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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】リミットキャップ
(51)【国際特許分類】
   F02M 3/10 20060101AFI20230608BHJP
   F02M 19/04 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
F02M3/10 A
F02M19/04 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019215042
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021085373
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 保
(72)【発明者】
【氏名】工藤 友善
(72)【発明者】
【氏名】大沼 優太
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮輔
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-065408(JP,A)
【文献】特開2005-290748(JP,A)
【文献】特開昭61-073688(JP,A)
【文献】特開2012-122417(JP,A)
【文献】特開2016-098777(JP,A)
【文献】特許第2919305(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 3/10
F02M 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料調整装置の調整孔に螺合された針弁に取り付けられるリミットキャップであって、
前記調整孔から突出した前記針弁の突出部に設けられる筒状の本体部を有し、
前記本体部の外周面には、前記燃料調整装置に形成された回転制限用の窪み部に挿入される突起部が形成されており、
前記本体部には、
内側の係合部と、外側の固定部と、が設けられ、
前記係合部の内周面に形成された第一凹凸部は、前記針弁の外周面に形成された第二凹凸部に対して、前記本体部の周方向に係合可能であるとともに、
前記固定部の平坦な内周面に、前記針弁の針弁側固定部の平坦な外周面が圧入固定されており、
前記係合部の内径よりも前記固定部の内径が小さく形成されていることを特徴とするリミットキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のリミットキャップであって、
前記係合部と前記固定部とは別体の部材であることを特徴とするリミットキャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のリミットキャップであって、
前記係合部は、前記固定部よりも硬い部材であることを特徴とするリミットキャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のリミットキャップであって、
前記係合部は金属製であり、
前記固定部は樹脂製であることを特徴とするリミットキャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のリミットキャップであって、
前記係合部と前記固定部とは一体成型されていることを特徴とするリミットキャップ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のリミットキャップであって、
前記本体部の外端面全体が開口していることを特徴とするリミットキャップ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のリミットキャップであって、
前記燃料調整装置は、気化器であることを特徴とするリミットキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合気の空燃比の調整に用いられるリミットキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の気化器には、混合気の空燃比を調整するための針弁が設けられている。針弁は、気化器の流路に連通した調整孔内のねじ溝に螺合されている。そして、針弁を軸回りに回転させて、流路内への針弁の突出量を調整することで、流路内を流通する燃料の流量を増減できる。
【0003】
従来の針弁には、回転を制限するための筒状のリミットキャップが外嵌されている(例えば、特許文献1参照)。リミットキャップには、固定部と係合部とが設けられており、係合部の内周面に第一凹凸部が形成されている。
【0004】
リミットキャップの固定部には針弁のフランジ部が圧入され、リミットキャップの第一凹凸部には針弁の第二凹凸部が係合される。
また、リミットキャップの外周面には突起部が形成されており、この突起部は気化器の外面に形成された窪み部に挿入され、窪み部によって突起部の移動が制限されることで、針弁の回転が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許2919305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来のリミットキャップでは、固定部が内側(気化器側)に形成され、係合部が外側(気化器の外側)に形成されており、固定部の内径が係合部の内径よりも大きく形成されている。このようなリミットキャップが取り付けられる針弁では、フランジ部の外側に第二凹凸部が形成されている。
【0007】
前記した従来のリミットキャップを針弁に固定させる際には、係合部が外側で固定部が内側にあるので、その固定作業を行う際に、固定部が遠くにあり、針弁に対してリミットキャップを組み付け難いという問題がある。
【0008】
本発明は、前記した問題を解決し、針弁の回転を制限するとともに、針弁に対して組み付け易くなるリミットキャップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、燃料調整装置の調整孔に螺合された針弁に取り付けられるリミットキャップである。前記調整孔から突出した前記針弁の突出部に設けられる筒状の本体部を有し、前記本体部の外周面には、前記燃料調整装置に形成された回転制限用の窪み部に挿入される突起部が形成されている。前記本体部には、内側の係合部と、外側の固定部と、が設けられている。前記係合部の内周面に形成された第一凹凸部は、前記針弁の外周面に形成された第二凹凸部に対して、前記本体部の周方向に係合可能である。前記固定部の平坦な内周面に、前記針弁の針弁側固定部の平坦な外周面が圧入固定されている。前記係合部の内径よりも前記固定部の内径が小さく形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリミットキャップを針弁に取り付け、本体部の突起部を燃料調整装置の窪み部に挿入し、窪み部によって突起部の移動を制限することで、針弁の回転を制限することができる。
本発明のリミットキャップを針弁に固定させる際には、係合部が内側で固定部が外側にあるので、その固定作業を行う際に、容易にリミットキャップを針弁に位置決めして係合させつつ、燃料調整装置の外側で固定部を固定させることができるため、針弁に対してリミットキャップを組み付け易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るリミットキャップを組み付けた気化器を示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るリミットキャップ、針弁および気化器を示した側断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るリミットキャップ、針弁および気化器を示した分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るリミットキャップ、針弁および気化器を示した正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る気化器の調整孔を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の一例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のリミットキャップ10は、図1に示すように、例えば、チェンソーやブロワなどの小型作業機の内燃機関の燃料調整装置の一例である気化器1(吸気装置)に用いられるものである。
【0013】
気化器1の内部には、燃料と空気との混合気を生成するための流路が形成されている。気化器1の外面には、長円形の周壁部3が突出している。
【0014】
気化器1の外面において、周壁部3の内側となる領域には、図5に示すように、二つの調整孔5,5が開口している。両調整孔5,5は、横方向に並べて配置されている。調整孔5は、円形断面の貫通孔であり、燃料が流通する流路に連通している。調整孔5の内周面には、ねじ溝が形成されている。
【0015】
本実施形態の気化器1において、図5の左側に配置された調整孔5は、内燃機関の出力軸が低速回転するときの混合気の空燃比を調整するための孔部である。また、図5の右側に配置された調整孔5は、内燃機関の出力軸が高速回転するときの混合気の空燃比を調整するための孔部である。
【0016】
本実施形態では、両調整孔5,5および両調整孔5,5に組み付けられる各部品の構成は同じである。したがって、以下の説明では、図5の左側に配置された調整孔5およびその調整孔5に組み付けられる各部品について説明し、図5の右側に配置された調整孔5およびその調整孔5に組み付けられる各部品については説明を省略する。
【0017】
調整孔5には、図2に示すように、混合気の空燃比を調整するための針弁50が挿入されている。
針弁50は、図3に示すように、円形断面の直線状の部材である。針弁50の内端側(図2の左側)の部位の外周面には、ねじ溝が形成されている。図2に示すように、針弁50の内端側の部位は、調整孔5のねじ溝に螺合されている。
針弁50を軸回りに回転させて、針弁50の調整孔5への挿入量を増減させ、流路内への針弁50の突出量を調整することで、流路内を流通する燃料の流量を調整できる。このように、針弁50を軸回りに回転させることで、混合気の空燃比を調整できる。
【0018】
針弁50において、調整孔5から気化器1の外側に突出している突出部51は、周壁部3内に収容されている。
針弁50の外端面には、図4に示すように、ドライバーなどの工具によって針弁50を軸回りに回転させるための溝部56が形成されている。
なお、本実施形態では、マイナスドライバーの先端部が係合されるように溝部56が直線状に形成されているが、針弁50を回転させるための工具は限定されるものではない。例えば、プラスドライバーに対応して針弁50の基端面に十字形状の溝部を形成したり、六角レンチに対応して針弁50の基端面に六角穴を形成したりしてもよい。
【0019】
針弁50の突出部51の外周面には、図3に示すように、第二凹凸部53が形成された第二係合部52と、針弁側固定部55と、が形成されている。針弁側固定部55は、後記するリミットキャップ10の固定部15に圧入される部位である。
【0020】
第二係合部52の外周面には、ローレット加工(平目加工)が施されており、ローレット加工による複数の第二凹凸部53が全周に亘って形成されている。第二凹凸部53は、針弁50の軸方向に延びている直線状の溝を、第二係合部52の周方向に等間隔に並べたものである。
なお、本実施形態では、第二係合部52にローレット加工が施して第二凹凸部53が形成されているが、その方法は限定されるものではない。例えば、第二係合部52に対して切削加工、他の部品の組み付け、成型加工等により第二凹凸部53を形成してもよい。
【0021】
針弁側固定部55は、図2に示すように、第二係合部52に対して針弁50の外端側に連続して形成されている。針弁側固定部55の外周面は平坦に形成されている。針弁側固定部55の外径は第二係合部52の外径よりも小さく形成されていて、さらに、第二係合部52の最小外径よりも小さく形成されている。
【0022】
リミットキャップ10は、針弁50の突出部51に外嵌される円筒状の本体部11によって構成されている。本体部11は、内端面全体および外端面全体が円形に開口している(図3参照)。
【0023】
本体部11には、図3に示すように、内側(気化器1側)の第一係合部12と、外側(気化器1の外側)の固定部15と、が設けられている。第一係合部12と固定部15とは別体の部材であり、第一係合部12の外端部に固定部15の内端部が連結されている。
【0024】
本実施形態の第一係合部12は金属製の部材であり、固定部15は樹脂製の部材である。このように、第一係合部12は、固定部15よりも硬い部材である。
第一係合部12と固定部15とは、インサート成形により一体成型されており、一つの部品を構成している。
【0025】
本体部11の外周面には、軸方向に延びている突起部16が形成されている。突起部16の軸断面は四角形に形成されている。突起部16は、第一係合部12の内端縁部から固定部15の軸方向の中間部まで直線状に延びている。
【0026】
第一係合部12の内周面には、複数の第一凹凸部13が全周に亘って形成されている。第一凹凸部13は、本体部11の軸方向に延びている直線状の複数の溝を、第一係合部12の周方向に等間隔に並べたものである。
【0027】
図2に示すように、本体部11を針弁50の突出部51に外嵌させた状態では、第一係合部12の第一凹凸部13と針弁50の第二凹凸部53とが、針弁50および本体部11の周方向に係合されている。これにより、針弁50の軸回りの回転に連動して本体部11が軸回りに回転する。
【0028】
図4に示すように、気化器1の周壁部3の内周面には、本体部11の突起部16が挿入される窪み部6が形成されている。なお、図4は後記するガイド部材30を周壁部3内から取り外した状態を示している。
【0029】
窪み部6は、図5に示すように、周壁部3の内周面に形成されており、周壁部3の突出方向に直線状に延びている。また、窪み部6の軸断面は、調整孔5の縁部に沿って円弧状に湾曲している。本実施形態の窪み部6の軸断面は、中心角が略90度の範囲で円弧状に湾曲している。
【0030】
本実施形態では、図4に示すように、窪み部6内に挿入された突起部16が、調整孔5の軸回りに、回転角が90度の範囲で移動可能となるように、窪み部6の周方向の長さが設定されている。これにより、本体部11は、軸回りに1/4回転可能である。また、本体部11が取り付けられた針弁50も軸回りに1/4回転可能である。
【0031】
固定部15は、図2に示すように、針弁50の針弁側固定部55が圧入される円筒状の部位である。第一係合部12の内径よりも固定部15の内径が小さく形成されている。詳細には、第一係合部12の最小内径よりも固定部15の内径が小さく形成されている。
針弁50の針弁側固定部55が本体部11の固定部15に圧入されることで、針弁50とリミットキャップ10とが軸方向に固定されている。
【0032】
図1に示すように、周壁部3内にはガイド部材30が嵌め込まれている。ガイド部材30には、両調整孔5,5(図5参照)に連通するガイド孔31が形成されている。ガイド孔31の内周面には軸方向に延びているガイド溝32が形成されている。
【0033】
ガイド溝32は、図3に示すように、ガイド孔31に対して外側から本体部11を挿入するときに、本体部11の突起部16が通過する部位である。
本体部11の内端縁部が気化器1の外面に接した状態では、突起部16全体がガイド溝32よりも内側(気化器1側)に配置されている(図1参照)。これにより、本体部11は、ガイド溝32に係合することなく、軸回りに回転可能となっている。
【0034】
ガイド孔31に対して外側から本体部11を挿入するときには、本体部11の突起部16がガイド溝32を通過するように、本体部11の軸回りの向きを調整する。このようにして、本体部11をガイド孔31に組み込むと、図4に示すように、突起部16は、窪み部6の軸断面において周方向の一端に配置される。
【0035】
次に、図2に示すように、気化器1の調整孔5に対して、ガイド部材30、針弁50およびリミットキャップ10を組み付ける手順について説明する。
まず、針弁50の内端側の部位を調整孔5に挿入し、針弁50のねじ溝を調整孔5のねじ溝に螺合させる。
そして、針弁50を軸回りに回転させて、針弁50の調整孔5への挿入量を増減させ、流路内への針弁50の内端部の突出量を調整することで、混合気の空燃比を調整する。
【0036】
混合気の空燃比を適正に調整した後に、または、混合気の空燃比を調整する前に、図1に示すように、周壁部3内にガイド部材30を嵌め込む。さらに、ガイド部材30のガイド孔31に対して外側からリミットキャップ10の本体部11を挿入する。このとき、ガイド部材30のガイド溝32に本体部11の突起部16を通過させる。
【0037】
図2に示すように、本体部11を移動させていくと、本体部11の第一凹凸部13が、針弁50の第二凹凸部53に対して軸方向に移動して噛み合う。これにより、本体部11の第一係合部12と針弁50の第二係合部52とが周方向に係合される。なお、第一凹凸部13が第二凹凸部53と噛み合う前に、針弁50による混合気の空燃比の調整をすることもある。
【0038】
また、針弁50の針弁側固定部55が本体部11の固定部15に圧入され、針弁50と本体部11とが軸方向に固定される。
【0039】
このようにして、針弁50の突出部51にリミットキャップ10を取り付けると、図4に示すように、本体部11の突起部16は、窪み部6の軸断面において周方向の一端に配置される。
そして、突起部16は、窪み部6の軸断面の周方向の一端に配置された状態を基準位置として、窪み部6内を図4の時計回り(右回り)に1/4回転可能となっている。
これにより、リミットキャップ10および針弁50は、針弁50を調整孔5に組み付けて混合気の空燃比を適正に調整した基準位置から、図4の時計回り(右回り)に1/4回転可能となっている。
【0040】
本実施形態では、針弁50を基準位置から図4の時計回りに回転させたときには、混合気の燃料の濃度が薄くなるように設定されている。
突起部16は、窪み部6によって基準位置よりも図4の反時計回り(左回り)に回転できないため、針弁50を基準位置よりも図4の反時計回りに回転させることはできない。このように、本実施形態では、針弁50の基準位置における混合気の空燃比よりも燃料の濃度が濃くならないように構成されている。
【0041】
以上のようなリミットキャップ10は、図2に示すように、気化器1(燃料調整装置)の調整孔5に螺合された針弁50に取り付けられる。リミットキャップ10は、調整孔5から突出した針弁50の突出部51に設けられる筒状の本体部11を有している。
本体部11の外周面には、図4に示すように、気化器1に形成された回転制限用の窪み部6に挿入される突起部16が形成されている。
本体部11は、図2に示すように、内側の第一係合部12と、外側の固定部15と、が設けられている。第一係合部12の内周面に形成された第一凹凸部13は、針弁50の外周面に形成された第二凹凸部53に対して、本体部11の周方向に係合可能である。また、固定部15には、針弁50の針弁側固定部55が固定される。第一係合部12の内径よりも固定部15の内径が小さく形成されている。また、第一係合部12の最小内径よりも固定部15の内径を小さく形成してもよい。
【0042】
本実施形態のリミットキャップ10では、図4に示すように、本体部11の突起部16が気化器1の窪み部6に設置され、窪み部6によって突起部16の移動が制限されることで、針弁50の回転が制限される。これにより、混合気の燃料の濃度を適正な範囲に収めることができる。
【0043】
本実施形態のリミットキャップ10では、本体部11の外端面全体が開口している。この構成では、ドライバーなどの汎用の工具の先端部を、本体部11の外端から内部に挿入して針弁50に係合させることができるため、混合気の空燃比を調整し易くなっている。換言すれば、本体部11の外端面の開口が広いために、特殊な工具(例えば、先端が細くなっているもの)が必要なくなる。また、針弁50の溝部56に工具の先端部を正確に差し込み易いため、溝部56が変形し難い。
【0044】
本実施形態のリミットキャップ10では、図2に示すように、リミットキャップ10を針弁50に固定させる際に、第一係合部12が内側で固定部15が外側にあるので、その固定作業を行う際に、容易にリミットキャップ10を針弁に係合させつつ、気化器1の外側で固定部15を固定させることができる(例えば、圧入作業で作業者がリミットキャップ10を押し込む際に、その作業者が押し込むところに針弁側固定部55が近い方が組み付け易い)。
【0045】
本実施形態のリミットキャップ10では、作業者がリミットキャップ10を針弁50に押し込む際に、その作業者がリミットキャップ10を把持して押し込む位置の近くに固定部15があるので、針弁50に対するリミットキャップ10の圧入作業を容易に行える。
【0046】
本実施形態のリミットキャップ10が固定される針弁50では、図3に示すように、第二係合部52の外側に針弁側固定部55が形成され、第二係合部52よりも針弁側固定部55が縮径されている。
このような針弁50では、針弁側固定部55よりも第二係合部52の方が大径であるため、第二係合部52を加工する際に容易に第二係合部52の第二凹凸部53を形成することができる。例えば、第二係合部52の表面に凹部を加工したい場合に、針弁側固定部55が第二係合部52よりも大径だと、凹部の加工を容易に行うことができない。特に、第二係合部52と針弁側固定部55とが隣接している場合には、第二係合部52の加工が難しくなるのが顕著になる。
【0047】
本実施形態のリミットキャップ10が固定される針弁50では、第二係合部52の外側に針弁側固定部55が形成され、第二係合部52よりも針弁側固定部55が縮径されている。また、第二係合部52にはローレット加工により第二凹凸部53が加工されている。
このような針弁50では、針弁側固定部55よりも第二係合部52の方が大径であるため、第二係合部52を加工する際に容易に第二係合部52を形成することができる。
【0048】
本実施形態のリミットキャップ10が適用される針弁50では、第二係合部52の外側に針弁側固定部55が形成され、第二係合部52よりも針弁側固定部55が縮径されている。
このような針弁50の製造方法では、まず、軸部材の外周面に第二凹凸部53を形成する。このとき、針弁側固定部55となる部位の外周面にも第二凹凸部53が形成されていてもよい。その後、軸部材において針弁側固定部55となる部位の外周面を切削して縮径することで、第二係合部52の外端側に針弁側固定部55を形成する。この製造方法によれば、針弁50に第二係合部52および針弁側固定部55を加工し易くなる。また、第二係合部52の方が針弁側固定部55よりも大径で加工し易いため、針弁側固定部55を加工した後に、第二係合部52の第二凹凸部53を形成してもよい。
【0049】
本実施形態のリミットキャップ10では、第一係合部12と固定部15とが別体の部材である。この構成では、第一係合部12および固定部15のそれぞれに適した材料によって、第一係合部12および固定部15を形成することができる。
【0050】
本実施形態のリミットキャップ10では、第一係合部12が固定部15より硬い部材である。
この構成では、本体部11の第一係合部12が変形し難いため、第一凹凸部13と針弁50の第二凹凸部53とを確実に係合させることができる。
また、本体部11の固定部15は、第一係合部12に比べて、針弁50への固定に適した変形し易い柔らかい部材である。例えば、本体部11の固定部15は、圧入やスナップフィットによる固定に適している。
【0051】
本実施形態のリミットキャップ10では、第一係合部12が金属製であり、固定部15は樹脂製である。このように、第一係合部12は、固定部15よりも硬い部材である。
この構成では、本体部11の第一係合部12が変形し難いとともに、第一係合部12が針弁50の第二係合部52に対してスリップし難いため、第一凹凸部13と針弁50の第二凹凸部53とを確実に係合させることができる。
また、本体部11の固定部15は金属に比べて柔軟な樹脂製であるため、針弁50の針弁側固定部55を固定部15に固定させ易い。これにより、固定部15に針弁側固定部55を固定させるときに、係合させた部位がズレたり変形したり、スリップしたりして、針弁50が軸回りに回転してしまうのを防ぐことができる。これにより、混合気の空燃比の基準値がずれるのを防ぐことができる。また、樹脂は金属より軽いので、リミットキャップ10の軽量化に寄与する。
【0052】
本実施形態のリミットキャップ10では、本体部11の第一係合部12と固定部15とがインサート成形により一体成型されている。このように、第一係合部12と固定部15とを一体化することで、気化器1(燃料調整装置)の生産効率を向上させることができる(組立工数が削減される)。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態のリミットキャップ10では、図3に示すように、本体部11の第一係合部12と固定部15とが別体の部材であるが、本体部11全体を樹脂製または金属製の一つの部材で形成してもよい。
また、本実施形態では、針弁50とリミットキャップ10とを圧入により固定させているが、本発明の参考例としては、その固定方法は限定されるものではなく、例えば、接着やスナップフィットなどの当業者が考え得る様々な方法を用いることができる。
【0054】
本実施形態では、図1に示すように、チェンソーやブロワなどの小型作業機の内燃機関の気化器1(燃料調整装置)に適用したリミットキャップ10について説明しているが、本発明のリミットキャップを適用可能な装置は限定されるものではない。
【0055】
本実施形態のリミットキャップ10は、燃料の流量を調整するための針弁50に取り付けられているが、空気の流量を調整するための針弁にも取り付けることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 気化器(燃料調整装置)
3 周壁部
5 調整孔
6 窪み部
10 リミットキャップ
11 本体部
12 第一係合部
13 第一凹凸部
15 固定部
16 突起部
30 ガイド部材
31 ガイド孔
32 ガイド溝
50 針弁
51 突出部
52 第二係合部
53 第二凹凸部
55 針弁側固定部
56 溝部
図1
図2
図3
図4
図5