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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】建設機械のキャビン構造
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/54 20060101AFI20230608BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20230608BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20230608BHJP
   B60R 21/11 20060101ALI20230608BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B66C13/54 A
B62D25/04 A
B62D25/06 A
B60R21/11
E02F9/16 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019086120
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020179996
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】有地 毅成
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-015985(JP,A)
【文献】特開2011-026914(JP,A)
【文献】特開平09-125458(JP,A)
【文献】特開2018-053599(JP,A)
【文献】特開2006-035898(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02671783(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B62D 25/04;
25/06
B60R 13/01-13/04;
13/08;
21/11
E02F 9/00-9/18;
9/24-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向左右において夫々上下方向に延設されたフロントピラーと、これらフロントピラーの上端から夫々車長方向後方に延設されたルーフレールとを有するキャビン本体を備え、該キャビン本体の車幅方向左側または右側に作業用のブームが配置される建設機械のキャビン構造であって、
前記ブームが配置される側の前記フロントピラーの下部を除いた部分が欠落されると共に、前記ブームが配置される側の前記ルーフレールの後部を除いた部分が欠落され、
欠落によって生じたスペースに、前記フロントピラーより細い縦材と前記ルーフレールよりも細い横材とを有するサッシュフレームを備えたサイドサッシュアッセンブリが取り付けられ、
該サイドサッシュアッセンブリのサッシュフレームの縦材に、前記キャビン本体のブーム側において欠落されずに残った前記フロントピラーの下部に取り付けられて上方に延出されたフロントハンドレールが連結されている、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造。
【請求項2】
前記サイドサッシュアッセンブリのサッシュフレームの横材に、反ブーム側の前記ルーフレールから前記キャビン本体の上方を通ってブーム側に延出されたヘッドガードが連結されている、ことを特徴とする請求項1に記載の建設機械のキャビン構造。
【請求項3】
前記ヘッドガードのブーム側の車長方向後部が、ブーム側において欠落されずに残った前記ルーフレールに支持固定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の建設機械のキャビン構造。
【請求項4】
前記サイドサッシュアッセンブリのサッシュフレームの横材に、ブーム側において欠落されずに残った前記ルーフレールから車長方向前方に延出されたルーフハンドレールが連結されている、ことを特徴とする請求項1に記載の建設機械のキャビン構造。
【請求項5】
前記ルーフハンドレールの前部と前記フロントハンドレールの上部とが繋がっている、ことを特徴とする請求項4に記載の建設機械のキャビン構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のキャビン構造に係り、特に、作業用のブームが配置される側の視界の向上を図ると共に、必要な剛性を確保できる建設機械のキャビン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(a)に示すように、一般に、クレーン(クローラクレーン、ホイールクレーン、ラフテレーンクレーン等の移動式クレーン)等の建設機械のキャビン構造1Jは、キャビン本体2Jの構造部材として、車幅方向左右において夫々上下方向にフロントピラー3R、3Lが延設され、これらフロントピラー3R、3Lの上端から夫々車長方向後方にルーフレール4R,4Lが延設されており、かかるキャビン本体2Jの車幅方向左側または右側に、作業用のブーム(クレーンのブーム等、図示省略)が配置されるようになっている。
【0003】
このような、従来の建設機械のキャビン構造1Jにおいては、作業時にキャビン本体2J内の運転者がブームを見る際、運転者のアイポイントからの視界がブーム側のフロントピラー3R(3L)およびルーフレール4R(4L)によって妨げられてしまう。例えば、キャビン本体2Jの左側(運転席から見て左側)にブームが配置される場合、運転者のアイポイントから見た左上方および前方の視界が、左側のルーフレール4Lおよびフロントピラー3Lによって妨げられてしまい、ブームを用いた作業の際に死角が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-150591号公報
【文献】特開2006-15985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転者の視界の拡大を図った建設機械のキャビン構造として、車幅方向左側のピラー3Lを省略したものが知られている(特許文献1の要約、段落0008参照)。このキャビン構造によれば、左側のピラー3Lが省略されているので、運転者のアイポイントから見た左側の視界は向上する。しかし、左側のピラー3Lを省略したことによるキャビン本体2Jの剛性低下を補う対策が施されておらず、キャビン本体2Jの剛性を車幅方向右側のピラー3Rのみで担わなければならないため、剛性が大幅に低下することが避けられない。
【0006】
別の建設機械のキャビン構造として、フロントピラー3R、3Lおよびルーフレール4R、4Lを通常よりも細くして運転者のアイポイントからの視界を広げる一方、キャビン本体2Jの後部に高剛性の門型構造体を構築したものが知られている(特許文献2の要約、段落0007、0033~0036参照)。このキャビン構造によれば、キャビン本体2Jの後部に構築された門型構造体によって後部の剛性を確保できるものの、通常よりも細いフロントピラー3R、3Lおよびルーフレール4R、4Lでは、キャビン本体2Jの前部の剛性が不十分である。
【0007】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、キャビン本体の車幅方向左右何れか一方に作業用のブームが配置される建設機械のキャビン構造において、作業用のブームが配置される側の視界の向上を図ると共に、必要な剛性を確保できる建設機械のキャビン構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成すべく創案された本発明に係る建設機械のキャビン構造によれば、車幅方向左右において夫々上下方向に延設されたフロントピラーと、これらフロントピラーの上端から夫々車長方向後方に延設されたルーフレールとを有するキャビン本体を備え、キャビン本体の車幅方向左側または右側に作業用のブームが配置される建設機械のキャビン構造であって、ブームが配置される側のフロントピラーの下部を除いた部分が欠落されると共に、ブームが配置される側のルーフレールの後部を除いた部分が欠落され、欠落によって生じたスペースに、フロントピラーより細い縦材とルーフレールよりも細い横材とを有するサッシュフレームを備えたサイドサッシュアッセンブリが取り付けられ、サイドサッシュアッセンブリのサッシュフレームの縦材に、キャビン本体のブーム側において欠落されずに残ったフロントピラーの下部に取り付けられて上方に延出されたフロントハンドレールが連結されている、ことを特徴とする建設機械のキャビン構造が提供される。
【0009】
本発明に係る建設機械のキャビン構造においては、サイドサッシュアッセンブリのサッシュフレームの横材に、反ブーム側のルーフレールからキャビン本体の上方を通ってブーム側に延出されたヘッドガードが連結されていてもよい。
【0010】
本発明に係る建設機械のキャビン構造においては、ヘッドガードのブーム側の車長方向後部が、ブーム側において欠落されずに残ったルーフレールに支持固定されていてもよい。
【0011】
本発明に係る建設機械のキャビン構造においては、サイドサッシュアッセンブリのサッシュフレームの横材に、ブーム側において欠落されずに残ったルーフレールから車長方向前方に延出されたルーフハンドレールが連結されていてもよい。
【0012】
本発明に係る建設機械のキャビン構造においては、ルーフハンドレールの前部とフロントハンドレールの上部とが繋がっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る建設機械のキャビン構造によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)ブーム側においてフロントピラーの下部を除いた部分とルーフレールの後部を除いた部分とが欠落され、欠落によって生じたスペースに、フロントピラーより細い縦材とルーフレールより細い横材とを有するサッシュフレームを備えたサイドサッシュアッセンブリが装着されている。これにより、キャビン本体内の運転者のアイポイントから見たブーム側の死角が反ブーム側の死角よりも小さくなってブーム側の視界が広くなり、ブームを用いた作業の際、作業性・安全性が向上する。
(2)サッシュフレームの縦材に、キャビン本体のブーム側において欠落されずに残ったフロントピラーの下部に取り付けられて上方に延出されたフロントハンドレールが連結されている。これにより、ブーム側において、フロントハンドレールが補強部材としても機能し、フロントピラーおよびルーフレールを省略したことによるキャビン本体の剛性低下を補完できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は従来の建設機械のキャビン構造のキャビン本体を示す斜視図であり、(b)は本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造のキャビン本体を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る建設機械のキャビン構造の斜視図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4】キャビン本体内の運転者のアイポイントから見た死角を示す説明図であり、(a)は従来例の死角を示す説明図、(b)は本実施形態の死角を示す説明図である。
図5】本発明の別の実施形態に係る建設機械のキャビン構造の斜視図である。
図6図5のVI-VI線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(建設機械のキャビン構造1の概要)
図1(a)に示すように、本発明の一実施形態に係る建設機械(例えばクレーン(移動式クレーン))のキャビン構造1は、車幅方向左右において夫々上下方向に延設されたフロントピラー3R、3Lと、これらフロントピラー3R、3Lの上端から夫々車長方向後方に延設されたルーフレール4R、4Lとを有するキャビン本体2Jを備え、キャビン本体2Jの車幅方向左側または右側に作業用のブーム(クレーンのブーム等、図示省略)が配置されるものが前提となる。図1(b)に示すように、本実施形態に係るキャビン構造1のキャビン本体2は、ブームが配置される側(本実施形態ではキャビン本体2内の運転席から見て車幅方向左側、図1(b)においては右側)のフロントピラー3Lの下部を除いた部分が欠落されると共に、ブームが配置される側のルーフレール4Lの後部を除いた部分が欠落されている。
【0017】
加えて、本実施形態に係る建設機械のキャビン構造1においては、図1(b)に示すように、ブームが配置される側において、フロントピラー3Lおよびルーフレール4Lの欠落によって生じたスペースSに、図2に示すように、フロントピラー3Lより細い縦材5とルーフレール4Lよりも細い横材6とを有するサッシュフレーム7を備えたサイドサッシュアッセンブリ8が取り付けられている。このサイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の縦材5には、キャビン本体2のブーム側において欠落されずに残ったフロントピラーの下部に取り付けられて上方に延出されたフロントハンドレール9Lが連結されている。以下、建設機械のキャビン構造1の各構成要素について説明する。
【0018】
(キャビン本体2)
図1(b)に示すように、キャビン本体2は、車長方向に長い長方形状に形成されたフロアパネル10と、フロアパネル10の前部の左右に立設されたフロントピラー3R、3Lと、フロアパネル10の後部の左右に立設されたリヤピラー11R、11Lと、フロントピラー3R、3Lの上部とリヤピラー11R1、1Lの上部とを接続するルーフレール4R、4Lとを有しており、ブームが配置される車幅方向左側(運転席から見て左側)のフロントピラー3Lの下部を除いた部分が欠落されると共に、ブームが配置される側のルーフレール4Lの後部を除いた部分が欠落されている。
【0019】
反ブーム側となる車幅方向右側(運転席から見て右側)のフロアパネル10の車長方向の中程には、センターピラー12Rが立設されており、センターピラー12Rの上部がルーフレール4Rの中程に連結されている。一方、ブーム側となる車幅方向左側のフロアパネル10の車長方向の中程にも、センターピラー12Lが立設されており、このセンターピラー12Lの上部は、欠落されずに残ったルーフレール4Lの前部に連結されている。これら、フロントピラー3R、3L、センターピラー12R、12L、リヤピラー11R、11Lおよびルーフレール4R、4Lは、キャビン本体2の構造部材として機能する。
【0020】
反ブーム側となる車幅方向右側のセンターピラー12Rとフロントピラー3Rとの間には、運転者がキャビン本体2に乗降するためのサイドドア(図示せず)が装着され、そのドアを開いた開口が運転者の乗降口13となる。一方、ブーム側となる車幅方向左側においては、欠落されずに残ったフロントピラー3L、センターピラー12Lの下部、リヤピラーの下部11Lに、サイドパネル14が装着されており、こちら側から運転者が乗降することはない。
【0021】
(サイドサッシュアッセンブリ8)
図1(b)に示すように、ブーム側においてフロントピラー3Lの下部を除いた部分とルーフレール4Lの後部を除いた部分とが欠落されることによって生じたスペースSには、図2に示すように、フロントピラー3Lより細い縦材5とルーフレール4Lよりも細い横材6とを有する枠状のサッシュフレーム7を備えたサイドサッシュアッセンブリ8が取り付けられている。サッシュフレーム7の縦材5は、欠落されずに残ったフロントピラー3Lに継ぎ足される位置に配置され、横材6は、欠落されずに残ったルーフレール4Lに継ぎ足される位置に配置されている。サイドサッシュアッセンブリ8は、欠落されずに残ったフロントピラー3L、ルーフレール4L、センターピラー12L、サイドパネル14に、溶接によって取り付けられている。
【0022】
図2に示すように、サイドサッシュアッセンブリ8は、枠状のサッシュフレーム7と、サッシュフレーム7の下部に取り付けられた敷居板15と、敷居板15に形成された2本のレール溝に沿って引き違うように移動する2枚の透明なサイドウインド16とを備えている。サッシュフレーム7は、欠落されずに残ったフロントピラー3Lに継ぎ足される位置に配置された縦材5と、欠落されずに残ったルーフレール4Lに継ぎ足される位置に配置された横材6とを備えている。縦材5は、欠落されずに残ったフロントピラー3Lより細く、そのフロントピラー3Lの上部に継ぎ足されるように溶接されている。横材6は、欠落されずに残ったルーフレール4Lより細く、そのルーフレール4Lの前部に継ぎ足されるように溶接されている。
【0023】
図2のIII-III線矢視断面図である図3に示すように、サッシュフレーム7の横材6は、透明なサイドウインド16を2枚引き違いガラスのように案内するためのガイド溝17と、後述するヘッドガード18を支持するブラケット19が装着される装着部20と、後述するルーフウインド21が載置される載置部22と、中空な四角パイプ状の剛性部23とを備えている。詳しくは、剛性部23の頂面が車幅方向外方に延びてそこが載置部22となり、載置部22の下方にリブ24が延出されてリブ24で仕切られた部分がガイド溝17となり、載置部22の車幅方向外方の端部が上下に延出されてそこが装着部20となっている。剛性部23、載置部22、リブ24、ガイド溝17、装着部20は、夫々車長方向に沿って延設されている。
【0024】
一方、図2に示すサッシュフレーム7の縦材5は、図3に示す横材6の剛性部23と繋がって四角パイプ状に形成された剛性部(図示せず)を備えている。図3に示す四角パイプ状の剛性部23は、枠状のサッシュフレーム7の全周に亘って配設されており、サイドサッシュアッセンブリ8の剛性を高める機能を発揮する。
【0025】
(フロントハンドレール9L)
図2に示すように、サイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の縦材5には、キャビン本体2のブーム側の下部から上方に延出されたフロントハンドレール9Lが、ブラケット25を介して連結されている。連結には、溶接、ボルト、リベット等が用いられている。フロントハンドレール9Lは、左右のフロントピラー3R、3Lの間に配設された透明なフロントウインド26やサイドウインド16を作業員が清掃する際に、作業員が把持して身体を支える取っ手となる。
【0026】
フロントハンドレール9Lは、キャビン本体2内の運転者のアイポイントE(図4参照)から見て、サッシュフレーム7の縦材5の影となる後方に配置されることが好ましい。フロントハンドレール9Lによって視界をなるべく妨げないようにするためである。また、キャビン本体2の反ブーム側にも同様にフロントハンドレール9Rが設けられている。なお、反ブーム側のフロントハンドレール9Rも、ブーム側のフロントハンドレール9L同様に、ブラケットを介してフロントピラー3Rに連結されていてもよい。
【0027】
(ヘッドガード18)
図2に示すように、サイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の横材6には、反ブーム側のルーフレール4Rからキャビン本体2の上方を通ってブーム側に延出されたヘッドガード18が連結されている。ヘッドガード18は、車幅方向に間隔を隔てて配置され車長方向に延設された一対のサイドメンバ27と、これらサイドメンバ27の間に車幅方向に間隔を隔てて複数配置され車長方向に延設されたセンターメンバ28と、センターメンバ28およびサイドメンバ27の前端に連結され車幅方向に延設されたフロントクロスメンバ29と、センターメンバ28およびサイドメンバ27の後端に連結され車幅方向に延設されたリヤクロスメンバ30とを備え、上方からの落石等からキャビン本体2を防護するものである。
【0028】
図3に示すように、ヘッドガード18のサイドメンバ27は断面L字状に形成され、センターメンバ28は平板状に形成されている。反ブーム側(図3左側)のサイドメンバ27は、ルーフレール4Rにブラケット31を介して支持され、ブーム側(図3右側)のサイドメンバ27は、サッシュフレーム7の横材6にブラケット19を介して支持されている。詳しくは、反ブーム側においては、ルーフレール4Rにブラケット31が溶接され、ブラケット31にサイドメンバ27がボルトナット32によって連結されている。一方、ブーム側においては、サッシュフレーム7の横材6にブラケット19が溶接され、ブラケット19にサイドメンバ27がボルトナット33によって連結されている。
【0029】
図3に示すように、反ブーム側(図3左側)のルーフレール4Rとブーム側(図3右側)のサッシュフレーム7の横材6との間には、これらを架け渡すようにして、透明なルーフウインド21が接着剤34によって装着されている。ルーフウインド21の下方の運転者からの上方視界は、平板状のセンターメンバ28の隙間を通じて確保されている。ブーム側のサッシュフレーム7の横材6には、透明なサイドウインド16を2枚引き違いガラスのように案内するためのガイド溝17が形成されている。反ブーム側のルーフレール4Rには、運転者がキャビン本体2に乗降するためのサイドドア35の戸当たりとなるウエザーストリップ36が取り付けられている。サイドドア35は、枠状のドアフレーム37と透明なドアウインド38とを有するヒンジドアからなり、ドアが閉じられたときドアフレーム37がウエザーストリップ36に押し付けられるようになっている。
【0030】
図2に示すように、ヘッドガード18のフロントクロスメンバ29の車幅方向の両端部は、左右のフロントハンドレール9R、9Lの上部に溶接されている。一方、ヘッドガード18のリヤクロスメンバ30の車幅方向のブーム側(図2右側)の端部は、ブラケット39を介してルーフレール4Lに支持されている。詳しくは、ブーム側においては、欠落されずに残ったルーフレール4Lの前部にブラケット39が溶接され、ブラケット39にリヤクロスメンバ30がボルトナットによって連結されている。すなわち、ヘッドガード18のブーム側の車長方向後部が、ブーム側において欠落されずに残ったルーフレール4Lに支持固定されている。ブラケット39は、欠落されずに残ったルーフレール4Lの前部とサッシュフレーム7の横材6の後部とを跨いて溶接されており、横材6とルーフレール4Lとの接合剛性を高める部材としても機能する。反ブーム側(図2左側)においては、図示はしないが、ルーフレール4Rにブラケットが溶接され、ブラケットにリヤクロスメンバ30がボルトナットによって連結されている。
【0031】
(作用・効果)
本実施形態に建設機械のキャビン構造1によれば、次のような作用・効果を発揮できる。
【0032】
(ブーム側の視界向上)
図1(b)に示すように、ブーム側においてフロントピラー3Lの下部を除いた部分とルーフレール4Lの後部を除いた部分とが欠落され、欠落によって生じたスペースSに、図2および図3に示すように、フロントピラー3Lより細い縦材5とルーフレール4Lより細い横材6とを有するサッシュフレーム7を備えたサイドサッシュアッセンブリ8が装着されている。これにより、図3において、ルーフウインド21の下方のキャビン本体2内の運転者のアイポイントE(図4参照)から見たブーム側の死角が、反ブーム側の死角よりも小さくなって、ブーム側の視界が広くなり、ブームを用いた作業の際、作業性・安全性が向上する。
【0033】
図4(a)に従来の建設機械のキャビン構造1J(図1(a)参照)における運転者のアイポイントEからブーム側の上方を見た死角を示し、図4(b)に本実施形態の建設機械のキャビン構造1における運転者のアイポイントEからブーム側の上方を見た死角を示す。サイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の横材6はルーフレール4Lよりも細いため、本実施形態の死角θ2は従来例の死角θ1よりも小さくなる。従って、ブーム側の斜め上方の視界が広がり、ブームを用いた作業の作業性・安全性が向上する。
【0034】
図2に示すように、運転者のアイポイントEからブーム側の前方を見た視界においても、本実施形態に係るサイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の縦材5はフロントピラー3Lよりも細いため、図面(図4(a)、図4(b)と同様の図面)は省略するが、運転者のアイポイントEからブーム側の前方を見た死角が従来例よりも小さくなる。従って、ブーム側の斜め前方の視界が広がり、ブームを用いた作業の作業性・安全性が向上する。
【0035】
(キャビン本体2の剛性確保)
図2に示すように、サッシュフレーム7の縦材5には、キャビン本体2のブーム側(図2右側)において欠落されずに残ったフロントピラー3Lの下部に取り付けられて上方に延出されたフロントハンドレール9Lが連結されている。これにより、ブーム側において、フロントハンドレール9Lが補強部材としても機能し、図1(b)に示すように、フロントピラー3Lおよびルーフレール4Lを省略したことによるキャビン本体2の剛性低下を補完できる。
【0036】
図2に示すように、サイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の横材6には、反ブーム側(図2左側)のルーフレール4Rからキャビン本体2の上方を通ってブーム側(図2右側)に延出されたヘッドガード18が連結されている。この構成によれば、ヘッドガード18がサッシュフレーム7を支持する補強部材としても機能するため、フロントピラー3Lおよびルーフレール4Lを省略したことによるキャビン本体2の剛性低下を補完できる。ヘッドガード18は、落石等からキャビン本体2を防護する必要があるため、サッシュフレーム7と比べると遙かに剛性が高く、補強部材として利用する効果は大きい。
【0037】
図2に示すように、ヘッドガード18のブーム側の車長方向後部であるリヤクロスメンバ30が、ブーム側において欠落されずに残ったルーフレール4Lにブラケット39を介して支持固定されている。この構成によれば、サッシュフレーム7が、サッシュフレーム7よりも太く剛性の高いルーフレール4Lに、ヘッドガード18を介して支持されることになるため、図1(b)に示すように、フロントピラー3Lおよびルーフレール4Lを省略したことによるキャビン本体2の剛性低下を補完できる。
【0038】
図2に示すように、ヘッドガード18のフロントクロスメンバ29の車幅方向の両端部が、左右のフロントハンドレール9R、9Lの上部に溶接されている。この構成によれば、ヘッドガード18とフロントハンドレール9R、9Lとが一体となって、サッシュフレーム7を支持すると共にキャビン本体2の剛性を高める補強部材としても機能するため、図1(b)に示すように、フロントピラー3Lおよびルーフレール4Lを省略したことによるキャビン本体2の剛性低下を補完でき、キャビン本体2に必要な剛性を確保できる。
【0039】
(変形例)
図5に、本発明の変形例に係る建設機械のキャビン構造1aを示す。この変形例は、基本的には上述した実施形態(前実施形態)と同様の構成であり、ヘッドガード18が省略され代わりにルーフハンドレール40L、40Rが装備されている点が前実施形態と相違する。従って、前実施形態と同様の構成要素については同一の符合を付して説明を省略し、相違点であるルーフハンドレール40L、40Rについて説明する。
【0040】
(ルーフハンドレール40L、40R)
図5に示すように、ブーム側(図5右側)においては、サイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の横材6に、ブーム側において欠落されずに残ったルーフレール4Lから車長方向前方に延出されたルーフハンドレール40Lが連結されている。ルーフハンドレール40Lは、キャビン本体2の天井部分に配設された透明なルーフウインド21やサイドウインド16を作業員が清掃する際に、作業員が把持して身体を支える取っ手となる。
【0041】
ルーフハンドレール40Lは、後部が下方に屈曲されて欠落されずに残ったルーフレール4Lに連結され、前部がフロントハンドレール9Lの上部と繋がっている。ルーフハンドレール40Lは、ブラケット41を介してサイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の横材6に連結されており、フロントハンドレール9Lは、ブラケット25を介してサッシュフレーム7の縦材5に連結されている。ブーム側のルーフハンドレール40Lは、キャビン本体2内の運転者のアイポイントE(図4(b)参照)から見て、サッシュフレーム7の横材6の影となる後方に配置されることが好ましい。ルーフハンドレール40Lによって視界をなるべく妨げないようにするためである。
【0042】
一方、反ブーム側(図5左側)においても、ルーフハンドレール40Rは、後部が下方に屈曲されてルーフレール4Rに連結され、前部がフロントハンドレール9Rの上部と繋がっている。ルーフハンドレール40Rは、ブラケット42を介してルーフレール4Rに連結され、フロントハンドレール9Rは、ブラケット43を介してフロントピラー3Rに連結されている。反ブーム側のルーフハンドレール40Rは、キャビン本体2内の運転者のアイポイントEから見て、ルーフレール4Rの影となる後方に配置されることが好ましい。ルーフハンドレール40Rによって視界をなるべく妨げないようにするためである。
【0043】
図5のVI-VI線矢視断面図である図6に示すように、反ブーム側(図6左側)においては、ルーフレール4Rにブラケット42が溶接され、ブラケット42に別のブラケット43がボルトナット44で装着され、別のブラケット43にルーフハンドレール40Rが溶接されている。ブーム側(図6右側)においては、サッシュフレーム7の横材6にブラケット41が溶接され、ブラケット41に別のブラケット45がボルトナット46で装着され、別のブラケット45にルーフハンドレール40Lが溶接されている。
【0044】
(作用・効果)
変形例に係る建設機械のキャビン構造1aの作用・効果は、基本的に前実施形態に係る建設機械のキャビン構造1と同様であるため、同様の部分については説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0045】
(ブーム側の視界向上)
前実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
(キャビン本体の剛性確保)
図5に示すように、ブーム側(図5右側)において、サイドサッシュアッセンブリ8のサッシュフレーム7の横材6には、ブーム側において欠落されずに残ったルーフレール4Lから車長方向前方に延出されたルーフハンドレール40Lが連結されている。これにより、ブーム側において、ルーフハンドレール40Lが補強部材としても機能し、図1(b)に示すように、フロントピラー3Lおよびルーフレール4Lを省略したことによるキャビン本体2の剛性低下を補完できる。
【0047】
図5に示すように、ブーム側(図5右側)において、ルーフハンドレール40Lの前部とフロントハンドレール9Lの上部とが繋がっている。この構成によれば、ルーフハンドレール40Lとフロントハンドレール9Lとが、一体となってサッシュフレーム7を支持する補強部材として機能するため、図1(b)に示すように、フロントピラー3Lおよびルーフレール4Lを省略したことによるキャビン本体2の剛性低下を補完でき、キャビン本体2に必要な剛性を確保できる。なお、図示はしないが、左右のルーフハンドレール40L、40Rを繋ぐクロスメンバを追加すれば、更なる剛性向上が見込める。
【0048】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。例えば、作業用のブームは、キャビン本体2内の運転席から見て車幅方向左側ではなく、右側に配置されるものであってもよい。この場合、サイドサッシュアッセンブリ8等の構成要素が左右で逆の配置となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、作業用のブームが配置される側の視界の向上を図ると共に、必要な剛性を確保できる建設機械のキャビン構造に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 建設機械のキャビン構造
2 キャビン本体
3L フロントピラー(ブーム側)
4L ルーフレール(ブーム側)
S 欠落によって生じたスペース
5 縦材
6 横材
7 サッシュフレーム
8 サイドサッシュアッセンブリ
9L フロントハンドレール(ブーム側)
18 ヘッドガード
30 ヘッドガードの車長方向後部としてのリヤクロスメンバ
40L ルーフハンドレール(ブーム側)
E 運転者のアイポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6