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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/32 20060101AFI20230608BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
E04C3/32
E04B2/74 531L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019096977
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020190154
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 知季
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 一紀
(72)【発明者】
【氏名】大附 和敬
(72)【発明者】
【氏名】沙拉依丁 沙吾提
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-013524(JP,A)
【文献】特開2011-106149(JP,A)
【文献】特表平08-508798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 - 3/46
E04B 2/72 - 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に配置され、開口が上方を向く下チャンネル材と、
前記下チャンネル材の上方に前記下チャンネル材に対向して配置され、前記下チャンネル材と同じ方向に延在し、開口が下方を向く上チャンネル材と、
前記上チャンネル材と前記下チャンネル材との間に前記下チャンネル材の延在方向に間隔をあけて配置され、下端部が前記下チャンネル材に嵌合されると共に上端部が前記上チャンネル材に嵌合される複数のスタッド材と、
を備え、
前記スタッド材は、一枚の金属板によって形成されており、上下方向が長手方向とされ、前記下チャンネル材の幅方向が短手方向とされ、前記短手方向に沿って延びるウェブ部と、前記ウェブ部を挟んで対向配置され、前記ウェブ部に対して直交する方向に延びる一対のフランジ部と、前記ウェブ部から直角に屈曲して前記ウェブ部に対する前記短手方向の一方側のみに分布して前記フランジ部と前記ウェブ部をつなぐと共に少なくとも前記ウェブ部側が前記フランジ部に重なる補強部と、前記フランジ部の前記ウェブ部に対して前記補強部と反対側の端部から前記短手方向に延びると共に前記ウェブ部に対して間隔をあけて対向するリップ部と、を有し、前記長手方向と直交する断面において、前記ウェブ部上に図心が位置する共に前記図心を対称点とした点対称形状である、壁構造。
【請求項2】
前記ウェブ部の短手方向の端部が前記フランジ部の延びる方向の中央部に位置している、請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記補強部における前記ウェブ部と反対側の端部側には、前記補強部が重なる前記フランジ部から離間する方向へ突出する突出部が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記補強部の前記突出部と前記フランジ部との間に空間部が形成されている、請求項3に記載の壁構造。
【請求項5】
前記スタッド材は、一対の前記フランジ部の外面間の距離をL0、前記フランジ部の外面から該フランジ部に重ねられた前記補強部の前記突出部の頂点までの距離をL1としたとき、0.055≦L1/L0≦0.23の関係を満たす、請求項3又は請求項4に記載の壁構造。
【請求項6】
前記下チャンネル材、前記上チャンネル材及び複数の前記スタッド材によって形成される下地骨組みの少なくとも一方の面に、壁材が取り付けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の壁構造。
【請求項7】
前記下地骨組み及び前記壁材によって構成される壁の高さが5mより高い、請求項6に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から間仕切り壁等の下地骨組みにランナー材とスタッド材を用いた壁構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、乾式壁の下地構造について開示されている。この下地構造では、断面コ字形状のランナー材を床面及び天井面にそれぞれ固定し、上下のランナー材間に複数本のスタッド材を差し込んで下地骨組みを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-115531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、断面コ字形状のスタッド材を用いている。このような断面形状のスタッド材は、図心とせん断中心がずれていることから、フランジ部側からの荷重によって曲げが生じた場合に、上下のランナー材間に位置するスタッド材の長手方向の中間部分にねじれ(ねじれ変形)が生じる。このねじれ対策として、対向するフランジ部に対してウェブ部を斜めに延ばしつつ、ウェブ部の一部を屈曲させた断面形状のスタッド材の使用が検討されている。このような断面形状のスタッド材は、断面コ字形状のスタッド材と比べて、図心とせん断中心のずれをなくすことができ、スタッド材のねじれ変形を抑制することが可能になる。しかしながら、壁に作用する水平力がスタッド材に伝達された場合、その水平力がスタッド材を介してせん断力としてスタッド材の長手方向の端部(以下、適宜「部材端部」と記載する。)へと伝達され、ランナー材に拘束されている部材端部において、ウェブ部の屈曲部に局所的な曲げ変形が集中して、部材端部に塑性変形が生じる可能性がある。このため大きなせん断力がスタッド材に作用する場合には、例えば金物などでスタッド材の部材端部における局所的な変形を抑制する等の対策が必要になることがある。
【0006】
本発明は、スタッド材の断面形状を適正化することで、スタッド材の長手方向の中間部分に生じるねじれと長手方向の端部に生じる局所的な塑性変形を抑制する壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の壁構造は、床面上に配置され、開口が上方を向く下チャンネル材と、前記下チャンネル材の上方に前記下チャンネル材に対向して配置され、前記下チャンネル材と同じ方向に延在し、開口が下方を向く上チャンネル材と、前記上チャンネル材と前記下チャンネル材との間に前記下チャンネル材の延在方向に間隔をあけて配置され、下端部が前記下チャンネル材に嵌合されると共に上端部が前記上チャンネル材に嵌合される複数のスタッド材と、を備え、前記スタッド材は、一枚の金属板によって形成されており、上下方向が長手方向とされ、前記下チャンネル材の幅方向が短手方向とされ、前記短手方向に沿って延びるウェブ部と、前記ウェブ部を挟んで対向配置され、前記ウェブ部に対して直交する方向に延びる一対のフランジ部と、前記フランジ部と前記ウェブ部をつなぐと共に少なくとも前記ウェブ部側が前記フランジ部に重なる補強部と、前記フランジ部の前記補強部と反対側の端部から前記短手方向に延びると共に前記ウェブ部に対して間隔をあけて対向するリップ部と、を有し、前記長手方向と直交する断面において、前記ウェブ部上に図心が位置する共に前記図心を対称点とした点対称形状である。
【0008】
第1態様の壁構造で用いるスタッド材は、断面形状がウェブ部上に位置する図心を対称点とした点対称形状であるため、スタッド材の図心とせん断中心が一致する。このため、上記壁構造では、例えば、断面コ字形状のスタッド材を用いる壁構造と比べて、スタッド材にフランジ部側からの荷重によって曲げが作用した場合に、上ランナー材及び下ランナー材間に位置するスタッド材の長手方向の中間部分に生じるねじれが抑制される。
【0009】
また、上記壁構造で用いるスタッド材は、ウェブ部が短手方向に沿って延びており、このウェブ部に対して直交する方向に一対のフランジ部が延びている。言い換えると、ウェブ部は、一対のフランジ部に対して直交する方向である短手方向に沿って延びている。このため、上記スタッド材は、例えば、一対のフランジ部に対してウェブ部を斜めに延ばしつつ、ウェブ部の一部を屈曲させた断面形状のスタッド材と比べて、フランジ部側からウェブを圧縮する方向へ荷重が作用した場合に、ウェブ部に局所的な曲げ変形が生じにくい。したがって、上記スタッド材を下地に用いた壁構造では、例えば、上記のように斜めに延びるウェブ部の一部が屈曲した断面形状のスタッド材を下地に用いた壁構造と比べて、スタッド材にフランジ部側から作用した荷重がせん断力としてスタッド材の部材端部へと伝達された場合に、下チャンネル材及び上チャンネル材にそれぞれ嵌合されるスタッド材の下端部及び上端部において、ウェブ部に局所的な曲げ変形による応力集中が生じにくく、部材端部に生じる局所的な塑性変形が抑制される。
【0010】
本発明の第2態様の壁構造は、第1態様の壁構造において、前記ウェブ部の短手方向の端部が前記フランジ部の延びる方向の中央部に位置している。
【0011】
第2態様の壁構造では、スタッド材のウェブ部の短手方向の端部がフランジ部の延びる方向(以下、適宜「フランジ延在方向」と記載する。)の中央部に位置するため、一対のフランジ部がフランジ延在方向で同じ位置に配置される。すなわち、フランジ部における補強部のフランジ延在方向の外縁部と、対向するフランジ部のリップ部におけるフランジ延在方向の外縁部とを結ぶ直線が、ウェブ部の短手方向と一致する。このため、上記壁構造では、例えば同じ展開長を有する一対のフランジ部がフランジ延在方向にずれて配置されたスタッド材を用いる壁構造と比べて、スタッド材の断面幅を小さくすることが可能となり、施工上の収まりを簡素化できる。また、上記壁構造では、例えば、一対のフランジ部がフランジ延在方向にずれて配置されたスタッド材を用いる壁構造と比べて、スタッド材にフランジ部側から荷重が作用した場合の主軸の傾きが抑制される効果が期待できる。
【0012】
本発明の第3態様の壁構造は、第1態様又は第2態様の壁構造において、前記補強部における前記ウェブ部と反対側の端部側には、前記補強部が重なる前記フランジ部から離間する方向へ突出する突出部が形成されている。
【0013】
第3態様の壁構造では、補強部におけるウェブ部と反対側の端部側が、補強部と重なるフランジ部から離間する方向へ突出する突出部を形成しているため、フランジ部の端部側が面外方向に変形するのが抑制される。これにより、スタッド材の曲げ耐力を効率的に高めることが可能になる。また、スタッド材のフランジ部へドリルねじを打設する際には、フランジ部の面外変形が抑制されることで、ねじの打設性能を高める効果が発揮される。
【0014】
本発明の第4態様の壁構造は、第3態様の壁構造において、前記補強部の前記突出部と前記フランジ部との間に空間部が形成されている。
【0015】
第4態様の壁構造では、補強部の突出部とフランジ部との間に空間部を形成していることから、例えば、補強部を180度曲げ(ヘミング曲げ)して突出部を形成する壁構造と比べて、突出部の最小曲げ部における曲率半径が大きい。このため、上記壁構造では、スタッド材を冷間加工によって製造する場合において、スタッド材の突出部表面に発生する塑性ひずみを小さくすることが可能となる。この結果、冷間加工におけるスタッド材の成形精度を高めると共に、めっき鋼板を母材に使用する場合においては、めっき層の損傷を抑制する効果も得られる。
【0016】
本発明の第5態様の壁構造は、第3態様又は第4態様の壁構造において、前記スタッド材は、一対の前記フランジ部の外面間の距離をL0、前記フランジ部の外面から該フランジ部に重ねられた前記補強部の前記突出部の頂点までの距離をL1としたとき、0.055≦L1/L0≦0.23の関係を満たしている。
【0017】
第5態様の壁構造では、0.055≦L1/L0≦0.23の関係を満たすことで、スタッド材の断面積あたりの局部座屈耐力を効率的に高められる。
【0018】
本発明の第6態様の壁構造は、第1態様~第5態様のいずれか一態様の壁構造において、前記下チャンネル材、前記上チャンネル材及び複数の前記スタッド材によって形成される下地骨組みの少なくとも一方の面に、壁材が取り付けられている。
【0019】
第6態様の壁構造では、下地骨組みの少なくとも一方の面に壁材が取り付けられている。下地骨組みを構成するスタッド材は、部材長さが長くなると、図心とせん断中心のずれによるねじりが無い場合においても、横座屈の影響で部材耐力が低下する可能性がある。これに対して上記壁構造のように、スタッド材に壁材を取り付けることで、スタッド材の横座屈を防止することができ、部材長さが長いスタッド材であっても、下地骨組み及び壁材によって構成される壁の面外変形に対して、曲げ耐力を向上することができる。
【0020】
本発明の第7態様の壁構造は、第6態様の壁構造において、前記下地骨組み及び前記壁材によって構成される壁の高さが5mより高い壁構造である。
【0021】
第7態様の壁構造では、下地骨組み及び壁材によって構成される壁の高さを5mよりも高くしている。ここで、下地骨組みを構成するスタッド材は、上記のようにスタッド材の長手方向の中間部分に生じるねじれを抑制できるため、壁の高さを5mよりも高く設定しても、新たな補剛部材等を設けることなく、下地骨組みに十分な耐力の発揮を期待することが可能になる。また上記の効果は、壁の部材品数の削減及び高所での作業の削減に資する物であり、施工現場における作業負荷を軽減することにもつながり、経済的な壁の設計を実現できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、スタッド材の断面形状を適正化することで、スタッド材の断面における図心とせん断中心のずれによって生じる長手方向の中間部分のねじれと長手方向の端部に生じる局所的な塑性変形を抑制できる壁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る壁構造を適用した間仕切壁の正面図である。
図2図1の間仕切壁の側面図である。
図3】スタッド材の長手方向の中間部分におけるスタッド材の長手方向と直交方向に沿った断面図(図1の3-3線断面図)である。
図4図3に示すスタッド材にフランジ部側から荷重を受けた状態を示す断面図(図3に対応する断面図)である。
図5】スタッド材の長手方向の端部(下端部)側におけるスタッド材の長手方向と直交する方向に沿った断面(図1の5-5線断面図)である。
図6】スタッド材の変形例を示す断面図(図3に対応する断面図)である。
図7】比較例1のスタッド材の断面図(図3に対応する断面図)である。
図8】比較例2のスタッド材の断面図(図5に対応する断面図)である。
図9】実施例2のスタッド材の固有値解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を用いて本発明の実施形態に係る壁構造について説明する。
【0025】
図1には、本実施形態の壁構造Sを適用した間仕切壁20が開示されている。この間仕切壁20は、例えば、倉庫等の建物に用いられる。なお、本実施形態における間仕切壁20は、本発明における壁の一例である。
【0026】
<本実施形態の壁構造>
図1及び図2に示されるように、壁構造Sは、下地骨組み22を備えている。
【0027】
下地骨組み22は、一対のランナー材24、26と、複数のスタッド材28を含んで構成されている。なお、本実施形態のランナー材24は、本発明における下チャンネル材の一例であり、本実施形態のランナー材26は、本発明における上チャンネル材の一例である。
【0028】
(ランナー材)
図2に示されるように、ランナー材24は、断面コ字形状の形鋼、すなわち溝形鋼であり、建物の床面Fに沿って配置されている。具体的には、ランナー材24は、開口が上方を向いた状態、すなわち、コの字の開放側が上方を向いた状態でウェブ部24Aが床面Fに図示しない締結材(例えば、アンカーボルト)によって固定されている。
【0029】
ランナー材26は、断面コ字形状の形鋼、すなわち溝形鋼であり、建物の天井面Cに沿ってランナー材24の延在方向と同じ方向に延びかつランナー材26と上下方向で対向するように配置されている。具体的には、開口が下方を向いた状態、すなわち、ランナー材26は、コの字の開放側が下方を向いた状態でウェブ部26Aが天井面Cに図示しない締結材(例えば、アンカーボルト)によって固定されている。
なお、図1及び図2に示す天井面Cとは、下階から見た上階又は屋根の下面全域を指し、床や屋根を支える梁部材の下面を含む。
【0030】
(スタッド材)
図1に示されるように、スタッド材28は、一対のランナー材24、26間にランナー材24の延在方向に間隔をあけて配置されている。なお、上記したようにランナー材24の延在方向とランナー材26の延在方向は同じ方向である。
【0031】
図1及び図2に示されるように、スタッド材28の長手方向(図1及び図2で矢印Xで示す方向)の一端部である下端部28Aは、ランナー材24に嵌合されている。具体的には、図2に示されるように、スタッド材28の下端部28Aがランナー材24の一対のフランジ部24B間に差し込まれて、下端面28Cがウェブ部24Aに当接し、スタッド材28の後述する一対のフランジ部32が一対のフランジ部24Bにそれぞれ当接して、スタッド材28の下端部28Aがランナー材24に嵌合している。
【0032】
図1及び図2に示されるように、スタッド材28の長手方向の他端部である上端部28Bは、ランナー材26に嵌合されている。具体的には、図2に示されるように、スタッド材28の上端部28Bがランナー材26の一対のフランジ部26B間に差し込まれて、上端面28Dとウェブ部26Aとが離間した状態で、スタッド材28の一対のフランジ部32が一対のフランジ部26Bにそれぞれ当接して、スタッド材28の上端部28Bがランナー材26に嵌合している。
なお、スタッド材28がランナー材24及びランナー材26に組付けられた状態では、スタッド材28の長手方向と間仕切壁20の上下方向が一致している。
また、本実施形態のスタッド材28の長さは、ランナー材24のウェブ部24Aとランナー材26のウェブ部26Aとの間の距離よりも短くされている。
【0033】
図3に示されるように、スタッド材28は、長手方向と直交する断面の形状(断面形状)が略I字形状の形鋼であり、一枚の金属板によって形成されている。このスタッド材28は、ウェブ部30と、一対のフランジ部32と、補強部34と、リップ部36と、を有している。具体的には、一枚の金属板をロール成形して、ウェブ部30と、一対のフランジ部32と、補強部34と、リップ部36と、を有するスタッド材28が形成されている。
【0034】
ウェブ部30は、長尺とされ、長手方向がスタッド材28の長手方向と同じ方向の板状部である。このウェブ部30は、スタッド材28の長手方向と直交する横断面において、第1方向Yに沿って直線状に延びている。なお、ここでいう第1方向Yは、スタッド材28の長手方向に対して直交する方向であり、スタッド材28の横断面(図3に示す断面)において縦方向を示している。また、後述する第2方向Zは、スタッド材28の長手方向及び第1方向Yに対して直交する方向であり、スタッド材28の横断面において横方向を示している。さらに、スタッド材28がランナー材24及びランナー材26にそれぞれ組付けられた状態では、第1方向Yが間仕切壁20の厚み方向(図2参照)及びランナー材24の幅方向と一致し、第2方向Zが間仕切壁20の左右方向(図1参照)とランナー材24の延在方向(長手方向)と一致している。
なお、本実施形態では、スタッド材28の横断面において、スタッド材28のウェブ部30が第1方向にYに沿って直線状に延びているため、スタッド材28の短手方向が第1方向Yと一致している。
【0035】
一対のフランジ部32は、ウェブ部30を挟んで対向配置された板状部である。なお、ここでいう「対向配置」には、ウェブ部30を挟んだ状態で一対のフランジ部32の全面が対向して配置されている場合(言い換えると、一対のフランジ部32がフランジ延在方向(フランジ部32の延びる方向)で同じ位置に配置されている場合)と、一対のフランジ部32の一部分同士が対向して配置されている場合(言い換えると、一対のフランジ部32がフランジ延在方向にずれて配置されている場合)が含まれる。なお、本実施形態では、一対のフランジ部32が全面対向配置されている。また、一対のフランジ部32は、スタッド材28の横断面において、それぞれウェブ部30に対して直交する方向である第2方向Zに沿って延びている。
【0036】
また、本実施形態では、ウェブ部30の短手方向(第1方向Y)の端部30Aがフランジ部32の延びる方向(第2方向Z)の中央部に位置している。
【0037】
補強部34は、ウェブ部30とフランジ部32とをつなぎ、フランジ部32を補強する板状部である。補強部34は、ウェブ部30の短手方向の両端部30Aから互いに反対方向に延びて、一対のフランジ部32の互いに逆側の端部32Aにそれぞれつながっている。なお、ここでいう、一対のフランジ部32の互いに逆側の端部32Aとは、一方のフランジ部32の第2方向Zの一端部と、他方のフランジ部32の第2方向Zの他端部を指している。また、補強部34は、少なくともウェブ部30側の部分がフランジ部32に重なっている。
【0038】
また、補強部34におけるウェブ部30と反対側の端部側には、補強部34が重なるフランジ部32から離間する方向(言い換えると、一対のフランジ部の対向する方向)へ突出する突出部38が形成されている。この突出部38は、補強部34におけるウェブ部30と反対側の端部側を折り曲げて形成された部分であり、補強部34における突出部38とフランジ部32との間に空間部39が形成されている。また、突出部38は、最小曲げ部における曲率半径がスタッド材28を形成する金属板の板厚よりも大きくなっている。
【0039】
リップ部36は、フランジ部32の補強部34と反対側の端部32Bからスタッド材28の短手方向(第1方向Y)に沿って延びている。具体的には、リップ部36は、一方のフランジ部32の補強部34と反対側の端部32Bから対向する他方のフランジ部32へ向けて略90度屈曲して延びる板状部である。また、リップ部36は、ウェブ部30に対して間隔をあけて対向している。
【0040】
図3に示されるように、スタッド材28は、横断面(図3に示される断面)において、ウェブ部30上に図心FCが位置すると共に図心FCを対称点とした点対称形状である。
【0041】
また、スタッド材28は、第1方向Yに沿って一対のフランジ部32の外面間の距離をL0、フランジ部32の外面から該フランジ部32に重ねられた補強部34の突出部38の頂点38Aまでの第1方向Yに沿った距離をL1としたとき、0.055≦L1/L0≦0.23の関係を満たしていることが望ましい。
【0042】
また、図1に示されるように、壁構造Sは、壁材40(図1図3及び図4では二点鎖線で示している。)を備えている。壁材40は、下地骨組み22の両面にそれぞれ取り付けられている。具体的には、壁材40は、スタッド材28のフランジ部32に図示しない締結部材(例えば、ドリルねじ)を用いて取り付けられている。壁材40としては、例えば、石膏ボードを用いてもよい。なお、図3及び図4では、一方の壁材40のみ図示し、他方の壁材40の図示を省略している。
【0043】
間仕切壁20は、下地骨組み22及び壁材40によって構成されている。なお、間仕切壁20は、単一又は複数の壁材40によって構成されてもよい。
【0044】
また、本実施形態の間仕切壁20の高さは、5mよりも高い。なお、ここでいう、間仕切壁20の高さとは、ランナー材24のウェブ部24Aの下面からランナー材26のウェブ部26Aの上面までの距離を指す。
【0045】
なお、図3中における寸法Wは、スタッド材28の第2方向Zに沿った長さを示し、寸法L2は、フランジ部32の外面から該フランジ部32から延びるリップ部36の先端までの第1方向Yに沿った距離を示す。
【0046】
<本実施形態の壁構造の作用並びに効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。以下では、本実施形態の壁構造Sと比較例の壁構造とを対比しながら本実施形態の作用並びに効果を説明するため、まず、比較例1の壁構造に用いられるスタッド材100と比較例2の壁構造に用いられるスタッド材110について説明する。なお、比較例1の壁構造も比較例2の壁構造もスタッド材を除く構成は、本実施形態の壁構造Sと同じため、その説明を省略する。
【0047】
(比較例1)
図7に示されるように、スタッド材100は、ウェブ部102と、対向する一対のフランジ部104と、リップ部106とを有する断面コ字形状のリップ溝形鋼であり、一枚の金属板を折り曲げて形成されている。なお、図7における符号FCは、図心を示し、符号SCは、せん断中心を示している。
【0048】
(比較例2)
図8に示されるように、スタッド材110は、ウェブ部112と、対向する一対のフランジ部114と、リップ部116とを有する断面形状の形鋼であり、一枚の金属板を折り曲げて形成されている。なお、ウェブ部112は、一対のフランジ部114の互いに逆側の端部同士をつないでおり、横断面(図8に示される断面)において、短手方向の中央部が第1方向Yに沿って延びる直線部112Aとされ、直線部112Aの両側が第1方向に対して斜めに延びる傾斜部112Bとされ、傾斜部112Bとフランジ部114との間が第1方向Yに沿って延びる直線部112Cとされている。なお、図8における符号FCは、図心を示している。なお、比較例2のスタッド材110は、横断面において、ウェブ部112上に図心FCが位置すると共に図心FCを対称点とした点対称形状である。このため、スタッド材110は、図心FCとせん断中心が一致するので、せん断中心の図示を省略している。
【0049】
(壁構造S)
本実施形態の壁構造Sで用いられるスタッド材28は、図3に示されるように、断面形状がウェブ部30上に位置する図心FCを対称点とした点対称形状である。このため、スタッド材28では、図心FCとせん断中心が一致する。一方、比較例1の壁構造で用いられるスタッド材100は、図7に示される横断面において、図心FCとせん断中心SCがずれているため、このずれによるねじれ変形が生じる。これに対して、本実施形態の壁構造Sでは、スタッド材28の横断面において図心FCとせん断中心が一致するため、スタッド材28にフランジ部32側から第1方向Yに沿って荷重L(図4参照)が作用した場合に、スタッド材28の長手方向の中間部分にねじれ変形(以下、適宜「ねじれ」と記載する。)が生じることが抑制される。なお、ここでいうスタッド材28の長手方向の中間部分とは、ランナー材24に嵌合するスタッド材28の下端部28Aとランナー材26に嵌合する上端部28Bとの間の部分を指す。
【0050】
さらに、壁構造Sでは、スタッド材28のウェブ部30の短手方向の端部30Aをフランジ部32の延びる方向の中央部に位置させていることから、一対のフランジ部32が全面対向配置とされている。このため、壁構造Sでは、例えば、一対のフランジ部がフランジ延在方向にずれて配置されたスタッド材を用いる壁構造と比べて、同じ展開長さのスタッド材を使用した場合に、スタッド材28の断面幅を最小化することができる。これにより、施工上の収まりを簡素化することが可能になり、建設現場でのスタッド材28の位置合わせ作業に要する作業負荷を軽減できる。また、スタッド材28にフランジ部32側から第1方向Yに沿って荷重Lが作用した場合に、荷重の作用軸に対して部材断面の主軸の傾きが抑制されるため、スタッド材28のねじれが抑制され、ねじれによってスタッド材28の下端部28Aがランナー材24から外れたり、上端部28Bがランナー材26から外れたりするのを抑えることが可能になる。
【0051】
また、スタッド材28は、横断面において、一対のフランジ部32に対して直交する方向である第1方向Yに沿って直線状にウェブ部30が延びている。このため、スタッド材28は、比較例2のスタッド材110と比べて、図4に示されるように、フランジ部32側から第1方向Yに沿って荷重Lが作用した場合に、ウェブ部30に局所的な応力集中が生じにくい。具体的には、比較例2のスタッド材110では、ランナー材24に嵌合する上端部及び下端部において、スタッド材110に作用する第1方向Yへの荷重Lが、ランナー材24への嵌合部にて伝達されるため、この嵌合部においては、ウェブ部112に対してフランジ部114を介して大きな第1方向Yへの荷重Lが作用する。ここで、ウェブ部112には、横断面において、直線部112Aと傾斜部112Bとの間、及び、傾斜部112Bと直線部112Cとの間にそれぞれ屈曲部が形成されているため、フランジ部114からウェブ部112に対して大きな第1方向Yへの荷重Lが作用すると、これらの屈曲部に板の曲げ変形が集中し、これに伴い応力と変形が屈曲部に局所化する。このように、スタッド材110のウェブ部112の屈曲部が、第1方向Yの荷重によって局所的に塑性変形することで、スタッド材110は、断面形状から想定される形鋼としての曲げ降伏耐力に至る前に耐力低下を生じることや、上端部および下端部における局所的な変形によってランナー材24及びランナー材26から外れ落ちることが懸念される。これに対して、本実施形態の壁構造Sでは、横断面において、第1方向Yに沿って直線状にウェブ部30が延びているため、ウェブ部30には曲げ変形による応力集中が生じやすい屈曲部がない。このため、スタッド材28は、図5に示されるように、ランナー材24に嵌合する上端部28B及び下端部28Aにおいて、荷重Lがウェブ部30に作用しても、比較例2のスタッド材110と比べて、ウェブ部30に板の局所的な曲げ変形による応力集中が生じにくく、ウェブ部30の塑性変形が抑制される。これにより、本実施形態の壁構造Sでは、比較例2の壁構造と比べて、壁材40に面外方向(第1方向Y)への外力が作用した場合に、スタッド材28の下端部28A及び上端部28Bにおいて、ウェブ部30における板の曲げ変形に起因して発生する局所的な応力集中及び、この応力集中に伴う局所的な塑性変形を抑制できる。これにより、スタッド材28が部材断面から求まる曲げ降伏耐力と同等の耐力を発揮することが可能になる。
【0052】
また、壁構造Sでは、スタッド材28において補強部34におけるウェブ部30と反対側の端部側に突出部38を形成していることから、フランジ部32のリップ部36と反対側の端部32A側が面外方向(第1方向Y)に変形するのが抑制される。これにより、曲げによってフランジ部32に対して材軸方向(スタッド材28の長手方向)への圧縮方向応力が作用した場合において、フランジ部32の圧縮耐力を向上することが可能になり、形鋼部材としての曲げ耐力を増加させることができる。さらに、スタッド材28のフランジ部32へ締結部材としてのドリルねじを打設する際には、フランジ部32の面外変形が抑制されることで、ドリルねじの打設性能を高める効果が発揮される。加えて、補強部34の突出部38とフランジ部32との間に空間部39を形成することで、例えば、補強部34を隙間なく180度曲げ(ヘミング曲げ)して突出部を形成する壁構造と比べて、突出部38の最小曲げ部における曲率半径が大きくなる。このため、壁構造Sでは、スタッド材28の突出部38表面に生じる塑性ひずみを小さくすることができ、冷間成形を行った際の部材の成形精度を高めると共に、スタッド材28を形成する金属板として亜鉛めっき鋼板を用いた場合においては、めっき層の損傷を抑制することができる。
【0053】
また、壁構造Sでは、スタッド材28において、補強部34のウェブ部30側をフランジ部32に重ねていることから、スタッド材28の断面効率が向上する。
【0054】
壁構造Sでは、スタッド材28が0.055≦L1/L0≦0.23の関係を満たしていることから、スタッド材28の展開長さを延ばすことによる重量増を抑制しつつ、フランジ部32の端部32A側の面外方向の変形を抑制することができる。これにより、スタッド材28の断面積あたりの弾性局部座屈耐力を効率的に高めることができる。
【0055】
壁構造Sでは、図2に示されるように、スタッド材28の下端面28Cをランナー材24のウェブ部24Aに当接させ、スタッド材28の上端面28Dをランナー材26のウェブ部26Aから離間した位置に配置している。このため、火災等による大幅な温度上昇によってスタッド材28が長手方向に熱膨張しても、上端面28Dとウェブ部26Aとの間の隙間によってスタッド材28がランナー材26のウェブ部26Aに接触することを抑制できる。これにより、通常の設計で予期せぬ圧縮力がスタッド材28に作用することを回避できる。
【0056】
また、壁構造Sでは、下地骨組み22の両面に壁材40をそれぞれ取り付けている。ここで、下地骨組み22を構成するスタッド材28は、上記のようにフランジ部32側から第1方向Yに沿って荷重Lが作用して曲げが生じた場合に、スタッド材28の第2方向Zへの変位を抑制することができる。このため、スタッド材28の横座屈耐力が向上し、下地骨組み22の曲げ耐力が、横座屈によって設計で想定される部材耐力よりも低くなることを抑制することが可能になる。
【0057】
一般的な壁構造を使用した場合、例えばJIS A6517で規定される壁下地において、その壁高さに関する適用範囲は最大5mとされている。したがって、下地骨組み22のスタッド材28にリップ溝形鋼を用いて5mよりも壁高さが高い壁を施工しようとした場合、リップ溝形鋼の断面における図心とせん断中心のずれによって、リップ溝形鋼のねじれや横座屈などの通常の予期せぬ変形が生じる可能性がある。したがって、これらの設計耐力よりも小さい荷重レベルでリップ溝形鋼が最大耐力に達することを避ける観点から、5m以下の間隔で中間補剛梁を設ける必要があり、壁構造を構成するリップ溝形鋼の重量増加につながるとともに、施工現場での工数増加につながる。一方、本発明の断面形状が略I字形状で図心とせん断中心が一致する形鋼を、下地骨組み22を構成するスタッド材28に使用することで、上記のようにスタッド材28の長手方向の中間部分に生じるねじれを抑制でき、間仕切壁20の高さを5mより高くしても下地骨組み22のねじれによる壁耐力の低下を抑制できる。このため、壁構造Sでは、隣接するスタッド材28の間に中間補剛梁を設けることを省略することが可能となり、材料費を抑制するとともに、施工現場での組立工数を削減でき、経済的設計及び施工が可能となる。
【0058】
前述の実施形態では、壁材40を下地骨組み22の両面にそれぞれ取り付ける構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、壁材40を下地骨組み22の片方の面のみに取り付ける構成としてもよい。
【0059】
また、前述の実施形態では、スタッド材28の下端面28Cがランナー材24のウェブ部24Aに当接し、上端面28Dがランナー材26のウェブ部26Aに対して離間しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、スタッド材28の下端面28Cがランナー材24のウェブ部24Aに対して離間し、上端面28Dがランナー材26のウェブ部26Aに当接する構成としてもよい。この場合においてもスタッド材28の熱膨張を吸収する効果を得ることができる。
【0060】
さらに、前述の実施形態では、スタッド材28の突出部38とフランジ部32との間に空間部39を形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図6に示されるスタッド材48のように、補強部50のウェブ部30と反対側の端部側を略180度曲げ(ヘミング曲げ)して突出部52を形成してもよい。このように突出部52をヘミング曲げで形成することにより、補強部50とフランジ部32との重なる範囲を広げることができるため、スタッド材48の断面あたりの弾性局部座屈耐力を効率的に高めることができる。また、スタッド材48では、ドリルねじを用いてフランジ部へ壁材40を取り付ける作業を考えた場合に、ドリルねじ打設時にねじの先端部が空間部39に入り込み、ねじが傾く等の施工不良が生じる可能性を排除できる、という利点もある。
【0061】
また、前述の実施形態では、ウェブ部30の短手方向の端部30Aをフランジ部32の延びる方向の中央部に位置させているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ウェブ部30の短手方向の端部30Aがフランジ部32の延びる方向の中央部よりも片方の端部に寄りに位置してもよい。
【0062】
次に、本発明の壁構造の効果を立証するため、本発明を適用した実施例1の間仕切壁と、比較例1の壁構造を適用した比較例1の間仕切壁に対して4点曲げに関する有限要素解析を行った。解析対象とした間仕切壁は、長さ(高さ)が5.5mmであり、スタッド材を455mmピッチで配置したものである。なお、スタッド材の両フランジ部には、それぞれ壁材としての石膏ボードがドリルねじで取り付けられていることを想定している。
また、実施例1の間仕切壁に用いるスタッド材(以下、適宜「実施例のスタッド材」と記載する。)は、前述した実施形態の壁構造で用いるスタッド材28(図3参照)と同じ形状であり、寸法L0、L1、L2、Wがそれぞれ100mm、10mm、20mm、45mmであった。また、実施例1のスタッド材は、板厚1mmの一枚の金属板を冷間成形して製造された部材であることを想定している。
一方、比較例1の間仕切壁に用いるスタッド材(以下、適宜「比較例1のスタッド材」と記載する。)は、前述した比較例1の壁構造で用いるスタッド材100(図7参照)と同じ形状であり、寸法L0、L1、Wがそれぞれ100mm、15mm、50mmのリップ溝形断面形状を想定した。なお、比較例1のスタッド材は、板厚1.6mmの一枚の金属板をロール成形して形成されている。想定される材料の降伏強度(YP)は表1に記載の通りである。
【0063】
間仕切壁を構成するスタッド材、各ランナー材、及び、石膏ボードをシェル要素でモデル化し、ドリルねじ剛塑性体のばね要素でモデル化した。なお、石膏ボードは弾性体を想定し、スタッド材および各ランナー材は弾塑性体を想定している。解析モデルは、支持スパンが5500mmの4点曲げを想定しており、壁の上下方向の端部から1375mmの位置に面外方向への強制変形を与えた。解析より得られた間仕切壁の最大曲げモーメントをMmaxとし、部材の断面形状から求まるスタッド材の曲げ降伏耐力Myとの比率を表1に示す。なお、表1おけるZ、A、YP、Mmaxは、それぞれスタッド材の断面係数(mm)、断面積(mm)、降伏強度(N/mm)、最大曲げモーメント(kNm)を示している。また、表1におけるMy(kNm)は、断面係数Zに降伏強度YPを乗じたものである。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示されるように、実施例1のスタッド材は、比較例1のスタッド材と比べて、Mmax/Myの値が改善していることが分かる。これは、比較例1のスタッド材の断面形状から実施例1のスタッド材の断面形状へ変化させることで、表1に示されるように、断面積が減少し、断面係数が増加し、また降伏耐力と最大曲げ耐力との比率が大きくなり、効率的に高い部材耐力が発揮されたことが確認できる。
【0066】
次に本実施形態のスタッド材における0.055≦L1/L0≦0.23の関係を立証するため、本発明を適用した実施例2のスタッド材(図6のスタッド材48)をもとに、固有値解析から得られた弾性局部座屈耐力と、フランジ部を単純支持板とみなした場合の弾性局部座屈耐力の比率σcrFSM/σcrfにスタッド材展開長さの増分l/lを乗じ、その値が1以上になる範囲を調べた。なお、実施例2のスタッド材の寸法L0、L2、Wは、それぞれ100mm、20mm、45mmであり、鋼材には板厚1.0mmの鋼板の利用を想定している。また、lは各スタッド材の断面仕様における展開長さを表し、lはL1の長さが2mm(=板厚の2倍)の突出部がない断面仕様におけるスタッド材の展開長さを表す。すなわちl/lは、板厚一定となる本実施例において、形鋼の製造に必要な鋼材量の比率に等しい。図9には結果を示す。
【0067】
図9に示されるように、0.055≦L1/L0≦0.23の範囲において、σcrFSM/σcrfにl/lを乗じた値が1以上となった。この範囲は、本発明によるスタッド材に曲げが作用する場合の弾性局部座屈耐力がフランジ部を単純支持板とみなした場合よりも高い値となり、なおかつその上昇割合が鋼材重量の増分よりも大きい部材断面仕様を表す。すなわち、実施例2のスタッド材は、既知の設計法に基づく計算耐力に対して、鋼材重量の増分に見合った耐力上昇が期待できる断面仕様であることを表している。すなわち、解析結果から、上記範囲が0.055≦L1/L0≦0.23を満たすことで、スタッド材の断面あたりの弾性局部座屈耐力を効率的に高めることが可能であることが分かる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
20 間仕切壁(壁)
22 下地骨組み
24 ランナー材(下ランナー材)
26 ランナー材(上ランナー材)
28 スタッド材
28A 下端部
28B 上端部
30 ウェブ部
30A 端部
32 フランジ部
34 補強部
36 リップ部
38 突出部
39 空間部
40 壁材
48 スタッド材
50 補強部
52 突出部
FC 図心
S 壁構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9