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  • 特許-供試体型枠および供試体作成方法 図1
  • 特許-供試体型枠および供試体作成方法 図2
  • 特許-供試体型枠および供試体作成方法 図3
  • 特許-供試体型枠および供試体作成方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】供試体型枠および供試体作成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
G01N1/28 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020011694
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021117153
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】藤原 斉郁
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-017171(JP,A)
【文献】特開昭59-009008(JP,A)
【文献】特開2014-222212(JP,A)
【文献】特開2013-220615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定処理土の強度試験に用いられる供試体を作成するための供試体型枠であって、
安定処理土が投入される円筒状の内枠と、前記内枠の外側に着脱される外枠と、を備え、
前記外枠は、組み合わせると円筒状になる複数の外枠構成材と、底板と、を備えていて、前記内枠内の前記安定処理土を締め固めた際に前記内枠に作用する側圧により変形することがない剛性を有しており、
前記外枠構成材の周方向端部には、側方に張り出す周端固定部が上下に二カ所ずつ形成されているとともに、前記外枠構成材の下端中央には、側方に張り出す下端固定部が形成されていて、
前記外枠構成材は、隣接する他の外枠鋼製材と、前記周端固定部同士を重ねた状態で当該周端固定部に挿通したボルトにより接合され、前記下端固定部に挿通したボルトを前記底板に螺着することにより前記底板に固定されており、
前記内枠は、上下方向に二条の切込みが入った金属製の有底の筒体からなることを特徴とする、供試体型枠。
【請求項2】
前記内枠の外面形状と、前記外枠の内面形状とが同形状であることを特徴とする、請求項1に記載の供試体型枠。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の供試体型枠を使用する供試体作成方法であって、
前記外枠が装着された前記内枠に安定処理土を投入する材料投入工程と、
前記外枠を取り外して前記安定処理土を養生する養生工程と、を備え、
前記材料投入工程では、前記安定処理土を所定回数突き固めることを特徴とする、供試体作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定処理土の強度試験に用いる供試体を作成するための供試体型枠およびこれを利用した供試体作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め戻し材や盛土材等に使用する安定処理土を使用する場合には、施工性や強度等を把握するための力学試験(例えば、CBR試験、コーン指数試験、一軸圧縮試験等)が実施される。安定処理土の力学試験には、いわゆるモールド(供試体型枠)を使用して所定の形状に作成した供試体を利用する。
供試体は、例えば、非特許文献1に示すように、JIS基準に準じてφ10cmまたはφ15cmの鋼製円筒形モールドを使用して作成する。非特許文献1では、モールドに投入した安定処理土を、JIS A 1210に準じて突き固めた後、モールドに収容したまま養生し、自立可能な強度が発現したらモールドから取り出してさらに養生する。供試体の作成に使用するモールドは、突き固め時に変形することがないように重厚に形成されているため、脱型前の運搬や脱型時の作業に労力を要する。また、試験では、多数の供試体を使用する必要があるが、モールドの平面形状は供試体の平面寸法に比較して大きいため、大きな養生スペースが必要となる。
そのため、特許文献1には、改良土が充填される中枠と、内側に中枠が嵌合される外枠とを備える合成樹脂製の改良土供試体用型枠が開示されている。特許文献1の改良土試験用型枠は、合成樹脂製であるため、軽量で取り扱いやすい。
ところが、合成樹脂製の改良土供試体用型枠は、突き固めに対して十分な剛性を有していないため、突き固め時に変形するおそれがある。型枠が変形すると、所定形状の供試体を作成できなくなるため、試験の精度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「地盤材料試験の方法と解説-二分冊の1-」社団法人地盤工学会、平成22年12月17日、409-417頁
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3173325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、突き固めに対して十分な剛性を有しながらも、取り扱い易い供試体型枠および供試体作成方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の供試体型枠は、安定処理土の強度試験に用いられる供試体を作成するためのものであって、安定処理土が投入される円筒状の内枠と、前記内枠の外側に着脱される外枠とを備えている。前記外枠は、組み合わせると円筒状になる複数の外枠構成材と、底板と、を備えていて、前記内枠内の前記安定処理土を突き固めた際に前記内枠に作用する側圧により変形することがない剛性を有している。前記外枠構成材の周方向端部には、側方に張り出す周端固定部が上下に二カ所ずつ形成されているとともに、前記外枠構成材の下端中央には、側方に張り出す下端固定部が形成されていて、前記外枠構成材は、隣接する他の外枠鋼製材と、前記周端固定部同士を重ねた状態で当該周端固定部に挿通したボルトにより接合され、前記下端固定部に挿通したボルトを前記底板に螺着することにより前記底板に固定されており、前記内枠は上下方向に二条の切込みが入った金属製の有底の筒体からなる。
かかる供試体型枠によれば、外枠が安定処理土の突き固め時の作用応力に対して十分な耐力を有しているため、所定の形状の供試体を作成することができる。また、安定処理土の突き固め後、外枠を内枠から取り外すことで、脱型前の供試体の取り扱い性が向上するとともに、養生スペースの削減が可能となる。そのため、供試体を多数作成する場合であっても、養生スペースを確保しやすい。
なお、前記内枠の外面形状と前記外枠の内面形状が、同形状であれば、内枠と外枠が密着し、安定処理土の突き固め時の内枠の変形をより確実に抑制することができる。
【0007】
また、本発明の供試体作成方法は、前記供試体型枠を使用するものであって、前記外枠が装着された前記内枠に安定処理土を投入する材料投入工程と、前記外枠を取り外して前記安定処理土を養生する養生工程とを備え、前記材料投入工程では、前記安定処理土を所定回数突き固める。
かかる供試体作成方法によれば、養生工程において外枠を取り外すため、養生時の供試体が取り扱いやすくなり、その後の作業も容易となる。また、外枠を取り外した状態で養生工程を行うので、養生スペースの削減が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の供試体型枠によれば、突き固めに対して十分な強度を有し、かつ、脱型前の運搬時や脱型時に取り扱い易く、なおかつ、養生時の省スペース化が可能となる。また、本発明の供試体型枠を使用した供試体作成方法によれば、高品質な供試体を簡易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る供試体型枠の断面図である。
図2】供試体型枠の分解斜視図である。
図3】供試体作成方法の各工程を示す斜視図であって、(a)は準備工程、(b)は材料投入工程、(c)は(b)に続く材料投入工程である。
図4図3に続く供試体作成方法の各工程を示す斜視図であって、(a)は養生工程、(b)は脱型工程、(c)は(b)に続く脱型工程である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、土、水およびセメントを混合して製造されたセメント安定処理土Soに対して強度試験を行う場合について説明する。強度試験に使用する供試体Sは、図1および図2に示す供試体型枠1を利用して作成する。ここで、図1は、供試体型枠1を示す斜視図、図2は供試体型枠1の分解斜視図である。供試体型枠1は、内枠2と外枠3とを備えた二重構造の容器(型枠)である。
内枠2は、セメント安定処理土Soが投入される円筒状の容器である。本実施形態では、内枠2として、金属製の有底の筒体を使用する。本実施形態の内枠2は、内径150mm、高さ300mmである。内枠2は、軽量で取り扱いやすい形状(例えば、部材厚が薄く、突起等がない形状)であるのが望ましい。また、内枠2の一部には、上下方向に二条の切込みが入っていて、供試体Sを取り出す際に、切込みにおいて内枠2の一部を帯状に引き剥がすことが可能となっている。すなわち、内枠2は、使い捨ての容器であり、内部に充填されたセメント安定処理土So(供試体S)に所定の強度が発現した後、一部を引き剥がすことでスリット状の開口を形成し、この開口を利用して残りの部分を取り外す。なお、内枠2を構成する材料は、供試体Sを取り出しやすいものであれば限定されるものではなく、例えば、プラスチック等の合成樹脂材であってもよいし、紙材であってもよい。また、内枠2の形状寸法は限定されるものではなく、例えば内径100mmとするなど、試験方法等に応じて適宜決定すればよい。また、内枠2は、必ずしも有底である必要はなく、底部分がない筒体であってもよい。
【0011】
外枠3は、内枠2の外側に着脱する容器である。外枠3の内面形状は、内枠2の外面形状と同形状である。すなわち、外枠3は、内枠2の外面に装着した状態で、内枠2に密着している。また、外枠3は、内枠2内に投入されたセメント安定処理土Soを締め固める(突き固める)際に、内枠2に作用する側圧により変形することがない剛性を有している。本実施形態の外枠3は、金属製であり、一対の外枠構成材4,4と、底板5とを組み合わせることにより構成されている。なお、外枠3を構成する外枠構成材4の数(分割数)は限定されるものではなく、三つ以上であってもよい。
【0012】
外枠構成材4は、平面視半円状の鋼板(半割円筒状の鋼板)からなる。一対の外枠構成材4,4を組み合わせると円筒状となる。外枠構成材4の内径は、内枠2の外径と同じ寸法とする。外枠構成材4の周方向端部には、側方に張り出す固定部6が上下に二カ所ずつ形成されている。また、外枠構成材4の下端中央にも、側方に張り出す固定部6が形成されている。固定部6は、矩形状の鋼板であって、中央にボルト8を挿通するための貫通孔が形成されている。なお、固定部6の数および配置は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0013】
底板5は、平面視円形の鋼板からなる。底板5は、内枠2内に投入されたセメント安定処理土Soを突き固める際の衝撃により変形することがない強度(厚み)を有している。底板5の上面には、複数のネジ穴7が形成されている。ネジ穴7は、外枠構成材4を底板5に固定する際にボルト8を螺着するためのものである。ネジ穴7は、外枠構成材4の下端に形成された固定部6の貫通孔に対応する位置に形成されている。ここで、一対の外枠構成材4,4のうちの一方は、底板5に対して着脱不能に固定されていてもよい。この場合、一方の外枠構成材4の下端の固定部6は省略する。
なお、外枠3の構成は、内枠2に密着した状態で装着可能であれば限定されるものではなく、例えば、いわゆる割り型モールドや鋳鉄製モールド等を使用してもよい。
【0014】
次に、供試体型枠1を利用して供試体Sを作成する場合について説明する。本実施形態の供試体作成方法は、準備工程と、材料投入工程と、養生工程と、脱型工程とを備えている。図3は、供試体作成方法の各手順を示す図であって、(a)は準備工程、(b)、(c)は材料投入工程である。
準備工程では、図3(a)に示すように、内枠2の外側に外枠3を装着して供試体型枠1を組み立てる。具体的には、まず、内枠2を、底板5の上面中央に立設する。このとき、底板5には、予め一方の外枠構成材4を固定しておくのが望ましい。外枠構成材4は、下端の固定部6に挿通したボルト8を底板5のネジ穴7に螺着することにより固定する。底板5に一方の外枠構成材4が固定されている場合には、内枠2を当該外枠構成材4の内面に当接させた状態で、底板5上に配置する。底板5の上に内枠2を配置したら、内枠2を挟むように一対の外枠構成材4,4を組み合わせる。一対の外枠構成材4,4は、側端面同士を突き合せ、重ね合わされた固定部6同士をボルト8とナットにより固定する。また、底板5の上に配設された外枠構成材4は、下端の固定部6に挿通したボルト8をネジ穴7に螺合することにより底板5に固定する。
【0015】
材料投入工程では、図3(b)に示すように、外枠3が装着された内枠2にセメント安定処理土Soを充填する。内枠2に投入されたセメント安定処理土Soは、図3(c)に示すように、ランマー9を利用して締め固める。セメント安定処理土Soは、複数の層に分けて締め固めるものとする。すなわち、内枠2内の一定の高さまでセメント安定処理土Soを投入したら(一定量のセメント安定処理土Soを投入したら)締め固めを行い、その後、セメント安定処理土Soの投入と締固め作業を繰り返すことにより内枠2内にセメント安定処理土Soを充填する。セメント安定処理土Soの締め固め(突き固め)は、内枠2内のセメント安定処理土Soに対して、一定の高さから一定の質量のランマー9を落下させることにより行う。
【0016】
養生工程は、内枠2内において、セメント安定処理土So(供試体S)を養生する工程である。内枠2全体にセメント安定処理土Soを充填したら、図4(a)に示すように、一方の外枠構成材4を他の外枠構成材4および底板5から取り外し、外枠3の内部から内枠2を取り出す。ここで、図4(a)は、養生工程を示す斜視図である。セメント安定処理土Soの養生は、外枠3を取り外した状態で行う。内枠2が取り出された外枠3は、養生工程と並行して、新たな供試体Sを作成するための供試体型枠1として使用してもよい。
【0017】
脱型工程は、図4(b)、(c)に示すように、供試体Sを内枠2から取り出す工程である。ここで、図4(b)、(c)は、脱型工程を示す斜視図である。図4(b)に示すように、脱型する際は、切込みが形成された位置において内枠2の帯状部分を引っ張り、供試体Sの表面から引き剥がす。次に、帯状部分が引き剥がされることにより形成された開口部分を広げるようにして、内枠2の残りの部分を供試体Sから取り外す。図4(c)に示すように、内枠2を取り外すことで、円柱状の供試体Sが取り出される。
【0018】
本実施形態の供試体型枠1によれば、外枠3がセメント安定処理土Soの突き固め時の作用応力に対して十分な耐力を有しているため、軽量で取り扱いやすい内枠2を利用して所定の形状の供試体Sを作成することができる。内枠2が外枠3に密着した状態で内部のセメント安定処理土Soの突き固めを行うため、突固めを伴う土の締固め試験で使用するモールドと同等の変形抑制、エネルギー伝達性を確保することができ、理想的な寸法および密度が得られる。
また、セメント安定処理土Soの突き固め後、外枠3を内枠2から取り外すことで、脱型前の供試体Sの取り扱い性が向上する。そのため、脱型前の供試体Sを容易に移動させることができる。このとき、供試体Sは、内枠2によって表面が保護されているため、供試体Sに破損が生じることや供試体Sが変形することを抑制できる。また、供試体Sは、土の締固め試験等で利用する一般的なモールドに比べて、締結治具等の構成部材が排除された筒状の内枠2のみが外装された状態となるため、養生スペースの削減が可能となる。そのため、供試体Sを多数作成する場合であっても、養生スペースを確保しやすい。
また、内枠2の外面形状と外枠3の内面形状が、同形状であるため、内枠2と外枠3が密着し、セメント安定処理土Soの突き固め時に内枠2が変形することがない。
【0019】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、土と水とセメントとを混合してなるセメント安定処理土Soを利用して供試体Sを作成する場合について説明したが、供試体Sを構成する材料は限定されるものではない。例えば、セメント以外の固化材が混合されていてもよいし、セメントに加えて混和材が混合されていてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 供試体型枠
2 内枠
3 外枠
S 供試体
So セメント安定処理土(安定処理土)
図1
図2
図3
図4