明:MOG359のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号324-人工配列の説明:MOG359のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号325-人工配列の説明:MOG359のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号326-人工配列の説明:MOG359のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号327-人工配列の説明:MOG478のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号328-人工配列の説明:MOG478のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号329-人工配列の説明:MOG478のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号330-人工配列の説明:MOG478のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号331-人工配列の説明:MOG470のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号332-人工配列の説明:MOG470のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号333-人工配列の説明:MOG470のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号334-人工配列の説明:MOG470のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号335-人工配列の説明:MOG418のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号336-人工配列の説明:MOG418のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号337-人工配列の説明:MOG418のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号338-人工配列の説明:MOG418のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
【配列表】