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特許7291677水性ガス生成システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】水性ガス生成システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/64 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
C10J3/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020142145
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037807
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】520323931
【氏名又は名称】佐藤 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀雄
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138157(WO,A1)
【文献】特開2016-121257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
C10B 53/00
B09B 3/00
C08J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを加工処理する原料供給装置と、
前記原料供給装置から供給された加工処理済みのバイオマスを加熱して炭化する炭化炉と、
水蒸気を熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置と、
前記過熱蒸気発生装置から供給される前記過熱蒸気と前記炭化炉で炭化して得られた炭化物とを、前記炭化炉で発生した燃焼排ガスによって加熱して熱分解ガスを発生させる熱分解炉と、
前記熱分解ガスを洗浄して水性ガスを回収する水性ガス回収装置とを備え、
前記熱分解炉は、長尺状の円筒管によって形成されるセンターパイプとその周囲を覆うジャケット部とを有し、
前記センターパイプの下端部から前記炭化物の終末速度以上となる上昇流が形成されるように供給される前記過熱蒸気とその上方から供給される前記炭化物とは、前記センターパイプの内部を上昇するとともに、前記センターパイプと前記ジャケット部との間に供給された前記燃焼排ガスによって加熱されて、前記センターパイプの上端部から前記熱分解ガスが排出されるものであって、
前記熱分解ガスから分離された未反応炭は、前記センターパイプに設けられたリターン供給口から供給されて前記過熱蒸気によって前記センターパイプの内部を上昇することを特徴とする水性ガス生成システム。
【請求項2】
前記センターパイプは、ステンレス鋼によって長さが6mから9mの円筒管に形成されることを特徴とする請求項1に記載の水性ガス生成システム。
【請求項3】
前記センターパイプにおける前記過熱蒸気の上昇速度を、10m/sから15m/sに設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の水性ガス生成システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性ガス生成システムと、
前記水性ガス生成システムによって生成された水性ガスを用いて発電を行う発電装置とを備えたことを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性ガス生成システムと、
前記水性ガス生成システムによって生成された水性ガスを精製して水素を供給する水素供給装置とを備えたことを特徴とするバイオマス水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギー源の一つである廃棄材などのバイオマス(有機廃棄物)を利用した水性ガス生成システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているように、バイオマスを熱分解してガス化し、それによって得られた水性ガスを用いて、ガスエンジン等で効率よく発電するバイオマス発電システムが知られている。
【0003】
リグニンを多く含む木質系材料(バイオマス)の熱分解ガス化は、新規なエネルギー資源の供給源として大きな可能性を有しており、近年、有効に利用しようという試みが行われている。木質系材料を熱分解ガス化するには、原料となる木質バイオマスを温度600℃から900℃で低酸素状態において、ガス(CO、H、CH、CO、H2O)、炭化物、炭化水素に分解し、その熱分解生成物を酸素又は空気の制限下に供給して燃焼させるとともに、炭化物を高温加熱してガス化させることで水性ガスを生成する。
【0004】
また、特許文献3に開示されているように、水素ガスを燃料とする燃料電池自動車や家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの普及が始まっており、再生可能エネルギーとなる水素ガスの需要が高まってきている。この特許文献3には、バイオマスによって生成された水素ガスを燃料電池自動車に供給するための水素ステーションシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-165019号公報
【文献】特許第6170579号公報
【文献】特開2017-132668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バイオマスの熱分解及び水蒸気改質によって生成されるガス中の水素の割合は低く、効率よく水素を製造することが難しいという問題があるため、バイオマスから水素含有量が多い水性ガスを製造するための開発が行われているが、組成比が均一な熱分解ガスが得られる熱分解ガス化技術の開発は、効率性の面で充分なものとは言えないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、効率よく組成比が均一な熱分解ガスを得ることが可能な水性ガス生成システム、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の水性ガス生成システムは、バイオマスを加工処理する原料供給装置と、前記原料供給装置から供給された加工処理済みのバイオマスを加熱して炭化する炭化炉と、水蒸気を熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置と、前記過熱蒸気発生装置から供給される前記過熱蒸気と前記炭化炉で炭化して得られた炭化物とを、前記炭化炉で発生した燃焼排ガスによって加熱して熱分解ガスを発生させる熱分解炉と、前記熱分解ガスを洗浄して水性ガスを回収する水性ガス回収装置とを備え、前記熱分解炉は、長尺状のセンターパイプとその周囲を覆うジャケット部とを有し、前記センターパイプの下端部から供給される前記過熱蒸気とその上方から供給される前記炭化物とは、前記センターパイプの内部を上昇するとともに、前記センターパイプと前記ジャケット部との間に供給された前記燃焼排ガスによって加熱されて、前記センターパイプの上端部から前記熱分解ガスが排出されることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記センターパイプは、ステンレス鋼によって長さが6mから9mの円筒管に形成される構成とすることができる。また、前記センターパイプにおける前記過熱蒸気の上昇速度を、10m/sから15m/sに設定するのが好ましい。
【0010】
また、バイオマス発電システムの発明は、上記いずれかに記載の水性ガス生成システムと、前記水性ガス生成システムによって生成された水性ガスを用いて発電を行う発電装置とを備えたことを特徴とする。
【0011】
さらに、バイオマス水素供給システムの発明は、上記いずれかに記載の水性ガス生成システムと、前記水性ガス生成システムによって生成された水性ガスを精製して水素を供給する水素供給装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の水性ガス生成システムは、熱分解ガスを発生させる熱分解炉が長尺状のセンターパイプとその周囲を覆うジャケット部とを有している。そして、センターパイプの下端部から供給される過熱蒸気とその上方から供給される炭化物とがセンターパイプ内を上昇している間に熱分解反応して、センターパイプの上端部から熱分解ガスが排出される構成となっている。
【0013】
このため、広い反応面積で組成比が均一な熱分解ガスを効率よく得ることができる。特に、センターパイプを、ステンレス鋼によって長さが6mから9mの円筒管に形成することで、1000℃以上の高温加熱が可能となり、炭化物と過熱蒸気とを充分に反応させることができる。
【0014】
また、センターパイプにおける過熱蒸気の上昇速度を、炭化物の終末速度以上の10m/sから15m/sに設定することで、炭化物の落下を抑えて効率よくセンターパイプの上端部から熱分解ガスを排出させることができる。
【0015】
また、バイオマス発電システムの発明は、組成比が均一な熱分解ガスを効率よく発生させる水性ガス生成システムによって生成された水性ガスを用いて発電を行うので、ガス中の可燃ガス(CO、H)の含有割合によって発熱量が決まる発電機のエンジンを、安定して回転させることができる。
【0016】
さらに、バイオマス水素供給システムの発明は、組成比が均一な熱分解ガスを効率よく発生させる水性ガス生成システムによって生成された水性ガスを精製して水素を供給するので、バイオマスを使って水素を製造しながら燃料電池自動車に直接、水素を充填することができるオンサイト型の水素ステーションにも、製造場所から別の場所に水素を輸送するオフサイト型の水素ステーションにも、簡単に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態の水性ガス生成システムが組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明するブロック図である。
図2】本実施の形態の水性ガス生成システムが組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明する概略図である。
図3】熱分解炉を拡大して示した説明図である。
図4】水素供給設備を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は、本実施の形態の水性ガス生成システム1が組み込まれたバイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの構成を説明するブロック図及び概略図である。
【0019】
本実施の形態の水性ガス生成システム1は、廃棄材や木屑、廃プラスチックなどの有機廃棄物であるバイオマスから炭化炉にて炭化物を回収し、熱分解ガス化することで水性ガスを生成させる装置である。そして、水性ガス生成システム1によって生成された水性ガスは、発電装置であるガス発電機7の燃料となって発電に利用されたり、水素供給装置である水素供給設備8に送られて精製されて水素になったりして、燃料電池自動車や家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどで使用される。
【0020】
まず、本実施の形態の水性ガス生成システム1について説明する。水性ガス生成システム1は、バイオマスを加工処理して供給する原料供給装置2と、加工処理済みのバイオマスを不完全燃焼して炭化する炭化炉3と、水蒸気を熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置4と、熱分解ガスを発生させる熱分解炉5と、熱分解ガスを洗浄して水性ガスを回収する水性ガス回収装置6とによって主に構成される。
【0021】
原料供給装置2には、原料供給ライン21から有機廃棄物(バイオマス)や一部加工処理済みのバイオマスが投入される。有機廃棄物とは、例えば、食品廃棄物、建設廃材、シュレッダーダスト、畜産廃棄物、間伐材や剪定枝等の樹木製の廃材、廃プラスチック、汚泥、家庭から排出される一般廃棄物である。水性ガスを生成する原料には、これらのような種々の有機廃棄物を用いることができるが、樹木製の廃材(木質バイオマス)を用いるのが特に好ましい。
【0022】
原料供給ライン21及び原料供給装置2では、投入されたバイオマスが破砕機(図示省略)で破砕されて、磁選機にて金属、非鉄を分離した後、乾燥機で燃焼ガスにより乾燥された後に、炭化炉3に向けて送られる。詳細には、乾燥機には、バイオマスを貯蔵するホッパ(図示省略)から破砕されたバイオマスが供給される。
【0023】
ホッパから乾燥機に供給されるバイオマスは、例えば、5mm以上60mm以下の長さに破砕された木質チップである。木質チップは、例えば、55%程度の重量比で水分を含有するものが用いられ、乾燥機で燃焼排ガスにて加熱して乾燥させることにより、含有水分量を15%程度の重量比まで低下させる。乾燥機へ供給される燃焼ガスの温度は、250℃から350℃程度に調整されている。また、乾燥機から発生する排ガスは、排ガス処理設備24にて無害化して大気に放出させる。
【0024】
原料供給装置2のロードセルが付いた計量槽から排出された加工処理済みの乾燥した木質チップは、コンベア22によって炭化炉3に向けて送られる。水性ガス生成システム1の処理経路の各所には、量水器(M:メータ)が取り付けられていて、通過するバイオマスや気体などの流量が計測される。炭化炉3には、炭化炉供給用のコンベア23から木質チップが送り込まれる。
【0025】
炭化炉3では、バイオマス(木質チップ)を温度900℃から1100℃で低酸素状態において、炭化物と炭化水素ガスとに分離する。ここで、炭化水素ガスは、燃焼室で二次燃焼して900℃から1200℃の燃焼排ガスを生成し、後述するように熱分解炉5に供給される。
【0026】
炭化炉3においては、1次空気ブロワ361と2次空気ブロワ362という2箇所の空気供給制御部から供給される空気の供給量だけで温度制御がされる。1次空気ブロワ361は、1次燃焼領域に調整した風量の空気を供給するための送風部である。1次燃焼領域では、1次空気ブロワ361から供給された空気によって部分燃焼が起き、炭化物を多く含む固形分と可燃性ガスを含む燃焼ガスとが生成される。
【0027】
炭化物を多く含む固形分は、炭化炉3の下端から排出されて、コンベア34を経由して炭化率測定装置31とクリンカホッパ32に送られる。ここで、クリンカホッパ32に送られるクリンカとは、1次燃焼領域での有機廃棄物の燃焼により生成された燃焼灰が溶融して塊となったものである。
【0028】
一方、可燃性ガスを含む燃焼ガスは、2次燃焼領域へ導かれる。2次燃焼領域では、2次空気ブロワ362から供給される調整した風量の空気によって燃焼ガスに含まれる可燃性ガスを燃焼させる。このようにして燃焼させた燃焼ガスは、炭化炉3の上端部から排出されて、熱分解反応の熱源として利用するために熱分解炉5の上部の燃焼ガスの導入口53に送られる。
【0029】
水性ガス生成システム1では、熱分解反応の際に炭化物と接触混合させる過熱蒸気が過熱蒸気発生装置4によって生成される。過熱蒸気は、飽和蒸気の飽和温度を超える温度に加熱した蒸気である。ガス化剤として熱分解炉5に供給する過熱蒸気の温度は、700℃から850℃程度に調整される。
【0030】
過熱蒸気発生装置4は、第1スチーム過熱器41と、第2スチーム過熱器42とによって主に構成される。第1スチーム過熱器41及び第2スチーム過熱器42では、飽和蒸気を加熱することにより飽和蒸気から過熱蒸気が生成される。
【0031】
第1スチーム過熱器41には、プロセスボイラ43が生成した飽和蒸気が供給される。また、第1スチーム過熱器41には、熱分解炉5から排出される水性ガスが供給される。第1スチーム過熱器41に供給される水性ガスの温度は、800℃から950℃程度となる。
【0032】
第1スチーム過熱器41から第2スチーム過熱器42を経て排出された過熱蒸気は、熱分解炉5へガス化剤として供給される。また、第2スチーム過熱器42で過熱蒸気を生成する熱源として用いられた燃焼ガスは、プロセスボイラ43へ供給される。
【0033】
プロセスボイラ43では、0.8MPaGの飽和蒸気を回収し、スチームタービン発電機(図示省略)へ供給して発電が行われる。スチームタービン発電機で使用した蒸気を、復水器(図示省略)にて軟水タンクに戻し、ポンプによってプロセスボイラ43へ供給するというスチーム循環槽44を配置することにより、外部へ排出する排水をなるべく少なくして水の使用効率を高めることができる。
【0034】
さらに、プロセスボイラ43で回収された燃焼排ガスは、図2に示すように、原料供給ライン21(原料供給装置2)の乾燥機211に送られて、木質チップなどのバイオマスの乾燥に利用される。
【0035】
一定以上の粒径のクリンカが除去された炭化物は、炭化率測定装置31に供給される。炭化率測定装置31で計測されてコンベア35で運ばれた炭化物は、受入ホッパ33に投入される。その後、窒素置換器(N)から常時供給される窒素ガスによって、空気に含まれる酸素を不活性な窒素ガスに置換してから熱分解炉5に供給する。
【0036】
熱分解炉5には、このようにして炭化炉3から直接、送り込まれる炭化物と、後述するリサイクルホッパ13から送られるリターンの炭化物とが供給される。また、上述したように過熱蒸気発生装置4からの過熱蒸気も供給される。
【0037】
本実施の形態の熱分解炉5は、図3に示すように、長尺状のセンターパイプ51と、その周囲を覆うジャケット部52とを備えている。センターパイプ51は、長さが6mから9mの円筒管によって形成される。センターパイプ51の長さは、8m程度にするのが好ましい。
【0038】
センターパイプ51は、1000℃以上の高温に曝されることになるため、SUS310などの耐熱性の高いステンレス鋼などによって製作するのが好ましい。ジャケット部52は、センターパイプ51を中心にして、センターパイプ51の外周面と間隔が開くようにして囲繞させる外筒である。
【0039】
ジャケット部52の内周面とセンターパイプ51の外周面との間の隙間には、1000℃から1200℃の高温の燃焼排ガスが通過するため、ジャケット部52には、350mmから400mm程度の厚さの耐熱材を貼り付ける。
【0040】
ジャケット部52は、センターパイプ51より短く形成される。そして、ジャケット部52の天井部521から上方に向けて突出されるセンターパイプ51の部分が上端部511となり、ジャケット部52の床部522から下方に向けて突出されるセンターパイプ51の部分が下端部512となる。
【0041】
また、ジャケット部52の上端付近には、炭化炉3で発生した燃焼排ガスである高温排ガスを内部に取り込むための導入口53が設けられる。導入口53からセンターパイプ51との隙間に流入した高温排ガスは、ジャケット部52の下端付近の排出口54から排出される。排出された燃焼排ガスは、第2スチーム過熱器42に供給される。
【0042】
8m程度の長さに製作されたセンターパイプ51は、高温排ガスの通過によって160mmから190mm程度、伸びることになるので、下端部512を固定し、上端部511をグランド構造にする。また、センターパイプ51の下端部512の下方には、クリンカなどを排出させるためのホッパ55を配置しておく。
【0043】
熱分解炉5は、流動式の熱分解ガス化装置である。センターパイプ51の下端部512の端面近くの蒸気供給口513からは、上述した過熱蒸気発生装置4によって生成された過熱蒸気が供給される。
【0044】
過熱蒸気は、炭化物の終末速度以上となる10m/sから15m/sの上昇流が形成されるように供給する。下端部512の蒸気供給口513より100mmから200mm程度の上方には、リターン未反応炭を供給するリターン供給口515と、炭化物を供給する炭化物供給口514とを設ける。ここでは、リターン供給口515より炭化物供給口514を上方に設ける。
【0045】
炭化物供給口514とリターン供給口515からセンターパイプ51内に供給された炭化物及び未反応炭は、それより下方の蒸気供給口513から供給された過熱蒸気と一緒にセンターパイプ51内を上昇する。
【0046】
炭化物と過熱蒸気が接触混合されると、水性反応(熱分解反応)が起き、水素ガス(H)、一酸化炭素ガス(CO)、二酸化炭素ガス(CO)を主成分とする水性ガス(熱分解ガス)が生成される。例えば、Hが60容積%(V%)、COが13容積%、COが25容積%、CHが約2容積%の水性ガスが生成され、上端部511の熱分解ガス排出口516から排出される。
【0047】
この水性反応は、トータルで吸熱反応であり、導入口53からセンターパイプ51の外周に供給された1000℃から1200℃の高温排ガスによって、センターパイプ51内では輻射熱及び総括伝熱係数にて900℃から1000℃の温度となる。
【0048】
ここで、水性反応は、以下のようになる。
C + HO → CO + H (1)
C + HO → CO + H (2)
【0049】
上記式(1)に示す水性ガス反応は吸熱反応であり、式(2)に示す水性ガスシフト反応は発熱反応である。式(2)に示す発熱反応の発熱量よりも、式(1)に示す吸熱反応の吸熱量の方が大きい。そのため、炭化物と過熱蒸気との熱分解反応は、全体として吸熱反応となる。
【0050】
一般的に、低温(750℃-800℃)では発熱反応である水性ガスシフト反応が促進され、高カロリーの一酸化炭素が消費されて低カロリーの水素が生成されるので、単位体積当たりの発熱量が小さい水素リッチな熱分解ガスが生成される。一方、高温(900℃-1000℃)では一酸化炭素リッチな熱分解ガスが生成される。また、ガス化剤となる過熱蒸気の供給量が多いほど、熱分解ガス中のH/CO比が高くなる。
【0051】
本実施の形態のように流動式の熱分解炉5を採用することによって、炭化物と過熱蒸気との反応面積が増大し、反応率を上昇させることができる。すなわち長尺状のセンターパイプ51であれば、上昇していく間の長い距離において、水性反応させるための反応面積を充分に確保することができる。本実施の形態の熱分解炉5であれば、反応率を、供給炭化物に対して80重量%から85重量%(w%)にすることができる。
【0052】
熱分解炉5のセンターパイプ51の上端部511に設けられた熱分解ガス排出口516から排出された水性ガス(熱分解ガス)は、図2に示すように、マルチサイクロン11に送られる。
【0053】
マルチサイクロン11では、水性ガスを内部で旋回させることにより水性ガスに含まれる残渣を遠心分離して、下方へ導いて減温器12に供給する。また、マルチサイクロン11では、残渣が除去された水性ガスを上方へ導いて、過熱蒸気発生装置4に供給する。
【0054】
マルチサイクロン11では、未反応炭の約99%が分離される。マルチサイクロン11で分離された未反応炭は、減温器12において水供給ポンプ(TW)から液体である水が噴霧されることによって、300℃から400℃に冷却される。そして、冷却された未反応炭は、リサイクルホッパ13又は余剰ホッパ14に送られる。
【0055】
このようなリターンシステムによって、供給された炭化物の約2倍の未反応炭を、熱分解炉5にリターン未反応炭として戻すことができる。すなわち、炭化物の未反応分が水性ガスの生成に用いられずに廃棄されることが回避でき、炭化物からの水性ガスの収率が向上する。また、窒素置換器(N)によって水性ガスが不活性な窒素ガスと置換されて余剰ホッパ14に送られた未反応炭は、回収される。
【0056】
一方、マルチサイクロン11において回収された水性ガスは、第1スチーム過熱器41にて熱回収(約400℃)されて、CO改質器61に送られる。CO改質器61では、一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)を触媒上で反応させて、水素(H)と二酸化炭素(CO)に変換する。
CO + HO → CO + H (発熱反応)
【0057】
CO改質器61で改質された水性ガスの組成は、Hが約65容積%(V%)、COが約2容積%、COが約31容積%、CHが約2容積%となって排出される。そして、改質された水性ガスは、水性ガス洗浄塔62に送られる。
【0058】
本実施の形態の水性ガス回収装置6は、水性ガス洗浄塔62と、循環クーラ63と、水性ガスルーツブロワ64と、水性ガスホルダ65とによって主に構成される。上述したCO改質器61を、水性ガス回収装置6の構成に含めることもできる。
【0059】
水性ガス洗浄塔62では、約400℃の温度で送り込まれた水性ガスを、約40℃にまで冷却する。水性ガスは冷却によって、冷却され水性ガスと残渣(未反応炭)とに分離され、未反応炭は系外へ排出されて回収される。
【0060】
水性ガス洗浄塔62には、水性ガス冷却装置となる循環クーラ63が接続されており、液体である循環水によって洗浄と冷却を行うことで、水性ガスホルダ65に向けて排出される水性ガスを約40℃にまで冷却することができる。
【0061】
ここで、水性ガス洗浄塔62と循環クーラ63との間には、洗浄塔ポンプ621とラインフィルタ631とが介在される。また、循環クーラ63では、水性ガスの洗浄及び冷却のために供給された冷却水(CW)の戻り水(RCW)を回収して、循環ポンプにより再び水性ガスの洗浄及び冷却させる冷却水として循環させる。
【0062】
水性ガス洗浄塔62で処理された水性ガスは、水性ガスルーツブロワ64によって水性ガスホルダ65に供給される。そして、水性ガスホルダ65にガス発電機7が接続されていれば、水性ガスによる発電が行われて送電がされる。水性ガス生成システム1の水性ガスホルダ65にガス発電機7が接続されていれば、バイオマス発電システムとなる。
【0063】
ガス発電機7は、水性ガスを燃料として動作する発電装置である。ガス発電機7を駆動させる動力源としては、例えば、水性ガスを燃焼させることにより動作するガスエンジンが用いられる。
【0064】
一方、水性ガス生成システム1の水性ガスホルダ65に水素供給装置である水素供給設備8が接続されていれば、バイオマス水素供給システムとなる。バイオマス発電システムとバイオマス水素供給システムとは、いずれか一方であってもよいし、図1,2に図示したように両方を備えたシステムであってもよい。
【0065】
図4は、バイオマス水素供給システムを構成する水素供給設備8の一例を説明するブロック図である。水素供給設備8は、水素精製装置81と、圧縮機82と、蓄圧器83とによって主に構成される。
【0066】
水素精製装置81は、水性ガスホルダ65から供給された水性ガスを、0.9MpaGに加圧して、加圧吸着方式(PSA)によって、水素(H)が純度99.995%以上となるように精製する。要するに、水性ガスに含まれる一酸化炭素ガス、二酸化炭索ガス等の成分を除去することで純度が高い水素ガスに精製する。
【0067】
水素精製装置81によって精製された水素(H)は、圧縮機82によって90Mpaまで圧縮されて、蓄圧器83に充填される。そして、燃料電池自動車FCVに水素を供給する際には、充填機であるディスペンサ84に燃料電池自動車FCVを接続してタンクへの充填が行われる。ディスペンサ84を使用すれば、流量や圧力を制御しながら水素ガスを燃料電池自動車FCVに供給することができる。
【0068】
一方、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなど、バイオマス水素供給システムとは別の場所で水素ガスを使用する場合は、ボンベ用の充填装置85を介して蓄圧器83の水素をボンベHGBやカードルやローリなどに充填する。
【0069】
次に、本実施の形態の水性ガス生成システム1、バイオマス発電システム及びバイオマス水素供給システムの作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の水性ガス生成システム1は、熱分解ガスを発生させる熱分解炉5が長尺状のセンターパイプ51とその周囲を覆うジャケット部52とを有している。
【0070】
そして、センターパイプ51の下端部512から供給される過熱蒸気とその上方から供給される炭化物とがセンターパイプ51の内部を上昇している間に熱分解反応して、センターパイプ51の上端部511から熱分解ガスが排出される構成となっている。
【0071】
このように広い反応面積が確保できるセンターパイプ51の内部で、炭化物を均一に且つ速やかに高温に加熱して、組成比が均一な熱分解ガスを効率よく得ることができる。特に、センターパイプ51を、ステンレス鋼によって長さが6mから9mの円筒管に形成することで、1000℃以上の高温加熱が可能となり、炭化物と過熱蒸気とを充分に反応させることができる。ここで、反応面積を増大させるにはセンターパイプ51が長いほど良いが、熱分解反応に必要となる過熱蒸気の温度が維持される長さを考慮すると、8m程度が好ましい。
【0072】
また、センターパイプ51における過熱蒸気の上昇速度を、炭化物の終末速度以上の10m/sから15m/sに設定することで、炭化物の落下を抑えて効率よくセンターパイプ51の上端部511の熱分解ガス排出口516から熱分解ガスを排出させることができる。すなわち、炭化物を落下させないで、できるだけ長い時間、センターパイプ51内で熱分解反応させる上昇速度に設定する。
【0073】
また、水性ガス生成システム1によって生成された水性ガスを用いて発電を行うバイオマス発電システムは、ガス中の可燃ガス(CO、H)の含有割合によって発熱量が決まる発電機のエンジンを、安定して回転させることができる。また、窒素、硫黄及びタールなどの不純物は炭化炉3で除去されるので、高い発電効率によって安全で効率のよい電力を供給することができる。要するに、バイオマスの有効利用により、省エネルギーと自然環境保護を実行できるうえに、経済性に優れている。
【0074】
さらに、水性ガス生成システム1によって生成された水性ガスを精製して水素を供給するバイオマス水素供給システムであれば、バイオマスを使って水素を製造しながら燃料電池自動車FCVに直接、水素を充填することができるオンサイト型の水素ステーションや、製造場所から別の場所に水素を輸送するオフサイト型の水素ステーションを簡単に実現することができる。
【0075】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0076】
例えば、前記実施の形態では、熱分解炉5のセンターパイプ51をステンレス鋼で形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、鋳物、その他の金属又はセラミックなどの耐熱性の高い素材によって形成されていればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 :水性ガス生成システム
2 :原料供給装置
3 :炭化炉
4 :過熱蒸気発生装置
5 :熱分解炉
51 :センターパイプ
511 :上端部
512 :下端部
52 :ジャケット部
6 :水性ガス回収装置
7 :ガス発電機(発電装置)
8 :水素供給設備(水素供給装置)
図1
図2
図3
図4