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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】透け感抑制生地及びこれを用いた被服
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/00 20060101AFI20230608BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20230608BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20230608BHJP
   A41D 31/14 20190101ALI20230608BHJP
   D03D 9/00 20060101ALI20230608BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20230608BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20230608BHJP
   D04B 21/12 20060101ALI20230608BHJP
   D04B 21/14 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
D04B1/00 B
A41D31/00 502C
A41D31/00 502T
A41D31/04 Z
A41D31/14
D03D9/00
D03D11/00 Z
D04B1/14
D04B21/12
D04B21/14 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019103499
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020196971
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田島 和弥
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-023439(JP,A)
【文献】特開2010-053496(JP,A)
【文献】特開2000-328407(JP,A)
【文献】特開2017-095827(JP,A)
【文献】特開2012-067404(JP,A)
【文献】特開2019-210581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D31/00-31/32
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地の厚み方向に貫通した貫通孔を含む透け感抑制生地であって、
前記生地は表層と裏層を含む多重構造であり、前記表層と裏層の両層に孔が存在し、
前記両層の孔が重なった部分が貫通孔になっており、
前記生地の貫通孔の周辺には、輝度格差が0.5以上ある2種類以上の糸が配置されており、
JIS L 1923:2017「繊維製品の防透け性評価方法A法(視感法)」による評価が3.5級以上であることを特徴とする透け感抑制生地。
【請求項2】
前記貫通孔は、白色又は黒色背面で視認できる請求項1に記載の透け感抑制生地。
【請求項3】
前記貫通孔の大きさは、タテ及びヨコ方向が0.3mm以上25mm以下である請求項1又は2に記載の透け感抑制生地。
【請求項4】
前記生地に占める貫通孔の面積率は3~15%である請求項1~3のいずれか1項に記載の透け感抑制生地。
【請求項5】
前記生地は糸を引き揃えた部分を含むシングル丸編みもしくはトリコット経編み、ダブルラッシェル経編地又はダブル丸編地である請求項1~のいずれか1項に記載の透け感抑制生地。
【請求項6】
前記生地は、表層と裏層が両層ともメッシュ編物である請求項1~のいずれか1項に記載の透け感抑制生地。
【請求項7】
前記生地は、JIS L 1096:2010「フラジール形法」で測定した通気量が100cm3/cm2・s以上である請求項1~のいずれか1項に記載の透け感抑制生地。
【請求項8】
前記生地は、JIS L 1096のA法に準拠し測定した前記生地は厚みが0.3mm以上である請求項1~のいずれか1項に記載の透け感抑制生地。
【請求項9】
前記両層の孔はずれて配置されていることにより、表層を構成する糸により裏層の孔は部分的に隠れている請求項1~のいずれか1項に記載の透け感抑制生地。
【請求項10】
前記表層と裏層にはそれぞれ交差する方向に溝があり、表層の溝と裏層の溝の交差点が貫通孔を形成している請求項1~9のいずれか1項に記載の透け感抑制生地。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の透け感抑制生地を含む被服。
【請求項12】
前記被服はスポーツ用被服である請求項11に記載の被服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透け感抑制生地及びこれを用いた被服に関する。さらに詳しくは、発汗時にも快適に着用でき、透け感も抑制された被服用生地及びこれを用いた被服に関する。
【背景技術】
【0002】
発汗を伴うスポーツには、発汗対策をした被服を着用するのが快適である。従来の被服は、発汗時などの湿潤状態においては、水(汗)の膜が生地表面上に形成されて通気性が減少し、皮膚上の汗の気化を阻害する状態となる。この状態は、無効発汗が増え、深部体温の上昇による運動パフォーマンスが低下し、不快感も高くなる問題につながる。従来技術として、特許文献1にはメッシュを有する編地が提案され、特許文献2にはメッシュ編地に撥水剤を付着させることが提案されている。特許文献3~4には、孔を有する編織物の表面に色差ΔE10以上の模様を形成し、目視防透け性を向上することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-169648号公報
【文献】特開2006-249610号公報
【文献】特開2017-226948号公報
【文献】特許第6162858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の被服用生地は、通気性を上げるために貫通孔を形成することが必要であるが、貫通孔が視認されやすいという問題があった。貫通孔が視認されやすいと、肌やインナー衣類が透けて見え、見栄えが悪くなる問題につながる。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、貫通孔は存在し通気度が高いが、貫通孔は視認されにくい透け感抑制生地及びこれを用いた被服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の透け感抑制生地は、生地の厚み方向に貫通した貫通孔を含む透け感抑制生地であって、前記生地は表層と裏層を含む多重構造であり、前記表層と裏層の両層に孔が存在し、前記両層の孔が重なった部分が貫通孔になっており、前記生地の貫通孔の周辺には、輝度格差が0.5以上ある2種類以上の糸が配置されており、JIS L 1923:2017「繊維製品の防透け性評価方法A法(視感法)」による評価が3.5級以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明の被服は、前記の透け感抑制生地を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の透け感抑制生地及びこれを用いた被服は、表層と裏層を含む多重構造であり、表層と裏層の両層に孔が存在し、前記両層の孔が重なった部分が貫通孔になっていることにより、通気度が高いが、貫通孔は視認されにくい透け感抑制生地及びこれを用いた被服を提供できる。すなわち、表層を構成する糸より奥にある貫通孔は部分的に隠れるため、貫通孔が視認されにくい構造となる。これにより、JIS L 1923:2017「繊維製品の防透け性評価方法A法(視感法)」による評価を3.5級以上にすることができる。その結果、生地の通気性を確保し、肌に涼しさを与え、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは本発明の一実施態様の生地の模式的平面図、図1B図1AのI-I線の模式的断面図である。
図2図2は本発明の一実施形態における被服用生地の表面写真(倍率3)である。
図3図3は同、裏面写真(倍率3)である。
図4図4Aは本発明の実施例で使用するJIS L 1923:2017「繊維製品の防透け性評価方法A法(視感法)」の測定装置を示す正面図、図4Bは同側面図、図4Cは同試料台の側面説明図である。
図5図5は本発明の実施例1の生地である。
図6図6は比較例1~2の生地である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、生地の厚み方向に貫通した貫通孔を有する生地であり、前記生地は表層と裏層を含む多重構造である。多重構造の生地は、糸を引き揃えた部分を含むシングル丸編みもしくはトリコット経編み、経編みのダブル編物、緯編みのダブル編物、ダブル織物(経糸ダブル織物、緯糸ダブル織物、経緯糸ダブル織物を含む)等がある。表層と裏層の両層には孔(メッシュ)が存在する生地である(以下、「両面メッシュ生地」という。)。前記両面メッシュ生地の表層と裏層の孔(メッシュ)が重なった部分が貫通孔になっており、この貫通孔により生地の通気性を確保し、肌に涼しさを与え、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服を提供できる。
【0011】
前記両層の孔(メッシュ)は、ずれて配置されていることが好ましく、これにより表層を構成する糸により裏層の孔(メッシュ)は部分的に隠れるため、貫通孔が視認されにくい構造となる。前記部分的に隠れるとは、裏層の孔(メッシュ)の10~90%隠れることが好ましく、50~90%隠れることがより好ましい。前記表層と裏層にはそれぞれ交差する方向に溝があり、表層の溝と裏層の溝の交差点が貫通孔を形成している構造であってもよい。これにより、JIS L 1923:2017「繊維製品の防透け性評価方法A法(視感法)」による評価が3.5級以上にすることができ、生地の品質を高く保つことができる。
【0012】
前記貫通孔は白色又は黒色背面で視認でき、貫通孔の存在は確認できる。貫通孔の平面形状は、丸、楕円、四角、ひし形、三角、多角形、不定形のどのような形状でも良い。前記貫通孔の大きさは、タテ及びヨコ方向が、0.3mm以上25mm以下が好ましく、0.3mm以上20mm以下がより好ましい。また、前記生地に占める貫通孔の面積率(開口率)は3~15%が好ましく、5~12%がより好ましい。これにより生地の通気性をより好ましい状態にできる。
【0013】
前記生地はダブルラッシェル経編地又はダブル丸編地であるのが好ましい。ダブルラッシェル経編地又はダブル丸編地は両面メッシュ生地を編成しやすい。ダブルラッシェル経編地又はダブル丸編地は、表層と裏層が両層ともメッシュ編物が好ましい。前記生地は表層と裏層が両層ともメッシュ編物であると、通気性は高くなり、貫通孔が見にくくなる。
【0014】
前記ダブルラッシェル経編地の接結糸は、光反射性糸とするのが好ましい。接結糸として光反射性糸を使用すると、光反射性糸の反射によりチカチカ感が出るが、このチカチカ感により貫通孔が見にくくなる効果が発現し、さらに貫通孔が視認されにくい構造となる。
【0015】
前記光反射性糸は、生糸(なまいと)、酸化チタンを含まないブライト糸、芯鞘複合繊維糸などが好ましい。前記生糸(なまいと)は、合成繊維フィラメント糸の仮より加工糸ではないストレート糸のことである。また通常の合成繊維フィラメント糸は、透けを防止するために酸化チタン0.5重量%を含むセミダル糸が多く、さらに透けを防止するために酸化チタンを多く加えたフルダル糸もあるが、酸化チタンを含まないブライト糸が好ましい。芯鞘複合繊維糸は、芯成分がポリプロピレン、鞘成分がポリエステルからなる複合繊維がある(例えば特開2015-232192号公報)。
【0016】
本発明の被服は、前記の透け感抑制生地を含む。被服としては、シャツなどの上衣、パンツなどの下衣、帽子、アームカバー、手袋などに有用である。とくに暑い時期の被服に有用である。スポーツ用被服にも好適である。
【0017】
本発明において、生地を構成する繊維糸は、ポリエステル(PET等)繊維糸、ナイロン糸、ポリオレフィン(PP,PE等)糸、アクリル繊維、コットン紡績糸、レーヨン等のセルロース繊維紡績糸、これらの繊維の混紡糸、短繊維とマルチフィラメント糸との複合紡績糸(精紡交撚糸を含む)などである。
【0018】
本発明において、生地の好ましい目付けは40g/m以上300g/m未満である。衣類の発汗の多い部分に使用するため、薄手生地が好ましい。本発明の生地は、ワンウエイ、ツーウエイでもよく、ポリウレタンなどの弾性糸を含んでもよい。
【0019】
前記生地の貫通孔の周辺には、輝度格差が0.5以上ある2種類以上の糸が配置されているのが好ましい。ここで生地の貫通孔の周辺とは、貫通孔の端から7mmをいう。輝度格差0.5以上は、輝度格差50%以上と同じである。さらに好ましい輝度格差0.5以上0.8以下である。前記三次元変角分布測定装置ではu’色度最大値も測定できる。本発明におけるu’色度最大値は、0.16~0.2の範囲が好ましい。輝度差もu’色度最大値も前記の範囲であれば、貫通孔が視認されにくい。輝度格差もu’色度最大値も市販の三次元変角分布測定装置によって測定できるが、さらに詳しくは庄田裕一ら著「織物の『光沢感』の定量化方法について」、第48回自動制御連合協議会予稿集445-448頁、2005年11月25-26日、丸弘樹ら著「黒色織物の明るさ感評価を代替する計量法ならびに特徴化法の提案」,Journal of Textile Engineering(2017),Vol 63,No.2,55-62頁に記載されている。
【0020】
前記、輝度格差が0.5以上ある2種類以上の糸とは、酸化チタンの含有量、染着性、ファイラメントカウント数の違い、撚り数の違いなどにより糸の光反射特性が異なる糸を組み合わせて実現する。酸化チタンは光を吸収するため、含有量により光反射特性が異なってくる。また、ポリエステルを例にすると、カチオン可染ポリエステルとレギュラーポリエステルはポリマーが違う事で染着性が異なり、結果として光反射特性が異なってくる。また、フィラメントカウントや撚り数が異なることで糸表面上の凹凸の程度が変わり、光反射特性が異なってくる。ブライト糸もしくはセミダル糸とカチオン架染の組み合わせが好ましい。さらに、ローカウントのブライト糸もしくはセミダル糸とカチオン架染の組み合わせがさらに好ましい。ここでいう、輝度格差は次の式で算出した値である。
輝度格差(%)=(生地を構成する糸の輝度値の最大値-生地を構成する糸の輝度値の最小値)/生地を構成する糸の輝度値の最大値×100
【0021】
前記生地は、JIS L 1096:2010「フラジール形法」で測定した通気量が100cm/cm・s以上であるのが好ましい。さらに好ましい通気量は150~300cm/cm・sである。前記の範囲であれば生地の通気性を確保し、肌に涼しさを与え、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる。
【0022】
前記生地の厚みは0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.3~1.5mmであり、さらに好ましくは0.5~1.1mmである。前記の厚みであれば、透け感は少なくなるか又は無くなる。なお、厚みは、JIS L 1096のA法に準拠し測定した。
【0023】
以下、図面を用いて本発明の好適な一実施形態の被服用生地を説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1Aは本発明の一実施態様の生地の模式的平面図、図1B図1AのI-I線の模式的断面図である。図1A図2のトレース図面である。この透け感抑制生地1はダブルラッシェル経編地の両面メッシュ生地である。この生地1は表層のメッシュ生地2と、裏層のメッシュ生地3と、表層と裏層をつなぐ接結糸7で形成されている。表層を構成する糸により裏層の孔は部分的に隠れている。また、表層の孔4と裏層の孔5はずれて配置されており、前記両層の孔4,5が重なった部分が貫通孔6になっている。
【0024】
図2は本発明の一実施形態における被服用生地の表面写真(倍率3)、図3は同、裏面写真(倍率3)である。図2及び図3におけるハニカム状態(六角状)の孔の寸法はいずれもタテ4.5mm、ヨコ2.2mm、ひし形の孔の寸法はいずれもタテ2.2mm、ヨコ1.5mmである。また貫通孔はひし形であり、寸法はいずれもタテ1mm、ヨコ1mmである。
【0025】
図4Aは本発明の実施例で使用するJIS L 1923:2017「繊維製品の防透け性評価方法A法(視感法)」の測定装置を示す正面図、図4Bは同側面図、図4Cは同試料台の側面説明図である。前記JIS規定では図2に記載されている。この透け感測定装置10は、断面が三角形状の試料台11の中央の左側に白バッキング12を、右側に黒バッキング13を隣り合わせにして、その上を試験片14で覆う。上部にはスイッチ操作パネル15と、常用光源(D65)16があり、試験片14の近辺の照度は1000~1500ルックスに保たれる。17は観察者の目線方向を示す。図4A-Cの寸法線の数値単位はmmである。
【0026】
前記生地は、貫通孔に接する少なくとも一部には、撥水または疎水性領域が配置され、他の部分には親水領域が配置されることが好ましい。この結果、発汗により濡れた状態においても貫通孔の通気性が確保され、有効発汗量をふやし、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服を提供できる。
【実施例
【0027】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
<透け感の測定>
JIS L 1923:2017「繊維製品の防透け性評価方法A法(視感法)」で測定し評価した。この測定は、試験片をバッキング(白バッキング:常用光源D65で視野10°で測定したときの明度(L)が90以上のもの。黒バッキング:明度(L)が10以下のもの。)の上に置き、視感による色の違いの大きさを、評価用グレースケール(汚染用グレースケール)と比較して等級付けする。具体的には次のように行う。
(1)図4Aの試料台11中央の左側に白バッキング12を、右側に黒バッキング13を隣り合わせにして、その上を試験片14で覆う。試験片14は乾燥状態のものを使用した。
(2)試験片及び評価用グレースケール(汚染用グレースケール)それぞれにマスク(JIS L 0801規定のもの)を載せて、試験片越しの左右のバッキングの色の違いの大きさを目視で観察し、左右の色の違いに最も近い評価用グレースケール(汚染用グレースケール)の号数によって等級評価する。1~5級に等級付けし、5級が最も優れる。透けてないと評価される等級は3.5級以上とした。
(3)3枚の試験片の等級を平均し、小数点以下1桁を0又は5にまとめて等級評価する。
<輝度格差及びu’色度最大値の測定>
この測定は、光源はメタルハライド照明装置(シグマ光機株式会社)、照射光源はロッドホモジナイザ(シグマ光機株式会社)、カメラは2D Color Analyzer CA-2000で構成された三次元変角分布測定装置を使用し、角度45°のみで測定した。
<生地の構造的特徴の測定>
A:貫通孔の長さ、幅はマイクロスコープを用いて測定した。
B:貫通孔の面積、貫通孔の総面積はマイクロスコープを用いて測定した(背景色が視認できる領域を貫通孔面積とした)。
C:厚みは厚み計を用いて測定した。
<通気量>
JIS L 1096:2010,8.26.1A「フラジール形法」で測定した。
【0028】
(実施例1)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してダブル丸編みメッシュ生地を作成した(下記のFDとはフルダル糸、FLATは生糸、%は質量%である。以下同じ。)。生地サンプルの写真は図5に示す。この生地は、表層と裏層にはそれぞれ交差する方向に溝があり、表層の溝と裏層の溝の交差点が貫通孔を形成している。
FD 40d/36f FLAT 5%
FD 75d/36f 75%
FD 100d/72f 20%
この生地の測定結果は後にまとめて表1に示す。以下同じ。
【0029】
(実施例2)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してダブル丸編みメッシュ生地を作成した(下記のFCDとはカチオン可染ポリエステルとレギュラーポリエステルの混繊糸、SDとはセミダル糸である。)。
FD 40d/36f FLAT 5%
FCD 60d/72f 45%
SD 75d/36f 30%
SD 100d/72f 20%
【0030】
(実施例3~6)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してダブルラッシェル編みメッシュ生地を作成した(下記のCDとはカチオン可染糸である。)。生地サンプルの写真は図2~3に示す。この生地は、表層と裏層の孔(メッシュ)は、ずれて配置されている。
CD 50d/24F 28%
SD 30d/12F FLAT 33%
SD 75d/36F 22%
SD 60d/48F 18%
【0031】
(比較例1~2)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してシングル丸編みメッシュ生地を作成した(下記のDTYとは仮より加工糸である。)。生地サンプルの写真は図6に示す。
75D/72F SD DTY 89%
30D/18F SD FLAT 11%
【0032】
(比較例3)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してダブル丸編みメッシュ生地を作成した。
FD 40d/36f FLAT 5%
FD 75d/36f 75%
FD 100d/72f 20%
【0033】
(比較例4)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してダブル丸編みメッシュ生地を作成した。
FD44T/36F 8%
SD56T/36F 75%
FD 56T/36F 8%
SD66T/48F (撥水糸) 10%
【0034】
(比較例5)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してシングル経編みメッシュ生地を作成した。
FD 84T/72F 46%
CD 84T/36F 54%
【0035】
(比較例6)
下記に示すポリエステル(PET)マルチフィラメント糸を使用してダブル丸編みメッシュ生地を作成した。
SD 150D/96F 83%
SD 30D/12F 17%
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すとおり、実施例1-6の生地は、貫通孔の面積率が比較的高く、通気量も比較的高く、かつ透け感が3.5級以上であり、貫通孔は視認されにくいことが確認できた。その結果、生地の通気性を確保し、肌に涼しさを与え、運動パフォーマンスを低下させず、発汗時にも快適に着用できる被服用生地及びこれを用いた被服とすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の生地は、例えばスポーツシャツ、Tシャツ、インナーシャツ、ブリーフ、パンツ、タイツ、一般のシャツ、ブリーフ等の全部に使用しても良いし、脇、背中等の一部に使用しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 透け感抑制生地
2 表層のメッシュ生地
3 裏層のメッシュ生地
4 表層の孔
5 裏層の孔
6 貫通孔
7 接結糸
10 透け感測定装置
11 試料台
12 白バッキング
13 黒バッキング
14 試験片
15 スイッチ操作パネル
16 常用光源(D65)
17 観察者の目線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6