IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海興業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図1
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図2
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図3
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図4
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図5
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図6
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図7
  • 特許-ベルトモール及びその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】ベルトモール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
B60R13/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019228814
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095055
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 克也
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144775(JP,A)
【文献】実開昭59-035250(JP,U)
【文献】特開2015-182536(JP,A)
【文献】特開2004-249745(JP,A)
【文献】特開2005-212219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/01 - 13/04
B60R 13/08
B29C 45/00 - 45/24
B29C 45/46 - 45/63
B29C 45/70 - 45/72
B29C 45/74 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、
熱可塑性樹脂からなる長尺なモール本体と、熱可塑性樹脂からなると共に前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有しており、
前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有しており、
前記モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有し、前記側壁残部によって、車内側側壁部の上縁から下方に向けて張り出した少なくとも一つの張出部と、少なくとも一つの孔部とが形成され、
前記エンドキャップは、前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを有しており、
前記エンドキャップの挿入部には、挿入部の車内側面から車内側に向けて突出する突出部が少なくとも一つ設けられ、前記突出部は、エンドキャップの挿入方向における前側及び後側にそれぞれ位置する前側側面及び後側側面を有しており、
前記モール本体に前記エンドキャップを取り付けた状態では、前記エンドキャップの少なくとも一つの突出部が前記モール本体の少なくとも一つの孔部に嵌入されると共に、前記突出部の前側側面及び後側側面が前記孔部の内壁面と対向配置され、
前記エンドキャップの挿入部を構成する壁部の一部には、前記突出部の後側側面の根元位置付近において、溶融した熱可塑性樹脂を受け入れるための凹所が設けられており、
前記孔部における前記突出部との対向領域の少なくとも一部、及び前記凹所には、前記突出部又は前記張出部の少なくとも一方を部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を入り込ませて固化させた固化部が形成されている、ことを特徴とするベルトモール。
【請求項2】
前記突出部は車内側から見て略三角形状をなすと共に、前記突出部の前側側面は、エンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜している、ことを特徴とする請求項1に記載のベルトモール。
【請求項3】
前記突出部は、車内側から見て前側側面及び後側側面が共にエンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜しており、これら両側面によって形作られる前記突出部の少なくとも後上方部分が略楔形をなしている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のベルトモール。
【請求項4】
前記挿入部の車内側面には、車内側に向けて突出する突条又は凸部が設けられ、前記張出部には、前記突条又は凸部と係合可能な溝又は凹部が設けられている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のベルトモール。
【請求項5】
前記エンドキャップの突出部は、水平断面形状が略三角形状又は略台形状となるように形成されており、前記略三角形状又は略台形状は、当該エンドキャップの幅方向において車外側から車内側に向かって次第に先細りとなる形状をなす、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のベルトモール。
【請求項6】
車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールを製造する方法であって、前記ベルトモールは、長尺なモール本体と、前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有しており、前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有してなる、ベルトモールの製造方法において、
A) 前記モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有し、前記側壁残部によって、車内側側壁部の上縁から下方に向けて張り出した少なくとも一つの張出部と、少なくとも一つの孔部とが形成される、熱可塑性樹脂からなるモール本体を準備する工程と、
B) 前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを有してなるエンドキャップであって、前記エンドキャップの挿入部には、挿入部の車内側面から車内側に向けて突出した突出部が少なくとも一つ設けられ、前記突出部は、エンドキャップの挿入方向における前側及び後側にそれぞれ位置する前側側面及び後側側面を有し、前記エンドキャップの挿入部を構成する壁部の一部には、前記突出部の後側側面の根元位置付近において、溶融した熱可塑性樹脂を受け入れるための凹所が設けられている、熱可塑性樹脂からなるエンドキャップを準備する工程と、
C) 前記モール本体に前記エンドキャップの挿入部を挿入して、前記モール本体の側壁残部の少なくとも一つの孔部に前記エンドキャップの少なくとも一つの突出部を嵌入させると共に、前記孔部の内壁面に対し前記突出部の前側側面及び後側側面を対向させる嵌入工程と、
D) 前記エンドキャップの突出部又は前記モール本体の張出部の少なくとも一方を部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を、前記孔部における前記突出部との対向領域の少なくとも一部、及び前記凹所に入り込ませ且つ固化させて固化部を形成する溶融固化工程と、
を備えてなることを特徴とするベルトモールの製造方法。
【請求項7】
前記挿入部の車内側面には、車内側に向けて突出する突条又は凸部が設けられ、前記張出部には、前記突条又は凸部と係合可能な溝又は凹部が設けられており、
前記溶融固化工程(D)では、前記部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を、前記挿入部の突条又は凸部と、前記張出部の溝又は凹部との間にできる隙間に入り込ませ且つ固化させることで固化部を形成する、ことを特徴とする請求項6に記載のベルトモールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のベルトモールと、その製造方法とに関する。特に、長尺なベルトモール本体の一端にエンドキャップを取り付けてなるタイプのベルトモールに関する。このようなベルトモールの取付け対象としては、例えば車両のフロントドアやリアドアがあげられる。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1は、ドアベルトモール等の自動車用モールを開示する。特許文献1の図1~3に示された実施形態によれば、ドアベルトモールアウタ1の前端末部において車内向壁4には、切欠部8が切り欠き形成されると共に、この切欠部8に隣接して矩形の引掛部9が形成されている。他方、エンドキャップ21は、モール本体2の内側に挿入される挿入部23を備え、この挿入部23は前記引掛部9の内面に接触するように断面略コ字状に形成されている。挿入部23において引掛部9内面に接触する部分の延長先端には、引掛部9の切欠側端面に対して切欠部8側から引掛かる爪24が設けられている。そしてエンドキャップの挿入部23は、モール本体2に対し、爪24によって抜け止めしつつ接着剤25で接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-34757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のベルトモールは、モール本体2の切欠部8に隣接する引掛部9にエンドキャップ21の爪24を単に掛止める構造であるため、モール本体2を定尺切断する位置や切欠部8の形成位置にばらつきがあると、エンドキャップ21のモール本体2への装着時に、エンドキャップの爪24とモール本体の引掛部9との間の隙間G(これは切欠部8等の誤差を考慮して確保されている)が許容限度を超えて大きくなることがある。このため、モール本体2に対してエンドキャップ21ががたついたり外れたりするおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、モール本体に対するエンドキャップのがたつきを防止又は抑制し得るベルトモールを提供することにある。また、そのようなベルトモールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、
熱可塑性樹脂からなる長尺なモール本体と、熱可塑性樹脂からなると共に前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有しており、
前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有しており、
前記モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有し、前記側壁残部によって、車内側側壁部の上縁から下方に向けて張り出した少なくとも一つの張出部と、少なくとも一つの孔部とが形成され、
前記エンドキャップは、前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを有しており、
前記エンドキャップの挿入部には、挿入部の車内側面から車内側に向けて突出する突出部が少なくとも一つ設けられ、前記突出部は、エンドキャップの挿入方向における前側及び後側にそれぞれ位置する前側側面及び後側側面を有しており、
前記モール本体に前記エンドキャップを取り付けた状態では、前記エンドキャップの少なくとも一つの突出部が前記モール本体の少なくとも一つの孔部に嵌入されると共に、前記突出部の前側側面及び後側側面が前記孔部の内壁面と対向配置され、
前記エンドキャップの挿入部を構成する壁部の一部には、前記突出部の後側側面の根元位置付近において、溶融した熱可塑性樹脂を受け入れるための凹所が設けられており、
前記孔部における前記突出部との対向領域の少なくとも一部、及び前記凹所には、前記突出部又は前記張出部の少なくとも一方を部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を入り込ませて固化させた固化部が形成されている、ことを特徴とするベルトモールである。
【0007】
請求項1の発明によれば、エンドキャップの突出部がモール本体の孔部に嵌入することで、モール本体に対しエンドキャップが位置決めされると共に、エンドキャップの前後方向(つまり挿入方向)の位置ずれを防止しつつモール本体にエンドキャップを固定することができる。また、前記孔部における前記突出部との対向領域の少なくとも一部、及び前記凹所には、固化部が形成されている。固化部は、エンドキャップの突出部又はモール本体の張出部の少なくとも一方を部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を前記対向領域及び前記凹所に入り込ませて固化させたものである。この固化部によりモール本体とエンドキャップとの間の隙間を埋めて、モール本体に対するエンドキャップのがたつきを防止又は抑制することができる。更に本発明では、突出部又は張出部の少なくとも一方の熱可塑性樹脂を部分的に溶融させた際の溶融樹脂を突出部の後側側面の根元位置付近に設定された凹所に流れ込ませて、当該溶融樹脂を張出部の両サイドに行き渡らせることができる。そして、この溶融樹脂を固化することで、張出部をその両サイドから挟むように抱き込んだ固化部が形成され、その結果モール本体に対してエンドキャップを固定することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のベルトモールにおいて、前記突出部は車内側から見て略三角形状をなすと共に、前記突出部の前側側面は、エンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜している、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、エンドキャップをモール本体に挿入するとき、エンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜した前側側面が摺接ガイド面として機能し、円滑な挿入が達成される。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のベルトモールにおいて、前記突出部は、車内側から見て前側側面及び後側側面が共にエンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜しており、これら両側面によって形作られる前記突出部の少なくとも後上方部分が略楔形をなしている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、エンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜した突出部の前側側面及び後側側面によって形作られる当該突出部の少なくとも後上方部分が、車内側から見て略楔形をなす。これに伴い、当該突出部が嵌入するモール本体の孔部もエンドキャップ突出部の略楔形に対応した形状をなす。このため、エンドキャップのモール本体への装着完了後に、エンドキャップに抜け方向(即ち挿入方向と逆方向)の外力が作用したとしても、却って上記略楔形の突出部の後上方部分がモール本体の側壁残部(つまり孔部)に食い込む結果となり、エンドキャップのモール本体からの外れ(脱落)が防止される。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のベルトモールにおいて、前記挿入部の車内側面には、車内側に向けて突出する突条又は凸部が設けられ、前記張出部には、前記突条又は凸部と係合可能な溝又は凹部が設けられている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明によれば、請求項1~3の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、前記挿入部の車内側面の突条又は凸部と、前記張出部の溝又は凹部との係合関係に基づいて、モール本体に対するエンドキャップの上下方向の位置を規制することができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載のベルトモールにおいて、前記エンドキャップの突出部は、水平断面形状が略三角形状又は略台形状となるように形成されており、前記略三角形状又は略台形状は、当該エンドキャップの幅方向において車外側から車内側に向かって次第に先細りとなる形状をなす、ことを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項1~4の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、エンドキャップをモール本体に挿入する際、挿入開始から挿入完了に到るまでの間、エンドキャップの突出部の先端(つまりエンドキャップの幅方向における車内側の先端部)が、モール本体の張出部の内側面に対し接触摺動することになる。その場合でも、エンドキャップの突出部は、水平断面における略三角形状又は略台形状がエンドキャップ幅方向において車外側から車内側に向かって次第に先細りとなるテーパ形状をなしているため、エンドキャップの突出部の先端がモール本体の張出部の内側面に当接する面積が比較的小さくて済み、それに呼応して摺動抵抗も小さくなる。このため、エンドキャップのモール本体への挿入がし易くなる。
【0018】
請求項6の発明は、車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールを製造する方法であって、前記ベルトモールは、長尺なモール本体と、前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有しており、前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有してなる、ベルトモールの製造方法において、
A) 前記モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有し、前記側壁残部によって、車内側側壁部の上縁から下方に向けて張り出した少なくとも一つの張出部と、少なくとも一つの孔部とが形成される、熱可塑性樹脂からなるモール本体を準備する工程と、
B) 前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを有してなるエンドキャップであって、前記エンドキャップの挿入部には、挿入部の車内側面から車内側に向けて突出した突出部が少なくとも一つ設けられ、前記突出部は、エンドキャップの挿入方向における前側及び後側にそれぞれ位置する前側側面及び後側側面を有し、前記エンドキャップの挿入部を構成する壁部の一部には、前記突出部の後側側面の根元位置付近において、溶融した熱可塑性樹脂を受け入れるための凹所が設けられている、熱可塑性樹脂からなるエンドキャップを準備する工程と、
C) 前記モール本体に前記エンドキャップの挿入部を挿入して、前記モール本体の側壁残部の少なくとも一つの孔部に前記エンドキャップの少なくとも一つの突出部を嵌入させると共に、前記孔部の内壁面に対し前記突出部の前側側面及び後側側面を対向させる嵌入工程と、
D) 前記エンドキャップの突出部又は前記モール本体の張出部の少なくとも一方を部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を、前記孔部における前記突出部との対向領域の少なくとも一部、及び前記凹所に入り込ませ且つ固化させて固化部を形成する溶融固化工程と、
を備えてなることを特徴とするベルトモールの製造方法である。
【0019】
請求項6の発明によれば、モール本体の孔部にエンドキャップの突出部を嵌入させると共に、前記孔部における前記突出部との対向領域の少なくとも一部、及び前記凹所に、エンドキャップの突出部又はモール本体の張出部の少なくとも一方を部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を入り込ませ且つ固化させて固化部を形成することで、モール本体とエンドキャップとの間の隙間を埋めて、モール本体に対するエンドキャップのがたつきを防止又は抑制することができる。なお、前記孔部の内壁面と、前記突出部の前側側面及び後側側面とに挟まれた前記対向領域に対し溶融樹脂を入り込ませているので、溶融樹脂が当該対向領域の少なくとも一部を満たすことなく当該対向領域を流れ出ることを防止でき、当該対向領域にとどまる溶融樹脂の固化によって固化部を形成することができる。更に本発明では、突出部又は張出部の少なくとも一方の熱可塑性樹脂を部分的に溶融させた際の溶融樹脂を突出部の後側側面の根元位置付近に設定された凹所に流れ込ませて、当該溶融樹脂を側壁残部の張出部の両サイドに行き渡らせることができる。そして、この溶融樹脂を固化することで、張出部をその両サイドから挟むように抱き込んだ固化部が形成され、その結果、モール本体に対してエンドキャップを固定することができる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6に記載のベルトモールの製造方法において、
前記挿入部の車内側面には、車内側に向けて突出する突条又は凸部が設けられ、前記張出部には、前記突条又は凸部と係合可能な溝又は凹部が設けられており、
前記溶融固化工程(D)では、前記部分的に溶融させた熱可塑性樹脂を、前記挿入部の突条又は凸部と、前記張出部の溝又は凹部との間にできる隙間に入り込ませ且つ固化させることで固化部を形成する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、前記挿入部の車内側面の突条又は凸部と、前記張出部の溝又は凹部との係合関係に基づいて、モール本体に対するエンドキャップの上下方向の位置を規制することができる。また、これらの突条又は凸部と溝又は凹部との間に隙間ができたとしても、この隙間を埋める固化部によって、モール本体に対するエンドキャップのがたつきを防止又は抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のベルトモールによれば、モール本体に対するエンドキャップのがたつきを防止又は抑制することができる。また、本発明のベルトモールの製造方法によれば、モール本体に対するエンドキャップのがたつきを防止又は抑制可能なベルトモールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】車両用ドア(フロントドア)の概略図。
図2図1のII-II線におけるベルトモールの横断面図。
図3】ベルトモール本体の端末付近の概略斜視図。
図4】ベルトモール本体の端末付近の概略側面図。
図5】エンドキャップの主要部分の概略斜視図。
図6】エンドキャップの主要部分の概略側面図。
図7】ベルトモール本体にエンドキャップを取り付けた状態での、ベルトモールの端末付近の概略側面図(ベルトモールの裏面から見た図)。
図8図7のVIII-VIII線での部分水平断面図に相当し、(A)は樹脂を溶融する前の概略断面図、(B)は溶融樹脂の固化後の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1図8は本発明の一実施形態を示す。図1に示すように、車両用ドア1の下半部を構成するアウター側のドアパネル2には、その上縁(ベルトライン)に沿ってベルトモール3が取り付けられる。本実施形態のベルトモール3は、長尺なベルトモールの本体部(以下「モール本体10」という)と、そのモール本体10の後端部(図1で見て右端部)に取り付けられるエンドキャップ30とを有している。
【0027】
図2に示すように、モール本体10は、互いに対向する車外側側壁部11及び車内側側壁部12、並びに、これら二つの側壁部11,12を一体に連結する頂壁部13を有している。これら三つの壁部(11~13)によってモール本体10は、下側に開口した略U字状の横断面形状をなしている。ちなみに、車内側側壁部12の車内側壁面には車内側リップ14aが設けられ、車外側側壁部11の下端付近には、車外側リップ14b及び保持リップ14cが設けられ、頂壁部13と車内側側壁部12との接合部付近には、上側リップ14dが設けられている。これらのリップ14a~dは概ね公知である。なお、ベルトモール3の下側開口に対してドアパネル2のフランジ2f(仮想線で示す)を差し入れるように装着することで、保持リップ14cと車内側側壁部12との間に前記フランジ2fが挟持され、ドアパネル2に対しベルトモール3が取り付けられる。
【0028】
モール本体10は、好ましくはオレフィン系熱可塑性樹脂材料を押出成形することで形成される。但し、モール本体10の上記三つの壁部(11~13)には相対的に硬質のオレフィン系熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン)が用いられる。他方、上記三つの壁部以外の上記四つのリップ(14a~d)には相対的に軟質のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。なお、モール本体10は、溶融可能且つ弾性変形可能な材料で構成されていればよく、オレフィン系熱可塑性樹脂以外の材料(例えば、スチレン系熱可塑性樹脂、軟質塩化ビニル、ゴム等)で作られてもよい。
【0029】
図3及び図4は、本実施形態に従うモール本体10の末端付近を示し、特に図3は、モール本体10の後端部付近を車内側から見た概略斜視図である。図3に示すように、モール本体10の後端部付近では、車内側側壁部12の主に下半分が除去されると共に、車内側側壁部12の上半分が残されている(以下、この残された部分を「側壁残部15」と呼ぶ)。ちなみに側壁残部15は車内側リップ14aを持たず、また側壁残部15の形成に伴って、車外側側壁部11の保持リップ14cのうち側壁残部15と対向する部位の保持リップ14cも概ね切除される。そして、モール本体10の後端部付近に位置する三つの壁部(車外側側壁部11、頂壁部13および側壁残部15)によって、エンドキャップ30の挿入部32(図5,6参照)を挿入配置するための内部空間が区画されている。
【0030】
図3及び図4に示すように、側壁残部15によって、第1及び第2の張出部16A,16B、並びに第1及び第2の孔部17A,17Bが形成されている。これらの張出部16A,16Bは、車内側側壁部12の上縁から下方に向けて張り出すと共に、側壁残部15の物理的実体(肉部)を形作る側壁部分である。なお、第1及び第2の張出部16A,16Bは、エンドキャップ30をモール本体10に取り付ける際に車内側方向に向けて多少弾性変形することができる。なお、第1の孔部17Aは、第1の張出部16Aに隣接すると共に、第1及び第2の張出部16A,16Bの間に形成されている。第2の孔部17Bは、第2の張出部16Bに隣接すると共に、第2の張出部16Bと車内側側壁部12との間に形成されている。第1の孔部17Aと第2の孔部17Bは基本的に同一形状であるため、第1の孔部17Aについてのみ以下に説明する。第1の孔部17Aについての説明は、第2の孔部17Bにもほぼそのまま当てはまることを予め付言しておく。
【0031】
図3及び図4に示すように、第1の孔部17Aは、後述するエンドキャップ30の第1の突出部33A(図5,6参照)を嵌入させるための係合用凹部である。第1の孔部17Aは、その全体形状が第1の突出部33Aの形状(輪郭)に対応した略三角形状をなすと共に、当該孔部17Aの少なくとも後上方部分22が概ね楔形となっている。第1の孔部17Aは、前側の内壁面18と後側の内壁面19とによって縁取られている。ちなみに第1の孔部17Aにおける後側の内壁面19は、第1の張出部16Aの前側縁の外壁面でもある。同様に第1の孔部17Aにおける前側の内壁面18は、第2の張出部16Bの後側縁の外壁面でもある。モール本体10の孔部17A(又は17B)とエンドキャップ30の突出部33A(又は33B)との関係については後ほど詳しく説明する。
【0032】
更に、第1の張出部16A、第2の張出部16B、及びその張出部16Bよりも前方に位置する車内側側壁部12のそれぞれの内面側には、溝又は凹部としてのガイド溝21a,21b,21cがモール本体10の長手方向(つまりエンドキャップ30の挿入方向)に沿って延設されている。第1の張出部16Aの第1のガイド溝21a、第2の張出部16Bの第2のガイド溝21b、及び車内側側壁部12の第3のガイド溝21cは、断続的ながら一連のガイド溝を構成している。なお、第1のガイド溝21aはモール本体10の端末から始まっている。これら一連のガイド溝(21a~21c)は、モール本体10へのエンドキャップ30の挿入時に、エンドキャップ30の一部(後述するガイド突条41a~41c)を摺動させて案内するためのガイド手段として機能すると共に、挿入完了時には、モール本体10に対するエンドキャップ30の上下方向の位置を規制するための規制手段として機能する。
【0033】
図5及び図6は、本実施形態に従うエンドキャップ30の概略を示す。これらの図に示すように、エンドキャップ30は、蓋部31と、蓋部31の前面から当該エンドキャップの長手方向(即ち挿入方向)に沿って略水平に延設された挿入部32とを有している。蓋部31は、モール本体10の後端(開口端)を塞ぐための部位であり、エンドキャップ30の最後端部を構成する。挿入部32は、モール本体10の車外側側壁部11と側壁残部15との間に挿入配置される部位である。
【0034】
ちなみにエンドキャップ30は、好ましくは熱可塑性樹脂の一種であるポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成される。なお、エンドキャップ30に利用可能な熱可塑性樹脂としては、PBT以外に、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を例示することができる。
【0035】
エンドキャップ30の挿入部32には、当該挿入部の車内側面32aから車内側に向けて突出する第1及び第2の突出部33A,33Bが設けられている。これら第1及び第2の突出部33A,33Bは、前記側壁残部15における第1及び第2の孔部17A,17Bにそれぞれ対応して設けられたものである。なお、第1の突出部33Aと第2の突出部33Bは基本的に同一形状であるため、第1の突出部33Aについてのみ以下に説明する。第1の突出部33Aについての説明は、第2の突出部33Bにもほぼそのまま当てはまることを予め付言しておく。
【0036】
図5及び図6に示すように、第1の突出部33Aは、立体視的には概ね三角錐台形状の突起部であって、車内側から見た側面視(図6)では略三角形状をなしている。より具体的には、突出部33Aは、エンドキャップ30の挿入方向における前側及び後側にそれぞれ位置する前側側面34及び後側側面35、並びに底側側面36を有している。これら前側側面34、後側側面35及び底側側面36は、一般的な三角錐台の高さを担う三つの錐体側面に相当するものである。また、突出部33Aは、一般的な三角錐台の上面(天頂面)に対応する天頂部37を有している。この天頂部37は、車内側から見た側面視(図6)では略三角形状をなす。なお、突出部33Aの天頂部37は、後ほど説明するように所定の加熱手段によって部分的に溶融される部位である。
【0037】
突出部33Aの底側側面36は、挿入部32の車内側面32aに対してほぼ直角に起立すると共に、側面視においてエンドキャップ挿入方向に沿ってほぼ水平に延びる面である。突出部33Aの後側側面35は、挿入部32の車内側面32aに対してほぼ直角に起立すると共に、側面視においてエンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜した面(後上がり前下がりの面)である。突出部33Aの前側側面34は、上記後側側面35と同様、側面視においてエンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜した面(後上がり前下がりの面)であるが、挿入部32の車内側面32aに対して直角に起立しておらず、当該前側側面34の根元から天頂部37に向かって傾倒した面となっている。
【0038】
突出部33A(又は33B)の前側側面34及び後側側面35について更に説明すると、これらの側面34,35は、側面視においてエンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜する点で共通するが、水平方向に対する前側側面34の前下がり傾斜角(α)よりも後側側面35の前下がり傾斜角(β)の方が大きい(図6参照)。このため、前側側面34及び後側側面35によって形作られる当該突出部33A(又は33B)の少なくとも後上方部分(鋭角状の角部42)が、車内側から見て略楔形をなしている。
【0039】
そして、モール本体10へのエンドキャップ30の取付けによってエンドキャップ30の突出部33Aが、それに対応する側壁残部15の孔部17Aに嵌入されるとき、突出部33Aの前側側面34及び後側側面35が、孔部17Aの前側内壁面18及び後側内壁面19にそれぞれ対向配置されることになる。図7及び図8は、突出部33Aの孔部17Aへの嵌入時における上述のような対向配置状態を示すものであり、図8は、図7中のVIII-VIII線に沿った部分水平断面に相当する図である。とりわけ図8(A)(樹脂溶融前の状態)からわかるように、突出部33Aは、水平断面形状が略三角形状又は略台形状(この断面形状の輪郭の一部は前側側面34及び後側側面35によって縁取られる)をなしている。更に、この略三角形状又は略台形状の水平断面形状は、当該エンドキャップ30の幅方向において車外側から車内側に向かって次第に先細りとなる形状をなしている。なお、図8(B)(樹脂固化後の状態)が示唆するように、前述の略三角形状又は略台形状の水平断面において、前側側面34と後側側面35とが交差する位置の角部(仮想線で示す)は、所定の加熱手段によって部分的に溶解されて形を変えることになる。当該角部を構成していた熱可塑性樹脂は溶解されると、主として突出部の後側側面35と孔部の後側内壁面19との対向領域(つまり隙間S)に流れ込む。
【0040】
なお、図8(A)に示すように、エンドキャップの挿入部32を構成する壁部の車内側面32aの一部には、凹所38が形成されている。この凹所38は、突出部33A(又は33B)の後側側面35の根元付近に位置すると共に、後側側面35の延在方向(即ち図8の紙面と直交する方向)に沿って縦溝状に延設されている。この凹所38は、突出部33A(又は33B)の一部を溶融させて流動状態となった熱可塑性樹脂を受け入れるため、溶融樹脂を張出部16A(又は16B)の両サイド(車内側及び車外側)に行き渡らせることができる。
【0041】
図5及び図6に示すように、挿入部32の車内側面32aには、突条又は凸部としての3つのガイド突条41a,41b,41cが設けられている。具体的には、蓋部31と第1の突出部33Aとの間に第1のガイド突条41aが設けられ、第1の突出部33Aと第2の突出部33Bとの間に第2のガイド突条41bが設けられ、第2の突出部33Bの更に前方に第3のガイド突条41cが設けられている。これら3つのガイド突条41a,41b,41cは、断続的ながら一連のガイド突条を構成しており、モール本体10の一連のガイド溝(21a~21c)と協働して、エンドキャップ挿入時のガイド手段および挿入完了後における上下方向位置の規制手段として機能する。
【0042】
次に、前述のモール本体10に前述のエンドキャップ30を取り付けて固着する方法(ベルトモール3の組立て方法)について説明する。当該方法は概ね、モール本体10をエンドキャップ30に挿入し嵌入する工程(嵌入工程)と、モール本体10をエンドキャップ30に固定する工程(溶融固化工程)とからなる。
【0043】
嵌入工程では、モール本体10の開口端からモール本体内にエンドキャップ30の挿入部32が挿入される。その際、エンドキャップ30の第3のガイド突条41cが先ずモール本体10の第1のガイド溝21aに係入され、エンドキャップ30を押し込むに従って第3のガイド突条41cは、第1のガイド溝21a→(第1の孔部17A)→第2のガイド溝21b→(第2の孔部17B)を摺動して第3のガイド溝21cに到達する。同様に、第2のガイド突条41bは、第1のガイド溝21a→(第1の孔部17A)を摺動して第2のガイド溝21bに到達する。また、第1のガイド突条41aは第1のガイド溝21aに到達する。
【0044】
エンドキャップ30の蓋部31がモール本体10の開口端に当接してエンドキャップ30がそれ以上前進不能となったときにエンドキャップ30の挿入が完了する。この挿入完了と同期して、モール本体10の第1及び第2の孔部17A,17Bに対し、エンドキャップ30の第1及び第2の突出部33A,33Bがそれぞれ嵌入される(図7参照)。この嵌入状態では図8(A)に示すように、第1の孔部17A(または第2の孔部17B)の前側内壁面18に対して第1の突出部33A(または第2の突出部33B)の前側側面34が対向配置されると共に、第1の孔部17A(または第2の孔部17B)の後側内壁面19に対して第1の突出部33A(または第2の突出部33B)の後側側面35が対向配置される。とりわけ、孔部の後側内壁面19と突出部の後側側面35とは略平行な対面関係にあるため、両面(19,35)の対向領域には隙間Sが確保される。
【0045】
また、エンドキャップ30の挿入完了と同期して、モール本体10のガイド溝21a,21b,21cに対し、エンドキャップ30のガイド突条41a,41b,41cがそれぞれ係合される。そして、対応するガイド溝とガイド突条との係合関係に基づき、モール本体10に対するエンドキャップ30の上下方向の位置が規制される。但し、樹脂を溶融する前においては、対応するガイド溝とガイド突条との間にも隙間Sが不可避的に存在する。
【0046】
なお、本実施形態によれば、モール本体10へのエンドキャップ30の挿入開始から挿入完了までの挿入過程は、非常に円滑なものとなっている。これには幾つかの構造的要因が関与する。
一つには、上記挿入過程において、モール本体10の一連のガイド溝(21a~21c)に沿ってエンドキャップ30のガイド突条(41a~41c)を摺動させながらストレートに導くことができるため、対応するガイド溝とガイド突条とのガイド(摺動)およびその後の係合を円滑に実現することができる。
【0047】
また、上記挿入過程において、突出部33A(又は33B)は、目的の嵌入位置(つまり孔部17A又は17B)に到達するまでに、当該孔部の直前に位置する張出部16A(又は16B)を車内側方向に押し広げつつ接触摺動する必要がある。但しその場合でも、突出部33A(又は33B)の進行方向前側に位置して前記張出部と直接接触する前側側面34が、前下がりの傾斜と、根元から天頂部37に向かって傾倒する形状とを有することから、この前側側面34が張出部に対する摺接ガイド面として作用し、当該挿入過程が円滑化される。
【0048】
更に、上記挿入過程では、挿入開始から挿入完了に到るまでの間、エンドキャップの突出部33A(又は33B)の天頂部37も、モール本体の側壁残部15の内側面に対し接触摺動することが避けられない。但しその場合でも、当該突出部33A(又は33B)は、その水平断面における略三角形状又は略台形状がエンドキャップ幅方向において車外側から車内側に向かって次第に先細りとなる形状をなしているため、エンドキャップの突出部の天頂部37が側壁残部15の内側面に当接する面積が比較的小さくて済み、それに応じて摺動抵抗も小さくなり、当該挿入過程が円滑化される。
【0049】
嵌入工程に続く溶融固化工程では、エンドキャップの突出部33A,33Bの一部を部分的に溶融させると共に、その溶融させた熱可塑性樹脂を、対応する孔部17A,17Bにおける当該突出部との対向領域の少なくとも一部に入り込ませ、その後に固化させることで、固化部39を形成する。具体的には図8(B)に示すように、加熱手段としての熱電対50を高温度(例えば260℃)に加熱すると共に、高温状態の熱電対50を突出部33A(又は33B)の天頂部37に所定時間(例えば4~5秒)押し当てて、天頂部37を部分的に溶融させる。天頂部が溶融した熱可塑性樹脂は、突出部の後側側面35と孔部の後側内壁面19との間の隙間Sに流れ込んでこれを満たした後、自然冷却によって固化する。そして、隙間S内で固化した樹脂は、モール本体10の張出部16A(又は16B)と、エンドキャップ30の突出部33A(又は33B)との間の隙間を埋める固化部39となる。
【0050】
なお、溶融した樹脂が流れ込む隙間Sは非常に幅が狭い(つまり二つの対向面19,35間の離間長が短い)ので、溶融状態の樹脂はその隙間Sを即座に流れ出ることはなく、溶融樹脂の表面張力等によって隙間S内に適度にとどまって固化を待つことができる。従って、前述のように隙間Sを満たす固化部39を形成することができる。
【0051】
また、天頂部37が溶融した熱可塑性樹脂は、隙間Sに流れ込むのみならず、突出部の後側側面35の根元位置付近に設けられた縦溝状の凹所38にも流れ込み、この凹所38を介して張出部16A(又は16B)の両サイド(車内側及び車外側)にも行き渡る。そして、張出部の両サイドにも行き渡った状態で溶融樹脂が固化することで、張出部16A(又は16B)をその両サイドから挟むように抱き込んだ固化部39が形成され(図8(B)参照)、モール本体10の張出部16A(又は16B)に対してエンドキャップ30の突出部33A(又は33B)が強固に固定される。
【0052】
本実施形態のベルトモール3によれば、エンドキャップ30の二つの突出部33A,33Bがモール本体10の二つの孔部17A,17Bにそれぞれ嵌入することで、モール本体10に対しエンドキャップ30が位置決めされると共に、エンドキャップ30の前後方向(つまり挿入方向)の位置ずれを防止しつつモール本体10にエンドキャップ30を固定することができる。また、孔部17A,17Bにおいて突出部33A,33Bとの対向領域(隙間S)に形成される固化部39によって、モール本体10とエンドキャップ30との間の隙間Sを埋めることができ(更には樹脂溶融時の加熱条件次第では、単に隙間Sを埋めるにとどまらず、固化部39を介してモール本体10にエンドキャップ30を一体的に溶着することができ)、その結果、モール本体10に対するエンドキャップ30のがたつきを防止することができる。
【0053】
更に本実施形態によれば、エンドキャップ挿入方向の後側から前側に向かって下向きに傾斜した各突出部(33A,33B)の前側側面34及び後側側面35によって形作られる当該突出部の後上方部分が車内側から見て略楔形をしていると共に、前記突出部が嵌入するモール本体10の各孔部(17A,17B)も前記突出部の後上方部分の略楔形に対応した略楔形の形状をしている。このため、エンドキャップ30のモール本体10への装着完了後に、エンドキャップ30に抜け方向(即ち挿入方向と逆方向)の外力が作用したとしても、後側側面35が後側内壁面19に当たると共に上記略楔形の突出部後上方部分(角部42)がモール本体10の孔部(17A,17B)の後上方部分22に食い込む結果となり、エンドキャップ30のモール本体10からの外れ(脱落)を防止することができる。
【0054】
[変更例] 本発明は、図1図8に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で変更実施することもできる。
【0055】
上記実施形態では、エンドキャップ30の突出部33A,33Bを部分的に溶融させているが、これに代えて、モール本体10の張出部16A,16Bを部分的に溶融させて、あるいは、突出部33A,33B及び張出部16A,16Bの両方を部分的に溶融させて生じた熱可塑性樹脂を前記対向領域に入り込ませるようにしてもよい。
【0056】
上記実施形態では、挿入方向後側の対向領域(つまり図8(A)の隙間S)に溶融樹脂を入り込ませて固化部39を形成したが、これに代えて、例えば熱電対50を前側に寄せるなどして、挿入方向前側の対向領域(即ち図8(A)における前側内壁面18と前側側面34との間の領域)に溶融樹脂を入り込ませて固化部を形成してもよい。あるいは、挿入方向後側の対向領域と、挿入方向前側の対向領域の両方に固化部を形成してもよい。
【0057】
上記実施形態では、固化部39の形成に際し熱可塑性樹脂の部分的溶融のために加熱手段(その一例としての熱電対50)を用いたが、これに代えて、超音波溶着の手法を採用してもよい。
【0058】
上記実施形態は、ベルトモール3の組立てに際して嵌入工程と溶融固化工程とを同一工場内で実施することを想定しているが、嵌入工程と溶融固化工程は、場所を異ならせて(つまり各工程を別々の場所で)実施してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用ドア
2 ドアパネル
3 ベルトモール
10 モール本体
11 車外側側壁部
12 車内側側壁部
13 頂壁部
15 側壁残部
16A 第1の張出部
16B 第2の張出部
17A 第1の孔部
17B 第2の孔部
18 孔部における前側内壁面
19 孔部における後側内壁面
21a,21b,21c 「溝又は凹部」としてのガイド溝
22 孔部の後上方部分
30 エンドキャップ
31 蓋部
32 挿入部
32a 挿入部の車内側面
33A 第1の突出部
33B 第2の突出部
34 突出部の前側側面
35 突出部の後側側面
36 突出部の底側側面
37 突出部の天頂部
38 凹所
39 固化部
41a,41b,41c 「突条又は凸部」としてのガイド突条
42 鋭角状の角部
50 熱電対(加熱手段)
S 隙間(対向領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8