(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】既設管状体の更生方法及び更生構造
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20230608BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
(21)【出願番号】P 2019136674
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508100055
【氏名又は名称】日本ノーディッグテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 真
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠臣
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-240969(JP,A)
【文献】特開2003-314197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/32
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管状体を更生する方法であって、
鉄筋と該鉄筋の
延び方向の端部に設けられたプレートとを含む鉄筋モジュールを複数用意して、前記複数の鉄筋モジュールを前記既設管状体の内壁に沿って並べるとともに、
前記延び方向に隣接する鉄筋モジュールのプレートどうしを連結することによって鉄筋組立体を構築し、
前記鉄筋組立体を挟んで前記内壁とは反対側に更生管を設置し、
前記内壁と前記更生管との間に、前記鉄筋組立体を埋めるように裏込め材を充填
し、
前記鉄筋モジュールにおける前記プレートが、前記鉄筋との接合部よりも前記鉄筋モジュールの前記延び方向と直交する幅方向の外側へ突出された部分を有し、
前記構築する工程では、前記鉄筋モジュールの前記幅方向及び前記延び方向を前記内壁に沿わせ、前記隣接する鉄筋モジュールのプレートにおける前記外側へ突出された部分どうしを、長さ方向を前記接合部における前記延び方向へ向けたボルトによって連結することを特徴とする既設管状体の更生方法。
【請求項2】
前記鉄筋モジュールとして、互いに平行をな
して前記幅方向へ並べられた複数の鉄筋を含み、前記プレートが、これら鉄筋の互いに同じ側の端部に跨っているモジュールを用い
、前記プレートにおける、前記複数の鉄筋のうち最も前記幅方向の外側に配置された鉄筋との接合部よりも前記幅方向の外側へ突出された部分を、隣接する鉄筋モジュールのプレートと前記ボルトによって連結することを特徴とする請求項1に記載の更生方法。
【請求項3】
前記各鉄筋モジュールの
前記延び方向を前記既設管状体の周方向へ向け、
前記周方向に隣接する鉄筋モジュールの対向するプレートどうしを突き当て連結することを特徴とする請求項1又は2に記載の更生方法。
【請求項4】
前記鉄筋モジュールとして、鉄筋とプレートとが溶接されたモジュールを用いることを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載の更生方法。
【請求項5】
前記プレートを前記内壁に当接し、前記鉄筋を前記内壁から離間させて配置することを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の更生方法。
【請求項6】
帯状部材を前記プレートに当接又は近接させながら前記内壁に沿って螺旋状に巻回することによって前記更生管となる螺旋管を作製することを特徴とする請求項1~
5の何れか1項に記載の更生方法。
【請求項7】
既設管状体を更生してなる更生構造であって、
既設管状体の内壁に沿って並べられた複数の鉄筋モジュールを含む鉄筋組立体と、
前記鉄筋組立体を挟んで前記内壁とは反対側に設けられた更生管と、
前記内壁と前記更生管との間に、前記鉄筋組立体を埋めるように充填された裏込め材と、
を備え、前記各鉄筋モジュールが、鉄筋と該鉄筋の
延び方向の端部に設けられたプレートとを含み、
前記延び方向に隣接する鉄筋モジュールのプレートどうしが連結されて
おり、
前記鉄筋モジュールにおける前記プレートが、前記鉄筋との接合部よりも前記鉄筋モジュールの前記延び方向と直交する幅方向の外側へ突出された部分を有し、
前記鉄筋モジュールの前記幅方向及び前記延び方向が前記内壁に沿わされ、前記隣接する鉄筋モジュールのプレートにおける前記外側へ突出された部分どうしが、長さ方向を前記接合部における前記鉄筋の延び方向へ向けたボルトによって連結されていることを特徴とする既設管状体の更生構造。
【請求項8】
前記鉄筋モジュールが、互いに平行をな
して前記幅方向へ並べられた複数の鉄筋を含み、前記プレートが、これら鉄筋の互いに同じ側の端部に跨って
おり、前記プレートにおける、前記複数の鉄筋のうち最も前記幅方向の外側に配置された鉄筋との接合部よりも前記幅方向の外側へ突出された部分どうしが、前記ボルトによって連結されていることを特徴とする請求項
7に記載の更生構造。
【請求項9】
前記鉄筋モジュールの
前記延び方向が、前記既設管状体の周方向へ向けられ、前記周方向に隣接する鉄筋モジュールの対向するプレートどうしが突き当てられて連結されていることを特徴とする請求項
7又は
8に記載の更生構造。
【請求項10】
前記鉄筋モジュールの鉄筋とプレートとが溶接されていることを特徴とする請求項
7~
9の何れか1項に記載の更生構造。
【請求項11】
前記プレートが前記内壁に当接され、前記鉄筋が前記内壁から離間されていることを特徴とする請求項
7~
10の何れか1項に記載の更生構造。
【請求項12】
前記更生管が、前記プレートに当接又は近接するようにして前記内壁に沿って螺旋状に巻回された帯状部材からなる螺旋管であることを特徴とする請求項
7~
11の何れか1項に記載の更生構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道管やトンネルなどの既設管状体を更生する方法及び前記既設管状体を更生してなる構造に関し、特に更生管、鉄筋及び裏込め材による更生方法及び更生構造に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管などの既設管の内壁に沿って更生管をライニングすることによって前記既設管を更生する方法は公知である(特許文献1、2等参照)。更生管は、例えば帯状部材を螺旋状に巻回してなる螺旋管によって構成されている。既設管の内壁と更生管との間にはモルタルなどの裏込め材が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-183752号公報
【文献】特開平10-166444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設管の残存強度が不足していたり、大きな荷重に耐えられるようにする必要があったりする場合、大幅な強度向上のために、更生管と既設管との間に鉄筋モルタルを構築することが提案されている。この場合、更生管及びモルタルの施工に先立って、異形鉄筋などの鉄筋を既設管の内壁に沿って配筋しておく。詳しくは、既設管の管軸方向の一定間隔置きに、複数の鉄筋を既設管の周方向に沿って環状に並べて配置する。そして、周方向に隣接する鉄筋の端部どうしを各々の鉄筋径の例えば40倍程度の長さだけオーバーラップするように重ねる。つまり重ね継手を形成する。
【0005】
要求強度によっては、更に鉄筋径を太径にしたり2本の鉄筋を近接させて2本1組で配筋したりする必要もある。しかし、太径の鉄筋は重ね継手を形成するのが容易でない。2本1組で配筋する場合は鉄筋どうしの位置決めないしは間隔調整が難しい。このため、配筋の作業効率が著しく低下する。
本発明は、かかる事情に鑑み、老朽化した下水道管やトンネルなどの既設管状体を更生管、鉄筋及び裏込め材(モルタル等)によって更生して強度向上を図るとともに、前記鉄筋の配筋作業を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明方法は、既設管状体を更生する方法であって、
鉄筋と該鉄筋の端部に設けられたプレートとを含む鉄筋モジュールを複数用意して、前記複数の鉄筋モジュールを前記既設管状体の内壁に沿って並べるとともに、隣接する鉄筋モジュールのプレートどうしを連結することによって鉄筋組立体を構築し、
前記鉄筋組立体を挟んで前記内壁とは反対側に更生管を設置し、
前記内壁と前記更生管との間に、前記鉄筋組立体を埋めるように裏込め材を充填することを特徴とする。
本発明構造は、既設管状体を更生してなる更生構造であって、
既設管状体の内壁に沿って並べられた複数の鉄筋モジュールを含む鉄筋組立体と、
前記鉄筋組立体を挟んで前記内壁とは反対側に設けられた更生管と、
前記内壁と前記更生管との間に、前記鉄筋組立体を埋めるように充填された裏込め材と、を備え、前記各鉄筋モジュールが、鉄筋と該鉄筋の端部に設けられたプレートとを含み、隣接する鉄筋モジュールのプレートどうしが連結されていることを特徴とする。
当該特徴構成によれば、隣接する鉄筋モジュールの鉄筋どうしをプレートを介して容易に連結できる。ひいては、鉄筋組立体を簡易かつ効率的に構築できる。重ね継手を形成する必要が無い。したがって、鉄筋径を大きくしても、鉄筋どうしの連結作業に影響することがない。鉄筋径を大きくすることによって、更生後の既設管状体の強度が向上する。更に、プレートのアンカー効果によって、所要強度を十分に発現できる。
【0007】
前記鉄筋モジュールが、互いに平行をなす複数の鉄筋を含むことが好ましい。前記プレートが、これら鉄筋の互いに同じ側の端部に跨っていることが好ましい。前記更生方法において、前記鉄筋モジュールとして、互いに平行をなす複数の鉄筋を含み、前記プレートが、これら鉄筋の互いに同じ側の端部に跨っているモジュールを用いることが好ましい。
複数の鉄筋がモジュールとなっているために、これら複数の鉄筋を一体的に配筋できる。さらに隣接する鉄筋モジュールの複数の鉄筋どうしを一度に連結できる。したがって、鉄筋の配筋作業を一層効率的に行うことができる。
【0008】
前記更生方法において、前記各鉄筋モジュールの鉄筋の延び方向を前記既設管状体の周方向へ向け、前記周方向に隣接する鉄筋モジュールの対向するプレートどうしを突き当て連結することが好ましい。前記更生構造において、前記鉄筋モジュールの鉄筋の延び方向が、前記既設管状体の周方向へ向けられ、前記周方向に隣接する鉄筋モジュールの対向するプレートどうしが突き当てられて連結されていることが好ましい。
これによって、鉄筋モジュールひいては鉄筋を既設管状体の周方向に沿って環状に簡単に連結することができる。
【0009】
前記更生方法において、前記隣接する鉄筋モジュールのプレートどうしをボルトによって連結することが好ましい。前記更生構造において、前記隣接する鉄筋モジュールのプレートどうしがボルトによって連結されていることが好ましい。
これによって、連結作業を簡単に行うことができる。更生施工現場での溶接作業が不要となる。
【0010】
前記更生方法において、前記鉄筋モジュールとして、鉄筋とプレートとが溶接されたモジュールを用いることが好ましい。前記更生構造において、前記鉄筋モジュールの鉄筋とプレートとは溶接されていることが好ましい。鉄筋モジュールは工場で製造して現場へ搬入することが好ましい。
【0011】
前記更生方法において、前記プレートを前記内壁に当接し、前記鉄筋を前記内壁から離間させて配置することが好ましい。前記更生構造において、前記プレートが前記内壁に当接され、前記鉄筋が前記内壁から離間されていることが好ましい。
これによって、鉄筋と既設管内壁との間の裏込め材のかぶり厚さを適切に設定できる。
【0012】
前記更生方法において、帯状部材を前記プレートに当接又は近接させながら前記内壁に沿って螺旋状に巻回することによって前記更生管となる螺旋管を作製することが好ましい。前記更生構造において、前記更生管が、前記プレートに当接又は近接するようにして前記内壁に沿って螺旋状に巻回された帯状部材からなる螺旋管であることが好ましい。
プレートをガイドにすることで、更生管を適切な形状及び大きさに製管できる。かつ鉄筋と更生管との間の裏込め材のかぶり厚さを適切に設定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、老朽化した下水道管やトンネルなどの既設管状体を更生管、鉄筋及び裏込め材によって更生して強度向上を図ることができる。かつ鉄筋の配筋作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る更生済の既設管状体(既設管状体更生構造)を示す側面断面図である。
【
図3】
図3は、前記既設管状体更生構造における鉄筋モジュールの斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3に示す鉄筋モジュールの一端のプレートの平面図である。
図4(b)は、前記プレートの変形態様を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図2に現れた鉄筋組立体の変形態様を示す正面断面図である。
【
図6】
図6は、前記既設管状体を鉄筋組立体の構築後、更生管の設置前の状態で示す側面断面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態に係る更生済の既設管状体すなわち既設管状体更生構造を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図8)>
図1及び
図2は、更生済の既設管状体1(既設管状体更生構造)を示したものである。更生対象の既設管状体1は、例えば地中の老朽化した下水道管である。なお、既設管状体は、下水道管に限られず、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管などの既設管の他、既設のトンネルであってもよい。
図2において既設管状体1の断面は、真円形断面であるが、これに限らず、楕円、卵形その他の変形円形断面でもよく、方形その他の多角形断面でもよく、馬蹄形その他の異形断面であってもよい。
【0016】
老朽化した既設管状体1の内壁1bに沿って更生管3がライニングされている。更生管3は、帯状部材3aを螺旋状に巻回してなる螺旋管である。詳細な図示は省略するが、帯状部材3aは、一定の断面形状の合成樹脂によって形成されている(前掲特許文献1,2等参照)。さらに帯状部材3aがスチール製の補強帯材を有していてもよい。
【0017】
既設管状体1の内壁1bと更生管3との間には、鉄筋モルタル2が設けられている。要するに、鉄筋組立体5を挟んで内壁1bとは反対側に更生管3が設けられている。
【0018】
鉄筋モルタル2は、鉄筋組立体5と、モルタル6(裏込め材)を含む。内壁1bと更生管3との間における鉄筋組立体5のまわりのスペースにモルタル6が充填されている。モルタル6中に鉄筋組立体5が埋まっている。
【0019】
鉄筋組立体5は、複数の鉄筋モジュール10を含む。
図3に示すように、各鉄筋モジュール10は、主筋となる2つ(複数)の鉄筋11と、2つ(複数)のプレート12を含む。鉄筋11は、表面にリブ状又はフシ状の凹凸がある異形鉄筋であってもよく、そのような凹凸が無い丸鋼であってもよい。
図2に示すように、鉄筋11ひいては鉄筋モジュール10の延び方向は、既設管状体1の周方向へ向けられている。各鉄筋モジュール10の2つの鉄筋11は、既設管状体1の管軸方向(
図2において紙面直交方向)に並んで配置されている。好ましくは、鉄筋11は、既設管状体1の内壁1bの周方向の曲がりに合わせて曲げられている。
【0020】
図3に示すように、鉄筋11の両端部にそれぞれプレート12が設けられている。プレート12は、鋼材などの金属によって構成されている。プレート12の面積は、2つの鉄筋11の合計断面積より大きい。さらにプレート12の面積は、「鉄筋モジュール10が担う断面力(好ましくは軸力)」÷「モルタル6の支圧強度」より大きい。
各プレート12が、2つの鉄筋11の互いに同じ側の端部に跨っている。各鉄筋11の端部とプレート12とが溶接されている。プレート12を介して2つの鉄筋11が連結されている。
【0021】
図2及び
図6に示すように、複数の鉄筋モジュール10が、既設管状体1の内壁1bの周方向及び管軸方向に沿って並べられている。前記管軸方向の一定間隔置きの各位置において、所定数(複数)の鉄筋モジュール10が、既設管状体1の周方向に環状に並べられている。これら所定数の鉄筋モジュール10によってモジュール環状体19が構成されている。見方を変えると、モジュール環状体19が、周方向に所定数の鉄筋モジュール10に分割されている。
なお、
図6等における鉄筋11の太さは誇張されている。
モジュール環状体19を構成する鉄筋モジュール10の数すなわちモジュール環状体19の分割数は、既設管状体1の断面積などによって適宜設定される。
図2においては、分割数は4つであるが、
図5に示すように、より大断面の既設管状体1の場合は、分割数が6つでもよい。さらに図示は省略するが、分割数は2つ又は3つでもよく、5つでもよく、7つ以上でもよい。
【0022】
図7に示すように、モジュール環状体19の周方向(
図7において上下)に隣接する2つの鉄筋モジュール10において、対向するプレート12どうしが突き当てられている。これらプレート12どうしが、ボルト13及びナット14によって連結されている。
図3及び
図4に示すように、プレート12には、ボルト13のための挿通孔12bが形成されている。プレート12における挿通孔12bの数ひいてはプレート12どうしを連結するボルト13の数は、2つでもよく、4つでもよい。
図3及び
図4(a)に示すように、2つの挿通孔12bは、好ましくは長方形のプレート12の長手方向の両側部に配置される。
図4(b)に示すように、4つの挿通孔12bは、好ましくはプレート12の四隅に配置される。
【0023】
図8に示すように、プレート12の外周側縁部12dは、内壁1bに当接されている。鉄筋11から外周側縁部12dまでの距離だけ、鉄筋11が内壁1bから離間されている。
プレート12の内周側縁部12eは、更生管3と当接又は近接されている。少なくとも鉄筋11から内周側縁部12eまでの距離だけ、鉄筋11が更生管3から離間されている。
【0024】
図6に示すように、複数のモジュール環状体19が、既設管状体1の管軸方向(
図6において左右方向)に互いに間隔をおいて並べられている。さらに、配力筋15が管軸方向に延びるように配筋されている。
これら複数のモジュール環状体19ひいては複数の鉄筋モジュール10及び配力筋15によって、内壁1bの周方向及び管軸方向に沿う鉄筋組立体5が構成されている。
【0025】
既設管状体1は次のようにして更生される。
<鉄筋モジュール10の用意>
鉄筋11とプレート12を用意して、工場において、鉄筋11の端部にプレート12を溶接して鉄筋モジュール10を作製する。
前記鉄筋モジュール10を更生施工現場へ搬送し、マンホール4から既設管状体1の内部に搬入する。鉄筋11は重ね継手のための定着長が不要な分だけ短くて済む。それだけ、鉄筋モジュール10の長さを短くでき、狭所であっても鉄筋モジュール10を容易に搬入できる。
【0026】
<鉄筋組立体5の構築>
既設管状体1の管軸方向(
図6において左右方向)の一定間隔置きの各位置において、所定数(複数)の鉄筋モジュール10を既設管状体1の内壁1bの周方向に環状に並べて設置する。
図示は省略するが、好ましくは、前もって内壁1bにアンカーを設置しておく。そして、モジュール環状体19のうち、少なくとも最初に設置する鉄筋モジュール10を前記アンカーを介して内壁1bに固定する。2番目以降に設置する鉄筋モジュール10は、先に設置した鉄筋モジュール10を介して内壁1bに固定でき、必ずしもアンカーは必要でない。
ちなみに重ね継手方式の場合、鉄筋ごとにアンカーを設置しなければならない。
【0027】
各鉄筋モジュール10の鉄筋11の長手方向を前記周方向へ向ける。2本の平行な鉄筋11がモジュールとなっているために、これら2本の鉄筋11を一体的に配筋できる。プレート12が、これら2本の鉄筋11の間隔を保持するスペーサの役割を担う。更生施工現場で2本の鉄筋11どうしの位置決めないしは間隔調整作業を行う必要は無い。
【0028】
好ましくは、プレート12の外周側縁部12dを内壁1bに宛がう。これによって、鉄筋11から外周側縁部12dまでの距離だけ、鉄筋11が内壁1bから離間される。鉄筋11と内壁1bとの離間距離を正確かつ容易に確保できる。
【0029】
さらに、周方向に隣接する鉄筋モジュール10の対向するプレート12どうしを突き当て、ボルト13及びナット14によって連結する。これによって、周方向に隣接する鉄筋11どうしを、プレート12を介して簡単に連結できる。鉄筋連結のために、資格の必要な溶接作業は不要である。しかも、隣接する鉄筋モジュール10の2列(複数列)の鉄筋11どうしを一度に連結できる。重ね継手を形成する必要が無く、鉄筋11が太径であっても2本1組になっていても、容易に連結できる。これによって、既設管状体1内における配筋作業を大幅に省力化できる。
所定数の鉄筋モジュール10を互いに環状に連結することによって、モジュール環状体19が構成される。
かかるモジュール環状体19を既設管状体1の管軸方向に所定間隔置きに設置する。これによって、既設管状体1の内壁1bに沿う鉄筋組立体5を簡易かつ効率的に構築できる。
【0030】
<更生管3の構築>
続いて、鉄筋組立体5の内側、すなわち鉄筋組立体5を挟んで内壁1bとは反対側に更生管3を設置する。更生管3の構築には、例えば自走しながら後方に製管していく自走式の製管機(前掲特許文献1,2参照)を用いる。該製管機によって、帯状部材3bを鉄筋組立体5ひいては内壁1bに沿って螺旋状に巻回するとともに、該螺旋状の帯状部材3bの一周違いに対向する縁どうしを接合することによって、螺旋管状の更生管3を作製する。このとき、好ましくは帯状部材3bをプレート12に当接又は近接させながら巻回する。プレート12をガイドにすることで、更生管3の製管径及び断面形状を安定させることができる。加えて、少なくとも鉄筋11からプレート12の内周側縁部12eまでの距離だけ、鉄筋11が更生管3から離間されることになり、鉄筋11と更生管3との離間距離を正確かつ容易に確保できる。
【0031】
<モルタル6の充填>
続いて、更生管3の内部にモルタル注入時の変形防止のための支保工(図示せず)を設置する。そして、既設管状体1の内壁1bと更生管3との間における鉄筋組立体5を除く空間部にモルタル6を注入して充填する。該モルタル6中に鉄筋組立体5が埋まり、鉄筋モルタル2が形成される。
プレート12によって、鉄筋11と内壁1bとの間のモルタル6のかぶり厚さを適切に確保でき、かつ鉄筋11と更生管3との間のモルタル6のかぶり厚さを適切に確保できる。
その後、支保工を撤去する。
このようにして更生された既設管状体1においては、内壁1bに沿って更生管3がライニングされるだけでなく、内壁1bと更生管3との間に鉄筋モルタル2が設けられているために、強度を大幅に向上させることができる。既設管状体1の残存強度が不足していたり大きな荷重に耐えられるようにする必要があったりしても、十分な強度アップを図ることができる。さらに重ね継手を形成する必要がないから、鉄筋径を十分に大きくでき、強度を一層向上させることができる。
モルタル6に埋まったプレート12は、鉄筋11をモルタル6内に定着させるアンカーの役割を担う。これによって、鉄筋11が異形棒鋼の場合に限らず、丸鋼の場合であっても、所要の引張強度を発現できる(実施例2参照)。さらに、プレート12は鉄筋11に対して直交しているため、せん断力に対する補強効果をも見込める。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図9に示すように、第2実施形態における既設管状体1Bは、逆さU字状のアーチ部1aと、中央部が緩やかに凹む底部1dとを有する非真円の円形断面になっている。
【0033】
第2実施形態においては、鉄筋モジュール10Bの2本(複数)の鉄筋11,11が、既設管状体1Bの内外方向(径方向)に並んでいる。アーチ部1a側の鉄筋モジュール10Baにおける鉄筋11どうしの間隔は相対的に狭く、底部1d側の鉄筋モジュール10Bdにおける鉄筋11どうしの間隔は相対的に広い。
各鉄筋モジュール10Bひいてはモジュール環状体19が、周方向に間隔を置いて配置された複数の位置決め金具16によって既設管状体1Bに対して位置決めされている。
【0034】
アーチ部1aと底部1dとが交わるコーナー部1cにおいては、鉄筋モジュール10Ba,10Bdのプレート12Cどうしが突き当てられて連結されている。該コーナー1cのプレート12Cは、鉄筋11ごとに設けられている。前記内外方向における外側の鉄筋11Aのプレート12Cに対して、内側の鉄筋11Bのプレート12Cが、例えばアーチ部1a側にずれている。コーナー部1cにおいては、各鉄筋モジュール10Bの鉄筋11ごとにプレート12Cを設けることによって、鉄筋11どうしの長さのばらつきを吸収しやすくなる。また、各鉄筋11の長さを厳密に調整しなくて済む。
なお、鉄筋11ごとのプレート12Cどうしが、溶接などで接合されていてもよい。コーナー部1cにおいても、各鉄筋モジュール10Bの2つ(複数)の鉄筋11の端部どうしが1枚のプレートで連結されていてもよい。
【0035】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、各鉄筋モジュールの鉄筋11の数は、2つに限らず、1つだけでもよく、3つ以上でもよい。
第1実施形態(
図2~
図5)の各鉄筋モジュール10の鉄筋11どうしが既設管状体1の内外方向(径方向)に並んでいてもよい。第2実施形態(
図9)の各鉄筋モジュール10Bの鉄筋11どうしが既設管状体1の管軸方向(
図9の紙面と直交する方向)に並んでいてもよい。
鉄筋モジュールの鉄筋の延び方向が既設管状体の管軸方向へ向けられていてもよい。
更生管3の製管機は、自走式に限らず、製管しながら前方へ押し出す元押し式や、前方側から牽引する牽引式であってもよい。
螺旋状に巻回された帯状部材3aの一周違いに対向する縁どうしを、連結帯材(ジョイナー)を介して接合してもよい。
更生管3は、螺旋管に限らず、例えば温度に応じて形状記憶性を有する合成樹脂チューブによって構成されていてもよい。
更生施工現場で鉄筋とプレートを溶接して鉄筋モジュールを作製してもよい。
【実施例1】
【0036】
実施例を説明する。本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1では、裏込め材の圧縮強度を調べた。裏込め材として、SPRモルタル4号を用い、粉体75重量部、水13.5重量部の割合で練り混ぜ、直径50mm程度、高さ100mm程度(正確には表1)の円柱形状の試験体を3つ作製した。成型後、温度20±2℃の試験室内においてビニールシートにより覆って静置した。材齢2日で脱型を行い、材齢7日(試験日)まで同環境で封緘養生した。
圧縮強度試験は、株式会社前川試験製作所製500kN万能試験機を用い、JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)に準じて行った。試験体の端面は研磨によって仕上げた。該試験体を高さ方向に圧縮し、破壊時の最大荷重及び圧縮強度を測定した。
結果を表1に示す。圧縮強度は平均で63.0N/mm2であった。
【0037】
【実施例2】
【0038】
実施例2では、鉄筋モルタル2を模した試験体を3つ作製し、それぞれ定着強度を調べた。各試験体の鉄筋モジュールとして、一端面にプレートが溶接された長い丸鋼と、一端面にプレートが溶接された短い丸鋼とを用意した。
長い丸鋼の寸法は、直径36.0mm、長さ651.0mmであった。
短い丸鋼の寸法は、直径36.0mm、長さ111.0mmであった。
両丸鋼のプレートの寸法は、何れも、長辺135.0mm、短辺75.0mm、厚さ19.0mmであった。
これら丸鋼のプレートどうしを突き当て、2本のM12ボルトによって接合し、鉄筋モジュールを得た。
鉄筋モジュール全体の長さは、800.0mmであった。
該鉄筋モジュールを型枠にセットした。型枠内のキャビティは、250mm×250mm×250mmの直方体であった。該キャビティの中央部にプレートを位置させ、短い丸鋼を5mmだけキャビティの外部へ突出させてこれを自由端とし、かつ長い丸鋼を型枠の反対側へ延出させてこれを載荷端とした。
また、キャビティには鉄筋モジュールを囲むように螺旋筋を設けた。螺旋筋は、鉄筋断面直径6mm、ピッチ50mm、螺旋直径200mmであった。
裏込め材として、SPRモルタル4号を用い、粉体75重量部、水13.5重量部の割合で練り混ぜ、前記型枠に流し込んだ。成型後、温度20±2℃の試験室内においてビニールシートにより覆って静置した。材齢2日で脱型を行い、材齢7日(試験日)まで同環境で封緘養生し、直方体の硬化モルタルを得た。
定着強度試験は、株式会社前川試験製作所製500kN万能試験機を用い、JSCE-G 503に準じて行った。
試験体における硬化モルタルを載荷板に載せ、それを球座の上に載せた。硬化モルタルから突出された前記載荷端を下へ向けて、載荷板の中央部及び球座の中央部にそれぞれ形成された直径82mmの孔に載荷端を通した。これによって、試験体に偏心荷重が加わらないようにしながら、載荷端に対して下方へ引張荷重を載荷し、降伏荷重(降伏した場合)及び最大荷重などを測定した。同時に、前記自由端の変位量(すべり量)をデジタルひずみ測定器を用いて測定し、荷重との関係を記録した。変位量の測定間隔は0.005mmとし、測定値と測定値の間は計算で補間した。
【0039】
降伏荷重、最大荷重、設計荷重(257kN) 時の変位量、及び破壊状況等を表2に示す。破壊状況は目視観察した。なお、変位量0.002D(=0.072mm)時に達する前に載荷端が破壊された(
図10)。Dは丸鋼直径(36mm)である。
【表2】
【0040】
自由端の変位量と荷重との関係の測定結果を表3及び
図10のグラフに示す。設計荷重における定着強度が確保され、かつ鉄筋(丸鋼)が破壊されることなく所要の引張強度が発現されることが確認された。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば老朽化した下水道管やトンネルの更生に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1,1B 既設管状体
1a アーチ部
1b 内壁
1c コーナー部
1d 底部
2 鉄筋モルタル
3 更生管
3a 帯状部材
4 マンホール
5 鉄筋組立体
6 モルタル(裏込め材)
10,10B 鉄筋モジュール
10Ba アーチ部側鉄筋モジュール
10Bd 底部側鉄筋モジュール
11 鉄筋
11A 外側鉄筋
11B 内側鉄筋
12,12C プレート
12b 挿通孔
12d 外周側縁部
12e 内周側縁部
13 ボルト
14 ナット
15 配力筋
16 位置決め金具
19 モジュール環状体