IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社九州日昌の特許一覧

<>
  • 特許-加熱装置および加熱方法 図1
  • 特許-加熱装置および加熱方法 図2
  • 特許-加熱装置および加熱方法 図3
  • 特許-加熱装置および加熱方法 図4
  • 特許-加熱装置および加熱方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】加熱装置および加熱方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20230608BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20230608BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20230608BHJP
   F27D 11/02 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
F27B17/00 B
F27D5/00
F27D19/00 A
F27D11/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019102602
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020197321
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】594067195
【氏名又は名称】株式会社九州日昌
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】神吉 利彰
(72)【発明者】
【氏名】木邊 貴大
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-049408(JP,A)
【文献】特開2008-224056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00-19/04
F27D 3/00-99/00
C21D 1/00
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、
前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、
複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱放射部材と、を備え、
前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱放射部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを上下方向に画定し、
前記複数の加熱用壁体の対向方向における両端部の加熱用壁体の外壁面には、加熱されて当該外壁面に沿って上昇する気体の流れを攪乱するための突起が設けられている、加熱装置。
【請求項2】
前記突起は、前記両端部の加熱用壁体の外壁面に設けられた断熱材を介して設けられている、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記突起は、前記両端部の加熱用壁体の上下方向の中央位置より下方側に設けられ、又は、前記両端部の加熱用壁体の上下方向の中央位置より下方側には上方側よりも多く設けられている、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記突起は、両端部の加熱用壁体の前部から背部に向けて水平方向に延在している、請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた少なくとも一の温度センサーと、
前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた少なくとも一の温度センサーの検出温度が目標温度の追従するように、前記複数の加熱用壁体にそれぞれ設けられた複数の発熱手段の各々の発熱量を独立に制御する、または、複数の発熱手段を複数にグループ化してグループ単位で発熱量を独立に制御する温調手段と、を有する請求項1ないし4に記載の加熱装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の加熱装置を用いて被加熱物を加熱する、加熱方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液晶表示パネルなどの構成部材であるガラス基板等の板状物を熱処理する加熱気体循環方式のクリーンオーブンが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このクリーンオーブンは、ガラス基板などの被熱処理物を恒温槽内に収容し、この恒温槽内においてファンによって循環する加熱気体を用いて被加熱物の熱処理を行うものである。
加熱気体循環方式のクリーンオーブンの場合、ガラス基板などの被加熱物を多段状に収容する構造を採用しやすいので、スペース効率に優れている反面、加熱温度分布を均一化することが困難であり、加熱気体の攪拌によりクリーン度が低下する可能性が高い。また、被加熱物が比較的軽量である場合、加熱気体の循環対流によって被加熱物が所定の位置から移動することがある。
【0003】
特許文献2は、内部に発熱体を有する放熱板の両面に遠赤外線放射セラミックスの薄層が被覆され、この放熱板の加熱によって両面から遠赤外線を放射する両面加熱式の遠赤外線パネルヒータからなる多数の棚状ヒータが、炉本体内に上下方向に一定間隔で多段配置され、これらの棚状ヒータの間に形成される各空間部分をそれぞれ乾燥室とした加熱炉を開示している。
特許文献2記載の加熱炉の場合、上下方向に配置された多数の棚状ヒータから発される熱は、加熱炉内を上昇して炉内の天壁寄りの領域に集まる傾向があるため、炉内上部領域の温度は、炉内下部領域の温度より高くなっており、このような炉内上部領域と炉内下部領域との間の温度差をなくすことは極めて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-56141号公報
【文献】特開2001-317872号公報
【文献】特開2013-200077号公報
【文献】特開2005-352306号公報
【文献】特開2005-055152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3-5は、温度分布の均一性及びクリーン度を改善するための加熱装置を開示している。
従来においては、さらなる温度分布の均一性の向上及びさらなるクリーン度の向上に対する要請が存在する。
特許文献3-5に開示された複数の加熱用壁体のうち、両端部に配置された加熱用壁体は、外気に曝されるため、外乱の影響を受けやすく、温度分布の均一性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、温度分布の均一性及びクリーン度に優れた加熱装置および加熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱装置は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱放射部材と、を備え、前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱伝導部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを上下方向に画定し、前記複数の収容スペースの各々の上下は、対向する前記熱放射部材により画定されており、前記複数の加熱用壁体の対向方向における両端部の加熱用壁体の外壁側に設けられた、加熱されて外壁に沿って上昇する空気の流れを妨害する突起をさらに有する。
【0008】
好適には、前記突起は、前記両端部の加熱用壁体の外壁面に設けられた断熱材を介して設けられている、構成を採用できる。
【0009】
さらに好適には、前記突起は、前記両端部の加熱用壁体の上下方向の中央位置より下方側に設けられ、又は、前記両端部の加熱用壁体の上下方向の中央位置より下方側には上方側よりも多く設けられている。
【0010】
さらに好適には、前記突起は、両端部の加熱用壁体の前部から背部に向けて水平方向に延在している。
【0011】
本発明の加熱方法は、上記の加熱装置を用いて被加熱物を加熱する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温度分布の均一性及びクリーン度の安定性に優れた加熱装置およびこの加熱装置を用いた加熱方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る加熱装置を示す正面図。
図2図1の加熱装置の側面図。
図3】コイル状ヒータの構成を示す図。
図4図1の加熱装置の側面図であって、コイル状ヒータの配置を示す断面図。
図5】加熱装置を収容したチャンバの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態である加熱装置100について説明する。
図1に示すように、加熱装置100は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体10(10A~10C)と、加熱用壁体10に設けられた発熱手段である複数のコイル状ヒータ11と、複数の加熱用壁体10の対向領域に上下方向A1,A2に距離を隔てて棚状に配置された複数の熱放射部材12と、上下方向に隣り合う熱放射部材12の間に設けられた被加熱物Wの収容スペース14と、両端部に配置された左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面を覆うように設けられた断熱材23と、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面に断熱材23を介して設けられた複数の突起部材50(50A,50B)と、を備えている。
【0015】
加熱用壁体10の上端側及び下端側はそれぞれ天板16及び底板17によって連結され、底板17の下面は、架台ユニット30によって支持されている。
【0016】
加熱用壁体10は、ステンレス鋼で形成され、箱型の本加熱装置100の両側面及び中央の仕切り壁をなす構造部材であるとともに、加熱装置の熱源となる部材である。本実施形態では、左側加熱用壁体10A、中央加熱用壁体10B、右側加熱用壁体10Cの3枚からなる。各加熱用壁体10には、正面側から背面側まで水平方向に複数の貫通孔24が開設され、これらの貫通孔24内にそれぞれコイル状ヒータ11が着脱可能に挿入されている。
【0017】
コイル状ヒータ11は、詳細を図3に示すように、金属管(シース)11sの内部にコイル状に巻いた発熱線11wを収容した構造になっている。図3では簡略化して示しているが、コイル状に巻いた発熱線11wは右端から左端へ往復し、右端から2本のリード線が延出している。往復の発熱線11wの間及び発熱線11wと金属管11sの間は、粉末状の酸化マグネシウムを固めた絶縁層で絶縁されている。
コイル状ヒータ11は、発熱線11wの巻き線ピッチが、両端部W1,W1では小さく、中央部W2では大きくし、両端部での発熱量が中央部の発熱量よりも大きくなるように形成されている。
【0018】
各加熱用壁体10におけるコイル状ヒータ11の配置は、図4に示すように、下部で間隔が狭く上部で間隔が広く配置された全ての貫通孔24にそれぞれ挿入されている。これにより、各加熱用壁体10の上下方向A1,A2については、コイル状ヒータ11の配置間隔の小さい下部で発熱量が大きくなるので、温度が低くなりがちな下部の温度を高めている。また、奥行方向B1,B2については、温度が低下しがちな奥行方向両端部の発熱量を大きくし、温度分布が均一になるようにしている。
【0019】
各加熱用壁体10には、また図1に示すように、正面側から水平方向に別の複数の貫通孔25が開設され、温度センサー15が挿入されている。温度センサー15の検出温度が目標温度に追従するように、各加熱用壁体10にそれぞれ設けられた複数のコイル状ヒータ11の各々の発熱量が、温調手段(図示省略)により独立に制御されている。または、複数のコイル状ヒータ11が複数にグループ化され、グループ毎に発熱量が独立に制御される。
なお、上記したコイル状ヒータ11の構成や配置は、温調手段により発熱手段を制御した際に、加熱用壁体10の温度の均一化を実現するためのものである。言い換えると、外乱等が原因で温調手段のみでは加熱用壁体10の温度の均一化を実現するのは難しいので、コイル状ヒータ11の構成や配置を工夫することで加熱用壁体10の温度の均一化を実現する。
【0020】
熱放射部材12は、加熱用壁体10の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体10からの熱を伝導させる部材である。本実施形態では、両側の加熱用壁体10に形成された溝に嵌め込まれて棚状に配置されている。各熱放射部材12は、表面に黒色メッキを施したアルミニウム板で形成され、すぐれた熱放射機能が得られるようになっている。
【0021】
各収容スペース14は、両側の加熱用壁体10と、上下の熱放射部材12とで画定されたスペースで、被加熱物を1枚ずつ収容して、上下の熱放射部材12からの放射熱で加熱処理するようになっている。加熱用壁体10は、各々の収容スペース14に面する側の各壁面の互いに対応する位置に、収容スペースの奥行方向B1,B2に延在する溝10tが形成され、その溝10tの下側内面が、平板状の被加熱物Wの幅方向の各側縁部の裏面を受け止める支持面となっている。所定の搬送装置を用いて、被加熱物をその左右方向両端部が各溝10tに入るように搬入し、前記支持面に載置することができる。被加熱物Wの両側縁部が熱的に開放されていると被加熱物Wの温度が両側縁部で不均一となりやすい。このため、溝10tの支持面を通じて被加熱物Wの両側縁部に直接伝熱することで、被加熱物Wの温度の均一化を図っている。
【0022】
各収容スペース14の前面14a(図2参照)は、開口している。各収容スペース14の背面14b側は、背壁部材26により閉塞されている。すなわち、各収容スペース14は、前面14aでのみ開口している。前面14aを開口させることで、収容スペースの内部で加熱されて膨張した空気が外部に逃げられるようになっている。背面14b側が閉塞されているので、収容スペースの内部で加熱されて膨張した空気が外部に逃げたとしても、外部から収容スペース14内に空気が流入しにくい構造となっている。
代替的には、前面14aの開口の大きさによっては、開口部を開閉する開閉ドア(図示省略)を設けることができる。この開閉ドアは、被加熱物Wの搬入・搬出時には開放され、加熱時には閉塞される。但し、開閉ドアの閉塞時にも、収容スペースの内部は完全には密閉されず、加熱されて膨張した空気が逃げられるように開閉ドアと開口部との間に隙間を形成することができる。これにより、収容スペース14の内部で加熱されて膨張した空気が外部に逃げるだけで、収容スペース14の内部への外部からの空気の流入を防ぐことができる。
【0023】
最上部の2枚の熱放射部材12の間及び最底部の2枚の熱放射部材12の間は、それぞれ被加熱物Wを導入しない空きスペースで、空気の断熱層を形成するための断熱スペース20T,20Bである。
【0024】
架台ユニット30は、加熱装置100が設置される床面に配置され、底板17及びその上の加熱装置本体を搭載している。加熱装置100の熱が床面に伝達しないようにする断熱機能や、床面の振動が加熱装置本体に伝達しないようにする防振機能等を備えている。
【0025】
断熱材23は、外気からの左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cへの熱的外乱を最小限に抑えるために設けられており、ガラス繊維等の熱絶縁性の材料で形成されている。
【0026】
左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面に断熱材23を介して設けられた複数の突起部材50(50A,50B)は、図1および図2に示すような、加熱されて当該外壁面に沿って上昇する加熱気体HAの流れを攪乱するために設けられている。
複数の突起部材50は、前面14aから背面14bに向けて水平方向に延在している。
また、複数の突起部材50A,50Bは、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの上下方向の中央位置より下方側に設けられている。
【0027】
左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面によって加熱された加熱気体(空気)HAは、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの下端から上端に向けて上昇していく。このとき、加熱気体HAは左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面の表面付近に薄い層を形成して上昇していくことを本発明者らは見出した。薄い層の加熱気体HAが左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの上端部に運ばれると、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの上端部側が過熱されて各加熱用壁体10A,10Cの上端領域の温度が下端領域と比べて高くなってしまい、各加熱用壁体10A,10Cの温度の均一性を保てなくなることが分かった。
【0028】
そこで、加熱気体HAが左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面の表面付近に薄い層を形成して上昇していくことに着目して、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面の表面に突起部材50を設けて加熱気体HAの流れを攪乱する。一旦攪乱された加熱気体HAの流れは拡散して左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面の表面から離れていく。これにより、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの上端部側が過熱されるのを防ぐことができる。
【0029】
本実施形態では、突起部材50が水平方向に延在している構成を例示しているが、これに限定されず、分散して配置されていてもよいし、形状についても種々変更可能である。
本実施形態では、複数の突起部材50A,50Bは、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの上下方向の中央位置より下方側に設けられた場合を例示したが、中央位置より上方側に設けることも可能である。この場合に、好ましくは、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの上下方向の中央位置より下方側には上方側よりも多く突起部材を設けることが好ましい。
【0030】
図5は、加熱装置100が設置される環境の例である。
図5に示すように、外部からのパーティクルの混入を防ぐためや、排熱がクリーンルーム等の設置場所の他の装置に影響することを防ぐために、チャンバ200内に加熱装置100は配置されている。このチャンバ200では、吸気口210に設けたブロワファン230により外気を導入し、チャンバ天井の排気口220より加熱装置100の熱排気を排出している。吸気口210の内側にはHEPAフィルター(図示省略)が設けられ、外部からのパーティクルの混入を防いでいる。
【0031】
次に、本発明の加熱装置100の動作について説明する。
加熱装置100を使用する場合、所定の搬送装置を用いて、各収容スペース14の前面14aの開口部を通じて各被加熱物をそれぞれの収容スペース14に搬入する。コイル状ヒータ11に通電を開始すれば、所定のプログラムに従って熱処理を行うことができる。
図示しない温調手段により、各温度センサー15の検出温度が目標温度になるように、複数のコイル状ヒータ11の発熱量が個々にまたはグループ毎に独立に制御される。
【0032】
各収容スペース14の左右には、加熱用壁体10が配置され、上下には、熱放射部材12が配置されているので、コイル状ヒータ11の熱によって昇温した左右の加熱用壁体10から放射される熱と、これらの加熱用壁体からの熱伝導により発熱する熱放射部材12から上下に放射される熱とによって加熱される。
各加熱用壁体10が目標温度になるように加熱され、各熱放射部材12も加熱用壁体10と同じ温度に加熱されるため、収容スペース14の相互間の温度均一性が高い。
ここで、コイル状ヒータ11として、発熱線11wの巻き線ピッチが、両端部で小さく、中央部で大きいので、加熱用壁体10の奥行方向において、温度が低下しがちな奥行方向B1,B2の両端部の発熱量が大きくなり、温度分布が均一化されている。このため、各収容スペース14内の奥行方向の温度分布も均一化されている。
このため、それぞれの収容スペース14内はむらなく均等に加熱され、加熱装置100全体における温度分布の均一性も良好である。
【0033】
また、各収容スペース14は、上記構成により、熱気の上昇に起因する上部空間における熱蓄積現象及び過熱現象が発生しない。また、ファンによって加熱気体を攪拌したり、循環させたりすることもないので、クリーン度の安定性も優れており、気体流によって被加熱物が移動することもない。
【0034】
なお、前述した加熱装置100は本発明に係る加熱装置を例示するものであり、本発明は加熱装置100に限定されない。
発熱手段はコイル状ヒータに限られず、その他のヒータや、ヒートパイプでもよい。
上記実施形態では、断熱材23を介して突起部材50を加熱用壁体11の外壁面に設置したが、断熱材23が存在しない場合には、突起部材50を加熱用壁体11の外壁面に直接設置することも可能である。
また、上記加熱装置100においては、加熱用壁体10、天板16、底板17は、ステンレス鋼で形成され、熱放射部材12は、表面に黒色メッキを施したアルミニウム板で形成されている。ただし、これらの材料に限られず、加熱用壁体10A~10C、天板16、底板17などをアルミニウムやアルミニウム合金(あるいは輻射熱の発散を抑制するため光沢のない表面処理を施したアルミニウムやアルミニウム合金)で形成することもできる。また、熱放射部材12の表面処理についても黒色メッキに限定されず、輻射熱の発散を抑制することのできる表面処理、例えば、光沢のない表面処理を施したものを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る加熱装置は、ガラス基板や半導体リードフレームあるいはその他の金属板や合成樹脂板などの各種板状部材を含むあらゆる被加熱物の熱処理を行う産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 :加熱用壁体
10A :左側加熱用壁体
10B :中央加熱用壁体
10C :右側加熱用壁体
10t :溝
11 :コイル状ヒータ
11s :金属管
11w :発熱線
12 :熱放射部材
14 :収容スペース
14a :前面
14b :背面
15 :温度センサー
16 :天板
17 :底板
20B :断熱スペース
20T :断熱スペース
23 :断熱材
24 :貫通孔
25 :貫通孔
26 :背壁部材
30 :架台ユニット
50,50A,50B :突起部材
100 :加熱装置
200 :チャンバ
210 :吸気口
220 :排気口
230 :ブロワファン
HA :加熱気体
W :被加熱物
W1 :端部
W2 :中央部


図1
図2
図3
図4
図5