(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】巻回体収納箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/72 20060101AFI20230608BHJP
B65D 25/52 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B65D5/72 A
B65D25/52 E
(21)【出願番号】P 2019112179
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】礒田 奈央子
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051973(JP,A)
【文献】特許第4925704(JP,B2)
【文献】特開平08-268426(JP,A)
【文献】特開平10-077047(JP,A)
【文献】特開2008-280070(JP,A)
【文献】特開2017-159931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/72
B65D 25/52
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物を巻回した巻回体を収容する空間を形成する本体部と、前記本体部の空間を塞ぐ開閉可能な蓋部と、を備え、
前記本体部は、底面と、前記底面から垂直に立ち上がり、巻回体の巻回軸方向と水平な一の前面と、を備え、
前記蓋部は、前記前面の少なくとも一部を覆う掩蓋面と、前記掩蓋面の下縁に形成された切断刃と、を備え、
前記蓋部が前記本体部を塞いだ状態において、前記切断刃の下端位置は、前記前面の下端から収納箱の高さの25%以内にある、巻回体収納箱。
【請求項2】
前記蓋部は、前記本体部に固定片を介して固定されており、
前記底面は、前記固定片と接続された接着片を備え、
前記固定片は、一端を前記掩蓋面の下端と、他端を前記接着片の側端部と、それぞれ剥離可能に接続している、請求項1記載の巻回体収納箱。
【請求項3】
前記掩蓋面、前記固定片及び前記接着片は、一枚の紙片に、各接続位置に連続した穴からなる第一及び第二のミシン目を形成することで剥離可能に構成され、
前記掩蓋面と、前記固定片とは、前記前面上に位置し、
前記接着片は、底面上に位置し、
前記固定片と、前記接着片とは、前記第二のミシン目で屈曲した、請求項2記載の巻回体収納箱。
【請求項4】
前記第一のミシン目における穴と穴との間隙の総距離の総和が、前記第二のミシン目における穴と穴との間隙の総距離の総和以上である、請求項3に記載の収納箱。
【請求項5】
前記固定片は、前記前面の一側端から他側端に向かって剥離する剥離進行方向を有し、
前記穴は、その一端側が、前記剥離進行方向に隣接する他の穴の前記他端側と、前記剥離進行方向の同一線上以外で重なった、請求項3または4に記載の収納箱。
【請求項6】
前記穴は、前記固定片の長手方向に沿って形成された線状の外穴と、前記外穴の一端から前記固定片の中心側に傾斜して形成された線状の内穴とを含み、前記剥離進行方向と逆の方向へ向かって延びる前記内穴の傾斜角度は、前記外穴に対し10°以上50°以下である、請求項
5に記載の収納箱。
【請求項7】
前記穴は、前記固定片の長手方向に沿って形成された線状の外穴と、前記外穴の一端から前記固定片の中心側に傾斜して形成された線状の内穴とを含み、前記剥離進行方向へ向かって延びる前記内穴の傾斜角度は、前記外穴に対し10°以上80°以下である、請求項
5または6に記載の収納箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回体収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺物を巻回した巻回体を収納する巻回体収納箱が知られている。このような巻回体収納箱は、一般的に、巻回体を収納するため、四方を同一の高さで覆われた箱体の本体部と、この本体部の空間を塞ぐ蓋部とから形成されており、本体部の一方の長尺な片側から巻回体に巻回された長尺物を引出し、蓋部の掩蓋面端部に形成された切断刃によりカットすることで、長尺物を所望の長さで用いるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の巻回体収納箱では、蓋部の切断刃は、その下端位置が、掩蓋面が覆う前面の下端から半分程度の高さに形成されていた。これは、巻回体収納箱が未使用状態である流通状態において、掩蓋面は本体部の前面に、接着片を介して接着固定されており、使用時に使用者は、ミシン目を剥離線として、開封片を剥離することで、掩蓋面が本体部と切離されるところ、このような接着片と開封片とを形成するためのスペースとして、掩蓋面が覆う前面の下端から半分程度の高さが必要となるからであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、巻回体収納箱においては、掩蓋面が本体部の前面に被さった状態で長尺物を切断したのちに、本体部の前面に引き出された長尺物の長さが長いほど、長尺物が巻回体に巻き戻される、いわゆる巻き戻りは生じ難いところ、従来の巻回体収納箱において切断刃は、掩蓋面が覆う前面の下端から半分程度の高さに形成されており、長尺物の引出し長さが十分とはいえなかった。
【0006】
また、長尺物の切断時には、引き出された長尺物を、掩蓋面と本体部の前面との間で掩蓋面を外側から押さえつけ挟み込むことで長尺物を適切に保持して切断を行うところ、切断刃の位置が、掩蓋面が覆う前面の下端から半分程度の高さであると、掩蓋面の面積を十分に確保できず、長尺物を保持するうえで課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、長尺物の巻き戻しを低減するとともに、切断時に長尺物を確実に保持することができる巻回体収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る巻回体収納箱は、長尺物を巻回した巻回体を収容する空間を形成する本体部と、本体部の空間を塞ぐ開閉可能な蓋部と、を備え、本体部は、底面と、底面から垂直に立ち上がり、巻回体の巻回軸方向と水平な一の前面と、を備え、蓋部は、前面の少なくとも一部を覆う掩蓋面と、掩蓋面の下縁に形成された切断刃と、を備え、蓋部が本体部を塞いだ状態において、切断刃の下端位置は、前面の下端から収納箱の高さの25%以内にある。
【0009】
長尺物の材質や形態は、樹脂製フィルムや樹脂製シート、紙製シート、アルミホイル等、特に限定されないが、巻き戻しが課題となることの多い樹脂製フィルム巻回体に対し、本発明の巻回体収納箱は好適である。
【0010】
この態様では、切断刃の下端位置を前面の下端から収納箱の高さの25%以内とすることで、掩蓋面の長さを長くすることが可能になる。これにより、長尺物の引出し長さが十分に取ることができるので、長尺物の巻き戻しを低減できる。また、掩蓋面の面積を十分に確保でき、切断時に長尺物を確実に保持することができる。なお、切断刃の下端位置の一部が25%以内にあればよいが、切断刃の下端位置の全てが25%以内にあると、より巻き戻し低減及び切断時の長尺物保持効果を得ることができる。
【0011】
他の態様では、蓋部は、本体部に固定片を介して固定されており、底面は、固定片と接続された接着片を備え、固定片は、一端を掩蓋面の下端と、他端を接着片の側端部と、それぞれ剥離可能に接続していてもよい。この態様では、底面に接着片を設けることで、接着片を前面に設けた場合に比べて、前面を覆う掩蓋面の面積を増加させることができる。これにより、切断刃の下端位置を前面上の低い位置に形成することが可能になる。また、このような構成とすることで、底面の強度が向上し、収納箱の耐久性が向上する。
【0012】
他の態様では、掩蓋面、固定片及び接着片は、一枚の紙片に、各接続位置に連続した穴からなる第一及び第二のミシン目を形成することで剥離可能に構成され、掩蓋面と、固定片とは、前面上に位置し、接着片は、底面上に位置し、固定片と、接着片とは、第二のミシン目で屈曲してもよい。この態様では、上記に加え、掩蓋面と固定片とが同一平面上にあるので、切断刃の先端を折り曲げるなどの特別な加工を施さなくとも封函できる。
【0013】
他の態様では、第一のミシン目における穴と穴との間隙の総距離の総和が、第二のミシン目における穴と穴との間隙の総距離の総和以上であってもよい。この態様では、第一のミシン目の穴と穴の間隙を大きく設定し、他方、第二のミシン目の穴と穴の間隙を相対的に小さく設定することで、第二のミシン目の方で板紙が折れやすくなり、収納箱の形が整いやすくなる。
【0014】
他の態様では、固定片は、前面の一側端から他側端に向かって剥離する剥離進行方向を有し、穴は、その一端側が、剥離進行方向に隣接する他の穴の他端側と、剥離進行方向の同一線上以外で重なっていてもよい。この態様では、穴同士を剥離進行方向に対して同一直線状以外でオーバーラップさせることで、固定片を剥離する際に、固定片がその進行方向中途で切断されてしまうことを防ぐことができる。
【0015】
他の態様では、穴は、固定片の長手方向に沿って形成された線状の外穴と、外穴の一端から固定片の中心側に傾斜して形成された線状の内穴とを含み、剥離進行方向と逆の方向へ向かって延びる内穴の傾斜角度は、外穴に対し10°以上50°以下であってもよい。この態様では、隣接してオーバーラップする外穴と内穴において、剥離進行方向と逆の方向へ向かって延びる内穴の角度を10°以上とすることで、隣接する外穴と内穴との間隙を十分に保つことができ、固定片が例えば輸送中の振動等により不意に剥離されることを抑制できるとともに、固定片を小さく形成しても十分な強度を保つことができ、50°以下とすることで、固定片がその進行方向中途で切断されてしまうことを防ぐことができる。20°以上40°以下であればより好ましい。
【0016】
他の態様では、穴は、固定片の長手方向に沿って形成された線状の外穴と、外穴の一端から固定片の中心側に傾斜して形成された線状の内穴とを含み、剥離進行方向へ向かって延びる内穴の傾斜角度は、外穴に対し10°以上80°以下であってもよい。この態様では、隣接してオーバーラップする外穴と内穴において、剥離進行方向へ向かって延びる内穴の角度を10°以上とすることで、固定片を剥離する際に、掩蓋片の表層まで剥がれてしまうことを抑制でき、固定片剥離後の収納箱の強度や耐水性、美観性を維持することができ、80°以下とすることで、剥離後の掩蓋面の下端が切断刃の下端よりも下に位置して長尺物のカット性を阻害するようなことが起こりにくく、かつ固定片125がその進行方向中途で切断されてしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長尺物の巻き戻しを低減するとともに、切断時に長尺物を確実に保持することができる巻回体収納箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る巻回体収納箱を開封した状態を示す斜視図(A)と未開封の状態を示す斜視図(B)である。
【
図2】
図1に示す巻回体収納箱を展開した状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す巻回体収納箱を開封した状態を示す正面図(A)と未開封の状態を示す正面図(B)である。
【
図5】
図1に示す巻回体収納箱の固定片のミシン目部分の拡大図である。
【
図6】
図1に示す巻回体収納箱の固定片のミシン目部分の他の例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。(なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、従来の構成と同様の構成については適宜説明を省略する。)
【0020】
図1は、本発明の実施形態(以下「本実施形態」という。)に係る巻回体収納箱1の全体構成を示す斜視図であり、(A)は箱を開放した状態を示し、(B)は箱が未開封の状態を示す。同図に示すとおり、巻回体収納箱1は、図示しない巻回体を収容する空間を形成する本体部11と、本体部11の空間を塞ぐ開閉可能な蓋部12と、を備える。
【0021】
[巻回体収納箱の概略構成(
図1)]
本体部11は、底面111と、底面111から垂直に立ち上がり、巻回体の巻回軸方向と水平に設けられた前面112と、同じく底面111から垂直に立ち上がり前面112と対向して設けられた背面113と、底面111、前面112及び背面113と接続し、前面112及び背面113を支持する一対の前面112(114a,114b)とを備える。
【0022】
蓋部12は、本体部11を塞いだ際に、底面111と対向する上面121と、同じく本体部11を塞いだ際に、前面112の少なくとも一部を覆う掩蓋面122と、上面121及び掩蓋面122とを支持する一対の蓋支持面123(123a,123b)とを備える。
【0023】
[巻回体収納箱の組立構成(
図2)]
図2は、
図1に示す巻回体収納箱1を展開した状態を示す図である。
図2を用いて、巻回体収納箱1の本体部11と蓋部12との構成について詳しく説明する。なお、
図2において、破線は、展開状態の巻回体収納箱1を組み立てる際の折り目を表す。
【0024】
図2に示すとおり、巻回体収納箱1は、一枚の板紙を各構成に切断し、折り畳みつつ接合することにより組み立てられる。まず、底面111と背面113の境界の折り目で180°折りつぶし、掩蓋面122と上面121の境界の折り目で折りつぶし、底面111と接着片126を接着し、扁平な筒状中間体に形成する。次に、筒状中間体の断面が略四角状となるよう開き、支持面114a及び114bの外側から、前面112の支持面114との接続パーツである片112a及び112bを、それぞれ支持面114a及び114bに対して貼着等により固定する。そのうえに、背面113の支持面114との接続パーツである片113a及び113bを、それぞれ支持面114a及び114b並びに前面112の片112a及び112bに対して貼着等により固定する。これにより、
図1(A)に示す本体部11の組立状態となる。
【0025】
ここで、前面112は板紙1枚で形成しても良いし、折り返して貼り合わせるなどして板紙2枚以上で形成しても良い。前面112の内面は、板紙の非コート面を露出させる、擬似エンボスニス等の各種ニス加工で凸凹を付与する、エンボス加工を施すなどして平滑度を低下させておくと、長尺物が巻き込まれるのをより抑制することができる。なお、組立方法は上記のサック貼り方式に限定されず、ラップアラウンド方式など既知の方法を用いることができる。
【0026】
蓋部12は、上面121に対して、掩蓋面122を境界となる折り目において垂直に折り曲げ、掩蓋面122の蓋支持面123との接続パーツである片122a及び122bを、それぞれ蓋支持面123a及び123bの内側に貼着等により固定する。さらに、掩蓋面122の下方に形成された底面111b(接着片)を、後述する第2のミシン目125bを境界として折り曲げて、底面111b(接着片)を底面111aに外側から貼着等により固定する。これにより、
図1(B)に示す巻回体収納箱1の組立状態となる。
【0027】
[本体部の構成]
続いて、本体部11について説明する。
図3(A)は、巻回体収納箱1の開封した状態を示す正面図である。
図1(A)及び
図3(A)に示すとおり、本体部11の前面112は、巻回体の巻回軸Xに沿って、中央側に形成された第一領域A1と、端部側に形成された第二領域A2と、さらに、第一領域A1のさらに中央に形成される第三領域A3とに分けられる。なお、巻回体の巻回軸Xは、巻回体収納箱1から巻回体に巻回された長尺物を引き出す際の長尺物の幅方向である。巻回軸Xの中央側とは、巻回体収納箱の巻回軸X方向の長さに対して中点に位置することを指すが、その位置は正確に中点であることを要せず、中点付近にあれば足りる。なお、第一領域A1の上端に板紙の断面が露出していると、長尺物との干渉をより低減できる。
【0028】
第二領域A2及び第三領域A3は、第一領域A1よりも前面112の高さが低く形成されている。すなわち、
図3(A)に示すとおり、第一領域A1の高さHAよりも、第二領域A2における高さHB及び第三領域A3における高さHCは、低く構成されている。第三領域A3が形成されることで、前面112の面の高さが最大となる位置を、収容される巻回体の巻回軸方向の中央以外とすることが可能である。
【0029】
なお、ここでいう高さとは、第一領域A1については、前面下端から、底面に対し垂直に測定したときに最も値が大きくなる長さをいい、第二領域A2及び第三領域A3については、前面下端から、底面に対し垂直に測定したときに最も値が小さくなる長さをいう。また、第一領域A1、第二領域A2、第三領域A3のいずれかに相当する領域がそれぞれ複数ある場合も想定されるが、このような場合には、巻回軸X方向の最も端部側に形成された領域を第二領域A2とし、それよりも中央側に形成された領域を第一領域A1又は第三領域A3とする。第一領域A1又は第三領域A3は、
図1に示す例では両端に第一領域A1が形成され、そのさらに中央に第三領域A3が形成されているが、本発明はこのような例に限られず、第一領域A1又は第三領域A3が、第二領域A2の間隙でそれぞれ複数交互に形成される場合も含まれる。
【0030】
より具体的な構成として、第二領域A2及び第三領域A3には、それぞれ円弧状に窪んだ凹部112c、凹部112dが形成されている。なお、この凹部112c及び112dの形状は製造効率等を考慮したうえでの一例を示すものであり、円弧状に窪ませた形状に限られず、第一領域A1よりも第二領域A2及び第三領域A3の高さが低く構成する限りにおいて、例えば角を丸めた略台形状または角を丸めた略四角形状で形成するなど、その具体的な形状は問わない。
【0031】
なお、第一領域A1における前面112の高さ、すなわち、前面112の面の高さが最大となり得る高さHAは、収容される巻回体の芯管の外径の30%以上100%以下であることが好ましい。
【0032】
また、第一領域A1は、長手方向における幅が、巻回体に巻回された長尺物の幅の20%以上90%以下であれば、長尺物を引き出した際に長尺物が前面112に巻き込まれるようなことがより生じにくくなる。
【0033】
また、第二領域Aは、巻回体収納箱1に巻回体を収納したときに巻回体の端部が相対する前面112上の領域を含むように、第二領域A2が形成されていると、長尺物を引き出した際に長尺物が前面112に巻き込まれるようなことがより生じにくくなる。
【0034】
また、第二領域A2は、長手方向における幅が、巻回体に巻回された長尺物の幅の5%以上40%以下であれば、長尺物を引き出した際に長尺物が前面112に巻き込まれるようなことがより生じにくくなる。
【0035】
また、前面112は、両端部である支持面114a及び114bの連結部において、その面の高さが、高さHBよりも高く構成される。すなわち、前面112の凹部112cは、上述のとおり円弧状に形成されており、第一領域A1から凹部112cへ窪んだのち、高さHBを最下位置とし、前面112a及び114bの接続位置に向かって面の高さが上昇する構成となっている。
【0036】
[本体部の作用効果]
以上の本体部11の構成によれば、巻回体に巻回され引き出される長尺物は、引出し時に前面112の上端部と干渉するところ、前面112の端部側の第二領域A2に、凹部112cが形成されることで、中央側に形成された第一領域A1よりも、端部側が低く構成される。そのため、長尺物幅方向端部における巻回体収納箱1の前面112との干渉が少ない。したがって、長尺物幅方向端部において、長尺物が前面に巻き込まれるようなことが生じにくく、長尺物の引出し易さを向上させた巻回体収納箱1を提供できる。
【0037】
また、前面112の高さは、最大高さが、巻回体の芯管の外径の30%以上100%以下であるので、全体として長尺物の引出し易さを確保し得るとともに、第二領域A2においてはさらに長尺物との干渉を抑えることが可能である。さらに、長尺物引き出し時の巻回体の飛び出しを抑制することができ、かつ長尺物を切断する際、長尺物を掩蓋面の下端と前面とにより挟みやすくなり、長尺物が巻き戻りしづらくなるとともに、刃による長尺物の切断を確実に行うことができるようになる。
【0038】
また、第一領域A1を円弧状としたことで、引き出した長尺物と干渉した際に長尺物にシワがよりにくく、長尺物の切りやすさや切断後の長尺物の美観性に優れる。なお、第一領域A1を、角を丸めた略台形状または角を丸めた略四角形状に形成した場合でも同様の効果が期待できる。
【0039】
また、前面112の面の高さが最大となる位置は、収容される巻回体の巻回軸方向の中央以外であり、具体的には、巻回体の巻回軸方向中央に、第一領域よりも面の高さが低い第三領域A3が形成されている。これによれば、長尺物の幅方向中央は引張力が最もかかる箇所であるとともに、本体部11の前面112においては、巻回体の端部から幅方向で最も離れている箇所であるから、この部分において長尺物と干渉すると、前面が長尺物の引出し方向側にせり出す。このとき前面112の中央側におけるせり出しが、蓋部12の面よりも大きくなると、蓋部12が閉状態とならなくなる。そこで、第一領域A1の高さHAが最大となる位置を、巻回体の巻回軸方向の中央以外とすることで、上記の不都合を解消することができる。なお、上述したとおり、第一領域A1の高さHAが最大となる位置の個数、言い換えれば第一領域A1が巻回軸方向に沿って、いくつ形成されるかについては特に限定されるものではないが、第一領域A1の高さHAが最大となる位置の個数が少ないほど長尺物を引き出す際の摩擦が軽減され、引き出しやすくなる。
【0040】
また、前面112は、第一領域A1から凹部112cへ窪んだのち、高さHBを最下位置とし、前面112a及び114bの接続位置に向かって面の高さが上昇する構成としたことで、両端部である支持面114a及び114bの連結部において、面の高さを、高さHBよりも高くした。これにより、前面112と、支持面114a及び114bとの接続面積を増加させること、より具体的には、片112a及び112b(
図2参照)の面積を増加させることができるので、前面112と支持面114との接続強度を高めることができる。
【0041】
以上の本実施形態の巻回体収納箱によれば、長尺物の引出し時に、巻回体収納箱1の前面と干渉が少なく、長尺物の引出し易さを向上させることが可能になる。
【0042】
[蓋部の構成]
続いて、蓋部12について説明する。蓋部12は、
図1(A)に示すとおり、前面112の少なくとも一部を覆う掩蓋面122を備え、この掩蓋面122の下縁には、切断刃124が設けられている。そして、
図4に示すとおり、蓋部12が本体部11を塞いだ状態において、切断刃124の下端位置は、前面112の下端から巻回体収納箱1の高さの25%以内に構成される。すなわち、
図4に図示する符号を用いて説明すると、切断刃124の下端から前面112の下端までの長さHDは、前面112の下端から巻回体収納箱1の高さHの4分の1以下に構成されている。
【0043】
具体的な構成として、蓋部12には、
図1(B)、
図2乃至
図4に示すとおり、本体部11と固定片125が連設され、さらにこの固定片125には接着片126が連設され、この接着片126が、本体部11の底面111と接合されている。
【0044】
固定片125は、
図2に示すとおり、一端を掩蓋面122の下端と、他端を上述した接着片126の側端部と、それぞれ接続されている。そして、固定片125と、掩蓋面122及び接着片126とは、線状に示した連続した穴から構成される第一のミシン目125aと第二のミシン目125bとが形成され、
図1(B)及び
図3(B)に矢印でPとして示すとおり、箱の右側端部から矢印方向(これを「剥離進行方向」という。)に向かって剥離可能に構成されている。
【0045】
図4に示すとおり、巻回体収納箱1の組立状態においては、掩蓋面122と、固定片125とは、前面112上に位置し、接着片126は、底面111上に形成されている。すなわち、固定片125と、接着片126とは、第二のミシン目125bで屈曲し、接着片126は、例えば接着層Bにより底面111に接合されている。
【0046】
次に、
図5を用いて、固定片125と、掩蓋面122及び接着片126との境界に形成される第一のミシン目125a及び第二のミシン目125bについて説明する。
【0047】
図5は、第一のミシン目125aと第二のミシン目125bを拡大して示す図である。同図に示すとおり、第一のミシン目125aと、第二のミシン目125bとは、それぞれ、固定片125の長手方向に沿って複数の穴125c及び穴125dが連続して構成されており、それぞれ、固定片125の長手方向に沿って形成される線状の外穴125ca、125daと、外穴125ca、125daから固定片125の内側に向かって延びる内穴125cb、125cc及び126dcからなる。
【0048】
より具体的には、第一のミシン目125aの穴125cは、固定片125の長手方向に沿って形成された線状の外穴125caと、外穴125caの一端から剥離進行方向Pと逆の方向に向かって、固定片125の中心側に傾斜して延びる線状の内穴125cbとを有し、この内穴125cbの外穴125caに対する傾斜角度Qは10°以上50°以下で構成される。
【0049】
また、穴125cは、外穴125caの他端から剥離進行方向Pへ向かって、固定片125の中心側に傾斜して延びる線状の内穴125ccを有し、この内穴125ccの傾斜角度Rは、外穴125caに対し10°以上80°以下で構成される。
【0050】
さらに、第一のミシン目125a及び第二のミシン目125bを構成する複数の穴125c及び穴125dは、
図5に2本の一点鎖線でその重なり具合を示すとおり、各穴125c及び穴125dの一端側Sが、隣接する他の穴125c及び穴125dの他端側Tと、剥離進行方向Pの同一線上以外で重なるように構成されている。
【0051】
また、第一のミシン目125aにおける穴125c同士の間隙の総距離の総和は、第二のミシン目125bにおける穴125d同士の間隙の総距離の総和以上であることが好ましい。穴125c同士の間隙の総距離の総和とは、あるひとつの穴125cの外穴125caからそれに隣接するもうひとつの穴125cの外穴125caの距離Mを固定片125の全長にわたって全て足し合わせたときの距離を指し、穴125d同士の間隙の総距離の総和とは、あるひとつの穴125dの外穴125daからそれに隣接するもうひとつの穴125dの外穴125daの距離Lを固定片125の全長にわたって全て足し合わせたときの距離を指す。
【0052】
なお、上で示した第一のミシン目125a及び第二のミシン目125bの形状はあくまで例示であり、外穴に対して内穴だけでなく、
図6(A)~(C)に第一のミシン目125aを複数例示するとおり、さらに固定片125の外側に向かって分岐する穴を備えている場合も本発明は含み得る。また、上記の例において内穴は直線状に表しているが、上で示した内穴の角度などを充足する限りは、内穴が例えば湾曲して構成されるような場合も含み得る。
【0053】
[蓋部の作用効果]
以上の蓋部12の構成によれば、切断刃124の下端位置を前面112の下端から収納箱1の高さの25%以内とすることで、掩蓋面122の長さを長くすることが可能になる。これにより、長尺物の切断後の長さを十分に取ることができるので、長尺物の巻き戻しを低減できる。また、掩蓋面122の面積を十分に確保でき、切断時に長尺物を確実に保持することができる。
【0054】
また、底面111に接着片126を固定したことで、接着片126を前面112に固定した従来の場合に比べて、前面112を覆う掩蓋面122の面積を増加させることができる。これにより、切断刃124の下端位置を前面112上の低い位置に形成することが可能になる。これにより、長尺物の引出し長さが十分に取ることができるので、長尺物の巻き戻しを低減できる。また、掩蓋面122の面積を十分に確保でき、切断時に長尺物を確実に保持することができる。
【0055】
また、第一のミシン目125aにおける穴125c同士の間隙の総距離の総和が、第二のミシン目125bにおける穴125d同士の間隙の総距離の総和以上とすることで、第二のミシン目の方で板紙が折れやすくなり、収納箱の形が整いやすい。
【0056】
また、第一のミシン目125a及び第二のミシン目125cに連続した穴の一端と他端とを剥離進行方向Pの同一線上以外で重ねたことで、固定片125を剥離する際に、固定片125がその進行方向中途で切断されてしまうことを防ぐことができる。
【0057】
さらに、第一のミシン目125aにおける外穴125caに対する内穴125cbの角度Qを10°以上とすることで、隣接する外穴と内穴との間隙を十分に保つことができ、固定片が例えば輸送中の振動等により不意に剥離されることを抑制できるとともに、固定片を小さく形成しても十分な強度を保つことができ、50°以下とすることで、固定片がその進行方向中途で切断されてしまうことを防ぐことができる。20°以上40°以下であればより好ましい。また、第一のミシン目125aにおける外穴125caに対する内穴125ccの角度Rを10°以上とすることで、固定片を剥離する際に、掩蓋片の表層まで剥がれてしまうことを抑制でき、固定片剥離後の収納箱の強度や耐水性、美観性を維持することが出来、80°以下とすることで、剥離後の掩蓋面の下端が切断刃の下端よりも下に位置して長尺物のカット性を阻害するようなことが起こりにくく、かつ固定片125がその進行方向中途で切断されてしまうことを防ぐことができる。
【0058】
以上の本実施形態によれば、長尺物の巻き戻しを低減するとともに、切断時に長尺物を確実に保持することができる。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…巻回体収納箱、11…本体部、111,111a,111b…底面、112…前面、112a,112b…片、112c,112d…凹部、113…背面、113a,113b…片、114,114a,114b…支持面、12…蓋部、121…上面、122…掩蓋面、122a,122b…片、123,123a,123b…蓋支持面、124…切断刃、125…固定片、125a…第一のミシン目,125b…第二のミシン目、125c,125d…穴、125ca,125da…外穴、125cb,125cc,125db…内穴、126…接着片、A1…第一領域、A2…第二領域、A3…第三領域、B…接着層、P…剥離進行方向、S…一端側、T…他端側、X…巻回軸