(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】スロットルパイプの取り付け構造
(51)【国際特許分類】
B62K 23/04 20060101AFI20230608BHJP
F02D 11/02 20060101ALI20230608BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B62K23/04
F02D11/02 R
G01B7/30 H
(21)【出願番号】P 2019190346
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】岸 昇示
(72)【発明者】
【氏名】大谷 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏一
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119454(JP,A)
【文献】特開2014-032032(JP,A)
【文献】特開2009-013834(JP,A)
【文献】特開2010-151019(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101489863(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 23/04
F02D 11/02
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のハンドルバーの内側に配置され、前記ハンドルバーに対して固定された固定部材と、
前記ハンドルバーの中心軸の周りに、前記ハンドルバーの外周面に沿って回動可能な状態で前記ハンドルバーに支持されるスロットルパイプと、
前記スロットルパイプの端部に配置されるグリップエンドと、
前記グリップエンドと前記固定部材とを締結する第1の締結部材と、を備え、
前記スロットルパイプの前記端部は、内径方向に延出する延出部を有すると共に貫通部を有し、
前記貫通部を介して前記第1の締結部材で前記グリップエンドと前記固定部材とを締結することで、前記ハンドルバーの端部と前記グリップエンドとの間に前記延出部が回動可能に介在
し、
前記第1の締結部材で前記貫通部を介して前記グリップエンドと前記固定部材とを締結することで、前記ハンドルバーの前記端部と前記グリップエンドとによって、前記スロットルパイプの軸方向への変位が規制されることを特徴とするスロットルパイプの取り付け構造。
【請求項2】
前記スロットルパイプには逃げ部が形成され、
前記逃げ部を介して前記ハンドルバーと前記固定部材とを締結する第2の締結部材をさらに有し、
前記第2の締結部材と前記逃げ部とが係合することで、前記ハンドルバーに対する前記スロットルパイプの軸方向の変位が規制されることを特徴とする請求項
1に記載のスロットルパイプの取り付け構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記スロットルパイプの回転角を検出するアクセルポジションセンサユニットを構成する部品のうち前記ハンドルバーに対して相対的に回動しない部品であることを特徴とする請求項1に記載のスロットルパイプの取り付け構造。
【請求項4】
前記固定部材は、前記スロットルパイプの回転角を検出するアクセルポジションセンサユニットの一部であることを特徴とする請求項1に記載のスロットルパイプの取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルバーに対するスロットルパイプの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットルパイプは一般に、車両のハンドルバーの外周に相対的に回動可能に支持される。ハンドルバーに対するスロットルパイプのスラスト軸方向における変位を規制する必要がある。特許文献1、2では、スロットルパイプのスラスト軸方向における変位を規制する機構を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭61-12310号公報
【文献】特開2010-132281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2では、ハンドルバーに対するスロットルパイプのスラスト軸方向における変位を規制する機構がハンドルスイッチケース内に設けられるため、ハンドルスイッチケース内に、上記機構を設けるスペースが必要となる。そのため、省スペースを図る観点から、ハンドルバーに対するスロットルパイプの取り付けに関し、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、ハンドルバーに対するスロットルパイプの取り付けを簡素化して省スペースを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明のスロットルパイプの取り付け構造は、円筒状のハンドルバーの内側に配置され、前記ハンドルバーに対して固定された固定部材と、前記ハンドルバーの中心軸の周りに、前記ハンドルバーの外周面に沿って回動可能な状態で前記ハンドルバーに支持されるスロットルパイプと、前記スロットルパイプの端部に配置されるグリップエンドと、前記グリップエンドと前記固定部材とを締結する第1の締結部材と、を備え、前記スロットルパイプの前記端部は、内径方向に延出する延出部を有すると共に貫通部を有し、前記貫通部を介して前記第1の締結部材で前記グリップエンドと前記固定部材とを締結することで、前記ハンドルバーの端部と前記グリップエンドとの間に前記延出部が回動可能に介在し、前記第1の締結部材で前記貫通部を介して前記グリップエンドと前記固定部材とを締結することで、前記ハンドルバーの前記端部と前記グリップエンドとによって、前記スロットルパイプの軸方向への変位が規制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハンドルバーに対するスロットルパイプの取り付けを簡素化して省スペースを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】アクセルポジションセンサユニットの斜視図である。
【
図6】アクセルポジションセンサ本体およびスロットルパイプの先端部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の実施の形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は実施の形態に記載されている構成によって限定されることはない。
【0010】
図1は、スロットルグリップ装置の斜視図である。このスロットルグリップ装置に、本発明の一実施の形態に係るアクセルポジションセンサユニット、および、スロットルパイプの取り付け構造が適用される。このスロットルグリップ装置は、自動二輪車のハンドルバー11の右方に延出した部分に取り付けられる。このスロットルグリップ装置が適用される車体18として自動二輪車を例示するが、これに限定されず、バータイプのハンドルを備える3輪や4輪のバギーのほか、スノーモービル等の各種の車体に本発明を適用可能である。スロットルグリップ装置は、グリップ部14およびグリップエンド13を備える。
【0011】
図1に示すように、ハンドルバー11の方向については、ハンドルバー11の先端側を+X側、車体中央側を-X側とする。グリップ部14はハンドルバー11の先端部を含む領域に配置される。グリップ部14はゴム材等で構成され、グリップエンド13は金属等で構成される。ハンドルスイッチケース15は、グリップ部14に対して、ハンドルバー11の車体中央側(先端側とは反対側であり、
図4における左方;-X側)に隣接して配置されている。
【0012】
後述するように、各図を用いて、アクセルポジションセンサユニット(以下、APSユニット)100およびその取り付け構造、さらには、ハンドルバー11に対するスロットルパイプ12の取り付け構造が説明される。
【0013】
図2は、APSユニット100の斜視図である。
図3は、カプラの斜視図である。
図2に示すように、APSユニット100は、主に、アクセルポジションセンサ本体(以下、APS本体)30およびカプラ20(電気的接続部)を備える。
図2、
図3に示すように、カプラ20は、接続端子部21を備える。ハンドルバー11は円筒状であり、ハンドルバー11には穴11hが形成されている(
図1)。穴11hは、ハンドルスイッチケース15内において開口している。車体18が起立した状態において、穴11hは下方を向く。これにより、穴11hからハンドルバー11内への水滴の進入が抑制される。なお、この観点からは、穴11hは、水平方向よりも下方を向いていればよい。
【0014】
図1に示すように、車体18から延びたハーネス17の先端に車体側の電気的接続部である車体側カプラ16が取り付けられている。APSユニット100がハンドルバー11に適切に収容された状態では、穴11hにカプラ20の接続端子部21が位置する。この状態で且つ、ハンドルスイッチケース15を取り外した状態で、作業者は、穴11hを介してカプラ20の接続端子部21に車体側カプラ16を接続可能である。カプラ20の接続端子部21と車体側カプラ16とを結合することで、APS本体30と車体18とが電気的に接続される。
【0015】
図4、
図5は、スロットルグリップ装置の断面図である。これらの断面図は、ハンドルバー11の中心軸C1を含む平面による断面図である。ただし、
図4では、グリップエンド13の図示が省略されている。また、
図5では、グリップエンド13およびその周辺の断面が示されている。
図4、
図5では、グリップ部14の一部が仮想線で示されている。
図4、
図5において、左方がハンドルバー11の車体中央側(-X側)、右方がハンドルバー11の先端側(+X側)である。
【0016】
スロットルパイプ12は、中心軸C1の周りに、ハンドルバー11の外周面に沿って回動可能な状態でハンドルバー11に支持されている。スロットルパイプ12は略円筒状であり、運転手の操作に応じてハンドルバー11の中心軸C1の周りに回転する。APS本体30は、大別して、スロットルパイプ12と連動して回動する複数の回動部と、ハンドルバー11に対して固定関係にあってスロットルパイプ12と連動して回動しない複数の固定部と、を有する。複数の回動部は、主にシャフト41、磁石42、スプリングロータ44を含む。複数の固定部は、主にアウターケース31、台座35を含む(
図2も参照)。台座35は例えば鉄等の金属で構成される。
【0017】
シャフト41は中心軸C1に沿って延在する。磁石42は円筒形状であり、シャフト41に固定されている。スプリングロータ44は、ネジ45によってシャフト41に固定されている。シャフト41の周囲にリターンスプリング43が巻かれている。アウターケース31(筒状部)は円筒状の部材であり、リターンスプリング43を収容する第1ケース31xと磁石42を収容する第2ケース31yとから成る(
図4)。シャフト41、アウターケース31およびスロットルパイプ12は、ハンドルバー11と同軸に配置される。
【0018】
カプラ20には、センサIC等で構成される2つの磁気センサ34が接着等によって固定されている(
図3も参照)。磁気センサ34は接続端子部21に電気的に接続される。また、カプラ20には、2つの係合爪22(爪部)が形成されている(
図3で一方の係合爪22だけ図示される)。また、カプラ20の外周にOリング32が配置されている(
図3も参照)。
【0019】
磁気センサ34は、磁石42における、ハンドルバー11の先端部11aに対して遠い側の端部に対向して配置される。磁気センサ34においては、周方向、すなわちハンドルバー11の中心軸C1周りの回転方向に沿って複数の磁極が着磁されている。磁気センサ34はホール素子を有し、自身を通過する磁力線の向きや強さを検知する。これにより、磁気センサ34は、スロットルパイプ12の回転角を検出し、検出結果に基づく値を出力する。磁気センサ34の検出結果である検出信号は、カプラ20の接続端子部21に接続された車体側カプラ16を介して、車体18の制御部(図示せず)に供給される。これにより、スロットルパイプ12の回転位置が制御部によって把握され、スロットル制御等に利用される。
【0020】
図4に示すように、アウターケース31の端部のうち、ハンドルバー11の先端部11aに近い側の端部を第1の端部31a、第1の端部31aとは反対側の端部を第2の端部31bとする。アウターケース31の外周には、Oリング33が配置されている。アウターケース31には、カプラ20の2つの係合爪22と係合する係合部である2つの係合穴31hが形成されている(
図2で一方の係合穴31hだけ図示される)。カプラ20は、次のような態様で第2の端部31bに係止・固定される。カプラ20に磁気センサ34が接着固定された状態で、カプラ20における、磁気センサ34が配置された側の端部がアウターケース31内に挿入されている。カプラ20の2つの係合爪22が、アウターケース31の対応する係合穴31hにそれぞれ係合している。これにより、アウターケース31に対してカプラ20が配設・固定される。作業者は、中心軸C1方向においてカプラ20とアウターケース31とを互いに近づけて(カプラ20をアウターケース31内に挿入して)、さらに係合爪22と係合穴31hとを係合させる。これにより、アウターケース31に対してカプラ20を簡単(ワンタッチで)に固定することができる。なお、係合爪22と係合穴31hとの関係は逆であってもよい。すなわち、カプラ20とアウターケース31のいずれか一方に係合爪22を設けると共に他方に係合穴31hを設けてもよい。
【0021】
また、カプラ20がアウターケース31に挿入されて固定されると、カプラ20の外周に配置されたOリング32がアウターケース31の内周面に当接する。つまり、カプラ20の外周部はOリング32を介してAPS本体30(の特にアウターケース31)と接する。これにより、カプラ20の側からアウターケース31内への水滴の進入を抑制することができる。しかもカプラ20が安定して保持される。なお、水滴の進入抑制の観点からは、Oリング32に代えて他のシール部材を使用してもよい。例えば、一体成形によりカプラ20またはアウターケース31に一体に設けられたシール部材を採用してもよい。あるいは、カプラ20とアウターケース31との間を溶着、ポッティング材等で封止することで、水滴の進入抑制機能が果たされるようにしてもよい。
【0022】
図6は、APS本体30およびスロットルパイプ12の先端部の斜視図である。
図5に示すように、台座35は、アウターケース31に対して、ネジ36によって固定されている。また、台座35は、ネジ37によって、ハンドルバー11の先端部11aに固定されている。これにより、台座35を介してアウターケース31とハンドルバー11とが固定関係となる。スロットルパイプ12の先端部12aには、円周方向に長い逃げ部としての長穴12eが形成されている(
図5、
図6)。ネジ37は、スロットルパイプ12の長穴12eを介してハンドルバー11に螺合される。ネジ37の頭部が長穴12eに介在する。
【0023】
ネジ37は固定されているので、スロットルパイプ12の回動に伴い長穴12eが変位すると、ネジ37と長穴12eとの相対的な位置関係が変化する。相対的なネジ37の変位が長穴12eの長さの範囲内に収まるように、長穴12eの長さが設定されている。また、中心軸C1方向における長穴12eの幅は、ネジ37の頭部の直径より少し大きい。グリップエンド13の未装着状態において、スロットルパイプ12が中心軸C1方向に変位しようとした場合、ネジ37と長穴12eとが係合することで、スロットルパイプ12の変位が一定の範囲に規制される。従って、この状態でも、スロットルパイプ12はハンドルバー11から抜けることはない。
【0024】
また、スロットルパイプ12の先端部12aは、内径方向に延出する肉部である延出部12cを有すると共に、貫通穴である貫通部12dを有する(
図5、
図6)。台座35は固定されているので、スロットルパイプ12の回動に伴い貫通部12dが変位すると、台座35と貫通部12dとの相対的な位置関係が変化する。スロットルパイプ12の円周方向において、相対的な台座35の変位が貫通部12dの長さの範囲内に収まるように、貫通部12dの長さが設定されている。
【0025】
スロットルパイプ12の先端面12a1(延出部12cの先端面でもある)、台座35の先端面35cは、いずれも、車体中央側とは反対側(+X側)の端面である。グリップエンド13の未装着状態において、ネジ37が長穴12eを介してハンドルバー11に螺合され、且つ、スロットルパイプ12が最もハンドルバー11の-X側に変位したと仮定した状態において、先端面12a1よりも先端面35cの方が突出している。また、グリップエンド13の未装着状態で、ネジ37が長穴12eを介してハンドルバー11に螺合された状態では、台座35の対向面35aが、ハンドルバー11の先端部11aの先端面11a1に対して対向する。
【0026】
図5に示すように、長穴12eを介してネジ37によって台座35がハンドルバー11に固定された状態で、台座35とグリップエンド13とがネジ38(第1の締結部材)によって締結される。貫通部12dを介してネジ38でグリップエンド13と台座35とを締結することで、グリップエンド13の規制面13aと台座35の先端面35cとが当接する。これにより、グリップエンド13がハンドルバー11およびAPS本体30に対して固定関係になる。しかも、台座35の段差面である対向面35aとハンドルバー11の先端面11a1とが対向して近接または当接し、且つ、スロットルパイプ12の先端面12a1と規制面13aとの間にはクリアランスが生じている。従って、ハンドルバー11の先端部11aとグリップエンド13との間にスロットルパイプ12の延出部12cが回動可能に介在する。これにより、スロットルパイプ12は、回動可能でありながら、中心軸C1方向の変位が規制された状態でハンドルバー11に対して簡単に取り付けられる。
【0027】
すなわち、スロットルパイプ12が中心軸C1方向に変位しようとした場合、ハンドルバー11の先端部11aの先端面11a1とグリップエンド13の規制面13aとによって、スロットルパイプ12の中心軸C1方向の変位が規制される。従って、スロットルパイプ12は、ハンドルバー11から抜けることはない。上述のように、ネジ37と長穴12eとが係合することで、スロットルパイプ12はハンドルバー11から抜けない構成となっているが、グリップエンド13が装着されることで、一層確実にスロットルパイプ12の抜け止め機能が果たされる。ハンドルスイッチケース15内にスロットルパイプ12が挿入されず、中心軸C1方向におけるスロットルパイプ12の変位を規制するための機構をハンドルスイッチケース15内に設ける必要がないので、省スペースを図ることができる。
【0028】
上述のように、台座35の対向面35aとハンドルバー11の先端面11a1とは、通常、当接するか、または近接対向している。車体18が転倒したとき、グリップエンド13が地面等に接触し、打撃力や押圧力等の外力を受けることが想定される。グリップエンド13と台座35とは固定関係にあるから、グリップエンド13を介して台座35に外力が加わる。台座35が、ハンドルバー11の-X方向(中心軸C1方向に沿う内側方向)の成分を含む外力を受ける場合がある。この場合、台座35の対向面35aとハンドルバー11の先端面11a1とが強く当接、すなわち圧接するが、台座35が鉄等の金属で構成されるため容易に破損せず、外力をハンドルバー11へ伝えることができる。これにより、APSユニット100に過大な力が加わることが回避され、APSユニット100が保護される。
【0029】
ハンドルバー11に対するAPS本体30の固定状態を考察する。上述のように、複数の固定部のうち特に台座35が、第1の端部31aの近傍でハンドルバー11に固定されている。さらに、複数の固定部のうち特にアウターケース31が、第1の端部31aより第2の端部31bに近い位置で、Oリング33を介してハンドルバー11と接している。従って、APS本体30は、第1の端部31aの近傍(ネジ37の位置)と第2の端部31bの近傍(Oリング33の位置)の2箇所でハンドルバー11に支持されるので、ネジ37による1箇所での簡単な締結作業によるにもかかわらず、固定状態が安定する。Oリング33は制振機能の他、防水機能を果たす。なお、制振機能の確保の観点からは、Oリング33に代えて、例えば角断面形状のリングや弾性を有する材料で構成されるブロック等の別の弾性部材を設けてもよい。また、弾性部材の数や配置箇所は2以上であってもよい。また、弾性部材の形状は非円形状断面であってもよい。さらには、一体成形によりアウターケース31に一体に設けられた弾性部材を採用してもよい。
【0030】
運転者がスロットルパイプ12を回動させると、複数の回動部がスロットルパイプ12と連動して回動する。それと共に、スロットルパイプ12の不図示の係合部がスプリングロータ44を駆動することで、リターンスプリング43が発生させるスロットルパイプ12に対する復帰方向への付勢力が増加する。スロットルパイプ12の操作の終了後、スロットルパイプ12はリターンスプリング43からの付勢力によって初期位置へ戻される。
【0031】
スロットルグリップ装置の組み付けは次に例示する手順でなされる。まず、作業者は、カプラ20に磁気センサ34およびOリング32を配設する。一方、APS本体30に関しては、作業者は、アウターケース31内に、シャフト41、リターンスプリング43、磁石42、スプリングロータ44等の各部品を配置し、ネジ45によってスプリングロータ44をシャフト41に固定する。また、作業者は、ネジ36によって台座35をアウターケース31に固定し、さらに、アウターケース31の外周にOリング33を配置する。これにより、APS本体30が製造される。その後、作業者は、カプラ20をアウターケース31内に挿入し、係合爪22と係合穴31hとを係合させる。これにより、APSユニット100が得られる。
【0032】
次に、作業者は、ハンドルバー11内に先端部11a側からAPSユニット100を挿入する。次に作業者は、スロットルパイプ12の外周にグリップ部14を配置すると共に、スロットルパイプ12の内周にハンドルバー11が挿入されるように、先端部11a側からハンドルバー11の外周にスロットルパイプ12を配置する。次に、作業者は、スロットルパイプ12の長穴12eを介して、ネジ37によって台座35をハンドルバー11に固定する。その後、作業者は、スロットルパイプ12の貫通部12dを介してネジ38でグリップエンド13を台座35に固定する。
【0033】
本実施の形態によれば、カプラ20がアウターケース31に配設され且つ、APS本体30がハンドルバー11に収容された状態で、穴11hを介してカプラ20の接続端子部21に車体側カプラ16を接続することで、車体18に対してカプラ20を電気的に接続可能である。これにより、磁気センサ34と磁石42との位置決めは、APSユニット100の製造段階で完結しているから、磁気センサ34をハンドルバー11に取り付ける構成に比べて高い検出精度を確保するのが容易となる。また、組み付け時に、ハンドルバー11内にハーネスや磁気センサ34を通す必要がないので、取り付け工数が少なくて済む。よって、本実施の形態のアクセルポジションセンサユニットによれば、高い検出精度を確保しつつ取り付け工数を抑制することができる。しかも、車体側カプラ16の接続を外しネジ37を取り外すだけで、APSユニット100を車体18から取り外すことが可能であるため、メンテナンス性も向上する。
【0034】
また、カプラ20はアウターケース31の第2の端部31bに固定される。さらに、台座35が、アウターケース31の第1の端部31aの近傍で、ハンドルバー11に固定されると共に、アウターケース31は、第1の端部31aより第2の端部31bに近い位置で弾性部材であるOリング33を介してハンドルバー11と接する。これにより、APSユニット100は、固定箇所と離れた位置にてOリング33を介して支持されるので、APSユニット100を安定して固定できると共に、固定箇所は1箇所であり工数が少なくて済む。また、制振機能を確保することができる。
【0035】
また、カプラ20とAPS本体30との組み付けに関し、作業者は、中心軸C1方向においてカプラ20とアウターケース31とを互いに近づけ、さらに係合爪22と係合穴31hとを係合させることで、アウターケース31に対してカプラ20を簡単に固定できる。よって、APS本体30とカプラ20との固定が簡単である。
【0036】
また、カプラ20の外周部はOリング32を介してAPS本体30のアウターケース31と接するので、カプラ20を安定して保持できると共に、APS本体30側への水滴の進入を抑制することができる。
【0037】
また、台座35が、中心軸C1方向に沿う内側方向の成分を含む外力を受けたときに、台座35の対向面35aがハンドルバー11の先端面11a1と圧接するので、車体18の転倒時等においてAPS本体30を外力から保護することができる。
【0038】
また、ハンドルバー11の穴11hは、水平方向よりも下方を向いているので、ハンドルバー11内への水滴の進入を抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施の形態によれば、スロットルパイプ12の先端部12aは、内径方向に延出する延出部12cを有すると共に、貫通部12dを有する(
図5、
図6)。貫通部12dを介して、グリップエンド13と固定部材としての台座35とをネジ38で締結することで、ハンドルバー11の先端部11aとグリップエンド13との間に延出部12cが回動可能に介在する。これにより、スロットルパイプ12の取り付けに、ハンドルスイッチケース15内のスペースを用いたり、ハンドルスイッチケース15内にスロットルパイプ12を挿入したりする必要がない。また、1つのネジ38でグリップエンド13と台座35とを固定することで、ハンドルバー11の先端部11aとグリップエンド13とによって、スロットルパイプの軸方向への変位が規制されるので、スロットルパイプ12の取り付けが簡単である。よって、本実施の形態のスロットルパイプの取り付け構造によれば、ハンドルバー11に対するスロットルパイプ12の取り付けを簡素化して省スペースを図ることができる。
【0040】
また、スロットルパイプ12に形成された逃げ部としての長穴12eを介して、ネジ37によって台座35とハンドルバー11とが締結される。ネジ37と長穴12eとが係合することで、ハンドルバー11に対するスロットルパイプ12の軸方向の変位が規制される。従って、例えば、グリップエンド13の交換のためにグリップエンド13が取り外された状態であっても、スロットルパイプ12の抜け止め機能が果たされる。
【0041】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0042】
例えば、高い検出精度を確保しつつ取り付け工数を抑制する観点からは、磁気センサ34は、APSユニット100が製造された段階で、APS本体30に対して固定関係となっていて、且つ、磁石42に対して位置決めされていればよい。従って、磁気センサ34は、カプラ20に固定されることは必須でなく、APS本体30に固定される構成であってもよい。
【0043】
また、磁気センサ34とハーネス17との接続はカプラ20に限らず、はんだや溶接等で接続される構成であってもよい。
【0044】
また、ハンドルバー11に対するスロットルパイプ12の取り付けを簡素化して省スペースを図る観点からは、ハンドルバー11に挿入される部品はAPSユニット100であることは必須でなく、センサ機能を有する部品であることも必須でない。従って、ネジ38によってグリップエンド13と締結される固定部材は台座35に限定されない。例えば、上記固定部材は、スロットルパイプ12の回転角を検出するセンサユニットを構成する部品のうちハンドルバー11に対して相対的に回動しない部品であってもよい。この場合のセンサユニットは、ワイヤを用いるタイプであってもよい。あるいは、上記固定部材は、スロットルパイプ12の回転角を検出するセンサユニットの一部であってもよい。この場合の「一部」とは、センサユニットと一体に形成される部分であってもよいし、別部材として組み付けられて一体となった部分であってもよい。従って、アウターケース31の一部が上記固定部材として機能する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
11 ハンドルバー
11h 穴
11a、12a 先端部
12 スロットルパイプ
12c 延出部
12d 貫通部
13 グリップエンド
20 カプラ
30 アクセルポジションセンサ本体
31 アウターケース
34 磁気センサ
35 台座
38 ネジ
42 磁石
100 アクセルポジションセンサユニット
C1 中心軸