(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】路側無線機および無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/44 20180101AFI20230608BHJP
H04W 12/12 20210101ALI20230608BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20230608BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20230608BHJP
【FI】
H04W4/44
H04W12/12
H04W72/0453
H04W28/04 110
(21)【出願番号】P 2019200649
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 卓
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 誠治
【審査官】米倉 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0147668(US,A1)
【文献】特開平11-127468(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載無線機から無線データパケットを受信する第1の無線部と、
前記無線データパケットに含まれるアプリケーションデータを処理する第1のアプリケーション部と、を備え、
前記無線データパケットは、前記車載無線機の第2の無線部によって付与された車両識別情報および前記車載無線機の第2のアプリケーション部によって付与された通信種別情報を含み、
前記車両識別情報は、前記車載無線機が搭載される車両を示す情報であり、
前記通信種別情報は、前記アプリケーションデータが関連する車両を示す情報であり、
前記車両識別情報および前記通信種別情報は、車両の種類を識別する車両クラス情報を用いて示され、
前記第1の無線部は、前記車両識別情報のデータ列と前記通信種別情報のデータ列とを比較して、前記無線データパケットの相関の有無を判断する相関処理部を有する無線データ処理部を備え、
前記相関処理部が前記無線データパケットに相関があると判断した場合、前記第1の無線部は、前記無線データパケットに含まれる前記アプリケーションデータを前記第1のアプリケーション部へ出力し、
前記相関処理部が前記無線データパケットに相関がないと判断した場合、前記第1の無線部は、前記無線データパケットを無効なデータとして扱い、
前記無線データ処理部は、前記相関処理部が前記無線データパケットに相関がないと判断した場合、なりすまし無線機の情報として、前記車載無線機を識別するためのなりすまし情報を生成し、
前記第1の無線部は、前記車載無線機から無線通信用の周波数チャネルの割当を要求するための周波数チャネル要求信号を受信した場合、前記なりすまし情報に基づいて、前記車載無線機に対して周波数チャネルを割り当てるか否かを判断する第1の周波数チャネル割当制御部をさらに含み、
前記無線データ処理部は、前記相関処理部において、前記無線データパケットに相関がないと判断された数を計測し、計測した数に応じて、前記無線データパケットの再送を指示する第1の再送指示部をさらに有し、
前記第1の無線部は、前記第1の再送指示部からの指示に基づいて、前記無線データパケットの再送を要求するための第1の再送要求信号を前記車載無線機へ送信する、
路側無線機。
【請求項2】
請求項
1に記載の路側無線機であって、
前記無線データ処理部は、前記第1の再送指示部が計測した数が所定値に達した場合、前記なりすまし情報を生成する、
路側無線機。
【請求項3】
請求項2に記載の路側無線機と、
前記路側無線機と無線通信を行う前記車載無線機と、を備える無線通信システムであって、
前記車載無線機は、
前記通信種別情報および前記アプリケーションデータを含むアプリケーションデータパケットを生成する前記第2のアプリケーション部と、
前記車両識別情報および前記アプリケーションデータパケットを含む前記無線データパケットを生成し、生成した前記無線データパケットを前記路側無線機へ送信する前記第2の無線部と、を備え、
前記第1の再送要求信号を受信し、前記無線データパケットの再送処理を行う、
無線通信システム。
【請求項4】
車載無線機から無線データパケットを受信する第1の無線部と、
前記無線データパケットに含まれるアプリケーションデータを処理する第1のアプリケーション部と、を備え、
前記無線データパケットは、前記車載無線機の第2の無線部によって付与された車両識別情報および前記車載無線機の第2のアプリケーション部によって付与された通信種別情報を含み、
前記車両識別情報は、前記車載無線機が搭載される車両を示す情報であり、
前記通信種別情報は、前記アプリケーションデータが関連する車両を示す情報であり、
前記車両識別情報および前記通信種別情報は、車両の種類を識別する車両クラス情報を用いて示され、
前記第1の無線部は、前記車両識別情報のデータ列と前記通信種別情報のデータ列とを比較して、前記無線データパケットの相関の有無を判断する相関処理部を有する無線データ処理部を備え、
前記相関処理部が前記無線データパケットに相関があると判断した場合、前記第1の無線部は、前記無線データパケットに含まれる前記アプリケーションデータを前記第1のアプリケーション部へ出力し、
前記相関処理部が前記無線データパケットに相関がないと判断した場合、前記第1の無線部は、前記無線データパケットを無効なデータとして扱い、
前記無線データ処理部は、前記相関処理部が前記無線データパケットに相関がないと判断した場合、なりすまし無線機の情報として、前記車載無線機を識別するためのなりすまし情報を生成し、
前記第1の無線部は、前記車載無線機から無線通信用の周波数チャネルの割当を要求するための周波数チャネル要求信号を受信した場合、前記なりすまし情報に基づいて、前記車載無線機に対して周波数チャネルを割り当てるか否かを判断する第1の周波数チャネル割当制御部をさらに含み、
前記無線データ処理部は、前記相関処理部において、前記無線データパケットに相関がないと判断された数を計測し、計測した数に応じて、前記無線データパケットの再送および前記無線データパケットの一部のデータの変更を指示する第2の再送指示部をさらに有し、
前記第1の無線部は、前記第2の再送指示部からの指示に基づいて、前記無線データパケットの再送および前記無線データパケットの一部のデータの変更を要求するための第2の再送要求信号を前記車載無線機へ送信する、
路側無線機。
【請求項5】
請求項
4に記載の路側無線機であって、
前記相関処理部は、前記無線データパケットの一部のデータが期待値に変更されたことを確認した場合、前記無線データパケットに相関があると判断する、
路側無線機。
【請求項6】
請求項
5に記載の路側無線機であって、
前記無線データ処理部は、前記第2の再送指示部が計測した数が所定値に達した場合、前記なりすまし情報を生成する、
路側無線機。
【請求項7】
請求項6に記載の路側無線機と、
前記路側無線機と無線通信を行う前記車載無線機と、を備える無線通信システムであって、
前記車載無線機は、
前記通信種別情報および前記アプリケーションデータを含むアプリケーションデータパケットを生成する前記第2のアプリケーション部と、
前記車両識別情報および前記アプリケーションデータパケットを含む前記無線データパケットを生成し、生成した前記無線データパケットを前記路側無線機へ送信する前記第2の無線部と、を備え、
前記第2の再送要求信号を受信し、前記無線データパケットの一部を変更し、一部を変更した前記無線データパケットの再送処理を行う、
無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側無線機および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車間通信および路車間通信などの自動車における無線通信技術が知られている。自動運転技術の実用化において、これらの無線通信技術におけるセキュリティの必要性はますます重要になってきている。例えば、特許文献1には、リプレイアタックによるなりすましを検出する技術が開示されている。
【0003】
悪意のある第三者がGPS(Global Positioning System)モジュールに改造を加えることによって、外部時刻情報が改竄される脅威がある。特許文献1に開示された技術は、V2X(Vehicle to X)モジュールへの電源供給が再開された後、新たに取得される外部時刻情報と電源投入以前の内部時刻情報を比較することによって、外部時刻情報が改竄されているかどうかを検証する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無線通信装置のアプリケーション部が実行するアプリケーションに改竄が加えられることによって無線通信装置がなりすまし無線通信装置となっている場合には、特許文献1に開示された技術では、当該なりすまし無線通信装置を検出することができない。
【0006】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態に係る路側無線機は、車載無線機から無線データパケットを受信する第1の無線部と、アプリケーションデータを処理する第1のアプリケーション部と、を備える。第1の無線部は、車両識別情報のデータ列と通信種別情報のデータ列とを比較して、無線データパケットの相関の有無を判断する相関処理部を有する無線データ処理部を備える。相関処理部が無線データパケットに相関があると判断した場合、第1の無線部は、無線データパケットに含まれるアプリケーションデータを第1のアプリケーション部へ出力する。相関処理部が無線データパケットに相関がないと判断した場合、第1の無線部は、無線データパケットを無効なデータとして扱う。
【発明の効果】
【0008】
実施の形態によれば、車載無線機のアプリケーション部に改竄が加えられることによって車載無線機がなりすまし無線機となっている場合であっても、路側無線機は、なりすまし無線機を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る車載無線機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る周波数チャネル割当制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る路側無線機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る周波数チャネル割当制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、車載無線機から送信される無線データパケットのデータ構成を示す構成図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る路側無線機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施の形態3に係る路側無線機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3に係る車載無線機の構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、車載無線機から送信される無線データパケットのデータ構成を示す構成図である。
【
図11】
図11は、車載無線機および路側無線機のH/W構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0011】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る無線通信システム100の構成の一例を示す図である。
図1に示されるように、無線通信システム100は、車両110に搭載された無線通信装置111、車両120に搭載された無線通信装置121および路側機130に搭載された無線通信装置131を含む。以下、無線通信装置111および121は、車載無線機111および121と称される。また、無線通信装置131は、路側無線機131と称される。
【0012】
車両110および120は、それぞれに搭載された車載無線機111および121を用いて、路側機130に搭載された路側無線機131との間でメッセージの送受信を行う。車両110および120から送信されるメッセージには、例えば、自車両の速度や進行方向などの車両情報が含まれる。車両110および120は、路側機130を経由して、互いの車両情報を交換することができる。また、路側機130からは、信頼性の高い周辺情報を含むメッセージが、車両110および120に送信される。車両110および120は、これらのメッセージを送受信することにより、車間距離の維持などの運転制御を適切に行うことができる。
【0013】
図1の無線通信システム100では、車載無線機111および121以外にも、不図示の車両に搭載された多くの車載無線機を含む。また、無線通信システム100に含まれる車載無線機は、様々なアプリケーションを実行し、多くのメッセージの送受信を行う。このように、多くのメッセージが送受信される無線通信システム100では、十分な通信リソースを確保することが、安定した通信を実現する上で重要となる。
【0014】
しかしながら、例えば、車載無線機121がなりすまし無線機となっている場合には、このなりすまし無線機から送信されるメッセージによって、通信リソースが無駄に消費される。すなわち、通信リソースが十分に確保されないと、正常な無線通信装置、例えば、車載無線機111もしくは路側無線機131は、メッセージを適切に送信できない恐れがある。この状況を回避するためには、なりすまし無線機を適切に検出し、検出したなりすまし無線機を無線通信システム100から排除することが必要である。以下、なりすまし無線機の検出および排除する仕組みについて説明する。
【0015】
次に、実施の形態1に係る車載無線機について説明する。
図2は、実施の形態1に係る車載無線機111の構成の一例を示すブロック図である。車載無線機111および121は、同一の構成を有するため、ここでは車載無線機111の構成のみが説明される。
図2に示されるように、車載無線機111は、アプリケーション部(第2のアプリケーション部)210および無線部(第2の無線部)220を備える。アプリケーション部210および無線部220は、互いに接続されている。
【0016】
車載無線機111が路側無線機131に対してデータの送信処理を開始する場合に、アプリケーション部210は、アプリケーションデータパケットを生成する。アプリケーション部210は、アプリケーションデータパケットを無線部220へ出力する。
【0017】
アプリケーションデータパケットは、アプリケーションヘッダ、通信種別情報およびアプリケーションデータから構成される。アプリケーションヘッダは、アプリケーションデータパケットの先頭を示す情報である。通信種別情報は、アプリケーションデータが関連する車両を示す情報である。アプリケーションデータは、アプリケーションが処理するデータである。
【0018】
通信種別情報は、車両クラス情報によって示される。車両クラス情報は、車両が一般車両であるのか、それとも特殊車両であるのかを識別する情報である。特殊車両には、緊急車両と旅客車両が含まれる。例えば、緊急車両としては、救急車両、消防車両、警察車両などが例示される。旅客車両としては、バス、タクシー、鉄道車両などが例示される。なお、特殊車両は、緊急車両と旅客車両を区別するようにしてもよい。
【0019】
また、車載無線機111が路側無線機131からのデータの受信処理を行う場合に、アプリケーション部210は、復調されたアプリケーションデータパケットを無線部220から受け取る。アプリケーション部210は、受け取ったアプリケーションデータパケットに含まれるアプリケーションデータを処理する。
【0020】
無線部220は、セキュアアプリケーションモジュール(SAM)230、無線データ生成部240、無線データ処理部250、周波数チャネル割当制御部(第2の周波数チャネル割当制御部)260、無線信号変調部270および無線信号復調部280を備える。
【0021】
SAM230は、アプリケーション部210に接続される。SAM230は、送信処理を行う場合に、アプリケーション部210からアプリケーションデータパケットを受け取る。SAM230は、アプリケーションデータパケットに、SAMヘッダおよびアプリケーション関連情報を付加することにより、SAMデータパケットを生成する。SAM230は、無線データ生成部240に接続され、生成したSAMデータパケットを無線データ生成部240へ出力する。
【0022】
SAMヘッダは、SAMデータパケットの先頭を示す情報である。アプリケーション関連情報は、車両識別情報および予約領域データから構成される。車両識別情報は、車載無線機111が搭載されている車両を示す情報である。車両識別情報は、通信種別情報と同様に、車両クラス情報によって示される。つまり、車両クラス情報は、車両識別情報と通信識別情報において、共通に使用されている。予約領域データは、今後のシステム拡張に備えた予備の情報領域のデータである。
【0023】
また、SAM230は、無線データ処理部250に接続される。SAM230は、受信処理を行う場合に、無線データ処理部250から復調されたSAMデータパケットを受け取る。SAM230は、復調されたSAMデータパケットからアプリケーションデータパケットを復調する。具体的には、SAM230は、復調されたSAMデータパケットからSAMヘッダおよびアプリケーション関連情報を取り除き、アプリケーションデータパケットを復調する。その際、SAM230は、取り除いた情報の一部をアプリケーションデータに含める処理を行う。このようにして、復調されたアプリケーションデータパケットは、無線部220のSAM230からアプリケーション部210へ出力される。
【0024】
無線データ生成部240は、SAM230から受け取ったSAMデータパケットに、無線通信用の情報が含まれる無線部ヘッダを付加することにより、無線データパケットを生成する。無線データ生成部240は、周波数チャネル割当制御部260に接続され、無線データパケットを周波数チャネル割当制御部260へ出力する。
【0025】
無線部ヘッダは、プリアンブル、周波数チャネル、MAC(Media Access Control)アドレスおよび無線種別から構成される。プリアンブルは、無線データの有無を検出するための情報である。周波数チャネルは、無線通信で使用している周波数チャネルを示す情報である。MACアドレスは、無線機を識別するための情報である。無線種別は、送信されるデータが周波数チャネル要求に関するデータであるか否かを示す情報である。なお、無線データ生成部240から出力される無線データパケットは、周波数チャネル要求に関するデータではないため、無線種別には、送信されるデータが周波数チャネル要求に関するデータではないことが示される。
【0026】
周波数チャネル割当制御部260は、無線信号変調部270に接続される。周波数チャネル割当制御部260は、車載無線機111に無線通信用の周波数チャネルが割り当てられているか否かの確認を行う。周波数チャネル割当制御部260は、周波数チャネルが割り当てられていることを確認した場合には、無線データ生成部240から受け取った無線データパケットを無線信号変調部270へ出力する。
【0027】
一方、周波数チャネル割当制御部260は、車載無線機111に無線通信用の周波数チャネルが割り当てられていないことを確認した場合には、周波数チャネル要求信号を生成する。周波数チャネル割当制御部260は、周波数チャネル要求信号を無線信号変調部270へ出力する。
【0028】
ここで、
図3を参照して、周波数チャネル割当制御部260の構成について詳細に説明する。
図3は、実施の形態1に係る周波数チャネル割当制御部260の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示されるように、周波数チャネル割当制御部260は、周波数チャネル割当確認部261、割当許可情報格納部262、要求信号生成部263および割当情報抽出部264を備える。
【0029】
割当許可情報格納部262は、周波数チャネル割当許可情報を格納する。周波数チャネル割当許可情報は、無線通信用として車載無線機111に割り当てられている周波数チャネルを示す情報である。
【0030】
周波数チャネル割当確認部261は、無線データ生成部240、無線信号変調部270、割当許可情報格納部262および要求信号生成部263に接続される。周波数チャネル割当確認部261は、周波数チャネル割当許可情報に基づいて、車載無線機111に無線通信用の周波数チャネルが割り当てられているかの確認を行う。具体的には、周波数チャネル割当確認部261は、無線データ生成部240から無線データパケットを受け取ると、割当許可情報格納部262から周波数チャネル割当許可情報を読み出す。周波数チャネル割当確認部261は、読み出した周波数チャネル割当許可情報と無線データパケットの無線部ヘッダに含まれる周波数チャネルを比較する。この比較の処理により、周波数チャネル割当確認部261は、車載無線機111に無線通信用の周波数チャネルが割り当てられているかの確認を行う。
【0031】
周波数チャネル割当確認部261は、車載無線機111に無線通信用の周波数チャネルが割り当てられていることを確認した場合には、無線データ生成部240から受け取った無線データパケットを無線信号変調部270へ出力する。
【0032】
一方、周波数チャネル割当確認部261は、車載無線機111に無線通信用の周波数チャネルが割り当てられていないことを確認した場合には、要求信号生成部263に対して、周波数チャネル要求信号の生成を指示するための制御信号を出力する。
【0033】
要求信号生成部263は、周波数チャネル割当確認部261から制御信号を受け取ると、車載無線機111に対して無線通信用の周波数チャネルを割り当てることを要求するための周波数チャネル要求信号を生成する。生成された周波数チャネル要求信号は、要求信号生成部263から無線信号変調部270へ出力される。
【0034】
なお、要求信号生成部263は、周波数チャネル要求信号の先頭に無線部ヘッダを配置する。無線部ヘッダの無線種別には、送信されるデータが周波数チャネル要求に関するデータであることを示す情報が示される。また、無線部ヘッダの周波数チャネルには、周波数チャネル要求用の周波数チャネルの組み合わせが示される。
【0035】
割当情報抽出部264は、無線信号復調部280、周波数チャネル割当確認部261および割当許可情報格納部262に接続される。割当情報抽出部264は、無線信号復調部280から復調された周波数チャネル割当信号を受け取る。このとき、割当情報抽出部264は、無線信号復調部280から受け取った信号(データ列)の無線ヘッダの無線種別を参照することによって、受け取った信号が周波数チャネル割当信号であると認識することができる。
【0036】
また、割当情報抽出部264は、周波数チャネル割当信号から許可された周波数チャネルの情報を抽出する。割当情報抽出部264は、抽出した周波数チャネルの情報を周波数チャネル割当確認部261へ通知する。加えて、割当情報抽出部264は、抽出した周波数チャネルの情報を車載無線機111に割り当てられた周波数チャネルの情報として、割当許可情報格納部262の周波数チャネル割当情報に登録する。
【0037】
なお、周波数チャネル割当確認部261は、割当情報抽出部264から周波数チャネル割当許可情報を通知されるまで、要求信号生成部263へ周波数チャネル割当要求信号の生成を指示するための制御信号を出力し続ける。つまり、要求信号生成部263は、制御信号を受けている間、所定の間隔で、周波数チャネル要求信号を繰り返し生成する。
【0038】
図2に戻り、車載無線機111の構成についての説明を続ける。無線信号変調部270は、周波数チャネル割当制御部260に接続される。無線信号変調部270は、周波数チャネル割当制御部260から無線データパケットを受け取った場合には、割り当てられている周波数チャネルを用いて周波数チャネル割当制御部260から受け取った無線データパケットの変調処理を行う。無線信号変調部270は、変調処理を行うことによって生成した無線データパケットの無線信号を不図示のアンテナを介して無線空間に放射する。このようにして、車載無線機111の無線部220は、割り当てられている周波数チャネルを用いて、路側無線機131へ無線データパケットを送信する。送信される無線データパケットには、無線部220によって付与された車両識別情報およびアプリケーション部210によって付与された通信種別情報が含まれる。
【0039】
また、無線信号変調部270は、周波数チャネル割当制御部260から周波数チャネル要求信号を受け取った場合には、周波数チャネル要求用の周波数チャネルの組み合わせを用いて周波数チャネル要求信号の変調処理を行う。無線信号変調部270は、変調処理を行うことによって生成した周波数チャネル要求信号の無線信号を不図示のアンテナを介して無線空間に放射する。このようにして、車載無線機111の無線部220は、周波数チャネル要求用の周波数チャネルの組み合わせを用いて、路側無線機131へ周波数チャネル要求信号を送信する。
【0040】
無線信号復調部280は、無線データ処理部250および周波数チャネル割当制御部260に接続される。無線信号復調部280は、路側無線機131から送信された無線信号を不図示のアンテナを介して受信する。無線信号復調部280は、受信した無線信号に対して復調処理、つまり、周波数変換処理およびデコード処理を行う。
【0041】
無線信号復調部280は、受信した無線信号に対して復調処理を行うことによって、無線データパケット、もしくは、周波数チャネル割当信号を復調する。復調された無線データパケットは、無線データ処理部250へ出力される。また、復調された周波数チャネル割当信号は、周波数チャネル割当制御部260へ出力される。
【0042】
無線データ処理部250は、無線信号復調部280およびSAM230に接続される。無線データ処理部250は、無線信号復調部280から復調された無線データパケットを受け取る。このとき、無線データ処理部250は、無線信号復調部280から受け取った信号(データ列)の無線ヘッダの無線種別を参照することによって、受け取った信号が無線データパケットであると認識することができる。
【0043】
また、無線データ処理部250は、無線データパケットに対する復調処理を行って、SAMデータパケットを復調する。具体的には、無線データ処理部250は、無線データパケットから無線部ヘッダを取り除き、取り除いた無線部ヘッダに含まれる情報の一部、例えば、MACアドレスの情報をアプリケーションデータに含める処理を行う。このようにして、復調処理されたSAMデータパケットは、無線データ処理部250からSAM230へ出力される。
【0044】
次に、実施の形態1に係る路側無線機について説明する。
図4は、実施の形態1に係る路側無線機131の構成の一例を示すブロック図である。路側無線機131は、車載無線機111および121との間で無線通信を行うが、ここでは、路側無線機131と車載無線機111との間の無線通信のみが例示される。
図4に示されるように、路側無線機131は、アプリケーション部310および無線部320を備える。アプリケーション部(第1のアプリケーション部)310および無線部(第1の無線部)320は、互いに接続されている。
【0045】
無線部320は、SAM330、無線データ生成部340、無線データ処理部350、周波数チャネル割当制御部(第1の周波数チャネル割当制御部)360、無線信号変調部370および無線信号復調部380を備える。
【0046】
無線信号復調部380は、無線データ処理部350および周波数チャネル割当制御部360に接続される。無線信号復調部380は、車載無線機111から送信された無線信号を不図示のアンテナを介して受信する。無線信号復調部380は、受信した無線信号に対して復調処理、つまり、周波数変換処理およびデコード処理を行う。
【0047】
無線信号復調部380は、受信した無線信号に対して復調処理を行って、無線データパケット、もしくは、周波数チャネル要求信号を復調する。復調された無線データパケットは、無線データ処理部350へ出力される。また、復調された周波数チャネル要求信号は、周波数チャネル割当制御部360へ出力される。このようにして、路側無線機131の無線部320は、車載無線機111から送信された無線データパケットおよび周波数チャネル要求信号を受信する。
【0048】
無線データ処理部350は、無線信号復調部380、周波数チャネル割当制御部360およびSAM330に接続される。無線データ処理部350は、無線信号復調部380から復調された無線データパケットを受け取る。
【0049】
また、無線データ処理部350は、相関処理部351を備える。相関処理部351は、受け取った無線データパケットの所定箇所のデータ列の相関判断を行う。具体的には、相関処理部351は、受け取った無線データパケットに含まれる車両識別情報と通信識別情報とを比較することによって、無線データパケットの相関の有無を判断する。
【0050】
上述した通り、車両識別情報と通信識別情報では、共通の車両クラス情報が使われている。そのため、車載無線機のアプリケーション部が実行するアプリケーションデータパケットを生成するアプリケーションに改竄が加えられていなければ、すなわち、なりすまし無線機から送信された無線データパケットでなければ、その無線データパケットに含まれる車両識別情報と通信識別情報とは一致するはずである。路側無線機131は、無線データパケットの相関判断を行うことによって、無線データパケットの送信元である車載無線機がなりすまし無線機であるか否かを判断することができる。
【0051】
相関処理部351が無線データパケットに相関があると判断した場合、無線データ処理部350は、無線データパケットに含まれる無線部ヘッダに対して復調処理を行って、SAMデータパケットを復調する。具体的には、無線データ処理部350は、無線データパケットから無線部ヘッダを取り除き、取り除いた無線部ヘッダ情報の一部、例えば、MACアドレスの情報をアプリケーションデータに含める処理を行う。無線データ処理部350は、このようにして復調したSAMデータパケットをSAM330へ出力する。
【0052】
一方、相関処理部351が無縁データパケットに相関がないと判断した場合、無線データ処理部350は、なりすまし無線機の情報として、無線データパケットの送信元である無線機を識別するための情報(なりすまし情報)、例えば、無線部ヘッダに含まれるMACアドレスの情報を生成する。生成されたなりすまし無線機の情報は、周波数チャネル割当制御部360へ出力される。また、無線データ処理部350は、受け取った無線データパケットを無効なデータとして扱う。例えば、無線データ処理部350は、無線データパケットをSAM330へ出力しない、もしくは、無線データパケットを破棄する。
【0053】
周波数チャネル割当制御部360は、無線信号復調部380および無線信号変調部370に接続される。周波数チャネル割当制御部360は、無線信号復調部380から復調された周波数チャネル要求信号を受け取ると、なりすまし無線機の情報に基づいて、送信元(要求元)の車載無線機111に対して無線通信用の周波数チャネルを割り当てることが可能かどうかを判断する。周波数チャネルを割り当てることが可能であると判断した場合には、周波数チャネル割当制御部360は、許可する周波数チャネルの情報を含む周波数チャネル割当信号を生成する。周波数チャネル割当制御部360は、生成した周波数チャネル割当信号を無線信号変調部370へ出力する。
【0054】
ここで、
図5を参照して、周波数チャネル割当制御部360の構成について詳細に説明する。
図5は、実施の形態1に係る周波数チャネル割当制御部360の構成の一例を示すブロック図である。
図5に示されるように、周波数チャネル割当制御部360は、周波数チャネル割当許可部361、割当管理情報格納部362、割当信号生成部363および要求信号受付部364を備える。
【0055】
割当管理情報格納部362は、周波数チャネル割当管理情報を格納する。周波数チャネル割当管理情報には、車載無線機に割り当て可能な周波数チャネルの情報が含まれる。また、割当管理情報格納部362は、無線データ処理部350に接続される。割当管理情報格納部362は、無線データ処理部350からなりすまし無線機の情報(例えば、なりすまし無線機のMACアドレス)を受け取り、周波数チャネル割当管理情報に登録する。すなわち、周波数チャネル割当管理情報は、車載無線機に割り当て可能な周波数チャネルの情報およびなりすまし無線機の情報を含む。
【0056】
要求信号受付部364は、無線信号復調部380および周波数チャネル割当許可部361に接続される。要求信号受付部364は、無線部ヘッダの無線種別を参照することによって、無線信号変調部280から復調された周波数チャネル要求信号を受け取る。要求信号受付部364は、周波数チャネル要求信号を周波数チャネル割当許可部361へ出力する。
【0057】
周波数チャネル割当許可部361は、要求信号受付部364、割当管理情報格納部362および割当信号生成部363に接続される。周波数チャネル割当許可部361は、車載無線機111から送信された周波数チャネル要求信号に応答して動作し、周波数チャネル割当管理情報に基づいて、車載無線機111に対して無線通信用の周波数チャネルを割り当てるか否かを判断する。周波数チャネル割当許可部361は、車載無線機111に対して周波数を割り当てると判断した場合、車載無線機111に許可する周波数チャネルを決定する。
【0058】
具体的には、周波数チャネル割当許可部361は、要求信号受付部364から車載無線機111から送信された周波数チャネル要求信号を受け取ると、割当管理情報格納部362から周波数チャネル割当管理情報を読み出す。周波数チャネル割当許可部361は、読み出した周波数チャネル割当管理情報に基づいて、車載無線機に割り当て可能な周波数チャネルが存在するか否かを確認する。
【0059】
また、周波数チャネル割当許可部361は、読み出した周波数チャネル割当管理情報に基づいて、周波数チャネル要求信号の送信元である車載無線機111がなりすまし無線機として登録されているか否かを確認する。具体的には、周波数チャネル割当許可部361は、周波数チャネル要求信号の無線部ヘッダに含まれるMACアドレスがなりすまし無線機のMACアドレスとして周波数チャネル割当管理情報に登録されているかどうかを確認する。
【0060】
周波数チャネル割当許可部361は、車載無線機に割り当て可能な周波数チャネルが存在し、かつ、周波数チャネル要求信号の送信元である車載無線機111がなりすまし無線機ではないと判断した場合、車載無線機111に対して許可する無線通信用の周波数チャネルを決定する。周波数チャネル割当許可部361は、割当信号生成部363へ許可する周波数チャネルの情報を出力するとともに、周波数チャネル割当信号の生成を指示するための制御信号を出力する。
【0061】
また、周波数チャネル割当許可部361は、車載無線機111に許可した周波数チャネルを割当管理情報格納部362へ出力する。割当管理情報格納部362は、この周波数チャネルの情報を周波数チャネル割当管理情報に含める。このようにして、周波数チャネル割当管理情報に含まれる車載無線機に割り当て可能な周波数チャネルの情報が更新される。
【0062】
一方、周波数チャネル割当許可部361は、車載無線機に割り当て可能な周波数チャネルが存在しない、もしくは、周波数チャネル要求信号の送信元である車載無線機111がなりすまし無線機であると判断した場合、周波数チャネル要求信号を無効な信号として扱う。例えば、周波数チャネル割当許可部361は、周波数チャネル要求信号に対する処理をしない、もしくは、周波数チャネル要求信号を破棄する。この場合には、周波数チャネル割当許可部361は、周波数チャネル要求信号の送信元である車載無線機111に無線通信用の周波数チャネルの割当を行わない。
【0063】
割当信号生成部363は、周波数チャネル割当許可部361および無線信号変調部370に接続される。割当信号生成部363は、周波数チャネル割当許可部361から許可する周波数チャネルの情報および周波数チャネル割当信号の生成を指示するための制御信号を受け取ると、車載無線機111に対して許可される周波数チャネルの情報を含む周波数チャネル割当信号を生成する。生成された周波数チャネル割当信号は、割当信号生成部363から無線信号変調部370へ出力される。
【0064】
なお、割当信号生成部363は、周波数チャネル割当信号の先頭に無線部ヘッダを配置する。無線部ヘッダの無線種別には、送信されるデータが周波数チャネル要求に関するデータであることを示す情報が示される。また、無線部ヘッダの周波数チャネルには、周波数チャネル要求用の周波数チャネルの組み合わせが示される。
【0065】
図4に戻り、路側無線機131の構成についての説明を続ける。無線信号変調部370は、周波数チャネル割当制御部360および無線データ生成部340に接続される。無線信号変調部370は、無線データ生成部340から無線データパケットを受け取った場合には、路側無線機131専用の周波数チャネルを用いて無線データ生成部340から受け取った無線データパケットの変調処理を行う。無線信号変調部370は、変調処理を行うことによって生成した無線データパケットの無線信号を不図示のアンテナを介して無線空間に放射する。このようにして、路側無線機131の無線部320は、車載無線機111へ無線データパケットを送信する。
【0066】
また、無線信号変調部370は、周波数チャネル割当制御部360から周波数チャネル割当信号を受け取った場合には、路側無線機131専用の周波数チャネルを用いて周波数チャネル割当信号に対する変調処理を行う。無線信号変調部370は、変調処理を行うことによって生成した周波数チャネル割当信号の無線信号を不図示のアンテナを介して無線空間に放射する。このようにして、路側無線機131の無線部320は、周波数チャネル要求信号の送信元である車載無線機111に対して、周波数チャネル割当信号を送信する。
【0067】
無線データ生成部340は、SAM330および無線信号変調部370に接続される。無線データ生成部340は、SAM330から受け取ったSAMデータパケットに、無線部ヘッダを付加することにより、無線データパケットを生成する。無線データ生成部340は、無線データパケットを無線信号変調部370へ出力する。
【0068】
SAM330は、無線データ処理部350、無線データ生成部340およびアプリケーション部310に接続される。SAM330は、受信処理を行う場合に、無線データ処理部350から復調されたSAMデータパケットを受け取る。SAM330は、SAMデータパケットに対する復調処理を行って、アプリケーションデータパケットを復調する。具体的には、SAM330は、SAMデータパケットからSAMヘッダおよびアプリケーション関連情報を取り除き、取り除いたSAMヘッダもしくはアプリケーション関連情報の一部、例えば、車両識別情報をアプリケーションデータに含める処理を行う。SAM330は、このようにして復調したアプリケーションデータパケットをアプリケーション部310へ出力する。
【0069】
また、SAM330は、送信処理を行う場合に、アプリケーション部310からアプリケーションデータパケットを受け取る。SAM330は、アプリケーションデータパケットに、SAMヘッダおよびアプリケーション関連情報を付加することにより、SAMデータパケットを生成する。SAM330は、無線データ生成部340に接続され、生成したSAMデータパケットを無線データ生成部340へ出力する。
【0070】
路側無線機131が車載無線機111に対してデータの送信処理を開始する場合に、アプリケーション部310は、アプリケーションデータパケットを生成する。アプリケーションデータパケットは、アプリケーションヘッダ、通信種別情報およびアプリケーションデータから構成される。アプリケーション部310は、アプリケーションデータパケットを無線部320へ出力する。
【0071】
また、路側無線機131が車載無線機111からのデータの受信処理を行う場合、アプリケーション部310は、復調されたアプリケーションデータパケットを無線部320から受け取る。アプリケーション部310は、受け取ったアプリケーションデータパケットに含まれるアプリケーションデータを処理する。
【0072】
次に、車載無線機から送信される無線データパケットの具体例について説明する。
図6は、車載無線機から送信される無線データパケットのデータ構成を示す構成図である。
図6は、上から順に、無線データパケットのデータ構成、無線機が搭載される車両が一般車両である場合の無線データパケットのデータA(一般車両データA)の一例、無線機が搭載される車両が特殊車両である場合の無線データパケットのデータB(特殊車両データB)の一例および車載無線機がなりすまし無線機である場合の無線データパケットのデータC(なりすましデータC)の一例を示す。
【0073】
図6に示されるように、一般車両の車両クラス情報として、「11100011100」が使用されている。また、特殊車両の車両クラス情報として、「11101011101」が使用されている。これらの車両クラス情報は、無線部220で生成される車両識別情報とアプリケーション部210で生成される通信種別情報において、共通に用いられている。
【0074】
一般車両データAおよび特殊車両データBは、なりすまし無線機から送信されたデータではない、つまり、正常な無線機から送信されたデータである。すなわち、一般車両データAに含まれる車両識別情報と通信種別情報は一致する。また、一般車両データBに含まれる車両識別情報と通信種別情報は一致する。そのため、相関処理部351は、一般車両データAおよび特殊車両データBのそれぞれに相関があると判断する。
【0075】
これに対し、なりすましデータCは、なりすまし無線機から送信されたデータある、つまり、異常な無線機から送信されたデータである。
図6に示される例では、一般車両用の無線部220と特殊車両用のアプリケーション部210のなりすましアプリケーションの組合せで構成されている。すなわち、車両識別情報の「11101011101」と通信種別情報の「11100011100」は不一致となる。そのため、相関処理部351は、相関判断の結果、なりすましデータCに相関がないと判断する。このようにして、なりすまし無線機は検出される。
【0076】
なりすまし無線機(無線通信装置)が検出された場合、無線部ヘッダ内の情報、例えば、MACアドレスの情報が、なりすまし無線機の情報として、割当管理情報格納部362の周波数チャネル割当管理情報に登録される。
図6に示されるように、MACアドレスは、無線機ごとにユニークな情報が使われている。そのため、なりすまし無線機で使用されているMACアドレスをなりすまし無線機の情報として保持しておけば、路側無線機131は、なりすまし無線機と正常な無線機を適切に識別することができる。
【0077】
なお、上述の説明では、MACアドレスがなりすまし無線機を識別するための情報として使用されることが例示されているが、これに限定されない。つまり、無線機を識別することができる情報であれば、MACアドレス以外の情報であってもよい。例えば、改竄が困難なSAMヘッダに含まれる個々のSAMが保有する情報を、無線機を識別する情報として使用してもよい。
【0078】
また、
図6に示される無線データパケットのデータ構成は、全てのデータを表示したものではない。無線データパケットには、パケット管理を行う情報、パケットの終わりを示す情報、誤り訂正を行うための情報などの他のデータ領域があることは言うまでもない。
【0079】
以上に記載の通り、実施の形態1に係る路側無線機の無線部は、車載無線機の無線部によって付与された車両識別情報のデータ列と車載無線機のアプリケーション部によって付与された通信種別情報のデータ列とを比較して、車載無線機から送信された無線データパケットの相関の有無を判断する相関処理部を備える。
【0080】
相関処理部が車載無線機から送信された無線データパケットに相関があると判断した場合、路側無線機の無線部は、車載無線機から送信された無線データパケットに含まれるアプリケーションデータを路側無線機のアプリケーション部へ出力する。この場合、路側無線機は、無線データパケットの送信元である車載無線機をなりすまし無線機ではないと判断する。
【0081】
一方、相関処理部が車載無線機から送信された無線データパケットに相関がないと判断した場合、路側無線機の無線部は、車載無線機から送信された無線データパケットを無効なデータとして扱う。例えば、路側無線機の無線部は、無線データパケットを使用しない、もしくは、破棄する。この場合、路側無線機は、無線データパケットの送信元である車載無線機をなりすまし無線機であると判断する。
【0082】
このように、車載無線機のアプリケーション部が実行するアプリケーションに改竄が加えられることによって車載無線機がなりすまし無線機となっている場合であっても、路側無線機は、なりすまし無線機から送信される無線データパケットの相関の有無を判断することによって、なりすまし無線機を検出することができる。これにより、なりすまし無線機による通信によって、正常な無線機による通信が阻害されるという問題を防ぐことができる。
【0083】
なお、路側無線機は、なりすまし無線機から送信される無線データパケットの相関の有無を判断することによってなりすまし無線機を検出するため、なりすまし無線機に一度は周波数チャネルの割当を許可する。つまり、無線通信を開始する際に、なりすまし無線機は、路側無線機に対して周波数チャネル要求信号を送信する。これに対して、路側無線機は、周波数チャネル割当信号を送信し、なりすまし無線機に対して周波数チャネルの割当を行う。しかしながら、その後、なりすまし無線機がその周波数チャネルを用いて無線データパケットを送信した場合には、路側無線機は、無線データパケットの送信元をなりすまし無線機であると判断することができる。路側無線機は、なりすまし無線機であると判断した無線機から送信される無線データパケットを無効なデータとして扱うとともに、なりすましと判断した無線機から周波数チャネル要求信号を受けたとしても、二度と周波数チャネルの割当を行わない。このようにして、路側無線機は、無線通信システムからなりすまし無線機を排除することができる。
【0084】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2に係る路側無線機は、相関判断を複数回行うことにより、正常な車載無線機をなりすまし無線機であると誤って判断してしまうことを防ぐ構成を有する点で、実施の形態1に係る路側無線機とは異なる。
図7は、実施の形態2に係る路側無線機131aの構成の一例を示すブロック図である。路側無線機131aは、路側無線機131の他の実施の形態に相当する。
【0085】
図7に示されるように、
図4の路側無線機131の無線部320、無線データ生成部340および無線データ処理部350は、それぞれ、無線部320a、無線データ生成部340aおよび無線データ処理部350aに変更される。また、無線データ処理部350aは、
図4に示された無線データ処理部350の構成に加えて、再送指示部(第1の再送指示部)352を備える。
【0086】
再送指示部352は、相関処理部351によって無線データパケットに相関がないと判断された数を計測する。再送指示部352は、計測数に応じて、無線データパケットの再送を指示するための第1の再送指示信号を生成する。生成された第1の再送指示信号は、無線データ生成部340aに出力される。
【0087】
無線データ生成部340aは、第1の再送指示信号を受けると、無線データパケットの送信元である車載無線機に対して再送を要求するための第1の再送要求信号を生成する。第1の再送要求信号は、無線信号変調部370を経由して、無線データパケットの送信元である車載無線機に送信される。第1の再送要求信号を受け取った車載無線機は、無線データパケットの再送信処理を実行する。
【0088】
また、再送指示部352の計測数が所定値に達した場合、無線データ処理部350aは、無線データパケットの送信元であるの車載無線機をなりすまし無線機であると判断し、なりすまし無線機の情報を生成する。このタイミングで、割当管理情報格納部362は、なりすまし無線機の情報を周波数チャネル割当管理情報に登録する。
【0089】
無線通信では、通信誤りによって毎回正確にデータ列を再生(復調)することができない。実施の形態1では、一回の相関判断の処理でなりすまし無線機であるか否かの判断がなされるため、例えば、ノイズの発生により無線データパケットのデータ列の不一致が生じた場合にも、車載無線機がなりすまし無線機であるという判断がなされる。つまり、改竄されていない正常な車載無線機がなりすまし無線機であると誤って判断される恐れがあった。
【0090】
しかしながら、実施の形態2に係る路側無線機は、無線データパケットに相関がないと判断された数を計測し、計測した数に応じて、無線データパケットの再送を指示する再送指示部を備える。路側無線機の無線部は、再送指示部からの指示に基づいて、無線データパケットの再送を要求するための第1の再送要求信号を車載無線機へ送信する。これにより、路側無線機が車載無線機からの無線データパケットを正しく受信できるまで、車載無線機は、無線データパケットの再送処理を行うことができる。その結果、路側無線機が正常な車載無線機をなりすまし無線機と誤って判断してしまうことを防ぐことができる。
【0091】
[実施の形態3]
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3は、無線データパケットの再送が行われる点では、実施の形態2と同じであるが、その際に、無線データパケットの一部が変更される点で、実施の形態2とは異なる。
図8は、実施の形態3に係る路側無線機131bの構成の一例を示すブロック図である。路側無線機131bは、路側無線機131の他の実施の形態に相当する。
【0092】
図8に示されるように、
図7の路側無線機131aの無線部320a、無線データ生成部340a、無線データ処理部350a、相関処理部351および再送指示部352は、それぞれ、無線部320b、無線データ生成部340b、無線データ処理部350b、相関処理部351bおよび再送指示部(第2の再送指示部)352bに変更される。
【0093】
相関処理部351bは、無線データパケットの所定箇所のデータ列の比較処理を行うとともに、無線データパケットの所定箇所のデータ列の確認処理を行う。具体的には、相関処理部351bは、無線データパケットに含まれる車両識別情報と通信種別情報の比較処理に加えて、無線データパケットに含まれる予約領域のデータの確認処理を行う。相関処理部351bは、車両識別情報と通信種別情報とが一致した場合、もしくは、予約領域のデータ列が期待値に変更されたことを確認した場合、無線データパケットに相関があると判断する。
【0094】
再送指示部352bは、相関処理部351bによって無線データパケットに相関がないと判断された数を計測する。再送指示部352bは、計測数に応じて、無線データパケットの再送および無線データパケットの一部のデータの変更を指示するための第2の再送指示信号を生成する。生成された第2の再送指示信号は、無線データ生成部340bに出力される。
【0095】
無線データ生成部340bは、第2の再送指示信号を受けると、無線データパケットの送信元である車載無線機に対して再送およびデータの一部の変更を要求するための第2の再送要求信号を生成する。第2の再送要求信号は、無線信号変調部370を経由して、無線データパケットの送信元である車載無線機に送信される。
【0096】
また、再送指示部352bの計測数が所定値に達した場合、無線データ処理部350bは、無線データパケットの送信元である車載無線機をなりすまし無線機であると判断し、なりすまし無線機の情報を生成する。このタイミングで、割当管理情報格納部362は、なりすまし無線機の情報を周波数チャネル割当管理情報に登録する。
【0097】
図9は、実施の形態3に係る車載無線機111bの構成の一例を示すブロック図である。車載無線機111bは、車載無線機111および121の他の実施の形態に相当する。
図9に示されるように、
図2の車載無線機111の無線部220およびSAM230は、それぞれ、無線部220bおよびSAM230bに変更される。また、SAM230bは、再送データ変更部231を備える。
【0098】
車載無線機111bは、路側無線機131bから第2の再送要求信号を受け取ると、無線データパケットの再送処理を実行する。再送処理において、SAM230bは、アプリケーション部210から再送に係るアプリケーションデータパケットを受け取る。SAM230bは、再送に係るアプリケーションデータパケットに、SAMヘッダおよびアプリケーション関連情報を付加して、再送に係るSAMデータパケットを生成する。
【0099】
このとき、再送データ変更部231は、アプリケーション関連情報に含まれる予約領域のデータを変更する。再送データ変更部231は、予約領域のデータを予め決められた値に変更してもよい。また、再送データ変更部231は、予約領域のデータを第2の再送要求信号に含まれる値、(例えば、第2の再送要求信号に含まれる予約領域のデータ)に変更してもよい。
【0100】
SAM230bは、再送に係るSAMデータパケット、すなわち、データの一部が変更されたSAMデータパケットを無線データ生成部240へ出力する。このようにして、車載無線機111bは、データの一部が変更された無線データパケットを再送する。
【0101】
次に、車載無線機111bから送信される無線データパケットの具体例について説明する。
図10は、車載無線機111bから送信される無線データパケットのデータ構成を示す構成図である。
図10は、上から順に、無線データパケットのデータ構成、車載無線機111bが搭載される車両110が特殊車両である場合の無線データパケットのデータD(特殊車両データD)の一例、車載無線機111bがなりすまし無線機である場合の無線データパケットのデータE(なりすましデータE)の一例、特殊車両データD(再送)の一例およびなりすましデータE(再送)の一例を示す。
【0102】
図10では、一般車両の車両クラス情報として、「11100011100」が使用されている。また、特殊車両情報の車両クラス情報として、「11101011101」が使用されている。
【0103】
特殊車両データDは、正常な車載無線機から送信されたデータであるため、車両識別情報および通信種別情報において、「11101011101」が共通して使用される。しかし、
図10に示されるように、特殊車両データDの車両識別情報の先頭は、本来“1”であるはずが、通信誤りにより、“0”となっている。すなわち、特殊車両データDに含まれる車両識別情報と通信種別情報は不一致となる。そのため、路側無線機131bの相関処理部351bは、特殊車両データDに相関がないと判断する。
【0104】
一方で、なりすましデータEは、なりすまし無線機から送信されたデータである。当該なりすまし無線機は、一般車両用の無線部220bと特殊車両用のアプリケーション部210のなりすましアプリケーションの組合せで構成されている。すなわち、なりすましデータEに含まれる車両識別情報と通信種別情報は不一致となる。そのため、路側無線機131bの相関処理部351bは、なりすましデータEに相関がないと判断する。
【0105】
また、特殊車両データDおよびなりすましデータEは、再送に係る無線データパケットではない。このとき、特殊車両データDおよびなりすましデータEに含まれる予約領域のデータは、“0000000”(ゼロパディング)となっている。
【0106】
最初の送信処理では、無線データパケットに相関が検出されなかったため、路側無線機131bは、第2の再送要求信号を送信する。このとき、第2の再送要求信号には、予約領域のデータを、“1111111”(ゼロパディングしたビットを全て反転させてイチに変更)する指示が含まれているとする。この第2の再送要求信号に応答して、特殊車両データD(再送)およびなりすましデータE(再送)の送信処理が実行される。
【0107】
特殊車両データD(再送)の車両識別情報では、再びの通信誤りによって、“0”になっている。しかしながら、特殊車両データD(再送)に含まれる予約領域のデータは、第2の再送予約信号に含まれる変更指示に応じて、“0000000”から“1111111”へ変更されている。このとき、相関処理部351bは、車両識別情報と通信種別情報は一致しないが、予約領域のデータ列が期待値(“1111111”)に変更されていることを確認したため、再送された無線データパケットに相関があると判断する。
【0108】
一方、なりすましデータE(再送)では、再び車両識別情報と通信種別情報は不一致となる。さらに、なりすまし無線機は、第2の再送要求信号を受けて適切にデータ変更の処理を行うことができないため、なりすましデータE(再送)に含まれる予約領域のデータは、“0000000”のままである。このとき、相関処理部351bは、車両識別情報と通信種別情報は一致せず、さらに予約領域のデータ列が期待値(“1111111”)に変更されていないことを確認したため、再送された無線データパケットに相関がないと判断する。
【0109】
このように、実施の形態3に係る路側無線機は、無線データパケットに相関がないと判断された数を計測し、計測した数に応じて、無線データパケットの再送および無線データパケットの一部のデータの変更を指示する再送指示部を備える。路側無線機の無線部は、再送指示部からの指示に基づいて、無線データパケットの再送および無線データパケットの一部のデータの変更を要求するための第2の再送要求信号を車載無線機へ送信する。路側無線機は、車載無線機から再送された無線データパケットの一部が期待値に変更されているか否かを確認することによって、無線データパケットの相関の有無を判断する。これにより、路側無線機は、再び通信誤りが生じたとしても、無線データパケットの送信元である車載無線機がなりすまし無線機であるか否かを適切に判断することができる。
【0110】
上述の実施の形態3では、再送時に無線データパケットに含まれる予約領域のデータを変更する例が示されたが、変更する対象のデータはこれに限定されない。例えば、SAMヘッダに含まれる所定のデータを変更する対象のデータとしてもよい。
【0111】
また、上述の実施の形態3では、再送時に無線データパケットの一部を変更する例が示されたが、変更する対象は、データに限られない。すなわち、無線データパケットの変調方式や周波数チャネルの変更であってよい。この場合には、路側無線機は、再送時に変調方式や周波数チャネルの変更の有無を確認することによって、送信元の車載無線機がなりすまし無線機であるか否かの判断をしてもよい。
【0112】
実施の形態1ないし3では、車載無線機および路側無線機の構成および機能が、図面のブロック図を参照して説明された。図中のブロックの機能は、ハードウェア(H/W)、ソフトウェア(S/W)、もしくは、H/WとS/Wの組合せによって構成されることができる。
【0113】
図11は、車載無線機および路側無線機のH/W構成の一例を示すブロック図である。
図11に示されるように、CPU401、メモリ402および送受信回路403は、バス404を経由して互いに接続されている。例えば、実施の形態1ないし3に係る無線信号変調部および無線信号復調部は、送受信回路403によって構成され得る。また、例えば、実施の形態1ないし3に係るアプリケーション部、SAM、無線データ生成部、無線データ処理部および周波数チャネル割当制御部は、CPU401がメモリ402に格納された所定のプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行することで実現され得る。すなわち、アプリケーション部、SAM、無線データ生成部、無線データ処理部および周波数チャネル割当制御部は、H/WとS/Wの組合せによって構成されることができる。
【0114】
なお、実施の形態1ないし3に係る車載無線機は、無線通信装置が車両本体に部品の一部として組み込まれている態様に限定されない。例えば、スマートフォンなどのモバイル端末を車両に持ち込まれる態様が含まれてもよい。
【0115】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0116】
100: 無線通信システム
110、120: 車両
111、111b、121: 車載無線機
130: 路側機
131、131a、131b: 路側無線機
210、310: アプリケーション部
220、220b、320、320a、320b: 無線部
230、230b、330: SAM
231: 再送データ変更部
240、340、340a、340b: 無線データ生成部
250、350、350a、350b: 無線データ処理部
260、360: 周波数チャネル割当制御部
261: 周波数チャネル割当確認部
262: 割当許可情報格納部
263: 要求信号生成部
264: 割当情報抽出部
270、370: 無線信号変調部
280、380: 無線信号復調部
351、351b: 相関処理部
352、352b: 再送指示部
361: 周波数チャネル割当許可部
362: 割当管理情報格納部
363: 割当信号生成部
364: 要求信号受付部
401: CPU
402: メモリ
403: 送受信回路
404: バス