(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】農産物栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/00 20180101AFI20230608BHJP
A01G 18/62 20180101ALI20230608BHJP
【FI】
A01G9/00 C
A01G18/62
(21)【出願番号】P 2022011970
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595013863
【氏名又は名称】株式会社たつみ産業
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】庭山 宏治
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-506079(JP,A)
【文献】特開平05-146227(JP,A)
【文献】登録実用新案第3131540(JP,U)
【文献】特開2002-153141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 18/00 - 18/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列のエンドレスのベルトチェーンを内部に配置した縦架台と、
前記ベルトチェーンを
上下方向にループ状に間欠的に循環駆動する
循環駆動機構と、
前記複数列のベルトチェーンにより吊り下げられて上下方向に移動しながら、農産部を育成する多数個の移動栽培台と、
該移動栽培台
から育成した農産物を収穫するための作業位置
を前記縦架台の外側に設け、前記ベルトチェーンを前記作業位置において前記縦架台内から前記縦架台の外側に移動して上下方向に駆動する移動駆動機構と、
前記作業位置において前記移動栽培台を所定高さで一時的に停止する制御機構とを有することを特徴とする農産物栽培装置。
【請求項2】
複数列のエンドレスのベルトチェーンを内部に配置した縦架台と、
該縦架台の上部から前記縦架台と直交して水平方向に延在し、前記縦架台のベルトチェーンとループ状に連続したベルトチェーンを内部に配置した横架台と、
前記ベルトチェーンを前記縦架台内で上下方向に、前記横架台内で水平方向に間欠的に循環駆動する循環駆動機構と、
前記複数列の前記ベルトチェーンにより吊り下げられて上下方向及び水平方向に移動しながら、農産部を育成する多数個の移動栽培台と、
前記ベルトチェーンの上下方向の駆動過程で、育成した農産物を前記移動栽培台から収穫する前記縦架台の側方に設けた作業位置において、前記移動栽培台を所定高さで一時的に停止する制御機構とを有することを特徴とする農産物栽培装置。
【請求項3】
前記ベルトチェーンは電動機により回転するスプロケットにより駆動することを特徴とする請求項1
又は2に記載の農産物栽培装置。
【請求項4】
前記移動栽培台は前記
複数列のベルトチェーンから水平状態を維持するように吊り下げられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の農産物栽培装置。
【請求項5】
前記作業位置における前記移動栽培台の
停止する前記所定高さは、前記制御機構により調整可能としたことを特徴とする請求項1
又は2に記載の農産物栽培装置。
【請求項6】
前記作業位置の前記縦架台側に、安全柵又は安全用仕切壁を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の農産物栽培装置。
【請求項7】
前記水平方向に方向転換をした前記ベルトチェーンは、
前記水平方向の所定区間を経て更に下方向に方向転換して循環
駆動することを特徴とする請求項2に記載の農産物栽培装置。
【請求項8】
前記作業位置の後方で、
かつ前記横架台の下方をバックヤードとしたことを特徴とする請求項
2又は7に記載の農産物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋内で農産物を育成・栽培するための農産物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、しいたけ等のきのこ類の栽培は、高温、高湿度で日照の少ない自然環境において、原木にきのこ菌を打ち込み、自然生育によって栽培する方法が行われている。
【0003】
このような自然界でのきのこ類の栽培は、原木にきのこ菌を打ち込んでから1~2年後に収穫されるので、栽培期間が長過ぎる上に、年間を通して収穫ができず、収穫量も不安定で、しかも多大な労力を必要とし、この自然栽培での事業拡大には限界がある。
【0004】
そのため、温度、湿度を調整した建屋や地下トンネル内に設けた棚上に、きのこ菌を打ち込んだ原木や原木屑等から成る菌床を載置して、きのこ類を栽培する方式が採用されることもある。この方式によれば、栽培日数の短縮が可能になり、時期を問わずにきのこ類が得られ、安定した供給が可能となる。
【0005】
しかし、作業者は収穫や水分補給等のために、棚の間の狭い通路内を、伸び上がったり、屈んだりする無理な姿勢を取りながら、収穫物等を抱えて歩き廻る作業を続けなければならない。
【0006】
近年では、例えば特許文献1等に開示されているように、菌床を移動栽培台上に載置し、建屋内で育成する移動栽培台を水平方向に、作業者の直前まで循環移動させる機械的な栽培装置が知られている。この装置により、作業者は無理な姿勢等を強いられることも、収穫物等を持ち歩くこともなく、所定位置で作業ができ、労力が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この栽培装置は移動栽培台を水平方向に移動しているために、移動のための広い敷地面積を確保しなければならない。そのために、収穫物の箱詰め等の作業を行うバックヤードの敷地面積も制約されることになる。
【0009】
また、作業者は動き回らずに作業が1個所でできるとしても、特許文献1において搬送されてくる移動栽培台の高さは一定なので、体格が異なる全ての作業者に対し適切とは云えず、長時間の作業により作業者によっては腰痛などの症状が発生し易い。
【0010】
本発明の目的は、上述の課題を解決するために、小さな設置面積において、多数個の移動栽培台を機械的に縦長の上下方向に循環し、上下方向に移動する移動栽培台に対し所定位置で収穫等の作業を行い得る農産物栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る農産物栽培装置は、複数列のエンドレスのベルトチェーンを内部に配置した縦架台と、前記ベルトチェーンを上下方向にループ状に間欠的に循環駆動する循環駆動機構と、前記複数列のベルトチェーンにより吊り下げられて上下方向に移動しながら、農産部を育成する多数個の移動栽培台と、該移動栽培台から育成した農産物を収穫するための作業位置を前記縦架台の外側に設け、前記ベルトチェーンを前記作業位置において前記縦架台内から前記縦架台の外側に移動して上下方向に駆動する移動駆動機構と、前記作業位置において前記移動栽培台を所定高さで一時的に停止する制御機構とを有することを特徴とする。
また、本発明に係る農産物栽培装置は、複数列のエンドレスのベルトチェーンを内部に配置した縦架台と、該縦架台の上部から前記縦架台と直交して水平方向に延在し、前記縦架台のベルトチェーンとループ状に連続したベルトチェーンを内部に配置した横架台と、前記ベルトチェーンを前記縦架台内で上下方向に、前記横架台内で水平方向に間欠的に循環駆動する循環駆動機構と、前記複数列の前記ベルトチェーンにより吊り下げられて上下方向及び水平方向に移動しながら、農産部を育成する多数個の移動栽培台と、前記ベルトチェーンの上下方向の駆動過程で、育成した農産物を前記移動栽培台から収穫する前記縦架台の側方に設けた作業位置において、前記移動栽培台を所定高さで一時的に停止する制御機構とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る農産物栽培装置によれば、移動栽培台は上下の鉛直方向に移動するので、高さ方向の容積を必要とするが、大きな敷地面積を要することなく設置可能であり、作業者の後方をバックヤードとして利用できる。
【0013】
また、鎖を上下方向に移動させ、その停止位置を任意の高さに調整可能とすると、作業者は無理な姿勢を強いられることはない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】移動栽培台に菌床を載置した状態の斜視図である。
【
図5】変形例の農産物栽培装置の要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は実施例1の農産物栽培装置の斜視図、
図2は概略図を示している。農産物栽培装置を設置する建屋Hは、遮光されており、建屋Hの壁部Iに沿って、水はけの良い半地下壕Uが設けられている。
【0017】
半地下壕U内には、スチール製の2本の角柱1a、2本の角柱1bの基部が、4本柱状に構設され、これらの角柱1a、1bから成る縦架台2の頂部には天板3が固定されている。2本の角柱1a、1a間の適当な高さ位置には、複数個の横フレーム4aが掛け渡され、同様に2本の角柱1b、1b間には横フレーム4aと同じ高さ位置に、複数個の横フレーム4bが掛け渡されている。最上部の横フレーム4a、4b間には、軸受5a、5bに軸支された水平軸6が回転自在に設けられ、同様に最下位の横フレーム4a、4b間には、軸受5a、5bを介して水平軸7が回転自在に軸支されている。
【0018】
縦架台2の内側であって、上方の水平軸6の軸受5a、5bの両側には、円周上に歯部を持つ鎖歯車である上部スプロケット8a、8bが固定され、下方の水平軸7には、下部スプロケット9a、9bが固定されている。そして、縦架台2の中間の高さの複数個所の横フレーム4a、4bに軸受5a、5bを介して水平軸10が回転自在に軸支され、補助的な中間スプロケット11a、11bが回転自在に設けられている。
【0019】
上下のスプロケット8a、9a及び8b、9bの歯部には、それぞれエンドレスのベルトチェーン12a、12bがループ状に巻回され噛合されている。また、中間スプロケット11a、11bにもベルトチェーン12a、12bが掛け渡され、2列のベルトチェーン12a、12bが緩まずに所定の張力を維持して上下の矢印方向に循環するようにされている。なお、このベルトチェーン12a、12bの移動方向は何れか一方であればよい。
【0020】
少なくとも水平軸6は回転力伝達機構13を介して、天板3上に設置された電動機による回転駆動装置14によって回転され、上部スプロケット8a、8bは回転駆動される。なお、回転駆動装置14の駆動力を、下部スプロケット9a、9b、中間スプロケット11a、11bにも伝達するようにしてもよい。
【0021】
2列のベルトチェーン12a、12b間には、所定間隔ごとに連結杆15が水平に掛け渡されている。
図3に示すように、各連結杆15には吊金具16により移動栽培台17がその両端において吊り下げられている。移動栽培台17は周縁18を立ち上げた角皿状とされ、底部に金網19が張られている。連結杆15がベルトチェーン12a、12bの移動に伴ってどの方向に移動しても、移動栽培台17はその重みにより、常に水平状態が維持される。
【0022】
移動栽培台17の金網19上には、
図4に示すように、例えばしいたけ、まいたけ、なめこ、しめじ等のきのこ類を育成する複数個の例えば円柱状の菌床Fが載置可能とされている。金網19は菌床Fに後述する散水装置で水分が供給されても、水はけがよく、菌床Fの底部が水中に浸漬しないようにしている。なお、移動栽培台17の底面には、水抜きのために孔部を設けてもよい。
【0023】
半地下壕U内に設けられた下部スプロケット9a、9b付近には散水装置20が配置され、ノズルにより移動栽培台17上の菌床Fに水分の補給を可能としている。また、建屋H内の温度は加温装置により所定温度に保持され、湿度も加湿装置により所定湿度に保持されている。なお、農産物栽培装置の高さが大きいので、縦架台2の上端と下端では温度差が生じ易いため、送風装置を用いて上下の温度差を小さくすることが望ましい。
【0024】
ベルトチェーン12a、12bは作業者Wの手元にあるコントローラ21の例えば押釦操作により、間欠的に、作業者Wに対しては例えば上方から下方に駆動され、手入れを加えるべき移動栽培台17が、縦架台2前の安全柵22により区画化された作業位置Pにおいて停止するようにされている。
【0025】
作業者Wによるコントローラ21の押釦操作によって、移動栽培台17は1段ずつ停止、送出がなされ、更には作業位置Pにおける移動栽培台17の停止高さ位置を、作業者Wの好みの高さで停止されるように設定可能とされている。または、コントローラ21の上下の押釦に対して、押す時間に応じて昇降を続けるようにしてもよい。これにより、作業者Wの任意の高さに移動栽培台17を移動させることができる。
【0026】
作業者Wは移動栽培台17内の菌床Fに対して収穫等の作業を加え、移動栽培台17を下方に送出した後に、移動栽培台17は半地下壕U内の散水装置20を通過する際に菌床Fに水が噴霧され、生育のために常時湿潤状態としている。なお、この水には栄養剤を混入することもできる。また、この菌床Fの湿潤化は、水槽内を潜らすことによって実現してもよい。
【0027】
また、散水装置20は天井に配置するようにしてもよい。天井に配置することで、上方の移動栽培台17から下方の移動栽培台17に水が伝わっていくので、効率的に散水することが可能である。
【0028】
作業者Wは作業位置Pにおいて、直前に停止している移動栽培台17に対して手を伸ばし、移動栽培台17上の菌床Fを手入れしたり、生育されたきのこ類を菌床Fから収穫して後方のバックヤードの作業台T上に運んだり、移動栽培台17から古い菌床Fを除去したり、新たな菌床Fを追加する作業を行う。
【0029】
実施例1では、農産物栽培装置は上下方向に移動栽培台17を立体的に循環させながら、育成、収穫を行うので、建屋Hを高くする必要があるが、移動栽培台17を単に水平方向に移動させる場合と比較して、大きな敷地面積は不要なので、作業位置Pの後方にバックヤードとして、収穫したきのこ類の汚れ取り、仕分け選別、包装、箱詰め等の作業を行う作業台T、新旧の菌床Fの置き場、運搬車輌の進入個所等を容易に確保し得る。
【0030】
作業者Wが1段の移動栽培台17に対する作業を終了し、コントローラ21の押釦を操作してベルトチェーン12a、12bを駆動し、次の移動栽培台17を作業位置Pまで昇降させて、この移動栽培台17の菌床Fに対する作業を行う。このとき、作業者Wの前で停止する移動栽培台17の高さ位置は、コントローラ21で予め作業者Wに適合した高さに調整可能としているので、作業者Wは背伸びをしたり、屈んだりの不適切な姿勢で作業を続けることはない。
【0031】
作業が終わった移動栽培台17は、作業者Wの指示により作業位置Pから更に下降して、半地下壕U内の散水装置20の前に搬送され、菌床Fには散水装置20により水分が噴霧されて湿潤化され、再び壁部Iに沿って上昇する。縦架台2の上部においてベルトチェーン12a、12bは上部スプロケット8a、8bにより転回し、移動栽培台17は搬送方向が変換されて下降を始める。このとき、移動栽培台17は上部スプロケット8a、8b同士を固定する水平軸6に接触することなく、また移動栽培台17が相互に接触することなく転回し、縦架台2の壁部Iの反対側に沿って下降し、再び作業位置Pに達する。
【0032】
例えば寸法的に、縦架台2の高さは15m、上部スプロケット8a、8b、下部スプロケット9a、9bの径は1m、ベルトチェーン12a、12bの長さは約30mとされている。移動栽培台17はベルトチェーン12a、12bに連結杆15により50cmおきに吊設されているとすれば、例えば計60個の移動栽培台17が使用される。例えば、移動栽培台17の幅方向の長さを1.5m、奥行きを40cmとすることができる。
【0033】
菌床Fの径を150mmとすれば、1列に6個並べて1~2行に配列すると、1個の移動栽培台17内に約10個程度の菌床Fを載置することができる。作業者Wが1段の移動栽培台17に対して必要とする作業時間を10分とすれば、ベルトチェーン12a、12bが一巡する時間は例えば600分となる。
【0034】
なお農産物栽培装置は模式的な図示であり、実際には、ベルトチェーン12a、12bや水分を十分に含んだ菌床Fを載置した移動栽培台17の荷重は大きいので、装置の機械的構造はこれらの荷重に対して耐え得る十分な強度を有すると共に、十分に大きな駆動力を必要とする。
【0035】
夜間等で作業者Wがいない時間においても、きのこ類の生育のために、建屋H内は適切な雰囲気を保持して、移動栽培台17を停止することなく循環駆動して、昼夜の区別なく生育を続けさせ、その間においても、菌床Fには散水装置20による散水を続けることが好ましい。
【0036】
建屋H内の良好な環境においては、きのこ類は順調に生育するので、移動栽培台17の段数、移動速度等を適宜に調整することにより、1日に複数回、或いは数日に1回の収穫が可能となる。なお、このような複数台の農産物栽培装置を壁部Iに沿って並列することもできる。
【0037】
なお実施例1においては、ベルトチェーン12a、12bを2列としたが、3列以上にして、例えば移動栽培台17の幅を大きくして、作業位置Pにおいて複数の作業者Wが並んで作業をするようにしてもよい。
【0038】
図5は変形例の要部概略図であり、危険防止、作業の便利性の観点から、作業位置Pにおいて、作業対象となる移動栽培台17が作業者W側に接近するようにされている。縦架台2には、作業位置Pにおいてベルトチェーン12a、12bを作業者W側に移動するために、4個の歯車23が配置され、ベルトチェーン12a、12bはこれらの歯車23と噛合し、部分的に方向変換ができるようにされている。
【0039】
これにより、作業者Wには作業をすべき移動栽培台17が接近するので、作業者Wは他の上下の移動栽培台17に接触する虞れが少なく、また作業が容易となる。
【0040】
この場合においても、作業者Wが移動栽培台17に対する収穫作業中にベルトチェーン12a、12bは停止し、移動栽培台17の高さ位置もコントローラ21により調整可能である。
【0041】
また、実施例1の縦架台2は縦長の上下方向に設置しているが、縦架台2を傾斜して配置してもよい。つまり、上部スプロケット8a、8b及び下部スプロケット9a、9bを水平方向にずらして設置することで、バックヤードの面積を縮小することなく、同数の移動栽培台17であっても、上下方向に設置した縦架台2よりも建屋Hの高さを低くすることができ、また作業者Wの頭上のスペースを有効利用することが可能となる。
【0042】
なお、作業者Wの前面に安全柵22を設けたが、更なる安全性の確保のために、縦架台2との間に安全用仕切壁を設け、この安全用仕切壁に作業者Wが特定の移動栽培台17に対して手を伸ばして作業が可能な窓を設けるようにしてもよい。
【0043】
このように、本発明に係る農産物栽培装置によれば、移動栽培台17は縦長の上下方向に移動するので、高さ方向の容積を必要とするが、大きな敷地面積を要することなく設置が可能であり、作業者Wの後方をバックヤードとして利用できる。
【実施例2】
【0044】
図6は実施例2の側面図であり、実施例1と同一の符号は同一の部材を示している。移動栽培台17は実施例1の縦架台2の上部から建屋Hの天井部Cに沿って他の壁部I’に向けてベルトチェーン12a、12bにより水平方向にも搬送できるようにされている。
【0045】
天井部Cには、4本の角梁31a、31a、31b、31b(31b、31bは図面上31a、31aと重なるため図示せず)から成り、水平方向に例えば10mの長さを有し、縦架台2の上部に連結された横架台32が延在されている。横架台32は建屋Hの梁部材Bから吊設されているが、横架台32の端部を壁部I’側で支柱により支持するようにしてもよい。また、角梁31a、31a間に複数個の縦フレーム33aが、角梁31b、31b間に複数個の縦フレーム33b(図示せず)が掛け渡されている。
【0046】
横架台32の端部の縦フレーム33a、33b間には、軸受を介して水平軸34が回転自在に軸支されており、水平軸34の両側には第2の上部スプロケット35a、35b(35bは図示せず)が固定されている。また、横架台32の縦架台2側には、縦フレーム33a、33b間には軸受を介して水平軸36が回転自在に軸支されており、水平軸36の両側には方向変換スプロケット37a、37b(37bは図示せず)が設けられている。ベルトチェーン12a、12bは縦架台2の上部スプロケット8a、8b、下部スプロケット9a、9b、横架台32の第2の上部スプロケット35a、35b、方向変換スプロケット37a、37bに噛合して、一巡するように巻回されている。
【0047】
横架台32において、ベルトチェーン12a、12bが垂れ下がらないように、ベルトチェーン12a、12bを下方から支持するための複数組の支持歯車38a、38b(38bは図示せず)が縦フレーム33a、33bに回転自在に配置されている。
【0048】
天井部Cにおけるベルトチェーン12a、12bにも実施例1と同様に、所定間隔で移動栽培台17が吊設されており、移動栽培台17はベルトチェーン12a、12bの間欠移動に伴って、上部スプロケット8a、8b、下部スプロケット9a、9bにより壁部Iに沿って上下方向、第2の上部スプロケット35a、35b、方向変換スプロケット37a、37bにより天井部Cに沿って水平方向とから成る一巡のループを循環する。
【0049】
移動栽培台17は壁部I、天井部Cに沿って移動するので、作業者Wは作業位置Pにおいて移動栽培台17に対して作業を行うことができ、実施例1と同様に作業員の後方に、更には横架台32の下方にも作業台T等のバックヤードを確保できる。装置の実質的な敷地面積は実施例1と変わることなく、縦架台2の高さを実施例1よりも低くしても、ベルトチェーン12a、12bは十分な長さが得られ、必要数の移動栽培台17を取り付けることができる。
【0050】
なお、横架台32の下方はバックヤードとされ、作業者Wが作業をしているので、菌床Fや水滴が落下することがあるので、横架台32の下部に安全ネットや防水シート等を張り巡らすことが好ましい。或いは、横架台32の下部に中2階の床を設けることもできる。
【実施例3】
【0051】
図7は実施例3の側面図であり、実施例1、2と同一の符号は同一の部材を示している。壁部Iと反対側の壁部I’に沿って、4本の角柱41a、41a、41b、41b(41b、41bは図示せず)から成る縦架台2と同様の第2の縦架台42が基礎を地上部において構設されている。移動栽培台17はベルトチェーン12a、12bにより壁部Iに沿って、更に天井部Cから他の壁部I’に沿って連続して搬送されるようにされている。
【0052】
第2の縦架台42の上部は実施例2で説明した横架台32の端部に連結されている。第2の縦架台42の角柱41a、41a間、角柱41b、41bの間には、実施例1と同様に複数個の横フレーム43a、43b(43bは図示せず)が設けられ、最下位の横フレーム43a、43bに設けた軸受に回転自在の水平軸45が軸支され、水平軸45には第2の下部スプロケット45a、45b(45bは図示せず)が固定されている。
【0053】
また、横架台32と第2の縦架台42との間には、ベルトチェーン12a、12bを方向変換するための第2の方向変換スプロケット46a、46b(46bは図示せず)が配置され、この第2の方向変換スプロケット46a、46bは、縦フレーム33a、33bに設けられた軸受を介して水平軸47に回転自在に軸支されている。
【0054】
縦架台2から延在され横架台32に至る2列のベルトチェーン12a、12bが、更に第2の縦架台42の上下方向に沿って第2の下部スプロケット45a、45bまで延在されている。また、実施例1と同様に、中間スプロケットを配置することもできる。
【0055】
ベルトチェーン12a、12bは、縦架台2の下部スプロケット9a、9b、上部スプロケット8a、8b、横架台32の第2の上部スプロケット35a、35b、第2の縦架台42の第2の下部スプロケット45a、45b、第2の方向変換スプロケット46a、46bに順次に噛合して一巡するようにされている。
【0056】
ベルトチェーン12a、12bには実施例1、2と同様に、移動栽培台17が吊設されており、作業者Wは実施例1、2と同様に、作業位置Pにおいて移動栽培台17に対して作業を行うことができ、横架台32の下方をバックヤードとして利用できる。
【0057】
この実施例3の場合は、移動栽培台17を両側の壁部I、I’に沿っても移送可能であるので、建屋Hの高さを更に低くしても同数の移動栽培台17を使用することができる。また、作業位置Pを第2の縦架台42の側部にも設けることもでき、散水装置20を壁部I’側にも設けてもよい。
【0058】
また、実施例1、2の場合に、ベルトチェーン12a、12bの鉛直方向から水平方向への方向変換、或いは水平方向から鉛直方向への方向変換は、直角になされるとは限らず、傾斜方向や円弧に沿って変換することも可能である。
【0059】
例えば、同数の移動栽培台17を使用する場合に、実施例1の縦長の上下方向に移動する部分、実施例2、3の水平方向に移動する部分に加えて、傾斜方向に移動する部分を設けると、建屋Hの高さを段階的に変えることができるので、作業者Wの頭上の無駄なスペースが不要となる。
【0060】
実施例1~3において、複数個の駆動装置を適所に配置して、ベルトチェーン12a、12bを円滑に作動させることが好ましい。
【0061】
なお、本発明の農産物栽培装置で栽培する農産物は、きのこ類とは限らず、菌床を使用せずに、生育の早い野菜類に対しても鉢植えなどを用いて適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1a、1b、41a、41b 角柱
2、42 縦架台
6、7、9、34、45 水平軸
8a、8b、35a、35b 上部スプロケット
9a、9b、45a、45b 下部スプロケット
12a、12b ベルトチェーン
15 連結杆
17 移動栽培台
20 散水装置
21 コントローラ
31a、31b 角梁
32 横架台
37a、37b、46a、46b 方向変換スプロケット
H 建屋
I 壁部
P 作業位置
W 作業者
【要約】
【課題】農作物の人工栽培に際して、設置面積の縮小、作業効率の向上を図る。
【解決手段】壁部Iに沿って角柱1a、1bから成る縦架台2が構設され、上部に上部スプロケット8a、8bが、下部に下部スプロケット9a、9bが配置されている。これらのスプロケットには、それぞれエンドレスの2列のベルトチェーン12a、12bがループ状に巻回され、動力機構によりチェーン12a、12bは上下方向に巡回駆動される。
チェーン12a、12b間には、多数本の連結杆15が水平方向に掛け渡されていて、各連結杆15には移動栽培台17が吊り下げられ、菌床が載置されている。チェーン12a、12bの移動に従って連結杆15がどの方向に駆動しても、移動栽培台17は水平状状態が維持される。チェーン12a、12bの駆動は、作業者Wの手元で操作され、移動栽培台17は1段ずつ作業者Wの前で停止する。
【選択図】
図2