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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ダニ捕獲用物品
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20230608BHJP
   A01M 1/10 20060101ALI20230608BHJP
   A01N 63/32 20200101ALI20230608BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
A01M1/14 E
A01M1/10 Z
A01N63/32
A01P19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019199477
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021069347
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川元 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大山 拓記
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3138086(JP,U)
【文献】特開2003-159169(JP,A)
【文献】特開2015-100299(JP,A)
【文献】特許第6532995(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00-99/00
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードルパンチ不織布にて構成された収容袋の内部に、ダニ誘引剤を保持した誘引剤保持体と、ダニを捕獲するための粘着剤を含むダニ捕獲体とが収容され、前記収容袋を構成するニードルパンチ不織布は、厚みが0.5~3.0mmであり、目付が100~500g/mであり、かつ黒色であることを特徴とするダニ捕獲用物品。
【請求項2】
ニードルパンチ不織布には、不織布表面に、各孔の孔径が0.1~0.6mmであるニードルパンチ微多孔を有することを特徴とする請求項1記載のダニ捕獲用物品。
【請求項3】
アレルゲン抑制成分を含有することを特徴とする請求項1または2記載のダニ捕獲用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダニ捕獲用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
寝具類の間、カーペットと床との間、あるいは押し入れの中等において用いられるダニ捕獲用物品として、特許文献1に記載されたダニ取りシートが知られている。このダニ取りシートは、誘引剤シート上に、片面粘着シートがその非粘着面を誘引剤シートの側として置かれ、それらが布帛にて包まれたものである。誘引剤シートは、ダニ誘引剤を含有する粉末を、ダニ誘引剤の香気を通過させる通気性を持つ不織布製袋体または紙製袋体の内部に収納したものである。布帛としては、ダニが通過しうる粗目となっている織物または編物が用いられる。布帛の構成繊維には、アレルゲン抑制成分が付与されている。
【0003】
このような構成であることにより、ダニ誘引剤の香気が外部に放出されやすく、かつ、寝具類の間に挿入しても嵩張らず、しかも、ダニの死骸がアレルギーの原因とならないダニ取りシートが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3138086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した特許文献1に記載のダニ取りシートに比べて、ダニの捕獲性能を向上させたダニ捕獲用物品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のダニ捕獲用物品は、ニードルパンチ不織布にて構成された収容袋の内部に、ダニ誘引剤を保持した誘引剤保持体と、ダニを捕獲するための粘着剤を含むダニ捕獲体とが収容され、前記収容袋を構成するニードルパンチ不織布は、厚みが0.5~3.0mmであり、目付が100~500g/mであり、かつ黒色であることを特徴とする。
【0007】
本発明のダニ捕獲用物品は、前記ニードルパンチ不織布の表面に、各孔の孔径が0.1~0.6mmであるニードルパンチ微多孔を有するとよい。
【0008】
本発明のダニ捕獲用物品は、アレルゲン抑制成分を含有することが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のダニ捕獲用物品によると、誘引剤保持体とダニ捕獲体とのための収容袋は、厚みが0.5~3.0mmであり、目付が100~500g/mであるニードルパンチ不織布にて構成されているために、ダニが好む潜みやすい空隙および嵩高性を発現するものであり、このために従来の製品に比べてダニの捕獲性を向上させることができる。また、理由は不明であるが、同ニードルパンチ不織布を黒色とすることによって、それ以外のたとえば白色系の色彩である場合に比べてダニの捕獲性を向上させることもできる。
【0010】
また本発明のダニ捕獲用物品によると、上記に加えてアレルゲン抑制成分を含有することで、さらに、捕獲したダニの死骸がアレルギーの原因となることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
誘引剤保持体は、たとえば、ダニ誘引剤を含有する粉末を、このダニ誘引剤の香気を通過させる通気性を持つ不織布製袋体内や紙製袋体内に収容させたシート状のものを、好適に用いることができる。
【0012】
ダニ誘引剤を含有する粉末としては、マイクロカプセル内にダニ誘引剤を収納させたものや、樹脂粉末にダニ誘引剤を吸着させたもの等が用いられる。ダニ誘引剤としては、従来公知のもの、たとえばフルーツエキス、アーモンド、チョコレート等の、人に対して不快感を与えないものが用いられる。なかでも、徐放性マイクロカプセル内に、フルーツエキスを酵母で発酵させた物質を収納したものを用いるのが好ましい。フルーツエキスを酵母で発酵させたものはダニの誘引効果に優れており、またマイクロカプセルが徐放性であるので、ダニの誘引効果が長期間持続しうるためである。
【0013】
上述のダニ誘引剤を含有する粉末を不織布製袋体または紙製袋体内に収納すると、その収容状態で誘引剤保持体が形成される。ダニ誘引剤を含有する粉末は、そのまま不織布製袋体または紙製袋体内に収納してもよいが、袋体内において粉末が偏在する恐れがあるため、キルティング等により袋体内を小室に分割し、その中に同粉末を収納するのが好ましい。また、ダニ誘引剤を含有する粉末を不織布シートまたは紙シートの中や表面に担持させたうえで、袋体の内部に収納するのも好ましい。不織布シートまたは紙シートの中に担持させるには、不織布シートまたは紙シートとして複数枚の不織布または紙を積層し、その層間に粉末を挟み込めばよい。不織布シートまたは紙シートの表面に粉末を担持させるには、不織布シートまたは紙シートの表面に粉末を散布して、弱加圧して固定させればよい。
【0014】
袋体を構成する不織布または紙としては、ダニ誘引剤の香気を通過することができる通気性を持つものが採用される。ダニ誘引剤の香気が通過しないと、誘引効果が不十分となるためである。また、不織布または紙の目の粗さは、ダニ誘引剤を含有する粉末が外部に漏れ出ない程度のものが好ましい。ダニ誘引剤を含有する粉末は、一般的に凝集して塊状となっているため、不織布または紙の目の粗さは粉末の大きさよりも大きくても差し支えないが、あまり目の粗さが大きすぎると、粉末の凝集した塊状物が脱落してしまう。不織布または紙としては、抄紙法で得られるものを採用するのが好ましい。抄紙法で得られた不織布または紙は、一般的に、ダニ誘引剤の香気を通過させることができる通気性と、粉末の凝集した塊状物の脱落を防止することができる目の細かさとを持っているからである。
【0015】
不織布または紙の構成繊維としては、パルプ繊維、天然繊維、合成繊維等が用いられる。特に、構成繊維の一部として熱融着繊維を含んでいるのが好ましい。これは、以下の手段によって袋体を形成することができるからである。すなわち、二枚の矩形状の不織布または紙の間に、ダニ誘引剤を含有する粉末をそのまま収容するか、または粉末を担持させた不織布シートや紙シートを挿入した後、その端辺縁の四辺を加熱及び加圧することで熱融着繊維を融着させ、繊維同士を接合して袋体を形成することができる。また、一枚の不織布または紙を折り曲げ、その折り曲げにより形成された二枚の間に粉末を挿入した後、端辺縁の三辺を加熱および加圧して、熱融着繊維を融着させ繊維同士を接合して袋体を形成することもできる。このように、袋体の端辺縁を融着接合させておくと、できあがった誘引剤保持体の端辺から粉末が脱落しにくくなる。袋体を形成するときには、融着接合だけではなく、端辺縁を縫製しても差し支えない。
【0016】
上述した袋体の内部にダニ誘引剤を含有する粉末を収容した構成の誘引剤保持体のほかに、ダニ捕獲体としての片面粘着シートが、シート状の誘引剤保持体に重なった状態で、ニードルパンチ不織布にて構成された収容袋の中に配置される。片面粘着シートは、シート状の支持体の片面すなわち一方の面に、粘着剤が担持されたものである。支持体における他方の面は、同支持体が露出しており、粘着剤は担持されていない。このため、片面粘着シートにおいて、シート状の誘引剤保持体に接するのは、その非粘着面、すなわち支持体における上記の他方の面である。したがって、誘引剤保持体と片面粘着シートとは接着しておらず、単に積層されているだけである。このため、誘引剤保持体からの香気の放出を妨げることがない。反対に、上記した片面粘着シートに代えて両面粘着シートを用いると、誘引剤保持体と両面粘着シートとが接着してしまい、香気の放出を妨げてしまう。
【0017】
片面粘着シートにおける支持体としては、紙、不織布、編織物等を好適に用いることができる。片面粘着シートにおける粘着剤としては、例えば、高粘性であり、市場で入手できる、JXTGエネルギー社製の製品名「エバータック」を好適に用いることができる。
【0018】
片面粘着シートは、シート状の誘引剤保持体の一方の面のみに沿って設けることができるし、同誘引剤保持体の一方および他方の面に沿って、すなわち誘引剤保持体の両面に沿って設けることもできる。誘引剤保持体の両面に沿って設ける方が、ダニを捕獲する箇所が多くなる利点がある。片面粘着シートは、誘引剤保持体よりも小面積である方が好ましい。誘引剤保持体が露出している部分が多いほど、ダニを誘引しやすいからである。
【0019】
本発明のダニ捕獲用物品は、上記の誘引剤保持体と片面粘着シート(ダニ捕獲体)とが、ニードルパンチ不織布にて構成された収容袋の内部に取り込まれたものである。このニードルパンチ不織布は、厚みが0.5~3.0mmであり、目付が100~500g/mであり、かつ黒色である。なお、より好ましい厚みは、1.0~3.0mmである。
【0020】
上記のように厚みが0.5~3.0mmであり、その目付が100~500g/mであるニードルパンチ不織布であるために、ダニが好む潜みやすい空隙および嵩高性を発現することになる。これによって誘因効果が高まるとともに、誘引剤の誘引作用との相乗効果によってダニ捕獲性が格段に向上する。厚みが0.5mm未満であったり、目付が100g/m未満であったりすると、ダニが好む潜みやすい空隙および嵩高性が得られず、ダニの捕獲性向上が得られない。厚みが3.0mmを超えたり、目付が500g/mを超えたりすると、誘引剤の香気作用やダニが通過しうる空隙の形成が阻害されて、ダニ捕獲性の向上が認められない。また、ニードルパンチ不織布表面には、ニードルパンチによる各孔の孔径が0.1~0.6mmである微多孔を有することが好ましく、不織布表面に微多孔を有することにより、誘引剤保持体や粘着シートへのダニの誘導性をより高めることができる。収容袋を構成するニードルパンチ不織布は長繊維または短繊維を構成繊維とし、この構成繊維は、任意の熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。同構成繊維の単糸繊度は、2~5デシテックスであると、ニードルパンチ不織布の柔軟性が良好であることから、ダニの捕獲性が向上すると考えられ、好適である。さらに、理由は不明であるが、黒色不織布とすることにより白色などの他の色彩の不織布と比べてダニの捕獲性が向上する。
【0021】
収容袋を構成するニードルパンチ不織布の構成繊維には、アレルゲン抑制成分が付与されていてもよい。アレルゲン抑制成分としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ポリ-4-ビニルフェノールやポリ-3-ビニルフェノール等のポリビニルフェノール、ポリ-3,4,5-ヒドロキシ安息香酸ビニルやポリ-(1-ビニル-5-ヒドロキシナフタレン)等の芳香族ヒドロキシ化合物、2-ヒドロキシフラン、2-ヒドロキシチオフェン、ヒドロキシベンゾフラン、3-ヒドロキシピリジン等の芳香族複素環式ヒドロキシ化合物等が挙げられる。特に、ポリ-4-ビニルフェノールを用いるのが好ましい。これらのアレルゲン抑制成分は、重合性成分であるため、他の重合性モノマーと混合した溶液を、収容袋を構成するニードルパンチ不織布に付与し、その後に重合すれば、ニードルパンチ不織布の構成繊維にアレルゲン抑制成分を付与することができる。このような方法でアレルゲン抑制成分を付与すると、構成繊維表面に直接アレルゲン抑制成分が結合した状態となり、脱落しにくくなるので、アレルゲン抑制効果を長期間維持することができる。このようなアレルゲン抑制成分の付与方法は、特開2005-206955公報に詳細に記載されている。
【0022】
本発明の実施の形態のダニ捕獲用物品を得るには、たとえば、縦25cm×横13cmの誘引剤保持体上に、縦20cm×横6cmの片面粘着シート(ダニ捕獲体)を、その支持体側が誘引剤保持体に接するように置き、そして両者の全体をニードルパンチ不織布製の収容袋に入れたうえで、同収容袋の開口端縁を縫い合わせればよい。このようなダニ捕獲用物品を、寝具類の間や、カーペットと床の間などに挿入しておけば、ダニが誘引され、このダニは、片面粘着シートの粘着剤によって捕獲される。
【実施例
【0023】
実施例1
収容袋を構成するニードルパンチ不織布として、黒色に着色されたポリエチレンテレフタレート重合体を用いた単糸繊度3デシテックスの長繊維からなる不織布であって、構成繊維同士がニードルパンチ処理により交絡しており、目付が200g/m、厚みが2mmであり、孔径が0.1~0.5mmの範囲で分布しているニードルパンチ微多孔を有するもの(ユニチカ社製 製品名:マリックス「AN200黒」)を用いた。
【0024】
また、二酸化けい素(SiO)を壁材とした徐放性無機質マイクロカプセルにフルーツエキスを充填し、さらにそのフルーツエキスを酵母で発酵させたダニ誘引剤0.5gを準備した。そして、このダニ誘引剤をパルプシート(サイズ80mm×200mm、目付100g/m)に散布し、その上下にティッシュ紙(サイズ80mm×200mm、目付24g/m)をそれぞれ積層して、上記のパルプシートを間に挟み込み、これらを外装不織布「ヒートロン」(日本製紙パピリア社の紙製不織布の商品名、サイズ100mm×200mm、目付30g/m)の袋体の内部に収納し、縁を熱圧着することで、誘引剤保持体を形成した。
【0025】
ダニ捕獲体として、タテ200mm×ヨコ60mmの片面粘着シート(JXTGエネルギー社製、製品名:エバータックシート)を準備した。
【0026】
上述のニードルパンチ不織布であって、タテ248mm×ヨコ148mmの矩形状にカットしたものを準備した。次に上述のタテ200mm×ヨコ100mmのシート状の誘引剤保持体1枚の上に、上述のタテ200mm×ヨコ60mmの片面粘着シート(ダニ捕獲体)を、片面粘着シートの支持体側が誘引剤保持体に接するように置き、その全体を2枚のニードルパンチ不織布で挟み込んだ。そのうえで、不織布の端縁を縫製糸(三山社製、製品名:ホシカブトウーリー 色番290およびサンカブトスパン 色番290)にてオーバーロック縫製することで、実施例1のダニ捕獲用物品を得た。
【0027】
実施例2
収容袋を構成するニードルパンチ不織布として、黒色に着色されたポリエチレンテレフタレート重合体を用いた単糸繊度3デシテックスの長繊維からなる不織布であって、構成繊維同士がニードルパンチ処理により交絡しており、目付が300g/m、厚みが3mmであり、孔径が0.1~0.5mmの範囲で分布しているニードルパンチ微多孔を有するもの(ユニチカ社製 製品名:マリックス「AN300黒」)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、実施例2のダニ捕獲用物品を得た。
【0028】
比較例1
収容袋を構成する布帛として、実施例1のニードルパンチ不織布に代えて、ポリエステル仮撚り加工糸を用いて得られたジャガード織物(厚み0.57mm)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、比較例1のダニ捕獲用物品を得た。
【0029】
比較例2
実施例2と比べて、収容袋を構成するニードルパンチ不織布の色彩を白色とした目付が300g/m、厚みが3mmのもの(ユニチカ社製 製品名:マリックス「AN300白)を用いた。そして、それ以外は実施例2と同様にして、比較例2のダニ捕獲用物品を得た。
【0030】
得られた実施例1、2および比較例1、2のダニ捕獲用物品について、ダニ捕獲性を評価した。評価は下記の方法に基づき行った。
【0031】
1.ダニ捕獲性1(ダニ移動確認試験 1)
実施例1および比較例1で得られたダニ捕獲用物品を直径45mmの円形に切り抜いたものを試料とした。なお、ダニ捕獲用物品から円形の試料を切り抜くにあたっては、ダニ捕獲用物品の中央部分であって、「収容袋の下側の布帛/シート状の誘因剤保持体/片面粘着シート/収納袋の上側の布帛」のすべてが積層された状態で存在するように切り抜いた。
【0032】
50mmガラスシャーレ(内径約45mm)の内部底面に、前記の試料を敷き、その上に同径の無加工カーペット(JIS L 1920 7.2無加工試料 a)カーペット)を敷いた。
【0033】
さらに、無加工カーペット上に、30mmガラスシャーレ(内径約27mm)を置き、この30mmガラスシャーレの内部底部に、供試ダニを約10000個体含むダニ培地を均一に広げ、これを試験体とした。実施例1、比較例1の試料を用いた試験体をそれぞれ9個作成し、試験体は、湿度約75%RH、25℃の遮光した恒温室に設置し、設置から2日後、4日後、8日後に、それぞれの試験体を3個ずつ取り出し、試料に移動したダニ数を計数した。計数にあたっては、上述の積層状態の試料を各層ごとに分解し、各層ごとに実体顕微鏡を用いて計数し、その合計値を求めた。
【0034】
結果は、表1に示すとおりであり、比較例1のジャガード織物を収納袋とするダニ捕獲用物品と比べて、本発明の実施例1のダニ捕獲用物品は、ダニの移動数が極めて多く、また、日数を経るごとに移動数が際立って増えており、本発明のダニ捕獲用物品は、捕獲性に極めて優れることがわかる。
【0035】
【表1】
【0036】
2.ダニ捕獲性2(ダニ移動確認試験 2)
実施例1、2および比較例2で得られたダニ捕獲用物品を試料とした。それぞれの試料を、試験容器(食品保存用樹脂容器 容量約13リットル、幅約32cm×奥行44cm×高さ約9.5cm)の底面中央に設置した。
【0037】
供試ダニ約10000個体含むダニ培地を、容器底面の試料の周囲へ、試料に直接接触しないように散布した。試験容器内の湿度を約75%RHに保つため、飽和食塩水30ml入りの小容器1つを試験容器底面隅に入れ、試験容器を食品保存用ラップで密閉し、室温下(25~28℃)に24時間放置した。
【0038】
24時間経過後、試験容器から試料を取り出し、試料に移動したダニ数を計数した。計数にあたっては、まず試料に切り込みを入れて開き、試料の全体から内部の粘着シートだけを取り出して実態顕微鏡下で直接計数した。粘着シート以外の収容袋、誘引剤保持体は、金属製篩(20メッシュ)の上で、水道水を勢いよく吹き付けてまんべんなく洗い、洗い水を全量回収して濾紙に通し、濾紙上に残ったダニを実体顕微鏡下で計数した。なお、この水洗いは、洗い水の供試ダニが検出されなくなるまで繰り返し行った。そして、両方の計数値の合計値を求めた。
【0039】
結果は、比較例2の白色のニードルパンチ不織布を収納袋とするダニ捕獲用物品へ移動したダニが1003個体であるのに対して、実施例1は1586個体、実施例2は1221個体であり、本発明の実施例1の黒色のニードルパンチ不織布を収納袋とするダニ捕獲用物品は、ダニの移動数が多く、捕獲性に優れていた。