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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】航空機用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21V 23/00 20150101AFI20230608BHJP
   B64D 47/02 20060101ALI20230608BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230608BHJP
   F21V 23/02 20060101ALI20230608BHJP
   F21V 15/01 20060101ALI20230608BHJP
   F21W 107/30 20180101ALN20230608BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230608BHJP
【FI】
F21V23/00 120
B64D47/02
F21S2/00 320
F21V23/02
F21V15/01 100
F21W107:30
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019008122
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020119680
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】向井 知之
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕人
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-513488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334263(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02553524(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00
B64D 47/02
F21S 2/00
F21V 23/02
F21V 15/01
F21W 107/30
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ユニットと、前記光源ユニットを発光制御する電源制御ユニットを備える灯具であって、前記光源ユニットは灯具ハウジングに内装され、前記電源制御ユニットはケーシングを有し、前記光源ユニットの発光制御を行う制御回路構体が前記ケーシングに内装され、当該ケーシングが前記灯具ハウジングの外部に配設されており、前記電源制御ユニットは、さらに電源電力を変圧する電源トランスを有し、当該電源トランスは前記ケーシングに内装されるとともに、当該ケーシングに対して固定的に支持され、前記制御回路構体は前記ケーシングに対して相対移動可能に支持される航空機用灯具。
【請求項2】
前記ケーシングは開口を有する容器状に形成され、前記電源トランスは前記ケーシングに充填された硬質樹脂に埋設され、前記制御回路構体は前記ケーシングに充填された軟質樹脂に埋設される請求項に記載の航空機用灯具。
【請求項3】
前記電源トランスは前記ケーシングの底部に内装され、前記制御回路構体は前記ケーシングの開口側に内装される請求項に記載の航空機用灯具。
【請求項4】
前記硬質樹脂はエポキシ樹脂であり、前記軟質樹脂はシリコン樹脂である請求項2又は3に記載の航空機用灯具。
【請求項5】
前記灯具ハウジングは、プレス加工された容器状の灯具ボディと、この灯具ボディに取り付けられたアウターレンズで構成され、前記電源制御ユニットのケーシングが前記灯具ボディに取り付けられる請求項1ないしのいずれかに記載の航空機用灯具。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載の航空機用灯具であって、航空機の検氷灯又はロゴ灯として構成される航空機用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空機に用いられる灯具に関し、特に機体の外表面を照明するための照明用灯具として用いて好適な航空機用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機用灯具として、航空機に搭載の発電機を電源としており、変圧用の電源トランスを用いて高電圧のAC電流を降圧している。近年、光源として特許文献1のように白熱灯に代えてLED(発光ダイオード)を用いた灯具が提案されている。LEDを光源とする灯具では、前記した電源トランスに加えて、AC電流をDC電流に整流するコンバータや、LEDを発光・消光制御するためのスイッチング回路等を含む制御回路が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-89868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この制御回路を構成する制御回路基板をLEDと共に灯具ハウジングに内装すると、機体に生じる振動や衝撃がそのまま制御回路基板に伝えられ、制御回路基板にダメージを与える。また、外気温や外気圧等の外部環境変化の影響を受け易い。これらの影響を緩和するためには、制御回路基板を灯具ハウジング内に緩衝部材と共に内装することが考えられるが、このような内装構造を実現するためには灯具ハウジングの内容積を大きくする必要がある。
【0005】
通常、この種の灯具ハウジングでは、灯具ハウジングを構成している灯具ボディを金属材で製造しているが、内容積が大きくなると灯具ハウジングに高い機械的強度が要求され、厚板の金属材を用いる必要が生じる。厚板の金属材は、その加工、特にプレス加工におけるいわゆる深絞りが難しくなる。従来では、灯具ボディを鋳造により製造することが余儀なくされ、灯具ボディないしは灯具ハウジング、さらには灯具全体を小型かつ軽量に製造することが難しい。
【0006】
本発明の目的は、半導体発光素子を光源とした小型かつ軽量な航空機用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光源ユニットと、この光源ユニットを発光制御する電源制御ユニットを備える灯具であって、光源ユニットは灯具ハウジングに内装され、電源制御ユニットはケーシングを有し、光源ユニットの発光制御を行う制御回路構体がこのケーシングに内装され、かつケーシングが灯具ハウジングの外部に配設される。
【0008】
本発明においては、電源制御ユニットは、さらに電源電力を変圧する電源トランスを有し、この電源トランスはケーシングに内装されるとともに、ケーシングに対して固定的に支持され、制御回路構体はケーシングに対して相対移動可能に支持される。
例えば、ケーシングは開口を有する容器状に形成され、電源トランスはケーシングに充填された硬質樹脂に埋設され、制御回路構体はケーシングに充填された軟質樹脂に埋設される構成が好ましい。
【0009】
本発明における灯具ハウジングは、プレス加工された容器状の灯具ボディと、この灯具ボディに取り付けられたアウターレンズで構成され、電源制御ユニットはこの灯具ボディに取り付けられる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、灯具ボディを金属材のプレス加工で構成でき、小型かつ軽量の航空機用灯具が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の灯具を搭載した航空機の概略外観図。
図2】検氷灯を前面側及び後面側から見た外観斜視図。
図3】検氷灯の一部を破断した前面図。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図。
図5】検氷灯の概略部分分解斜視図。
図6】LEDユニットの分解斜視図。
図7】LEDユニットの組立状態の一部の拡大断面図。
図8】電源制御ユニットの一部を破断した分解斜視図。
図9】電源制御ユニットの縦断面図。
図10】検氷灯の照明領域を説明するための概略斜視図。
図11】ロゴ灯のLEDユニットの分解斜視図。
図12】ロゴ灯の照明領域を説明するための概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の航空機用灯具を搭載した航空機APの外観図である。この航空機APは、本発明にかかる航空機用灯具として、胴体BDの左右側面に配設されて左右の主翼MW及びエンジンEGに付着する氷を検査するための照明を行う検氷灯1Aと、左右の水平尾翼HTに配設されて垂直尾翼VTの両側面に描かれた航空会社のロゴマークLMを照明するロゴ灯1Bを備えている。なお、以降の説明では航空機APの左側の検氷灯1Aとロゴ灯1Bについて説明するが、右側にも同様の検氷灯とロゴ灯が配設されており、これらの構造についても同様である。
【0013】
図2は前記検氷灯1Aの外観図であり、(a)は前面側から見た図、(b)は後面側から見た図である。この検氷灯1Aは、全体の外形状が概ね厚い円盤状に形成された灯具ハウジング2を有している。この灯具ハウジング2は、円形容器状に製造された灯具ボディ21と、この灯具ボディ21の前面側、すなわち光を照射する側に配設されたアウターレンズ22を備えている。
【0014】
前記灯具ボディ21はアルミニウム等の金属材をプレス加工して製造されており、容器状の本体211と、この本体211の周縁に沿って一体に設けられた円形のフランジ212を有している。図1に示したように、検氷灯1Aはこのフランジ212を利用して航空機APの胴体BDに開口された円形穴10に取り付けるようになっている。フランジ212にはこの取り付けを行うための適宜数の穴213が開口されている。
【0015】
前記アウターレンズ22は円環状をしたホルダ221を有しており、このホルダ221内にガラス板あるいはPC(ポリカーボネート)等の透光性のある樹脂板からなるレンズ222が支持されている。このホルダ221は適宜数設けられた開口214を利用して前記灯具ボディ21のフランジ212の内縁部にビス等により固定される。これによりアウターレンズ22は灯具ボディ21の前面の開口を封止した状態とされ、アウターレンズ22と灯具ボディ21とで灯具ハウジング2の内部に灯室が構成される。
【0016】
図3は前記検氷灯1Aの一部(アウターレンズ22)を破断して前面側から見た図、図4はIV-IV線に沿った断面図である。また、図5はその部分分解斜視図である。前記灯具ハウジング2の灯室内には、検氷灯としての照明光を出射するLED(発光ダイオード)ユニット3が内装されている。すなわち、前記灯具ボディ21の本体211は側面の一部、この検氷灯1Aでは航空機APに取り付けられたときに前側に向けられる左側面が灯具ボディ21の前面に対して所要の角度で傾斜されたテーパ面211aとして構成されており、このテーパ面211aの内面に前記LEDユニット3が支持されている。
【0017】
また、前記灯具ボディ21の底面211bの内面には、中継端子板5がネジ52により固定されており、LEDユニット3はこの中継端子板5の中継端子51にリード線53により電気接続され、さらにこの中継端子板5に対して後述する電源制御ユニット4から引き出されているリード線46に電気接続される。これらの電気接続については後述する。
【0018】
図6は前記LEDユニット3の分解斜視図、図7はその一部の拡大断面図である。LEDユニット3は、複数のLED31を搭載したLED基板32と、このLED基板32に積層状態に一体的に組み付けられたインナーレンズ33を備えている。各LED31は白色LEDで構成されており、所要の配線回路が形成されたLED基板32の上に平面配列されて搭載されている。この白色LED31は、ベース310に実装された青光あるいは紫外光を発光するLEDチップ311上に、黄色光を発光する蛍光体を含有するカバー312を積層したLEDとして構成されている。
【0019】
前記LED基板32には、ここでは6個のLED31が搭載されており、いずれもLED基板32の表面の法線方向に光出射軸が向けられている。これらのLED31は、中央寄りの4つのLEDは主LED31mとして構成され、これら主LED31mの両側に配置された2つのLEDは副LED31sとして構成されている。
【0020】
前記インナーレンズ33はPC等の透光性樹脂の成形により概ね板状に形成されており、その四隅において前記LED基板32にねじ36により積層状態に一体的に連結されている。前記インナーレンズ33は6つのレンズ34,35が一体に形成されている。ここでは、前記主LED31mに対向配置される4つの主レンズ34と、前記副LED31sに対向配置される2つの副レンズ35(35a,35b)で構成される。
【0021】
前記4つの主レンズ34はいずれも同じ形状をした曲面レンズで構成されている。この曲面は球面あるいは非球面であり、いずれの場合も主LED31mから出射された光を所要の角度範囲の照射領域に向けて出射する。ここでは、主レンズ34は主LED31mから出射された光をほぼ平行に、あるいはこれよりも幾分大きな角度範囲内で発散する光束として、それぞれがほぼ同じ方向に向けて照射を行うように構成されている。これにより、図7に模式的に示すように、照明面積は小さいが遠方の照明領域Amを明るく照明することが可能とされている。
【0022】
前記副レンズ35はプリズムで構成されており、図7に示すように、副LED31sから出射された光を相対的に大きい角度に発散する光束として、主レンズ34よりも広い角度範囲で出射する。2つの副レンズ35a,35bはプリズムの光反射面の向きがそれぞれ異なる方向に向けられており、対向する副LED31sから出射された光を主レンズ34の照射領域とは異なる照明領域Asに向けて出射する。これにより、2つの副レンズ35a,35bの照明領域Asを合成することにより、近傍の広い照明領域を明るく照明する。なお、副レンズ35a,35bにおいては、プリズムでの屈折により光を照射するように構成してもよい。
【0023】
前記LEDユニット3は、前記したように灯具ボディ21のテーパ面211aの内面にネジ等により取り付けられており、この取り付けられた状態では、LEDユニット3の光出射面は灯具ボディ21の前面、すなわち検氷灯1Aの前面に対して傾いた状態で取り付けられることになる。
【0024】
また、図2図5に示したように、前記灯具ボディ21の前記テーパ面211aの外面には、所要形状をしたヒートシンク6が取り付けられる。この場合、LEDユニット3を灯具ボディ21に取り付けるために用いられたネジ36の先端をテーパ面211aの外部にまで突出させることにより、ヒートシンク6を取り付けてもよい。このヒートシンク6は、前記LEDユニット3のLED基板32に対して熱的に連結され、LEDユニット3が発光したときに発生する熱をこのヒートシンク6を介して放熱する。
【0025】
一方、前記灯具ハウジング2の外部、ここでは前記灯具ボディ21の底面211bの外面には、電源制御ユニット4が取り付けられている。この電源制御ユニット4は、図8に分解斜視図を示すように、矩形の容器状をしたケーシング41を備えており、このケーシング41に電源トランス42と制御回路構体43が内装されている。
【0026】
前記ケーシング41は矩形容器状の箱体411と、この箱体411の開口部を覆う蓋体412とで構成され、この蓋体412によりケーシング41の内部が密封されるようになっている。これら箱体411と蓋体412は金属あるいは機械的強度の高い樹脂で構成されている。
【0027】
図9は前記電源制御ユニット4の縦断面図である。前記電源トランス42は前記箱体411の下部領域に内装されている。この電源トランス42は航空機に備えられている発電機で発生された高圧のAC電流を所定の電圧、すなわち前記LEDユニット3の発光を制御するのに適した電圧まで降圧させるために用いられる。この電源トランス42はトランスヨークに一体化されたフレーム44を有しており、このフレーム44が箱体411に連結されることにより、電源トランス42は箱体411の内部に固定される。また、箱体411の内部にはv点描画した硬質樹脂、ここではエポキシ樹脂ERが充填されており、電源トランス42はこのエポキシ樹脂ER内に封止された状態で埋設されている。
【0028】
前記箱体411の内部の前記電源トランス42の上側領域には前記制御回路構体43が内装されている。この制御回路構体43は、詳細な説明は省略するが、回路基板431に各種電子部品432が搭載された制御回路基板として構成されている。この制御回路基板43には、前記LEDユニット3のLED31の発光を制御するための制御回路が構成されている。例えば、前記電源トランス42により降圧されたAC電流をDC電流に整流する整流回路、整流したDC電流をLED41の発光に適した電圧に制御するDC-DCコンバータ回路、LED41に給電する電流をオン・オフするスイッチ回路等で構成される。
【0029】
前記制御回路基板43は前記電源トランス42の上側のフレーム44上に載置され、その上に前記蓋体412が載せられる。また、このフレーム44と蓋体412で挟まれたケーシング41内の上側の領域には点描画した軟質樹脂、ここではシリコン樹脂(シリコーン樹脂)SRが充填されており、制御回路基板43はこのシリコン樹脂SR内に封止された状態で埋設されている。このシリコン樹脂SRはゲル状であるので、制御回路基板43はケーシング4に固定的に支持されることなく、ケーシング4に対して微小の移動が可能な状態、換言すれば浮遊した状態に支持されている。
【0030】
前記電源トランス42と制御回路基板43はケーシング41の内部において、リード線45により相互に電気接続されている。また、前記ケーシング41からは蓋体412の穴を通して制御回路基板43を外部に電気接続するためのリード線46が引き出されている。さらに、ケーシング41の箱体411の側面にはトランス42を外部の電源に電気接続するための電源端子47が配設されている。
【0031】
この電源制御ユニット4を検氷灯1Aの灯具ボディ21の後面211bに取り付けるには、蓋体412を灯具ボディ21の後面211bに当接させた上で、前記した中継端子板5を固定するネジ52の先端を当該後面211bを貫通させ、さらに蓋体412及び制御回路基板43を貫通させた上で、フレーム44のネジ穴に螺合させる。このネジ52によりフレーム44、すなわち箱体411が灯具ボディ21に連結され、これらにより制御回路基板43と蓋体412が挟持された状態で電源制御ユニット4は灯具ボディ21に取り付けられる。さらに、制御回路基板43に接続されているリード線46を後面211bの穴を貫通させた上で中継端子板5に接続する。これにより、電源制御ユニット4とLEDユニット3は相互に電気接続される。
【0032】
このように電源制御ユニット4の取り付けと電気接続を行うことにより、電源制御ユニット4で制御された電力はLEDユニット3に供給され、LED41の発光が制御される。LEDユニット3が発光したときには、LED41から出射された光はインナーレンズ33により光の照射方向が制御され、制御された光はアウターレンズ22を透して外部に出射される。
【0033】
図1にも示したように検氷灯1Aは主翼MWよりも幾分前方かつ上側の位置において胴体BDに取り付けられる。LEDユニット3は灯具ハウジング2内において、検氷灯1Aの前面に対して傾斜した状態で取り付けられているので、検氷灯1Aの取り付け姿勢を適宜に調整することにより、LEDユニット3の光出射面は航空機APに対して幾分下方でかつ後方に向けられた状態で胴体BDに取り付けられる。
【0034】
発電機からの電力を受けて電源制御ユニット4によりLEDユニット3の発光が制御される。操縦者による操作あるいは自動制御により検氷のためにLEDユニット3が点灯されると、検氷灯1Aにより主翼MW及びエンジンEGに対する照明が行われる。
【0035】
図10は左側の検氷灯1Aの照明領域を示す図であり、LEDユニット3において4つの主LED31mから出射された光は主レンズ34によりそれぞれほぼ同じ方向に向けられ、これらの光は合成されて主翼MWの先端方向に向けて出射され、領域A1を照明する。これにより、主翼MWの近傍の基端部(胴体BDに近い部位)から遠方の先端部にわたる領域、特に着氷され易い主翼MWの前縁部に沿った全域を照明する。
【0036】
一方、2つの副LED31sから出射された光は副レンズ35a,35bにより主LED31mによる照明領域とは異なる主翼MWの基端部からエンジンEGにわたる領域を照明する。副レンズ35a,35bを構成しているプリズムの向きは相違されているので、それぞれが照明する領域も相違される。この例では、下側の副レンズ35aは主翼MWの基端近傍からエンジンEGの上部を含む領域A2を照明し、上側に配置されている副レンズ35bはエンジンEGの下部を含む領域A3を照明する。
【0037】
したがって、検氷灯1Aが点灯されたときには、主LED31mによる照明と副LED31sによる各照明領域A1~A3が合成された領域が照明されることにより、白熱灯を光源とする検氷灯と同様に、主翼MWとエンジンEGのほぼ全領域、特に着氷され易いこれらの前縁領域を好適に照明することができる。
【0038】
したがって、既存の白熱灯で構成されている検氷灯を、LEDを光源とするこの実施形態の検氷灯1Aに置き換えることができる。また、LEDユニット3は特許文献1のような放物形状、楕円形状のリフレクタを備えていないので小型、軽量にでき、航空機への適用が可能になる。
【0039】
また、この検氷灯1Aでは、制御回路基板43は電源制御ユニット4として電源トランス42と一体に構成され、灯具ハウジング2の外部に取り付けられて灯具ハウジング2内のLEDユニット3の発光制御を行うことができる。そのため、制御回路基板43を灯具ハウジング2の内部に配設する必要はなく、灯具ハウジング2に要求される内容積が低減できる。また、制御回路基板43に接続する配線、特に電源トランス42と制御回路基板43を電気接続するための配線を灯具ハウジング2内において引き回す必要はなく、このことからも灯具ハウジング2の内容積が低減できる。これにより、灯具ハウジング2を小型に構成でき、検氷灯1Aの全体の小型化が可能になる。
【0040】
さらに、灯具ハウジング2の小型化に伴い、灯具ボディ21に要求される機械的な強度が低減できる。したがって、板厚を低減した金属材を用いて灯具ボディ21を製造することが可能になり、灯具ボディ21を容器状に加工するプレス加工が容易に行うことが可能になり、結果として灯具ハウジング1ないし検氷灯1Aの軽量化が実現できる。
【0041】
電源制御ユニット4においては、ケーシング41内に内装した電源トランス42を硬化性のエポキシ樹脂ERで封止しているので、航空機における振動や衝撃によりケーシング41が振動されたときに、高重量で慣性の大きな電源トランス42がケーシング41内で移動されてケーシング41の内面に衝突するようなことが防止できる。また、エポキシ樹脂により外部環境に対する電源トランス42の絶縁性を高めることができる。これにより、ケーシング41内での衝撃が要因とされる電源トランス42の防爆効果が得られる。
【0042】
また、電源制御ユニット4においては、制御回路基板43はゲル状のシリコン樹脂SRで封止しているので、ケーシング41内で懸架状態に支持される。そのため、航空機の振動によりケーシング41が振動されても、当該振動はシリコン樹脂SRにより吸収されて制御回路基板43にまで伝達されることはなく、制御回路基板43が物理的なダメージを受けることが防止される。同時に、制御回路基板43と電源トランス42を接続する配線45,46,53についても振動によるダメージが防止される。
【0043】
特に、検氷灯1Aは航空機APの外部に晒されるので、制御回路基板43や各配線45,46,53は、外部環境、例えば気圧変化、温度変化、風雨、雷等の自然現象の影響を受けてダメージを受け、あるいは動作の信頼性に影響を受け易い。制御回路基板43を、灯具ハウジング2の後面側に取り付けた電源制御ユニット4のケーシング41内に封止状態に配設することにより、これらの外部環境の影響を緩和して検氷灯の信頼性を高めることも可能になる。
【0044】
以上の実施形態は本発明を検氷灯に適用した例であるが、前記したように本発明の灯具は図1に示したロゴ灯1Bにも適用できる。このロゴ灯1Bは、図1に示したように、左右の水平尾翼HTの上面の一部、特にロゴマークLMが描かれている垂直尾翼VTの左右両側面を仰ぎ見る位置に配設されている。詳細な図示は省略するが、水平尾翼HTの上面の当該位置にはほぼ円形の凹部が設けられており、ロゴ灯1Bはこの凹部に収納されるようにして水平尾翼HTに固定される。
【0045】
このロゴ灯1Bの基本的な構成は検氷灯1Aと同じであるが、LEDユニットについては一部の構成が相違する。図11はロゴ灯1BのLEDユニット3Bの分解斜視図である。検氷灯1AのLEDユニット3と等価な部分には同一符号を付してある。LEDユニット3Bは、LED基板32とインナーレンズ33とを備えており、LED基板32に搭載されているLED31で発光された光の出射方向をインナーレンズ33で制御する構成は同じである。
【0046】
このロゴ等BのLEDユニット3Bでは、LED基板32にはLED31として、2つの主LED31mと1つの副LED31sが搭載されている。また、インナーレンズ33には、これらのLEDに対応して2つの主レンズ34と1つの副レンズ35cが形成されている。主レンズ34は球面又は非球面の曲面レンズで構成され、副レンズ35cはプリズムで構成されている。
【0047】
このロゴ灯1Bにおいても、図示は省略するが、前記LEDユニット3Bは、前記した検氷灯1Aと同様に灯具ハウジングに内装される。また、この灯具ハウジングに電源制御ユニットが取り付けられていることも検氷灯1Aと同じである。この電源制御ユニットの内部には電源トランスと制御回路基板がそれぞれ硬質樹脂と軟質樹脂の異なる樹脂により封止された状態で配設されていることも同じである。すなわち、検氷灯1AのLEDユニット3を、このLEDユニット3Bに置き換えることによりロゴ灯1Bが構成される。
【0048】
図12図1に示した航空機APの左側に配設されたロゴ灯1Bの照明領域を示す図であり、LEDユニット3Bでは、2つの主LED31mから出射された光は主レンズ34によりそれぞれ同じ方向に向けられ、これらの光は合成されて垂直尾翼VTの先端方向に向けて出射され、領域A4を照明する。これにより、垂直尾翼VTの下端部から上端部にわたる領域、すなわちロゴマークLMが描かれた領域を照明する。
【0049】
一方、副LED31sから出射された光は副レンズ35cにより屈折され、主LED31mによる照明領域とは異なる垂直尾翼VTの基端部近傍の領域A5を照明する。これによりロゴ灯1Bが点灯されたときには、主LED31mによる照明と副LED31sによる照明領域A4とA5が合成された領域が照明されることにより、白熱灯を光源とするロゴ灯と同様に、尾翼VTのほぼ全領域を照明し、ロゴマークLMを好適に照明することができる。
【0050】
このロゴ灯1Bにおいても、LEDユニット3Bにより白熱灯と同程度の広い領域を照明することができるので、既存の白熱灯で構成されているロゴ灯と置き換えることができる。また、LEDユニット3Bはリフレクタを備えていないので小型、軽量にでき、航空機への適用が可能になる。
【0051】
また、ロゴ灯1Bは、電源制御ユニットが灯具ハウジングの外部に配設され、かつ電源制御ユニットに電源トランスと制御回路基板を内装することにより、航空機の振動や外部衝撃に対する信頼性が高められ、同時に灯具ボディの小型化が可能になり、ロゴ灯の小型化、軽量化が実現でき、航空機への適用が可能になる。
【0052】
以上説明した検氷灯とロゴ灯では、LEDユニットのアウターレンズの主レンズを曲面レンズで構成し、副レンズをプリズムで構成しているが、これらのレンズの形態は適宜に変更することができる。すなわち、主レンズは遠方を照明するのに好適な光束を出射するような形状であればよく、副レンズは近傍の広い領域を照明するのに好適な光束を出射するような形状であればよい。
【0053】
また、LEDユニットを構成しているLEDの個数や、インナーレンズのレンズの個数は、航空機の照明対象となる部位の面積や、当該部位までの距離に応じて適宜に調整することができる。
【0054】
電源制御ユニットは、電源トランスと制御回路基板の他にも他の部品を備えることもあるが、その場合においてもこれらの他の部品をケーシングに一体的に内装するようにしてもよい。この場合、当該他の部品が振動に強い部品であれば電源トランスと一体に硬質樹脂に埋設し、振動を回避することが好ましい部品であれば制御回路基板と一体に軟質樹脂に埋設するようにすればよい。
【0055】
電源トランスと制御回路基板を埋設支持する硬質樹脂又は軟質樹脂は、実施形態に記載のエポキシ樹脂、シリコン樹脂に限られるものではなく、他の樹脂を適用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1A 検氷灯
1B ロゴ灯
2 灯具ハウジング
3,3B LEDユニット(光源ユニット)
4 電源制御ユニット
5 中継端子板
6 ヒートシンク
21 灯具ボディ
22 アウターレンズ
31 LED(発光ダイオード:半導体発光素子)
32 LED基板
33 インナーレンズ
34 主レンズ(曲面レンズ)
35 副レンズ(プリズム)
41 ケーシング
42 電源トランス
43 制御回路基板(制御回路構体)
AP 航空機
BD 胴体
MW 主翼
HT 水平尾翼
VT 垂直尾翼
LM ロゴマーク
ER エポキシ樹脂(硬質樹脂)
SR シリコン樹脂(軟質樹脂)
図1
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図12