(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】制流体設置構造及び制流体設置方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20230608BHJP
F16L 41/06 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L41/06
(21)【出願番号】P 2019199303
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永森 保行
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223528(JP,A)
【文献】特開2016-061391(JP,A)
【文献】特開2016-070464(JP,A)
【文献】特開2013-113426(JP,A)
【文献】特公平07-117193(JP,B2)
【文献】米国特許第01743338(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0031349(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管を密封状に取り囲む筐体と、前記筐体の内部に設置される制流体と、前記筐体の上部に設けられた開口部にフランジ接続される蓋体と、を備え、
前記制流体は、管軸方向に間隔を設けて配置された一対の被押圧面を有し、
前記蓋体は、前記開口部から前記制流体が抜け出ないように前記一対の被押圧面を上方から押圧する一対の押圧面を有し、
前記被押圧面は、前記開口部の中心軸から遠ざかるにつれて下方向または上方向に傾斜しており、前記押圧面は、前記被押圧面と同じ方向に傾斜している
、制流体設置構造。
【請求項2】
流体管を密封状に取り囲む筐体と、前記筐体の内部に設置される制流体と、前記筐体の上部に設けられた開口部にフランジ接続される蓋体と、を備え、
前記制流体は、管軸方向に間隔を設けて配置された一対の被押圧面を有し、
前記蓋体は、前記開口部から前記制流体が抜け出ないように前記一対の被押圧面を上方から押圧する一対の押圧面を有し、
前記蓋体のフランジに、平面視で管軸側に偏在するように配置された第1ボルト孔群が形成されており、
前記開口部のフランジに、前記第1ボルト孔群に対応した第2ボルト孔群と、周方向に沿って等間隔に配置された第3ボルト孔群とが形成されている
、制流体設置構造。
【請求項3】
前記第2ボルト孔群の一部が前記第3ボルト孔群の一部を兼ねている、
請求項2に記載の制流体設置構造。
【請求項4】
前記第3ボルト孔群が、平面視で管軸を挟むように配置され且つ管軸から相対的に近い四個の近側ボルト孔と相対的に遠い四個の遠側ボルト孔とからなり、
前記第2ボルト孔群が、前記近側ボルト孔と前記遠側ボルト孔との間に位置する四個の中間ボルト孔と、四個の前記近側ボルト孔とからなる、
請求項3に記載の制流体設置構造。
【請求項5】
前記一対の押圧面の内側縁を基準にして前記蓋体を管軸方向の三つの領域に区画したときに、前記第1ボルト孔群が中央の領域を避けて両端の領域に位置している、
請求項2~4いずれか1項に記載の制流体設置構造。
【請求項6】
流体管を密封状に取り囲む筐体の上部に設けられた開口部を介して、前記筐体の内部に制流体を設置する設置工程と、
前記開口部に蓋体をフランジ接続することにより、前記開口部から前記制流体が抜け出ないようにする施蓋工程と、を備え、
前記施蓋工程では、前記制流体に設けられ且つ管軸方向に間隔を設けて配置された一対の被押圧面を、前記蓋体に設けられた一対の押圧面によって上方から押圧
し、
前記被押圧面は、前記開口部の中心軸から遠ざかるにつれて下方向または上方向に傾斜しており、前記押圧面は、前記被押圧面と同じ方向に傾斜している、制流体設置方法。
【請求項7】
流体管を密封状に取り囲む筐体の上部に設けられた開口部を介して、前記筐体の内部に制流体を設置する設置工程と、
前記開口部に蓋体をフランジ接続することにより、前記開口部から前記制流体が抜け出ないようにする施蓋工程と、を備え、
前記施蓋工程では、前記制流体に設けられ且つ管軸方向に間隔を設けて配置された一対の被押圧面を、前記蓋体に設けられた一対の押圧面によって上方から押圧し、
前記蓋体のフランジに、平面視で管軸側に偏在するように配置された第1ボルト孔群が形成されており、前記開口部のフランジに、前記第1ボルト孔群に対応した第2ボルト孔群と、周方向に沿って等間隔に配置された第3ボルト孔群とが形成されており、
前記設置工程では、前記第3ボルト孔群を使用して前記開口部に接続部材をフランジ接続し、
前記施蓋工程では、前記開口部から前記接続部材を取り外した後、前記第2ボルト孔群を使用して前記開口部に前記蓋体をフランジ接続する
、制流体設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体管を密封状に取り囲む筐体の内部に制流体を設置するための構造と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体で密封状に取り囲んだ流体管を不断流状態で切断し、その筐体に設けられた開口部を介して、弁装置などの制流体を筐体の内部に設置する工事が知られている。特許文献1では、開口部から制流体が抜け出ないよう、水平方向にスライドして開口部と係合する固定部材が用いられている。しかし、制流体には、流体圧力などにより管軸方向に傾く力が作用するため、固定部材を円滑にスライドできない場合がある。また、固定部材をスライドするための隙間が密封部材の底部の圧縮に影響し、止水不良を招く恐れがあるため、制流体を挿入方向に微調整できる機構が必要となる。以上から、制流体を適正な姿勢で設置するうえで十分ではないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、制流体を適正な姿勢で設置できる制流体設置構造及び制流体設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の制流体設置構造は、流体管を密封状に取り囲む筐体と、前記筐体の内部に設置される制流体と、前記筐体の上部に設けられた開口部にフランジ接続される蓋体と、を備え、前記制流体は、管軸方向に間隔を設けて配置された一対の被押圧面を有し、前記蓋体は、前記開口部から前記制流体が抜け出ないように前記一対の被押圧面を上方から押圧する一対の押圧面を有するものである。かかる構成によれば、管軸方向に傾く力が作用する制流体を適正な姿勢で設置できる。
【0006】
前記被押圧面は、前記開口部の中心軸から遠ざかるにつれて下方向または上方向に傾斜しており、前記押圧面は、前記被押圧面と同じ方向に傾斜していることが好ましい。これにより、制流体を芯出し(センタリング)する効果が得られる。
【0007】
前記蓋体のフランジに、平面視で管軸側に偏在するように配置された第1ボルト孔群が形成されており、前記開口部のフランジに、前記第1ボルト孔群に対応した第2ボルト孔群と、周方向に沿って等間隔に配置された第3ボルト孔群とが形成されていることが好ましい。蓋体のフランジ接続に第1ボルト孔群が用いられることにより、制流体を押圧する効果が高められる。
【0008】
前記第2ボルト孔群の一部が前記第3ボルト孔群の一部を兼ねていることが好ましい。かかる構成によれば、開口部のフランジに形成されるボルト孔の総数が抑えられるので、フランジの強度確保と加工費低減に資する。例えば、前記第3ボルト孔群が、平面視で管軸を挟むように配置され且つ管軸から相対的に近い四個の近側ボルト孔と相対的に遠い四個の遠側ボルト孔とからなり、前記第2ボルト孔群が、前記近側ボルト孔と前記遠側ボルト孔との間に位置する四個の中間ボルト孔と、四個の前記近側ボルト孔とからなる構成が例示される。
【0009】
前記一対の押圧面の内側縁を基準にして前記蓋体を管軸方向の三つの領域に区画したときに、前記第1ボルト孔群が中央の領域を避けて両端の領域に位置していることが好ましい。これにより、蓋体で制流体を押圧する効果を適切に高めることができる。
【0010】
本開示の制流体設置方法は、流体管を密封状に取り囲む筐体の上部に設けられた開口部を介して、前記筐体の内部に制流体を設置する設置工程と、前記開口部に蓋体をフランジ接続することにより、前記開口部から前記制流体が抜け出ないようにする施蓋工程と、を備え、前記施蓋工程では、前記制流体に設けられ且つ管軸方向に間隔を設けて配置された一対の被押圧面を、前記蓋体に設けられた一対の押圧面によって上方から押圧するものである。かかる方法によれば、管軸方向に傾く力が作用する制流体を適正な姿勢で設置できる。
【0011】
前記蓋体のフランジに、平面視で管軸側に偏在するように配置された第1ボルト孔群が形成されており、前記開口部のフランジに、前記第1ボルト孔群に対応した第2ボルト孔群と、周方向に沿って等間隔に配置された第3ボルト孔群とが形成されており、前記設置工程では、前記第3ボルト孔群を使用して前記開口部に接続部材をフランジ接続し、前記施蓋工程では、前記開口部から前記接続部材を取り外した後、前記第2ボルト孔群を使用して前記開口部に前記蓋体をフランジ接続することが好ましい。蓋体のフランジ接続に第1ボルト孔群が用いられることにより、制流体を押圧する効果が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】制流体を筐体に挿入する前の状態を示す断面図
【
図5】制流体の設置を完了した状態を示す(A)平面図と(B)側面図
【
図6】制流体の設置を完了した状態を示す側方視部分断面図
【
図8】蓋体の(A)平面図、(B)側方視半断面図、及び、(C)底面図
【
図10】アタッチメントの(A)平面図、(B)側方視半断面図、及び、(C)底面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、管路の一部を構成する既設の水道管P(流体管の一例)を示す。水道管Pは、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄管であるが、これに限られない。水道管Pは断面視円形状に形成されており、その内周面が粉体等で被覆されている。本実施形態では、筐体1で密封状に取り囲んだ水道管Pを不断水状態(即ち、不断流状態)で切断し、その筐体1の上部に設けられた開口部15を介して、制流体の一例である弁装置7(
図2,3参照)を筐体1の内部に設置する例を示す。
【0014】
筐体1は、通水状態にある水道管Pの一部を密封状に取り囲んでいる。筐体1は、既設の水道管Pに対して外嵌可能な割り構造を有し、より具体的には、上側部材11と下側部材12とを互いに接合してなる上下二つ割り構造を有する。この接合は、ボルトとナットで構成される締結具13(
図4,5参照)により行われるが、これに代えて溶接などで接合してもよい。筐体1の底部1bは、すり鉢状に形成されている。底部1bの中心部位には、切断時に発生する切屑を排出するための排出孔14が設けられている。
【0015】
筐体1は、割りT字管によって構成され、水道管Pの管軸方向PD(
図1の紙面に垂直な方向)と交差する方向に突出した分岐形状の開口部15を上方に向けている。開口部15は、平面視円形状に開口している(
図9参照)。開口部15には、筒状のアタッチメント2を介して、作業弁(作業用仕切弁)3と密閉ケース4が接続されている。開口部15とアタッチメント2との隙間は、環状のシール材21で密封されている。
図1では、作業弁3が閉状態にあり、筐体1の内部空間と密閉ケース4の内部空間とが弁体3vで仕切られている。密閉ケース4には、切断機5が接続されている。切断機5は、筐体1の内部で水道管Pを切断するためのホールソー51を有する。
【0016】
図1の状態において作業弁3を開状態とし、開口部15を介して筐体1の内部にホールソー51を挿入することにより、水道管Pが不断水状態で切断される。本実施形態では、水道管Pを管軸方向PDに切り離す、いわゆるフルカット切断が行われる(
図6参照)。切断で発生した切屑は、バルブ14vを操作して排出孔14を一時的に開放することにより、外部に排出される。切断が完了したら、ホールソー51を上昇させて作業弁3を閉状態とし、密閉ケース4と切断機5を撤去して、代わりに
図2に示した密閉ケース6を接続する。
【0017】
密閉ケース6の内部には、制流体としての弁装置7が配置されている。弁装置7は、開口部15を閉塞する平面視円形状の閉塞部71と、水道管Pに形成された一対の切断面の間に配置される弁座部72と、弁装置7に内蔵された弁体(図示せず)を作動させるための弁操作軸73と、弁操作軸73を密封するパッキンを収納するパッキン箱74とを備える。弁装置7は、弁操作軸73を操作して弁体を作動させることにより、弁座部72に設けられている孔75を開閉し、水道管Pにおける水の流れを制御できるように構成されている。
【0018】
弁装置7の外面には、パッキンと防食部材(防食リング)が装着されているが、いずれも図示は省略しており、このことは他の図面でも同様である。このパッキンは、筐体1の内面と弁装置7の外面との間を密封する。防食部材は、筐体1に弁装置7を挿入した際に水道管Pに密着し、切断面の露出を防いで防食処置を施す。パッキン及び防食部材の具体的な構成については、例えば本出願人による特開2018-189117号公報を参照できる。但し、これに限定されるものではなく、例えば防食部材を使用しない構成でも構わない。
【0019】
密閉ケース6には挿入機8が接続されている。挿入機8は、弁装置7を昇降自在に支持する操作桿81を備える。
図2の状態において作業弁3を開状態とし、操作桿81を押し下げ、開口部15を介して筐体1に弁装置7を挿入することで、
図3のように一対の切断面の間に弁装置7が配置される。その後、筐体1に取り付けられた仮固定具としての仮固定ボルト16bをねじ込み操作し、弁装置7の外面に係止することにより、弁装置7の一時的な固定(仮固定)を行う。弁装置7を仮固定したら、挿入機8、密閉ケース6及び作業弁3を撤去し、開口部15からアタッチメント2を取り外す。
【0020】
そして、
図4,5に示すように、開口部15に蓋体9を取り付けて、弁装置7を筐体1に固定する。開口部15及び蓋体9には、それぞれ互いに接続されるフランジ15f,フランジ9fが設けられている。このように、蓋体9は、筐体1の内部に弁装置7を設置した後で、アタッチメント2に代えて開口部15にフランジ接続される。蓋体9を取り付けたら仮固定は不要になるので、仮固定ボルト16bを筐体1から取り外し、代わりにプラグ16pを装着してもよい。排出孔14には、プラグ14pを装着する。本実施形態では、筐体1の両端部に離脱防止金具17を取り付けているが、これに限られない。
【0021】
図6は、
図5(B)に対応した縦断面図である。但し、弁装置7については、弁操作軸73、弁体及びパッキン箱74を取り外したうえ、断面ではなく外観で描いている。また、離脱防止金具17は図示していない。蓋体9は、ボルトとナットで構成される締結具18を介して、開口部15にフランジ接続されている。開口部15の内面と、その開口部15を閉塞する閉塞部71との隙間は、図示しないパッキンによって密封されている。閉塞部71の外周には、そのパッキンを装着するための溝71gが形成されている。
【0022】
このように、本実施形態の制流体設置構造10は、水道管Pを密封状に取り囲む筐体1と、その筐体1の内部に設置される制流体としての弁装置7と、筐体1の上部に設けられた開口部15にフランジ接続される蓋体9と、を備える。
図6~8に示すように、弁装置7は、管軸方向PDに間隔を設けて配置された一対の被押圧面7s,7sを有し、蓋体9は、開口部15から弁装置7が抜け出ないように一対の被押圧面7s,7sを上方から押圧する一対の押圧面9s,9sを有する。
【0023】
また、本実施形態の制流体設置方法は、水道管Pを密封状に取り囲む筐体1の上部に設けられた開口部15を介して、筐体1の内部に制流体としての弁装置7を設置する工程(設置工程)と、開口部15に蓋体9をフランジ接続することにより、開口部15から弁装置7が抜け出ないようにする工程(施蓋工程)と、を備える。施蓋工程では、弁装置7に設けられ且つ管軸方向PDに間隔を設けて配置された一対の被押圧面7s,7sを、蓋体9に設けられた一対の押圧面9s,9sによって上方から押圧する。
【0024】
一対の被押圧面7s,7sは、開口部15の中心軸15aを挟んで管軸方向PDの一方側と他方側に設けられている。一対の被押圧面7s,7sは、平面視において水道管Pの管軸Pa上に位置する。本実施形態では、閉塞部71の上面における管軸方向PDの両端部に一対の被押圧面7s,7sが設けられている。被押圧面7sは、閉塞部71の外周縁に沿って直交方向CDに延びている。直交方向CDは、平面視で管軸方向PDに直交する方向である。被押圧面7sは、管軸方向PDと比べて直交方向CDに長い形状を有する。
【0025】
一対の押圧面9s,9sは、蓋体9の中心部を挟んで管軸方向PDの一方側と他方側に設けられている。蓋体9の中心部には、パッキン箱74が配置される孔部91が形成されている。一対の押圧面9s,9sは、平面視において水道管Pの管軸Pa上に位置する。押圧面9sは、蓋体9の内周縁に沿って直交方向CDに延びている。押圧面9sは、管軸方向PDと比べて直交方向CDに長い形状を有する。押圧面9sは、被押圧面7sに対して面接触可能に構成されている。
【0026】
蓋体9は、閉塞部71を下方へ押圧することにより弁装置7を筐体1に固定する。その押圧力は、管軸方向PDに間隔を設けて配置された一対の被押圧面7s,7sに作用するとともに、フランジ接続に用いられる締結具18の締め付けに応じて調整できる。このため、すり鉢状の底部1bや水圧などに起因して管軸方向PDに傾く力が作用する弁装置7を適正な姿勢で設置できる。また、直交方向CDにおける閉塞部71の両端部に押圧部を設定する必要がないため、弁体のサイズを確保しやすく、これによりホールソー51の小型化、延いては切断機5の小型化に資する。
【0027】
図6のように、被押圧面7sは、開口部15の中心軸15aから遠ざかるにつれて下方向に傾斜しており、押圧面9sは、被押圧面7sと同じ方向に傾斜している。このため、弁装置7を芯出し(センタリング)する効果が得られる。本実施形態では、これらがテーパ状に曲率を伴って傾斜しており、管軸方向PDだけでなく、直交方向CDにも芯出しできる。被押圧面7s及び押圧面9sは、それぞれ中心軸15aから遠ざかるにつれて上方向に傾斜する形状でもよい。被押圧面7sは、閉塞部71の上面に突出するように形成されているが、これに限られない。
【0028】
図8のように、蓋体9のフランジ9fは平面視円形状をなす。フランジ9fには、平面視で管軸Pa側に偏在するように配置された第1ボルト孔群G1が形成されている。第1ボルト孔群G1は複数(本実施形態では八個)のボルト孔9hで構成されており、これらは周方向に沿って等間隔に配置されるのではなく、管軸Pa寄りに配置されている。本実施形態では、後述する遠側ボルト孔15dに対応するボルト孔がフランジ9fに形成されていないが、これに限られない。
【0029】
図9のように、開口部15のフランジ15fは平面視円形状をなす。フランジ15fには、第1ボルト孔群G1に対応した第2ボルト孔群G2と、周方向に沿って等間隔に配置された第3ボルト孔群G3とが形成されている。
図9(A)では、第2ボルト孔群G2を構成するボルト孔を破線枠で囲み、
図9(B)では、第3ボルト孔群G3を構成するボルト孔を破線枠で囲んでいる。本実施形態では、第2ボルト孔群G2及び第3ボルト孔群G3が、それぞれ八個のボルト孔で構成されている。但し、第2ボルト孔群G2の一部が第3ボルト孔群G3の一部を兼ねているため、フランジ15fに形成されたボルト孔の総数は十二個である。
【0030】
第3ボルト孔群G3は、平面視で管軸Paを挟むように配置され且つ管軸Paから相対的に近い四個の近側ボルト孔15nと相対的に遠い四個の遠側ボルト孔15dとからなり、これらは45度間隔で等間隔に配置されている。この「等間隔」は、間隔が厳密に等しい構成に限られず、寸法誤差や設計誤差により位置ずれした構成を含む概念である。第2ボルト孔群G2は、近側ボルト孔15nと遠側ボルト孔15dとの間に位置する四個の中間ボルト孔15mと、四個の近側ボルト孔15nとからなる。
図9(B)では、近側ボルト孔15nに破線枠Fnを付し、遠側ボルト孔15dに破線枠Fdを付し、中間ボルト孔15mには破線枠を付していない。
【0031】
蓋体9のフランジ接続には、第1ボルト孔群G1と、それに対応した第2ボルト孔群G2とが用いられるので、開口部15に蓋体9を締結する締結具18は、平面視で管軸Pa側に偏在するように配置される(
図5(A)参照)。このため、一対の被押圧面7s,7sを介して弁装置7を押圧する効果が高められる。遠側ボルト孔15dに対応するボルト孔をフランジ9fに形成し、それらに締結具18を装着することも可能であるが、弁装置7の押圧に対する寄与は小さいうえ、締結によって蓋体9が歪む恐れがある。それ故、フランジ9fには、遠側ボルト孔15dに対応するボルト孔が形成されていないことが好ましい。
【0032】
第1ボルト孔群G1を管軸Pa側に偏在させて弁装置7の押圧効果を高める観点から、
図8(C)のように、一対の押圧面9s,9sの内側縁を基準にして蓋体9を管軸方向PDの三つの領域A1~A3に区画したときに、第1ボルト孔群G1(を構成する各ボルト孔9h)が中央の領域A2を避けて両端の領域A1,A3に位置することが好ましい。領域を区画する境界線BLは、直交方向CDに直線的に延び、押圧面9sの内側縁に接する。
【0033】
第1ボルト孔群G1を構成する各ボルト孔9hの中心は、蓋体9の中心を基準にして、平面視における管軸Pa(または、蓋体9の中心を通って管軸方向PDに延びる直線)から±45度となる角度範囲X1内に位置することが好ましい。また、第1ボルト孔群G1が八個のボルト孔9hで構成される場合において、平面視における管軸Paに相対的に近いボルト孔9hの中心は、その管軸Paから±33.75度となる角度範囲X2内に位置することが好ましい。但し、それらに対応する開口部15のボルト孔(近側ボルト孔15n)が第3ボルト孔群G3の一部を兼ねる場合には、管軸Paから±22.5度の角度範囲X3内に位置することが好ましい。
【0034】
図10のように、アタッチメント2のフランジ2fは平面視円形状をなす。フランジ2fには、第3ボルト孔群G3に対応した第4ボルト孔群G4が形成されている。第4ボルト孔群G4は複数(本実施形態では八個)のボルト孔2hで構成されており、これらは周方向に沿って等間隔に配置されている。筐体1の内部に弁装置7を設置する設置工程では、第3ボルト孔群G3(及び第4ボルト孔群G4)を使用して開口部15にアタッチメント2(接続部材に相当)をフランジ接続する(
図1,2参照)。これによって周方向で略均等な力がフランジ間に作用するので、環状のシール材21を介して隙間を密封するうえで都合が良い。
【0035】
既述のように、開口部15に蓋体9をフランジ接続する施蓋工程では、開口部15からアタッチメント2を取り外した後、第2ボルト孔群G2(及び第1ボルト孔群G1)を使用して開口部15に蓋体9をフランジ接続する。このように、本実施形態の制流体設置方法では、設置工程でアタッチメント2のフランジ接続に用いるボルト孔と、施蓋工程で蓋体9のフランジ接続に用いるボルト孔とを異ならせている。また、第2ボルト孔群G2の一部が第3ボルト孔群G3の一部を兼ねているため、フランジ15fの強度確保とボルト孔の加工費低減に資する。
【0036】
開口部15のフランジ15fには、アタッチメント2などの接続部材を接続するための複数のボルト孔(第3ボルト孔群G3)と、蓋体9を接続するための複数のボルト孔(第2ボルト孔群G2)とが混在するため、作業者が混同しないように識別マークを設けることが好ましい。識別マークは、特に限られるものではないが、例えば鋳出し、塗料、シールなどを利用して設けることができる。
【0037】
本実施形態では、設置工程において開口部15にフランジ接続される接続部材がアタッチメント2である例を示したが、これに限られるものではない。例えば、開口部15にフランジ接続可能な作業弁を使用する場合は、アタッチメント2を介在させずに、その作業弁を接続部材として開口部15にフランジ接続してもよい。かかる場合、作業弁のフランジには、開口部15の第3ボルト孔群G3に対応した複数のボルト孔が形成される。
【0038】
本実施形態では、第1~第4ボルト孔群G1~G4が、それぞれ八個のボルト孔で構成されている例を示したが、これに限られるものではなく、例えば六個のボルト孔で構成されていてもよい。但し、流体管の口径が150mm以上である場合は、本実施形態のように八個以上のボルト孔で構成されることが好ましい。また、締結具18を装着するときの作業性に鑑み、平面視で管軸Paが通る位置にはボルト孔が形成されていないことが好ましい。
【0039】
本実施形態では、弁装置7が仕切弁である例を示すが、これに限られず、例えば切替弁やバタフライ弁などであってもよい。また、制流体は、流体管内の流体の流れを制御するものであれば、弁装置に限られず、例えばプラグ装置などでもよい。
【0040】
本実施形態では、流体管が水道管である例を示したが、これに限られず、水以外の液体、気体または気液混合体などに用いられる流体管であってもよい。
【0041】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 筐体
2 アタッチメント(接続部材の一例)
2f アタッチメントのフランジ
3 作業弁
7 弁装置(制流体の一例)
7s 被押圧面
9 蓋体
9f フランジ
9h ボルト孔
9s 押圧面
10 制流体設置構造
15 開口部
15a 開口部の中心軸
15d 遠側ボルト孔
15f 開口部のフランジ
15m 中間ボルト孔
15n 近側ボルト孔
G1 第1ボルト孔群
G2 第2ボルト孔群
G3 第3ボルト孔群
G4 第4ボルト孔群
P 水道管(流体管の一例)
Pa 管軸
PD 管軸方向