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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】脱脂洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/04 20060101AFI20230608BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20230608BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20230608BHJP
   C23G 3/00 20060101ALI20230608BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20230608BHJP
   C02F 1/48 20230101ALI20230608BHJP
【FI】
B08B3/04 Z
B08B3/10
B08B3/02 A
C23G3/00 Z
B01D21/02 F
C02F1/48 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019237016
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104487
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】515243246
【氏名又は名称】株式会社サイライズ
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】深町 尭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良行
(72)【発明者】
【氏名】森 豊
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-16189(JP,Y1)
【文献】実開昭57-181310(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00-3/14
C23G 3/00
B01D 21/02
C02F 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により被洗浄物を脱脂洗浄する脱脂洗浄装置であって、
槽下部に、粒子を含有する洗浄水から前記粒子を回収する粒子回収部材を有する脱脂槽を備え、
前記粒子回収部材は、
長手方向に延在する凹状の内表面ISと、前記内表面ISに対応する凸状の外表面OSとを含んでなる上側単位部材Aが、間隔Dを隔てて並列配置されてなる上側部材と、
長手方向に延在する凹状の内表面ISを有する下側単位部材Bが、間隔Dを隔てて並列配置されてなる下側部材と、
を有し、且つ、
前記上側部材及び前記下側部材は、前記間隔Dと前記内表面ISとが相互に対向し、前記間隔Dと前記内表面ISとが相互に対向するように、対向配置され、さらに、
相互に対向する、前記内表面ISの少なくとも一部と、前記内表面ISの少なくとも一部とにより前記粒子が通過可能な流路Pが形成されてなる、
脱脂洗浄装置。
【請求項2】
前記粒子回収部材の前記上側単位部材A及び下側単位部材Bの双方又は少なくとも一方が、角度θをなす2側壁を有する断面山形部材よりなる、請求項1に記載の脱脂洗浄装置。
【請求項3】
前記粒子回収部材の、前記上側単位部材Aが断面山形部材であり、前記下側単位部材Bが断面U字部材である、請求項1又は2に記載の脱脂洗浄装置。
【請求項4】
前記脱脂洗浄装置が、前記脱脂槽に対して接続された洗浄水供給ライン、及び、洗浄水循環ラインを更に備え、前記洗浄水供給ラインが前記脱脂槽に対して前記洗浄水を供給する供給位置、前記洗浄水循環ラインが前記脱脂槽から前記洗浄水を汲み出す汲み出し位置、及び、前記洗浄水循環ラインが前記脱脂槽に対して前記洗浄水を再供給する再供給位置が、全て、前記粒子回収部材よりも上側に位置する、請求項1~3の何れかに記載の脱脂洗浄装置。
【請求項5】
前記脱脂洗浄装置が、さらに、前記洗浄水に対して、電磁波を照射する電磁波発振部と、前記電磁波発振部に交流電流を流す交流電流発生器とを有する電磁波発生装置を備える、請求項1~4の何れかに記載の脱脂洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱脂洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械加工した鉄及び非鉄の金属部品に対して付着した油分及び切削屑を除去するために、脱脂洗浄装置が用いられてきた。脱脂洗浄装置は、洗浄液及び被洗浄物を槽内に収容可能である脱脂槽にて、被洗浄物表面に付着した油、研磨粉、及び切削屑等を除去する。この際、被洗浄物表面から剥離された油、研磨粉、及び切削屑等の不純物は、凝集体を形成して、自重により沈降し、脱脂槽の底部に堆積する傾向があった。
【0003】
従来、脱脂洗浄装置において、洗浄効果を向上させることが試みられてきた。例えば、特許文献1では、金属部品をアルカリ液に浸漬して脱脂する脱脂槽と、かかる脱脂槽から取り出した金属部品に付着するアルカリ液及びスカムを除くリンス層とを有する脱脂洗浄装置において、脱脂槽の前段に洗浄水をワークに噴射する予備洗浄槽を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-247676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構成を有する従来の脱脂洗浄装置を用いて被洗浄物を洗浄した場合に、被洗浄物の浸漬及び引き上げに際して、脱脂槽の底部に形成された堆積層から不純物が舞い上がり洗浄液中にて再分散することがあった。洗浄液中にて不純物が再分散すると、十分な洗浄効果が得られないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、脱脂槽の底部に形成された不純物の堆積層から不純物が洗浄液中に再分散することを抑制して、高い洗浄効果を発揮可能な、脱脂洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の脱脂洗浄装置は、洗浄水により被洗浄物を脱脂洗浄する脱脂洗浄装置であって、槽下部に、粒子を含有する洗浄水から前記粒子を回収する粒子回収部材を有する脱脂槽を備え、前記粒子回収部材は、長手方向に延在する凹状の内表面ISと、前記内表面ISに対応する凸状の外表面OSとを含んでなる上側単位部材Aが、間隔Dを隔てて並列配置されてなる上側部材と、長手方向に延在する凹状の内表面ISを有する下側単位部材Bが、間隔Dを隔てて並列配置されてなる下側部材と、を有し、且つ、前記上側部材及び前記下側部材は、前記間隔Dと前記内表面ISとが相互に対向し、前記間隔Dと前記内表面ISとが相互に対向するように、対向配置され、さらに、相互に対向する、前記内表面ISの少なくとも一部と、前記内表面ISの少なくとも一部とにより前記粒子が通過可能な流路Pが形成されてなる、ことを特徴とする。このように、所定の構造を有する粒子回収部材を槽下部に備える脱脂洗浄装置によれば、脱脂槽の底部に形成された不純物の堆積層から不純物が洗浄液中に再分散することを抑制して、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0008】
ここで、本発明の脱脂洗浄装置は、前記粒子回収部材の前記上側単位部材A及び下側単位部材Bの双方又は少なくとも一方が、角度θをなす2側壁を有する断面山形部材よりなることが好ましい。上側部材及び下側部材の双方又は少なくとも一方が、断面山形部材により構成されている、粒子回収部材によれば、脱脂槽の下部にて、粒子を効率的に回収することができる。
【0009】
ここで、本発明の脱脂洗浄装置にて、前記粒子回収部材の、前記上側単位部材Aが断面山形部材であり、前記下側単位部材Bが断面U字部材であることが好ましい。粒子回収部材の、上側部材を構成する上側単位部材Aが断面山形部材であり、下側部材を構成する下側単位部材Bが断面U字部材であれば、脱脂槽の下部にて、粒子を一層効率的に回収することができる。
【0010】
また、本発明の脱脂洗浄装置にて、前記脱脂洗浄装置が、前記脱脂槽に対して接続された洗浄水供給ライン、及び、洗浄水循環ラインを更に備え、前記洗浄水供給ラインが前記脱脂槽に対して前記洗浄水を供給する供給位置、前記洗浄水循環ラインが前記脱脂槽から前記洗浄水を汲み出す汲み出し位置、及び、前記洗浄水循環ラインが前記脱脂槽に対して前記洗浄水を再供給する再供給位置が、全て、前記粒子回収部材よりも上側に位置する、ことが好ましい。粒子回収部材よりも上側に、洗浄水供給ラインが脱脂槽に対して洗浄水を供給する供給位置、洗浄水循環ラインが脱脂槽から洗浄水を汲み出す汲み出し位置、及び洗浄水循環ラインが脱脂槽に対して洗浄水を再供給する再供給位置のすべてが配置されていれば、不純物が洗浄液中に再分散することが一層良好に抑制され得る。
【0011】
また、本発明の脱脂洗浄装置にて、前記脱脂洗浄装置が、さらに、前記洗浄水に対して、電磁波を照射する電磁波発振部と、前記電磁波発振部に交流電流を流す交流電流発生器とを有する電磁波発生装置を備える、ことが好ましい。脱脂洗浄装置が電磁波発生装置を備えていれば、洗浄効果を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脱脂槽の底部に形成された不純物の堆積層から不純物が洗浄液中に再分散することを抑制して、高い洗浄効果を発揮可能な、脱脂洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従う脱脂洗浄装置に備えられうる粒子回収部材の一例の概略構成を示す図である。
図2】本発明に従う脱脂洗浄装置に備えられうる粒子回収部材の変形例を示す図である。
図3】本発明に従う脱脂洗浄装置の概略的な全体構成の一例を示す図である。
図4】本発明に従う脱脂洗浄装置に備えられる電磁波発生装置の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。ここで、本発明の脱脂洗浄装置は、特に限定されることなく、例えば、機械加工した金属又は非金属より成る被洗浄物を、洗浄液等を用いて脱脂処理して、被洗浄物に対して付着している油、研磨粉、及び切削屑等を除去する際に、好適に用いることができる。
【0015】
(脱脂洗浄装置)
本発明の脱脂洗浄装置は、洗浄水により被洗浄物を洗浄することにより、被洗浄物を脱脂する脱脂洗浄装置である。そして、本発明の脱脂洗浄装置は、槽下部に、粒子を含有する洗浄水から粒子を回収する粒子回収部材を有する、脱脂槽を備える。このため、本発明の脱脂洗浄装置によれば、脱脂槽の底部に形成された不純物の堆積層から不純物が洗浄液中に再分散することを抑制して、高い洗浄効果を発揮することができる。
【0016】
その理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。まず、従来の、粒子回収部材を有さない脱脂槽を備える脱脂洗浄装置では、脱脂槽にて脱脂された被洗浄物から脱落した、油、研磨粉、切削屑、及びこれらの凝集体といった汚染物質のうち、比重の重いものは、脱脂槽底部に堆積して堆積層を形成する傾向があった。堆積層の構成成分は、脱脂槽に対して被洗浄物が浸漬され、さらに、脱脂槽から被洗浄物が引き上げられる際に、上記のような汚染物質が巻き上げられて再度洗浄液中に分散することがあった。従って、従来の粒子回収部材を有さない脱脂槽を備える脱脂洗浄装置では、被洗浄物の洗浄効果が十分に高められないことがあった。ここで、本発明に係る脱脂洗浄装置は、粒子を含有する洗浄水から粒子を回収する粒子回収部材を槽下部に有する脱脂槽を備える。従って、脱脂槽における汚染物質の巻き上がりを抑えることができ、脱脂槽中の洗浄液をクリーンな状態に保つことができる。その結果、本発明の脱脂洗浄装置によれば、高い洗浄効果を達成することができる、と推察される。
【0017】
図1に、本発明に従う脱脂洗浄装置に備えられうる粒子回収部材の一例の概略構成を示す。図1に示す粒子回収部材1は、上側部材AXと、下側部材BXとを有し、これらの上側部材AX及び下側部材BXが、枠状体Fによって支持され、枠状体F上部のフック式の取り付け部が脱脂槽10の槽上端部に係止されることにより、脱脂槽10内に載置されてなる。上側部材AXは、長手方向に延在する凹状の内表面ISと、かかる内表面ISに対応する凸状の外表面OSとを含んでなる上側単位部材Aが、間隔Dを隔てて、支持部材Sにより支持されることにより、並列配置されてなる。また、下側部材BXは、長手方向に延在する凹状の内表面ISを有する下側単位部材Bが、間隔Dを隔てて、支持部材Sにより支持されることにより、並列配置されてなる。ここで、支持部材S及びSは、それぞれ、上側単位部材A及び下側単位部材Bの並列方向に長手方向が一致するように配置された棒状の部材であり得る。そして、上側部材AX及び下側部材BXは、複数の上側単位部材Aの配置間隔である間隔Dと、複数の下側単位部材Bの内表面ISとが相互に対向し、且つ、複数の下側単位部材Bの配置間隔である間隔Dと、複数の上側単位部材Aの内表面ISとが相互に対向するように、対向配置されている。そして、相互に対向する、上側単位部材Aの内表面ISの少なくとも一部と、下側単位部材Bの内表面ISの少なくとも一部とにより回収対象である粒子、即ち上記したような汚染物質が通過可能な流路Pが形成されている。
【0018】
上側単位部材Aの凸状の外表面OSは、図1に示すように、2つの傾斜面より形成されていてもよいし、後述する図2の変形例に示すように、1つの湾曲面として形成されていてもよい。外表面OSが2つの傾斜面より形成されている場合に、対応する凹状の内表面ISもまた、2つの傾斜面より形成されうる。この場合、上側単位部材Aは、図1に示すように、角度θをなす2側壁を有する断面山形部材であり得る。角度θは、特に限定されることなく、180°未満であればよく、120°以下が好ましく、90°以下がより好ましく、60°以上が好ましい。角度θをかかる範囲内とすることにより、粒子回収部材1による粒子回収効率を一層高めることができる。なお、上側部材AXは複数の上側単位部材Aを備えるが、1つの上側部材AXに備えられる複数の部材Aの形状は、同一であることが好ましいが、相異なっていてもよい。
【0019】
さらに、下側単位部材Bの凹状の内表面ISは、図1~2に示すように、湾曲面として形成されうる。下側単位部材Bの凹状の内表面ISが湾曲面として形成されている場合に、下側単位部材Bは、断面U字部材であり得る。また、図1~2に示すように、下側単位部材Bの外表面OSは、内表面ISと同様の湾曲面でありうる。しかし、下側単位部材Bの外表面OSの形状は、図示の態様に限定されることなく、あらゆる形状であり得る。なお、下側部材BXは、複数の下側単位部材Bを備えるが、1つの下側部材BXに備えられる複数の下側単位部材Bの形状は、それぞれ同一であることが好ましいが、相異なっていてもよい。
【0020】
尚、図1~2では、下側単位部材Bが断面U字部材である態様を示したが、これらの態様に限定されることなく、下側単位部材Bが断面山形部材であってもよい。
【0021】
図1に示す粒子回収部材1により粒子が回収される際の粒子の動線は、下記の通りであると推察される。まず、汚染物質等の回収対象物である粒子70は、自重で沈降して上側単位部材Aの凸状の外表面OSに接した場合に、傾斜面に沿って降下する。そして、降下した粒子は、下側単位部材Bの凹状の内表面ISにより鉛直方向下端面が画定される領域(以下、領域bとも称する。)内に蓄積される。ここに、被洗浄物Wの浸漬等のタイミングで、鉛直方向上部から下部に向かう方向の流れが生じると、上記した領域b内に蓄積された粒子70が、流路Pを経て、上側単位部材Aの凹状の内表面ISにより鉛直方向上端面が確定される領域(以下、領域aとも称する。)に移動する。そして、領域a内に移動した粒子70は、再度、自重に従って鉛直方向下方に向かって沈降して、脱脂槽10の底部に蓄積し得る。このようにして、粒子回収部材1により回収され、脱脂槽10の底部に集められた粒子70は、脱脂槽10の上部にて生じ得る水流の影響を受け難くなる。より具体的には、脱脂槽10の底部に集められた粒子70は、巻き上がろうとしても領域aにてトラップされうる。従って、かかる粒子回収部材1を備える脱脂槽10内では、洗浄液中に汚染物質(粒子70)が再分散して浮遊することを効果的に抑制することができる。そのため、かかる脱脂槽10を備える脱脂洗浄装置によれば、洗浄液を比較的清浄な状態に維持することができ、高い洗浄効果を持続的に発揮することができる。
【0022】
ここで、上側単位部材A、下側単位部材B、支持部材S及びSの材質は、特に限定されることなく、樹脂又は鉄、鋼などの金属であり得る。また、枠状体Fの材質は、特に限定されることなく、鉄、鋼などの金属であり得る。また、上側単位部材Aの内表面ISと下側単位部材Bの内表面ISとの間に形成される流路Pの幅は、粒子の移送効率を高める観点から、1cm以上2cm以下であることが好ましい。
【0023】
図2には、粒子回収部材の変形例を示す。図2に示すように、変形例にかかる粒子回収部材1’は、曲面よりなる凹状の内表面ISA-1及び、同じく曲面よりなる凹状の外表面OSA-1を有する、上側単位部材A-1を含む、上側部材AX’と、図1を参照して説明した構造と同じ構造を有する下側部材BXと、を備える。上側部材AX’においては、上側単位部材A-1が、間隔DA-1を隔てて並列配置されてなる。その他の点については、粒子回収部材1’は、図1を参照して説明した粒子回収部材1と同様の構成を有する。なお、図2にて、上側単位部材A-1の断面形状と、下側単位部材Bの断面形状とが、相異なる態様を図示している。しかし、本発明に係る粒子回収部材においては、図示の態様に限定されることなく、上側単位部材A-1の断面形状と、下側単位部材Bの断面形状とが同一であってもよい。
【0024】
図3に、本発明に従う脱脂洗浄装置の一例の概略構成を示す。図3に示す脱脂洗浄装置100は、図1を参照して説明した所定の構造を満たす粒子回収部材1を備える脱脂槽10、洗浄水供給ライン20、洗浄水循環ライン30を備える。さらに、脱脂洗浄装置100は、スプレー用洗浄水くみ上げライン40、及び、スプレーノズル41を備えている。さらに、脱脂洗浄装置100は、洗浄水に対して電磁波を照射可能に構成された電磁波発生装置60A~60Cを備えている。
【0025】
脱脂槽10は、粒子回収部材1を槽下部に備えるとともに、洗浄水及び被洗浄物Wを収容可能に構成された槽である。粒子回収部材1は、脱脂槽10の鉛直方向下部に備えられる限りにおいて特に限定されることなく、脱脂槽10を平面視した場合に槽底面の少なくとも一部を被覆するような態様で、配置され得る。より具体的には、粒子回収部材は、槽底面を全面被覆する態様で延在していてもよいし、槽底面の一部を被覆する態様で延在していてもよい。図3には、粒子回収部材1が、槽底面を全面被覆しており、粒子回収部材1の上に被洗浄物Wが載置されている態様を示す。なお、図示しないが、被洗浄物Wは後述するチャック54により把持された状態で、脱脂槽10内に配置され、洗浄されてもよい。さらに、図示しないが、粒子回収部材が槽底面の一部を被覆する態様で延在する場合に、粒子回収部材の存在しない槽底面に直接、被洗浄物Wが載置されて洗浄されるように構成してもよい。
【0026】
なお、脱脂槽10内にて洗浄に用いる洗浄水としては、特に限定されることなく、水等の洗浄用流体に対してアルカリ剤を溶解させてなるアルカリ液を好適に用いることができる。アルカリ剤としては、特に限定されることなく、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)及び炭酸ナトリウム等のアルカリ剤を水に対して溶解して成る水溶液が挙げられる。中でも、本発明に従う脱脂洗浄装置による洗浄効果を一層高める観点から、洗浄液としては、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0027】
脱脂槽10に備えられた粒子回収部材1は、洗浄水供給ライン20が脱脂槽10に対して洗浄水を供給する供給位置、洗浄水循環ライン30が脱脂槽10から洗浄水を汲み出す汲み出し位置、及び、洗浄水循環ライン30が脱脂槽10に対して洗浄水を再供給する再供給位置が、粒子回収部材1よりも上側に位置するような態様で配置されていることが好ましい。さらに、図示の態様では、脱脂洗浄装置100がスプレー用洗浄水くみ上げライン40を備えているので、粒子回収部材1が、スプレー用洗浄水くみ上げライン40が脱脂槽10から洗浄水を汲み出す位置よりも下側に位置するように配置されていることが好ましい。このような配置関係を満たすように、粒子回収部材1が配置されていれば、回収された粒子が洗浄水中に再度巻き上がることを一層効果的に抑制することができる。なお、図示しないが、脱脂槽10は、底部に粒子回収口を有していてもよい。また、図示しないが、脱脂槽10の底部に傾斜が設けられる、あるいは、底部がテーパ状に形成されるなど、粒子の回収を容易としうる構造となっていてもよい。また、粒子回収部材1は、脱脂槽10の洗浄にあたり、枠状体Fごと引き上げて、脱脂槽10から脱着することができる。この状態で、脱脂槽10から底部に蓄積した堆積物を除去した後に、再度、枠状体Fのフック式の取り付け部を脱脂槽10の槽上端部に係止させて、粒子回収部材1を脱脂槽10に対して取り付けることができる。
【0028】
洗浄水供給ライン20は、脱脂槽10に対して洗浄水を供給するための配管である。そして、洗浄水供給ライン20は、電磁波発生装置60Aを備えており、アルカリ剤投入装置21を更に備えていてもよい。
【0029】
洗浄水循環ライン30は、脱脂槽10に対して接続され、脱脂槽10内の洗浄水を吸入してから再度脱脂槽10内に洗浄水を流入させるための配管である。洗浄水循環ライン30は、洗浄水を循環させるための駆動力を生じさせ得るポンプP1を備え、かかるポンプP1の前段又は後段に(図3では前段に配置される態様を示す。)電磁波発生装置60Bを備える。さらに、洗浄水循環ライン30は、三方弁31を介して接続された排水管32を備えていてもよい。排水管32を通過した洗浄水は脱脂槽10からは排水され、排水処理などの後処理工程等に供されうる。さらに、洗浄水循環ライン30は、熱交換器33を備えていてもよい。熱交換器33により、洗浄水の温度を適温に調節することで、洗浄効率を一層高めることができる。さらに、洗浄水循環ライン30は、計測装置34を備えていてもよい、計測装置34としては、洗浄水循環ライン30内を流れる洗浄水の諸属性を測定し得る、一種又は複数種の計測装置が備えられ得る。例えば、計測装置34は、pH計、導電率計、及びアルカリ度計などから選択される少なくとも一種の計測装置であり得る。
【0030】
スプレー用洗浄水くみ上げライン40は、スプレーノズル41から噴射する洗浄水を脱脂槽10内からくみ上げるための配管である。スプレー用洗浄水くみ上げライン40は、洗浄水を脱脂槽10内からくみ上げてスプレーノズル41に対して供給するための駆動力を生じさせ得るポンプP2を備え、かかるポンプP2の前段又は後段に(図3では前段に配置される態様を示す。)電磁波発生装置10Cを備える。さらに、スプレー用洗浄水くみ上げライン40内を流れてきた洗浄水は、スプレーノズル41を経て被洗浄物Wに対して噴射される。
【0031】
さらに、図3では、脱脂洗浄装置100として、スプレー用洗浄水くみ上げライン40にスプレーノズル41が取り付けられた態様を例示したが、本発明の脱脂洗浄装置はかかる態様に何ら限定されない。例えば、スプレーノズルが、洗浄水供給ライン20及び洗浄水循環ライン30の双方又は少なくとも一方に対して、取り付けられていてもよい。この場合であっても、スプレーノズルが取り付けられたラインに対して、スプレーノズルよりも前段側に電磁波発生装置が取り付けられていることが好ましい。電磁波処理がなされた洗浄水を被洗浄物Wに対して噴射することにより、洗浄効果を飛躍的に高めることができるからである。
【0032】
そして、図3に示す脱脂洗浄装置100は、運搬装置50を備えている。運搬装置50は、レール51、台車52、ホイスト53、及びチャック54を備える。チャック54により被洗浄物Wを把持し、台車52がレール51に沿って摺動することにより、被洗浄物Wが所望の位置に運搬される。そして、所望の位置(例えば、脱脂槽1の直上)にて台車52を停止させて、ホイスト53を制御して被洗浄物Wを降下させることにより、脱脂槽10に対して被洗浄物Wを浸漬させることができる。そして、脱脂槽10内に被洗浄物Wが浸漬された状態でチャック54を開放状態とすることで、脱脂槽10内に被洗浄物Wを載置することができる。脱脂槽10から被洗浄物Wを引き上げる際には、上記した操作と逆の操作を実施すればよい。
【0033】
運搬装置50により運搬され、脱脂槽10に対して浸漬された被洗浄物Wは、脱脂槽10内で洗浄される。その結果、脱脂槽10内の洗浄液中に、被洗浄物Wから剥離された汚染物質が浮遊し、密度に準じて徐々に沈降する。沈降して粒子回収部材1に到達した汚染物質は、粒子回収部材1により回収され、被洗浄物Wの引き上げの際、さらには、運搬装置50により新たに運搬されてきた、被洗浄物の浸漬の際に、巻き上がり槽内の洗浄液中に再度分散することが抑制されうる。従って、粒子回収部材1を備える脱脂洗浄装置100によれば、浮遊する汚染物質の少ない清浄な洗浄水により被洗浄物Wを洗浄することができるため、高い洗浄効果を維持することができる。
【0034】
さらに、脱脂洗浄装置100は、電磁波発生装置60A~60Cを備えている。脱脂洗浄装置100が電磁波発生装置60A~60Cを備えていれば、得られる洗浄効果を一層高めることができる。これは、電磁波処理された洗浄水を用いて脱脂洗浄することで、被洗浄物Wから除去された油のけん化が良好に進行して洗浄効果が高まること、及び、粒子回収部材1により汚染物質の回収効率が高まることの双方に起因すると考えられる。より詳細には、以下の通りである。まず、電磁波処理された洗浄水による油分けん化促進作用の結果、油、研磨粉、及び切削屑よりなる凝集体が形成されにくくなり、油分を伴わない状態の研磨粉及び切削屑等が増加することが想定される。ここで、従来の粒子回収部材を有さない脱脂槽を備える脱脂洗浄装置を用いた場合には、脱脂槽底部にて、これらの、油分を伴わない状態の、即ち、粘着性に乏しい研磨粉及び切削屑等が堆積層を形成する結果、堆積層から研磨粉及び切削屑等が巻き上がりやすく、洗浄液中に浮遊しやすくなる傾向が想定された。そこで、粒子回収部材1を有する脱脂槽10を用いることで、これらの研磨粉及び切削屑を効率的に回収することができ、その結果として、一層の洗浄効果の向上が達成できる。
【0035】
なお、電磁波発生装置60A~60Cの取り付け位置は図示の態様に限定されない。さらに、本発明の脱脂洗浄装置が電磁波発生装置を備える場合において、その取り付け台数は、図3に例示した態様(3台)に限定されず、1台、又は4台以上であってもよい。
【0036】
なお、脱脂洗浄装置100に備えられ得る電磁波発生装置60A~60Cとしては、洗浄水に対して、電磁波を照射する電磁波発振部と、かかる電磁波発振部61に交流電流を流す交流電流発生器とを有する電磁波発生装置を好適に用いることができる。ここで、電磁波発振部としては、特に限定されることなく、例えばコイル等を用いることができる。なお、コイルは、各種ラインを形成する配管内に設置してもよいし、各種ラインを形成する配管の外周にケーブル等を巻き回すことにより形成してもよい。図4では、一例として、洗浄水供給ライン20を形成する配管の外周にケーブルが巻き付けられて形成されたケーブルコイルにより形成された電磁波発振部61と、これに接続する交流電流発生器62を示す。なお、電磁波発振部61が配管外周に巻き付けられたケーブルコイル等として実装される場合には、かかる配管は、塩化ビニル樹脂等の透磁率の低い部材(例えば、透磁率が70%未満、好ましくは50%以下の部材)よりなる低透磁性配管でありうる。
【0037】
また、交流電流発生器62としては、特に限定されることなく、例えば特開2011-255345号公報や特開2013-167160号公報に記載の装置や、株式会社サイライズ製の「ウォーター・ウォッチャー」などを用いることができる。中でも、交流電流発生器62としては、周波数が時間的に変化する方形波またはサイン波などの交流電流を発生させる交流電流発生器、並びに、単一周波数の交流電流または互いに周波数の異なる2つ以上の単一周波数の交流電流を発生させる交流電流発生器を用いることが好ましく、単一周波数の交流電流または互いに周波数の異なる2つ以上の単一周波数の交流電流を発生させる交流電流発生器を用いることがより好ましい。
【0038】
また、本発明の脱脂洗浄装置において、交流電流発生器が発生する交流電流の周波数は、特に限定されることなく、例えば10Hz以上1MHz以下とすることができる。更に、電磁波発生装置が発生させる電磁波の磁束密度は、10mG以上とすることが好ましい。なお、磁束密度は、電磁波発振機構の電磁波発振部を構成するケーブル上で測定することができる。
【0039】
以上、本発明の脱脂洗浄装置について説明したが、本発明の脱脂洗浄装置は上述した内容に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の脱脂洗浄装置によれば、高い洗浄効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0041】
1,1’ 粒子回収部材
10 脱脂槽
20 洗浄水供給ライン
21 アルカリ剤投入装置
30 洗浄水循環ライン
31 三方弁
32 排水管
33 熱交換器
34 計測装置
40 スプレー用洗浄水くみ上げライン
41 スプレーノズル
50 運搬装置
51 レール
52 台車
53 ホイスト
54 チャック
60A~60C 電磁波発生装置
61 電磁波発振部
62 交流電流発生器
70 粒子
100 脱脂洗浄装置
A,A-1 上側単位部材
B,B-1 下側単位部材
AX,AX’ 上側部材
BX,BX’ 下側部材
,D 間隔
F 枠状体
IS,IS 内表面
OS,OS 外表面
P 流路
P1,P2 ポンプ
,S 支持部材
W 被洗浄物
θ 角度
図1
図2
図3
図4