(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】着色粒状パルプ
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20230608BHJP
D21H 11/16 20060101ALI20230608BHJP
D21H 21/28 20060101ALI20230608BHJP
D21H 17/68 20060101ALI20230608BHJP
D21H 17/35 20060101ALI20230608BHJP
D21H 17/37 20060101ALI20230608BHJP
D21H 17/57 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C08J3/12 Z
D21H11/16
D21H21/28 A
D21H17/68
D21H17/35
D21H17/37
D21H17/57
(21)【出願番号】P 2019142382
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】鹿又 喜輝
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04721059(US,A)
【文献】特表2004-516220(JP,A)
【文献】特開平08-182437(JP,A)
【文献】特開2016-042840(JP,A)
【文献】特開2005-021071(JP,A)
【文献】特開平10-075980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K1/00-3/00
31/00-31/24
B01J2/00-2/30
C08J3/00-3/28
99/00
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料で着色されたパルプと、
屈折率1.5以下である白色填料を含
み、
前記屈折率1.5以下である白色填料を5重量%以上70重量%以下含むことを特徴とする着色粒状パルプ。
【請求項2】
前記屈折率1.5以下である白色填料が、シリカ、アクリル樹脂微粉末、ポリプロピレン微粉末、ウレタン樹脂微粉末の1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の着色粒状パルプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染料で着色された着色粒状パルプに関する。
【背景技術】
【0002】
パルプを粒子状に丸めた粒状パルプが、動物の排尿処理剤等として用いられている。例えば、特許文献1、2には、尿等の水と接触すると変色する粒状パルプを使用した排尿処理剤が記載されている。これらの排尿処理剤は、尿を吸収した部分が見分けられるため、使用部分のみを交換でき経済的であり、また、使用したことに気付かずに放置してしまうことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-248087号公報
【文献】特開2014-008046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、尿や香料等の液体と接触した際の色の変化が大きな着色粒状パルプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.染料で着色されたパルプと、白色填料を含むことを特徴とする着色粒状パルプ。
2.前記白色填料を5重量%以上30重量%以下含むことを特徴とする1.に記載の着色粒状パルプ。
3.前記白色填料が、屈折率1.5以下であることを特徴とする1.または2.に記載の着色粒状パルプ。
【発明の効果】
【0006】
本発明の着色粒状パルプは、白色填料、特に屈折率1.5以下の白色填料を含むことにより、白色填料を含まない着色粒状パルプと比較して、液体と接触した際の色の変化をより大きくすることができる。白色填料を5重量%以上30重量%以下含む本発明の粒状パルプは、より液体と接触した際の色の変化が大きく、また、再乾燥後の色の変化も大きい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の着色粒状パルプは、染料で着色されたパルプと、白色填料を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明で使用するパルプは特に制限されない。具体的には、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、溶解パルプ、マーセル化パルプ等の木材パルプ、亜麻パルプ、マニラ麻パルプ、ケナフパルプ等の非木材系パルプ、リヨセル等の精製セルロース繊維、また古紙パルプ等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0009】
本発明で使用する染料は特に制限されず、パルプの着色に用いられている染料を用いることができる。ここで、パルプは、水酸基によりアニオン性に帯電している。そのため、カチオン性染料であれば、パルプに直接吸着させて着色することができる。アニオン性染料を用いる場合は、カチオン性定着剤を用いることにより、パルプに吸着させて着色することができる。
【0010】
本発明で使用する白色填料は特に制限されず、例えば、製紙分野において使用されているクレー(屈折率:1.57)、炭酸カルシウム(屈折率:1.50~1.64)、タルク(屈折率:1.54~1.59)、シリカ(屈折率:1.44~1.50)、カオリン(屈折率:1.62)、二酸化チタン(屈折率:アナターゼ2.55、ルチル2.72)、アクリル樹脂微粉末(屈折率1.49)、ポリプロピレン微粉末(屈折率1.48)、ウレタン樹脂微粉末(屈折率1.49)等の1種、または2種以上を混合して用いることができる。これらの中で、液体と接触した際の色の変化が大きくなるため、屈折率が1.5以下の白色填料が好ましい。
【0011】
本発明の着色粒状パルプは、白色填料を5重量%以上含むことが、粒状パルプの乾燥状態と湿潤状態の色差が大きくなり、粒状パルプの乾燥/湿潤状態を目視で確認しやすくなるため好ましい。さらに、白色填料の配合量が、5重量%以上30重量%以下であると、再乾燥後の色の変化も大きくなり、液体に濡れたことに気付かずに時間が経過して再度乾燥した後も、液体と接触したことに気付きやすい。白色填料の配合量の上限は、着色粒状パルプを成形できるのであれば特に制限されないが、白色填料が多くなると粒状パルプから白色填料が脱落し易くなり取扱性が低下するので、通常、70重量%以下である。
【0012】
本発明の着色粒状パルプは、その効果を阻害しない範囲内において、香料、消臭剤、吸着剤、殺菌剤、殺虫剤・殺ウイルス剤等の農薬、栄養塩等の肥料等の添加剤を配合することができる。また、本発明の着色粒状パルプの用途は特に限定されない。
【0013】
本発明の着色粒状パルプは、従来の粒状パルプと同様の方法により製造することができる。具体的には、パルプ、白色填料、染料、定着剤等の添加剤を含む含水率60%~97%程度のスラリーを調製し、必要に応じてスラリーを絞ったり乾燥するなどして濃度調整した後、このスラリーを適当な大きさの小塊に分け、回転している円筒乾燥炉に投入・乾燥させることにより、小塊毎に造粒して着色粒状パルプを製造することができる。小塊の大きさにより、得られる着色粒状パルプの大きさを調整することができる。また、円筒乾燥炉による乾燥時に、他のスラリーや薬剤を乾燥炉に噴霧することにより、多層状の着色粒状パルプを得ることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の構成はこれに限定されない。
(実施例1)
水1000重量部に広葉樹晒しクラフトパルプ(以下LBKP)100重量部、非晶質シリカ微粉末100重量部を加えて撹拌した後、カチオン性定着剤(固形分濃度45%)1重量部を加え撹拌し、更にアニオン性青色染料(固形分濃度30%)2重量部を加えて撹拌してスラリー状のパルプとした。このスラリー状パルプを直径20mm程度に千切ってステンレスバットに入れ、ステンレスバットを振とうしてスラリー状パルプを粒状に成形した後、80℃の送風乾燥機中で乾燥して粒状パルプを得た。なお、使用した非晶質シリカ微粉末の屈折率は、1.45である。
【0015】
(実施例2)
非晶質シリカ微粉末の添加量を50重量部にした以外は実施例1と同様にして粒状パルプを得た。
(実施例3)
非晶質シリカ微粉末の添加量を30重量部にした以外は実施例1と同様にして粒状パルプを得た。
(実施例4)
非晶質シリカ微粉末の添加量を10重量部にした以外は実施例1と同様にして粒状パルプを得た。
【0016】
(実施例5)
非晶質シリカ100重量部を重質炭酸カルシウム微粉末100重量部に変えた以外は実施例1と同様にして粒状パルプを得た。なお、使用した重質炭酸カルシウム微粉末の屈折率は、1.56である。
【0017】
(比較例1)
非晶質シリカ微粉末を加えない以外は実施例1と同様にして粒状パルプを得た。
(比較例2)
カチオン性定着剤、アニオン性青色染料、非晶質シリカ微粉末を加えない以外は実施例1と同様にして粒状パルプを得た。
【0018】
得られた粒状パルプについて、乾燥状態、蒸留水を滴下した湿潤状態、湿潤状態の粒状パルプを常温で24時間放置して乾燥させた後の再乾燥後のLab値を、分光色差計NF333(日本電色工業株式会社製)を用いて測定し、色差(ΔE)を算出した。結果を下記表1に示す。
【0019】
【0020】
本発明である実施例1~5で製造した粒状パルプは、湿潤状態と乾燥状態との色の変化が大きく、液体と接触したことに気付きやすい。特に、屈折率1.5以下の白色填料を含む実施例1~4で製造した粒状パルプは、色の変化が大きかった。また、填料配合率が5重量%以上30重量%以下である実施例3、4で製造した粒状パルプは、再乾燥後における初期状態(乾燥状態)との色の変化が大きく、乾燥した後であっても液体と接触したことに気付きやすい。なお、比較例2で製造した粒状パルプも、再乾燥後における初期状態との色の変化(ΔE:2.50)が大きいが、比較例2で製造した粒状パルプは、着色されておらず、白い(L値が大きく、a値、b値の絶対値が小さい)ため、実際には目視では色の変化に気付きにくい。