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特許7291566心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法
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  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図1
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図2
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図3
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図4
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図5
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図6
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図7
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図8
  • 特許-心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/339 20210101AFI20230608BHJP
   A61B 5/346 20210101ALI20230608BHJP
【FI】
A61B5/339
A61B5/346
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019141484
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021023426
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和晃
(72)【発明者】
【氏名】打田 博則
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018475(JP,A)
【文献】特開2013-208368(JP,A)
【文献】特開2015-109913(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101412(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/318 - 5/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
ユーザー操作を受け付ける操作部と、
前記表示部に表示された複数拍分の心電波形のフリーズ画面において、前記操作部でのユーザー操作に応じて前記フリーズ画面中で時間方向に並んだ複数の解析範囲を一括して設定可能な解析範囲設定部と、
前記解析範囲設定部で設定された前記複数の解析範囲それぞれについて解析処理を行う解析部と、
を備える心電図検査装置。
【請求項2】
前記解析範囲設定部は、前記複数の解析範囲が時間方向で互いに一部重複して設定されることを許容する、
請求項1に記載の心電図検査装置。
【請求項3】
前記解析部により得られた前記複数の解析範囲についての解析結果の中からいずれか1つの解析結果を選択的に表示及び保存する、
請求項1又は2に記載の心電図検査装置。
【請求項4】
前記心電波形は、12誘導心電波形の中の1誘導分の心電波形である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の心電図検査装置。
【請求項5】
表示部が、複数拍分の心電波形のフリーズ画面を表示するステップと、
解析範囲設定部が、ユーザー操作に応じて前記フリーズ画面中で時間方向に並んだ複数の解析範囲を一括して設定するステップと、
解析部が、前記解析範囲設定部で設定された前記複数の解析範囲それぞれについて解析処理を行うステップと、
を含む心電図検査装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓疾患の診断指標として、心電図が広く用いられている。心電図は、心臓の電気的な活動を体表面で検出し、それを心電波形として表したものである。この心電波形(心電図)を解析することで、心臓の活動に関する様々な情報を得ることができる。
【0003】
近年では、心電図をデータ化して記録するデジタル心電計の開発により、コンピューターを用いて心電図を自動解析することが可能になり、心電図から得られる様々なパラメーターについて検討がなされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-116207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、心電図の自動解析機能を有する心電計においては、自動解析を行いたい範囲(以下、解析範囲と呼ぶ)を医療従事者であるユーザーが選択するようになっている。この解析範囲の選択は、ユーザーが心電波形の表示画面を見ながら行う。
【0006】
しかしながら、ユーザーによって選択された解析範囲は、必ずしも適切な範囲とは限らない。ユーザーは、解析結果を見て自分の選択した解析範囲が適切な区間ではないと認識すると、再び心電波形の表示画面を見ながら別の解析範囲を選択し、再び心電計に解析処理を実行させなければならない。この結果、心電波形の選択から解析終了までに要する時間が長くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、解析範囲の選択から解析終了までに要する時間を短縮し得る心電図検査装置、及び、心電図検査装置の作動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の心電図検査装置の一つの態様は、
表示部と、
ユーザー操作を受け付ける操作部と、
前記表示部に表示された心電波形に関して、前記操作部でのユーザー操作に応じて1画面中で複数の解析範囲を設定可能な解析範囲設定部と、
前記解析範囲設定部で設定された複数の解析範囲それぞれについて解析処理を行う解析部と、
を備える。
【0009】
本発明の心電図検査装置の作動方法の一つの態様は、
12誘導心電波形の中の1誘導分の心電波形を表示するステップと、
表示された前記1誘導分の心電波形の中から、ユーザー操作に応じて1画面中で複数の解析範囲を設定するステップと、
設定された前記複数の解析範囲それぞれについて解析処理を行うステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の解析範囲を設定可能とするとともに、複数の解析範囲それぞれについて解析処理を行うことにより、心電波形の選択から解析終了までに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の心電図検査装置の要部構成を示すブロック図
図2】実施の形態の心電図検査装置の動作の説明に供するフローチャート
図3】12誘導検査画面の例を示す図
図4】12chのフリーズ画面の例を示す図
図5】6chのフリーズ画面の例を示す図
図6】1chのフリーズ画面の例を示す図
図7】実施の形態における解析範囲の選択画面の例を示す図
図8】不適切な解析範囲に基づく解析結果画像の例を示す図
図9】適切な解析範囲に基づく解析結果画像の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施の形態の心電図検査装置の要部構成を示すブロック図である。
【0014】
心電図検査装置10は、表示部11、操作部12、解析範囲設定部13、解析部14及び表示制御部15を有する。
【0015】
表示部11は例えば液晶ディスプレイである。操作部12は、例えばキーボードやマウスなどを有して構成されており、ユーザー操作を受け付ける。また、操作部12は、表示部11がタッチパネル付きの液晶ディスプレイである場合には、タッチパネルも含む。解析範囲設定部13、解析部14及び表示制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などにより構成されており、所定のプログラムを実行することでそれぞれの機能を実現する。
【0016】
解析範囲設定部13は、操作部12でのユーザー操作に応じて複数の解析範囲を設定可能となっている。具体的には、ユーザーは、表示部11に表示された心電波形を見ながら、操作部12を用いて解析範囲を選択する。
【0017】
解析部14は、解析範囲設定部13で設定された複数の解析範囲それぞれについて解析処理を行う。解析部14の12誘導検査や不整脈検査などの各検査に対する解析は既知の技術なので、ここでの詳しい説明は省略する。解析部14により得られた解析結果は、表示制御部15を介して表示部11に表示される。
【0018】
表示制御部15は、解析部14により得られた複数の解析範囲についての解析結果の中からいずれか1以上の解析結果を選択的に表示する。例えば、表示制御部15は、ユーザーによる操作部12の操作に応じて(例えばユーザーがマウスをクリックする毎に)複数の解析結果を1つずつ表示部11に表示する。
【0019】
図2は、本実施の形態の心電図検査装置10の動作の説明に供するフローチャートである。また、図3図9は、心電図検査装置10に表示される画像例を示す図である。
【0020】
心電図検査装置10は、ステップS11において、表示部11に12誘導検査画面を表示する。図3は、ステップS11で表示される12誘導検査画面の例である。
【0021】
ユーザーが操作部12を用いて図3のフリーズボタンB1を操作すると(例えばマウスによりカーソルをフリーズボタンB1に移動させその位置でクリック操作すると)、心電図検査装置10は、ステップS12に移り、表示部11にフリーズ画面を表示する。図4図6は、ステップS12で表示されるフリーズ画面の例である。
【0022】
因みに、心電図検査装置10では、フリーズ画面において何チャネル(ch)分の波形を表示するかを選択できるようになっている。図4は12chのフリーズ画面の例であり、図5は6chのフリーズ画面の例であり、図6は1chのフリーズ画面の例である。
【0023】
ここで、フリーズ画面では、心電図検査装置10が保持する例えば最大10分の収集波形と比較して、1画面で表示できる秒数が短いため、表示する波形の位置をずらしながら表示する必要がある。
【0024】
なお、図6に示した1chの表示は、12ch(図4)、6ch(図5)の表示と比較して、1画面で長時間の波形を確認するができる。そのため、解析範囲の選択は1chの表示画面上で行われる。具体的には、ユーザーは、1chの長時間の波形を見て、その中から解析範囲を選択し設定する。
【0025】
ただし、1chの表示においては、12誘導の中の1誘導分しか同時に表示できないため、表示されていない誘導にノイズが混入しているなどの問題があっても、ユーザーがそれに気づかずに解析範囲を選択設定してしまう場合がある。この場合、的確な解析結果が得られないといった不都合が生じる。そのため、心電図検査装置では、一般に、ユーザーが、図6に示したような1chのフリーズ画面で解析範囲を選択設定した後に、図4の12chのフリーズ画面や図5の6chのフリーズ画面に切り替えることで、選択設定した解析範囲が適切な範囲であるかを確認できるようになっている。
【0026】
なお、ユーザーによって解析範囲ボタンB2が操作されると、解析範囲の長さを変更するための画面が表示され、ユーザーはその画面において解析範囲の長さを変更することができる。
【0027】
図6のように1ch(II誘導)のフリーズ画面において解析範囲を選択した後に、ユーザーは、図4又は図5のフリーズ画面に画面を切り替えると、解析範囲として選択した心電波形について、1ch(II誘導)の波形以外の波形の状態も確認することができる。
【0028】
図2に戻って、本実施の形態の心電図検査装置10の動作を説明する。心電図検査装置10は、ステップS13において解析範囲を設定する。図6及び図7は、本実施の形態における解析範囲の選択画面の例を示す図である。本実施の形態の心電図検査装置10においては、図6から分かるように、解析候補選択ボタンB3が設けられており、ユーザーがこの解析候補選択ボタンB3を操作すると、図7に示したように、心電図検査装置10は複数の解析範囲を設定できるモードとなる。このモードにおいて、ユーザーは、メインの波形表示領域A0を操作することにより、複数の解析範囲を選択設定することができる。
【0029】
図7の例では、7か所の解析範囲が選択設定されている。この選択範囲の情報は解析範囲設定部13に記憶される。
【0030】
次に、ユーザーによって解析ボタンB4が操作されると、心電図検査装置10はステップS14に移って、ステップS13で選択設定された解析範囲の心電波形を解析部14によって解析する。図7の例では、7か所の解析範囲が設定されているので、解析部14は7か所の解析範囲内のそれぞれの心電波形を解析する。
【0031】
次に、心電図検査装置10は、ステップS15に移って、解析結果を表示する。図8及び図9は、解析結果画面の例である。先ず、ステップS15-1において、7か所の解析結果のうち1か所目の解析結果画像(図8)が表示される。ユーザーによって、この解析結果画像が不適切な解析範囲に基づくものであると認識され、次のデータボタンB5が操作されると、心電図検査装置10は、ステップS15-2に移り、2か所目の解析結果画像を表示する。ユーザーは、適切な解析範囲に基づく解析結果画像が表示されるまで次のデータボタンB5を操作し、適切な解析範囲に基づく解析結果画像が表示されたときに保存のボタンB6を操作する。これにより、心電図検査装置10は、解析部14により得られた複数の解析範囲についての解析結果の中からいずれか1つの解析結果を選択的に表示及び保存する。
【0032】
図8は、不適切な解析範囲に基づく解析結果画像の例である。図中の枠線で示したように、V4誘導にノイズが混入していることが分かる。図9は、適切な解析範囲に基づく解析結果画像の例である。どの誘導にもノイズが混入していないことが分かる。つまり、ユーザーは、図8のような解析結果画像が表示された場合には、心電図検査装置10に次の解析結果画像を表示させ、図9のような解析結果画像が表示された場合には心電図検査装置10にこれを保存させる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数の解析範囲を設定可能な解析範囲設定部13と、解析範囲設定部13で設定された複数の解析範囲それぞれについて解析処理を行う解析部14と、を有することにより、ユーザーが不適切な解析範囲に基づく解析結果画像と認識した場合でも、解析範囲の選択画面(図6)に戻ることなく、予め選択した別の解析範囲の解析結果画像を順次表示させることができる。この結果、解析範囲の選択から解析終了までに要する時間を短縮し得る。
【0034】
特に、1画面で長時間の波形を確認するために、少ない誘導(実施の形態ではII誘導のみ)を表示して解析範囲を選択して設定する場合には、表示されない他の誘導にノイズなどが混入している場合もあるので、本実施の形態の構成及び方法は非常に有効である。
【0035】
また、本実施の形態の心電図検査装置10は、解析範囲設定部13は、複数の解析範囲が互いに一部重複して設定されることを許容するようになっている。これは、複数の解析範囲の一部重複が許容されないとすると、たとえ複数の解析範囲を隙間なく連続して設定したとしても、複数の拍動に渡って発生した異常を解析範囲の設定で区切ってしまって、複数の解析範囲をまたいで発生した異常を検出せずに逃してしまうおそれがある為である。図7に、この複数の解析範囲が互いに一部重複して設定されている様子が表されている。図7に示された7か所の解析範囲のうち、一番下の列に示された2つの解析範囲は互いに一部重複して設定されている。勿論、より多くの解析範囲を一部重複させながら設定することも可能である。このようにすることで、例えば、異常と思われる箇所など、厳密に解析したい区間については、複数の解析範囲を一部重複するように少しずつずらしながら設定することにより、異常を逃すことのない解析を実現できるようになる。
【0036】
因みに、従来のように、別画面で別々に解析範囲を設定するやり方でも、このような設定を行うことはできるが、本実施の形態のように、同一画面上で複数の解析範囲を設定する手法では、ユーザーが解析範囲同士の位置関係を明確に把握できるので、解析範囲間での関係を考慮した、より微妙な解析範囲選択を行うことができるようになる。
【0037】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ユーザーによって選択された解析範囲の心電波形を自動解析する機能を有する心電図検査装置及びその作動方法として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 心電図検査装置
11 表示部
12 操作部
13 解析範囲設定部
14 解析部
15 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9