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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230608BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230608BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20230608BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20230608BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/00 N
B23K26/064 Z
B23K26/064 K
G02B6/036
G02B6/02 B
G02B6/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019043452
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020146689
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐司
(72)【発明者】
【氏名】坂元 明
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-314973(JP,A)
【文献】特開2014-104479(JP,A)
【文献】特表2007-518566(JP,A)
【文献】特開2009-175545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
G02B 6/036
G02B 6/02
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の期間中連続的なエネルギー密度を有する加工レーザ光を生成する加工レーザ光源と、
前記加工レーザ光を加工対象物の表面に照射する第1の光学系と、
そのエネルギー密度のピーク値が一定であって前記加工レーザ光のエネルギー密度よりも高いパルスレーザ光を生成するパルスレーザ光源と、
前記パルスレーザ光を前記加工対象物の加工部に向けて照射する第2の光学系と、
前記加工対象物の前記加工部で生じるプラズマ光を検出する光検出部と
を備える、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第2の光学系は、前記加工レーザ光を前記加工対象物の前記表面に照射することにより生じるプルーム部に前記パルスレーザ光を集光するように構成される、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記パルスレーザ光の単位時間当たりの出力は、前記加工レーザ光の単位時間当たりの出力の10分の1よりも小さい、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1の光学系及び前記第2の光学系は、少なくとも1つのレンズを共有する、請求項1からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記加工レーザ光源に接続される第1の光ファイバと、
前記パルスレーザ光源に接続される第2の光ファイバと、
前記第1の光学系及び前記第2の光学系のいずれとしても機能する共用光学系と、
前記共用光学系に接続される第3の光ファイバと、
前記第1の光ファイバからの前記加工レーザ光と前記第2の光ファイバからの前記パルスレーザ光とを結合して前記第3の光ファイバに出力する光コンバイナと
をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第3の光ファイバは、
前記パルスレーザ光を伝搬させる内側コアと、
前記内側コアの周囲を覆い、前記内側コアよりも屈折率が低い外側コアと、
前記外側コアの周囲を覆い、前記外側コアよりも屈折率が低いクラッドと
を含む、請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記第3の光ファイバの前記内側コアは、シングルモード又はフューモードの光を伝搬可能である、請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記パルスレーザ光の波長は前記加工レーザ光の波長よりも短い、請求項1からのいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に係り、特に加工対象物にレーザ光を照射して加工対象物を加工するレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工対象物にレーザ光を照射して加工対象物を加工する際には、加工により発生する蒸気(プルーム)をレーザ光が通過するときにプルームが過熱されてプラズマ光が発生する。このようなプラズマ光は、そのときのプロセス条件及びプロセス状態に応じて変化することが知られている。したがって、加工対象物を加工する際に生じるプラズマ光を測定することにより、そのときのプロセス条件及びプロセス状態を把握することができ、これによってレーザ加工の良否を判定したり、レーザ加工に対するフィードバックを行ったりすることが可能となる。
【0003】
加工対象物にレーザ光を照射して加工対象物を加工するレーザ加工装置は、ファイバレーザやYAGレーザをレーザ光源として用いるものが多い(例えば、特許文献1参照)。このようなレーザ光源で生成されるレーザ光の波長は、炭酸ガスレーザで生成されるレーザ光の波長(10.6μm)よりも短く、このような短波長のレーザ光は、電離したプルームに吸収されにくい性質を有している。このため、加工中に発生するプラズマ光の量が少なく、プラズマ光から正確にプロセス条件及びプロセス状態を把握することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-144085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、プロセス条件やプロセス状態を正確に把握することが可能なレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、プロセス条件やプロセス状態を正確に把握することが可能なレーザ加工装置が提供される。このレーザ加工装置は、所定の期間中連続的なエネルギー密度を有する加工レーザ光を生成する加工レーザ光源と、上記加工レーザ光を加工対象物の表面に照射する第1の光学系と、そのエネルギー密度のピーク値が一定であって上記加工レーザ光のエネルギー密度よりも高いパルスレーザ光を生成するパルスレーザ光源と、上記パルスレーザ光を上記加工対象物の加工部に向けて照射する第2の光学系と、上記加工対象物の上記加工部で生じるプラズマ光を検出する光検出部とを備える。
【0007】
このように、そのエネルギー密度のピーク値が加工レーザ光のエネルギー密度よりも高いパルスレーザ光を加工対象物の加工部(プルーム)に向けて照射することにより、プルームから生じるプラズマ光の光量を増やすことができる。このため、光検出部におけるプラズマ光の検出が容易になり、プラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。また、加工レーザ光とは独立してパルスレーザ光を加工部(プルーム)に照射しているので、加工レーザ光のパラメータを加工条件によって変動させた場合においても、加工レーザ光のパラメータの変化に影響されずに、光検出部においてプラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。この結果、その時点のプロセス条件やプロセス状態をより正確に把握することが可能となる。
【0008】
上記第2の光学系は、上記加工レーザ光を上記加工対象物の上記表面に照射することにより生じるプルーム部に上記パルスレーザ光を集光するように構成されていることが好ましい。このような構成により、プルーム部で生じるプラズマ光の光量を増やすことができる。
【0009】
また、パルスレーザ光のエネルギー密度のピーク値を一定にすることで、加工レーザ光のエネルギー密度を加工条件によって変動させた場合においても、プルームに照射されるパルスレーザ光のエネルギー密度が常に一定となるため、加工レーザ光のエネルギー密度の変動に影響されずに、光検出部においてプラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。
【0010】
上記パルスレーザ光の単位時間当たりの出力は、上記加工レーザ光の単位時間当たりの出力の10分の1よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、パルスレーザ光が加工対象物の表面に与える影響を少なくすることができる。
【0011】
上記第1の光学系及び上記第2の光学系が少なくとも1つのレンズを共有していてもよい。このように第1の光学系と第2の光学系との間で少なくとも1つのレンズを共有することにより、必要とされる光学要素の数を少なくすることができ、簡易な構造を実現することができる。
【0012】
上記レーザ加工装置は、上記加工レーザ光源に接続される第1の光ファイバと、上記パルスレーザ光源に接続される第2の光ファイバと、上記第1の光学系及び上記第2の光学系のいずれとしても機能する共用光学系と、上記共用光学系に接続される第3の光ファイバと、上記第1の光ファイバからの上記加工レーザ光と上記第2の光ファイバからの上記パルスレーザ光とを結合して上記第3の光ファイバに出力する光コンバイナとをさらに備えていてもよい。このような共用光学系を用いて加工レーザ光とパルスレーザ光とを伝搬させることにより、必要とされる光学要素の数を少なくすることができ、簡易な構成を実現できる。
【0013】
上記第3の光ファイバは、上記パルスレーザ光を伝搬させる内側コアと、上記内側コアの周囲を覆い、上記内側コアよりも屈折率が低い外側コアと、上記外側コアの周囲を覆い、上記外側コアよりも屈折率が低いクラッドとを含むことが好ましい。また、上記第3の光ファイバの上記内側コアは、シングルモード又はフューモードの光を伝搬可能であることが好ましい。このようにパルスレーザ光をモード伝搬数の少ない内側コアに結合させることにより、パルスレーザ光が内側コアを伝搬する間にそのエネルギー密度のピーク値が低下することを抑制することができる。このため、エネルギー密度の高いパルスレーザ光を共用光学系に伝搬することができ、高エネルギー密度のパルスレーザ光を加工対象物の加工部に照射することができる。したがって、プルームから生じるプラズマ光の光量を増やすことができ、光検出部におけるプラズマ光の検出が容易になり、プラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。
【0014】
上記パルスレーザ光の波長は上記加工レーザ光の波長よりも短くてもよい。特に、上述した共用光学系を用いた場合には、パルスレーザ光の波長を加工レーザ光の波長よりも短くすることで、共用光学系内のレンズの色収差を利用して、加工レーザ光を加工対象物の表面に照射するとともに、パルスレーザ光を加工対象物の表面よりも上方にあるプルーム部に照射することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プルームから生じるプラズマ光の光量を増やすことができるので、光検出部におけるプラズマ光の検出が容易になり、加工レーザ光のパラメータの変化に影響されずにプラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。この結果、その時点のプロセス条件やプロセス状態をより正確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1の実施形態におけるレーザ加工装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示すレーザ加工装置において用いるレーザ光の出力の時間的変化を示すグラフである。
図3図3は、図1に示すレーザ加工装置において検出されるプラズマ光の光量の時間的変化の一例を示すグラフである。
図4図4は、本発明の第2の実施形態におけるレーザ加工装置の全体構成を示す模式図である。
図5図5は、本発明の第3の実施形態におけるレーザ加工装置の全体構成を示す模式図である。
図6図6は、図5に示すレーザ加工装置における第3の光ファイバの構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態について図1から図6を参照して詳細に説明する。なお、図1から図6において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図6においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるレーザ加工装置1の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態におけるレーザ加工装置1は、加工対象物Wを保持するステージ10と、加工レーザ光CLを生成する加工レーザ光源20と、加工レーザ光CLを加工対象物Wの表面に照射する第1のレーザ出射部30と、加工レーザ光源20と第1のレーザ出射部30とを接続する第1の光ファイバ40と、パルスレーザ光PLを生成するパルスレーザ光源50と、パルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部Pに向けて照射する第2のレーザ出射部60と、パルスレーザ光源50と第2のレーザ出射部60とを接続する第2の光ファイバ70と、加工対象物Wの加工部Pにおいて生じるプラズマ光を検出する光検出部80とを備えている。なお、本明細書において「加工部」は、加工レーザ光CLにより加工されている加工対象物Wの表面上の加工点及びその近傍を含む空間を意味するものとする。
【0019】
加工レーザ光源20としては例えばファイバレーザやYAGレーザを用いることができる。この加工レーザ光源20で生成される加工レーザ光CLは、いわゆる連続波(CW)レーザ光であり、図2に示すように、少なくとも一定の期間(例えば10ミリ秒)中連続的なエネルギー密度を有するものである。この加工レーザ光CLは、第1の光ファイバ40のコア中を伝搬し、第1のレーザ出射部30に入射する。
【0020】
第1のレーザ出射部30は、加工レーザ光CLをコリメートするコリメートレンズ31と、コリメートレンズ31によりコリメートされた加工レーザ光CLを加工対象物Wの表面に集光する集光レンズ32とを含んでいる。これらのレンズ31,32は、加工レーザ光CLを加工対象物Wの表面に照射する第1の光学系を構成する。このように高いエネルギー密度の加工レーザ光CLが加工対象物Wの表面に照射されることで、加工対象物Wの表面の温度が上昇し、加工対象物Wが融解又は蒸発することで溶接や切断などの加工が行われる。
【0021】
パルスレーザ光源50としては例えばファイバレーザやYAGレーザを用いることができる。このパルスレーザ光源50で生成されるパルスレーザ光PLは、例えば図2に示すように、パルス幅が数十nm、繰り返し周波数が約100Hzのパルス光である。このパルスレーザ光PLのエネルギー密度のピーク値は、その時点での加工レーザ光CLのエネルギー密度よりも高くなっている。図2に示す例では、パルスレーザ光PLの出力のピーク値は約10kWであり、加工レーザ光CLの平均出力は約1kWである。
【0022】
第2のレーザ出射部60は、パルスレーザ光PLをコリメートするコリメートレンズ61と、コリメートレンズ61によりコリメートされたパルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部Pの特定の位置に集光する集光レンズ62とを含んでいる。これらのレンズ61,62は、パルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部Pに向けて照射する第2の光学系を構成する。ここで、集光レンズ62の焦点は、加工対象物Wの表面の加工点に位置していてもよいし、加工点の近傍に位置していてもよい。後述するプラズマ光の光量を増やすためには、加工レーザ光CLの照射により加工対象物Wの表面から生じるプルーム内(例えば、加工対象物Wの表面から数mmから50mmの位置)に集光レンズ62の焦点が位置していることが好ましい。
【0023】
加工レーザ光CLが加工対象物Wの表面に照射されると、加工対象物Wの加工点では高温の金属蒸気(プルーム)が発生する。このプルームをレーザ光が通過すると、プルームが過熱されてプラズマ光が発生する。このプラズマ光の光量は、加工レーザ光CLのパワーの変動、アシストガスの状態、加工対象物Wの表面の汚れ、加工されている材料の組成の変化、加工している接合点間の隙間の変化といったプロセス条件及びプロセス状態に応じて変化することが知られている。したがって、プラズマ光の光量の変化を検出することで、そのときのプロセス条件及びプロセス状態を把握することができ、これによってレーザ加工の良否を判定したり、レーザ加工に対するフィードバックを行ったりすることが可能となる。
【0024】
光検出部80は、このようなプラズマ光を検出するためのものであり、例えば可視光域の光を検出可能な公知の光センサなどを含んで構成されている。この光検出部80は信号線81を介して処理部90に接続されている。この処理部90では、光検出部80で検出されたプラズマ光の光量からその時点のプロセス条件及びプロセス状態を決定し、必要に応じてレーザ加工の良否を判定したり、加工レーザ光源20により生成される加工レーザ光CLの出力を変化させたりする。
【0025】
上述したように、本実施形態では、そのエネルギー密度のピーク値が加工レーザ光CLのエネルギー密度よりも高いパルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部Pに向けて照射している。プルームから生じるプラズマ光の光量は、発生するプルームの量とプルームを通過する光のエネルギー密度に比例するため、このように高エネルギー密度のパルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部P(プルーム)に照射することにより、プルームから生じるプラズマ光の光量を増やすことができる。このため、光検出部80におけるプラズマ光の検出が容易になり、プラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。また、加工レーザ光CLとは独立してパルスレーザ光PLを加工部P(プルーム)に照射しているので、加工レーザ光CLのパラメータを加工条件によって変動させた場合においても、加工レーザ光CLのパラメータの変化に影響されずに、光検出部80においてプラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。この結果、その時点のプロセス条件やプロセス状態をより正確に把握することが可能となる。
【0026】
なお、パルスレーザ光PLのエネルギー密度のピーク値は、その時点の加工レーザ光CLのエネルギー密度よりも高いが、パルスレーザ光PLは短いパルス幅のパルス波であるため、パルスレーザ光PLが加工対象物Wの表面(加工点)に与える影響は少ない。換言すれば、図2におけるパルスレーザ光PLの出力の時間積分値(平均出力)は、加工レーザ光CLの出力の時間積分値(平均出力)よりも小さいため、パルスレーザ光PLが加工対象物Wの表面(加工点)に与える影響は少ない。この観点から、例えば、パルスレーザ光PLの単位時間当たりの出力を加工レーザ光CLの単位時間当たりの出力の10分の1よりも小さくすることが好ましい。
【0027】
ここで、パルスレーザ光PLのエネルギー密度のピーク値を一定にすることが好ましい。このようにパルスレーザ光PLのエネルギー密度のピーク値を一定にすることで、加工レーザ光CLのエネルギー密度を加工条件によって変動させた場合においても、プルームに照射されるパルスレーザ光PLのエネルギー密度が常に一定となるため、加工レーザ光CLのエネルギー密度の変動に影響されずに、光検出部80においてプラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。
【0028】
プラズマ光の光量を用いてレーザ加工の良否を判定する方法としては、例えば次のようなものが考えられる。図3に示すように、光検出部80で検出されるプラズマ光の光量に対する上限値T1及び下限値T2を予め設定しておき、処理部90内の記憶装置に記憶しておく。処理部90は、光検出部80で検出されるプラズマ光の光量と上限値T1及び下限値T2とを比較し、光検出部80で検出されるプラズマ光の光量が上限値T1と下限値T2との間にあれば良好な加工が行われていると判断する。一方、光検出部80で検出されるプラズマ光の光量が上限値T1よりも多い、あるいは下限値T2よりも少ない場合には、処理部90は良好な加工が行われていないと判断し、例えば加工レーザ光源20で生成される加工レーザ光CLのパラメータを変化させることが考えられる。
【0029】
図4は、本発明の第2の実施形態におけるレーザ加工装置101の全体構成を示す模式図である。本実施形態のレーザ加工装置101は、上述した第1の実施形態における第1のレーザ出射部30と第2のレーザ出射部60に代えて、単一のレーザ出射部130を備えている。このレーザ出射部130は、第1の光ファイバ40及び第2の光ファイバ70によってそれぞれ加工レーザ光源20及びパルスレーザ光源50に接続されている。
【0030】
レーザ出射部130は、加工レーザ光CLをコリメートするコリメートレンズ131と、パルスレーザ光PLをコリメートするコリメートレンズ132と、ミラー133と、集光レンズ134とを含んでいる。ミラー133は、加工レーザ光CLの波長の光を反射し、パルスレーザ光PLの波長の光を透過するダイクロイックミラーとして構成されている。
【0031】
集光レンズ134は、コリメートレンズ131によりコリメートされミラー133で反射した加工レーザ光CLを加工対象物Wの表面に集光するとともに、コリメートレンズ132によりコリメートされミラー133を透過したパルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部Pの特定の位置に集光するように構成されている。ここで、コリメートレンズ132の位置を調整することで、パルスレーザ光PLを加工対象物Wの表面の加工点あるいは加工点の近傍の位置(プルーム)に集光することができる。また、コリメートレンズ132のF値を相対的に大きくすることで、集光レンズ134で集光されるパルスレーザ光PLのエネルギー密度を高めることができる。
【0032】
このように、本実施形態では、コリメートレンズ131、ミラー133、及び集光レンズ134が、加工レーザ光CLを加工対象物Wの表面に照射する第1の光学系を構成し、コリメートレンズ132、ミラー133、及び集光レンズ134が、パルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部Pに向けて照射する第2の光学系を構成している。すなわち、第1の光学系と第2の光学系との間で集光レンズ134が共有されており、これにより必要とされる光学要素の数を少なくすることができ、簡易な構成を実現できる。
【0033】
図5は、本発明の第3の実施形態におけるレーザ加工装置201の全体構成を示す模式図である。本実施形態のレーザ加工装置201は、第2の実施形態のレーザ出射部130に代えて、第1の光ファイバ40と第2の光ファイバ70に接続される光コンバイナ210と、光コンバイナ210から延びる第3の光ファイバ220と、第3の光ファイバ220に接続されるレーザ出射部230とを備えている。
【0034】
光コンバイナ210は、第1の光ファイバ40のコアを伝搬する加工レーザ光CLと第2の光ファイバ70のコアを伝搬するパルスレーザ光PLとを結合して第3の光ファイバ220に出力するものである。この第3の光ファイバ220は、例えば、図6に示すように、内側コア221A、内側コア221Aの周囲に位置し、内側コア221Aよりも屈折率の低い外側コア221Bと、外側コア221Bの周囲に位置し、外側コア221Bよりも屈折率の低い内側クラッド222と、内側クラッド222の周囲に位置し、内側クラッド222よりも屈折率の低い外側クラッド223と、外側クラッドの周囲を覆う被覆224とを含むダブルクラッドファイバにより構成される。例えば、内側コア221Aの径は30μm、外側コア221Bの径は50μmである。
【0035】
レーザ出射部230は、加工レーザ光CL及びパルスレーザ光PLをコリメートするコリメートレンズ231と、加工レーザ光CL及びパルスレーザ光PLを集光する集光レンズ232とを含んでいる。このように、本実施形態では、コリメートレンズ231及び集光レンズ232が、加工レーザ光CLを加工対象物Wの表面に照射する第1の光学系としても、パルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部Pに向けて照射する第2の光学系としても機能する共用光学系を構成している。このような共用光学系を用いることにより、必要とされる光学要素の数を少なくすることができ、簡易な構成を実現できる。
【0036】
光コンバイナ210と第3の光ファイバ220との接続形態は特に限定されるものではないが、例えば、第3の光ファイバ220の内側コア221Aには光コンバイナ210から出力されるパルスレーザ光PLを結合させ、外側コア221Bには加工レーザ光CLを結合させてもよい。あるいは、内側クラッド222に加工レーザ光CLを結合させてもよい。このように、パルスレーザ光PLを内側コア221Aに結合させることにより、エネルギー密度の高いパルスレーザ光PLをレーザ出射部230に伝搬して集光レンズ134で集光されるパルスレーザ光PLのエネルギー密度を高めることができるので、高エネルギー密度のパルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部P(プルーム)に照射することができる。したがって、プルームから生じるプラズマ光の光量を増やすことができ、光検出部80におけるプラズマ光の検出が容易になり、プラズマ光の光量の変化をより正確に検出することが可能となる。
【0037】
特に、第3の光ファイバ220の内側コア221Aは、シングルモード又はフューモードの光を伝搬可能であることが好ましい。このようなモード伝搬数の少ない内側コア221Aにパルスレーザ光PLを結合させることにより、パルスレーザ光PLが内側コア221Aを伝搬する間にそのエネルギー密度のピーク値が低下することを抑制することができる。したがって、高いエネルギー密度のパルスレーザ光PLを加工対象物Wの加工部P(プルーム)に照射することが可能となる。また、パルスレーザ光PLのパルス幅が広がりにくいという利点もある。
【0038】
この場合において、パルスレーザ光PLの波長を加工レーザ光CLの波長よりも短くすることができる。例えば、加工レーザ光CLの波長を1070nmとし、パルスレーザ光PLの波長を800nm~900nmとすることができる。このようにすることで、集光レンズ232の色収差を利用して、加工レーザ光CLを加工対象物Wの表面に照射するとともに、パルスレーザ光PLを加工対象物Wの表面よりも上方にあるプルームに照射することができる。
【0039】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザ加工装置
10 ステージ
20 加工レーザ光源
30 第1のレーザ出射部
31 コリメートレンズ
32 集光レンズ
40 第1の光ファイバ
50 パルスレーザ光源
60 第2のレーザ出射部
61 コリメートレンズ
62 集光レンズ
70 第2の光ファイバ
80 光検出部
90 処理部
101 レーザ加工装置
130 レーザ出射部
131,132 コリメートレンズ
133 ミラー
134 集光レンズ
201 レーザ加工装置
210 光コンバイナ
220 第3の光ファイバ
221A 内側コア
221B 外側コア
222 内側クラッド
223 外側クラッド
224 被覆
230 レーザ出射部
231 コリメートレンズ
232 集光レンズ
P 加工部
W 加工対象物
CL 加工レーザ光
PL パルスレーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6