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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】チャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/177 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
B23B31/177
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019162755
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2020040203
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】18194142.8
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596007164
【氏名又は名称】エスエムヴェー アウトブローク シュパンジステーメ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SMW-Autoblok Spannsysteme GmbH
【住所又は居所原語表記】Wiesentalstrasse 28, D-88074 Meckenbeuren, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト マウラー
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特表平01-503048(JP,A)
【文献】特開平05-069208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械による加工のために、工作物(2)を個別に支持し、中心に配置するチャック(1)であって、
1つのチャック本体(3)と、
前記チャック本体(3)に半径方向に移動可能に取り付けられ、それぞれX又はY平面に対になって配置された4つのクランプジョー(5、6、7、8)と、を有し、及び、
前記チャック本体(3)に軸方向に移動可能であるように取り付けられた駆動ピストン(9)であって、
前記駆動ピストン(9)及びそれぞれの前記クランプジョー(5、6、7、8)に設けられたらせん面又はヘリカルギア(10)を介して、前記4つのクランプジョー(5、6、7、8)に駆動可能に結合された駆動ピストン(9)を有し、
前記クランプジョー(5、6、7、8)をクランプされる前記工作物(2)の方向に同期して送るか、又は、前記工作物から離間するチャック(1)において、
前記駆動ピストン(9)とそれぞれ2つの隣接するクランプジョー(5、7又は6、8)との間に、ロッカー(11)が設けられること、
前記ロッカー(11)は、前記駆動ピストン(9)に取り付けられたボルト(13)が挿入される対称中心(12)を有すること、
それぞれの伝達ピン(14、15)が前記ボルト(13)の横方向に隣接して設けられ、前記ロッカー(11)に駆動可能に連結され、前記ロッカー(11)の反対側の前記伝達ピンの端に、それぞれの前記クランプジョー(5、6、7、又は8)が設けられ、支持されていること、
2つのガイド溝(16)が前記ロッカー(11)に形成され、前記ガイド溝(16)のそれぞれに前記伝達ピン(14又は15)の一つが、わずかに直線的に移動できるように、好ましくは、前記チャック本体(3)の長手方向軸(4)に対して垂直に移動できるように挿入されていること、及び、
前記ロッカー(11)は、前記クランプジョー(5、6又は7、8)の前記工作物(2)への接触の作用として、前記ボルト(13)の周りで旋回可能であることを特徴とするチャック。
【請求項2】
前記ロッカー(11)の傾きが、共通のX平面又はY平面で移動する、前記2つの対のクランプジョー(5、6又は7、8)の一つの送り補償を生成することを特徴とする請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記ロッカー(11)の前記ガイド溝(16)の一つに係合するヘッド(17)が、各伝達ピン(14、15)に取り付けられ、及び、
前記ロッカー(11)及び前記駆動ピストン(9)のそれぞれの送り移動に対し垂直に延びる前記ヘッド(17)の外縁は、前記ガイド溝(16)の長さよりもサイズが小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のチャック。
【請求項4】
前記ヘッド(17)は、前記ロッカー(11)の送り方向に関して前記ガイド溝(16)の対向する内壁(18)の両方に当接すること、及び、
前記ヘッド(17)はそれらによって送り力にて作用され得ることを特徴とする請求項3に記載のチャック。
【請求項5】
遠心重錘(19)が前記チャック本体(3)に設けられ、その場所において前記駆動ピストン(9)の送り方向に対して垂直に移動可能であるように前記チャック本体(3)に取り付けられていること、及び、
前記遠心重錘(19)は、レバー(20)を介して前記クランプジョー(5、6、7、又は8)の一つに駆動可能に連結されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチャック。
【請求項6】
前記レバー(20)は、前記クランプジョー(5、6、7、8)がクランプ状態の間、前記チャック本体(3)の前記長手方向軸(4)の方向に傾斜されること、及び、
前記遠心重錘(19)は、前記チャック(1)の回転により半径方向外側に押され、半径方向に作用するクランプ力が、前記レバー(20)を介して前記遠心重錘(19)によって、それぞれの前記クランプジョー(5、6、7、8)に伝達されることを特徴とする請求項5に記載のチャック。
【請求項7】
前記2つの伝達ピン(14、15)と前記ロッカー(11)の前記対称中心(12)に配置された前記ボルト(13)との間の距離は等しいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のチャック。
【請求項8】
1つのロッカー(11)に固定された前記2つの伝達ピン(14、15)は平行に延び、前記駆動ピストン(9)に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のチャック。
【請求項9】
クランプされる前記工作物(2)の外側輪郭は任意の形状を有すること、及び、
前記クランプジョー(5、6、7、8)は、複数の前記工作物(2)の現在の前記外側輪郭に適合され、それらを部分的に囲むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された項目にしたがって、工作機械による加工のために工作物を個別に支持し、中心に配置するチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
「チャック」という技術用語で知られているそのようなクランプ装置は、例えば特許文献1で見ることができる。ベースジョーと機械的に作動する駆動ユニットの間に、ロッカー及び駆動体が設けられ、それぞれロッカーモータの1つに接続されている。さらに、4つの駆動体が取り付けられているチャックの中央に連結リングが配置され、これらの部品間に半径方向に隙間ができるようになっている。連結リングは、チャック本体又はチャックのハウジングのクランプ軸周りに回転可能である。連結リングを回すと、ベースジョーの半径方向の送り運動が生じ、それらが工作物の方向に移動してクランプ力を生成するため、工作物が4つのクランプジョーによって保持される。
【0003】
対をなして直径方向に対向する4つのクランプジョーによる工作物のクランプは機械的な過剰決定を示すため、連結リングと各駆動体の間に隙間を確保する必要がある。クランプジョーの対のいずれかが、先にクランプされる工作物に当接した場合、それに対し垂直に延びるクランプジョーがそれら自身と工作物の表面との間の残りの距離をカバーできることを保証するために、(先に工作物に当接したクランプジョー対の)送り運動を停止する必要がある。4つのクランプジョーのすべてが工作物の表面に接触している場合にのみ、対応するクランプ力が生成されるべきである。したがって、移動遊びは、クランプジョーが工作物の方向に移動する際、クランプジョーの補償として役立つ。特に、工作物が長方形の外側輪郭を有し、辺の長さが異なる寸法となる場合、直径方向に対向するクランプジョーの対の間にある、これら異なる距離を補償する必要がある。
【0004】
ベースジョー又はクランプジョーに機械的に連結されている、連結リングと駆動体の間に必要な隙間があるため、かなりの不正確さがしばしば発生し、工作物の位置決めは不正確になる。これは、多数の同一工作物をクランプする際の繰り返し精度を保証できないため、工作物自体の加工エラーに繋がる。
【0005】
不利なことに、また一方、そのような移動の可能性は、多くの場合、クランプ効果に関してかなりの許容偏差と関連している。そのため、必要なクランプ力は正確に予測できないか、又は事前に決定されない。パワーフローに配置された部品間の既存の動きは、これらの部品間の相対的な動きに繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE 10 2015 204 502 B4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、多数の異なる設計の工作物の正確に配置された整列(すなわち、中心位置合わせ)を、後続のクランプ操作のために高い繰り返し精度で達成できるように、前述のタイプのチャックをさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明にしたがって、請求項1の事前特徴項目の特徴により解決される。
【0009】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項から生じる。
【0010】
駆動ピストンとそれぞれ2つの隣接するクランプジョーの間にロッカーが設けられていること、ロッカーは、駆動ピストンに取り付けられたボルトが挿入される対称中心を有し、そのボルトの周りで、クランプジョーの工作物との接触の作用として、ロッカーが旋回可能に支持されること、及び、それぞれの場合、伝達ピンがボルトに横方向に隣接して設けられ、その反対側の端部にそれぞれのクランプジョーが取り付けられ、ロッカーに支持される。そのため、工作物への距離に関する2つの隣接するクランプジョーの距離が補償されるが、あらゆる動作の遊び、又はパワーフロー内で生じるその他の制御不能な偏向は無く、その場合、クランプされる工作物の正確な整列が各状況において保証される。
【0011】
ロッカーは、駆動ピストンと移動するそれぞれのクランプジョーとの間(すなわちパワーフロー内)に設置され、ロッカーは駆動ピストンの相対運動をクランプジョーに伝達ピンを介して直接伝達するため、バックラッシュの無い、工作物の補償クランプが達成される。対になった直径方向に対向するクランプジョーは、工作物の同一の長さに割り当てられているため、長方形の工作物の場合、クランプジョーの一対が最初に工作物と接触する。これらクランプジョーのさらなる送り動作は、クランプジョーの垂直に配置された対が工作物に到達するまで中断されなくてはならない。駆動ピストンは軸方向の動きを行うため、それらロッカー及び伝達ピンもチャック本体の長手方向軸に平行に移動する。既存のヘリカルギア、駆動ピストン、及びクランプジョーにより、駆動ピストンの軸方向送り運動は、クランプジョーの半径方向送り運動に変換される。
【0012】
レバーを介してクランプジョーの1つに機械的に連結された遠心重錘が、チャック本体に配置されている場合、特に有利である。そのレバーはチャック本体に取り付けられ、レバーの整列により、チャック本体の回転中に遠心重錘に作用して外側に押す求心力が発生する。その結果、レバーはチャック本体の長手方向軸の方向に移動し、半径方向の追加のクランプ力がそれぞれのクランプジョーに生成される。ロッカーと伝達ピンの形状は、クランプ力のこの追加の増大を妨げない。なぜなら、駆動ピストンによって加えられる力の流れはクランプジョーに直接作用し、チャック本体の回転により、遠心重錘が独立したクランプ力成分を生成するためである。
【0013】
傾斜やジャミングを起こすことなく、それぞれの伝達ピン上でロッカーの動きを実現するために、ガイド溝がロッカーに加工され、そこに伝達ピンの1つが移動可能に挿入される。それぞれの伝達ピンに一体形成されたヘッドは、ガイド溝の幅の長手方向軸に対して遊びを有しておらず、ヘッドの2つの側面がガイド溝の内壁に当接する。その結果、運動方向におけるロッカーと伝達ピンのヘッドとの間で、遊びのない力伝達が達成される。ロッカーが片側に偏向すると、ヘッドの長さがガイド溝の長さよりも短いため、ヘッドはガイド溝内を直線的に移動する。ただし、同時に、ロッカーは非常に小さな角度範囲内で偏向するため、力は移動方向に伝達される。
【0014】
ロッカーはその対称中心で駆動ピストンに掛けられ、ガイド溝とこの対称中心との間の距離は等しいため、ロッカーの偏向は4つのロッカー全てで等しく、クランプされる工作物と接触するクランプジョーに最初に割り当てられる。
【0015】
図面は、本発明によるチャックを示しており、これは以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、チャック本体を有するチャックを平面図で示し、チャック本体内に互いに直交して整列された4つのクランプジョーが半径方向に移動可能に取り付けられ、それらにより、少なくとも部分的に長方形の工作物が空間の中心に保持されている。
図2図2は、図1によるチャックを斜視図で、部分的に切り開いて示し、それぞれのクランプジョーに割り当てられた4つの遠心重錘は、レバーを介してこれらクランプジョーに機械的に連結されている。
図3図3は、図1によるチャックの駆動ピストンを示し、クランプジョーが取り外され、半径方向の送り込みのために傾斜面が配置され、及び、駆動ピストンの外側に4つのロッカーが取り付けられ、それぞれの伝達ピンを介してクランプジョーの1つに駆動可能に連結されている。
図4a図4aは、初期状態における図3によるチャックの駆動ピストンを断面図で示す。
図4b図4bは、ロッカー偏向位置における図4aに示すチャックの駆動ピストンを示す。
図5a図5aは、初期状態の図1によるチャックの部分断面を示す。
図5b図5bは、図1のチャックにおいて、直径方向に対向する2つのジョーが工作物と接触し、垂直のジョーが工作物から離れた位置にあることを示す。
図5c図5cは、工作物が中心位置にある図5aのチャックを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1はチャック1を示し、これにより機械加工のため空間に中心を置かれた部分的に長方形の工作物2が、不図示の工作機械によって支持されている。チャック1は、チャック本体3から成り、それに4つのクランプジョー5、6、7及び8が移動可能に取り付けられている。
【0018】
クランプジョー5及び6はX平面、すなわち直径方向に向かい合って位置しており、クランプジョー7及び8はそれに垂直なY平面に位置している。4つのクランプジョー5、6、7及び8は、チャック本体3の中心の方向へ、すなわち、それの長手方向軸4の方向及び工作物2の方向へ半径方向に移動される。ただし、クランプされる工作物2が、台形の又は星形の外側輪郭を有する場合、4つのクランプジョー5、6、又は7、8の2組みがX平面又はY平面の1つを通過しながらも、これらの平面が互いに垂直でないように、クランプジョー5、6、7、8を任意の位置に配置できる。
【0019】
工作物2が異なる縁長さ(エッジ長さ)又は他の異なる外側輪郭を有する場合、-これは概略的にΔS1とΔS2により表される-クランプジョー5、6又は7、8のペアは、異なるタイムスパンで工作物2の表面に接触する。クランプジョー5、6又は7、8の間で距離ΔS1が距離ΔS2より大きい場合、異なる衝撃時間が発生する。しかし、4つのクランプジョー5、6、7、及び8は、駆動ピストン9によって同期して動かされるので、この空間的又は時間的オフセットは補償されなければならない。
【0020】
加えて、工作物2を手動で又は機械で長手方向軸4に正確に整列して位置決めすることは問題である。多くの場合、工作物2の対称中心は、チャック本体3の長手方向軸4に整列されない。クランプジョー5、6、7、及び8の送り込みで、工作物2を移動し、既存の距離差を補償することで、X平面とY平面の両方でこの問題を解決すべきである。これは、直径方向に対向するクランプジョー5、6又は7、8が、直径方向に対向する対で、工作物2をX及び/又はY平面に移動することで達成され、工作物2の対称中心をチャック本体3の長手方向軸4に整列する。工作物2が、2つの対向するクランプジョー5、6又は7、8の間でクランプされると直ぐに、それは、それぞれのX平面に又はY平面に配置される。
【0021】
しかし、クランプジョー5、6、7及び8が駆動ピストン9によって同期して移動される場合、工作物2へのクランプジョー5、6、7及び8の衝撃の時間差は、補償されなければならない。この時間又は形状の補償は、図2図5cで詳細に確認できる。
【0022】
図2は、駆動ピストン9が、クランプジョー5、6、7、及び8に機械加工されたヘリカルギア10と相互作用するヘリカルギア10を有することを示している。駆動ピストン9がクランプされる工作物2から離れ、クランプジョー5、6、7、8の間でそれらのヘリカルギア10に押し付けられると、いずれの場合も、次にこの力の伝達により、クランプジョー5、6、7、8が長手方向軸4の方向へ半径方向に、すなわち工作物2の方向に移動する。
【0023】
さらに、チャック本体3には複数の遠心重錘19が取り付けられており、それらは移動可能であり、それぞれがレバー20によってクランプジョー5、6、7、又は8の1つに連結されている。レバー20は、チャック本体3に旋回可能に取り付けられている。図2に示されるチャック1の開始位置は、遠心重錘19が長手方向軸4の近くに配置され、したがって、レバー20がクランプされる工作物2の方向に対して斜め外向きに延びることを示している。しかし、チャック本体3が回転すると直ぐに、遠心重錘19はそれらに作用する求心力により外向きに押され、その結果、遠心重錘19と長手方向軸4との間の距離が増加する。したがって、遠心重錘19に割り当てられたレバー20の自由端も長手方向軸4から離れ、それぞれのクランプジョー5、6、7又は8に割り当てられたレバー20の自由端は長手方向軸4の方向に移動し、したがって、工作物2を固定するための追加のクランプ力を生成する。
【0024】
図3は、4つの自由空間23が駆動ピストン9に包含され、そこに対称中心12を有する4つのロッカー(rocker)11が挿入又は配置されることを示している。対称中心12には、ボルト13が係合する取り付け穴がある。ボルト13は、駆動ピストン9によって支持されている。ロッカー11は、ボルト13上で回転することもできる。
【0025】
2つのガイド溝16が、ロッカー11の側面でボルト13の隣に加工されており、ロッカー11が作動されていないとき、長手方向軸4に対し垂直に配向されている。これは、ロッカー11が非作動状態では偏向されず、むしろ長手方向軸4に対し垂直に延びることを意味する。
【0026】
図4a及び4bは、ロッカー11の動作と、ロッカーとそれぞれのクランプジョー5、6、7又は8との間の力の伝達を示している。第1及び第2移送ピン14及び15は、それぞれのガイド溝16にそれぞれ挿入される。第1移送ピン14はクランプジョー5及び6に割り当てられ、第2移送ピン15はクランプジョー7及び8に割り当てられ、それらに駆動結合される。
【0027】
加えて、ヘッド17がロッカー11に割り当てられた移送ピン14及び15の自由端に設けられ、それぞれのガイド溝16に直線的に挿入することができる。ヘッド17の外側輪郭は、長手方向軸4の方向に延びる端面が、ガイド溝16の内壁に当接し、長手方向軸4に対し垂直に延びる複数のヘッド17の端面間に隙間又は空隙が生じるように、ガイド溝16の内側輪郭に適合される。したがって、ロッカー11が2つの可能な偏向のうちの一方へボルト13周りに移動するとき、ヘッド17は、ガイド溝16に関し長手方向軸4に対して垂直に移動することができる。図4bによれば、クランプジョー7が最初に工作物2に突き当たるので、クランプジョー5は工作物2の方向にさらに動かされることになる。したがって、一方のクランプジョー7及び8と他方のクランプジョー5及び6との間のこの送り差は、αで示される偏向分、ロッカー11によって補償される。駆動ピストン9はクランプされる工作物2から引き離され、クランプジョー7及び8(それらは既に工作物2と接触している)はそれらの位置に保持され、ΔS2からΔS1を引いた差分が、ロッカー11の傾斜によって補償される。
【0028】
さらに、ロッカー11とそれぞれのクランプジョー5、6、7又は8との間の距離を橋渡しするために、伝達ウェッジ22が4つの自由空間23のそれぞれに配置される。それぞれの伝達ウェッジ22には貫通穴24が加工されており、貫通穴24を通ってそれぞれの伝達ピン14、15が到達又は突出している。
【0029】
伝達ウェッジ22は、ロッカー11とクランプジョー5、6、7、又は8との間の緩衝(バッファ)又は動力伝達として機能し、チャック本体3に取り付けられ、直線的に移動できるようになっている。
【0030】
図5a、5b及び5cは、チャック1の異なる動作状態及びクランプ状態に関連する、この運動シーケンスを詳細に示している。図5aは、チャックジョー5、6、7及び8がクランプされる工作物から異なる間隔を空けていることを示している。駆動力が駆動ピストン9に加えられると直ぐに、その力はボルト13を介してロッカー11に伝達され、2つの伝達ピン14及び15を介してそれぞれのクランプジョー5、6、7又は8に伝達される。既存のヘリカルギア10は、駆動ピストン9の線形リセットをクランプジョー5、6、7及び8の半径方向の送り運動に変換し、そのため、これらはクランプされる工作物2に向かって移動する。
【0031】
図5bは、直径方向に対向するクランプジョー7及び8が最初に工作物2と接触すること、及び、したがってこれは、Y平面において長手方向軸4に整列していることを示す。ロッカー11は、クランプジョー5及び6のこの位置ではまだ作動されていない。
【0032】
図5cは、クランプジョー5及び6と工作物2の間の差がロッカー11の偏向αによってどのように埋められるか、又は補償されるかを示している。駆動ピストン9が動作方向にさらに移動されたことで、クランプジョー7及び8が、ロッカー11の旋回により、図5bに示される位置に保持され、そして垂直に配置されたクランプジョー5及び6のみが、工作物2に至るまでさらに移動する。
【0033】
4つすべてのクランプジョー5、6又は7及び8が工作物2の接触位置に到達すると直ぐに、駆動ピストン9が実際のクランプ力を生成する。さらに駆動されると、生成されるクランプ力はさらに大きくなる。ロッカー11及び伝達ピン14、15の異なる配置は、これによって変更されず、これらは採用された平衡位置に留まる。
【0034】
本発明によるチャック1によって、工作物2はしたがって、空間の中心に保持され、機械加工のための工作機械によって支持される。この工作物2は任意の外側輪郭を有することができる。なぜなら、クランプジョー5、6、7、8の内側輪郭は、異なる設計の工作物2の外側輪郭に適合し、それらを部分的に囲むことができるためである。
【符号の説明】
【0035】
1 チャック
2 工作物
3 チャック本体
4 長手方向軸
5、6、7、8 クランプジョー
9 駆動ピストン
10 ヘリカルギア
11 ロッカー
12 対称中心
13 ボルト
14 伝達ピン
15 伝達ピン
16 ガイド溝
17 ヘッド
19 遠心重錘
20 レバー
22 伝達ウェッジ
23 自由空間
24 貫通穴
ΔS1、ΔS2 距離
α 偏向
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c