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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】加飾シート及び加飾成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230608BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230608BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230608BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/26
B32B27/40
C09J175/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020060168
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154706
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】飯野 匠太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康司
(72)【発明者】
【氏名】上田 智現
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-128921(JP,A)
【文献】特開2014-128920(JP,A)
【文献】特開2014-141086(JP,A)
【文献】特開2011-153204(JP,A)
【文献】特開2013-082216(JP,A)
【文献】特開2013-071255(JP,A)
【文献】特開2013-018979(JP,A)
【文献】特開2014-185320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/26
B32B 27/40
C09J 175/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元加飾成形後に紫外線を照射して硬化層を形成する工程を有する加飾成形品の製造方法に用いられる加飾シートであって、
表皮層及び接着層を備える積層構造を有し、
前記接着層が、水酸基価80~250mgKOH/gのポリカーボネートオールに由来する構成単位(D)を有するウレタン樹脂(C)(但し、アクリルポリオールに由来する構成単位を有するものを除く)を含有する接着層用樹脂組成物で形成されており、
前記構成単位(D)が脂環式骨格を含み、
前記表皮層が、活性エネルギー線硬化型の表皮層用樹脂組成物で形成されており、
前記表皮層の80℃における破断伸度が250%以上であり、
前記表皮層を紫外線硬化させて形成される硬化層の、JIS K 5600に準拠して測定される鉛筆硬度が4B以上である加飾シート。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(C)が、前記ポリカーボネートジオール、低分子ジオール、及びジイソシアネートの重合反応物である請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記脂環式骨格が、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロウンデカン、及びノルボルネンの少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(C)の重量平均分子量が2,000~500,000である請求項1~3のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂(C)中の前記構成単位(D)の含有量が、30~80質量%である請求項1~のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項6】
前記接着層用樹脂組成物が、架橋剤をさらに含有し、
前記接着層用樹脂組成物中の前記架橋剤の含有量が、前記ウレタン樹脂(C)100質量部に対して、2~25質量部である請求項1~のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項7】
前記表皮層用樹脂組成物が、(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するポリカーボネート系ポリウレタン(A)及び無黄変ポリイソシアネート(B)を含有する請求項1~のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項8】
ガードフィルムをさらに備え、
前記ガードフィルム、前記表皮層、及び前記接着層がこの順で積層された積層構造を有する請求項1~のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項9】
前記表皮層と前記接着層の間に配置される意匠層をさらに備える請求項に記載の加飾シート。
【請求項10】
基材シート及び意匠層をさらに備え、
前記表皮層、前記意匠層、前記基材シート、及び前記接着層がこの順で積層された積層構造を有する請求項1~のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項11】
被加飾部材と、前記被加飾部材の少なくとも一部の表面上に配置される加飾層と、を備え、
前記加飾層が、請求項1~10のいずれか一項に記載の加飾シートの前記表皮層に由来する硬化層と、前記被加飾部材の表面に当接して配置される、前記接着層に由来する接着硬化層と、を含む積層構造を有する加飾成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート及び加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加飾成形品を製造する方法として、インモールド成形法及びインサートモールド成形法(以下、併せて「インモールド成形法」とも記す)が知られている。一方、三次元表面加飾成形方法は、意匠性により優れた加飾成形品を製造することが可能であるとともに、型が不要であるといった特徴を有する方法である。このため、三次元表面加飾成形方法は、パソコン等の家電製品用の筺体や車両の内外装パーツ等を製造する方法として用途を広げている。三次元表面加飾成形方法で用いられる一般的な加飾シートは、基材シートの一方の面上に意匠層及び耐擦傷性を有する表皮層が順次積層されるとともに、基材シートの他方の面上に接着層及びセパレートフィルムが順次積層された積層体である。
【0003】
一般的な三次元表面加飾成形方法は、例えば、以下に示す(1)~(6)の工程にしたがって実施される。
(1)加飾シートを下チャンバーボックス上部に設置されたテーブルに挟む。
(2)上チャンバーを降下させて密閉空間を形成する。
(3)両チャンバー内を真空状態にする。
(4)加飾シートを赤外線ヒーターで加熱する。
(5)下チャンバーボックスに設置した成形部品(被加飾部材)を上昇させる。
(6)被加飾部材が加飾シートに接触した段階で上チャンバーを大気圧に開放させる。
【0004】
樹脂製の部材は、加工性に優れているとともに、軽量かつ安価であることから、被加飾部材として頻繁に使用されている。そして、インモールド成形法に適用されるシートとしては、例えば、基材フィルムの一方の面上にハードコート層が形成されているとともに、他方の面上にインキ層及び接着ワニス層が順次積層して形成されたインモールドラベルが提案されている(特許文献1)。また、三次元成形性を有する加飾シートとして、例えば、オレフィン系樹脂で形成された接着層を備える加飾シートが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-292198号公報
【文献】特開2014-128920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インモールド成形法における成形温度が120~200℃程度であるのに対し、三次元表面加飾成形方法における成形温度は80~110℃程度である。このため、特許文献1で提案されたインモールドラベルを三次元表面加飾成形方法に適用すると、成形温度が低いため、十分な接着力を得ることができなかった。
【0007】
一方、特許文献2で提案された加飾シートを用いて三次元表面加飾成形すれば、ある程度の接着力を発揮させることができる。しかし、近年要求される高いレベルの接着力を発揮するには至っておらず、さらなる改良の余地があった。また、ABSやPC等の樹脂や各種鋼板等の金属からなる被加飾部材に対しても良好に密着する、汎用性の高い加飾シートの開発が要望されていた。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、様々な材料で形成された被加飾部材に対しても良好に密着し、耐久性に優れた加飾成形品を製造することができる、三次元表面加飾成形方法に適用可能な加飾シートを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の加飾シートを用いて製造される加飾成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示す加飾シートが提供される。
[1]三次元加飾成形後に紫外線を照射して硬化層を形成する工程を有する加飾成形品の製造方法に用いられる加飾シートであって、表皮層及び接着層を備える積層構造を有し、前記接着層が、水酸基価80~250mgKOH/gのポリカーボネートポリオールに由来する構成単位(D)を有するウレタン樹脂(C)を含有する接着層用樹脂組成物で形成されており、前記表皮層が、活性エネルギー線硬化型の表皮層用樹脂組成物で形成されており、前記表皮層の80℃における破断伸度が250%以上であり、前記表皮層を紫外線硬化させて形成される硬化層の、JIS K 5600に準拠して測定される鉛筆硬度が4B以上である加飾シート。
[2]前記構成単位(D)が脂環式骨格を含む前記[1]に記載の加飾シート。
[3]前記ウレタン樹脂(C)の重量平均分子量が2,000~500,000である前記[1]又は[2]に記載の加飾シート。
[4]前記ウレタン樹脂(C)中の前記構成単位(D)の含有量が、30~80質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載の加飾シート。
[5]前記接着層用樹脂組成物が、架橋剤をさらに含有し、前記接着層用樹脂組成物中の前記架橋剤の含有量が、前記ウレタン樹脂(C)100質量部に対して、2~25質量部である前記[1]~[4]のいずれかに記載の加飾シート。
[6]前記表皮層用樹脂組成物が、(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するポリカーボネート系ポリウレタン(A)及び無黄変ポリイソシアネート(B)を含有する前記[1]~[5]のいずれかに記載の加飾シート。
[7]ガードフィルムをさらに備え、前記ガードフィルム、前記表皮層、及び前記接着層がこの順で積層された積層構造を有する前記[1]~[6]のいずれかに記載の加飾シート。
[8]前記表皮層と前記接着層の間に配置される意匠層をさらに備える前記[7]に記載の加飾シート。
[9]基材シート及び意匠層をさらに備え、前記表皮層、前記意匠層、前記基材シート、及び前記接着層がこの順で積層された積層構造を有する前記[1]~[6]のいずれかに記載の加飾シート。
【0010】
また、本発明によれば、以下に示す加飾成形品が提供される。
[10]被加飾部材と、前記被加飾部材の少なくとも一部の表面上に配置される加飾層と、を備え、前記加飾層が、前記[1]~[9]のいずれかに記載の加飾シートの前記表皮層に由来する硬化層と、前記被加飾部材の表面に当接して配置される、前記接着層に由来する接着硬化層と、を含む積層構造を有する加飾成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、様々な材料で形成された被加飾部材に対しても良好に密着し、耐久性に優れた加飾成形品を製造することができる、三次元表面加飾成形方法に適用可能な加飾シートを提供することができる。また、本発明によれば、上記の加飾シートを用いて製造される加飾成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の加飾シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の加飾成形品の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の加飾シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の加飾成形品の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<加飾シート>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の加飾シートは、三次元加飾成形後に紫外線を照射して硬化層を形成する工程を有する加飾成形品の製造方法に用いられる加飾シートであり、表皮層及び接着層を備える積層構造を有する。図1は、本発明の加飾シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の加飾シート10は、表皮層2と、接着層4とを備える積層構造を有するシート状部材である。加飾シート10は、ガードフィルム6をさらに備えるとともに、ガードフィルム6、表皮層2、及び接着層4がこの順で積層された積層構造を有することが好ましい。また、表皮層2と接着層4の間に配置される意匠層8をさらに備えることも好ましい。そして、接着層4は、特定のポリカーボネートポリオールに由来する構成単位(D)を有するウレタン樹脂(C)を含有する接着層用樹脂組成物で形成されている。
【0014】
図3は、本発明の加飾シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。図3に示すように、本実施形態の加飾シート30は、表皮層12と、接着層14とを備える積層構造を有するシート状部材である。加飾シート30は、基材シート5及び意匠層18をさらに備えるとともに、表皮層12、意匠層18、基材シート5、及び接着層14がこの順で積層された積層構造を有することが好ましい。そして、接着層4は、特定のポリカーボネートポリオールに由来する構成単位(D)を有するウレタン樹脂(C)を含有する接着層用樹脂組成物で形成されている。
【0015】
(接着層)
[ウレタン樹脂(C)]
接着層は、水酸基価80~250mgKOH/gのポリカーボネートポリオールに由来する構成単位(D)を有するウレタン樹脂(C)を含有する接着層用樹脂組成物で形成されている。このような構成単位(D)を有するウレタン樹脂(C)は、その分子構造中のウレタン結合の量が多いため、このウレタン樹脂(C)を含有する樹脂組成物を用いることで、凝集力が向上し、接着強度の高い接着層を形成することができる。
【0016】
ポリカーボネートポリオールの水酸基価を80mgKOH/g以上とすることで、ウレタン樹脂(C)中のウレタン結合の量が多くなるため、凝集力が向上し、形成される接着層の接着強度を高めることができるとともに、ウレタン結合の親和性によって、各種の材料からなる被加飾部材との密着性が向上する。一方、ポリカーボネートポリオールの水酸基価を250mgKOH/g以下とすることで、80~110℃程度の低い成形温度で軟化し、優れた接着力を得ることができる。これにより、三次元表面加飾成形方法に適用可能な加飾シートとすることができる。
【0017】
ウレタン樹脂(C)の重量平均分子量は、2,000~500,000であることが好ましく、5,000~250,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記の範囲内であるポリウレタン(C)を用いることで、良好な接着強度と耐久性を有することができる。ウレタン樹脂(C)の重量平均分子量が2,000未満であると、耐久性が劣る場合がある。一方、ウレタン樹脂(C)の重量平均分子量が500,000超であると、良好な接着性が得られない場合がある。
【0018】
ウレタン樹脂(C)は、例えば、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有する両末端ポリオール(ポリカーボネートポリオール)、鎖伸長剤(低分子ジオール)、及びジイソシアネート等を重合反応させることによって製造することができる。
【0019】
重合反応(ウレタン化反応)の条件は特に限定されず、通常のウレタン化反応の条件を適用させることができる。例えば、ジイソシアネートの官能基数と、活性水素含有化合物であるポリカーボネートポリオール及び低分子ジオールの官能基数の和との当量比を、約1.0として重合反応させる。また、ワンショット法と多段法のいずれの方式で反応させてもよい。重合反応の温度は、通常20~150℃、好ましくは60~110℃である。そして、イソシアネート基がほとんどなくなるまで重合反応させることで、目的とするウレタン樹脂(C)を得ることができる。
【0020】
ポリカーボネートポリオールとしては、ウレタン合成の観点から、主としてポリカーボネートジオールを用いることが好ましい。多官能のポリカーボネートポリオールを用いると、重合反応中にゲル化等を引き起こす可能性がある。ウレタン樹脂(C)中のポリカーボネートポリオールに由来する構成単位(D)の含有量は、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがさらに好ましい。構成単位(D)の含有量が30質量%未満であると、低分子ジオール及びジイソシアネートのそれぞれに由来する構成単位の含有量が相対的に増加する。これらの構成単位の含有量が多いと、形成される接着層が硬くなりやすいため、80~110℃程度の成形温度で十分な接着力を発揮させることが困難になる場合がある。一方、構成単位(D)の含有量が80質量%超であると、ウレタン結合の量が相対的に減少するため、接着力が不足しやすくなる傾向にある。
【0021】
なお、ポリカーボネートポリオールに代えて、ポリエステルポリオールを用いると、接着層の耐加水分解性が低下する。また、ポリカーボネートポリオールに代えて、ポリエーテルポリオールを用いると、接着層の耐熱性が低下する。
【0022】
ポリカーボネートポリオールの種類は特に限定されず、一般的に入手可能な市販品や合成を用いることができる。ポリカーボネートジオールとしては、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリデカメチレンカーボネートジオール、及びこれらのランダム共重合体やブロック共重合体等を挙げることができる。
【0023】
構成単位(D)は、脂環式骨格を含むことが好ましい。例えば、脂環式骨格を有するポリカーボネートポリオールを用いることで、脂環式骨格を含む構成単位(D)を有するウレタン樹脂(C)とすることができる。脂環式骨格としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロウンデカン、ノルボルネン等を挙げることができる。構成単位(D)が脂環式骨格を含むことで、ウレタン樹脂(C)の凝集力が増大し、接着層の接着力をさらに高めることができる。
【0024】
低分子ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1、5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の脂肪族グリコール類;1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,1-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式系グリコール類を挙げることができる。なお、水酸基とエチレン性不飽和基を含有するモノマーを低分子ジオール(W)として用いることができる。
【0025】
低分子ジオールを用いて、ポリカーボネートポリオールと低分子ジオールの水酸基価の合計を調整することができる。ポリカーボネートポリオールと低分子ジオールの水酸基価の合計は、100~400であることが好ましい。
【0026】
ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-メチレンビス-シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類;4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類を挙げることができる。これらの脂肪族ポリイソシアネート類や脂環式ポリイソシアネート類を用いることによって、紫外線や熱によって黄変しにくいウレタン樹脂(C)が得られるので、耐久性により優れた接着層を形成することができる。得られる樹脂組成物の凝集力の観点から、脂環式ポリイソシアネート類を少なくとも用いることが好ましい。なお、三官能以上の多官能イソシアネートを併用することも可能である。ただし、多官能イソシアネートの使用量が多すぎると樹脂溶液がゲル化を起こすことがあるため、注意することが好ましい。
【0027】
接着層用樹脂組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。また、接着層用樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、ウレタン樹脂(C)100質量部に対して、2~25質量部であることが好ましく、3~15質量部であることがさらに好ましい。架橋剤を含有させることで、耐水性、耐薬品性、及び耐熱性等の特性がさらに向上した接着層を形成することができる。また、架橋剤を含有させることで、初期密着性及び高温下での接着力が向上した接着層を形成することができる。架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の公知の架橋剤を用いることができる。
【0028】
イソシアネート架橋剤としては、MDI、TDI、HDI、IPDI、これらのトリメチロールプロパンアダクト体、ビューレット体、及びイソシアヌレート体;ポリメリックMDI、末端イソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。ブロックイソシアネート架橋剤としては、イソシアネート架橋剤のオキシム又はラクタム、3,5-ジメチルピラゾール等によるブロック体を挙げることができる。カルボジイミド架橋剤の市販品としては、商品名「カルボジライト」(日清紡ケミカル社製)等を挙げることができる。オキサゾリン架橋剤の市販品としては、商品名「エポクロス」(日本触媒社製)等を挙げることができる。エポキシ架橋剤の市販品としては、商品名「jER」(三菱化学社製)等を挙げることができる。アジリジン架橋剤の市販品としては、商品名「ケミタイト」(日本触媒社製)等を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。また、チタンカップリング剤の具体例としては、チタニウムジ2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)等を挙げることができる。
【0029】
接着層用樹脂組成物には、通常、溶剤が含有される。溶剤としては、接着層用樹脂組成物中の各成分を溶解させうるものであればよい。溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジメチルカーボネート等の低分子量カーボネート系溶剤等を挙げることができる。なかでも、ケトン系溶剤単独、ケトン系溶剤と他の溶剤とを併用した混合系溶剤、及びケトン系溶剤とエステル系溶剤とを併用した混合系溶剤が、溶解性及び乾燥性が良好であるために好ましい。
【0030】
接着層用樹脂組成物には、接着層に付与しようとする物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、着色材等を挙げることができる。
【0031】
シリカ、有機ビーズ、顔料、染料等の着色剤や体質顔料等を用いて接着層に意匠を施すことで、意匠が施された樹脂層を接着層とすることができる。着色剤としては、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等を用いることができる。また、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等を用いて蒸着、スパッタリング、或いは箔転写等することによって意匠性が付与された金属薄膜を設けてもよい。
【0032】
接着層の厚さは、目的等に応じて適宜設定することができる。接着層の厚さは、通常、2~200μm、好ましくは5~100μmである。
【0033】
(表皮層)
表皮層の80℃における破断伸度(以下、「80℃破断伸度」とも記す)は250%以上であり、好ましくは300%以上である。すなわち、80℃破断伸度が十分に高い表皮層を備える本発明の加飾シートは、三次元成形時にクラック等の不具合が生じにくく、優れた三次元成形性を有する。表皮層の80℃破断伸度の上限については特に限定されないが、実質的には1,000%以下である。
【0034】
表皮層を紫外線硬化させて形成される硬化層の、JIS K 5600に準拠して測定される鉛筆硬度は4B以上であり、好ましくは2B以上、さらに好ましくはB以上である。すなわち、紫外線硬化によって十分硬い硬化層を形成しうる表皮層を備える本発明の加飾シートを用いることで、耐擦傷性に優れた表面を有する加飾成形品を製造することができる。さらに、紫外線硬化させる前の表皮層の80℃破断伸度は、上述の通り十分に高い。すなわち、硬化前の表皮層は優れた三次元成形性を有するが、表皮層を硬化して形成される硬化層は十分に硬い。このため、本発明の加飾シートを用いれば、耐擦傷性に優れた表面を有する加飾成形品を、三次元表面加飾成形方法によって割れ等の不具合を生じさせることなく簡便に製造することができる。なお、硬化層の鉛筆硬度の上限については特に限定されないが、実質的には4H以下である。
【0035】
表皮層の厚さは、目的等に応じて適宜設定することができる。表皮層の厚さは、通常、2~200μm、好ましくは5~100μmである。
【0036】
表皮層は、活性エネルギー線硬化型の表皮層用樹脂組成物で形成されている。表皮層用樹脂組成物は、(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するポリカーボネート系ポリウレタン(以下、単に「ポリカーボネート系ポリウレタン」又は「ポリウレタン」とも記す)(A)と、無黄変ポリイソシアネート(B)とを含有することが好ましい。
【0037】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の無黄変ポリイソシアネート(B)の含有量は、ポリウレタン(A)100質量部に対して、2~25質量部であることが好ましく、3~15質量部であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)100質量部に対する無黄変ポリイソシアネート(B)の含有量が25質量超であると、三次元成形時の伸びに追随しにくくなり、割れが生ずることがある。一方、ポリウレタン(A)100質量部に対する無黄変ポリイソシアネート(B)の含有量が2質量部未満であると、硬化して形成される硬化層(表面層)の耐擦傷性及び耐薬品性がやや不十分になることがある。
【0038】
ポリウレタン(A)の重量平均分子量は、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。重量平均分子量が1,000以上のポリウレタン(A)を用いることで、三次元成形性がさらに向上するとともに、耐擦傷性により優れた表面を有する加飾成形品を製造することができる。ポリウレタン(A)の重量平均分子量が1,000未満であると、表皮層の表面粘着性が強くなることがあり、操作性がやや低下する傾向にある。一方、ポリウレタン(A)の重量平均分子量が150,000超であると、樹脂組成物の粘度が高くなりやすく、塗布しにくくなる傾向にある。耐擦傷性と三次元成形性をより好適に両立させる観点からは、ポリウレタン(A)の重量平均分子量は3,000~100,000であることが特に好ましい。
【0039】
本明細書における数平均分子量及び重量平均分子量は、特に断りがない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。分子量の測定条件は以下示す通りである。
(1)機器装置:商品名「HLC-8020」(東ソー社製)
(2)カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「G3000HXL」、「G4000GXL」(東ソー社製)
(3)溶媒:THF
(4)流速:1.0ml/min
(5)試料濃度:2g/L
(6)注入量:100μL
(7)温度:40℃
(8)検出器:型番「RI-8020」(東ソー社製)
(9)標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0040】
ポリウレタン(A)の二重結合当量は、160~3,000g/eq.であることが好ましく、180~2,500g/eq.であることがさらに好ましい。ポリウレタン(A)の二重結合当量が上記範囲内であると、耐溶剤性や耐久性により優れた硬化層を形成可能な表皮層を形成することができる。ポリウレタン(A)の二重結合当量が160g/eq.未満であると、硬化して形成される硬化層が脆くなる、又は、二重結合がすべて反応できなくなるので、残存した二重結合によって耐候性が低下しやすくなる場合がある。一方、ポリウレタン(A)の二重結合当量が3,000g/eq.を超えると、形成される硬化層の架橋密度が低くなるとともに、表面硬度が低くなることがある。このため、硬化層の耐溶剤性や耐久性が低下する場合がある。
【0041】
ポリウレタン(A)は、例えば、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有する両末端ポリオール(ポリカーボネートポリオール)(V)、鎖伸長剤(低分子ジオール)(W)、ジイソシアネート(X)、及び末端又は側鎖に1~2個のヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート(Y)を重合反応させることによって製造することができる。ポリウレタン(A)は、前述のウレタン樹脂(C)を製造する際の条件と同様の条件によって製造することができる。
【0042】
ポリカーボネートポリオール(V)としては、ウレタン合成の観点から、主としてポリカーボネートジオールを用いることが好ましい。多官能のポリカーボネートポリオールを用いると、重合反応中にゲル化等を引き起こす可能性がある。ポリウレタン(A)中のポリカーボネートポリオール(V)に由来する構成単位の含有量は、0.1~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがさらに好ましい。ポリカーボネートポリオール(V)に由来する構成単位の含有量が0.1質量%未満であると、低分子ジオール(W)、ジイソシアネート(X)、及び(メタ)アクリレート(Y)のそれぞれに由来する構成単位の含有量が相対的に増加する。これらの構成単位の含有量が多いと、形成される表皮層が脆くなる傾向にある。このため、表皮層を形成したガードフィルムを巻き取る際に、表皮層が割れやすくなることがある。また、硬化前の表皮層の80℃破断伸度が250%未満になる場合もあるため、加飾成形時に不具合が発生しやすくなる傾向にある。
【0043】
一方、ポリカーボネートポリオール(V)に由来する構成単位の含有量が70質量%超であると、(メタ)アクリレート(Y)に由来する構成単位の含有割合が相対的に減少する。このため、表皮層を硬化させて形成される硬化層の表面硬度や耐溶剤性等の性能が確保できなくなる傾向にある。
【0044】
なお、ポリカーボネートポリオール(V)に代えて、ポリエステルポリオールを用いると、表皮層を硬化させて形成される硬化層の耐加水分解性が低下する。また、ポリカーボネートポリオール(V)に代えて、ポリエーテルポリオールを用いると、表皮層を硬化させて形成される硬化層の耐熱性が低下する。
【0045】
ポリカーボネートポリオールの種類は特に限定されず、一般的に入手可能な市販品や合成を用いることができる。ポリカーボネートジオールとしては、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリデカメチレンカーボネートジオール、及びこれらのランダム共重合体やブロック共重合体等を挙げることができる。
【0046】
ポリカーボネートポリオール(V)の数平均分子量は特に限定されないが、通常500~4,000程度である。
【0047】
低分子ジオール(W)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の脂肪族グリコール類;1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチル-1,1-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式系グリコール類を挙げることができる。なお、水酸基とエチレン性不飽和基を含有するモノマーを低分子ジオール(W)として用いることができる。
【0048】
ジイソシアネート(X)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス-シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類を挙げることができる。これらの脂肪族ポリイソシアネート類や脂環式ポリイソシアネート類を用いることによって、紫外線や熱によって黄変しにくいポリウレタン(A)が得られるので、耐久性のより良好な表皮層を形成することができる。得られる樹脂組成物の流動性を低下させてタックを軽減させる観点からは、脂環式ポリイソシアネート類を少なくとも用いることが好ましい。なお、三官能以上の多官能イソシアネートを併用することも可能である。但し、多官能イソシアネートの使用量が多すぎると樹脂溶液がゲル化を起こすことがあるため、注意することが好ましい。
【0049】
(メタ)アクリレート(Y)としては、末端又は側鎖に1~2個のヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレートであれば使用することができる。これらの分子中の(メタ)アクリロイル基の数(官能基数)は、得られる加飾成形品の耐擦傷性をさらに向上させる観点から、1以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。これらの(メタ)アクリレート(Y)は、ポリウレタン(A)の鎖伸長剤や末端停止剤として使用することができる。(メタ)アクリレート(Y)としては、2-ヒドロキシルエチルアクリレート、2-ヒドロキシルエチルメタアクリレート、2-ヒドロキシルプロピルアクリレート、2-ヒドロキシルプロピルメタアクレート、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルアクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジメタクリレート、2-ヒドロキシルブチルアクリレート、2-ヒドロキシルブチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0050】
表皮層用樹脂組成物には、光重合開始剤をさらに含有させることが好ましい。表皮層用樹脂組成物に光重合開始剤を含有させることで、三次元成形後の表皮層をより速やかに紫外線硬化させることができる。表皮層用樹脂組成物に含有させる光重合開始剤の量は、樹脂組成物全体を基準として中、0.01~10質量%とすることが好ましく、0.1~5質量%とすることがさらに好ましい。なお、表皮層用樹脂組成物が電子線(EB)硬化タイプの組成物である場合には、樹脂組成物に光重合開始剤を含有させなくてもよい。
【0051】
光重合開始剤としては、従来公知のものを適宜選択して用いることができる。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等を挙げることができる。表皮層用樹脂組成物には、p-ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等の光増感剤をさらに含有させてもよい。
【0052】
無黄変ポリイソシアネート(B)としては、イソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、及びポリメリック体等の、複数のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物として従来公知のものを用いることができる。無黄変ポリイソシアネート(B)としては、多官能脂環族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネート等のブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。
【0053】
脂肪族系のイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の変性体がある。また、脂環族系のイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート等の変性体がある。なお、これらのイソシアネートを単独で用いてもよく、又は複数のイソシアネートを混合して無黄変ポリイソシアネートを構成してもよい。なかでも、分子中にイソシアネート基を2個以上有するものが好ましい。また、ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体や、低分子量のポリオールやポリアミンを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマー等も好ましい。無黄変ポリイソシアネート(B)として、以下に示す一般式(1)~(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【0055】
表皮層用樹脂組成物には、通常、溶剤が含有される。溶剤としては、樹脂組成物中の各成分を溶解させうるものであればよい。溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジメチルカーボネート等の低分子量カーボネート系溶剤等を挙げることができる。なかでも、ケトン系溶剤単独、ケトン系溶剤と他の溶剤とを併用した混合系溶剤、及びケトン系溶剤とエステル系溶剤とを併用した混合系溶剤が、溶解性及び乾燥性が良好であるために好ましい。
【0056】
表皮層用樹脂組成物には、硬化させて形成される硬化層に付与しようとする物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、着色材等を挙げることができる。耐候性改善剤としては、光硬化を阻害しない範囲で、HALS等のヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤等を用いることができる。
【0057】
(意匠層)
意匠層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂、並びに熱硬化性及び紫外線硬化性等の硬化性樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等を挙げることができる。硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂に、シリカ、有機ビーズ、顔料、染料等の着色剤や体質顔料等を用いて意匠を施すことで意匠層とすることができる。着色剤としては、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等を挙げることができる。また、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用いて蒸着、スパッタリング、又は箔転写等することによって設けた金属薄膜を意匠層としてもよい。
【0058】
意匠層の厚さは、目的等に応じて適宜設定することができる。樹脂や金属箔の用いた場合の意匠層の厚さは、通常、2~500μm、好ましくは5~300μmである。金属を蒸着、スパッタリングした場合の膜厚は通常、0.001~1μm、好ましくは0.005~0.5μmである。
【0059】
なお、高度なデザイン性を付与することを目的として、意匠層に付与された図柄と同様の図柄や他の図柄が付与された第2の意匠層を、表皮層と意匠層の間に設けることも好ましい。また、基材シートと意匠層の密着性を向上させるために、これらの間にプライマー層を設けてもよい。
【0060】
(基材シート)
基材シートの材質等は、三次元成形(真空成形)への適性を考慮して適宜選定される。一般的には、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(シート)が基材シートとして使用される。熱可塑性樹脂としては、PET、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びアロイ樹脂等を挙げることができる。
【0061】
基材シートの厚さは、目的等に応じて適宜設定することができる。基材シートの厚さは、通常、20~3000μm、好ましくは50~2000μmである。
【0062】
(ガードフィルム)
ガードフィルムの材質等は、三次元成形(真空成形)への適性を考慮して適宜選定される。一般的には、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム(シート)がガードフィルムとして使用される。熱可塑性樹脂としては、PET、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びアロイ樹脂等を挙げることができる。
【0063】
ガードフィルムの厚さは、目的等に応じて適宜設定することができる。ガードフィルムの厚さは、通常、3~500μm、好ましくは10~300μmである。
【0064】
(セパレートフィルム)
セパレートフィルムは、主として接着層を保護することを目的として設けられるフィルム(層)である。セパレートフィルムとしては、熱可塑性樹脂からなるフィルムが用いられる。セパレートフィルムの厚さや材質は特に限定されないが、一般的には厚さ50~100μm程度のPETフィルムが好適である。
【0065】
(加飾シートの製造方法(1))
以下、加飾シートを製造する方法の一例について説明する。まず、ガードフィルムの表面上に、通常の塗工方法により表皮層用樹脂組成物(以下、「表皮層用塗料」とも記す)を塗布して塗工層を形成する。ガードフィルムの表面上に表皮層用塗料を塗布する方法(印刷方法)としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、デップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、スプレーコート等の通常の印刷方法を挙げることができる。表皮層の乾燥温度は、通常60~100℃、好ましくは70~90℃である。また、表皮層用塗料を得して形成した塗工層の表面に、インクジェット法により絵付けすることもできる。絵付けには、例えばUV硬化型インクジェットインクを用いることができる。UV硬化型インクジェットインクは、通常、水や有機溶剤を含まないので特に乾燥を必要としない。
【0066】
ポリウレタン(A)と無黄変ポリイソシアネート(B)との架橋反応を完了させるために、必要に応じて熟成することが好ましい。熟成条件は、通常30~60℃で1~3日程度である。表皮層の熟成は、ガードフィルムに表皮層や接着層を形成する時点で行ってもよく、表皮層や接着層を形成した後に行ってもよい。この際、意匠層と表皮層との密着性を向上させるために、これらの間にプライマー層を設けてもよい。意匠層の意匠性を向上させるために、金属薄膜等を形成してもよく、積層して複層構造の意匠層としてもよい。金属薄膜は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用いて、真空蒸着、スパッタリング、箔転写等の方法で成膜することができる。
【0067】
次いで、形成された表皮層上又は意匠層上に通常の塗工方法により接着層用樹脂組成物(接着層用塗料)を塗布して塗工層を形成する。形成した塗工層を乾燥すれば、接着層を形成することができる。接着層用塗料を塗布する方法(塗工方法)としては、前述の表皮層形成用の樹脂組成物を塗布する方法と同様の方法を挙げることができる。接着層用塗料の乾燥温度は、通常60~100℃、好ましくは70~90℃である。また、予め転写シートに形成しておいた接着層を転写してもよい。形成された接着層上に、この接着層を保護するためのセパレートフィルムを貼付すれば、加飾シートを得ることができる。
【0068】
(加飾シートの製造方法(2))
次に、加飾シートを製造する方法の他の例について説明する。まず、基材シートの表面上に、通常の塗工方法により意匠層形成用の樹脂組成物等を塗布して塗工層を形成する。基材シートは、プライマー処理やコロナ放電処理を行って表面改質しておいてもよい。これらの処理は、必要に応じて裏面に行ってもよい。基材シートの表面上に意匠層形成用の樹脂組成物等を塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、デップコート、シルクスクリーンによるコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、スプレーコート等の通常の塗布方法を挙げることができる。意匠層の乾燥温度は、通常60~100℃、好ましくは70~90℃である。また、インクジェット法により意匠層を形成することもできる。特に、UV硬化型のインクジェットインクをインクジェット法により塗工することによって意匠層を形成することができる。インクジェットインクとしては、水や有機溶剤を含まないものを使用することが主流であり、このようなインクを用いた場合には特に乾燥を必要としない。
【0069】
また、予め転写シートに形成しておいた意匠層を基材シートに転写してもよい。この際、意匠層と基材シートとの密着性を向上させるために、これらの間にプライマー層を設けてもよい。意匠層の意匠性を向上させるために、金属薄膜等を形成してもよく、積層して複層構造の意匠層としてもよい。金属薄膜は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用いて、真空蒸着、スパッタリング、箔転写等の方法で成膜することができる。
【0070】
次いで、形成された意匠層の表面上に通常の塗工方法により表皮層用塗料を塗布して塗工層を形成する。形成した塗工層を乾燥すれば、表皮層を形成することができる。表皮層用塗料を塗布する方法(塗工方法)としては、前述の意匠層形成用の樹脂組成物等を塗布する方法と同様の方法を挙げることができる。表皮層用塗料の乾燥温度は、通常60~100℃、好ましくは70~90℃である。
【0071】
基材シートの裏面(意匠層及び表皮層が形成された面と反対側の面)上に接着層用塗料を塗布して塗工層を形成する。形成した塗工層を乾燥すれば、接着層を形成することができる。接着層用塗料を塗布する方法(塗工方法)としては、前述の意匠層形成用の樹脂組成物等を塗布する方法と同様の方法を挙げることができる。接着層用塗料の乾燥温度は、通常60~100℃、好ましくは70~90℃である。また、予め転写シートに形成しておいた接着層を基材シートに転写してもよい。形成された接着層上に、この接着層を保護するためのセパレートフィルムを貼付すれば、加飾シートを得ることができる。
【0072】
<加飾成形品>
上述の加飾シートを用いることで、加飾成形品を製造することができる。すなわち、本発明の加飾成形品は、被加飾部材と、被加飾部材の少なくとも一部の表面上に配置される加飾層とを備える。そして、この加飾層が、前述の加飾シートの表皮層に由来する硬化層と、被加飾部材の表面に当接して配置される、接着層に由来する接着硬化層とを含む積層構造を有する。図2は、本発明の加飾成形品の一実施形態を模式的に示す断面図である。図2に示す実施形態の加飾成形品100は、被加飾部材40と、被加飾部材40の少なくとも一部の表面上に配置される加飾層60とを備える。加飾層60は、硬化層23、意匠層8、及び接着硬化層25を含む積層構造を有する。硬化層23は、図1に示す加飾シート10の表皮層2を硬化させること形成された層である。意匠層8は、図1に示す加飾シート10の意匠層8に対応する層である。そして、接着硬化層25は、図1に示す加飾シート10の接着層4に由来する層であり、被加飾部材40の表面に当接して配置されている。
【0073】
図4は、本発明の加飾成形品の他の実施形態を模式的に示す断面図である。図4に示す実施形態の加飾成形品200は、被加飾部材50と、被加飾部材50の少なくとも一部の表面上に配置される加飾層70とを備える。加飾層70は、硬化層33、意匠層18、基材シート5、及び接着硬化層35を含む積層構造を有する。硬化層33は、図3に示す加飾シート30の表皮層12を硬化させること形成された層である。意匠層18は、図3に示す加飾シート30の意匠層18に対応する層である。基材シート5は、図3に示す加飾シート30の基材シート5に対応する層である。そして、接着硬化層35は、図3に示す加飾シート30の接着層14に由来する層であり、被加飾部材50の表面に当接して配置されている。
【0074】
加飾成形品は、様々な材料に対しても優れた密着性を示す前述の接着層を硬化させて形成された接着硬化層を有するので、加飾層と被加飾部材が強固に密着しているとともに、加飾層を構成する各層も相互に強く密着しており、層間密着性に優れている。また、加飾成形品は、前述の表皮層を硬化させて形成された硬化層を有するので、耐擦傷性に優れている。
【0075】
本発明の加飾成形品は、前述の加飾シートを使用し、一般的な三次元表面加飾成形方法(真空成形方法)によって製造することができる。被加飾部材としては、ABSやPC等の一般的な樹脂製の部材の他、各種鋼板等の金属製の被加飾部材を用いることができる。
【実施例
【0076】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0077】
<ポリウレタン(A)の合成>
(合成例1:ポリウレタン1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「プラクセルCD220」、ダイセル化学工業社製、水酸基価=56.1mgKOH/g)400.0g、1,4-ブタンジオール80.0g、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合体(水酸基価102.9mgKOH/g)160.0gを仕込んだ。次いで、メチルエチルケトン(MEK)226gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)103.8g、及び4,4’-メチレンビス-シクロヘキシルジイソシアネート161.9gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ポリウレタン1を含有する樹脂溶液1を得た。得られた樹脂溶液1の粘度は500dPa・s/20℃、固形分は45%であった。ポリウレタン1の二重結合当量は588g/eq.であり、GPCにより測定した重量平均分子量は46,000であり、ポリカーボネートポリオールに由来する構成単位の含有量は約44%であった。
【0078】
<ウレタン樹脂(C)の合成>
(合成例2:ウレタン樹脂2)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUH-50」、宇部興産社製、水酸基価=224.4mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK214.4gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でイソホロンジイソシアネート(IPDI)180.2gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂2を含有する接着層用樹脂組成物2を得た。得られた接着層用樹脂組成物2の粘度は300dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂2の重量平均分子量は34,000であり、ウレタン樹脂2中の構成単位(D)の含有量は60%であった。
【0079】
(合成例3:ウレタン樹脂3)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUH-100」、宇部興産社製、水酸基価=112.2mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK186.6gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI114.2gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂3を含有する接着層用樹脂組成物3を得た。得られた接着層用樹脂組成物3の粘度は40dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂3の重量平均分子量は41,000であり、ウレタン樹脂3中の構成単位(D)の含有量は69%であった。
【0080】
(合成例4:ウレタン樹脂4)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリシクロヘキサンジメタノール/ヘキサンジオール共重合カーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUM-90(3/1)」、宇部興産社製、水酸基価=112.2mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK186.6gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI114.2gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂4を含有する接着層用樹脂組成物4を得た。得られた接着層用樹脂組成物4の粘度は100dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂4の重量平均分子量は39,000であり、ウレタン樹脂4中の構成単位(D)の含有量は69%であった。
【0081】
(合成例5:ウレタン樹脂5)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリシクロヘキサンジメタノール/ヘキサンジオール共重合カーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUM-90(3/1)」、宇部興産社製、水酸基価=112.2mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK181.7gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI103.9gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂5を含有する接着層用樹脂組成物5を得た。得られた接着層用樹脂組成物5の粘度は5dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂5の重量平均分子量は12,000であり、ウレタン樹脂5中の構成単位(D)の含有量は71%であった。
【0082】
(合成例6:ウレタン樹脂6)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリシクロヘキサンジメタノール/ヘキサンジオール共重合カーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUM-90(3/1)」、宇部興産社製、水酸基価=112.2mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール、及びMEK194.9gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)134.9gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂6を含有する接着層用樹脂組成物6を得た。得られた接着層用樹脂組成物6の粘度は470dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂6の重量平均分子量は42,000であり、ウレタン樹脂6中の構成単位(D)の含有量は66%であった。
【0083】
(合成例7:ウレタン樹脂7)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリペンタンジオール/ヘキサンジオール共重合カーボネートジオール(商品名「デュラノールT5650E」、旭化成社製、水酸基価=224.4mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK214.4gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI180.2gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂7を含有する接着層用樹脂組成物7を得た。得られた接着層用樹脂組成物7の粘度は70dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂7の重量平均分子量は31,000であり、ウレタン樹脂7中の構成単位(D)の含有量は60%であった。
【0084】
(比較合成例1:ウレタン樹脂8)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリカプロラクトンジオール(商品名「プラクセル205」、ダイセル化学工業社製、水酸基価=224.4mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK214.4gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI180.2gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂8を含有する接着層用樹脂組成物8を得た。得られた接着層用樹脂組成物8の粘度は130dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂8の重量平均分子量は36,000であり、ウレタン樹脂8中の構成単位(D)の含有量は0%であった。
【0085】
(比較合成例2:ウレタン樹脂9)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUH-200」、宇部興産社製、水酸基価=56.1mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK171.9gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI81.3gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂9を含有する接着層用樹脂組成物9を得た。得られた接着層用樹脂組成物9の粘度は560dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂9の重量平均分子量は51,000であり、ウレタン樹脂9中の構成単位(D)の含有量は74.8%であった。
【0086】
(比較合成例3:ウレタン樹脂10)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリペンタンジオール/ヘキサンジオール共重合カーボネートジオール(商品名「デュラノールT5652」、旭化成社製、水酸基価=56.1mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール20.0g、及びMEK171.9gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI81.3gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂10を含有する接着層用樹脂組成物10を得た。得られた接着層用樹脂組成物10の粘度は210dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂10の重量平均分子量は49,000であり、ウレタン樹脂10中の構成単位(D)の含有量は74.8%であった。
【0087】
(比較合成例4:ウレタン樹脂11)
撹拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「ETERNACOLLUH-200」、宇部興産社製、水酸基価=56.1mgKOH/g)300.0g、1,3-ブタンジオール72.0g、及びMEK249.8gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI210.9gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂11を含有する接着層用樹脂組成物11を得た。得られた接着層用樹脂組成物11の粘度は440dPa・s/20℃、固形分は35%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂11の重量平均分子量は46,000であり、ウレタン樹脂11中の構成単位(D)の含有量は51.5%であった。
【0088】
<アクリル重合体の合成>
(比較合成例5:アクリル重合体1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、MEK100g及びメタクリル酸メチル50.0gを仕込み、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。一方、アクリル酸ブチル50.0g及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2gの混合物を用意した。用意した混合物の半分を反応容器内に添加し、残りの半分を滴下ロートで1時間かけて反応容器内に滴下した。滴下後、そのままの状態で6時間反応させて、アクリル重合体1を含有する接着層用樹脂組成物12を得た。得られた接着層用樹脂組成物12の粘度は80dPa・s/20℃、固形分は55%であった。GPCにより測定したアクリル重合体1の重量平均分子量は35,000であった。
【0089】
<表皮層用塗料の調製>
(表皮層用塗料1)
樹脂溶液1 100gに対して、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)2.25gを配合した。さらに、無黄変ポリイソシアネート(商品名「デュラネートTPA-100」、旭化成社製、固形分100%、イソシアネート23.1%含有)2.25g、及びMEKとシクロヘキサノンを質量比1:1の比率で配合して、固形分30%の表皮層用塗料1を得た。
【0090】
<意匠性を有する接着層用組成物の調製>
(接着層用樹脂組成物13)
接着層用樹脂組成物2 100gに黒顔料分散着色剤(商品名「セイカセブンSS01-323ブラック」、大日精化工業社製、固形分25%、溶剤:MEK、顔料:カーボンブラック)20.0g、MEKとシクロヘキサノンを質量比1:1の比率で配合して、固形分20%の意匠性を有する接着層用樹脂組成物13を得た。
【0091】
<意匠層用組成物の調製>
(意匠層用組成物1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「プラクセルCD220」、ダイセル化学工業社製、末端官能基定量による数平均分子量:2,000)400.0g、1,4-ブタンジオール40.0g、及びMEK146gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃でIPDI143.0gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm-1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ウレタン樹脂を含有する意匠層用樹脂溶液1を得た。得られた樹脂溶液の粘度は420dPa・s/20℃、固形分は40%であった。GPCにより測定したウレタン樹脂の重量平均分子量は44,000であった。得られた意匠層用樹脂溶液1 100.0gに対し、ノンリーフィングタイプのアルミペースト(商品名「MH-6601」、旭化成工業製、固形分65%)12.0g、MEKとシクロヘキサノンを質量比1:1の比率で配合して、固形分30%の意匠層用組成物1を得た。
【0092】
(意匠層用組成物2)
蒸着用のアルミニウムを意匠層用組成物2とした。
【0093】
(意匠層用組成物3)
UV反応型のモノマー、顔料、及び重合開始剤を含有するインクジェットプリンター用のUVインクを意匠層用組成物3とした。
【0094】
(意匠層用組成物4)
意匠層用樹脂溶液1 100gに、黒顔料分散着色剤(商品名「セイカセブンSS01-323ブラック」、大日精化工業社製、固形分25%、溶剤:MEK、顔料:カーボンブラック)20.0g、MEKとシクロヘキサノンを質量比1:1の比率で配合して、固形分30%の意匠層用組成物4を得た。
【0095】
<加飾シートの製造(1)>
(実施例1)
ガードフィルム(商品名「ノバクリア」、三菱化学社製、厚さ200μmの非晶質PETフィルム)の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ15μmの表皮層を形成した。形成した表皮層の表面に接着層用樹脂組成物2をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着した後、45℃で1日熟成させて加飾シート(実施例1)を得た。
【0096】
(実施例2)
ガードフィルム(商品名「ノバクリア」、三菱化学社製、厚さ200μmの非晶質PETフィルム)の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ15μmの表皮層を形成した。UV反応性モノマー、顔料、及び開始剤を含有するUVインクを、UVインクジェットプリンターを使用して形成した表皮層の表面に塗布して絵柄を印刷し、意匠層を形成した。形成した意匠層の表面に接着層用樹脂組成物2をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着した後、45℃で1日熟成させて加飾シート(実施例2)を得た。
【0097】
(実施例3)
ガードフィルム(商品名「ノバクリア」、三菱化学社製、厚さ200μmの非晶質PETフィルム)の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ15μmの表皮層を形成した。形成したクリヤー層の表面に、蒸着法によってアルミニウムの薄膜からなる意匠層を形成した。形成した意匠層の表面に接着層用樹脂組成物2をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着した後、45℃で1日熟成させて加飾シート(実施例3)を得た。
【0098】
(実施例4~12及び比較例1~5)
表1-1~1-3に示す種類の表皮層用塗料を用いて表皮層を形成したこと、及び表1-1~1-3に示す種類の接着層用樹脂組成物を用いて接着層を形成したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、加飾シート(実施例4~12及び比較例1~5)を得た。
【0099】
<加飾シートの製造(2)>
(実施例13)
基材シート(商品名「タフエースR EAR802」、住友ベークライト社製、厚さ1mmのアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)シート)の表面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面に意匠層用組成物4をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗布した後、90℃で2分乾燥して厚さ15μmの表皮層を形成し、45℃で1日熟成させた。基材シートの裏面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、80℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着して加飾シート(実施例13)を得た。
【0100】
(実施例14~21及び比較例6~10)
表2-1~2-3に示す種類の接着層用樹脂組成物を用いて接着層を形成したこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして加飾シート(実施例14~21及び比較例6~10)を得た。
【0101】
(実施例22)
基材シート(商品名「タフエースR EAR802」、住友ベークライト社製、厚さ1mmのアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)シート)の表面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面に意匠層用組成物4をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗布した後、90℃で2分乾燥して厚さ15μmの表皮層を形成した。45℃で1日熟成させた後、100℃に加熱したしぼ入りのエンボスロールを使用して加工(凹凸加工)を行い、表皮層の表面に凹凸模様を形成した。基材シートの裏面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、80℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着して加飾シート(実施例22)を得た。
【0102】
(実施例23)
基材シート(商品名「タフエースR EAR802」、住友ベークライト社製、厚さ1mmのアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)シート)の表面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面に意匠層用組成物1をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗布した後、90℃で2分乾燥して厚さ15μmの表皮層を形成し、45℃で1日熟成させた。基材シートの裏面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、80℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着して加飾シート(実施例23)を得た。
【0103】
(実施例24)
基材シート(商品名「タフエースR EAR802」、住友ベークライト社製、厚さ1mmのアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)シート)の表面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面に蒸着用のアルミニウム(意匠層用組成物2)を蒸着して、厚さ0.03μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗布した後、90℃で2分乾燥して厚さ15μmの表皮層を形成し、45℃で1日熟成させた。基材シートの裏面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、80℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着して加飾シート(実施例24)を得た。
【0104】
(実施例25)
基材シート(商品名「タフエースR EAR802」、住友ベークライト社製、厚さ1mmのアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)シート)の表面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面にインクジェットプリンターを使用してUVインク(意匠層用組成物3)を塗布し、厚さ5μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗布した後、90℃で2分乾燥して厚さ15μmの表皮層を形成し、45℃で1日熟成させた。基材シートの裏面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、80℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着して加飾シート(実施例25)を得た。
【0105】
(実施例26)
厚さ0.5mmのポリプロピレン(PP)シート(表面エネルギー:30mN/m)を用意した。このPPシートの表裏両面をコロナ放電処理し、表面エネルギー37mN/mの基材シートを得た。得られた基材シートの表面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面に意匠層用組成物4をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗布した後、90℃で2分乾燥して厚さ15μmの表皮層を形成し、45℃で1日熟成させた。基材シートの裏面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、80℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着して加飾シート(実施例26)を得た。
【0106】
(実施例27)
基材シート(厚さ0.5mmのポリカーボネート(PC)シート)の表面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ5μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層の表面に意匠層用組成物4をバーコーターで塗工した後、90℃で2分乾燥して、厚さ20μmの意匠層を形成した。形成した意匠層の表面にバーコーターで表皮層用塗料1を塗布した後、90℃で2分乾燥して厚さ15μmの表皮層を形成し、45℃で1日熟成させた。基材シートの裏面にバーコーターで接着層用樹脂組成物2を塗工した後、80℃で2分乾燥して、厚さ20μmの接着層を形成した。形成した接着層の表面にセパレートフィルム(厚さ80μmのPETフィルム)を貼着して加飾シート(実施例27)を得た。
【0107】
<加飾成形品の製造>
真空成形機(商品名「NGF-0404-S型」、布施真空社製)を使用し、100℃に加温した表1-1~1-3及び2-1~2-3に示す種類の被加飾部材の表面に、100℃に加温した加飾シートの接着層を真空成形により貼着した。紫外線照射機(商品名「ユニキュアUVC-02512S1AA01」、ウシオ電機社製)を使用し、被加飾部材の表面に貼着した加飾シートに積算光量2,000mJ/cmとなるようにUV照射し、表皮層を硬化させて硬化層を形成して加飾成形品を得た。
【0108】
<評価方法>
(1)接着強度
100℃に加温した表1-1~1-3に示す種類の被加飾部材の表面に、100℃に加温した加飾シートの接着層をゴムローラーにて貼着した後、加飾シートに幅10mmの切れ込みを入れた。引張試験装置(型名「オートグラフAGS-100A」、島津製作所社製)を使用し、25℃、引張速度100mm/minの条件で加飾シートを180°剥離して接着層の接着強度を測定し、以下に示す評価基準にしたがって接着強度を評価した。結果を表1-1~1-3及び2-1~2-3に示す。
◎:加飾シートが材破した。
○:加飾シートは材破しなかったが、接着強度が5N以上であった。
△:接着強度が5N以下であった。
×:接着することができなかった。
【0109】
(2)耐熱クリープ
100℃に加温した表1-1~1-3に示す種類の被加飾部材の表面に、100℃に加温した加飾シートの接着層をゴムローラーにて貼着した後、加飾シートに幅5mm、長さ12mmの切れ込みを入れた。加飾シートの、被加飾部材の表面と張り合わせていない部分に100gのおもりをつけ、100℃の雰囲気内で25分間保持した。保持後の加飾フィルムの状態を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐熱クリープを評価した。結果を表1-1~1-3及び2-1~2-3に示す。
◎:切れ込みが全くずれていなかった。
○:切れ込みのずれが5mm未満であった。
△:切れ込みのずれが5mm以上であったが、おもりは落ちなかった。
×:切れ込みのずれが大きく、おもりが落ちた。
【0110】
(3)三次元成形性(真空成形性)
製造した加飾成形品の外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって三次元成形性(真空成形性)を評価した。結果を表1-1~1-3及び2-1~2-3に示す。
◎:表皮層、意匠層、及び接着層に塗膜割れや白化が全く認められず、型の形状に良好に追従した。
○:三次元形状部又は最大延伸部の一部に微細な塗膜割れ又は白化が認められたが、実用上問題ないレベルであった。
△:三次元形状部又は最大延伸部の一部に軽微な塗膜割れ又は白化が認められた。
×:表皮層及び意匠層が型の形状に追従できず、接着できなかった。
【0111】
(4)耐光性
JASO M346-1993に準拠し、以下に示す条件にしたがってキセノンウェザオメーターを使用して加飾成形品の促進試験を実施した。促進試験後の加飾成形品の外観を観察し、以下に示す評価基準に従って耐光性を評価した。結果を表1-1~1-3及び2-1~2-3に示す。
・放射照度:48~162W/m
・波長:300~400nm
・ブラックパネル温度:89±3℃
・照射時間:8週間
・熱量:2,000kJ
◎:接着層に黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じなかった。
○:三次元形状部又は最大延伸部の一部に微細な黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じたが、実用上問題ないレベルであった。
×:接着層に黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じた。
【0112】
(5)耐熱性
製造した加飾成形品をオーブンに入れ、120℃で400時間保持する耐熱性試験を行った。試験後の接着層の外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐熱性を評価した。結果を表1-1~1-3及び2-1~2-3に示す。
◎:接着層に黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じなかった。
○:三次元形状部又は最大延伸部の一部に微細な黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じたが、実用上問題ないレベルであった。
×:接着層に黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じた。
【0113】
(6)耐加水分解性
製造した加飾成形品を、温度70℃、相対湿度95%の条件下で8週間保持するジャングル試験を行った。試験後の接着層の外観を観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐加水分解性を評価した。結果を表1-1~1-3及び2-1~2-3に示す。
◎:接着層に黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じなかった。
○:三次元形状部又は最大延伸部の一部に微細な黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じたが、実用上問題ないレベルであった。
×:接着層に黄変、白化、ワレ、ヒビ、シワ等が生じた。
【0114】
(7)80℃破断伸度
表皮層用塗料1を、乾燥膜厚が約30μmとなるように離型紙上に塗工した後、45℃で1日熟成させて塗膜を形成した。熟成後、赤外分光光度計を使用して2,270cm-1のイソシアネート基(無黄変ポリイソシアネート)に由来する吸収が消失していることを確認した上で、塗膜を幅15mm×長さ60mmのサイズにカットして試験片を作製した。作製した試験片について、オートグラフ(商品名「AGS-J 500N」、島津製作所社製)、及び恒温試験装置(商品名「TCR1-200」、島津製作所社製)を使用し、温度80℃、チャック間距離20mm、引張り速度200mm/分の条件で80℃破断伸度を測定した。その結果、80℃破断伸度は300%であった。
【0115】
(8)鉛筆硬度
JIS K 5600に準拠し、作製した加飾成形品の表面(紫外線硬化済みの硬化層)の鉛筆硬度を測定した。その結果、鉛筆硬度は「2B」であった。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の加飾シートは、例えば、自動車等の車両の内装材及び外装材;テレビ、パソコン、携帯電話等の家電製品の筐体;壁、床、天井等の建築物の内装材;容器等の加飾成形品を三次元表面加飾成形方法によって製造するための材料として有用である。
【符号の説明】
【0123】
2,12:表皮層
4,14:接着層
5:基材シート
6:ガードフィルム
7,17:セパレートフィルム
8,18:意匠層
10,30:加飾シート
23,33:硬化層
25,35:接着硬化層
40,50:被加飾部材
60,70:加飾層
100,200:加飾成形品

図1
図2
図3
図4